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    元スレ黒井「765のプロデューサーは静かに笑う」

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    1 :

    ワアァァァァァァァァァァァッ!!!

    冬馬「皆、今日は来てくれてありがとう!!」

    翔太「これからも僕達ジュピターをよろしくねー!」

    北斗「チャオ☆」


    キャアァァァァァァァァァ-…!!


    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1374399553

    2 :

    ほう

    3 = 1 :

    ~ライブ会場 楽屋~

    黒井「フン……せめてこの程度は働いてもらわんとな」

    冬馬「大仕事を終えた自分トコのアイドルに対する第一声がそれかよ」

    翔太「僕達、結構頑張ったと思うけどなぁ」

    黒井「当然だ。どれだけの金と時間を貴様らにかけてきたと思っている」

    北斗「結果を出さなければ話にならない……という事ですね」

    4 = 1 :

    翔太「でも、僕達と同期くらいの人達を見れば、比べ物にならないほど結果は出してると思うけど」

    翔太「例えば、この間オーディションで一緒だった765プロとかだって…」

    黒井「下を見て喜ぶな」ギロッ

    翔太「うっ……!」


    黒井「高木……いや、765プロの連中と我が961プロを同列で扱う事は許さん」

    黒井「万が一、765に後れをとるようなことがあれば……」グッ…

    ギリッ…!


    冬馬「……おい、おっさん」

    黒井「何だ」

    冬馬「コーヒー……こぼれてっけど」

    黒井「!」

    冬馬「何ボーッとしてんだよ。ほら、ハンカチ」スッ

    黒井「余計な事をするな。自分で持っている」

    冬馬「へっ、そうかよ」

    5 = 1 :

    北斗「それじゃあ、俺達はここで失礼します」

    翔太「クロちゃん、今度はもっと大きいステージで歌わせてねー」フリフリ


    翔太「じゃあ、今日も反省会しよっか。冬馬君の御用達の店で」

    冬馬「はぁ? 俺の御用達?」

    翔太「メイド喫茶」

    冬馬「なっ!?」

    北斗「おいおい、この間も行ったばかりだろう」

    冬馬「行ってねーよ! 北斗も乗ってくるんじゃねぇ!」

    「やいのやいの!」

    テクテク…



    黒井「…………フン」

    6 = 1 :

    コツ…

    高木「なかなか良い子達じゃないか」

    黒井「……!」


    高木「素晴らしいステージだったよ」

    黒井「呼んだ覚えは無いんだがな」

    高木「個人的にチケットを購入させてもらった。私一人でね」

    黒井「何のつもりだ?」

    高木「……敵情視察だと言えば、キミは納得するのか?」

    黒井「…………」


    高木「純粋に、961プロのライブを楽しみに来た。それ以上でもそれ以下でもないよ」

    黒井「……信じてやる理由など無い」

    高木「ハハハ。勝手にしてくれ」

    7 = 1 :

    高木「しかし、大したものだな。
       あれだけ大勢の観客達を前に、何とも堂々たるステージだった」

    高木「私の子達では、デビューしたての状態でこんな所に放られては、
       緊張して声などとても出ないだろう」

    黒井「我が961プロは、貴様らのような弱小事務所とは違うのだよ」

    黒井「アイドルとの信頼関係など、所詮、仲良しこよしをしたい未熟者の戯言にすぎん。
       高木……貴様には分からないだろうがな」

    高木「あぁ。確かに……私はまだ、甘い事を言っているのかも知れんな」


    高木「だが、私の所にもようやく、救世主となりそうな者が入ってくれることになってね」

    黒井「救世主だと?」

    高木「あぁ。プロデューサーが誕生するのだ」

    8 = 1 :

    黒井「これまでにもプロデューサーはいただろう。確か、眼鏡をかけた女の。
       新しく入るということか?」

    高木「ウム。今度は男だがね」

    黒井「……どちらにせよ、我が961プロにはどうでも良い事だ。
       せいぜい無駄なあがきを続けるんだな」

    高木「そうさせてもらうよ」


    高木「では、失礼する。お互い、体調には気をつけて」スッ

    黒井「大きなお世話だ」

    コツコツ…



    黒井「……救世主だと? 馬鹿馬鹿しい」

    黒井「どこまでも夢見がちな事を……」

    9 :

    黒井社長好きとしては期待せざるをえない

    10 = 1 :

    ~三日後、961プロ~

    秘書「社長。本日は午前にジュピターのオーディションとフヅテレビ局株主らとの会食、午後は…」

    黒井「今日のスケジュールは把握している。
       オーディションは、フヅテレビ系列の音楽番組だろう」

    黒井「そんなものに、この私がわざわざ出向く必要などない。小僧共の好きにさせておけ」

    秘書「はっ」


    ズズ…

    黒井「……少し苦いな。豆の炒り方を変えたか?」

    秘書「はっ。以前、もう少し苦味のあるコーヒーを、というご要望があったかと…」

    黒井「香りは良い。だが、これ以上炒る事が無いように」

    秘書「かしこまりました。係りの者に伝えておきます」


    黒井「会食前に、フヅテレビの幹部連中と話がある。出るぞ」ガタッ

    秘書「はっ」

    11 = 1 :

    コツコツ…

    黒井「…………ん?」



    受付嬢「お生憎ですが、本日は社長にそのような予定はございませんので…」

    「いや、だからですね……あぁもう、困ったな、何と言えば良いのか……」


    黒井「……何者だ、あの男は」

    秘書「分かりかねます」

    黒井「目障りだ。つまみ出せ」

    秘書「かしこまりました」パチン


    ザザッ!

    「うおっ!? な、何だこの黒服達は?」

    黒服「どうかお引き取り願います」ガシッ!

    「わっ、ちょ、ちょちょちょまっ!!」ジタバタ!


    「ちょ、ちょっと待って! 俺は確かに高木社長と約束をしているんだー!!」ジタバタ!


    黒井「……!?」ピクッ

    12 = 1 :

    受付嬢「高木社長……ですか?」

    「そうですって! だから、社長に話をしてみて下さい!」


    黒井「高木に用があるのなら、ここにはいないぞ」

    「えっ? あ、あなたは?」

    黒井「この事務所の代表を務めている者だ」

    「えっ!? じゃ、じゃああなたが高木……!」

    黒井「違うと言っているだろう! あの男と一緒にするんじゃあない!!」

    「ひっ!?」ビクッ!


    黒井「ここは961プロ。高木のいる765プロは別の事務所だ」

    「え、えぇぇぇっ!?」

    黒井「この業界に入って、まだ日が浅いと見えるな。私の事を知らんとは……」

    13 = 1 :

    「し、失礼しました!! 俺、じゃない、私うっかり勘違いを…!」

    黒井「いいからさっさとここを立ち去るがいい」

    「は、はいっ!! すみませんでしたぁ!!」ダッ!

    タタタ…


    黒井「……やれやれ、無駄な時間を過ごした。行くぞ」

    秘書「はっ」

    コツコツ…



    ブロロロロロ…

    黒井(……765プロ……男?)

    黒井「…………あの男か。高木が言っていたのは」

    秘書「何か?」

    黒井「独り言だ。黙って前を見て運転しろ」

    秘書「はっ。失礼致しました」


    黒井(………………)

    14 = 1 :

    ~フヅテレビ局~

    局幹部「いやいや、961さんが大変質の高いエンターテイメントを
        弊社にご提供下さるおかげで、我々は本当に笑いが止まりませんでして」

    黒井「我々の顧客は、あくまでアイドルを応援して下さるファンの方々です」

    黒井「それに応える方法の一つとして、フヅテレビさんにご協力いただくまでのこと。
       御社の隆盛とは別にある私の真意を、どうかご理解いただきたい」

    局幹部「えぇ、そ、それはもう分かっております!
        誤解をされるような事を申したようで、えぇ、お気を悪くしないで下さい、ハハハ、ハ…」ペコペコ

    黒井「………………」


    株主A「黒井さんの意識の高さには、毎度驚かされますな。
        あなたがいてくれれば、この業界も、引いてはこの市場も安泰でしょう」

    黒井「この業界は、個人の実力が全てです。
       ボーカルやダンス、ビジュアルで人々の心を掴み、その輪を拡げていく……」

    黒井「無駄に人と馴れ合おうなどとせずとも、今の私に対する皆さんのように、
       懇意にしようとする者は後からついてくるものです」

    株主B「ホホホ、これは手厳しい。事実ですがね」


    黒井「逆に言えば、人との馴れ合いばかりを重視し、個人の実力を軽視する者は、
       この業界のトップには立てない」

    黒井「いや、立ってはならない。
       どこぞの弱小事務所をご覧いただければ、皆さんにもそれがお分かりになるかと」

    15 = 1 :

    株主C「どこぞの弱小事務所……あなたが言うのは、765プロの事ですかな」

    局幹部「そう言えば、本日弊社の中でオーディションが行われてまして、えぇ。
        ひょっとしたらエントリーしているかも知れませんねぇ」

    黒井「エントリーしています。竜宮小町というユニットがね」

    株主D「おや? 弱小と罵る割には、765プロの動向にお詳しいですな」

    黒井「……ウチのジュピターも本日エントリーしておりますものでね。それだけです」

    株主E「おぉ~、それはそれは。私の家内が熱狂的なファンでして、ハハハ」

    株主F「おっ、Eさんもですか?
        実は私も娘がジュピターのチケット買ってこいってもううるさくて……」

    ハハハハハハ…



    局幹部「ではでは、961さんとは今後とも末永いお付き合いのほど、
        どうかよろしくお願いします」ペコペコ

    黒井「こちらこそ」

    株主A「期待しておりますよ」

    黒井「どうかご贔屓に」

    16 = 1 :

    コツコツ…

    秘書「お疲れ様でございました」

    黒井「下賤な連中は、話す内容も馬鹿馬鹿しい。退屈で余計に疲れる」

    秘書「左様で」


    テクテク…

    冬馬「おっ?」

    翔太「クロちゃーん!」フリフリ

    黒井「……貴様らか」


    北斗「社長も来ていたんですか。もしかして、俺達のオーディションを見に?」

    黒井「分かり切った質問にわざわざ答えろと言うのか? この私に」

    北斗「……すみません」

    冬馬「何だよ。オーディションに勝ったってのに、相変わらず冷てぇな」

    黒井「それこそ分かり切ったことだ。当然の仕事をした者にかける言葉などない」

    冬馬「はいはい」

    17 = 1 :

    黒井「……ん?」

    冬馬「あん?」クルッ



    伊織「………!」キッ!

    あずさ「い、伊織ちゃん、ほら。早く帰りましょう、ねっ? ……」



    黒井「……竜宮小町、か」

    冬馬「雑魚共にしては、まぁ良くやってた方だと思うぜ」

    黒井「765プロのアイドル……取るに足らんユニットと評価する理由は、それだけで十分だ」

    冬馬「何にせよ、アイツらに突っかかられちゃたまんねぇし、ずらかろうぜ」

    翔太「そうだね」


    コツ…

    翔太「あれ、クロちゃん帰りそっち?」

    黒井「セレブな私には、車があるのでな」

    秘書「…………」ペコリ

    北斗「な、なるほど……」

    18 = 1 :

    黒井「天狗になって足元をすくわれることが無いよう、せいぜい精進するがいい」

    冬馬「ならねーよ」

    北斗「どうもお疲れ様でした」

    翔太「クロちゃん、いつか焼肉おごってね」

    黒井「フン……」ピッ

    秘書「…………」コクリ


    冬馬「あん?」

    秘書「オーディション、お疲れ様でした。これを貴方方に、と」スッ

    冬馬「……う、うおっ!? 何だこれ、すげぇ入ってるぞ!」


    秘書「では、これで」ペコリ

    黒井「行くぞ、遅れるな」

    秘書「はっ」

    コツコツ…

    19 = 1 :

    翔太「ほえぇ~……クロちゃんも結構いいとこあるじゃん」

    北斗「せっかくだから、このお金で焼肉にでも行くか」

    冬馬「グレードの高いヤツな」

    翔太「やっりぃ~!!」ピョン!


    翔太「それにしてもさぁ……」

    北斗「どうした、翔太?」

    翔太「クロちゃんって、やたらと765プロにはキツイよね。
       弱小弱小、って馬鹿にしてるクセに、妙に対抗意識燃やしてるっていうか」

    冬馬「今に始まった話じゃねぇけどな」

    北斗「しかし、確かに異常ではあるな」

    翔太「名前が似てて、間違われるのが嫌だとか?」

    冬馬「あぁー、ぽいぽい」


    北斗「そういえば今日のオーディション、765プロに知らない人が来ていたな」

    翔太「あぁ、アレって社長でしょ? 765プロの」

    冬馬「ちげーよ、もう一人来てただろ」

    翔太「そうだったっけ? まぁいいじゃん、早く焼肉行こうよ!」

    テクテク…

    20 = 1 :

    ~夜、とあるパーティー会場~

    ガヤガヤ…

    五十嵐「おぉ、黒井社長。ようこそお越し下さいました」

    黒井「どんなサプライズが待っているパーティーかと、期待しておりました。
       『アイドル・クラシック・トーナメント』とは、中々良い試みですな」

    五十嵐「アイドル業界の未来を憂いているのは、私も同じです。
        あっと、良い所に……おーい、武田君!」フリフリ


    武田「五十嵐局長、どうもお世話様です。あっ、黒井社長も」ペコリ

    黒井「『オールド・ホイッスル』の視聴率は、相変わらず好調のようで」

    武田「年々下火になりつつある音楽業界ですが、その権威を守るのが僕の使命だと思っています。
       その意味では、『オールド・ホイッスル』の反響には手応えを感じているんです」

    黒井(思い上がった事を……)


    五十嵐「その中にあって、961プロは業界を支える要と言えますな。
        特に、ジュピターの活躍振りは、目を見張るものがある」

    黒井「彼らには、「王者でなければ生きている価値がない」と常に言い聞かせております。
       あの程度で満足されてもらっては困るのでね」

    武田「それは頼もしい」

    21 = 1 :

    五十嵐「最近は、「自分が業界を変えてやるんだ」という気概を持った者が現れない。
        そういう意味でも、あなたの指導方針は正しいのかも知れません」

    黒井「正しい事を世に知らしめることこそ、我々の使命では?」

    武田「あははは、おっしゃる通りですね」


    ザッ…

    高木「おーっ! これはどうも皆さんお揃いで」

    五十嵐「あぁ、765プロの高木社長!」

    黒井「!?」

    武田「お元気そうで何よりです。
       膝を痛めたとおっしゃっていましたが、調子はいかがですか?」

    高木「いやいや、まだ階段の昇り降りがキツくて。ハハハハ」


    黒井「五十嵐局長……このパーティーは、
       ランクC以上のアイドルを有する事務所の代表が招待されているはずでは?」

    五十嵐「高木社長には、予てより懇意にさせていただいているのでね。
        特別にお越しいただいたのです」

    高木「懇意にさせてもらっているのはこちらですよ、ハハハハ」

    黒井「…………」

    22 = 1 :

    武田「それで、そちらの方々は?」

    高木「おぉ、そうだ! 我が765プロのプロデューサー陣です。
       ささっ、キミ達自己紹介したまえ」ポンッ

    律子「は、はいっ!!」ビクッ!

    律子「あ、あのっ! 私、秋月律子、と申しゅます!
       このようなパ、パーティーにおお招きいただきまして、えと、あの、ご、ご機嫌麗しゅう…」

    (律子落ち着け。何言ってるか分からないぞ……)コソコソ…

    律子(ぷ、プロデューサーこそ、もっと前に出て下さいよ!)コソコソ…


    黒井「ムッ?」

    「あっ!!」


    「こ、これは黒井社長! 今朝はその、大変な失礼を致しまして、誠に……!」ペコペコ

    高木「おや、既に顔見知りかね?」

    黒井「あぁ、我が社に間違えて来ていた」

    高木「あぁ、そうか。そういえばそんな事を話していたねぇ、ハハハ」

    「お恥ずかしい限りです。改めて、本当に申し訳ございませんでした」ペコリ

    律子「うわぁ……第一印象最悪ですね、プロデューサー」

    「言うなよ」

    23 = 1 :

    五十嵐「おぉ、この青年が高木社長のおっしゃっていた新しいプロデューサーですか。
        なるほど、良い顔をしていますな」

    高木「とあるイベント会場で彼を見かけた時に、ティンと来るものがありましてねぇ」

    武田「高木さんに声を掛けられる前は、どんな仕事を?」

    「いえ、威張れるほどの職には就いておりません。地方のしがないサラリーマンです」

    高木「確か、銀行員だったと言っていたかな?」

    五十嵐「ほー、優秀ですねぇ」

    「いやいや全然、給料少ないですよ。世知辛いもんです」


    黒井「高木よりも、私なら少しはマシな待遇で迎えてやれただろうがな」

    「おっ? 本当ですか?」

    律子「ちょ、ちょっとプロデューサー! 失礼ですよ、高木社長の前でお金の話なんて!」

    「律子だって、人の事言えないだろ。
      高木社長がタクシー使いたいって言ってたのに、経費の無駄ですって怒ってさ」

    律子「なっ!? あ、あれは……!」

    武田「あははは、高木社長も形無しですね」

    高木「まったくですよ」

    ハハハハハハ…

    24 = 1 :

    律子「とにかく! 私は事務所の経営状況を憂慮して常日頃から経費削減の…!」

    ヴィー…!  ヴィー…!

    「おっと携帯が」サッ

    律子「プロデューサー! 偉い人達の前で携帯を弄るなんて!」

    「まぁまぁ……あっ、やべっ! そうだ忘れてた」


    高木「どうかしたのかね?」

    「今日ここに来る前に、やよいと約束していたんです。
      美味しいものを食べに行くから、折詰にしていっぱい持って帰ってくるぞ、って」

    黒井(何と、下賤な……)


    律子「……あのですね、プロデューサー」ハァ…

    「あ、あれ? ……やよい、で合ってたよな? あの子の名前」

    律子「合ってますけど、そういうのをこの場で言うのって、デリカシーが…!」

    「合ってるならいいや。社長、すみませんが少し失礼します」

    高木「ウム、構わんよ」

    律子「ちょっとー!!」

    「おっ、あれ超ウマそう! 律子、あそこのテーブル頼むな」

    ギャーギャー…!

    25 = 1 :

    武田「なかなか面白い青年ですね」

    五十嵐「彼、今日が765プロに入って初日のはずでは?」

    武田「えっ、本当ですか? そうは見えなかったなぁ。
       同僚である彼女をはじめ、事務所の子らとも仲良く話をしていたようだし」

    五十嵐「人とすぐに打ち解けることが出来る男なのかも知れんな」

    高木「そう、そこなのです。
       私が着目したのは、まさに彼の持つ不思議な魅力……」

    高木「彼には、人を惹きつける何かがある。
       必ずや、我が765プロの理念を体現する指導者となってくれることでしょう」


    黒井「また得意の精神論か。貴様は何も分かっていない」

    高木「あぁ、そうかも知れないな」

    高木「ただ、若い人達を信じて、自由にやらせてみるのも良いと思うがねぇ」

    黒井「自立を促す事と、好き勝手にやらせる事は違う。手綱は常に掴んでおくものだ」

    黒井「そんな事だから、お前のアイドルはいつまで経っても低レベルなのだよ。
       馴れ合いで成功するのなら、誰も苦労などしない」

    高木「キミは相変わらず手厳しいなぁ」


    黒井「私は、貴様の経営方針だけは認めん。断じてな」スッ

    武田「あっ、黒井社長」

    26 = 1 :

    黒井「他局の重役もお見えのようだ。手招きをしているのが見えたので、失礼する」

    五十嵐「えぇ、今後ともよろしくどうぞ」

    黒井「オーディションの成功を祈念します。では」

    スタスタ…


    武田「何やら……ただならぬ因縁がおありのようですね」

    高木「思いが強すぎて、表現方法を間違ってしまう……そんな不器用なヤツなんです」

    五十嵐「黒井社長は以前にも、高木さんにだけは負けたくないとおっしゃっていましたね」

    高木「ハハハ、しょっちゅう言われていますよ」

    高木「個人の実力に重きを置く彼としては、信頼と団結を良しとする私が大成するのは、
       我慢ならんのでしょう」


    「高木社長、すごく美味しいデザートがありました。皆さんもお一つずつどうぞ」ヒョコッ

    高木「おぉ、すまないね」

    律子「大人として、もっと節度ある行動をですね…」

    武田「秋月さん、口元に生クリームついてるよ」

    律子「えっ、ウソ!?」


    ………………

    27 = 1 :

    ………………


    黒井「765プロと共演だと?」

    秘書「先日のオーディションは複数名を合格させるものであり、結果として、
       ジュピターと765プロの星井美希が共に合格したようです」

    黒井「……その星井美希とやらの資料を」

    秘書「はっ、こちらです」スッ

    黒井「………………」ペラッ…


    黒井(……そういえば、確かな才能がありながら燻っていた者がいたな。
       このアイドルがそうか……)

    黒井(我が961プロと一緒の舞台に立つなどと、生意気になったものだな、高木め)


    黒井「今日の収録、誰か空いている者に同行させろ」

    黒井「それから小僧共に伝えておけ。くれぐれも抜かることの無いように、とな」

    秘書「かしこまりました。失礼致します」スッ

    ガチャッ バタン


    黒井(………………)

    28 = 1 :

    ~某テレビ局~

    ツカツカ…

    スタッフ「ジュピターさんスタジオ入られまーす!」

    スタッフ達「お願いしまーす!!」

    北斗「どうも、今回もよろしくお願いします」

    翔太「お疲れ様でーす」


    冬馬「……あん?」


    「……あ、ジュピターの皆さん」

    「765プロのプロデューサーです。本日は、ウチの星井美希がお世話になります」

    「至らぬ所もありますが、ご指導のほど、どうかひとつよろしくお願いします」ペコリ

    美希「プロデューサーさん、何やってるの?」

    「お前も頭下げろよ、美希」

    美希「えー?」


    冬馬「な、何だ……やけに腰が低いな」

    29 = 1 :

    北斗「あの……顔を上げて下さい。あまり俺達に気を遣う必要無いですよ」

    「しかし、不慣れな所でご迷惑をお掛けすることと思いますので…」

    冬馬「やめろってんだよ、ムズムズする。
       アンタの方が年上だし、そもそも敵同士なんだからタメ口でいいだろ」


    「それじゃあ……お言葉に甘えて」

    美希「ミキは、星井美希なの! よろしくね!」ニコッ

    翔太(へぇ……かわいい)

    冬馬「まぁ、今日はせいぜい俺達の引き立て役になれるよう頑張るこったな」

    「あぁ、そうだな。よろしく頼む」

    冬馬「! えっ……」


    ディレクター「やぁ、765さん。今日はよろしくちゃーん」

    「あぁ、どうも。お世話になります」ペコリ

    美希「プロデューサーさん、あの人と知り合いなの?」

    「事前に挨拶してたからな。ほら、他の出演者さん達にも挨拶行くぞ」

    テクテク…


    冬馬「……何だ、あいつ」

    30 = 1 :

    スタッフ達「お疲れ様でしたー!!」


    ディレクター「いやぁ、良かったよー765さん。美希ちゃん面白いねぇ」

    AD「本当っすよ。歌も上手いしかわいいし」

    「ありがとうございます。ぜひどうか次の機会にも……」

    「ってあれ、美希はどこ行った?」


    美希「あははは、冬馬のアホ毛面白いのー!」ツンツン

    冬馬「う、うるせぇ! てめぇも生えてるだろうが、触んなっ!」

    美希「ミキのはアホじゃないもーん♪」

    翔太「美希ちゃん、その辺で勘弁してあげてよ。あまり触ると、冬馬君興奮しちゃうからさ」

    北斗「そう、興奮するとますます立つからな」

    美希「触りすぎてコーフンすると、冬馬のは立つの?」

    冬馬「だぁーっ、何か誤解を招く言い方すんじゃねぇ!!」

    31 = 1 :

    「おいこら、美希! 何してんだ」

    美希「あっ、プロデューサーさん! あのね、冬馬のがね?」

    冬馬「やめろってば!」


    「何にせよ、すごく勉強になったよ。美希にも仲良くしてくれて嬉しい」

    北斗「いえ、こんなかわいいエンジェルちゃんとご一緒できるなら喜んで」

    翔太「美希ちゃんがおいしいトークをパスしてくれて、僕達も楽しかったよ」

    美希「ミキ、そんなに面白い事言ったかなぁ? あふぅ……」

    冬馬「俺を散々弄り倒しておいて、何寝ぼけてやがんだコイツ」


    美希「プロデューサーさん、早く車ー」

    「あぁはいはい、おネムの時間だな」

    「それじゃあ、今日は本当にありがとう。黒井社長にもよろしく伝えといてくれ」

    冬馬「お、おう」


    スタッフ「765さん、このお菓子美味しいっすねー!」

    「あぁ、ありがとうございます! 親戚が好きなヤツなんですよ、それ」

    タレント「いやいや、こんな気配りをしていただいて……」

    ハハハハハハ…

    32 = 1 :

    ~翌日、961プロ~

    黒井「もう一度言ってみろ」

    冬馬「な、何だよ……」

    黒井「765プロと仲良くなって帰ってきただと?」


    秘書「昨日の収録に同行させた者から、詳しい状況を報告させましたが……」

    秘書「765プロの連中は、共演者や番組スタッフの皆に愛想を振りまき、親しい間柄を築いたようです。
       誰もが皆、765プロの星井美希、そしてマネージャーと目される男に好感を持っていたとか」

    黒井「マネージャー?」

    秘書「いえ……失礼、正確にはプロデューサーの男かと思われます。
       初対面のスタッフの中には、彼の事を誤解する者も多かったのでしょう」

    黒井「あの男か……」


    北斗「彼の事を単体で見た時は、そこまで嫌悪すべき人だとは思いませんでした。
       もちろん、ライバルである765プロの人間という意味では、決して相容れてはならない人だとは思いますが」

    黒井「当然だ。そして、765プロは決して我が961プロのライバルなどではない。
       履き違えるな」

    翔太「わ、分かってるってクロちゃん」

    33 = 1 :

    黒井「いいか。いくらスタッフと仲良くなろうが、そんなものはテレビの画面に表れん」

    黒井「ファンが見るのは、ステージの上に立つアイドルの姿のみ。要求されるのは実力だ」

    黒井「765プロの連中が行っていることは、無駄な努力にすぎん。惑わされるなよ」


    冬馬「何をムキになってんだよ、おっさん」

    黒井「……ムキになっているだと? この私が」

    冬馬「765プロに一番ビビッてんのは、おっさんのような気がするけどな」

    黒井「言うようになったものだな、小僧が」


    北斗「お、おい待てって冬馬……失礼しました」ペコリ

    翔太「ま、まぁまぁ! とりあえず僕達は僕達の仕事をしてればいいってことで。
       ねっ? そうでしょ、クロちゃん?」

    黒井「…………フン」

    34 = 1 :

    北斗「それじゃあ、俺達はこれで」

    黒井「もし、今後765プロと一緒のオーディションに出た時は…」

    冬馬「格の違いを見せつけろ、だろ? 言われなくても分かってるよ」

    翔太「まっ、楽勝だって! レッスン行ってきまーす」

    ガチャッ バタン

    黒井「…………フ~ム……」ギシッ…


    秘書「……社長」

    黒井「何だ」

    秘書「未編集ですが、昨日収録したバラエティ番組の映像がこちらにございます。
       スタッフに口利きをして、入手致しました」スチャッ

    秘書「番組の途中と最後に、出演アイドルがそれぞれ一曲ずつ披露するシーンがあり、
       中盤に星井美希が、最後はジュピターがその役を務めています」

    スッ

    黒井「…………」

    秘書「よろしければ、ご覧いただければと思います。では」ペコリ

    ガチャッ バタン

    35 = 1 :

    黒井「………………」

    カチャッ カチッ…  ポチッ



    『ワハハハハハハハ…』

    『それでねー、ミキちょっと疲れてたから、ベンチでお昼寝してたの。
     そしたら、春香と雪歩がミキのお財布をずっと探してくれてて、もう泥だらけ』

    『それって、美希ちゃんが知らない間に自分の財布落としてたってこと?』

    『そうなの、怖いよね。
     でも、あんまり泥んこだったから、二人の顔見たらミキもうおかしくって』

    『おい、それひどくねぇか!?』

    『ワハハハハハハハ…!』


    『じゃあねなんて いーわないーでー またねーていーってー♪』

    『ワァァァァァァ…! パチパチパチパチ』



    黒井(これだけの逸材を残していたとはな……)

    黒井(新しく765プロに入ったプロデューサー……あの男、どうにも気になる)


    黒井(念のため潰すか)

    36 = 1 :

    ~一週間後、961プロ~

    「はいさーい! 自分、我那覇響! よろしくね、社長!」

    貴音「四条貴音と申します。お見知りおきを」


    黒井「ウム。良くぞ我が961プロに入った」

    黒井「キミ達には、トリオで活動をしてもらおうと考えている」


    「へっ、トリオ? 自分達、今二人しかいないぞ?」

    貴音「……もう一人、ここに来る者がいると?」

    黒井「ウィ、その通りだ。そろそろ来る頃だが……」


    コンコン…

    黒井「来たか。入りたまえ」


    ガチャッ

    美希「あふぅ……こんにちはなのー」

    「あーっ! 765プロの星井美希だ!」

    37 = 1 :

    貴音「黒井殿、これは一体……?」

    黒井「765プロの実情を見るに見兼ねた私が彼女を救い出し、
       我が961プロに入ってもらった、という訳なのだよ」

    黒井「星井美希ちゃんは、765プロで担当プロデューサーから日常的にセクハラを受けていてね」

    「な、な、なんだってーっ!!」


    「765プロって、そんなキケンな事務所だったのか!?」

    美希「えっと……ミキ的には、そんなセクハラさんってカンジしなかったけどね」

    黒井「洗脳されていたのだよ、美希ちゃんは」

    黒井「肩に手が触れたり、急に抱き着いたり抱き着かれたりするなど、
       年頃の娘と大人の男が日常的に行って良いスキンシップではない」

    美希「えー、そうかなぁ」

    「そうだぞ、星井美希! 危うくキケンがピンチだったさー!」

    美希「ミキって呼んでいいよ?」

    「あ、うん。
      とにかく、自分達765プロに入らなくて良かったなー、貴音」

    貴音「えぇ、しかし……」

    38 = 1 :

    貴音「先日、公園で765プロのプロデューサーを名乗る殿方にお会いしたのですが、
       とてもそのような悪人には見えませんでした」

    「人は見かけによらないってことだぞ。
      いやー、あの時は自分も騙されて765プロに入る所だったさー」

    美希「プロデューサーさんはイイ人なの。
       確かに、胸を触られた時は何回かあるけど、それはチカンを退治する練習…」

    「うぎゃーっ!! それ完全にセクハラじゃん!
      でももう安心だぞ、美希! 自分と貴音が守ってあげるさー!」

    貴音「共に高みを目指しましょう」

    美希「うん! よろしくね、響、貴音!」


    黒井「さて……我が961プロに、プロデューサーなどいない」

    黒井「金と曲、少しばかりの時間はくれてやる。
       自らが必要だと考えるレッスンを各自行い、実力を高めるがいい」

    黒井「一ヶ月後、ドームでの単独ライブを行ってもらう。
       そこで超満員の観客を沸かせることが出来なければ、クビだ」

    「うえぇっ!? い、いきなりかー!」

    貴音「ジュピターと同じ試練を私達に与える、という事でしょうか」

    黒井「ウィ」

    39 = 1 :

    美希「アハッ! すごーい、もうキラキラのステージに立てちゃうの?」

    黒井「我が961プロの事業力を、弱小の765プロと一緒にしてもらっては困る」


    「み、美希はすごいな……緊張とかしないのか?」

    美希「響はしてるの、緊張?」

    「そ、そんな事ないぞ! 自分完璧だから、単独ライブだってなんくるないさー!」

    美希「でしょ? きっと、すっごく楽しいって思うな!」

    貴音「ふふっ。貴女は真、愉快な人ですね、星井美希」

    美希「ムー……だから、ミキの事はミキでいいの!」

    貴音「えぇ。分かりました、美希」ニコッ


    黒井(………………)

    40 = 1 :

    美希「それじゃあ、さっそくレッスンやるのー!
       ねぇねぇ秘書さん、どこかレッスンできる所ってこの辺にある?」

    秘書「このビルの3階から5階に、我が社のアイドル専用のレッスンスタジオがございます」

    美希「うわっ、すごい! 事務所の中にあるんだね」

    「何にせよすぐに特訓さー! 完璧な自分が、皆にダンスを教えてあげるぞ!」

    貴音「えぇ、参りましょう。それでは黒井殿、これにて」ペコリ

    美希「じゃーねー黒井社長」フリフリ

    「早く、早く!」

    ガチャッ バタン


    黒井「…………」

    秘書「なかなか気持ちの良い子達ですね。相性も良いようです」

    秘書「特に、765プロから来た星井美希が他の二人を上手く巻き込み、引っ張っている。
       リーダーとして適任なのかも知れません」

    黒井「………………」

    秘書「……いかがされましたか、社長?」


    黒井「結局、あの娘も765プロの端くれというわけか」

    秘書「は?」

    41 = 1 :

    黒井「貴様、我が社の社訓を言ってみろ」

    秘書「はっ。『孤独こそが人を強くする』でございます」

    黒井「その通りだ。だから我が社はプロデューサー制を執っていない」

    黒井「必要なレッスンを行う事も、仕事を取りに行く事も、
       自分で考え、実行できなければ、この業界で生き残ることなどできん」


    黒井「しかし、星井美希はあのトリオの中にあって、
       早くも他の二人との信頼関係を築きつつある」

    秘書「それは喜ばしい事なのでは?」

    黒井「765プロのやり方を我が社に持ってきていることに腹を立てているのだよ、私は」

    黒井「先ほどの彼女に、あの忌々しい高木、そして765のプロデューサーの姿がチラつく……」


    黒井「仲間に頼る事に慣れていては、それがいない時に何も出来ない人間になってしまう」

    黒井「絆や信頼などという不確かなものは、確実に人を弱くする」

    黒井「だから、私は自分のアイドル達に孤独を強いて、会社をここまで大きくしてきたのだ」

    黒井「今の星井美希が行おうとしている事は、我が社の理念を真っ向から否定するもの……
       貴様が考えている以上に危険な思想なのだ。分かるか」

    秘書「はっ、申し訳ございません」ペコリ

    42 = 1 :

    黒井「765プロを潰すことの一環として、その逸材である彼女を引き込んだが……
       いずれにせよ、扱いには注意を払わねばなるまい」

    黒井「ところで、手筈はどうなっている?」

    秘書「関係各社には、既に根回しをしております。
       極悪非道な765プロに決して騙されることなく、真摯な姿勢で臨むように、と」

    黒井「ウム……『プロジェクト・フェアリー』がデビューする頃には、
       奴らもこの業界から姿を消していることだろう」

    秘書「プロジェクト・フェアリー……彼女達のユニット名でしょうか?」

    黒井「ウィ。彼女達には、業界連中に私の正しさを広く知れ渡らせる妖精となってもらう」

    秘書「左様で」

    43 = 1 :

    ~一週間後、某スタジオ前~

    「うぎゃー!! また現れたな、765の変態プロデューサー!」

    「グヘヘヘヘヘ、ほーれ貴音、お前の大好きなラーメンサンドだぞー」

    貴音「あぁ……あぁ……!」フラフラ…

    「やめろ、貴音ぇー!! あんなのに釣られちゃダメさー!!」ガシッ! ググ…!

    美希「じゃあミキが食べるのー! いただきまーす」パクンチョ

    貴音「ああぁぁぁぁぁ……!!」ホロホロ…

    春香「そ、そんな悲しそうな顔をしないで下さい、貴音さん。
       ほらっ! 私が焼いてきたクッキーもありますよ!」ササッ

    貴音「毎度ありがとうございます、天海春香」モシャモシャ

    「はい、響! この間話してた少女漫画だよ」

    「うわーい、ありがとう真!
      あ、そうだ! 自分もこれ、やよいにプレゼントだぞ! 長介達にもよろしくね!」

    やよい「わぁー、サーターアンダギー! こんなにたくさん、ありがとうございますー!!」ガルーン


    黒井「ノォォォォォンッ!!」ズザーッ!

    「うわっ、黒井社長!?」

    黒井「貴様ら、あれほど765プロと馴れ合うなと言ったはずだろう!!
       何をしているのだ!!」

    44 = 1 :

    「自分、騙されてないぞ!
      765のプロデューサーは、いつも自分にイジワルをする変態さー!!」

    「ホッホッホ、そんな生意気な事を言う子には……」

    「ムンッ!! お仕置きのアイアンクロー!!」グワシィッ!

    「うぎゃああぁぁぁぁっ!! 痛い痛い痛いッ!!!」ジタバタ!

    亜美「そしてすかさず亜美達も加勢っ!!」

    真美「脇腹コチョコチョ→!」コチョコチョ

    「やはああぁぁぁぁっ、止めろぉー!!! 痛い痛いくすぐったいいたいぃー!!!」ジタバタ!

    あずさ「あらあら、今日も響ちゃんは楽しそうねぇ、うふふ」ニコニコ


    貴音「黒井殿、案ずる事はありません。
       私達が敵視すべき765のプロデューサーには、決して心を許さぬつもりです」

    黒井「口の周りがクッキーでベチョベチョなのを何とかしろ」

    雪歩「し、四条さん、お茶を。あと、お手拭きですぅ」スッ

    貴音「ありがとうございます、萩原雪歩」

    黒井「あのな……」

    45 = 1 :

    律子「で、どうなのよ。961プロさんに迷惑掛けていないでしょうね」

    美希「うん! ミキ、ちゃんとお行儀よくやってるよ?
       響や貴音もすっごくイイ子だし、黒井社長も面白いしね」

    黒井「何だと?」

    千早「あなたが事務所を去った時はどうなる事かと心配したけれど、元気そうで良かったわ」

    美希「急にいなくなって、ごめんなさいなの。
       でもでも、プロデューサーさんがいけないんだよ? ミキにセクハラするなんて!」

    「ヒッヒッヒ、次は春香ぁ、お前にイタズラしてやるぅ~!」ダダッ!

    春香「うわぁぁぁ、こっちに来たぁー!!」


    「どっせい!!」ドムッ!

    「おほぅっ!?」ドサッ

    伊織「何考えてんのよ、この変態! ド変態!!」

    貴音「大丈夫ですか、天海春香? さぁ、私達の後ろへ下がって」

    春香「は、はい……!」

    「自分も加勢するぞ、真! くらえ、琉球空手パンチ!!」ポカポカ!

    小鳥「モンゴリアンチョップ!!」メゴシッ!

    「お、おぱぁーーっ!!!」

    46 :

    スレタイの意味が(ゲス顔)って意味に思うくらいこのプロデューサーは変態だった

    47 = 1 :

    律子「さて、社会のゴミを片付けたところで……
       黒井社長は、今日はなぜこちらへお越しに?」

    やよい「あっ、そういえばそうですね。何でですかー?」

    黒井「……会食に出席した後、たまたま通りがかったのでな。
       最近妙にウチの連中が765プロの話題を出すから、まさかとは思ったが……」


    「黒井社長、いっつも会食だなー。栄養偏っちゃうぞ」

    あずさ「そうですよ~。あら、そうだわ!
        今度、私達の事務所で鍋パーティーをやるんですけれど、よろしければ黒井社長もいかがですか?」

    春香「響ちゃんや貴音さんも来てくれるんですよ!」

    美希「ミキももちろん行くの!」


    黒井「出る訳が無いだろう。
       765プロの低俗なパーティーになど、誘われただけでも心外極まりない」

    雪歩「えっ?」

    黒井「響ちゃんに貴音ちゃん、美希ちゃんも帰るぞ。
       こんな連中と一緒の空気を吸っていては、君達も毒されてしまう」


    「そ、それはダメだぞ!」

    黒井「?」

    48 = 1 :

    貴音「765プロのプロデューサーは、アイドルに不埒な行いをする不心得者です。
       彼奴を野放しにすることは、業界存亡の危機に関わります」

    美希「クズでエッチなプロデューサーさんを懲らしめなきゃ、皆が危ないの!」

    黒井「い、いや、私は何もそこまで…」


    「な、ちょっと待て、いつ俺がそんなひどい男になった」クイッ

    律子「あずささんのスカートを掴みながらトボける気ですか、このスケベ!!」

    あずさ「あら~?」ヒラッ

    雪歩「あわわっ! あ、あずささん見えちゃいますぅ!!」


    「この変態め! あずささんに手を出すなー!!」ポカポカ!

    「オウフッ!!」Yes!

    真美「ダメだ、何か知らないけど喜んでるYO!」

    「ふんっ!!」ごきっ!

    「ッ …………………………」ドサッ

    春香「あっ、死んだ」

    千早「今のは死んだ」

    やよい「耳からドス黒い血が出てますー」

    亜美「なむ亜美だぶつ」

    49 = 1 :

    伊織「それじゃあ新堂、病院までソイツを連れてって」

    新堂「かしこまりました」

    ブロロロロロロ…


    美希「ねっ、黒井社長見たでしょ? あんな人がいると、765プロの皆がかわいそうなの」

    黒井「う、ウィ……しかし、765は765。我々が関わる必要は…」

    「自分や貴音がイジメられてたの見てなかったのか、社長!?
      放っておいたら、いつか自分達にも絶対飛び火してくるぞ!」

    貴音「それ故、今は765プロとも結託し、速やかに彼の態度を改めさせる必要があります」


    貴音「無論、ステージに立てば、765プロとは敵同士です。
       いくら私が天海春香のくっきぃが好きであろうと、関係の無いこと」

    貴音「皆も、それは努々忘れることの無きよう。よしなに」

    雪歩「四条さん……」

    春香「分かってますって。あっ、次はどんなクッキーが良いですか?」

    貴音「ちょこと、おれんじのまぁまれぇどが入ったものを所望します」

    50 = 1 :

    「あっ、マーマレード味のは自分も好きだぞ! 多めに焼いてきてね、春香!」

    春香「響ちゃんも、今度美味しいゴーヤチャンプルーの作り方教えて!
       この間家で作ってみたんだけど、上手くいかなくって」

    やよい「あっ、私も教えてほしいかなーって!」

    「ふふん、いいぞー! 自分、料理も完璧だからな!」


    美希「ミキも参加するのー! 食べる専門で!」

    亜美「あーっ、ミキミキずるいYO!」

    真美「どうせ余るだろうし、しょうがないからこの伊織ちゃんも一緒に行ってあげるわよ、にひひっ♪」

    伊織「何で私の真似したのよ、真美!」

    貴音「しかし、水瀬伊織も共に行きたいのでしょう?」

    伊織「なっ……!」

    あずさ「はいはい、それじゃあ皆で響ちゃんのお家に行きましょうね~」

    「そ、そんなにウチ入れないぞ!」

    アハハハハハハハ…


    黒井「…………ウーム」


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