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    元スレ黒井「765のプロデューサーは静かに笑う」

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    251 = 151 :

    ………………


     後の始末は、警察とマスコミに任せよう。

     より迅速に事件を処理するために、都合の良いストーリーを考えるのは警察の仕事。

     より多くの人に売れるよう、情報をスキャンダラスに脚色するのはマスコミの仕事だ。


     絆というものは、時として思いもよらないほど大きな力を生む。

     より絆が深まり強固なものになった時も、その絆が壊れた時も。

     彼の不幸は、ひとえにその絆が生み出す力の偉大さ、恐ろしさを知らなかった事だろう。


     それはさておき、今後は果たしてどうなるかな。

     まぁ、上手くいかないかも知れないが、その時はまた次の手を講じていけば良い。


     いやぁしかし、黒井社長が偽物の脅迫状を作って見せてきた時は驚いたなぁ。

     俺にハッタリをかまそうとは、なかなか面白いおっさんだった。

     それに、あの優秀な元秘書さん、だいぶキレてたよな。

     やっぱ、アイツも社長の目を盗んで俺があげたコーヒー飲んでたんじゃねぇの?

     う、ふふ―――


    ………………

    252 = 151 :

    ………………


    『東京都大田区矢口二丁目付近で起きた、961プロ社有車の暴走死亡事件について、続報です』

    『池上警察署は昨日、同事件について記者会見を開き、司法解剖の結果、
     車の運転者及び同乗者の遺体から、致死性の高い薬物が検出されたと発表しました』



    『……えー、車を運転していました961プロダクション社長、黒井祟男氏からは、
     違法の麻薬物と思われる薬物』

    『そして、えー、同乗者である765プロダクション社長、
     高木順二朗氏からは致死性の高い薬物、パラコートが検出されております』

    『黒井氏が服用していた麻薬物につきましては、現況の規制薬物のいずれにも該当せず、
     現在も調査を進めておる段階でございます』

    『なお、考えられる事故、もとい事件の動機としまして、黒井氏は度々高木氏に対し、
     挑発的な言動を繰り返しており、同業の敵対者として捉えていたようであります』

    『961プロが業績不振に陥り、一方で業績を伸ばした765プロを妬ましく思い、
     その結果の犯行という可能性が高いと考えられております』


    『品川ふ頭の廃工場で、元961プロの星井美希と765プロのプロデューサーが、
     961プロの元秘書に襲われた事件がありましたが、関連性はあるんでしょうか!?』

    『その点につきましても目下調査中でございますが、被疑者の着衣から、
     黒井氏への恨みが込められたと見られる遺書が見つかっており、社の内部からも反発を……』

    253 = 151 :

    『……黒井のおっさんは、こんなつまらねぇ真似はしねぇ』

    『俺はこんなの、到底信じられねぇよ。何だってこんな事を……』

    『冬馬君、でも……最近のクロちゃん、明らかに様子がおかしかったし…』

    『うるせぇ! 分かってるよ……信じたく、ねぇんだよ……!』


    『……すみません、もうインタビュー良いですか?
     俺達、とてもそんな気分じゃなくて……すみません』



    『えぐっ、ひっぐ……うえぇぇぇ……たかねぇぇ………!』

    『……見ての通り、私達はまともに証言できる状態ではありません。
     どうかお引き取りを』

    『黒井社長がぁ……黒井が高木社長をぉ……!』

    『こんなの、ひどいよ……ひどすぎるよぉ………!!』

    254 = 151 :

    『え、うえぇ!? き、記者さんですか!?』

    『わわ、ちょっと待って、追いかけて来ないで! ってうわぁっ!!』

    ドンガラガッシャーン!

    『あいたたた……うわっ、ちょ、ちょっと! 急にコメントを求められても……』


    『やめて下さい! いい加減にしないと、ボク達怒りますよ!』

    『は、春香ちゃん大丈夫? て、手を……』


    『黒井社長は、数ヶ月くらい前までは普通に私達と接していたんですが、
     ある時急に様子が変わったんです』

    『その日から、961プロの様子もおかしくなっちゃった、ってひびきん達も……』

    『私達が前の事で知ってるのは、それくらいかなーって……』

    『あの……もう行っても良いですか?』

    255 = 151 :

    『ハニ……プロデューサーが、血だらけになって倒れていた、って皆から聞いて……』

    『プロデューサーは、秘書さんからミキを助けるために、ひどいケガをしたの……』


    『あの人……黒井社長は、厳しい人だったけど、頑張って結果を出せば認めてくれた人なの』

    『だから、こんなひどい……高木社長と一緒に死ぬだなんて……!』


    『でも、黒井社長、いつの間にか人が変わっちゃって……』

    『それに、この間のオーディション終わって、765プロに負けた時……』

    『ミキ、聞いたの……黒井社長、すっごく怖い事、言ってたの……』


    『覚えておけ、って……』

    『絶対に許さない……』

    『いつか必ず、後悔させてやる、って……!!』

    256 = 151 :

    ~961プロ~

    部長B「わざわざご足労いただき、ありがとうございます。
        臨時で961プロの社長代理をしております、広報部長のBと申します」

    あずさ「あ、あの……三浦あずさと申します。765プロで、一応アイドルを…」

    部長B「存じております。先日はオーディション合格、おめでとうございます」

    あずさ「い、いえ、そんな……すみません」ペコリ

    貴音「四条貴音です。三浦あずさの付き添いで参りました」

    部長B「ご無沙汰しております」


    部長B「今日は、三浦さんが765プロの代表という事で……?」

    あずさ「え、えぇ……本当は、私達のプロデューサーである律子さん、
        あと小鳥さんに来ていただけたら良かったのですが……」

    あずさ「その……社長が亡くなられてから、ショックで二人とも体調を崩してしまって……
        一応、年長者である私が行かなきゃ、って」

    部長B「そうですか、無理も無い……
        高木社長と一番親しくされていたのは、スタッフであるそのお二方でしょうから」

    あずさ「はい……」

    257 :

    なんか浦沢直樹のモンスターを思い出した

    258 = 151 :

    部長B「用件は、事前にお伝えした通りです」

    部長B「今のままでは、961と765、双方とも経営が立ち行かず、
        共にこの業界から消えてしまいます」

    部長B「大きな事務所が同時に二つも消えれば、この業界そのものの未来も危うくなる……
        五十嵐局長と、『オールド・ホイッスル』の武田氏もそれを危惧されています」

    部長B「あなた方にとっても、事務所の存続は決して無視できない緊急の課題でしょう」

    あずさ「仰る通りです……でも、今の私達には、とても事務所を引っ張れる人がいなくて、
        もうどうしたら良いのか……」

    貴音「あずさ……貴女一人が責任を感じる必要は無いのですよ」

    あずさ「でも、貴音ちゃん……皆、疲れ切ってしまって、だから私だけでも何とか……」


    部長B「我が社も同じです。表向きに代表を立てなければならないことから、
        今は私がその役を臨時で務めておりますが……」

    部長B「いずれにしろ、そう長続きするものではありません。
        我々も、次なる指導者を必要としているのです」

    259 = 151 :

    あずさ「そうですか……961プロさんは人が多いでしょうから、羨ましいわ…」

    部長B「いえ……前社長の独裁により、有能な者も含め大勢の社員が切り捨てられました。
        人材不足は、我々も一緒です」

    部長B「それに、我々にとって……いや、きっとあなた方にとっても、
        とある人物についてぜひ擁立すべきという声が、社の内部で挙がっているのです」

    あずさ「えっ……?」


    部長B「彼は765プロだけでなく、961プロ内部でも絶大な人望があります」

    部長B「今日は、その人物について、765プロさんと相談をしたかったのです。
        どうか、ご協力いただきたい」


    ………………

    260 :

    うわあああああああ

    261 = 151 :

    ………………


    「相談こそされましたが、私は961プロの代表になるのはお断り致しました」

    「ですが、何かあった時の相談役として、
      今後も度々961プロに顔を出させていただく事になろうかと思います」


    「惜しくも亡くなられた高木前社長は、人の絆の大切さを重んじておられました」

    「黒井社長にもそれを理解してもらいたく、私も何度も961プロを訪れましたが……
      力及ばずに関係がこじれ、悲しい出来事が起きてしまった事は誠に無念でなりません」


    「ですが、悲しみを知った私達は、違う道を選択することができます」

    「765プロと961プロ、双方の事務所が互いに手を取り合い、同じ道を歩む……
      今の私達になら、過去に出来てしまった溝を埋めることができるはずです」


    「本日、この場にご来席の皆様方に申し上げたい」

    「私は、アイドル業界の用語とか、専門的な知識はほとんどありません」

    「ただ、楽しく人付き合いをする趣味があるだけの、甲斐性の無い男です」

    「ですが、人という要素が絡まない出来事は、この人間社会において有り得ない」

    「聖人のような事を言うつもりはありませんが……
      どうか、今後の全ての出会いを、そして、その人達を大切にして下さい」

    「信頼と絆、団結をモットーに、新たな765プロを、引いてはアイドル業界の未来を
      その手で紡いでいく事をここに誓いまして、新社長の挨拶と代えさせていただきます」

    262 = 151 :

    ワアァァァァァァァ…!! パチパチパチパチ…!

    「えーではでは、しばしご歓談を」

    小鳥「ぷ、プロデューサーさん! 乾杯のご発声がまだですよ!」

    「えっ? あっ、そっかやべっ!」

    「ていうか俺もうプロデューサーじゃないですって! 何度言えば分かるんですか!」

    小鳥「ピヨッ!? ご、ごめんなさい!」

    ワハハハハハハハ…!


    部長B「という訳で、765プロと961プロの前途を祝して、乾杯!」

    一同「かんぱ~い!」

    パチパチパチパチ…!


    伊織「まったく! アンタって男は社長になっても全っ然しゃんとしないわね」

    春香「ま、まぁまぁ! そういうのもプロデューサーさんの良い所って事で、ねっ?」

    雪歩「そ、そうですよ! プロデューサー、一緒に頑張りましょう!」

    「う、うん……慰めてくれるのは嬉しいけど、さっきも言った通り俺もう社長…」

    やよい「うっうー! プロデューサー何だか元気ないですよー!
        一緒にスマイル体操しましょー!!」ピョン!

    「あーそうだなやよいスマイル体操しような、うん」

    263 = 151 :

    五十嵐「新社長就任、おめでとうございます。
        若いうちから大変でしょうが、高木さんとの恩義に誓って、私もできる限り協力しましょう」

    武田「如月千早さん、いますか? ぜひ、彼女と話をさせていただきたい」

    「どうもありがとうございます。おーい千早、武田さんが話をしたいそうだ」

    千早「は、はいっ! た、武田プロデューサーとお話ができるなんて、その…」ドキドキ…

    「ははは、表情が固いぞ千早。そう、この胸板のように」ペタペタ

    千早「んあぁ?」ゴゴゴ…


    北斗「だ、大丈夫ですか……?」

    「大丈夫だ、慣れてる」ボロッ…

    亜美「兄ちゃん、久しぶりだからっていきなりセクハラはまずいっしょ→」

    真美「いりょくぎょーむぼーがいだYO、兄ちゃん? んっふっふ~」

    あずさ「でも、プロデューサーさんが帰って来てくれて、本当に良かったわ~」

    律子「えぇ。そうでなきゃ、今頃私達もどうなっていたか……」

    「俺は、こんなにすごいアイドル達を埋もれさせたくないって思っただけです」

    「アッハッハ、そりゃそうだぞ! 何たって自分、完璧だもんなー!」

    冬馬「この間、ゲーセンのダンスゲームで翔太に負けてたじゃねぇか」

    「うがー!! うるさいなぁ、あれはたまたま靴紐が解けたからだぞ!」

    264 :

    なにも微笑ましくないのがすごい

    265 = 151 :

    翔太「とにかく、クロちゃんがひどい事しちゃった分、僕達も償うからさ」

    「気負う必要は無いよ、翔太。その代わり、今度はボクとダンスで勝負してね!」

    翔太「へぇー、面白そうじゃん!」


    美希「ハニー! ハニーは社長さんになってもミキのそばにいてくれるよね?」

    「仕事に余裕ができればな」

    美希「ムー……そういうツレない事言わないでほしいの!」

    美希「一緒に買い物とか、お昼寝したりしてくれなきゃ、ヤ!」ムギュッ!

    「こらこら、離れろってば」


    貴音「美希」

    美希「ん、なぁに貴音?」

    貴音「961プロの者が、あそこで貴女を探しておりました。
       この機会に、ぜひ本物の星井美希と話をしてみたいと」

    美希「えー? 961プロの人達なら、前にもミキ、それなりにお話してたよ?」

    美希「まぁいいや、売れっ子になるとファンの皆の相手をするのも大変なの。
       それじゃあハニー、またね!」フリフリ

    「おう」

    タタタ…

    266 = 151 :

    貴音「……プロデューサー」

    「ははは、貴音もやっぱそう呼ぶんだな。別に良いけどさ」

    貴音「ふふっ、これは失礼しました」


    貴音「あなた様」

    「ん?」


    貴音「人心の支配……」

    貴音「すなわち、人の上に立ち、ファンのみならず、大勢の人々を己の意のままに動かす」

    貴音「例えばの話、そのような“理想の王国”を本当に作れたとして……」


    貴音「しかし、その王国の中に、唯の一人だけ意のままに動かせない、
       得体の知れない異端者がいる……」

    貴音「その方が、より趣深いとは思いませんか?」


    「………………………………」


    「………ははは……へぇ」

    「貴音は面白い事を言うなぁ」


    ~おしまい~

    268 :

    貴音も騙せればなぁ

    269 = 264 :

    ずっと張り付いてた
    すごく面白かった乙です

    270 = 257 :

    怖いもの見たさにこんな時間まで追っかけ続けてしまった
    おつ

    271 :

    こんなプロデューサー初めてみた

    272 = 225 :

    まさか酒の席のアレは本音だったのか

    273 = 151 :

    スレタイと話の大まかな内容の元ネタは、洋画『隣人は静かに笑う』です。
    一方で、Pのキャラ設定は、貴志祐介の『悪の教典』より一部引用しております。

    バッドエンドって何が面白いんだろうと、苦手なりに悩みながら書いたためか、
    色々と稚拙で読みにくいところがあるかと思います。すみません。

    元ネタは、ラストの大どんでん返しが話題となったサスペンス映画の傑作ですが、
    レンタルビデオ屋さんに置いておらず、かつ廃盤となっているため、入手は非常に困難です。
    運良く手に入れる事のできる方は、ぜひこの駄文を読んだ後のお口直しに見てみて下さい。

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。
    それでは、失礼致します。

    274 :


    >>84の「誤解」は「渡りに船」ではなく必然という意味なのだろうか・・・

    275 :

    乙、面白かった。
    他にアイマスSS書いてないの?

    276 = 223 :

    乙、怖面白かった…怖いと思いつつズルズル最後まで引き込まれちゃった、こんなに嫌な汗をかいたSSは久しぶりだったぜ(←褒め言葉)

    277 = 243 :

    終わりが不吉過ぎる
    想像力が掻き立てられるエンドだった

    278 :


    何と無く草加雅人が浮かんだ

    279 = 151 :

    >>275
    これの一つ前は、美希・雪歩「レディー!」という地の文長編SSを書きました。
    洋画クロスという括りだと、ホームアローンやターミネーター2のパロディを書いています。

    280 :


    すごく気持ち悪くなった(誉め言葉)

    281 :


    胸糞なのに引き込まれたよ…悔しい、でも(ry

    282 :

    乙!
    この得体の知れない不気味さがよかった

    283 :


    「レディー!」の人だったか!
    衝撃的だったよ
    また何か書いて下さい

    284 :

    久しく全部読む事になった
    ラストが弱い気もするけど、読んでる途中は続きが気になって仕方なかったよ

    それと、バッドエンド実験作を書き溜めてる人ってあなただったのね

    285 = 164 :


    最後まで展開が読めなくて楽しめた

    286 :

    おつおつ面白かった
    Pの手のひらの上で丸く収まった感じだな

    287 :

    何が凄いって生き残った奴はきっちり幸せ?というか少なくとも悪いようにはしないうえで自分の野望を達成したんだよな…こわいわ

    288 = 171 :

    こんな中で貴音はどうする気なんだよぉ…

    289 :



    ナイスな胸糞悪さだった

    290 :



    これから貴音がどう動いていくのが気になるな…

    291 :

    胸糞にも読後がどちらかといえば清々しいものと
    まさしく胸糞で読んだことすら後悔するレベルのものがある
    これは前者

    292 :

    >>291
    わかる

    294 :

    乙…
    面白かったんだけど、気持ち悪い…
    黒井社長の言うとおりPは狡猾だったな


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