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    元スレ寂海王「君を必ず宮守女子に連れて帰るッッッ」 豊音「えっ?」

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    351 :


    「これは……」

    (防御は可能……ですが……)



    加藤「は……反撃ができてない……」

    健夜「あのバランスのいい原村選手がッッ……」

    本部「宙空からの敵には反撃できねェ」

    加藤「え……えげつねェ??????……」

    352 = 351 :


    健夜「……このままだと、なすすべもなくやられてしまいますね」

    本部「ああ」

    本部「その通りだ」

    本部「“このままなら”ーーーーな」



    初美「ッ!」 ゾクッ

    初美「しゃっ!」 バキャァッ



    まこ「むっ、勝負をはやったんかいのう?」

    まこ「今の蹴りで和から遠ざかーー」



    バッコォォォン



    恒子「なんとォ!?」

    恒子「先程まで薄墨選手がいた宙空を通過して、何かが壁に激突したァァァーーーーッッッ!!!」

    加藤「あれは……仮面の破片か!?」

    本部「くく……そりゃそうだ」

    本部「タイマンでは為すすべがないと見せつけておいて、“このまま”なんてわけにゃいくめぇ」

    本部「何せこれはーーバトルロイヤルなんだからよォ」



    絹恵「外れてもーたか……」

    絹恵「キックの精度には自信あったんやけどな……」

    初美「なかなか……やりますねー……」

    初美「まぁ私ほどじゃないですけどねっ」


    353 :


    健夜「……このままだと、なすすべもなくやられてしまいますね」

    本部「ああ」

    本部「その通りだ」

    本部「“このままなら”ーーーーな」



    初美「ッ!」 ゾクッ

    初美「しゃっ!」 バキャァッ



    まこ「むっ、勝負をはやったんかいのう?」

    まこ「今の蹴りで和から遠ざかーー」



    バッコォォォン



    恒子「なんとォ!?」

    恒子「先程まで薄墨選手がいた宙空を通過して、何かが壁に激突したァァァーーーーッッッ!!!」

    加藤「あれは……仮面の破片か!?」

    本部「くく……そりゃそうだ」

    本部「タイマンでは為すすべがないと見せつけておいて、“このまま”なんてわけにゃいくめぇ」

    本部「何せこれはーーバトルロイヤルなんだからよォ」



    絹恵「外れてもーたか……」

    絹恵「キックの精度には自信あったんやけどな……」

    初美「なかなか……やりますねー……」

    初美「まぁ私ほどじゃないですけどねっ」


    354 :


    絹恵(勝ち抜けは上位2校)

    絹恵(副将戦を永水に勝たれた場合のみ、大将戦をおとしても希望が繋がる)

    絹恵(純粋に安全策で勝ち上がりを狙うなら、最終的には永水とタイマンになる形がベストッ)

    絹恵(……なんやろうけど……)

    絹恵(勝った選手で残り一枠を賭けて戦う場合、うちの代表はお姉ちゃんや)

    絹恵(清澄や宮守は特殊な技を持っとってほぼ無傷なのに、お姉ちゃんだけかなり怪我を負っとる)

    絹恵(戦略的にも、うちだけはその策を取るべきやない)

    絹恵(なによりーーお姉ちゃんに、これ以上傷つけさせたないッ!)

    絹恵(お姉ちゃんがあぁまでしてもぎ取った勝利は無駄にしたない)

    絹恵(負けたらええなんて思わん)

    絹恵(お姉ちゃんの試合数を減らすためにも、私が勝つッ!)

    絹恵(それが、今の私に出来ることや)

    絹恵(そのためにもーーまずはタイマンで一番厄介な永水を潰すッ!)

    355 :


    (やっぱり永水が一番ヤバいッ!)

    (確かに清澄の動じなさや姫松の一撃の破壊力は脅威)

    (でも、何も出来ぬまま負けることはない)

    (でも永水だけはッ)

    (空中の連撃を受け顔を上げられない可能性すらあるッ!)

    (やはり沈めるべきは永水ッ!)

    (後ろにトヨネがいるんだから無理することはないのかもしれないけど……)

    (胡桃があれだけ気張ってたのに、部長の私が逃げるワケにはいかないッ!)

    356 :


    恭子「これはバトルロイヤル……」

    恭子「“紛れ”が起こりやすいし、問われるのは戦闘力より立ち回りの技術ッ!」

    恭子「原村を助け、永水潰しに行くのがどうでるか……」

    洋榎「そのへんは大人数バトルゲーと同じやな」

    洋榎「駆け引きや盤外での敵の有無、立ち回り次第で大物食いも出来る……」

    洋榎「まぁ、ゲームとちごうて、ライフを削りきっても最後の一人になる前に復帰することもあるんやけどな」

    恭子「だからこそ、駆け引きが難しい……」

    恭子「薄墨とのタイマンを避けるため最初に落とした結果、他の二人に手こずって最終的に蘇った薄墨とタイマンなんてこともありうる……」

    由子「だからって倒れた相手がなかなか起きぬよう追い打ちの様に殴る蹴るが出来るかというと……」

    「確かに、そー考えるとなかなかに厳しいですね……」

    恭子「清澄も宮守も、何故か副将には結構な手練を送ってきとるしな」

    357 :


    恭子「そしてーー」

    恭子「バトルロイヤルだからこその立ち回りというものもある……」



    恒子「睨み合いィィィーーーーーッ!!」

    恒子「どうした、怖気づいたのかァァァーーーーッッッ!?!?」



    洋榎「ガン待ち……」

    洋榎「得意エリアに陣取って迎撃する気の薄墨は勿論、他の連中も迂闊に動けん」

    洋榎「もし薄墨潰しが共通認識の場合、薄墨とのタイマンを避けるためにも、薄墨の永久空中コンボ決まったら止めに入らなあかん」

    洋榎「そのためには、他の連中と潰し合っとる余裕もない」

    洋榎「かといって、薄墨に果敢に攻めるのもなかなか厳しい」

    恭子「薄墨から落とした場合、残りの三人から一抜けが出るわけですからね」

    恭子「薄墨を引き受けて一人ボロボロになるのは避けたいところ……」

    洋榎「そのあたりもゲームと同じやな」

    洋榎「PSオールスターとかバウンサーとかでも、上手いやつ倒せても、そのために自分のライフなくなったらしゃーなしやろ」

    洋榎「如何に他の奴に厄介なのを押し付けるかが鍵や」

    「なんでそんなわかりにくいゲームを例えに……」

    恭子「スマブラとかゴールデンアイとかあるでしょうに」

    洋榎「いやうち若いからやったことないねん64」

    由子「Wiiでもバリバリ出てるのよー」

    洋榎「ほら、うちの家系は任天堂派やないから……」

    恭子「そういやセガとか好きでしたね」

    由子「それどころかこの前遊びに行ったらネオジオが現役稼働してたのよー……」

    「そういや私も絹ちゃんにサイバーボッツとかウォーザードとかをゴリゴリ推された記憶が……」

    郁乃「愛宕家ってマイナーゲー博物館かなにか?」

    358 = 357 :


    (清澄はもう頼りにならない)

    (アイツはアイツでマイペースにテリトリーおかす奴を迎撃する構えをとっている)

    (下手したら薄墨のコンボの妨害や鬼門からの追い出しにも手を貸さない……)

    (姫松と組むしかないけど……)

    (私の特性的に、自分から突っ込むのはあまりに愚策)

    (破壊力のある姫松を防塞で援護が一番)

    (ただ……)

    (この能力を隠して、どうそれを打診する!?)

    絹恵「……」

    絹恵(まぁ……宮守は突っ込まんやろな……)

    絹恵(末原先輩を信じるなら、宮守は見るだけで相手の得意動作を封じれる)

    絹恵(後方支援を任せるのがベストやろな……)

    絹恵(まぁ、ここまで結構末原先輩のアドバイス外れとるし、宮守に梯子外されたら終わりやけど……)

    絹恵(信じたるッ!)

    絹恵(どの道一人じゃ力足りんのや、足りない分は信じる気持ちで補うッ!)

    絹恵(少なくとも、お姉ちゃんならそうするッ!)

    絹恵(観客も味方につけて、カッコつけながら、薄い勝ち筋を自分のモノにするはずやッ!)

    359 = 357 :


    加藤「動いたッッッ」

    恒子「動きを見せたのは、姫松高校愛宕選手だァァァーーーーッッッ!!!」

    恒子「全速力で薄墨選手に駆けていくゥゥゥーーーーッ!!」



    初美「残念ながら……」 フワァ

    初美「私の方が1手早いですよー」



    恒子「う、浮いたァァァーーーーッッッ!!!」

    恒子「ノーモーションだけあって、薄墨選手が浮き上がる方が早ァァァーーーーいッッッ」



    絹恵(信じるんや……) ダダ

    絹恵(宮守を、そして私自身の脚力をッ!) ダッ



    加藤「と、跳んだッ!」

    健夜「なかなか高い……ですが、薄墨選手の高さには届かなーー」

    本部「いや……」

    本部「あれは“飛び蹴り”じゃあねェ……」



    (落ちろッ!) サイッ

    初美「!?」

    初美(なんッ……バランスが……!?)

    絹恵「はァァァーーーーッッッ!!!」 ギュルッ

    初美「ぐぎッ……」 メキョッ



    恒子「どッ……」

    恒子「胴回しィィィーーーーーッ!!」

    本部「足の長さを綺麗に活かしたな……」

    健夜「薄墨選手、小柄なのが災いしましたね……モロにボディに受けてしまいました」

    360 :

    サイッでワロタ

    361 :


    初美「ぎ……ッ!」



    「立て直したッ!」

    洋榎「絹の蹴りを受けて意識あるだけ大したもんやで」



    初美「……ッけないですよーー!!」 ガッ




    優希「じぇ!?」

    「壁まで吹き飛ばされたのに、宙空て態勢を整え、逆に壁を蹴ったッ!」

    「三角飛び……とはまた呼び方が違うかしら」

    まこ「しかし……大胆じゃのう」

    まこ「ああまで派手に跳んでいくと、破壊力は増すが……」

    「鬼門は盗られる、か……」

    「それでも、姫松相手なら相対的に鬼門位置」

    「それに和は鬼門に割って入ることをしないでしょうからね」

    「姫松を撃破してから、宮守と鬼門争奪でもする気かしら」

    「……巫女さん達は、連勝しない限り、2位の座を賭けた試合に出ざるを獲ませんもんね」

    まこ「出来れば傷ついた姫松にはそこまで残っとってもらいたい……」

    「万が一通過確定チームが出来るなら、姫松意外とでも思ってるんでしょう」

    「いやーー」

    「最悪鬼門を気にせぬ和を潰して、最悪負けるなら恵まれた体格の厄介そうな大将が控えた宮守に、とまで思ってるのかも」

    優希「ナメられてるじぇ」

    「ええ」

    「和、教えてやりなさい」

    「私達は、そんな理屈で甘く見ていい相手じゃないってことを!」

    優希「……どちらかというと、のどちゃんも理詰めで将来見据える巫女のおねーさん達みたいなスタイルだじぇ」 ヒソヒソ

    「そーいう風にカッコつけるなら部長本人の試合の時だったよね」 ヒソヒソ

    「バッチリ聞こえてるわよそこ」

    362 = 361 :


    (ーーなんてこと、思ってるのかもしれないわねぇ)

    (でも、そうじゃない)



    健夜「なんとオォォーーーーッ!!」

    健夜「ここにきて薄墨選手、まさかのフライングクロスチョーップ!!」

    健夜「姫松高校の愛宕絹恵選手を警戒してのことでしょうか」

    本部「足を当てるため進行の向きを無理に変えるとどうしても減速はする……」

    本部「速度を重視し、立ち上がらせぬよう腕から突っ込んだな」

    恒子「そして衝突の反動でそのまま空中で大勢を変えたァァァーーーーッッッ!!!」

    本部「一度の着地も挟まぬとは……あくまで空中殺法に拘るか……ッッ!」



    (ただ、あの娘は負けず嫌いなだけ……)

    (そして、己の空中殺法に絶対の自信を持っているだけ!)

    (だこらこそ拘るし……同じ足技の娘を真っ向から潰そうとする)

    (それは愚直なだけなのかもしれないけど……)

    (それでも、だからこそあの娘は強いッッッ)

    363 :


    恭子「さすがに手強いですね、永水の薄墨……」

    恭子「宮守がなんかしたんか、動きにぶったはずやのに……」

    洋榎「またそれされるの警戒してのフライングクロスチョップなのかもなぁ」

    由子「でも、ちょっと不味いのよー」

    由子「絹ちゃんはまだ転倒」

    由子「宮守が動きを妨害してくれても、反撃は難しいのよー」

    「た、確かに、向こうからしたら無防備な背中にとりあえず力を加えて立つのを妨害すれば五分五分……」

    「自分から宙空の有利状況で仕切り直せる」

    由子「清澄はマイペースに構えたまま動かないし、宮守が割って入ってくれるかだけど……」

    恭子「入るとしても、そこそこダメージ受けてからやろな……」

    洋榎「いやー、それは絹をナメすぎなんとちゃうかなぁ」 ニヤ

    「えっ!?」

    洋榎「確かに、バランスは崩され無理な態勢や」

    洋榎「せやけどなーー」



    (姫松にもダメージは与えたいけど、一撃で決めさせるわけにはいかないッ) サイッ

    初美「くっ……」

    初美(例え一撃必殺を防がれても、地道に蹴ってまた跳んでやりますよー……!) ギュァッ

    バシィッ!!



    洋榎「キーパーっちゅーのは、いっぺん飛びついてすっ転んだみたいになってもーー」

    洋榎「直後のシュートを防ぎに飛びかかれるんやで」

    洋榎「ただでさえ方角縛りがあるっちゅーのに、フライングクロスチョップのおかげで位置は完璧に分かっとったんや」

    洋榎「残念やったな薄墨」

    洋榎「絹を殺るなら、フライングクロスチョップに逃げず、あそこでぶち込むべきだったんや」



    恒子「パッ……」

    恒子「パンチングゥゥゥーーーーッ!!」

    恒子「愛宕選手、パンチングで薄墨選手の足を払って軌道をそらしたァァァーーーーッッッ!!!」

    364 :

    続きをっっっ!

    365 :


    初美「ぐっ……!」

    初美(なんとか立て直――)

    (まだ跳ぶ気か!?)

    (ボロボロになるぞ!) サイッ



    洋榎「アイツらはわかっとらんのー」 ヘラヘラ

    恭子「はあ……」

    洋榎「確かに絹の本領は蹴り技にある」

    洋榎「この大会出るってわかって、キックボクシングもセーラの奴に軽く習った」

    洋榎「せやけど――あいつに格闘スタイルを求めるなら、それは『サッカー』や」

    洋榎「格闘技の基準で考えとると怪我するで」 ニィ

    366 = 365 :


    初美「ぐ……」

    初美(やっぱり宮守の人がおかしいっ……)

    初美(うまく攻撃に移れないッ……)

    初美(でも! 空中殺法は無敵ッ!)

    初美(中空への確固たる攻撃方法なんてないですよー!)

    初美(多少のダメージ蓄積くらいなんてことはっ……!)



    (くそっ、面倒だな……)

    (薄墨にある程度ダメージを蓄積させても、こっちにも疲労がたまる……)

    (どのタイミングで塞ぐのやめて姫松にもダメージをいかせるかが重要ッ)



    洋榎「――なんてこと、考えとるんやろうなあ」

    367 = 365 :


    絹恵(さっきのパンチングで、ヤツの方向は分かった)

    絹恵(ウチは『キーパー』なんや)

    絹恵(ターゲットの『位置』さえ分かれば――――)

    絹恵「問題無くッ打ち落とせるッ!!」

    ギャオッ

    恒子「さ……」

    恒子「サマーソルトキーーーーーーック!!」

    恒子「しゃがみ込んで防戦一方に思われた愛宕選手、まさかの待ちガーーーーーーイル!!」

    健夜「……と、いうよりも……」

    健夜「愛宕選手の特性を考えると、アレはむしろオーバーヘッドキックでしょうか」

    加藤「……まさかああも見事に宙空の相手に反応するとは……」

    本部「サッカーは宙空を飛び交うボールを足技とトラップでやりとりすることが多いスポーツ」

    本部「宙空対策は万全、ということだろうよ」

    368 :

    サッカーw
    ジャス学のロベルト三浦を思い出したわw

    369 :

    解説が入ると負けフラグが立ったように思えてしまう
    地球拳のように

    370 :


    この試合を見学していた岩館揺杏(17)はこう語る。

    揺杏「いや、飛んだんだってマジ!」

    揺杏「……ああ、いや、そうじゃなくて」

    揺杏「確かに、サマソであのおっぱいちゃんも跳び上がってたけど……」

    揺杏「とんだのはチミっ子の方!」

    揺杏「……いやいや空中殺法の話でなく!」

    揺杏「ジャンプでなく、むしろフライ的な意味で」

    371 :

    来たか

    372 = 370 :


    揺杏「バランスを崩した体にサマーソルト……」

    揺杏「まぁ、まさかあんなデカイのを喰らうたァ思ってなかったんだろうねぇ」

    揺杏「飛んだのさ」

    揺杏「顎に一撃、いいのを貰って」

    揺杏「軽すぎたのが災いしたのか、あのおっぱいちゃんの蹴りがしなやかすぎたのか」

    揺杏「グルグル立て回転しながら天井まで吹き飛んでったよ」

    揺杏「ハイパーヨーヨーにあったよあんな技」

    揺杏「風車とか、セルなんとかってブラジリアン柔術のおっさんみたいに回転しやがんの」

    揺杏「それで思ったね」

    揺杏「私みたいなただのはねっかえりじゃ、一生あそこにゃ立てねえなってさ」

    373 = 370 :


    「ばっ……」

    (馬鹿なッ!!)

    (確かに、小パンを蓄積させ潰されちゃえ空のチャンピオンとか思ってたッ)

    (でもこれは想定外ッ!)

    (なんなのあの威力ッ!)

    (身体能力は頭に入ってるし、キックを活かした格闘技もあらかた寂先生に教わった……)

    (でもあんなのはデータにないッ!)

    (あんなことができると分かってたら塞いだりはしなかったッッ)

    初美「……」 シロメグルン

    どさぁ……

    (天井に当たり跳ね返る威力の蹴りが顎にッッ)

    (しかもあの高さからの落下ッ!)

    (再復帰は難しいほどの致命的破壊力ッ!)

    (このままならッ……)

    (本命のオカルト集団である永水を差し置いてッ!)

    (出るッ……)

    (残り三校から……)

    (2勝先取し勝ち抜け確定するとこがッッッ)

    374 :


    (姫松は“ヤバ”い……)

    (いやーー)

    (何の因果か、副将戦の連中は全員がヤバイッ!)

    (本来これだけヤバイ連中が集まれば、同盟なりの戦略性が発生するのに、原村のせいでそれもないッ!)

    (あるとすれば、私と姫松が手を結ぶケースのみッ)

    (永水にしたようにッッ!)

    絹恵「…………ふぅ」

    絹恵「悪く……思わんといて下さい」 ザッ

    「ハン」

    「ナメられたもんだわ」

    「先に私とタイマン、ね……」 スッ

    絹恵「……なめとるわけやないですよ」

    絹恵「ただこれがーー少ない勝ち筋で一番現実味があったってだけです」 ザッ

    375 :


    絹恵(清澄は確かに厄介)

    絹恵(せやけど、型破りなことはしてこーへん)

    絹恵(ある意味、放置しておいて最も安心できる奴や)

    絹恵(直接関わっとらんのに薄墨を妨害しとったこの人こそ警戒せなアカンッ!)

    絹恵(仮初のタッグを組むことすらリスキーや)

    「…………」 ジリ……

    絹恵(この人、そない動いてないはずなのにちぃとばかりしんどそうや)

    絹恵(多分、薄墨を妨害しとったテクニックもリスクゼロで無限に使えるわけやない)

    絹恵(ちょいバテつつある今やるのが上策ッ!)

    絹恵(短絡的に考えるなら対清澄で共同戦線はってよりスタミナつかわせるべきかもしれへんけど……)

    絹恵(タイマンになったら、勝利後立てなくなるくらいまでスタミナを使われる恐れがある)

    絹恵(トータルで見たら、清澄戦が控えてるからある程度のスタミナを温存して戦わなアカンこのタイミングの方が使えるスタミナ少ないはずや!)

    376 :

    お、再開してる

    377 :

    おお再開してる

    378 :


    (まぁ、でもこれは……)

    (考え方によっては好都合)

    (予想を遥かに超えてくるあの蹴りは、一発足りとも貰えない……)

    (裏切りで一撃入れられるだけで不味い)

    (邪魔が入らず真っ向からいけるなら、これほど助かるものはないわ)

    (いろいろ不確定要素があるけれど、オカルトじみてる破壊力はなんとか塞げる……)

    (逆に清澄の原村なんかは自分の世界みたいなのに篭って愚直なまでに基本に忠実なせいで、恐らく防塞は効かない)

    (でも基本に忠実だから、知識と経験で対処はできる)

    (私にはみっちり鍛えられた自負があるッ!)

    (真っ向勝負のタイマンならば遅れは取らないッ!)

    379 = 378 :


    (それに……多分防塞が清澄には使えないことはバレてない)

    (清澄を倒せるだけの体力は残さないとだけど……)

    (防塞自体の使用回数は気にしなくても使えるッ!)

    (その認識の差をつきたいッ)

    (最悪、動けなくなっても姫松は塞ぐッ!)

    (サドンデスに出るメンバーが唯一大怪我追ってくれてる姫松だけは勝たせちゃいけないッ!)






    本部「……動くッッッ」

    380 :

    待ってたよ!

    381 = 378 :


    「はぁぁぁぁぁぉぁッ」 ガガガ

    絹恵「うッわ……!」



    恒子「お????っ!」

    恒子「流れるような連打連打連打ァァァーーーーッッッ!!!」

    本部「例え不利な体勢でも、キーパーとしての本能が獲物を捉えた……」

    本部「しかし、それはあくまで追撃を受けていないシチュエーションでのみッ」

    本部「手数で何度も体を狙われるシチュエーション、サッカーにはない」

    本部「流れるような連撃こそ、サッカー選手に対する最高の防御ッッッ」

    加藤「な・る・ほ・どォ?????……」

    加藤「しかし……」

    加藤「なんだ、あの打撃スタイルは?」

    382 = 378 :


    絹恵(くっ、なんやこいつ!)

    絹恵(薄墨ほど手が出んわけやないのにッ!)

    絹恵(一撃もそない重いわけやないのに、まるでこっちの攻撃が当たる気がせえへんッ!)

    絹恵(大振りの蹴りはヤバイッッッ)

    絹恵(せやけどキーパー特有のキャッチングすらできへんなんてッッ!)






    「あらあら……」

    「やりますね、彼女」

    「はっちゃんや、あの姫松の娘は、言うならば圧倒的な『邪道』の持ち主」

    「初見の相手を翻弄し、奇襲めいた技を打てる……」

    「対して原村和は『王道』の中の『王道』……」 ポリポリ

    「ええ……」

    「一つの『王道』を極めて、強力な武器にしてるわ」

    「でも、あの宮守のモノクルさんはーー」

    「ええ」

    「そのどちらでもない」

    「……かといって、私や姫さまともまた違う」

    「そうね」

    「『王道』と『邪道』をブレンドしたスナイパー空手とは違う」

    「オカルトも持っているようだけど、今の格闘スタイルに組み込まれているわけではないし、小蒔ちゃんのようにオカルトに支えられているわけではない……」

    「言うならば、『王道』に『王道』を混ぜ合わせたハイブリッドッッ!」

    「彼女は、複数の『王道』を会得しているッッッ!!!」

    383 = 378 :


    寂海王「彼女には……」

    胡桃「?」

    寂海王「しなやかな腰があった」

    寂海王「しかしそれだけだ」

    寂海王「それだけでは、いきなり強き格闘家にはなれない」

    胡桃「……」

    寂海王「だがしかしーー」

    寂海王「彼女には、真面目さがあった」

    寂海王「そして何より、彼女には広い視野と観察眼があった」

    エイスリン「サエ メヂカラ!」

    白望「それ違くない……?」

    寂海王「よく動く胡桃君と動かないシロ君を同時に面倒見ていたからか……」

    寂海王「彼女は常に広い視野を持つ」

    胡桃「キーパー特有の視野の広さに勝てるくらい……?」

    寂海王「動体視力も関わってくるし、死角からの素早い動きへの対応は劣るだろう」

    寂海王「しかし、逆に『何もない状況』でちらりと視線を送り、一瞬で様々なこと思慮できるのは塞君だ」

    寂海王「例えばキーパーの彼女は『原村和が仕掛けてこない』のをちらりと確認するのが得意だし、攻撃に転じられすかさず対応できるのは彼女」

    寂海王「しかし塞君は、ちらりと観察し原村和の『様子』をしっかり窺えるッ!」

    寂海王「常に気を配り、人の心を推察してきたら彼女ならではの観察眼だッ!」

    胡桃「結構気ぃ使いだもんね、塞……」

    白望「その観察眼と心情察知の力を買われてモノクル託されたんだっけ……」

    寂海王「そしてその観察眼に真面目さが加わり、彼女は自主的に稽古を始めた」

    寂海王「私が豊音君に様々な武道を教えていたのを見て」

    寂海王「そのひたむきさにやられたからこそ、彼女には私の技術を叩き込んだッ!」

    寂海王「豊音君は生来のスペックとオカルトがあり、オンリーワンの闘士に育った……」

    寂海王「故にッ!」

    寂海王「ある意味では塞君こそがッ!」

    寂海王「誰よりもこの寂海王の技術を受け継ぐ正統後継者と言えようッッッ!!!」

    384 :

    ひゅ~~

    385 = 378 :


    刃牙「なるほどね……」

    加藤「ばッ……」

    本部「刃牙ッッッ」

    刃牙「実況席でそんな叫んじゃダメだって、邪魔になるだろ」

    加藤「それより……『なるほど』ってなんだよッ」

    刃牙「なに……」

    刃牙「俺は知ってるんですよ」

    加藤「知ってるッ……?」

    刃牙「あの娘の師匠」

    刃牙「噂を聞いてわざわざ初戦を見に来て正解だったかな」

    本部「誰なんだ、そいつは」

    恒子「ていうかそもそもこの人が誰」

    健夜「最後にトーナメントの優勝チームが戦うチャンピオンだよ!?」

    健夜「そのくらい覚えておこうよ!」

    恒子「さすが小鍛冶プロ!」

    健夜「このくらい普通だよ!?」

    恒子「若い子でも男の子には詳しい」

    健夜「嫌な言い方しないで!?」

    386 = 378 :


    刃牙「寂さん……」

    刃牙「言葉の通り、きちんと若者を指導していて、やはり凄い人だ……」

    本部「その寂ってェのが、奴の師匠」

    刃牙「ええ」

    刃牙「彼の名は、寂海王」

    本部「ッッ!!」

    加藤「か、海王ってことは……」

    本部「あの烈海王と並ぶ猛者、ということか……」

    刃牙「ええ……」

    刃牙「直接対決では、烈さんに敗れてこそいますが……」

    刃牙「その強さは烈さんの折り紙つき……」

    刃牙「こと指導というフィールドならば、烈さんすら上回っているかもしれない……」

    加藤「なるほどやべえ集団なわけだ」

    加藤「ま……俺なら負ける気がしないがな」

    387 :

    さすがにちょっと鍛えたぐらいの女子高生に負けたら恥だろww

    388 = 378 :


    刃牙「……」

    加藤「ンだよその目は」

    加藤「まさか『アンタじゃ無理だ』とか言うんじゃあねェだろうな」

    刃牙「……まさか」

    刃牙「アンタなら、勝てるだろうよ」

    刃牙「相手はちょっと強いだけの女学生だしな」

    刃牙「……」

    刃牙(ただし……) チラ

    豊音「いっけー、さえーー!」

    「…………」

    刃牙(あの『ヤバイ』感じの二人は除くが、ね)

    389 = 378 :


    加藤「それで、結局あのスタイルは何なんだ?」

    加藤「そのナントカって海王のスタイルなんだろ?」

    刃牙「……空拳道」

    刃牙「そこに中国拳法をミックスしたようなのが、寂さんのスタイル」

    本部「しかし、ありゃあ……」

    刃牙「ええ……」

    刃牙「それだけじゃあない……」

    刃牙「寂さんも……あの時急成長していたんだ」

    加藤「?」

    刃牙「様々な武道を使う海王達を間近で見て」

    刃牙「貪欲に数多の武道を取り入れて若者達の未来に貢献しようとするその姿勢が花開いた……」

    刃牙「彼女には、寂さんが齧ったあらゆる格闘スタイルが詰まっているッ」

    刃牙「それも寂さんが噛み砕き、うまく“繋いだ”多種格闘スタイル連撃を会得している」

    刃牙「対処は少しばかり骨だ」

    加藤「それでも負ける気はしないんだろう?」

    刃牙「まァね」

    刃牙「だが……あの路線、極められたら宇宙最強かもしれない」

    加藤「何ィ?」

    刃牙「あらゆる海王の力を取り込んで昇華する独自の拳法ーー」

    刃牙「言うならば、彼女の格闘スタイルは『海王拳』ってとこだ」

    本部「トリケラトプス拳みたいな形意拳に行き着けるかもしれないな」

    加藤「海王の形意拳ってか?」

    加藤「ケッ、海王だろうがなんだろうが、最強は空手だってこと、いつか教え込んでやるぜッ」

    390 :


    (一撃)

    (一撃も貰っちゃいけないのは当然)

    (でもこっちからの一撃も、クリーンヒットさせなきゃいけない)

    (これがキーパー特有の反射神経!?)

    (勘弁してよね)

    (どれもこれも紙一重で塞がれてクリーンヒットしていない……)

    (しかも小刻みの連撃に混ぜた強めの一撃は全て完璧にいなされているッ!)

    (勘みたいなのも優れてやがるッッ)

    絹恵(あかん、このままだとジリ貧やッ……!)

    (王道空手の原村相手にバテていたくないッ)

    (どうする!? さらにパターンを変えてく!?)

    (いや無理!)

    (これ以上高度な海王拳を使用したら体がついてこれないッ!)

    (私の体や頭の回転じゃこれが限界ッ)

    (更なる海王拳を使うのに夢中で頭の回転が間に合わず防塞失敗一撃もらいましたっていうのが最悪のケースッッッ)

    (今の海王拳でなんとか対応しなくちゃいけないッッッ!!!)

    391 :

    生腰のエロい苦労人、臼沢塞

    392 :


    「ふっ! ハァッ!」

    (仕方がないから、リスクを犯すッ)

    「キエェーエ!」

    絹恵「!?」

    ズガッ



    胡桃「あの技は……」

    寂海王「翻身双肘」

    寂海王「彼女オリジナルの技ーー」

    寂海王「海王拳の数を増やせないが、今のままではジリ貧」

    寂海王「そう判断した際に、一旦流れを切り海王拳を解除しながらも主導権を渡さない」

    寂海王「そのために編み出した、背を向け両肘から突進する技……」



    絹恵「ぐっ……」

    絹恵(バランスを崩されたッ!)

    絹恵(せやけど、普通の格闘スタイルを予測して不意を打たれた訳とは違う)

    絹恵(バランスを崩されてても、私ならーー!!)



    寂海王「背中を向ける意味はある」

    寂海王「どこより頑丈で、護身の真髄でもある背中」

    寂海王「更に彼女なら、背中越しでーー」




    (威力は下がるが、喰らえっ) サイッ

    絹恵「ッ!」

    絹恵(なんや、体のバランスがーー)




    寂海王「防塞により下がった威力ならば」

    寂海王「背中という最強の防御部位でなら」

    寂海王「あの蹴りですら、受け止めることが可能だッッッ!!」

    394 :

    もう来ないのかな?

    395 :


    「はぁぁぁぁッ!」

    (ここッ!)

    (海王拳の数を増やすのが厳しいのなら、この隙に『使う海王拳』を変えるッッ)



    ガキャァァァッ



    胡桃「と、止めた!?」

    胡桃「あの狂った威力の足技をッ!?」

    寂海王「なるほど……護身の最終形態だ……」

    エイスリン「エ……?」

    白望「切り替えたんだ……何だか体が硬い海王に……」

    胡桃「そうか!」

    胡桃「背中なのに加え、劣化版とはいえ頑丈海王の流木くらいならノーダメージ拳を使えば!」

    白望「うん……ダメージを限りなくゼロにすることができる……」

    寂海王「……楊海王の金剛拳な」

    396 :

    来たか…!
    そういや今ふと思ったけど背中で攻撃受けるってかなり危険だよな
    もし攻撃が背骨に当たったら致命傷になりかねんぞw

    397 :


    (金剛拳は長いこと使えるほど極めちゃいない)

    (今この一回こっきり!)

    「キャオラッ!!」 ギュアッ



    恒子「鉄山こーーーーーう!!」

    恒子「これは決まったかァ!?」

    本部「いや……」

    健夜「あれは恐らく距離を取るため……」



    (相手は格闘技未経験、予想通り受け身自体は下手くそ!)

    (そしてあの位置なら、顔面に叩き込む方が速いッ!!) ダッ



    恒子「なんとォォォ!?」

    恒子「今度は臼沢選手が跳んだァァァァーーーーーーッッ!!!!」

    健夜「薄墨選手のソレと違った“横”への跳躍……」

    本部「回転しながら突っ込む技、か……」

    398 :

    この塞さん長髪でグラサンかけてそう

    399 = 397 :


    塞には勝算があった。

    気配りにより養われた類まれな観察眼ーーそれで、キッチリと見極めていた。



    本部「制空権に入る……ッ!」



    闇雲にボールに飛び付くだけではキーパーなど出来ない。

    反射反応だけでボールに飛び付くのは、絹恵の『制空権』に入った時のみ。

    事実、制空権の外を飛んでいる時の薄墨初美は蹴り堕とされなかった。

    不完全な形での着地のせいで、絹恵が反応できるエリアは狭まった。

    対して塞の制空権は広い。

    この飛び蹴りは鍛えられた太腿と尻の筋肉によりある程度の速度と距離を飛ぶことが出来る。

    途中墜落の可能性はなく、また『防塞』が有効な姿勢も維持。

    こちらの制空権に入り次第防塞をかけ、確実に敵の顔面を打つッ!

    例え一撃で昏倒まではさせれずとも、視界を眩ませ、ふらつかせることに意味はある。

    ここで畳み掛け、姫松とのケリをつけるーーーー



    恒子「なッ…………」



    制空権が、交差した。

    400 :

    気配りによって養われたwww


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