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    元スレ咲「命にかえてもお嬢をお守りします」

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    251 = 247 :

    雲雀「あちらからの声明はなにか」

    佐藤「今のところは。相手が無能でなければ、いい加減我々がここに集まっている事くらい掴んでいるはずなのですが」

    雲雀「そう……佐藤、園田は?」

    佐藤「いえ、それが……雲雀様」

    田中「申し上げにくいのですが、園田は裏切ったという目撃情報が入っています」

    「なんやて!?」

    漏れ聞こえた声に淡香達は目を見開く。

    園田は雲雀の腹心的な存在だったはずだ。
    普段は極力表に出ず普通の女子高生として務める雲雀を補佐していた。

    雲雀の傍らに控える園田は忠臣といったいでたちで、
    雲雀のことを何よりも尊敬しているようだったのに。

    佐藤「相手グループの中に、園田のような影を見たものがおります」

    田中「この手際の良さです。我々の内部の深いところに内通者がいて、手引きしたと考えても不思議ではありません」

    田中「お嬢、いかがいたしましょう」

    佐藤「雲雀様。ご指示を」

    252 = 247 :

    雲雀「――落ちつきなさい」


    静かだがよく通る、まるで水のような声だった

    興奮し、いきり立つ部下を雲雀は嗜める。
    ぐるりと周囲に集まった大人たちを前にして少女は言った。

    雲雀「手引きした者は他にもいる。女子生徒4人を確保し、本人たちも認めてる」

    雲雀「そもそも相手のボスはうちの元組員らしい。内部事情に詳しいのは当たり前だし、不和なんて相手の思う壺」

    雲雀「まずはこの事態を収集することが先決……手は打ってあるよ」


    その時だった。


    『あ、あ……テスト、テスト。ハァイ皆さん。ご機嫌いかが?』


    キィィィン、と機械音がしたあと、校内放送が流れ始めた。
    どこか間延びした、男への媚び方を知る女の声。
    聞き覚えのある声に皆がざわつき始める。

    佐藤「この声――あの裏切り者の白鷺か!?」

    鈴木「……やはり今回の黒幕は……」

    白鷺『ひさしぶりね。体育館の居心地はどうかしら?』

    雲雀「……声は一方通行のようだね。私達がここで何を言っても無意味ってことか」

    253 = 247 :

    白鷺『さ、夕子ちゃん。あなたのお友達に可愛い声を聞かせてあげて』

    夕子『クッ――ひ、ばり…』

    マイク越しに聞こえたうめき声に、動揺が走る。

    映像があるわけではない。
    声が似ているだけで、本人ではないかもしれない。けれど。

    淡香「夕子!?」

    「夕子!」

    雲雀「……」

    白鷺『ほら、もっとよ夕子ちゃん。そんな覇気のない声じゃなくて、元気よく!』

    夕子『雲雀……来るな、グッ!』

    白鷺『だから、そぉんなつまんない声じゃダメダメ。――さて、組織の子犬たち。あなた達に要求があるわ』

    楽しげな声で、白鷺が告げた。

    白鷺『辻垣内の娘、雲雀をこちらに引き渡しなさい。さもなければこの学校を爆破する』

    ごくりと、周りの皆は喉を鳴らした。

    254 :

    続き来てた

    255 :

    おつおつ

    258 :

    鳩尾に入れられて気絶したあと手首を拘束されたが、それ以外に特別な損傷はない。
    むしろあんな男に捕まったことが夕子は歯がゆくて仕方がなかった。

    この世界に生きる人間として、もっと注意深く行動出来ていれば
    こんな事態にはなっていないはずだった。

    白鷺『ひとまず十分後、第二教棟の屋上で。そこでこの子を引き渡すわ。色よい返事を期待してるわよ』

    放送室を占拠した白鷺はそう言って放送を切った。
    最後にリップ音を残すのも忘れない。

    夕子は白鷺が機器の全電源を手ずから落としているのを眺め、歯がみする。

    夕子(雲雀…)

    雲雀は強い。
    それは周知の事実だし、夕子は幾度となく彼女に助けられてきた。

    夕子は決して雲雀の強さと勝利を疑わない。
    今回も、雲雀はどんな事態になろうとも必ず夕子を救出するだろう。だが。

    夕子(私は…このままでいいのか?)

    毎度毎度ふがいなく彼女に守られるだけで、
    本当にいいのだろうか。

    どんなに努力しても、彼女のように強くはなれない。

    だがいつかは自分のほうが雲雀を守る存在になりたい。
    そう思っているのに。

    白鷺「不安なの?夕子ちゃん」

    夕子「……」

    白鷺「大丈夫よ、雲雀ちゃんは必ず来るわ。だって…」

    白鷺「あの咲ちゃんの血をひいているんですもの」

    259 = 258 :

    そう言いながら彼女が振り返った完璧なタイミングで、
    彼女の部下が夕子の肩を持ち上げ、無理矢理に歩かせる。

    振り払うだけの労力が勿体ないと判断したので、
    夕子は素直に従う。

    第二教棟の屋上はそこからさほど遠くなかった。
    どうやら白鷺たちが使っていたのは第二教棟五階の放送室だったらしい。

    階段をひとつ上がり、屋上へ上がる。
    鍵は開いていた。

    普段は頑丈に施錠しているが、
    どこからかキーを入手してきたらしい。

    冷たい北風の吹き荒れる屋上に、数分後。
    雲雀は現れた。

    白鷺「はじめまして。あなたが雲雀ちゃんね。ああ…咲ちゃんの面影があって、実に私好みだわぁ」

    雲雀「……」

    白鷺「ねぇ雲雀ちゃん。もう知ってるだろうけど、園田は私に付いたわ」

    夕子「園田が!?」

    驚きのあまり夕子が声を出すと、
    横に控えていた黒服の男に締めあげられた。

    園田は雲雀の腹心だ。
    辻垣内家に古くから仕え、心から忠誠を誓っていたはず。

    なのに。
    あの人が雲雀を、辻垣内を裏切った……?

    白鷺「ねえ、雲雀ちゃん。この世界は醜いでしょう?」

    雲雀「……」

    白鷺「どんなに信頼していても裏切られる。絆は切れる。希望は奪われる。結局信じられるのはお金と自分だけ」

    白鷺「楽しいことだけしていたいと思わない?雲雀ちゃん。私なら全部叶えてあげられるわ」

    雲雀「……」

    260 :

    続き来たか

    264 :

    白鷺「そう……仕方ないわね」

    雲雀「……っ!!」

    白鷺が指示を出すと、
    夕子を押さえつけていた男が拳銃を構えた。

    銃口の先には、夕子の頭。
    セーフティも外されている。

    あとは引き金に手を置き発砲すれば、
    夕子の頭蓋骨にはいともたやすく穴が開く。

    雲雀「夕子……」

    白鷺「さぁ雲雀ちゃん、一緒に来なさい。あなたが来てくれれば、この子は無事おうちに帰してあげる」

    雲雀「……分かりました」

    夕子「駄目だ雲雀!私のことは構うな、逃げろ!」

    雲雀が一歩、また一歩と歩きだす姿を、
    夕子は悲痛な思いで見詰めた。

    白鷺の背後に、爆音を響かせてヘリコプターが降りてくる。

    学校の屋上程度の狭いスペースによく停められるものだ。
    操縦士の腕はよほどいいらしいと感心するような余裕は夕子にはない。

    エンジン音が止まないままドアが開き、中から真っ先に出てきたのは園田その人だった。
    黒いスーツは雲雀の護衛を勤めていたときのままで、夕子は奥歯を噛む。

    白鷺「遅かったじゃない、園田――」

    白鷺が親しげに微笑んだ、そのとき。
    園田が銃を構えた。

    銃口の先には、白鷺がいた。

    267 :

    待ってるよ

    269 :

    白鷺「…ッ」

    寸でのところで避けたが、彼女の白魚のような手のひらには赤い筋が入っていた。
    白鷺は一瞬制止していたが、彼女の脳が状況を理解すると、金切り声で叫んだ。

    白鷺「園田!あなた裏切ったの!?」

    白鷺が懐から銃を取り出し、闇雲に打つ。
    しかし冷静さを欠いた発砲など雲雀に通用するはずがない。

    全弾軽々と避けた雲雀は白鷺の手首を狙ってナイフを放つ。
    はじかれた銃を園田が拾い、白鷺に向かって構えた。

    白鷺「園田……貴様……ッ」

    園田「「申し訳ありません。お話はとても興味深かったのですが」

    園田「生憎私は生涯のボスをこの方と決めているものですから」

    晴れやかな笑顔を浮かべて園田は言った。
    ヘリコプターのドアが再度開き、中から黒服の男たちが出てくる。

    270 :

    見知った顔は辻垣内家の者たちだった。
    彼らは屋上にいた男たちを全員気絶させて縛り上げ、ヘリの中に投げ込んでいく。

    雲雀「連れて行きなさい」

    白鷺「はぁ……私の負けね。咲ちゃんに続いて娘のあなたにまで降伏せざるをえないなんて」

    降参、といやにあっさりと両手をあげ、白鷺が大人しくヘリへと向かっていく。
    雲雀は彼女を振り返った。

    白鷺は、自分をじっと見つめていた。
    ……いや。自分を通り越して、誰か別の人間を見ているような気がした。

    雲雀「……母は、元気にしています」

    何とはなしに、白鷺に向かってそう呟いた。

    白鷺「そう。………アリガト」

    彼女の囁くような声が聞こえた瞬間、
    ヘリの扉が音をたてて閉められた。


    ――――――――――――
    ――――――――
    ―――――

    271 = 270 :


    ―――――
    ――――――――
    ――――――――――――


    淡香「おはよーみんな!」

    淡香が勢い良く麻雀部の部室を開けると、
    中にいたメンバーが揃って振り返った。

    ゆり「遅いっすよ。淡香」

    「もう皆集まってるで」

    淡香「ごめんごめん。あ、雲雀に夕子!久しぶりー」

    雲雀「久しぶり。淡香」

    夕子「久しぶりだな」

    雲雀、夕子の2人は組内の事後処理やらで暫く学校を休んでいた。
    あの事件から5日後、漸く2人は揃って麻雀部に顔を出した。

    淡香「最近2人とも来ないから、ずっとサンマばっかでつまんなかったよー」

    「せやな。何せうちの麻雀部、この5人しかおらへんし」

    ゆり「昔はこの臨海女子って留学生呼ぶ程の名門だったって聞いたっすよ」

    淡香「へぇー。時代は変わるもんだねぇ」

    272 = 270 :

    「じゃあ久々に5人揃ったことだし、さっそく皆で打とうや!」

    淡香「さんせーい!」

    夕子「あ、ちょっと待ってくれ。雲雀に話があるんだ」

    雲雀「私に?」

    夕子「ああ。皆すまん、少し席を外させてもらう」

    ゆり「もうサンマは飽き飽きなんで早く戻ってきてくださいっすよー」

    二人は部室を出て少し歩いたところにある空き教室に入る。
    その中の席のひとつに腰を下ろし、雲雀は黙ったままの夕子に声をかけた。

    雲雀「で、私に話って?」

    夕子「ああ。まだちゃんとした礼を言ってなかったからな」

    雲雀「礼?そんなこと気にしなくていいのに…」

    夕子「いや、礼というか謝罪だな。私が無様にも捕まってしまったために、お前には迷惑をかけてしまった」

    夕子「不甲斐ない友人で…本当にすまない」

    雲雀「夕子…」

    夕子「身体能力もない、素質もない、思慮深くもない」

    夕子「私はこの世界に生きる者として相応しくないのかも知れないな…」

    273 = 270 :

    弱弱しく呟く夕子の言葉を、雲雀はただ黙って聞いていた。
    暫くした後、雲雀はずっと俯いていた夕子の肩をぽんと軽く叩いた。

    夕子「…雲雀?」

    雲雀「夕子はまだ16歳じゃない。これからいくらでも伸びるよ」

    夕子「…でも、私と1年しか違わないお前はそんなにも強いじゃないか」

    雲雀「ふふ。知ってる?母の咲も私達位の年齢の時は何もできない小娘だったんだって」

    夕子「え…あの戦女神と呼ばれた咲さんが?」

    雲雀「うん。それから数年でもう一人の母、智葉の護衛筆頭にまでのし上がったそうだよ。だから夕子も諦めないで」

    夕子「……もし、跡をつぐまでに全く伸びないままだったら?」

    雲雀「うーん、そうだね…その時は、ドジっ子組長として周りの皆に助けてもらえば良いと思うよ」

    夕子「……ぷっ」

    真面目な表情でそんなことを言う雲雀がおかしくて、
    夕子はたまらず笑い声を漏らす。

    夕子「ははは、それも良いかもな」

    雲雀「……やっと笑ってくれたね」

    夕子「え?」

    雲雀「やっぱり夕子には笑顔がいちばん似合うよ」

    夕子「……っ」

    にこりと微笑ながら言われ、
    夕子はどきりと心音を鳴らす。

    274 = 270 :

    雲雀「じゃあ、そろそろ戻ろうか。あまり遅いと淡香たちが拗ねそうだし」

    夕子「そ、そうだな…」

    椅子から立ち上がり、ドアの方へと向かった雲雀から視線が逸らせない。
    さっきから胸の動悸も止まらない。これではまるで…

    雲雀「夕子?」

    立ち尽くしたままの夕子を振り返り、雲雀は訝しげに声をかける。
    はっと我に返った夕子は慌ててドアへと足を進めた。

    夕子「すまない…ちょっとボーッとしてた。それじゃあ行こうか」

    雲雀「……夕子」

    すっと夕子へと手を差し出した雲雀は、
    そのまま夕子の手をぎゅっと握った。

    夕子「ひ、雲雀!?」

    雲雀「夕子は目が離せないからね。私が引っ張っていってあげる」

    そのままぐいと手を引かれ、夕子は抗う間もなく歩かされる。
    温かいその手を、夕子もぎゅっと握り返す。

    夕子(いつか、私の方がこんな風に雲雀を引っ張っていけたら…)

    今はまだそれは淡い夢でしかないけれど。
    誰よりも強くなりたい。そして。

    夕子(雲雀に並び立つ存在になりたい。…ずっと彼女と寄り添っていけるように)

    雲雀「夕子?さっきから何を考えこんでるの?」

    夕子「…いや、何でもない」

    不思議そうに見つめてくる雲雀に笑みを返しながら。
    夕子はそっと呟いた。


    ――――――――――――
    ――――――――
    ――――

    275 = 270 :

    ー辻垣内家ー


    「宥さん、お茶のおかわりはいかがですか?」

    「うん。頂こうかな」

    「智葉さんと菫さんは…」

    「まだ勝負の真っ最中みたいだねぇ」


    「ふふん。今度も私の勝ちだな」

    智葉「くっ…次は花札で勝負だ菫!」

    「まだやるのか?いい加減ゲームで私には勝てないって悟れよ」

    智葉「ぐぬぬ…」


    「チェスに将棋、ポーカーにオセロで次は花札かぁ」

    「菫さんは本当にどんなゲームも強いんですね」

    「そうだねぇ」

    「でももうお開きにしないと。雲雀も学校から帰ってくる頃だし」

    「うん、うちの夕子も帰ってくるだろうしね――――菫ちゃん!そろそろ帰らないと…」


    「まあお前が私に勝つのは十年早いな」

    智葉「くそっ、調子に乗るなよ菫!麻雀では私に勝てたことないくせに」

    「菫ちゃ…」

    「なにぃ!?なら今から麻雀でもお前を地に落としてやる!」

    「智葉さ…」

    智葉「ふん、やってみろ菫。返り討ちにして…」


    咲・「二人とも、いい加減にしなさい!!」


    智葉・菫「……はい」


    カンッ

    276 = 270 :

    後日談の蛇足感が半端ないですがこれで終わりです。
    見て下さった方ありがとうございました。

    277 :

    乙 楽しかったよ

    278 :

    乙!
    面白かった

    279 :

    咲さんかっこ良かった

    280 :


    後日談まで含めてとても良かったよ
    咲さんが報われて良かった


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