元スレ京太郎「これが今の俺に出来る最高の和了だ……!」
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51 = 1 :
京太郎「……」フラフラ
京太郎(どうしてこんな事になったんだろうな……もう麻雀やってる意味すらわからなくなってきそうだ)
京太郎(ただ負けるだけなら頑張れた……だけどこんな、自分の意志を無視された麻雀なんか打たされたら……辛い、だけだろ)
京太郎(まさか好きなものでこんなに苦しまされるなんてな……部をやめればすむ話でもないし、俺はどうしたら……)
ズルッ!
京太郎「えっ……」
京太郎(あっ、やべえ……階段の途中で足滑らしちまった……ああもう、本当に最近はついてねえなあ……)
ゴロゴロゴロゴロ……!
ドサッ……
京太郎「いってえ……頭、打っちまった……足も挫いたか……はあ、もう嫌になるわマジで……」
52 :
役満どころか一翻役で喜んでるんだよなぁ…
53 = 1 :
ブツンッ……
54 = 1 :
――数十分後・麻雀部部室
京太郎「……」
まこ「まさか階段から足を踏み外すとは……」
京太郎「すいません……考え事してたらつい」
久「でも大した怪我じゃなくてよかったわ……頭に大きなコブは出来ちゃってるけど」
咲「し、心配したんだよ!京ちゃんが遅いからって迎えに行ったらまさかあんな……」ウルウル
優希「さ、咲ちゃんの言う通りだじぇ!もしあのまま京太郎がって思ったら……この馬鹿!」ウルウル
和「ふ、2人共、須賀君だってわざと怪我をしたわけじゃないんですから……」
京太郎「……いや、俺がボーッとしてたのが悪いんだ。咲、優希、心配かけてごめんな」
咲「京ちゃん……」
優希「むうっ……」
京太郎「和と先輩達もすいませんでした」
和「そんな、謝る必要なんて……」
久「そうね、別に謝らなくていいわ。考え事も何の事だかだいたい想像がつくし」
まこ「わしもじゃ。しかしこうして心配してくれるんがいるのも事実、あまり思い詰めるなよ京太郎」
京太郎「はい……」
久(これは重傷ね……まこ)
まこ(わかっとる)
まこ「とりあえず今日はここまでにしとくかの」
久「そうね、今日は解散しましょう。須賀君は保健室に行ったとはいえ、帰ったらちゃんとご両親に事情を説明して念のため病院にも行く事、いいわね?」
京太郎「わかりました……」
55 = 1 :
――翌日
京太郎「おはようございます」
咲「おはよう、京ちゃん。病院にはちゃんと行った?」
京太郎「ああ、やっぱり大した事ないってさ。全くこの前顔打ったばっかなのについてないよな……」
優希「麻雀で調子がいい分、普段の運が悪くなったんだな!」
和「そんなわけないでしょうゆーき……」
まこ「部活には来て大丈夫なんか?」
京太郎「激しい運動しなきゃ問題ないらしいです」
久「そう……まあ、とにかく今日も打ちながら話し合いしましょうか。席につきなさい須賀君、メンツは私、後はまこ、咲に入ってもらいましょう。和、優希、牌譜取りお願いね」
和「はい」
優希「うぇぇ!?わ、私牌譜とか書けないんですけどぉ……」
和「私が教えますよゆーき」
久「須賀君、とりあえず色々考えてあなたが怪我してたら元も子もないわ。私達も一緒に頑張るからどんどん頼ってちょうだいね?」
京太郎「はい、ありがとうございます……」
56 = 1 :
――
京太郎手牌
234m 45569p 22666s
京太郎ツモ7p
京太郎(聴牌……普通ならタンヤオ付けるために9筒捨てる場面だけど……今まで通りならそろそろ意識飛んで勝手に9筒残しての8筒待ちになるんだろうな……まあ一発つくなら点数は変わらないか……)
京太郎「……」
咲「……」
久「……」
まこ「……」
京太郎「……」
京太郎(……あれ?意識が遠く、ならない?)
久「どうしたの須賀君?」
京太郎「い、いえ……リーチです」
京太郎打9p
まこ(来たか……んっ?なんじゃ、なんか違和感があるのう)
久(ちょっと待って……今、須賀君がリーチ時に受け答えをしなかった?)
咲(な、なんだろう。昨日までなんとなく感じてた京ちゃんに和了られちゃうって感覚がないよ……)
優希(あ、あれ?京太郎の待ちがおかしいような……)
和(ふむ、あの手牌なら当然この待ちにするでしょうね……)
57 = 1 :
京太郎「……あれ?」
咲「どうしたの京ちゃん?」
京太郎「い、いや、なんでもない……」タンッ
久(一発ツモじゃない!?)
まこ「あっ、それロンじゃ京太郎。3900」
京太郎「あっ、はい」
まこ「それにしてもどうしたんじゃ、あんたがリーチかけて鳴かれてもいないのに一発じゃないとは」
京太郎「……それもそうなんですけど」
久「けど?」
京太郎「なんか、リーチする時意識が飛ばなかったんですよ……今までは少しでも意識したらいつの間にかリーチしてたのに」
咲「それってまさか……」
久「……とりあえず続けましょう」
58 = 1 :
――
京太郎(なんで、なんでだ?今までは遅くても五巡目には聴牌出来てたのに、なんで十巡目の今でも俺は二向聴なんだ……?)
京太郎「……」タンッ
咲「ロン!8000だよ京ちゃん」
京太郎「あ、ああ……」
――
久「テンパイ」
咲「テンパイです」
まこ「テンパイじゃ」
京太郎「……ノーテン、です」
――
京太郎「リ、リーチ」
京太郎(オーラスまで来てヤキトリか……意識も飛ばない、リーチしても一発じゃない……まるで、まるでこれは!)
まこ「ツモ!3000、6000じゃ!」
京太郎(少し前までの俺に戻った、力がなくなったみたいじゃないか!)パァァ
和(ヤキトリなのになんで須賀君はあんなに嬉しそうなんでしょうか……)
59 = 1 :
――
京太郎「……」プルプル
咲「きょ、京ちゃん大丈夫?」
優希「結局数回やって全部ヤキトリかー。まるで昔の京太郎に戻ったみたいだじょ」
京太郎「……まるで、じゃない」
優希「へっ?」
京太郎「完全に、消えちまったんだよ……もう俺は、あの時みたいにリーチ一発で和了れない」
京太郎(だけどその代わり俺は、また俺の麻雀が……出来るんだ!)
久「須賀君……」
京太郎「はは、すいません。もう悩む事もなくなったみたいです」
京太郎(でもあの力が消えた瞬間ヤキトリか……結局俺、地力は全く上がってやしなかったって事だよな)
京太郎「それはさすがにメゲるわ……」ガクッ
まこ「京太郎、何を考えてるかは想像がつくがそう気を落とすな。あれはあんたの可能性を狭めて縛り付けとった。今日だっていきなり消えたショックで思うような打ち方が出来んかっただけじゃ」
京太郎「そう、ですね……そう思う事にします」
和「元々あんな偶然がずっと続くわけなかったんです。須賀君が気を落とす必要なんてありません」
京太郎「ああ、サンキューな。そう言ってくれると助かるわ」
和「私は事実を言ったまでなんですが……」
京太郎「……あ、あの!」
久「どうしたの?」
京太郎「ちょ、ちょっとベランダ行ってきていいですか?」
まこ「別に構わんが……」
京太郎「じゃあちょっと……」スタスタ
優希「京太郎、さっきからソワソワしてたけどどうしたんだ?」
咲「えっと、多分……」
60 = 1 :
京太郎「いやったああああああああああああっ!!」
咲「叫びたいくらい、嬉しいんだよ京ちゃん……」
61 = 1 :
――須賀家
京太郎「ふふっ、ふふふふふ……!」
京太郎「リーチ!リーチリーチリーチ!」
京太郎「ツモ!よっしゃ、満貫!一気にトップだ!」
京太郎「最近ネト麻もリーチしないように意識してやってて楽しめなかったからなー……やっぱり変な事考えずにやるのが一番だ」
カピー「キュー」トコトコ
京太郎「おぉ、カピー。よしよし、こっち来い……今日の俺は機嫌がいいからいつもより可愛がってあげるぞー」ナデナデ
カピー「キュー」スリスリ
京太郎「へへっ……」
ザザッ!
京太郎「……うん?」
京太郎(耳鳴りか……それに眠くなってきたな……ちょっとはしゃぎすぎたか……)
京太郎「ごめんなカピー、俺ちょっと眠くなってきたから遊ぶのはまた明日……」
カピー「キュー!キュー!」
京太郎「はは、大丈夫だよ、ちゃんと約束は守るからさ、おやすみ……」
京太郎(あ、れ……ちょっと待て……確か、前にもこんな事あっ――)
ドサッ……
京太郎「Zzz……」
カピー「キュー……」
62 = 1 :
――翌日
京太郎「おはようございまーす!」
和「おはようごさいます、須賀君」
まこ「おう、おはよう。今日は随分と元気じゃのう京太郎」
京太郎「いやー、昨日ネト麻で調子がよかったんですよ。久しぶりに思いっきり自分の麻雀が打てて最高の気分です」
優希「よかったな京太郎、だがしかーし!たとえネト麻で調子がよかろうとまだまだここで勝つには力不足だじぇ!」
京太郎「それはどうかな?昨日はヤキトリだったけど今日の俺は一味違うぜ優希!」
久「そうね、なんだか須賀君、今日は本当にツキがよさそうだし。もしかしたら今日辺りトップ取れちゃうかもしれないわよ?」
京太郎「マ、マジっすか!?うおお、なんかそう言われると燃えてきたー!」
咲「ふふっ、頑張って京ちゃん!」
京太郎「おうともよ!」
久「じゃあ今日は一年生でやってみましょうか。私とまこは見てるから思う存分やりなさい須賀君」
京太郎「わかりました!」
63 = 1 :
――
京太郎「……」タンッ
咲(今日は京ちゃん、全くリーチしない……やっぱり京ちゃんからあの力は消えちゃったんだね。あの時の京ちゃん、麻雀楽しくなさそうだったからよかった……)
六巡目
京太郎手牌
66m 233889p 112s 北北
京太郎(うーん……気合い入れたはいいけどやっぱりみんなが相手だとなかなか上手くいかないな。まあ、もうあの力に苦しまされる事もないしじっくり行きますか)
優希「むむむ……」打6m
京太郎(うっ、六萬出ちまった……こりゃ三暗刻は難しいか?しゃーない、無駄に鳴くのもあれだし七対子に切り替え――)
64 = 1 :
京太郎「……」ガクッ
65 = 1 :
優希「へっ?」
久「なっ……」
まこ「これは!?」
咲「……!」ゾクッ!
和(須賀君、また……本当に怪我は大丈夫なんでしょうか?)
京太郎「……ポン」タンッ
優希「じょ!?」
京太郎「……」
咲(今のって京ちゃんから……だけど、京ちゃんにはもうあの力はないはずじゃ……!)打1s
京太郎「……ポン」タンッ
咲「っ!」
京太郎「……あ、あれ?な、なにがどうなって……」
京太郎(いつの間に、俺二副露もして……)
まこ「なんという、事じゃ……」
久「まさかこんな……」
和「……」打8p
京太郎「く、そっ……ポン!」タンッ
京太郎(くそっ、何がなんだかわかんねえけど、今の状況じゃもうこれで突っ張るしかないじゃねえか……!)
66 = 1 :
――数巡後
京太郎「ロンだ……!トイトイのみ、2000!」
優希「うう……」
久「須賀君……」
京太郎「……」
京太郎(消えてなんか、いなかった)
京太郎(形を変えただけで、あの力はまだ俺の中にいた)
京太郎(なんでこうなったのかなんてわからない。だけど一つだけ言えるのは……)
京太郎「また、俺は振り回されるのかよ……?」
咲「京ちゃん……」
京太郎(俺がまた自分で考えてする麻雀を出来なくなったって事だけだった)
67 = 1 :
――
京太郎「ロン、トイトイのみ2600……!」
まこ「リーチの次は鳴きときたか……」
久「……」
久(須賀君が和了る時は全部三回鳴いての対対和のみ……時々赤ドラが一枚絡みはするけど打点はやっぱり高くない。しかもこれは……)
京太郎「……」タンッ
和「ロンです、11600」
京太郎「うあっ……」
咲「……」
優希「……」
京太郎「あはは……今日は調子がいい気がしたんですけどね」
まこ「京太郎、あんた……」
京太郎「あっ!そ、そういえば俺今日予定があるんで早く帰らないといけなかったんだ……すいません、今日は早退させてもらいますね」
久「……無理はしないようにね」
まこ「また明日な」
京太郎「はい、また明日……」スタスタ
68 = 1 :
久「……まこ。須賀君の今の対局の牌譜見せてくれる?」
まこ「……ほれ」
久「……」
和「どうしたんですか、部長」
久「ちょっとね……」
久(全局配牌の時点で常に五つ対子が出来てる状態……だけどどんな動かし方をしても絶対に三元牌や風牌は三つ揃わないし、何より……)
久「……」
久(和了る時リーチ一発が十割だったここ数日間の牌譜とは似ても似つかないわね。しかもただでさえ、制限が酷すぎたこの数日間だって須賀君があんなに落ち込んでたのに……)
久「なんで彼ばかりこんな力を手にするのかしらね……」
咲「部長、やっぱり……」
優希「えっ、えっ、どういう事なんだ?」
まこ「わからんか優希、今の対局京太郎が和了った局を思い返してみんさい」
優希「え、えーっと確か最初和了った局は京太郎が私と咲ちゃん、のどちゃんから一回ずつポンして私が振り込んだじょ」
和「二回目は咲さんからゆーき、私の順番で須賀君が一回ずつポン。その後私が振り込みました」
咲「最後の三回目は……和ちゃん、優希ちゃん、私の順に京ちゃんがポンして……優希ちゃんが振り込んでたね」
久「……振り返ってみて気付かない?」
優希「あっ……」
69 = 1 :
優希「京太郎、相手全員から一回ずつ鳴かないと和了れないとか……」
和「そういえば今気付いたんですが、須賀君全部ツモ切りしてませんでしたか?」
咲「それと、京ちゃん全部ロンで和了ってますよね……」
まこ「そう……予測したくもないがおそらく京太郎は――」
70 = 1 :
久「須賀君、ツモで有効牌を持ってこれなくなってるわ」
71 = 1 :
――須賀京太郎の発展した能力についてのメモ
・相手全員から一回ずつ、三回のポンをする事により対対和を相手から直撃で取る事が出来る
・配牌時点で五つの対子が出来ているがツモで有効牌が来ることはないため七対子や三暗刻は作れない
・三元牌、自風、場風牌は雀頭には出来るが三枚揃うことはない
・配牌時点で中張牌、ヤオ九牌が混ざるのでタンヤオ、混老頭は複合しない
・相手の内誰か一人でも鳴く事が出来ない局は絶対に和了れない
・時折赤ドラが一枚だけ乗る事がある
・意識が飛ぶ間隔は一回目のポンから二回目のポンが終わるまで
72 = 47 :
酷い能力だな。
この状態で清澄レギュラーに勝つ方法が全く思い浮かばない…
73 = 1 :
――須賀家
京太郎「……」カチカチ
ツモ、4000オールデス
京太郎「……」カチカチ
京太郎(俺はどうしたらいいんだろうな……前に比べたらネト麻は順子中心にすれば意識飛ばないからやりやすくなったけどリアルでの対局はきっとまた……)
京太郎「俺、このまま麻雀続けていていいのか……?」
カピー「キュー」
京太郎「カピー……そういえば昨日遊んでやる約束したな……一回休憩するか」
カピー「キュー」スリスリ
京太郎「なあ、カピー……俺、麻雀続けていられる自信なくなってきちまったよ」
カピー「キュー?」
74 = 1 :
京太郎「別にさ、力にビビってるとかそういうんじゃないんだ。ただ……このままじゃ俺、麻雀部のみんなに迷惑かけるだけな気がしてさ……」
カピー「キュー……」
京太郎「みんなが色々考えてくれてるのに当の俺は何も対処法が思いつかない……実際に対局してもまるで他の誰かが打った状況を俺がやったみたいに言われてる気さえするんだよ」
カピー「キュー」
京太郎「咲や部長は俺も部員だからみんなに頼っていいって言ってくれたけど、本当にそれに甘えていいのか?」
京太郎「最近はずっと俺が卓に入ってるし……何がどうなってるかもわからない俺の力をどうにかするために、みんなを振り回し続けていいのか?」
京太郎「正直、もうわかんねえよ……」
カピー「キュー……」
75 = 1 :
京太郎「……はは、ごめんなカピー。遊んでやるつもりが愚痴こぼしちまった」
カピー「キュー」スリスリ
京太郎「慰めてくれるのか?いい子だな、お前は」ナデナデ
カピー「キュー♪」
京太郎「……カピーに愚痴言ったら少し楽になった気がするよ。こんな事みんなには言えないからな」
カピー「キュー」
京太郎「ああ、もう少し頑張ってみるよ。このまま逃げてたって何もいい事ないもんな!」
カピー「キュー!」
京太郎「よし、明日も頑張るとするか!」
京太郎(だけどもし、みんなが迷惑に感じてるってなったら俺は――)
76 = 1 :
――翌日
京太郎「こんにちはー」
久「須賀君、来てくれたのね……正直来ないことも覚悟してたんだけど」
京太郎「そりゃそうですよ。俺だって今の状況何とかしたいですからね」
まこ「無理はせんでええんよ?」
京太郎「大丈夫です、このくらいで凹んでたら一緒に頑張ってくれてるみんなに申し訳が立ちませんし」
優希「京太郎……え、えっとタコス食うか?」
京太郎「おう、サンキュー、くれるならもらっとくわ」バクッ
優希「……って三つ全部食べるなー!」
京太郎「えっ、全部くれるんじゃないの?」
優希「一個だけに決まってるだろー!」
京太郎「わりいわりい、今度作ってくるから許してくれ」
優希「よし、許す!」
京太郎「それでいいのかよ!」
77 = 1 :
和「須賀君」
京太郎「あっ、和」
和「私は力とかそういったオカルトは全く信じていません。須賀君の身に起きている事も偶然の産物だと思っています」
京太郎「おう……」
和「ですが、もしもそれによって須賀君が麻雀に悪感情を抱いてしまうのなら……とても悲しいです」
京太郎「和……」
和「何か私に出来る事があるなら言ってくださいね?須賀君も清澄高校麻雀部の仲間なんですから」
京太郎「ああ、ありがとうな!」
咲「京ちゃん」
京太郎「咲、これからも色々面倒かけると思うけどよろしく頼むな」
咲「ううん……私は面倒なんて思ってないから」
京太郎「……ありがとう」
咲「うん……」
久「よし、それじゃあ今日も須賀君を中心に打ちましょうか」
京太郎「みんな……よろしくお願いします!」
78 = 1 :
――
京太郎「ポン」
まこ「持ってかれたか……」
京太郎「ポン」
和「……」
咲(これで京ちゃんは二回鳴いた……そしてたぶん次に京ちゃんが鳴きたいのはこれだから……)タンッ
京太郎「……」タンッ
咲「カン!」
京太郎「うおっ……」
咲「嶺上ツモ、8000の責任払いです」
京太郎「直取りされたか……これで間違いないですね」
久「前が前だから予想はしていたけど……まさか本当に鳴けない相手がいるとそこに振り込むなんてね」
まこ「京太郎が鳴く局は毎回二回までは順調に鳴いとるんじゃがな……三回目からは鳴けるか鳴けないか8対2の割合ってところかの」
久「須賀君が鳴いた相手はその局和了る事は出来ない……とも言えるわね」
久(つまり須賀君は鳴く事で相手の和了を封じてる?確か全国で戦った相手にも和了を封じる人がいたけど……似たような力って事なのかしら?)
79 = 1 :
――
京太郎「ロン!トイトイ赤、6400!」
咲「はい」
久「ふむ……直撃する相手はランダムみたいね」
まこ「確かに鳴かれた順番は多々あれど、そこに法則はなさそうじゃな……」
久(須賀君の意識が飛ぶのが二回目のポンが終わるまでってところも気になるわね……なにこれ、三回目からは自分でやれって事?)
京太郎「……」ガクッ
久(そもそも意識が飛ぶ理由が理解できないのよね……永水女子の神代さんは神様を降ろしていたらしいけど、須賀君はあくまで一般人……まさか神代さんと同じ事をしてるわけではないでしょう)
優希「ロン!12000だじぇ!」
京太郎「やられたー!」
久(また鳴いてない優希から須賀君が直撃を受けたか……あら?よくよく考えてみればこれって……)
久「まこ、最近の須賀君の対局の牌譜ってどこにあるかしら?」
まこ「すぐ見られるようにそこの棚に分けてあるが……どうかしたんか?」
久「ちょっと気になる事があってね……まこは対局を見ててちょうだい」
80 = 1 :
――
京太郎「お疲れ様でしたー……」
まこ「二位と四位が二回ずつか……あんだけ場を荒らしておいて一位になれんっちゅうのもおかしな話じゃのう」
京太郎「直撃してもそれ以上持ってかれますからね……」
咲「京ちゃん、和了る時の打点が低いもんね」
優希「だったら親番でひたすら和了ればいいんだじょ!」
京太郎「そりゃ連荘が相当続くならいけるのかもしれないけどなあ……このメンバーだとそれもなかなか……あれ、そういえば部長は?」
和「ベランダで須賀君の対局の牌譜をずっと見てますよ」
咲「な、何かわかったのかな?」
まこ「気になる事があるとは言っとったが……」
バタンッ
久「……」
まこ「おぉ部長、ちょうど今あんたの話をしとったところじゃ。それで何かわかったんか?」
久「……糸口になるかはわからないけど、一つわかった事があるわ」
京太郎「っ!?」
81 = 1 :
優希「さすが部長だじぇ!それで何がわかったんだ!?」
久「……」
和「部長?」
久「おかしいとは思ってたけど、まさかこんな……」ブツブツ
咲「ど、どうしたんですか?」
久「……ねぇ、みんなはおかしいとは思わなかったかしら」
まこ「何をじゃ」
久「須賀君の力はデメリットが非常に多い……最初の頃はリーチをかけた後鳴かれたらその人に振り込んでたわよね?」
咲「は、はい」
久「そして今は三回目鳴けなかった相手に振り込む……」
京太郎「た、確かにそうですけどそれがいったい……」
久「……おかしいじゃない」
和「……ああっ!」
久「和は気付いたみたいね」
和「確かにおかしいです……」
優希「ど、どういう事だ、のどちゃん?私全然わからないじぇ!」
和「考えてみてください……なぜ須賀君が一定の状況下にある時、それに対応している人も必ず聴牌してるんですか?」
咲「あっ……そういえば京ちゃんの力がリーチ一発だった時、京ちゃんは鳴かれたら必ず直後にロンされてたね……」
まこ「……まさか」
久「えぇ、私もそう思って確かめてみたわ。ここ最近の須賀君の対局……【須賀君の相手の状況】をね」
京太郎「相手の状況……?」
久「そう、そして他の牌譜と比べて確信した」
82 = 1 :
久「――須賀君が入った卓、全員聴牌になるまでの速度が異常なレベルで跳ね上がってるわ」
83 = 1 :
京太郎「聴牌速度が上がってる、ですか」
久「須賀君の力に当てられたのかわからないけど、須賀君が入った卓は平均して五巡目から遅くても七巡目には聴牌……力がリーチ一発の頃は早い時には三巡目で全員一向聴か聴牌なんて場面もあったわ」
和「東場のゆーきとほとんど同じくらいですか……」
優希「むう、でも東一局の私に比べたら微妙に遅いじぇ」
まこ「毎回あんなスピードでやられてたまるかい……」
咲「だけどどうしてそんな事が……」
久「残念だけどそこまではわからないわね。そもそもなぜ須賀君が今の力を持つに至ったのかさえ私達は知らないんだから……だけど数日前の須賀君と今の須賀君で共通してる聴牌速度の上昇というポイントは見逃せないと私は思ってるわ」
京太郎「……」
京太郎(共通する聴牌速度の上昇か……まさか俺の力の根本って……)
84 = 1 :
咲「京ちゃん?どうしたの、顔色悪いよ?」
京太郎「いや……」
まこ「京太郎も混乱しとるんじゃろう。とりあえず今日の京太郎の力に関する話はここまでにしとくべきじゃろうな」
久「そうね、根を詰めすぎてもよくないし……今日はもう通常練習に切り替えましょうか」
京太郎「あっ、俺ならまだ……」
和「ダメですよ須賀君。病院の検査で問題ないという診断結果が出たとはいえ、須賀君は怪我をしているんですから無理は禁物です」
優希「焦ってもろくな結果は産まれないじぇ、とりあえず休憩しておけ!というわけで休憩ついでにタコスを……」
和「ゆーき?」
優希「じょ、冗談だじぇ……」
久「とりあえず須賀君は色々思うところもあるでしょうし休んでおきなさい。なんならベッドで寝ておく?」
京太郎「いえ、大丈夫です。とりあえず外に出てきますね……」
ガチャッ、バタンッ
85 = 1 :
久「……やっぱりまいってるわね」
優希「縛りプレイの上に相手の強化なんて私だったら嫌になるじぇ」
まこ「そうじゃなあ……せめて全体的じゃのうて京太郎が自分で選んで特定の相手にだけ使える言うんなら色々使い道もあるんじゃが」
和「そんなオカルトありえません。この平均聴牌速度も牌の偏りで説明できない話ではありませんよ」
久「和は本当にブレないわねぇ……」
咲「……」
咲(京ちゃん、あんなに顔色悪かったの本当にそれだけなのかな……)
久「さてと、じゃあ咲達も練習するわよ。新人戦が控えてるのは須賀君だけじゃないんだからね」
優希「今からなら三回は半荘出来るじぇ!」
和「いえ、出来ても二回が限度だと思いますが……」
まこ「優希、それ京太郎が入っとる卓の時間で計算しとるじゃろ……」
優希「……あれー?」
86 = 1 :
――
京太郎「ふう……」
京太郎(聴牌速度の上昇……つまりそれだけ一半荘が早く終わるって事だよな)
京太郎(そして俺がみんなの練習相手になるために経験が不足してるのは俺が一番よくわかってる)
京太郎(つまり、この力の根本にある俺の気持ちは……)
京太郎「さっさと終わらせて、場数を踏もうって事なのか……?」
京太郎「……いや、まだそうと決まったわけじゃない」
京太郎「そんな自分勝手な理由でみんなのペースを崩すような真似……本末転倒じゃないか」
京太郎「とにかく聴牌速度の上昇については後回しだ……俺はもう一つの共通点、意識が飛ぶ事について考えよう……」
87 = 1 :
――数日後
京太郎「うーん……一応麻雀のオカルトに関しての雑誌も読んではみたけど信じがたいのばっかりだな……つうかなんだよ、相手の心拍数や体温とかまでわかるとか、縛りプレイしたら次のメンバーが倍の飜数で和了れるとか……でも咲とか見てると本当にあるんだろうな……」
京太郎(だけどやっぱり麻雀してる時限定で意識が飛び飛びになる話なんてどこにも載ってないな……)
京太郎「そういえば女子のインターハイには意識が飛ぶっていうか打ちながら寝てる巫女さんがいるって優希が言ってたけど……」
京太郎「巫女って事は鹿児島の永水女子か……長野県内の高校ならともかく鹿児島まではさすがに部長もコネはないよなあ」
京太郎「どうしたもんか……」
咲「あっ、京ちゃん!」
88 = 1 :
京太郎「んっ、咲か」
咲「京ちゃんが図書室にいるなんて珍しいね。文字読むだけで眠くなるとか言ってたのに」
京太郎「俺なりにこの力について調べてみようと思ってよ。特に意識が飛ぶってのはよくわからないしな」
咲「京ちゃんも頑張ってるんだね……あっ、隣座っていい?」
京太郎「おう」
咲「それで何かわかった?」
京太郎「ぶっちゃけると手詰まりだよ。なんせ俺の力がどうやって生まれたのか自分でもわかってないんだからな」
咲「やっぱりそう上手くはいかないよね……私の家族麻雀みたいにきっかけがあればわかりやすいんだけど」
京太郎「きっかけ、か」
京太郎(やっぱりきっかけは俺の考えてる通りなのか?だとしたら俺……)
89 = 1 :
咲「あっ」
京太郎「どうした?」
咲「この本ケースと中身が違う……」
京太郎「あらら、それは災難だったな」
咲「もう、借り物なんだから本はちゃんと扱ってほしいよ……ちょっと行ってくるね」
京太郎「さすが文学少女だな……さてと、俺も怒られない内に読んだ本戻しておきますか」
ガタッ
京太郎「んっ?」
ガタガタッ!
京太郎「うおっ、地震か!?」
京太郎(しかも結構デカいぞこれ!?)
咲「きゃうっ!?」
京太郎「咲!?」
咲「いたた……きょ、京ちゃあん……」
京太郎「転んじまったのか……待ってろ、今こっちに……」
90 = 1 :
グラッ……
91 = 1 :
京太郎「!?」
咲「えっ……」
京太郎(咲が転んだちょうどその場所に向かって、本棚が倒れてきたその時、俺は周りの全部が遅くなった気がした)
京太郎「さ……」
京太郎(気付いたら俺は走り出していた……間に合うか間に合わないかなんて考えもしなかった)
咲「京ちゃ……」
京太郎(ただ俺は、目の前で涙を浮かべるあいつを助けたい一心だった)
京太郎「咲ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
92 = 1 :
ドンッ!
バタンッ……!!
93 = 1 :
咲「……あ」
京太郎「……」
咲「きょ、京ちゃん……?」
京太郎「大丈夫か、咲……」
咲「わ、私は大丈夫……それより京ちゃんが!」
京太郎「ならよかったわ……」
咲「よくないよぉ!!」
京太郎「なんでだよ……」
咲「だって京ちゃん、京ちゃんが私の代わりに本棚の下敷きに……!」
京太郎「ああ、確かに脚がすっげえ痛いわ……まあ、最近は怪我ばっかりしてたから特に問題ないって……」
京太郎(……あっ)
――(いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?)
――「いってえ……頭、打っちまった……足も挫いたか……はあ、もう嫌になるわマジで……」
――「全くこの前顔打ったばっかなのについてないよな……」
京太郎(ああ、あったわ……もう一つ共通点……俺、力を手に入れる前怪我ばっかしてたんだ……)
京太郎「そういえば、あのオカルト系雑誌にあったっけな……【生死の境をさまよって一巡先を読む力を手に入れた雀士】の話……」
咲「京ちゃん、何言って……」
京太郎(全く……俺の力の根本についての悩みはなんだったんだよ……本当に、馬鹿、みてえ……)
京太郎「……」ガクッ
咲「……京ちゃん?」
京太郎「……」
咲「京ちゃん、京ちゃん!やだ、目を開けてよ、京ちゃん!!」
94 = 1 :
咲「京ちゃあああああああああん!!」
95 = 1 :
京太郎(咲が俺の名前を叫びながら、意識が薄れていく中俺は……)
ブツンッ……
京太郎(聞き覚えのある音を聞いた気がした――)
96 = 1 :
――病院
ガラッ!
久「咲、須賀君は!?」
まこ「京太郎!」
京太郎「あっ、部長と染谷先輩来てくれたんですね。でもちょっと静かにしてくれるとありがたいです」
久「えっ、あっ……」
咲「すぅすぅ……」
京太郎「咲の奴泣き疲れちゃって寝るまでずっと俺に謝り通しだったんですよ……起きたらまたそんな感じになっちゃうと思いますんで」
まこ「そうか……それで大丈夫なんか、京太郎?本棚の下敷きになったと聞いたんじゃが」
京太郎「骨に異常はないらしいです。一応検査って事で1日入院する事になっちゃいましたけど」
久「それならよかったわ……須賀君が大怪我をしたって聞いた時は血の気がひくかと思ったもの」
まこ「優希なんて顔を真っ青にして大泣きしてしまっての。今は疲れて寝てしまったんで部室のベッドに寝かせて和が側におるんじゃが……」
97 = 1 :
京太郎「ああ、だから2人はいないんですか……心配かけてすいませんでした」
久「そんな謝らなくていいわよ須賀君。咲を助けてこうなったって言うのはちゃんとわかってるから」
京太郎「あはは、咲と一緒に自分も逃げ切れてれば格好ついたんですけどね」
まこ「そう言うな京太郎、まだ揺れてる中とっさに咲を助けに動けた事自体が十分称賛に値するんじゃからな」
京太郎「そう言っていただけると助かります……あっ、ところで部長」
久「なにかしら?」
京太郎「その、俺の力について新しい共通点が見つかったんですけど、聞いてくれますか?」
久「こんな時に……と言いたいところだけどどうやら今の状況と関係ない話ではないみたいね」
京太郎「えぇ、実は……」
98 = 1 :
――
久「力を手に入れる前に必ずする怪我か……」
京太郎「あくまで可能性ですけど……」
久「この際何でもいいから情報は必要よ。もし須賀君の推測が正しければこれで終わらないかもしれないもの」
まこ「……」
久「まこ、どうしたの?」
まこ「京太郎の言葉をふまえてちょっと思い返してたんじゃが……もう一つあるぞ共通点」
京太郎「えっ!?」
久「本当なの、まこ?」
99 = 1 :
まこ「確信はないんじゃが……京太郎、退院して落ち着いたらでええから一度家の店に来てくれんか?」
京太郎「染谷先輩の雀荘にですか?いいですけど……」
まこ「後もう一つ、家で打つまで麻雀をいっさい打たないでほしいんじゃ」
京太郎「ネットも、ですか?」
まこ「一応自粛してくれるとありがたい」
久「随分徹底してるわね……」
まこ「全く打たないでおかんとわしの予測は確かめられんからの……まあとりあえず今日はゆっくり休んでおくんじゃ」
久「そうね、須賀君も最近は麻雀漬けだったし……休んでおく事も大切ね」
京太郎「わかりました」
まこ「それじゃあわしらは帰るか……またな京太郎」
久「またね」
バタンッ
京太郎「……」
京太郎「俺の力の共通点か……一体なんなんだろうな」
咲「すうすう……」
京太郎「……咲」ナデナデ
咲「ふにゅ……」
京太郎「……」
――「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!私のせいで京ちゃんが、ううっ、ごめんなさい京ちゃん……」
京太郎「絶対に、何とかしないとな……お前のあんな顔、もう見ないためにも」
100 = 1 :
――数日後
カランカラン
京太郎「お邪魔しまーす」
まこ「おぉ、よく来たの京太郎」
京太郎「ああ言われたら来ないわけにはいきませんからね」
まこ「それもそうじゃな。そんじゃあ早速で悪いが一局打ってくれんかの」
京太郎「わかりました。じゃあ適当な所に……」
まこ「ああ、待て待て。そんじゃあ意味がないんじゃ」
京太郎「へっ?」
まこ「京太郎、あんたにはあっちの卓についてもらう」
京太郎「あっちって……」
「えっと、えっと……ツモかな?」
「えーっと……あっ、役なしだよこれ……」
「えー!?」
京太郎「……あそこですか?」
まこ「あそこの卓におるんは最近家に通い出した子達なんじゃが、如何せん役もまともに覚えとらん初心者でな」
京太郎「数ヶ月前の俺を見てる気分ですね……」
まこ「……気分が悪くなるかもしれんがすまん、予告しておく」
京太郎「えっ?」
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