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    元スレ咲「命にかえてもお嬢をお守りします」

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    101 = 97 :

    「お…お父さ…ん…」

    男>1「あーあ。お父さん行っちゃったねぇ」

    男>2「すっかりうちひしがれちゃって可哀想に」

    男>3「ま、俺たちが慰めてやるからよ」

    「やっ!」

    男の手が咲のスカートの中に伸びる。
    咲は咄嗟に手を払いのけようとするが、別の男に羽交い絞めにされたままで
    腕の自由がきかない状態では何の抵抗もなさない。

    そのまま無骨な手が咲の下着の中に潜り込み、
    秘所を乱暴にまさぐった。

    「あっ…ああっ…」

    敏感な場所を他人の手で弄られる感覚に咲は身を震わせる。
    不意に男の指が膣内へと突き立てられた。

    「ひぅ…っ!」

    男>3「おっ、すげー締め付け。こりゃ処女だな」

    「い、いや…お願い、代打ちでも何でもするから…だからこれ以上は…」

    震える声で懇願する咲の言葉も男達には届かない。


    やがて部屋中に咲の悲鳴が響きわたった。

    102 = 97 :

    その日から、咲は裏の世界で生きていくことを余儀なくされた。

    ただ賭け事の為のみに打たされる麻雀。
    そこに咲自身の意思など存在しない。

    咲は死んだように生きていた。
    半年後、別の組との賭け麻雀で智葉に敗北したその時まで。



    智葉「―――お前の負けだ。宮永咲」

    「……はい」

    勝負に大負けした場合は自らの身をもって償え。
    組のトップにはそう言われている。

    「私にはこれ以上出せるお金がありません…なので、私の命でも身柄でも持っていってください」

    半ば投げやりに咲は言った。自分にはもう何もない。
    身体を休める暖かな家も、おかえりと向かえ入れてくれる優しい家族も。

    何もかも失った。もう生きていても意味がない。
    ならいっそ、ここで息の根を止めてほしい。

    103 = 97 :

    智葉「分かった。……なら宮永咲、お前は今から私の配下に下ってもらう」

    「……はい。代打ち要員ですね」

    智葉「いや。賭け麻雀はさせない。お前はただ私の傍にいればいい」

    「傍に……?」

    智葉「ああ。もちろん断ってくれても構わない。その時はお前を解放してやる」

    「……え?」

    智葉の言葉に咲は目を大きく見開いた 。

    「どうして……それでは貴方に何のメリットもないじゃないですか」

    智葉が何を考えているのか分からない。
    勝負に負けた自分を無償で助けてくれる理由が。

    智葉「理由ならあるぞ」

    咲の思考を読み取ったのか、
    智葉は咲から視線を逸らさず告げた。

    智葉「ただ単純に、お前を救いたいと思ったからだ」

    「……なぜ」

    智葉「半年前の、夏のインターハイ決勝戦。あの時一際輝いて麻雀を打つお前に、私は惹かれるものを感じた」

    智葉「はじめて他人の打つ麻雀に魅せられた。もっともっと見ていたい。そんな風に誰かに夢中になるのはお前が初めてだった」

    「……」

    智葉「あの日から、私はお前自身に惹かれていたのかも知れないな」

    「……でも、私はもう……あの時の私じゃありません」

    父に捨てられ、純潔も奪われ、家も友人も自由も失った。
    こうして裏の世界で息を潜めて生き長らえているだけの卑しい存在だ。

    104 = 97 :

    智葉「いや。お前の瞳は輝きを失ってはいない。心と同様に澄み切った、綺麗な色をしている」

    「……」

    智葉「そんなお前に、私の生きる極道の世界は酷なのかも知れない。日々危険と隣り合わせで生きていかなくてはならないからな」

    智葉「だから、この話は断ってくれても構わない」


    ―――その時は、お前を表の世界に帰してやる。


    そう告げた智葉に、咲はしばし沈黙する。
    暫くして、すっと顔を上げた咲の目に迷いの色はなかった。

    「……分かりました。貴方にお仕えします」

    咲は静かに頷いた。
    何もかもを失い、生きる気力さえも失いかけていた自分に救いの手を差し伸べてくれた人。

    辻垣内智葉。この人の為に生きようと思った。

    「…一つだけ、いいでしょうか」

    智葉「何だ?」

    「私はもう宮永ではありません。父には…縁を切られましたので」

    智葉「……そうか。なら、咲。私についてこい」

    智葉「今日からお前は私の組員、家族だ」

    智葉が咲へと手を差し出す。
    咲はその手に自分の手を重ねた。
    ぎゅっと力強く握られる手。2人の主従関係が成立した瞬間だった。


    ――――――――――――
    ――――――――
    ――――

    105 = 97 :



    ――――
    ――――――――
    ――――――――――――


    「……っ、ひっく…、ぐすっ…」

    ただ黙って咲の話に耳を傾けていた淡は
    我慢できずに嗚咽を漏らしはじめた。

    「ごめ…サキ、ごめんね…」

    「…どうして謝るんですか、大星さん」

    咲の身に降りかかった過去の出来事。それらは淡の想像を遥かに超えていた。
    少なくとも軽々しく聞いていいような内容ではない。
    咲の傷口を抉るような真似をした自分に心底嫌悪した。

    「わたし、無神経に踏み込んで…サキのこと傷つけちゃって…ほんとごめ…っ」

    「そんなに泣かないで…」

    スーツのポケットからハンカチを出し、
    咲は淡の涙で濡れた頬をそっと拭った。

    「…私には大星さんの希望を叶えることはできません」

    「あの日から、智葉様のために生きていくと誓いましたから」

    「サキ……」

    「…ありがとう。私のために泣いてくれて…大星さんは優しい人ですね」

    「……淡」

    「え?」

    「淡って呼んで、サキ。それから敬語もやめて」

    「でも…」

    「私、サキと友達になりたい。だからお願い」

    「……分かったよ。淡ちゃん」

    にこり、と自分に向かって微笑みかけた咲は、
    6年前のあの決勝戦で見た時の笑顔と何一つ変わってなくて。

    淡はまた新たな涙を流して咲にぎゅっと抱きついた。
    そんな淡の背を、咲は優しく撫ぜ続けた。

    106 = 97 :

    今回はここまでです。

    108 :


    界さん………

    109 :

    親父に復讐しに行こう(提案)

    110 :

    予想通りエグい話やでぇ……
    この咲を見せてやりたい界照母に

    乙やで

    111 :

    これは親父にコークスクリュー(物理)確定ですわぁ…

    112 :

    繝槭Ρ縺輔l繧句調縺輔s縺ョ謠丞?繧談wsk

    113 = 112 :

    何だこの文字化け
    マワされる咲さんの描写を詳しく

    114 :

    そういうのが好きな人は薄い本でもどうぞ。

    115 :

    この咲さんなら既に父親○してそう

    116 :

    心配しなくても咲さん智葉にしか興味ない天使になったから界とかいう鬼畜はスルーしたよ

    117 :

    智葉の方が咲に惚れてんじゃね?
    レズのマネージャーに同じ穴のムジナとか言われてたし

    118 :

    乙。

    今のこの状態の咲を、照が見たら、なんていうか非常に気になる。

    119 :

    照が駄まってないやろ
    いや、和さんかな?

    120 = 119 :

    和さんと照さんが…界さんを…

    121 :

    はいはい、黙ってるも何も妹いないって言う奴やレズとはいえただの女子高生がどうにか出来るわけねーだろ
    これだからカプ厨は…

    122 :



    ――――――――――――
    ――――――――
    ――――


    車をマンションの100m手前で止めるよう運転手に頼んで、咲は目尻を押さえる。
    本部を出たのは日付を越えた少し過ぎたあたりだっただろうか。

    本部は都心からは遠い場所にあるので、移動に不便なのが難点である。
    事実そろそろ空が明るくなりはじめているし、移動時間中も報告書の作成に追われていたせいで眠れなかった。

    マンションについたら30分だけでも仮眠を取らないと、今日の仕事に支障が出るだろう。
    結局咲は丸二日、本部の地下に籠っていた。
    事後処理や今後についての会議のために二徹である。


    智葉はどうしているだろう、と咲は眠たい頭で考える。
    途中で何度か連絡は入れたが、どうにも心配で咲は軽くため息を吐いた。

    123 = 122 :

    今から6年前。
    咲は辻垣内組の一人娘、智葉の側近になった時のことを思い出す。

    借金のカタに父に売られ、組内では奴隷のように扱われ生きる気力をなくしかけていた咲に
    一緒に来いと彼女は手を差し伸べてくれた。

    智葉『今日からお前は私の組員、家族だ』

    その一言が、咲の人生を大きく変えた。

    あれから月日が流れ、智葉ともすっかり打ち解け
    節度を守った範囲ではあるものの軽口を叩けるほどの仲になった。

    護衛の仕事をするにあたって護身術、銃技、ナイフの扱い等、毎日死ぬ気で訓練した。
    今では咲は智葉の側近筆頭にまで上りつめる程になっていた。

    「……はあ」

    報告書を鞄に仕舞い、やることがなくなった途端に強い眠気が襲ってくる。
    近頃やることが増えて知らずに気を張り詰めていたのかもしれない。

    重たい溜息をついて、咲は完全に目を閉じた。
    無意識のうちに車の窓枠にもたれかかり、心地よい振動に身を任せる。

    (なんだか、すごく疲れてる気がする…)

    それが、夢の世界に落ちる前の咲が最後に思ったこと。

    ちなみに、咲の疲れを垣間見た運転手は心配して、
    30分ほど遠まわりして咲の睡眠時間を確保したのだが、このときの咲は知る由もなかった。

    124 = 122 :



    ――――――――――――
    ――――――――
    ――――


    重さは本物と一緒だが、 レプリカと言っていいデジタル銃。
    音も煙も出ないので、練習には重宝する。

    車の中で30分だけ仮眠が取れたため
    多少すっきりした頭でシャワーを浴びることが出来た。

    そのまま身支度を整えて軽く柔軟をしたあと
    咲はマンションの地下2階にある射撃練習場へ移動した。

    本当はこの前段階として地下3階の鍛練場でナイフ使いの訓練をするのが咲の日課なのだが、
    今日は時間がないため射撃の訓練だけ行うことにしたのだ。


    地下に到着すると無人の射撃場の灯りを付け、所定位置に立ち、
    ヘッドホンと専用サングラスを付けてスイッチを入れる。

    すると目の前の景色が無機質なコンクリートから砂漠の荒野に変わり、
    3Dの人影が現れた。

    カウントダウンの電子音が聞こえる中、咲は全神経を集中させる。
    『1』のカウントが『0』に変わる瞬間、スッと息を吐き、駆逐を開始した。

    バンッ!  バンッ! バンッ!

    音が鳴っているように錯覚するのはヘッドホンからリアルな発砲音が聞こえてくるからだ。

    咲は現れてくる人影の急所を冷静に狙って撃ち抜いて行く。
    遠くから近付いてくる者から、唐突に横からあらわれてくる者まで、一人残らず全て。

    125 = 122 :

    実際の現場では、当日の天候の影響、追い風・向かい風の影響、障害物の影響等、
    色々な不確定要素があり、味方の存在も認識しつつ自分も移動して臨機応変に行動しなければならない。

    さらにこの練習場では所詮合成映像だけしかないので、本物の人間の気配がなく
    視界だけが頼りなのが心許ないが、そこは許容しなければならないのだろう。

    どんな訓練であれ、不完全だからと投げ出したりはしない。
    しないより、したほうがずっと身になる。

    バンッ! バンッ! バンッ!

    そのまま10分程続けていると、咲の聴覚に唐突に甲高い音楽が鳴り響いた。
    目の前に『コンプリート』という文字が浮かびあがってチカチカと明滅している。

    咲は銃を置き、サングラスとヘッドフォンを外して振り返った。
    背後からリズミカルに手を叩く音が響いてくるからだ。

    智葉「―――さすがだな、咲。いつもながら鮮やかだった」

    「おはようございます、お嬢。挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」

    そこにいたのは咲の主人である智葉だった。

    彼女がつい3分ほど前に入ってきたことには気付いていたが訓練の最中だったため、
    自己判断で挨拶を後回しにしたことをまず詫びる。

    126 = 122 :

    この練習場には一スペースに一つ電光掲示板が付いていて、
    そのとき訓練者が見ている練習風景を他者も見ることが出来る機能が付いている。

    さらにその映像は一定期間録画されるので、
    望むならその映像をDVDに焼いて確認することも出来るのだ。

    咲は使ったことのない機能だが、便利だとは思っていた。
    テクノロジーの進化にはいつも驚かされる。

    智葉「いや、いい。こちらも鍛練の邪魔をして悪かった。それからお嬢と呼ぶな」

    「申し訳ございません、智葉様。……本日は、どのようなご用件でしょうか」

    咲が智葉に近づくと、彼女は目を細めて淡く微笑んだ。

    智葉「いや。使用人から咲が帰ってきたと報告があったからな。会いに来ただけだ」

    「……まさか、こちらまでおひとりで?」

    智葉「誰にも見られていない」

    「また、あなたは……」

    智葉「私だって自分の身くらい自分で護れるぞ」

    127 = 122 :

    そう言って、智葉は再び目を細めた。智葉はたまにこういう表情をする。
    笑っているような、泣いているような、寂しがっているような、甘えているような。

    彼女がこういう顔をするのは大体咲が彼女の元を所用で離れたときか、
    咲が仕事で怪我を負ったときで。

    そして智葉がこの表情をした後には決まってすることがあった。

    咲が彼女の次の行動を予想して身体の力を抜いていると、
    ふいに智葉の腕が自分の方へ伸びてきて、ふわりと抱きしめられた。

    智葉「…おかえり、咲」

    「はい、智葉様」

    智葉「お前が無事帰って来てくれて、よかった」

    「……はい」

    智葉は咲の髪に顔をうずめて右手で腰を抱き、左手で髪を梳いている。
    咲は髪に触れてくる主人の優しい手に、ただうっとりと目を閉じる。

    2人はそのまま、部下が朝食の時間だと告げに来るまでずっと寄り添っていた。

    128 = 122 :

    今回はここまでです。

    130 :


    ガイトさんかわいい

    131 :

    孕村さん…

    132 :

    もっとイチャついても良いのよ

    133 :

    デレ智葉の可愛さ乙

    >>131
    咲和ss見つけたらガイトさん…ってレスすることに決めた、もちろん智葉は出てなくてもね

    134 :

    和も照も出てないんだが
    ネタでもせめて出てから言えよ

    135 :

    縺ゅ£

    136 = 135 :

    縺ゅ£

    137 :



    ――――――――――――
    ――――――――
    ――――


    弘世組は辻垣内組まではいかなくとも、それなりに大きな組織だった。

    昔から辻垣内とは付き合いのある組で、
    智葉自身も弘世の組長の一人娘、菫とは親交があった。

    弘世家の純日本家屋の居間に通された智葉は、料理が運ばれてくるまでの間
    世間話と称して先日起こった出来事をかいつまんで菫に話した。

    「やれやれ。お前も腕が落ちたものだな」

    ことん、と菫は湯呑みを置きながらそう断ずる。

    「自分の身くらい自分で守れる。そう豪語してたのはどこのどいつだ?」

    智葉「言ってくれるな。まさかうちの組から裏切り者が出るとは思わなかったんだ」

    「そこがお前の甘さだ。私ならたとえ身内の者にでも一瞬の隙も許さないがな」

    痛いところをずばずばと突いてくる友人に、
    智葉は何も言い返せずただ眉を顰める。

    「まあ、お前が無事で良かったよ」

    そう言って菫が微笑した直後、居間の襖が開いて
    二人分の昼食が運ばれてきた。

    138 = 137 :



    菫と別れ、弘世家の門を出てきた智葉を護衛である咲が出迎える。
    が、咲は智葉を部下が運転する迎えの車に押し込めると、一人歩いて帰りはじめた。

    普段は智葉と共に護衛がてら歩いて帰るのだが、今日は自分達の後をつけてくる気配が4つあったのだ。
    知った気配ではあったが万一のことがあってからでは遅いので、咲は直々に対処することにした。

    (彼女らは一体何がしたいんだろう……)

    咲は予定にないところで角を曲がり、気配が近づいてきたところで跳躍する。
    近くの塀の上に降り立ち、その家の庭先から生えている木の枝に身を隠して様子を伺った。

    案の定、彼女らは走ってやってきた。
    気配どころか足音すら消さずにどたどたと、それで彼女らは尾行しているつもりなのだろうか。

    「えっ、消えたっ!?」

    「えー? さっきここで曲がってたよ?」

    ゆみ「全速力で逃げたのかもしれないな」

    洋榎「せやな、じゃあうちらも走って―――ッ!?」

    「何かご用でしょうか」

    塀から降りて洋榎の背後を取った咲は、柄に入れたままのナイフを彼女の背中に突きつける。
    刃を抜かないのは彼女らが智葉の友人であることと、彼女らの意図が掴めないからだ。

    139 = 137 :

    咲が毛虫に向けるくらいのかすかな殺気を込めて言葉を掛けると、
    彼女らは竦み上がって悲鳴を上げた。

    洋榎「う、嘘やろ!?さっきまで前歩いてたやろ!?」

    ゆみ「ナ、ナイフを仕舞うんだ宮永!物騒な!」

    「そうやで!危ないで!」

    「それ本物なんだよね?」

    「私は何かご用でしょうかとお聞きしましたが」

    とりあえずそれをどうにかしろ危ない!と口々に連呼されたので、咲は渋々ナイフを仕舞う。

    ようやく人心地着いたらしい彼女らに、咲が「ご用件を。智葉様なら先に車でお帰りです」ともう一度告げても
    「あー」とか「えー」とか彼女らは煮え切らない。

    本当に命目的でしょうか……と咲が再度ナイフを取り出そうとしたところで、
    「わー!」と叫びながら言ったのは洋榎だった。

    洋榎「と、突撃!宮永のお宅訪問や!」

    「……は?」


    ――――――――――――
    ――――――――
    ――――


    140 = 137 :

    「私の住処なんて見てどうするんですか?」

    「私はサキのいちばんの友達だからね!家くらい知ってて当然でしょ!」

    「というかここ、智葉ん家の真後ろじゃないん?」

    オートロックを解除してエレベーターに乗り、マンションの8階。
    一応最上階だ。

    咲は4人を家に上げるとすぐに荷物を置き、クローゼットに直行した。
    本当に何もない部屋なのに何故か興奮してテンションの高い4人を無視し、さっさとスーツを脱ぐ。

    ゆみ「生活感のまるでない部屋だな……」

    洋榎「机とベッドと本棚しかないなぁ」

    「お菓子もないし。殺風景だねー」

    「……皆さん。来て早々申し訳ありませんが、私はすぐこの家を出ますので」

    「え!?」

    141 = 137 :

    驚き声は誰のものだっただろう。

    咲はスーツの下に着けているショルダナイフのホルスターを外そうとしていたところだったのだが、
    あまりの間抜けな声に反応して振り返ってしまった。
    すると逆に、4人の方が唖然としていた。

    洋榎「す、すごい量のナイフ……それ、重くないん?」

    「いえ。もう慣れました」

    ゆみ「それ、もしかして毎日持ち歩いてるのか?」

    「仕事ですので」

    「行くって、どこへ行くん?」

    「智葉様のところです」

    「智葉の家か、見てみたいなぁ」

    興味津々といった様子で目を輝かせる淡に、咲は僅かに微笑して言う。

    「淡ちゃんも来る?」

    「えっ、いいの?」

    142 = 137 :

    「うん。…みなさんもおいでになりますか?」

    洋榎「ええんか?行きたい!」

    「私もー」

    ゆみ「私も興味があるな」

    「了解しました」

    咲はスマホを取り出した。
    クローゼットから着替えを取り出しながら発信ボタンを押すと、電話の相手はツーコールで出た。

    智葉『……もしもし、咲?』

    「智葉様。いまお時間、構いませんか」

    智葉『構わない。どうした、急用か?』

    「いま私の寝泊りしている部屋に、智葉様のご友人が来ているのですが」

    智葉『は?』

    143 = 137 :

    手短に事情を話すと、智葉から許可が出たので
    次は辻垣内家の使用人頭に電話をかける。

    ブラウスのボタンを止めて右腕にスローイングナイフのホルスターを着け終わったところで相手が捕まり、
    色良い返事が戻ってきたので咲はスマホを仕舞った。

    「智葉様と使用人頭の方の許可が取れました。皆さん、今夜は辻垣内家で夕食を取っていってください」

    「え、いいの?」

    ゆみ「いきなり押しかけたのでは、迷惑ではないのか?」

    「お嬢のご友人なら構わない、とのことです」

    洋榎「よっしゃ!ちょっと家に電話かけてくるわ!」

    4人はそれぞれ自分のスマホを取り出して家に電話を掛けている。

    いち早く通話を終えた淡が、黒のフィンガレスグローブを着けている咲を見やり、
    視線を移して咲の家のクローゼットを見てぽつりと呟いた。

    「サキ、普段着この黒スーツしかないの……?」

    「……?うん、そうだけど」

    144 = 137 :

    上着を着て、最後に腰まで伸びた髪を一つに結べば着替えは終了。
    あとは鞄の中から昼間書いた今日一日の報告書を持参すれば出発準備は完了だ。

    「……準備が出来ました。それでは参りましょう」

    部屋を出てエレベーターに乗り、1階ではなく2階で降りる。同行者である4人はしきりに不思議がったが、
    咲が迷いなく歩いて行ったので戸惑いつつという様子で後を着いて来た。

    咲はエレベーターを降りてすぐ、階段横にあるドアノブに手を掛ける。
    一見すると掃除用具入れのような薄汚れた扉を開けると、そこには二つ目の扉があって
    咲はその横に備え付けられたパネルに8ケタの暗証番号を打ちこんだ。

    ピッピッと扉が一瞬赤く光り、咲がドアノブをひねるとその奥には薄暗い階段が現れる。

    洋榎「うわっ! すごー!」

    ゆみ「……隠し扉、か?」

    「なんか忍者屋敷みたいやなぁ」

    145 = 137 :

    「ここは元々私のようなお嬢付きの専用マンションで、このような特殊な作りになっているんです」

    「外から見えないデッドスペースがいくつかあって、これもその一つです。どうぞ」

    咲は普段一人で通るときはつけない通路の灯りを、4人のために灯した。
    しばらく歩くと階段は平坦な廊下になり、もうしばらく歩くと今度は登り階段になる。

    階段の終わりに再び扉があり、咲はその横のパネルに暗証番号を打ち込んだ。
    ドアを開ければ、そこはもう辻垣内家の庭だ。

    「到着しました。どうぞ」

    ゆみ「納屋の扉のようにカモフラージュした場所に出るのだな……よく考えてある」

    洋榎「うおっ! 庭ひろっ!」


    智葉「―――おかえり、咲」

    4人の案内を終えた咲がドアを閉めていると、屋敷のほうから智葉の声がした。
    振り返ると縁側に和装姿の智葉がいたので、咲は腰を折り丁寧に挨拶をした。

    146 = 137 :

    「智葉様、ただいま参りました。部屋でお待ちになっていると思っていました」

    智葉「待っている時間が退屈だったからな。……ところで、お前達」

    智葉はいつにないいい笑顔をにこりと4人へ向けた。

    咲は踵を返して厨房のほうへと向かう。
    部下と食事準備の引き継ぎを行わなければならない。


    智葉「私でも入ったことのない咲の部屋に、入ったそうじゃないか?」


    感想を聞かせてもらおうか……。
    背後からドスの利いた智葉の声が聞こえたが、咲は振り返らなかった。


    ――――
    ――――――――
    ――――――――――――

    147 = 137 :

    今回はここまでです。

    148 :

    乙 嫉妬するガイトさん可愛い

    149 :

    乙乙

    150 :


    ガイトさんかわいいなぁ。続き楽しみ


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