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元スレ闇条「お前…ムカつくな」
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初春飾利は、支部にはパトロールと偽った報告をし、友人とともにここセブンスミストへ買い物に来ていた。
彼女は人一倍正義感が強く生真面目な性格の持ち主だが、同時に年頃の女の子でもある。たまには血なまぐさい事件から開放されて友人と休日を満喫したい。
結局、彼女は親友である佐天涙子に押し切られる形で買い物来てしまっていた。
ふと、初春は隣を歩く佐天を見る。
彼女、佐天涙子は初春とは対照的な人物だといえる。
天真爛漫が服を着たような佐天は、かなり明るい性格で人見知りをしない。ゆえに、そんな彼女がクラスの中心人物であることに疑問を抱く人間はいないだろう。
佐天涙子は不思議と他人との距離を感じさせない少女だ。初春も、そんな明るい彼女に惹かれていつの間にか友達になっていた。
茶目っ気たっぷりである彼女はノリもよく、いたずら好きなところもある。
ついつい行き過ぎてしまう彼女の暴走を止めるのが、自然と初春の立ち位置になっていた。
初春「佐天さん」
佐天「なーに、なんかいいの見つけた?」
初春「いえ…その、今日は誘ってくれてありがとうございました」
初春「このところ事件のことばかりで、でも今日ここに来てなんかスッキリしました。また頑張れそうです!」
突然の初春の言葉に、佐天は少しだけ目を丸くして笑顔を作る。
対極と言っていい二人だからこそ、こんなに仲良くなれたのかもしれない。
今回は彼女の良い意味でいい加減な性格に救われたな、と初春飾利は考えた。
佐天「なかなか恥ずかしいことを言ってくれるね君は」
初春「え?」
佐天「とりゃーっっ!」ガバッ
突如、初春の股の間を初夏の健やかな風が――――
初春「あわわわっちょっと佐天さん!///」
なんの前触れもなく、初春飾利のスカートが大きくめくられた。
二人がいるのは女性下着売り場であったため男性に見られた心配はないが、初春の顔はそんなことは関係ないというように一瞬で羞恥に染まる。
対する佐天は、いたずらに成功した小学生のような顔でケラケラと痛快そうに笑っていた。
初春(油断したぁ~っ!!)
毎度のことながら、佐天涙子は確実に初春の隙をついてくる。
これで何度目になるかわからない、数えるのも億劫な佐天からの攻撃に、それでも初春は慣れきれなかった。
恨みがましく佐天を睨む初春の表情も、彼女にとっては嬉しい反応でしかないことを初春は知らない。
佐天「初春がらしくないこと言うから…やっといつもの初春に戻ったね」
初春「もう知りませんっ!」
佐天「あはは怒っちゃったかぁ。ごめんってば初春~」
宥めるように追ってきた佐天に、あそこのパフェで勘弁してあげますと言いかけたところで、初春の携帯が鳴った。
初春「あ…白井さんだ…」
携帯の表示をみた初春がバツの悪そうな声でつぶやく。
佐天「あはは…パトロール中って言ってたもんね。とりあえず出なよ」
初春「…はい」
初春「はいもしもしー」
仕事をサボったことを咎められると一瞬身構えた初春だったが、白井の口から飛び出してきた言葉は全く別のものだった。
初春の表情が、風紀委員の初春へと移り変わる。
初春「ほんとうですかっ!」
白井『ええ、とにかくあなたはこちらへ合流を!』
初春「それより観測地点を!!」
白井『第七学区の洋服店、セブンスミストですの!』
初春「セブンス…ミスト』
その言葉の意味を確かめるように、初春は白井の言葉を繰り返す。
間違いない。そこは―――
白井『どうかしましたの!?初春』
初春「ちょうどいいです!わたしそこにいますから今すぐ避難誘導を開始します!」
白井『いけませんわ!よk―――』
急ぎ何かを伝えようとする白井の声が少女に届くことはなかった。
―――私がやらなきゃ。
自らの正義感を奮い立たせるように、初春飾利は一度だけ深い深呼吸をする。
これから自分のいる場所が爆破されるかもしれない恐怖に、心臓が暴れだすのがわかる。
―――大丈夫。私は冷静だ。
落ち着いて辺りを見渡すと、同じように買い物に来ていた女子学生が、男子学生が、子供が、親友の顔が見えた。
―――絶対に守らなきゃ。
佐天「初春…?」
どことなく不安そうな声で、親友が少女の名前を呼んだ。
見れば、よほど初春の声が響いていたのか、あちこちでこちらを気にする雰囲気が伺えた。
初春「落ち着いて聞いてください。このデパートに爆弾が仕掛けられた可能性があります」
佐天「えっ!?…それほんとなの?」
一瞬驚いた後、佐天は周囲に聞こえないように落とした声で聞き返した。
初春は黙って頷く。
初春「とにかく佐天さんは急いで避難してください!わたしは避難誘導を開始します!」
佐天「ちょっ初春!?」
キビキビとした動作で腕章を腕に回すと、初春飾利は駆け出した。
白井「初春!初春っ!?」
あからさまに慌てた白井に、固法美偉が心配そうな目を向けた。
固法「どうかしたの?初春さんになにか?」
白井「初春が…セブンスミストに」
固法「なんですって!?」
驚きを露わにした固法が、確かめるように再び机の上のモニタに目を移す。
固法「じゃあ今回の狙いって…」
悪い予感が的中だと告げるように、白井は短くええとだけ答えた。
太ももに巻いた金属矢の感触を確かめ、腕章の向きを直す。
白井「わたくしは現場に急行いたします!固法先輩は警備員に連絡を!」
わかったわ、という固法の返事が耳にとどいた時、白井の視界には満点の青空が広がっていた。
学園都市の上空に浮かぶ飛行船の、外れない気象予報(いや『予言』と言っていいかもしれない)によればこれからしばらく晴れが続くらしい。
少女の空間移動の能力が発現し、大能力者へとクラスチェンジしたばかりの頃、彼女はこの空を見るのが好きだった。
学園都市広しといえども、これだけの高度から空を見上げ、街を見下ろすことのできる人間がどれだけ居るだろう。
辛いことがあっても、空高く舞い上がれば、自然に空気と一体化し空に溶けてしまうような気分になることがきでた。
でも、ビルというビルをつたい、何もない空を階段のように駆け上がる少女の顔は一向に晴れない。
初春飾利は優秀な風紀委員だ。それは長らくパートナーを組んだこの少女が一番良くわかっている。
でも、だからこそ心配になる。
初春飾利はこの少女によく似て、強い信念と揺るぎない正義感を持っていた。
たとえどれだけ不利な状況でも、初春は間違ったことを許せない少女なのだ。そのせいで危険な目にあったことは数えきれない。
今回の初春の行動は間違っていない。逆の立場ったら自分もそうしているはずだと白井は思う。
でも、今回は―――。
今回の狙いは―――。
白井「あなたなんですのよ…初春!」
御坂「あれー、佐天さん?」
買い物に足を運んだセブンスミストの、その入口でごった返す人々の中に、御坂美琴は友人の影を見つけた。
行き場のない両手を前で握り締め、中の様子が気になってしかたがないようにキョロキョロと人の影からデパートを覗いていたのは、やはり彼女の知る佐天涙子だった。
佐天「あっ…御坂さん」
少女の声に気づいた佐天が小走りで近づいてくる。その顔が美琴にはやはりどこか不安そうに映った。
御坂「なんかあったの?なんか人だかりが出来てるみたいだけど…」
美琴の質問に、佐天は一瞬だけ顔を伏せると一秒でも惜しいというように切り出した。
佐天「例の事件の爆弾が中にっ!…初春は避難の誘導でまだ――」
まだ中にいる、というように佐天が後ろの建物を見上げる。
これから爆破されるかもしれないその建物は、そんな雰囲気を微塵も感じさせないほどにいつも通りに見えた。
予想外の彼女の言葉に、美琴は驚きカバンを落としそうになる。
野次馬の話し声の隙間に、店内から電気系統の故障を知らせるアナウンスが聞こえてきた。
ただの電気系統の故障に全員避難、さらに警備員が出入口を封鎖するという状況の異様さに周りの人々も気付き始めたようで、爆弾という言葉がちらほらとささやかれ始めた。
佐天「…初春」
御坂「―――待ってて」
友人を心配する佐天の声を聞いたら、美琴の口から自然と言葉が出ていた。
目を丸くし美琴に振り向く少女にウインクでこたえると、御坂美琴は駆け出した。今の彼女に警備員の咎める声は聞こえない。
『この際、ここでお誓い頂きますの。一つ、無闇矢鱈と戯れに事件に首を突っ込まない』
『二つ、万一事件に巻き込まれても単独での立ち回りはくれぐれも禁物。ジャッジメントの到着を待つ』
『三つ、スカートの下に短パンを履かない!!』
彼女との約束は破ることになるけれど、御坂美琴は止まらない。それが少女の人となりだからだ。
―――やっぱり、困っている人がいたら、わたしはわたしが戦わないのを納得出来ない。
御坂「それにしても三つ目は関係ないわよね…」
誰にも見えないデパートの中で少女は一瞬クスリと笑い、初春飾利を目指した。
初春「よし…全員避難完了」
全階の避難誘導を終えた初春が短い息を吐く。
それは、ここまで怪我人を出すことなく誘導を完了させられたことに安堵した溜息だった。
何気なくあたりを見渡せば、数分前とは打って変わったガランとした売り場が映る。
取り残されたデパートで、次は自分が避難する番だと移動を始めた途端、再び彼女の携帯が鳴った。
初春「白井さ――
少女の声をかき消すような白井の声。
白井『今すぐそこを離れなさい!!』
初春「……え?」
白井『過去の人的被害は風紀委員だけですの』
白井『犯人の真の狙いは…観測地点周辺にいる風紀委員』
白井『今回の標的は…あなたですのよ初春っ!!』
初春「…え」
どこか釈然としなかった、少女の心のなかに宿る違和感―――。
通り魔のような、無差別に他人を爆弾で攻撃するのが目的なら、もっと早く爆破させるはず。
しかし、全員の避難が終わる今になっても、爆発は起きていない…。
まだ残っているとすれば……避難誘導を行っているこの少女のような―――。
女の子「おねえちゃ~ん!」
考えに止まっていた少女の時間が再び動き出す。
声のした方は、5mほど先。
5歳ほど小さな女の子が両手いっぱいに大きなぬいぐるみを抱え、やっと見つけたといったような声で少女を呼び、走ってくる。
少女は、この連続虚空爆破事件を引き起こしている犯人がぬいぐるみに入れたアルミを爆破させることを知っていた。
白井『初春…!ちょっと初春…!』
少女は携帯を離し、ぬいぐるみを奪い取ってできるだけ遠くに放ると、空いた手を大きく広げて女の子を抱き止めた。
これが、触れたものを保温することしか出来ない少女の、精一杯の正義。
この子だけは必ず守るというように爆弾に背を向けると、女の子を包み込むようにして抱きしめた。
御坂「初春さん!」
突如、初春が信頼する一人の少女の声が飛び込んできた。
死さえ覚悟した初春は幻聴かと思ったが、御坂美琴はこんなのことを平気でやってのける少女だと想い出す。
そして同時に、彼女ならなんとかできるという希望も―――。
御坂「顔を伏せてて!今私が何とかするからっ!」
返事をし、言われたとおりに出来るだけ体を丸め、顔を伏せてきゅっと目を閉じた。
一、二、三、………。
無限のように感じられた一秒一秒も、十秒ほど立てばいつまで経っても訪れない爆発を不思議に思い始める。
御坂「爆弾が……消えた?」
静かすぎる空間に、美琴の声がよく響いた。
アク場さんが爆弾カッさらっていったのかと思ったけどちがかった…
おう
かみじょうつぁぁぁぁん
おう
かみじょうつぁぁぁぁん
フレンダが犯人ネタあっても良かったような
爆弾のプロなんだし
爆弾のプロなんだし
介旅「なぜだ…おかしい…なんで爆発しないぃぃっ」
ざわつく野次馬の中を抜け、幾度か転びそうになりながらヘッドホンの少年がセブンスミストを背に歩き出していた。
驚愕に目を見開き、冷や汗を流すその足取りは重い。
が、一連の事件の犯人である彼が風紀委員と警備員が目を光らせるこの場に留まり続けるわけにはいかなかった。
介旅(演算に狂いはなかったはずだ。今回の爆発は今までで最高の規模になるはずだったのに…)
ふらつきながらも人目につかない路地裏に辿り着いたところで、介旅初矢は青ざめた表情でへなへなと腰を折った。
介旅(今日こそ風紀委員を葬ってやれると思ったのに。クソッ!)
介旅「でもどうやって…。警備員か?風紀委員か?」
介旅は、とうとう口をついて出てしまった予期せぬ心の声に動揺する。
―――よかった聞いてる人はいなかった…。
と思った。
背後から撃たれたと思われる銃弾が、自分の右耳をかすめるまでは。
「俺だよ」
上条「俺だよ」
尻尾を出した介旅の声に、上条当麻は一発の銃弾と短い声で持って答える。
介旅の耳をかすめるように狙って撃った銃は、彼の狙い通りの軌道を進んだことを知らせるように短く真っ直ぐな煙を漏らした。
煙は3cmほど上に登った後、空気に溶けて消える。
介旅の高そうなヘッドホンがカラカラと音を立て地面に転がった。
フレンダ「わたしのサポートも紹介してよ!結局、わたしがいなかったらみんな今頃黒焦―――
上条「うるせー!お前は表を見張ってるように言っただろ!」
少年のさらに背後から聞こえてくる、聞いただけで性格が読めてしまうような少女の声は、しかし彼の横槍によって最後まで発せられない。
少女は不満そうな声で「く~ッッ!最後まで言わせてくれたっていいじゃん!私だって頑張ったのに…」と言い残し去っていった。
機嫌を悪くしたように聞こえるが、彼女の機嫌を取るのは呼吸するより簡単なことなので少年は気にも留めない。
上条「おっと振り返るなよ。顔を見られたら殺すしかなくなっちまう」
一瞬こちらを伺おうとした介旅を、少年は脅しという形で制する。
しょっぴかれた先でべらべら喋られると非情に都合が悪いからだ。
もしそうなった場合、圧力という形で捜査の目をかいくぐることは可能だが、彼としてはその方法だけは取りたくなかった。
結果的に法の裁きから逃げおおせることは出来ても、一度降りかかった疑念を晴らすことはできない。
介旅「………」
介旅のかすめられた耳から滴る血が、背後に立つ少年が本気だということの裏付け。
介旅初矢は筋肉が痙攣したように肩を小刻みに震わせながら両手を上に上げた。言わずと知れた降参のポーズ。
後ろから聞こえてきた、称賛とも取れる女の子の口笛がなんともシュールである。
少年は見張りに集中しない雑用に舌打ちで最後通告を施すと、表情を変え、すぐさま介旅に悟られないように銃をしまった。
次に右足のホルスターから別の拳銃を引き抜くと、大地を蹴り、走りながらも決して右手を揺らさずに介旅の首筋を狙い躊躇なく引き金を引く。
介旅のうめき声と、背後からの少女の声が同時に響いた。
フレンダ「リーダー!超電磁砲が!」
上条「わかってるよ!お前もっと早く気付けよな!」
フレンダ「だいたい見えてないのになんで分かるわけ!?」
上条「多分向こうもこっちに気づいてるぞ。さっさと走れ!」
フレンダ「ちょっリーダー速すぎっ!」
決まったはずの介旅の運命は、現れた常盤台の顔、御坂美琴によって変えられてしまった。
能力によるレーダーをたどりやってきた美琴を迎えたのは、謎の二人組ではなく間抜けな顔を晒し昏倒した介旅の姿であった。
翌日、風紀委員第一七七支部。
第七学区の某雑居ビルの中にある一室(一室の中に区切られたスペースが複数点在する、部屋というには少々広すぎる)に、数名の少女達が集まっていた。
窓の外から室内を射す橙の太陽は、もう西に大きく傾き始めている。彼女たちの中には風紀委員に所属してない者もちらほらといた。
固法「犯人逮捕できてよかったわね、これで一段落だわ」
支部のリーダー固法美偉が、祝の杯として右手に持ったオレンジジュースを高く掲げる。
少女たちも乾杯という掛け声とともに彼女に続いた。
佐天「まぁわたしはなんにもしてないんですけどね…」
ジュースを片手に苦笑を浮かべるのは佐天涙子。彼女は今回巻き込まれた側の人間だった。
その声にどこか自嘲の色があることに誰も気づかない。
白井「大体それが普通ですの。治安維持は風紀委員のお仕事なんですから」
白井「と前に申し上げましたわよねぇ、だ・れ・か・さ・ん」
白井のつぶやきに応えるように、美琴が効果音の突きそうな勢いでジュースを勢い良くテーブルに置く。
御坂「しょーがないじゃない!緊急事態だったんだからっ!」
一見喧嘩しているように思える二人のやりとりも実はいつものことであり、注意する白井自身でさえ半分諦めていることだった。
白井も含めたこの場にいる全員が、そこが美琴のいいところでもあるとわかっている。
初春が改めて美琴にお礼を言ったところで、美琴は浮かない表情で、でもと切り出した。
御坂「あの爆発を止めたのは私じゃないわ」
御坂「わたしのレールガンじゃ間に合わなかった…」
美琴の言葉に、初春がえ、と短く声を漏らす。初春だけではなく誰もが美琴の言葉に驚きを隠せずにいた。
沈黙を破ったのは白井。
白井「でも、あの場にはお姉さまと初春しか」
その声には、美琴以外に誰にそんなことができるという意味が含まれていた。
実際にあの時あの場にいたのは、巻き込まれた女の子を含めて三人しかいなかったはずである。
白井の言葉に、美琴はわたしもよくわからないんだけど、と続けた。
御坂「あの場所には確かに私たちしかいなかった…でも確かに爆弾は私の目の前から消えた」
美琴は一度言葉を切り、
ここまでが警備員に話したことの全部、といいかけたが、やめた。
唐突に、彼の言葉が蘇ったからだ。
『別に俺達のことはいいだろ』
彼は美琴から見て謎の多い不透明な人物だった。
未だに持っている能力もわからないし、考えてみれば本名も聞いたことがない。
そして、なぜか彼は自分のことを頑なに隠そうとする。美琴にはそう映った。
―――今回の件にアイツが関わっていることは確信できる。
実は爆弾が謎の消失を遂げた後、美琴が介旅初矢を発見できたのは全くの偶然なのである。
彼女が爆発の寸前初春飾利の元へ辿り着いた時には、コインを出してももう既に間に合いそうにない状況にあった。
それでも諦めるわけにはいかないと放とうとした超電磁砲は、美琴にとって致し方ない苦肉の策だったのである。
しかし、次の瞬間彼女の目に飛び込んできたのは全く予想外の爆弾の消失。
それがフェイクである可能性も捨てられないために美琴は初春を連れてデパートから避難したが二次爆破は起きず、依然謎は解けないままだった。
そこで、美琴は偶然にも近くにいる上条当麻を発見した。
発見した、といえば少々語弊があるかもしれない。正確にはいるとわかった、である。
御坂美琴は自身の能力によって常に放出されている電磁波からの反射波を利用して、周囲を感知できるレーダーを張っている。
しかし、デパートの周囲で一箇所だけ感知できない場所があった。
人間を感知することも可能なそのレーダーに引っかからない人間は、彼女の知る限りただ一人しかいない。そしてそこに彼はかならずいる。
美琴は直感的に彼がこの件に関わっているかもしれないと思い立ち、彼を追った。そしてその先で『偶然にも』介旅を発見したというわけだ。
佐天「爆弾が消えたって…どういうことですか?」
初春「確かにあのあとは何も起きませんでしたね…そういえば不思議に思っていたことを今思い出しました」
固法「そんなことあるの?」
白井「……」
つい先日ここに訪れたばかりの少女の能力を思い出したのは白井だけだった。
固法「まぁ犯人は捕まって怪我人も出なかったんだし、今回は打ち上げを楽しみましょうよ」
佐天「そうですね!お菓子も開けましょう開けましょう!」
初春「あっ!じゃあ白井さんが買ってきてくれた学舎の園のケーキも出していいですか?」
白井「…」
初春「あの、白井さん?」
白井「あ、ええ、どうぞどうぞ」
佐天「どうしたんですか白井さん、ぼーっとしちゃって。なにか気になることでも?」
白井「い、いえ。その、ちょっとわたくし野暮用が…」
御坂「なんの用事?」
白井「クラスメイトとお茶を…」
御坂「そうなんだ、珍しいわね」
白井「せっかくの打ち上げのムードを崩しちゃって申し訳ありませんが、今日のところは失礼させてもらいますわ」
佐天「ええ、わかりました…」
白井「ではお姉さま、また寮で」
御坂「はいはい。遅くならないうちに帰ってくるのよ」
お姉さまこそ、と言い残し白井黒子は姿を消した。
美琴(とにかく、わたしもわたしで気になることが出てきたわね…)
初春「うわー!白井さんの買ってきてくれたケーキすごいですよ!」
固法「ほんとねぇ…!あっ私紅茶淹れるわよ」
御坂「じゃあ私も手伝いますね」
固法「ありがとう御坂さん」
少女たちの打ち上げはこの後二時間に及び、やがてお開きとなった。
今日もまた、人の少なくなった校舎に放課後のチャイムが響き渡る。
担任のロリ教師が残念な顔をし、上条が歓喜するそのチャイムを合図に小萌が教科書から顔を上げた。
小萌「残念ですが今日の補習はここまでなのです。三人とも気をつけて帰ってくださいね」
テキパキと道具を片し教卓を降りる小萌に、青髪ピアスがすがるような視線を送るが、小萌は無情にも教室から去っていった。
見るも無残な青髪の視線が上条へと移される。
上条「なんだよ…つーかその顔やめろ」
上条がげんなりとした顔で青髪の頭を教科書で叩くと、彼は短くなんでや…と呟いた。
青ピ「なんでカミやんばっかりが小萌ちゃんに当てられるんや!僕は何度もアイコンタクト送ってるのに!!」
授業中に何度も担任教師へアイコンタクトを送るのはどうなのだろうか。
青髪の理不尽な糾弾に触発されたように、ニヤニヤとした顔の土御門が振り返った。
土御門「カミやんは小萌先生のお気に入りだからにゃ―、仕方ないぜい」
土御門の言葉に今度は青髪が理不尽やと漏らす。
立ち上がり髪を掻き毟るその姿にはなんともいえない悲壮感がにじみ出ていた。
上条「んなくだらねぇことで騒ぐなよ」
青ピ「カミやんには僕の気持ちなんて理解できんのや!もうええわ!ふたりとも絶交やあああああ」
ガタン、と音の立つ勢いで席を立った青髪は脇目もふらずに駆け出していく。
残された二人の少年は顔色一つ変えずにその背中を見送った。
土御門「不器用なやつぜよ…」
土御門のつぶやきを上条は鼻で笑う。馬鹿にしたような笑いではなく、どことなく温かい雰囲気を感じさせる笑いだった。
青髪がこんな風にして一人帰って行く時は、大体下宿先のパン屋の手伝いがある日と決まっている。
なによりも友人との時間を大切にする彼は、放課後に用事があるから、と謝るのが苦手なのである。そして二人はそのことをよくわかっていた。
上条「絶交だってよ」
土御門「何回絶交すれば気が済むんだろうな」
数秒の沈黙の後、土御門が嬉々とした表情でところで、と切り出した。
土御門「今日は舞夏が帰ってくる日なんだぜい!」
上条「ああ、そういやそんなこと言ってたよなお前。テンション高いのはそのせいかよ」
土御門「にゃっはっはっは。気づかれてか~」
上条「うぜー…」
土御門「だから今日は舞夏と買い物に行かなくちゃなんねぇんだ…だからその」
上条「お前は青髪かっつーの。まぁ楽しんでこいよ」
サングラスの奥で一瞬だけ曇った目は、すぐに輝きを取り戻す。
こいつもまだ高1なんだな、と上条はらしくもないことを考えた。
土御門「そうするぜい!今夜は少し騒がしくなるかもしんねぇがよろしく頼むぜい!」
土御門「じゃあなカミや~ん!」
誰もいない廊下を鼻歌交じりのスキップで駆ける金髪アロハはかなり怪しく、かなりシュールだった。
上条「おーう、頑張れよシスコン軍曹」
一拍遅れて返事をした上条もテキパキと身支度を済ませ、ビリビリ中学生に捕まる前に帰ることにした。
今日は回線が混み合ってたのかなかなか思うように投下が進みませんでしたが、今日はこれで全部です。
読みにくい部分あったらごめんよ。
読みにくい部分あったらごめんよ。
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