元スレ京太郎「これが今の俺に出来る最高の和了だ……!」
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1 :
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2 = 1 :
――俺は時々こう聞かれる事がある。
「お前は部活辛くないのか?」と。
……全く辛くないって言ったら嘘になるのかもしれない。
高い実力を持つ女子達の中にただ一人いる男の初心者。
まともな練習相手にもならない、雑用だけが存在価値の状況を笑って受け入れられるほど俺は人間が出来てない。
当然負ければ心がざわめいたりするし、情けないが悔しさに枕を濡らした事だってある。
だけど、それでも俺はきっと問いかけに笑ってこう答えるだろう。
京太郎「辛いわけねえだろ。むしろ楽しんでるよ、麻雀を」
何回も何回も負けて、時々和了れるだけで大袈裟に喜んで、二位になれただけで飛び跳ねちゃうような仲間で先生で憧れで目標なあいつらとの部活。
昔なら卑屈になってたかもしれない、反発してたかもしれない、だけど今なら俺ははっきりこう言える。
――麻雀って楽しいよね!
あいつが言ったこの言葉は正しいってな!
3 = 1 :
――
夏の気配が遠ざかり、入れ替わりに秋特有の気配が空気に混じり始める日々。
清澄高校麻雀部の部室で一人の少年が欠伸を噛み殺し、本を読みながら時折ペンを走らせていた。
「うーん……」
少年の名前は須賀京太郎。
清澄高校麻雀部六人……正確に言えばこの前引退した部長竹井久を抜いた五人の中で唯一の男子部員。
インターハイに出場する女子のために雑用を引き受け、料理まで作るようになった彼をクラスメイトはよく【清澄高校の裏方】だの【舞台を間違えた男】だの【ステルス京ちゃん】と呼んでいる。
なお最後のあだ名に関しては京太郎の中学からのクラスメイトで麻雀部の仲間でもある文学少女が
「京ちゃんって呼んでいいのは私だけなのに……」
と不機嫌になっていたりしたが、そこは今回の話には関係ないので割愛。
4 = 1 :
「えーっと、この状況で捨てる牌は……」
こんな風に多分に皮肉も混じっているあだ名の数々を与えられている京太郎だが、本人は特に気にしていない。
理由は諸々あるがその中でも大きいのは、彼が軽そうな見た目に似合わず温厚な性格をしているという事と、彼はそれを当然の事として受け入れてるという二点だろう。
「よし、正解だ!これで和にもらったテスト初心者用は全部クリアしたぜ!」
そもそも彼は麻雀を始めて半年近くの初心者で、一方彼の部活の仲間達と来たら最低でも二、三年の経験がある経験者ばかり。
そんな環境で自分が一番弱いのは当たり前であり、あっさり追いつく事が出来るなんて考える事の方がみんなへの侮辱だ。
彼女達の努力を間近で見てきた京太郎は本気で思っているのだ。
「あーっと、もうこんな時間か。勉強はこの辺にしてそろそろ牌譜整理でもするか」
無論京太郎だってただ置いていかれるつもりは毛頭ない。
彼の今の目標はインターハイを通してさらなる飛躍を遂げたみんなの練習相手くらいにはなる事。
ひたすらに自分が教えられる立場に甘んじるのを許容出来ない程には、京太郎にだってプライドはあるのだから。
5 = 1 :
――
「こんにちはー」
それから数分後、部室に来た宮永咲を出迎えたのは開けっ放しの窓から入り込む風とそれに揺られるカーテンだった。
「あれ、誰もいないや……鍵は開いてたからどこかに行ってるのかな?じゃあ本でも読んで待ってようっと」
少しばかり周りを見回して部室に誰もいない事を確認した咲は、鞄を置くとまだ読んでいない本を探すため部室に置かれた本棚へと向かう。
「あれ?」
しかし本棚に向かう途中チラッとベランダを見た咲は、そこに佇んでいる金色に気付いた。
「……」
「京ちゃんだ、ベランダで何してるんだろう」
中学からのクラスメイトであり、自分に再び麻雀を始めるきっかけをくれた男の子。
口にこそ恥ずかしくて出せないものの、咲が強く感謝している人はどうやら困っているようで。
「……」
しきりにベランダから下を見てブツブツ呟いている京太郎に何をしてるんだろうと咲が首を傾げたのと同時、京太郎がベランダを乗り越えそこにあるベッドチェアーを素通りする姿が映った。
「……」
だんだん部室から姿が見えなくなっていく京太郎に咲が一抹の不安を覚えたのは文学少女な彼女が想像力を鍛えられすぎたせいか、はたまた虫の知らせか。
とにもかくにもこの時咲は……
(京ちゃん……まさか!?)
――途方もない勘違いをしていた。
6 = 1 :
――
「ちくしょう、ついてねえな……」
一方咲がとんでもない勘違いをしているどころか来ている事にもまだ気付いていない京太郎は、屋根の端に立ちながら数分前に自分を襲った悲劇に頭を抱えていた。
勉強を終えてみんなが来る前に牌譜整理をしておこうと思い至ったまではよかったのだが、ファイルから牌譜を取り出した瞬間に突風が吹き京太郎の手から牌譜をさらっていってしまったのである。
もちろん京太郎もすぐに飛んだ牌譜を拾い集めたのだが、その中の一枚が窓から出て屋根の端に引っかかってしまって。
最初は旧校舎から出て落ちてくるのを待とうかとも考えたが、何回風に吹かれても動きもしない牌譜に自分が取りに行くしかないと決断したのが少し前。
というわけで現在京太郎は足を滑らせたりしないように慎重に屋根の端に向かっているのである。
「見事に引っかかってんな……っと」
こんな事なら風があって涼しいからって窓開けなきゃよかったな……と呟きながら京太郎は牌譜に手を伸ばす。
何回も手を伸ばしては届きそうで届かない状況に、微妙に顔をひきつらせながらも京太郎は諦めずに手を伸ばし……
「よし、取れ……」
「京ちゃん、だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
牌譜を掴んだ瞬間、背中に強い衝撃を受けた。
7 = 1 :
「さ、咲ぃ!?」
いきなりの衝撃に京太郎が何事かと後ろを見てみれば、そこにいたのは彼が常日頃ちんちくりんとからかっている少女の姿。
普段はよく転び、よく迷子になるおそらく京太郎が一番仲のいい女友達は、どこにこんな力があるのかと言いたくなるくらい京太郎の腰をガッシリと掴んでいる。
「ちょっ、お前危な……」
ここで思い出して欲しい……京太郎は牌譜を取るために腕を伸ばしていた状態だという事を。
加えて牌譜を取れた安堵から緊張を解いた彼の身体はこれ以上なく油断した状態だったのである。
そんなところに小柄な女の子とはいえ人間が突っ込んできて耐えられるわけがなく。
「ぐえっ!?」
――結果落ちないように身体を無理に捻り、バランスを崩した京太郎は屋根に思いっきり顔を打ちつけた。
8 = 1 :
「だめ、だめ、だめだよ京ちゃん!確かに京ちゃんが麻雀の腕がなかなか上達しないって悩んでたのは知ってたけど、何も死ぬことなんてないよ!早まらないで京ちゃん!」
腰にしがみついたまま泣き叫ぶ咲に京太郎は彼女がとんでもない勘違いをしているのだと察した。
察しはしたのだが……はっきり言って今はそれどころではない。
(いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?)
京太郎は屋根に鼻と歯を強打した痛みに声無き悲鳴をあげていたのだから。
歯が取れなかったのは奇跡といってもいいかもしれないが、そんな喜びもすぐに痛みのせいで塗り潰される。
「……と、とりあえず落ち着け咲」
だが京太郎はそんな状態でも咲を宥めようと起き上がり声を出す。
咲がこんな事をしたのは勘違いしたとはいえ自分のためだし、自分の背中を濡らすものを止めたいと思ったから。
「落ち着いてなんていられ……ああっ、京ちゃん、鼻血出てるよ!?」
涙でグシャグシャになっていた咲は京太郎の顔を見るなり悲鳴をあげる。
そこでようやく京太郎は自分が鼻血を出して自分の学ランとシャツを真っ赤に染めていた事に気付いた。
(ぐあっ、マジかよ!?この前クリーニングから返ってきたばっかりだってのに!)
「は、はい、ティッシュ。京ちゃん、大丈夫?痛い?」
思わず恨み言を言いたくなった京太郎だが、心配そうにあたふたしている咲を見るとそれもどんどん萎んでいって。
結局感情の持って行き場を失った京太郎に出来たのは大きくため息を吐く事と、咲から受け取ったティッシュを全て使って鼻に栓をする事だけだった。
9 = 1 :
――
「京ちゃん!なんでこんな事したの!いくら悩んでるからって自殺なんて……」
鼻血を止め、部室に戻った京太郎は涙目の咲に詰問されていた。
とはいえ京太郎からすれば咲の考えは見当違い以外の何物でもないわけで。
「だから落ち着けっての」
「あうっ!?」
これくらいは許されるだろうと京太郎は咲の頭に軽くチョップを落とす。
自分のために泣いてくれる事に関しては思うところがないわけではないが、勘違いされたままではまともに話も出来ない。
「いいか咲よく聞け、まず俺は……」
だが咲が頭を抱えた隙に事情を説明しようとした京太郎の言葉は……大きな音を立てて開けられたドアに遮られた。
「今日も楽しく麻雀だじぇ!」
「もうゆーきったら……」
「おーう、咲と京太郎はもう来とったんか……って京太郎、あんたなんじゃその服についた血は!?」
「鼻にティッシュ詰めてるけど……なに、どうしたの?」
ゾロゾロと入ってくる部のメンバーに京太郎は服を何とかしないとまた勘違いされるんじゃないかと悟ったが時すでに遅し。
目ざとく京太郎の異変に気付いたまこと久の問いに京太郎がどう説明したものかと少し考えたその隙に
「あっ、みんな!ちょっと聞いてくださいよ、京ちゃんが……」
「ちょっ!?」
勘違いしたままの咲が勘違いしたままの話をみんなにしてしまったのだった……
10 = 1 :
――
「……」
咲が多分に主観の混じった話をしてくれてから数分後、椅子に座りながら京太郎は目の前の惨状にどうしたものかと頭を抱えたくなった。
それだけ京太郎が自殺しようとしていたと誤った話を聞かされたみんなの反応が、予想以上に深刻だったのである。
「まさか須賀君が飛び降りを図るなんて……」
「そこまで思い詰めとったとは……気づいてやれんで本当にすまんかった!」
「いえ……」
チラッと先輩二人を見てみれば久は申し訳なさそうに、まこは心底悔しそうにという違いこそあるものの揃って沈痛な面もちを浮かべている。
必死に隠そうとはしているものの目は潤んでいて、ほんの少しきっかけがあれば泣き出してしまいそうな二人に京太郎は自分が悪いわけではないはずなのにいたたまれない気持ちになった。
11 = 1 :
「ひっく、ぐすっ……きょ、京太郎、私のせい?私がいつも負けた時馬鹿にしてたから……」
「ゆーき……」
そんな状態で二人が泣かないのは間違いなく和に抱き締められながら号泣している優希がいるからだろう。
京太郎本人もまさかここまで泣かれるとは思っていなかったが、優希が嘘泣きが得意という話は聞いた事がないので間違いなく本心で泣いているのだろう……これまたいたたまれない、というかそもそも誤解なので見ていて辛くすらある。
「見てよ京ちゃん、みんな京ちゃんが死んじゃうなんて嫌だからこんなになってるんだよ?だから馬鹿な事を考えるのは……」
京太郎は胸の前で手を合わせて説得を繰り返しているつもりなのだろうこの状況を作り出した元凶を見やる。
自分のためにここまで言ってくれる事には正直嬉しい気持ちがないわけではなかったが……さすがにこれ以上誤解を解こうとしなければ自分にもとばっちりが来るのは間違いない。
そういう事を色々考えた結果……京太郎は道連れにされる前に誤解を解く事に決定した。
(すまん咲、怒られるなら一人で怒られてくれ)
12 :
待ってた!
13 = 12 :
待ってた!
14 = 1 :
「あの、とりあえず話を聞いてくれませんか……」
「なに、須賀君……言いたい事があるなら恨み言でもなんでも……」
誤解を解くために口を開いた京太郎に久が勘違いしているが京太郎はそれを遮るようにして話を進める。
「えっと、ですね……大前提として、俺は死ぬ気なんかありませんよ?」
「……は?」
そう口にしたのは誰だったか、今となっては京太郎は全く覚えていない。
ただ確かなのは、自分がそう言った途端に場の空気が凍りついた事、そして……
「……咲、これはどういう事かしら」
「言っとくが、冗談では済まされんぞ……」
「咲ちゃん、嘘ついたのか……?」
「咲さん、説明を求めます……」
「……え、えっと」
京太郎が事情を話していくにつれて自分が勘違いしていたと理解した咲が、みんなに睨まれて冷や汗をダラダラと流していた事だった。
「きょ、京ちゃん、助け……」
「……悪いけど巻き込まないでくれ」
「京ちゃーん!?」
無論京太郎が咲を庇うわけがなく。
「咲ぃー?」
「咲!」
「咲ちゃん!」
「咲さん!」
「ご、ごめんなさーい!!」
みんなの追求を受け壁際に追い詰められた咲はただひたすらに謝る事しか出来ずにいたのだった……
15 = 1 :
京太郎(全く咲はおっちょこちょいだな……でもまさかこんなに心配されるとは思わなかったな)
――しかしこの時の出来事が自分の中の歯車を変えた事に
京太郎(へへっ、こんなに思ってくれてるならみんなのためにもっと頑張らないとな)
――この時の京太郎は全く気付いていなかった。
16 = 1 :
――翌日
久「いやあ、昨日は色々と大変だったわね」
まこ「結局全部咲の勘違いだったからのう」
優希「そういえば昨日打ってないじぇ」
和「それどころではありませんでしたからね」
咲「ううっ……」
京太郎「全く咲の奴は人の話を全然聞いてくれないしまいっちゃいましたよ」
咲「い、いや、でももしかしたらって可能性もあったし……」
京太郎「あのなあ、いくら麻雀で勝てないからってそんな馬鹿な事するわけないだろうが!お前ならそれくらいわかってると思ったんだけどな……」
咲「うっ……ご、ごめんなさい」
優希「もう、咲ちゃんと京太郎は人騒がせだじぇ!」
京太郎「俺もかよ!?」
和「でも勘違いでよかったです……」
久「いやー、私が買い出しを任せっきりにしてたからって焦っちゃったわ。まあ、勘違いだったならこれからも須賀君には買い出しを頑張ってもらって……」
まこ「あんたは少しは反省せんかい!」
17 = 1 :
京太郎「いやー、それにしても……」
まこ「んっ?」
京太郎「俺って意外に愛されてたんですね、あはは……」
優希「んなっ!?ちょ、調子に乗るなよ京太郎!」
京太郎「そういや誰かさんはすごく泣いてたもんなあ……」
優希「わ、忘れろバカ!」
京太郎「いやー、あれはなかなか忘れられないだろー」
優希「そのニヤニヤ笑いはやめろー!」
久「はいはい、じゃれ合いもそこまでにして部活始めましょう」
咲「ううう……」
まこ「叱った身としてはあんまり言えんが、咲もいつまでも落ち込んどってもしかたないぞ、切り替えんさい」
咲「は、はい……」
優希「京太郎、こうなったら麻雀で決着をつけるぞ、卓につけ!」
京太郎「はっ、望むところ!俺だって勉強してるんだ、簡単には負けないからな!」
18 = 1 :
――
京太郎「リーチ!」
優希「通らないな!ロン!倍満だじぇ、24000いただきー!」
京太郎「げえっ!?」
――
京太郎「……うっ」
京太郎(牌が一つも被ってないとか勘弁してくれよぉ!?)
――
京太郎「」
優希「ふふん、これくらいで勘弁してやるじぇ」
京太郎「ち、ちくしょう……容赦なく何回も何回もとばしやがって……」
久「全局ヤキトリか……これはまた酷いわね」
京太郎「ぐうっ……」ガクッ
まこ「うなだれてしもうた」
久「まあまあ、須賀君。こういうのはこんな日もあると思うしかないわよ」
京太郎「それもそうですね……よし、もう一回だ優希!」
優希「ふん、何回来ても返り討ちにしてやるじょ!」
咲「が、頑張って京ちゃん!」
京太郎「おう!」
京太郎(そうだよな、ただでさえやってる時間がみんなより短いんだし、気合い入れて頑張らないとな!)
――
優希「ツモ!」
和「ロン」
咲「カン!」
京太郎「点棒が、俺の点棒が羽生やして飛んでいく……」カタカタ
優希「京太郎も飛んだな!」
京太郎「ぐふっ……」
19 = 1 :
――須賀家
京太郎「くああ……今日は疲れたなあ」
京太郎「全局ヤキトリなんて久しぶりだったな……ここ最近は一、二回は和了れてたんだけど」
京太郎「一応牌譜は借りてきたけど……酷すぎるだろこれ」
京太郎(配牌は五向聴、ツモは裏目が当たり前、鳴いても対子や順子、暗刻が二、三出来ればいい方……酷いと対子三つくらいしか出来てない局もある)
京太郎「はあっ、さすがにちょっとヘコむなこれは……」
京太郎(やっぱり俺が練習相手になるにはまだまだ時間がかかりそうだな……)
京太郎「頑張らないとな……」
ザザッ!
京太郎「……んっ?」
京太郎(何だ、今の耳鳴り……それに急に眠く、なって……予想以上に疲れてたのか、俺……)
京太郎「とりあえず、寝よう……明日はもう少し運が良くなってますように、ってな……」
京太郎「グー……」
20 = 1 :
――翌日
京太郎「……はあ」
咲「京ちゃん、どうしたの?」
京太郎「いや、昨日結局一回も和了れなかったなあって思ってさ」
和「長くやっていればあんな日もあります。あまりひきずったらダメですよ?」
京太郎「ああわかってるよ、さすがにあれが続くなんてないだろうしな」
優希「ふっふっふっ、それはどうかな……今日も私が昨日みたいにボコボコにしてやる、座れ京太郎!」
京太郎「言ったなこのやろ、昨日みたいにはいかねえからな!」
――数分後
優希「ダブリーだじぇ!」タンッ!
京太郎「相変わらず速いな、おい……」
優希「東場の私は無敵だからな!一発……はならずだじぇ!」タンッ
和「ゆーき、もう少し落ち着いて打ってください……」
京太郎「……ふむ」
咲(京ちゃんも聴牌したみたいだね……うーん、まだカン出来ないしどうしようかな……)
京太郎「……リーチ」
咲「……あれ?」ピクッ
優希「どうした咲ちゃん?」
咲「う、ううん、なんでもない」
咲(何だろう、今何か変な感じがしたような……今は何も感じないし気のせい、かな?)
京太郎「あ、あれ?……あ、ああっ!?」
21 = 1 :
優希「のわっ!?ど、どうした京太郎?」
京太郎「……い、いや、なんでもない」
優希「なんだ、タコスを忘れたのかと思ったじぇ」
京太郎「いや、お前じゃないんだからそれだけはない」
優希「私がタコスを忘れるわけなかろう!」
京太郎「そっちじゃねえよ!」
咲(京ちゃん、どうしたのかな?えっと京ちゃんのリーチ時の捨て牌は5索か……)
京太郎「あっ、き、来たぜツモ!1000-2000!」
京太郎手牌
345m 34577p 13888s ツモ2s
咲「えっ」
咲(タンヤオ三色捨てての2索単騎リーチ!?確かに4索は一枚切れで残りは私が二枚持っててもう一枚は嶺上牌だったけど、京ちゃんにそれがわかるはずないのに……)
優希「なっ、東一局で私じゃなくて京太郎がリーチ一発ツモだとぉ!?」
京太郎「へへっ、今日は調子がいいみたいだな……というか咲、いくら俺が一発ツモしたからってその驚きに満ちた顔は酷くないか?」
咲「えっ、あっ、ごめん……」
優希「だがしかし京太郎!偶然一回和了れたからって調子に乗るなよ!」
京太郎「これくらいで調子に乗るかっての、さて次だ次!」
咲(き、きっと結果的に上手くいっただけだよね。京ちゃん、驚いてたしきっとそうなんだよね……?)
22 = 1 :
――
京太郎「よ、よし、とりあえず二位にはつけた……ここから大逆転だ!」タンッ
咲「カン」
京太郎「あっ」
咲「嶺上ツモ、責任払いで6400だよ、京ちゃん」
京太郎「ラ、ラス転落……やられた!」
優希「きゃははは!あんなにかっこつけてそれじゃ話にならないじぇ!」
和「ゆーきも大差ない点数でしょう……」
優希「いやん、それは言わない約束だじぇ、のどちゃん」
咲「……」
咲(なにこれ、どういう事……おかしい、絶対何かが変だよ!?)
久「おはよー、早速打ってるみたいね、感心感心」
優希「おはようだじぇ、部長!」
京太郎「いいんですか、受験生なのにこっちに来てて」
久「大丈夫よ、勉強は家でちゃんとしてるから。それで調子はどう?」
和「今半荘一回終わったところです」
優希「京太郎が生意気にも東場の私を差し置いて和了ったんだじょ!」
京太郎「今日は運がよかったみたいでこのメンバー相手にオーラス前は二位だったんですよ」
和「最後は咲さんにまくられてましたけどね」
京太郎「それを言わないでくれよ……」ガクッ
久「ふふ、やっぱり昨日みたいな絶不調は一時的なものだったのね」
京太郎「はは、そうみたいです」
咲「……部長」
久「なにかしら?」
咲「ちょっと見ててもらっていいですか?」
久「私は構わないけど、どうかしたの?」
咲「見てもらえればたぶん、わかります」
久「……わかったわ、それじゃあみんなもう一回やってもらえる?」
和「わかりました」
優希「はーい!」
京太郎「了解です」
23 = 1 :
――
優希「ツモ!6000オールだじぇ!」
京太郎「二巡目で親跳ねかよ!?」
優希「今度はさっきまでのようにはいかないじょ!さあ、一本場だ!」
京太郎「くうっ、なんとか流さないと……」タンッ
咲「……」タンッ
和「……」タンッ
優希「どんどんいくじぇー!リーチだ!」
久(二巡目でリーチ、やっぱり東場の優希は手作りが速いわね……他はまだ二向聴……須賀君の配牌がいいって事以外はいつもと変わらない気がするけど咲は何を見せたいのかしら)
――五巡目
京太郎手牌
123579m 123p 99s 白白 ツモ9s
久(須賀君が聴牌か……八萬はまだ誰も持ってないし河にもないから、須賀君なら当然ここはチャンタを狙うために五萬を……)
京太郎「……リーチ」打9m
久「!?」
24 = 1 :
久(チャンタを消す九萬切りリーチ!?六萬は二枚切れなのにどうして!)
京太郎「あっ、また……!」
和「須賀君?」
京太郎「……いや、なんでもない」スッ
京太郎手牌
12357m 123p 999s 白白 ツモ6m
久「嘘……」
京太郎「よ、よっしゃ、ツモ!リーチ一発ツモ、1300-2600は1400-2700だ!」
優希「ぬあああ!また京太郎に流されたー!」
京太郎「どうだ優希!これが俺の実力だぜ!」
優希「ま、まだまだ勝負はこれからだ!早くサイコロを回せ京太郎!」
京太郎「はいはいっと」
久「……」
久(今のはなんだったの……まるで須賀君が次に六萬を引くってわかってたような……いえ、まだそうと決まったわけじゃないわね。とりあえず終わりまで見てみましょう)
25 = 1 :
京太郎「ツモ!1000-2000!」
優希「ま、またぁ!?」
和「これで須賀君は四回目の和了ですか……どうやら今日は本当に調子がいいみたいですね」
京太郎「そうみたいだな……まあ、ドラは乗らないし他の役全然つかないからあんま稼げないけど」
和「ロン、9900です」
京太郎「おぉ……まくられたか」
久(調子がいい、ねぇ……三巡目から五巡目に必ず聴牌して、リーチしたら絶対に一発ツモなんて調子がいいって言葉で片づけていいものなのかしら……)
京太郎「ど、どうでした部長?」
久「須賀君、いくつか聞いていいかしら?」
京太郎「はい?」
久「あなた時々役を捨ててリーチしてた時があるけど何か考えがあってそうしてたの?」
京太郎「えーっと……すいません。いつの間にかそうなってるんです……」
久「いつの間にか?」
京太郎「えぇ、違う待ちにするべきなのはわかってたんですけど、なぜか気付いたらいつもその待ちにしてて……やっぱりミスでしたよね?」
久「そう、いつの間にか……須賀君」
京太郎「は、はい!」
久「これはまだ予想の段階だけど……もしかしたらあなたにもあるのかもしれないわよ」
京太郎「な、何がですか?」
26 = 1 :
久「さしずめ……咲や優希みたいな普通なら考えられない力、ってところかしらね」
27 = 1 :
咲「……!」
優希「へっ?」
京太郎「マジ、ですか?」
和「そんなオカルトありえません」
久「まだはっきりとは言えないわ……でも少なくとも一回の半荘でリーチ一発を四回も叩き出すのは普通じゃない。咲、前の半荘で須賀君は何回和了った?」
咲「えっと、三回です」
久「その内和了役がリーチ一発だったのは?」
咲「……三回、です」
久「……これはいくらなんでもねぇ」
京太郎「俺が咲達みたいな、力を……?」
咲「京ちゃん……」
久「まあ、もう少しデータを取らないと何とも言えないけどね。とりあえず須賀君にはもう少し卓に入ってもらうから」
京太郎「わ、わかりました!」
久(さて、力に関してはほぼ間違いないとは思うけど。それにしても須賀君がリーチする時を覚えてないというのは気になるわね……)
28 = 1 :
――
京太郎「うーん……!」
咲「疲れちゃった?」
京太郎「こんなに続けて打ったのは初めてだからな……もしかしたら合宿の時より打ったんじゃないか?」
咲「京ちゃん今日の部活が終わるまでずっと打ってたからね。合宿の時は交代してやってたし」
京太郎「そりゃ疲れもするわな。でも力かー……」
咲「京ちゃんにもあったなんてね……部長、ずっと牌譜見ながら唸ってたよ」
京太郎「まだ実感湧かねえし、勝ててるわけでもないけどな……一位だって一回もなかったし」
咲「それはきっと打ってれば慣れるよ!今日の対局だって京ちゃんヤキトリゼロだったし、和了も多かったし!」
京太郎「……なあ咲?」
咲「なあに?」
京太郎「これで、少しは俺もみんなの練習相手になれんのかな?」
29 = 1 :
咲「えっ?」
京太郎「やっぱり、練習してても初心者な俺が足を引っ張ってた気がしてたからさ……みんなに迷惑かけてたんじゃないかって思うんだよ」
咲「……」
京太郎「インターハイ中も自分なりに勉強はしてたけどまだまだみんなの背中は遥かに遠くで……そんな俺でもこれで少しは役に立てるのか?」
咲「……」
京太郎「……悪い、変な事言ったな。忘れてくれ」
咲「おかしいよ、そんなの」
京太郎「えっ?」
咲「役に立つってなに?京ちゃんは私達と同じ部員であってマネージャーとかじゃないんだよ?」
京太郎「いや、それはそうだけど……」
咲「いいんだよ、京ちゃんだってみんなに頼って。京ちゃんが支えてくれた分、みんな返してあげたいって思ってるんだから」
京太郎「……」
咲「京ちゃんが何かに目覚めたって言うなら私達がそれをものに出来るようにサポートするから……一緒に頑張ろう?」
京太郎「そっか……ありがとな、咲」
咲「ふふっ、どういたしまして」
京太郎「よし、じゃあ頑張るかー!」
咲「おー!」
咲(うん、これでいいんだよね。京ちゃんだって麻雀が好きなんだからきっと牌が応えてくれたんだよね……)
京太郎「さあて、明日も忙しくなりそうだな!」
咲(だけど、なんでだろう……)
咲(なんで、こんな変な気分になるの……?)
30 = 1 :
――須賀家
京太郎「ふぅ、とりあえず部長に言われた通り自分でわかる限りまとめてみたけど……うーん、これでいいのか本当に?」
京太郎「まあ、部長に見せて確認すればいいか……それにしても今日は色々あったな」
京太郎「俺が咲達みたいな力を、か……確かに言われてみればこのリーチ一発率はおかしいよな。あのインターハイ見てたから感覚おかしくなってたのかね俺」
京太郎(部長が外から見ていて感じた感想によれば、俺のこの力は俺自身の配牌とツモ運を上昇させているらしい)
京太郎(そう言われてみれば確かに今日打った卓で配牌が四向聴以上はなかったし、無駄ツモだってほとんどなかった)
京太郎(うまく使えば麻雀歴半年の俺でもそれなりに戦えるって言うんだからすごい話だ)
京太郎「だけどなんでいきなりこんな力が身についたんだろうな……」
京太郎(それにリーチをかける時、決まって俺はその瞬間を全く覚えていない……咲達はそんな様子もないしどういう事なんだ?)
京太郎「……考えてもわかんねえな。とりあえず今はこの力をうまく使えるように頑張ろう」
31 = 1 :
――須賀京太郎の能力に関してのメモ
・配牌は常に四向聴から二向聴以内、三から五巡目に必ず聴牌する
・リーチをかけると次巡に一発で当たり牌をツモれる
・この時俺自身は自分がなにを捨てたかどんな待ちにしてるか覚えてない
・和了る時つく役はツモ、リーチ、一発だけ。他の役はつかないしドラも全く乗らない
・聴牌してる時他の役の可能性があっても俺は全部崩しているらしい
今のところ俺自身にわかるのはここまでである……
32 :
おかえりー
前に止めた所まではやんの?
33 :
待ってました
続きが気になってたのでうれしい
34 = 1 :
――翌日
京太郎「部長、一応まとめてみました」
久「ありがとう。うーん……やっぱりリーチ時には意識がなくなっちゃうわけね?」
京太郎「はい、一瞬ですけど気付いた時には牌を捨ててリーチしてるんです」
久「ふむ……とりあえずその事に関しては様子を見ましょう。今日はいくつか試したい事があるから早速打ってみましょうか。私と後は……まこ、優希、お願い出来る?」
優希「了解だじぇ!」
まこ「おう、京太郎。昨日はわしがいない間に色々あったらしいのう」
京太郎「えぇ、まあ……自分でもイマイチ実感がわかないんですけど」
優希「私の得意な東場で和了っといてなにを言うか!今日は絶対に京太郎のペースにはさせてやらないからな!」グリグリ
京太郎「わかったから指でわき腹を突くな!」
久「咲と和は牌譜の方をお願いね。特に咲、須賀君の部分は念入りに、ね」
和「はい」
咲「わかりました!」
久「よし、始めましょう!」
35 = 1 :
優希「私の親だじぇ!サイコロ回れ!」
京太郎「今日はどうなるかね……」カチャ
咲(京ちゃんの配牌は……えっ!?)
京太郎配牌
11m 139p 11s 白白白 發發發
咲(す、四暗刻二向聴……!)
京太郎ツモ1m
咲(しかも第一ツモで最低でも三暗刻確定……この局は力を使う必要はないみたいだね)
京太郎「俺の麻雀人生で見たこともない最高の配牌なのに……」ボソッ
咲(えっ?)
京太郎「……」打1m
咲「!?」
咲(す、四暗刻捨てるツモ切りしちゃった……)
優希「リーチ!」
咲(も、もしかして……京ちゃん、力のオンオフが出来ないの?)
優希「一発ツモだじぇ!親満4000オールだ!」
京太郎「やっぱりこうなるのかよ……くうっ、持ってけ持ってけ!」
咲(じゃあ京ちゃん、五巡以内にリーチ一発ツモのみの手だけで聴牌できない局はどんなにいい手でも和了れないって事じゃ……そ、そんな!)
京太郎「……気付きたくなかった、こんなの」
久「須賀君、何か新しく気付いたのね?」
京太郎「えぇ……正直凹みそうな新事実が」
久「わかったわ。終わったら教えて」
京太郎「はい……」
咲(京ちゃん……)
36 = 1 :
咲(それから京ちゃんは二回リーチ一発でツモ和了しました)
咲(だけど他のみんなの火力相手だと京ちゃんはどうしても稼ぎ負けてしまい……)
咲(そして京ちゃんが和了れない局はまるで京ちゃんを笑うかのように最低でも跳満確定ばかりの配牌で……)
咲(そして京ちゃんが三位のまま半荘はオーラスを迎えました……)
京太郎配牌
2477m 569p 3579s 北白 ドラ5s
咲(京ちゃんはタンヤオドラ1の四向聴だね……)
京太郎(まくるにはリーチ一発ツモだけじゃ足りない……なんとかしないと)
京太郎ツモ3m
打白
――二巡目
23477m 569p 3579s 北 ツモ3s
京太郎「……」打北
――三巡目
23477m 569p 33579s ツモ3s
京太郎「……」打9p
――四巡目
23477m 56p 333579s ツモ7p
京太郎(よし、聴牌!ここで、9索を捨ててリーチ、ツモ和了すれば、メンタンドラ1、ギリギリ逆転に……な、る……)
京太郎「……」ガクッ
37 = 1 :
久(来た!もし私の予想が正しければここで……!)
京太郎「……リーチ」打5s
久「ポン!」
京太郎「……はっ!え、えっと待ちは……」
咲(京ちゃんダメ……それじゃ和了っても、トップには足りない……!)
京太郎「く、そっ……あれ?」
京太郎(なっ、なんで……)
京太郎ツモ7m
京太郎(当たり牌じゃないんだ……!?)
久「須賀君、気付いてないのかもしれないけど……あなたがリーチした瞬間、私が鳴いたのよ」
京太郎「あっ、本当だ……じゃあツモ切りですね……」タンッ
久「それでね、須賀君……あなたには酷な話かもしれないけど」
京太郎「はい?」
38 = 1 :
久「ロン」
久手牌 5557m 555p 777s 555s
久「タンヤオ三色三暗刻トイトイドラ3……親倍24000よ」
39 = 1 :
京太郎「……えっ?」
まこ「京太郎、リーチ棒含めて-25000……あんたのトビじゃ」
京太郎「あっ、あぁ……ま、まいったなー!まさか当たり牌掴まされちゃうなんて……」
久「須賀君」
京太郎「本当に、運が悪かっ……」
久「須賀君!」
京太郎「……」
久「あなたには残酷な話かもしれない。だけど聞いて……」
京太郎「い、いやです……!」
久「……」
京太郎「だって、だってそれを聞いたら……」
京太郎(聞いたら俺は……!)
久「須賀君、それでも聞きなさい。あなたは……」
京太郎(言うな、言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな……部長、言わないでくださ――)
40 = 1 :
久「――リーチ後に鳴かれたら、次のツモで誰かの当たり牌を掴まされる可能性が高いわ」
41 = 1 :
――須賀京太郎の能力新情報
・五巡目以内にリーチ一発ツモのみの待ちに出来ないようなら、たとえそれが配牌で聴牌出来ても絶対に和了れない
・リーチ後に鳴かれた場合次のツモで必ず誰かの当たり牌を掴まされる
42 = 1 :
――須賀家
京太郎「……まいったな」
京太郎(結局、今日は俺の能力について色々試してはみたけど結果はいいものとは言えなかった……)
京太郎(まず俺が気付いた五巡目時点でリーチ一発ツモのみの待ちに出来ないならその局は絶対に和了れないという法則……)
京太郎(試しに一回だけ他のみんなが当たり牌を引いても和了らずに流局まで行ってみたが、ツモどころか捨て牌にすら俺の当たり牌は来なかった)
京太郎(次に、リーチした後に鳴かれたら他家の当たり牌を掴まされる……これは十回試して十回全部掴まされた時点で俺は考えるのをやめた)
京太郎(さらにその後新しい欠点が二つも見つかった……俺が和了れるのはツモだけでロンが全く出来ないって事、もう一つは俺自身が鳴く事が出来ないって事だ)
京太郎(不思議な事に俺の当たり牌や有効牌を相手が出してくれた事は一度もない……これは相手が清澄のみんなだからなのかもしれないけど)
京太郎(とにかく俺のこの力は打点は低い、和了は制限される、鳴かれたら振り込み確定、リーチの形すら自分の意志で選べないという四重苦を抱えてるわけだ)
43 = 1 :
京太郎「ははっ……ここまで来ると笑いしか出てこないな……」
京太郎(ひょんな事から手に入れた力だけど、これならいっそのこと何もなかった方が良かったんじゃ……)
京太郎「ダメだ、どうしても考えがマイナスになっちまう……あっ」
京太郎(そういえば、咲が前にネト麻した時牌が見えないとか言ってたような……)
京太郎「あの時は何言ってんだとしか思わなかったけど、もしかしたら!」
――
京太郎「……六巡目なのに、まだ俺は聴牌してない。それなのに他に和了られてるわけでもない」
京太郎「やっぱりそうか……ネト麻なら力に影響されない!俺の思うように、俺の意志で麻雀が打てるんだ!」
京太郎「どうしても力が出ちまう部内の麻雀だと自分の地力が上がらないからどうしたもんかと思ってたけど、ネト麻を使えば今までみたいに打てる!」
京太郎「ははっ、ドラが乗る!役もつく!平和だってタンヤオだってネト麻なら和了れるんだ!」
京太郎「よっしゃあ、まだまだやるぞー!」
44 = 1 :
――
京太郎手牌
123445679m 444p 6s ドラ9m
京太郎ツモ6s
京太郎(よし、これで頭が出来た!九萬がドラだからリーチをかければツモでもロンでも満貫!八萬は一枚切れだから一通のチャンスは十分あるはず……!)
京太郎「それじゃ、四萬切ってリーチっと……」
グラッ……
京太郎「……あ、れ?」
京太郎(視界が、歪んで……嘘だろ、これいつもの……ネト麻なら力の影響は受けない、はずなのに……)
京太郎「……」ガクッ
カチ、カチカチ……
45 :
待ってたぞー!
…まだ旧スレの半分も進んでないのに既に胃が痛いなぁ(白目)
46 = 1 :
京太郎「はっ!?ま、待ちは、待ちはどうなって……」
京太郎手牌
12344567m 444p 66s
打9m
京太郎「あ……」
京太郎ツモ牌8m
47 :
>平和だってタンヤオだってネト麻なら和了れるんだ!
役満じゃないんだ…京ちゃん…
48 = 1 :
京太郎「は、はは……あはっ、ははははは……!」
京太郎(一発ツモとか……和了ってたら跳満だったじゃないかよ……)
――数巡後
京太郎ツモ牌4m
京太郎「500-1000……跳満12000がたったの2000……」
京太郎「傑作だ、ここまでだと笑う以外に選択肢ねえや……」
京太郎「確かに配牌とかツモには力は影響しなかった……だけどリーチかける時はネットじゃなくて俺の意識の問題だから影響されるってところか?」
京太郎「あはははははは……」
京太郎「……」
京太郎「ううあぁああああぁあああああ!!」
京太郎「はあ、はあ……ふざけんな、こんな、こんなのってねえだろ……?」
京太郎「俺が何したんだよ……俺、みんなと麻雀やって、負けても少しずつでいいから麻雀うまくなりたかっただけなのに……俺は、俺はぁ!!」
京太郎「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
49 = 1 :
――数日後
京太郎「……リーチ」
優希「ポ、ポン!」
京太郎「……誰か鳴きましたか?」
久「……えぇ、優希が鳴いたわ。見事にずらされたわね須賀君」
京太郎「そうですか、直前に部長も捨ててたから大丈夫だって思ったんですけどね……」
優希「え、えっと三巡目から五巡目に必ずリーチだから対策も取りやすいし、その……」
京太郎「いいんだよ優希、そんな畏まるな。鳴けば必ず直撃が取れるんだ、そりゃ俺だってそいつを狙うさ」タンッ
優希「あっ、うっ……ロ、ロン、7700だじぇ」
京太郎「ああ、ほら点棒……」
久「須賀君の打ち方は一度対策されたらもうボロボロになっちゃうわね……かといってリーチしたらもうどうしようもないし」
咲「リ、リーチせずにダマにすればいいんじゃないかな?それなら鳴かれて掴まされても直撃はされないし!」
京太郎「だけどそれだとドラも乗らないし役もつかないからツモのみになる……ただでさえ今でも火力不足なのにさらに下げたらもう戦いにならないんだ」
咲「……」
京太郎「それに疲れるんだよ……リーチが頭よぎらないようにするの。少しでも考えたらいつの間にかリーチしてるんだからな……」
咲「そ、そうか……ご、ごめんね京ちゃん、適当な事言っちゃって」
京太郎「いいよ、考えてくれるだけで俺は嬉しいからな……ありがとな咲」
咲「京ちゃん……」
50 = 1 :
まこ「じゃが現実問題として初見ならまだしもそれ以降はリーチをかけたら鳴かれて終わりじゃろうな。しかも誰かの当たり牌を掴まされるとなるとのう……」
久「うーん……どうしたものかしら」
京太郎「……俺、ちょっと飲み物買ってきます」
バタンッ……
咲「あっ、京ちゃん……」
久「1人にさせてあげなさい、咲。須賀君も須賀君なりに色々考えたいだろうし」
まこ「しかしどうしたもんかのう……今のままじゃと京太郎が新人戦で勝ち進むのはちと厳しいぞ?」
久「そうね……」
和「偶然の出来事について気をもんでもしょうがないと思うんですが」
優希「のどちゃんは相変わらずだじぇ……」
久(確かにこのままいっても須賀君は新人戦で勝ち残れない……だけど問題はそこじゃない)
――京太郎「……リーチ」
――京太郎「ツモです……」
――京太郎「……」ジャラッ
久(今の須賀君は、はたして麻雀を心から楽しめているのかしら……)
咲(京ちゃん、大丈夫かな……)
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