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    元スレ京太郎「俺は、楽しくない」

    SS+覧 / PC版 /
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    201 :

    ダブロンありルールなら二人光って、頭ハネなら一人じゃない?

    203 :

    sageなよ…
    ちくしょうめ

    204 = 202 :

    おお

    205 :

    今更だが良いSSを見つけた。
    どういう結末になるか気になるなぁ。

    207 :

    まだ>>1は来ないのかな…生存報告とかだけでもあると嬉しい

    改めてここの京ちゃんには頑張ってほしい。いまいち能力の活用法が思いつかないけど

    208 :

    まだ1ヶ月も経ってないのに気が早すぎ
    2ヶ月経つまでまだあるし

    209 :

    1ヶ月経ったな

    210 :

    まだまだよ

    211 :

    明けましておめでとうございます。


    いやはや、1ヶ月経ってしまいましたね…。
    今はようやく2章の小プロットを終わった程度の進行具合で、まだまだ投下には時間が掛かりそうです。
    やはりにわか雀士では、闘牌シーンに説得力を出すのに苦労しますね…。
    本当に申し訳ありません。

    2章は一気に投下したいので、正直いつ頃完成するのか分からない状態です。
    また、凝り性で飽き性でズボラという創作においての三重苦を有する人間が最後まで諦めずに頑張り続けるにはどうすればよいのか
    友人に尋ねてみたところ、粗製でいいから予め最後まで完成させておく、とありがたいアドバイスをいただきましたので、
    次の投下分を作成するのと並行して3,4章の話も書こうと思っています。その為、恐らくその分更に遅くなるかと…。

    読んでくれる皆さんが忘れた頃にひっそり投下していると思いますので、一旦このSSを忘れていただいた方がいいかも知れません。

    それか。
    完全に別シリーズとなりますが、もう一つ書きたかった話のネタがあるので、そっちを投下してお茶を濁しながら時間を稼ごうかなぁと悩んでいます。
    こちらは若干ギャグテイストになると思うので、このSSに興味を持ってくれる人の需要と一致していないだろうというのが引っかかる所ですが。


    久しぶりの書き込みなのに良い報告が出来ず申し訳ありませんでした。では。

    212 :

    のんびり待ってるよ

    213 :

    把握したのよー
    小ネタなら別に大歓迎やよ。長編なら別で立てる手もあるが……

    214 :

    のんびり待ってるやでー

    215 :

    個人的には小ネタやってくれてもええんやで

    217 :

    やはり報告するイッチはいいイッチ

    218 :

    すいません、更新じゃないです。

    1ヶ月も音沙汰なしだったので、台詞のみSSの練習がてらとりあえずの小ネタ書いてみました。

    本編との繋がりはないです。雰囲気も正反対。

    ギャグって才能、改めてそう思った。(T並感)

    219 = 1 :

    京太郎「俺もオカルト能力手に入れたい!」久「え?」



    「何? いきなり」

    京太郎「何って、オカルト能力ですよ! ハイテイツモったりリンシャンツモったり!
     俺も『バカな、有り得ない…!』とか『なんだコイツ…!?』とか、恐れられて警戒されて華々しく活躍したいっ!」

    (なんて子どもっぽい欲求…)

    「はぁ…。全く、何を言い出すかと思えば。能力なんて、そんなもの有りませんよ」

    京太郎「いや、あるって!」

    「いいですか? あんなのは少ない対局で牌の偏りが大きくなっているだけ、偶然です。
     須賀君はまだまだ知識も経験も未熟なんですから、そんな夢を見てないで得点期待値に則した牌効率やオリの技術などしっかりとした理論に基づいた打ち方を――」

    京太郎「そんなカッコ悪いの嫌だっ!」

    「かっ…!?」

    「うーん…。でも私は、特に何かしたから嶺上開花しやすくなった、なんて思いつかないなぁ…」

    「生まれつきってことね」

    優希「そうだじょ犬、あれは神に選ばれし者にしか与えられない究極の才能。
     お前のような凡人には到底手に入れられない高嶺の花なのだ!」

    京太郎「お前だって東場に強いっていう妙な能力あるじゃねぇか。っていうか、よく考えると――」


    「手に入れたいって言われてもなぁ…」←言わずもがな

    「そうねぇ」←悪待ちで和了りやすい

    まこ「手に入れるとか、そういうもんじゃないと思うんじゃが…」←染め手で和了りやすい+α

    優希「さいの~さいの~♪」←東場にめっぽう強い


    京太郎「ほとんどじゃねぇか!」ガタッ

    京太郎「もういい、こんなところに居られるか! 俺は俺のやり方で強くなってやるっ!」ダッ

    (京ちゃんそれ死亡フラグ…)

    「ちょ、対局中よ!?」

    バタン、タッタッタッ…

    まこ「行ってしもうた…」

    優希「ふ、ふん! どーせすぐに帰ってくるじょ!」






    (カッコ悪いって言われた…)ズーン

    220 = 1 :




    京太郎「と、部室を飛び出してきたのはいいけど、何も思いつかないな…」

    京太郎「いや、よく考えてみよう。みんなの能力にはそれぞれ基づいた何かがある。名前とか、イメージとか」

    京太郎「咲は名前。嶺上開花という役の意味と名前が一緒。
     染谷先輩は名前と、実家が雀荘っていう経歴。
     部長は…悪女っぽいから? イメージ、かな…?
     優希は、タコス…東場……、わっかんねー」

    京太郎「まぁいいや。それで俺に応用できそうなのって言えば…」


    須賀京太郎←特に無し

    経歴←特に無し

    イメージ←雑用

    ペットがカピバラ←?


    京太郎「なんてこと…」シクシク

    京太郎「いや、嘆いていても仕方がない。今から出来ることをやるんだ」

    京太郎「そういやさっき優希が神に選ばれるとかどうとか言ってたな…。
     咲も『牌に愛された人間』とか称されてたし――ハッ!」



    ピーン

    京太郎「神……愛される……名前……」

    京太郎「そうか、分かったぞ。俺がやるべきことが!」



    221 = 1 :

    ~ 一週間後 ~



    優希「今日も京太郎は来ないのか…」

    「学校にも来てないみたいだし、心配だね…」

    ??「そうか、それは誠に申し訳ない」

    「そ、その声は!」

    ポクポクポクポクポク…

    まこ「なんじゃこの音!?」

    チーン

    京太郎「須賀京太郎、ただ今戻りましてございます」ナムアミダブツー



    (なんかスゴイ恰好してるー!)

    まこ「袈裟着とる…」

    「スキンヘッドの…かつら?」

    優希「念仏唱えてるじょ…」

    「え、何これは…」

    京太郎「一週間前、私は気付きました…。オカルト能力を手に入れる条件とは、自らの名前との関係性、イメージとの関係性。
     そして、神に愛されること…。だから思ったのです――」




    京太郎「そうだ、仏門に入ろう」




    (え、なんで…?)

    (い、意味が分かりません…)

    京太郎「そして一週間、近所のお寺に世話になっていた訳です」

    優希「神の加護を手に入れる為に仏門に…? な、なんか凄そうだじぇ…!」

    (ああ優希、なんて流されやすい子…)

    京太郎「ふふふ…実際にご覧に入れましょう。さあ、対局の準備を」

    まこ「いいからその変な口調を直しんさい」



    222 = 1 :

    ~ そして ~



    京太郎「ブツブツ」ナンマンダー

    (今のところ京ちゃんに動きはない…けど)

    優希(ずっとお経唱えてるじぇ…)

    (ナンマイダーとしか言ってませんけど…)

    まこ(覚えられんかったんか…)

    (よく考えると一週間だけの仏門入りに何の意味が…)



    ――カッ!

    京太郎「来た…!」

    京太郎「咲。悪いけど、お前のお株奪わせてもらうぜ――カン!」

    「!」

    京太郎「そして、もう一つ、カン!」パー

    (2連続でカン!?)

    (合掌した!?)

    まこ(京太郎の背中から後光が…!)

    (な、まさか…!)




    ――有難い。




    パタタタタタ…

    京太郎「ツモ。四暗刻。

     素 戔 嗚 (スサノオ)!!」



    223 = 1 :


    優希「す、四暗刻…!」

    「いや、むしろその後のは何…?」

    京太郎「そう、スサノオとは伝承において八岐大蛇を討伐し、天叢雲剣を手にした人物…。
     そして、この手牌を見てくれ」

    「こ、これは…!?」


    888m999s22s(白白白白)(1111p)


    京太郎「九つの頭(九索)を持つヤマ(八萬)タノオロチを打倒し、天叢雲剣(二索)を手にしたスサノオの姿が見えるだろ…?」

    「か、感じる…。八岐大蛇の断末魔…天叢雲剣の輝き…スサノオの息づかいまでも…!」

    京太郎「仏門入りというイメージ作り。そして須賀京太郎→須賀神社→スサノオという名前との関連性。
     これこそが、俺が目指し手に入れるべきオカルト能力だったんだよ!!」

    まこ「な、なんじゃってー!!」

    (何を言っているのか全然分からない…!)

    優希「い、言われてみれば確かにそんな気がしてきたじょ…!」

    「いや、いやいやいや! 流されちゃ駄目よ!
     っていうか、さっきから須賀君が言ってるのは神道の話、仏教とは関係ないわ! 神仏習合ってレベルじゃないわよ!?」

    優希「神仏習合…!? それが京太郎の力…!」

    (優希はもっと勉強しなさい!)

    まこ「神道と仏教の垣根を越えた神仏習合を、もういっちょ越えてみるか…!」ヘヘッ

    「まこ!?」

    「ま、待ってください! とりあえずそれで納得するとしても、白と一筒のカンは何なんですか!?」

    京太郎「何って…。

     神 (槓) 無 (白) 月 (一筒) だけど?」



    224 = 1 :

    ※今は10月ではありません。

    (も、もうダメ…)バタッ…

    優希「のどちゃんが倒れた!?」

    京太郎「やれやれ…。己の長所も短所も全て認め受け入れて、ようやく悟りへの第一歩だってのに修行が足りないな」

    (修業期間7日の癖に…)

    「ひ、酷いよ…! そんな言い方…!」

    優希「許せないじょ…!」

    まこ「アンタ、仏に魂まで売ってしもうたんか…!?」

    (いや、あなた達も要因の一つだと思うけど…)

    京太郎「くくく…、仏様にとって、仏教徒こそが至高! 異教徒や無宗教家のことなんて知ったこっちゃないのさ!」

    (おい修行し直せ)

    「そっちがそういう態度なら、こっちも相応の対応をするよ…!」ゴッ!

    京太郎「お、オカルト能力を手に入れた俺は無敵だ! 咲にだって負けない!」

    「こんなの麻雀じゃない! その思い上がりを正してあげる! カン!」

    京太郎「!」

    「もいっこカン! もいっこ、カン! 最後に、カンッ!」

    京太郎「な、バカな…!」



    「ツモ。四暗刻四槓子字一色大三元。

     四 倍 役 満 !」


    ピピピピピピ…

    京太郎:57000→-7000


    京太郎「ぐああぁぁっ…!」

    バタン…

    「京ちゃん、私待ってるからね…。元の心優しいあなたが帰ってきてくれることを…」




    「」←脳内フリーズ

    京太郎「」←跳び
    優希「」←跳び
    まこ「」←跳び

    (気絶者が4人……)



    仏教徒京太郎編、カン。

    225 = 1 :

    こういうぶっ壊れたギャグを面白おかしく書ける人って尊敬します。

    あ、ちなみにこれは先日書きたいって言っていたネタじゃないです。

    そっちは結構長くなるだろうから自重しました。

    226 :

    スキンヘッドのカツラ+神無月で物真似芸人の方が出てきた訴訟

    227 :

    須賀ァ!お前はどちらかというと二丁拳銃で悪魔払いするほうだろぉ!!

    228 :

    こういうにはムダヅモだけでいいです

    229 :

    こういうのも悪くないと思ってしまった

    230 :


    仏教と神道は別物じゃあ……

    231 :

    部長とまこが能力者であるという風潮、一理無い

    まこの記憶力は確かに能力っちゃ能力かもしれんが、他はテクニック(染め手、悪待ち)とかジンクス(悪待ち)の類じゃね?

    233 :

    悪待ちのジンクスとかそういうのは十分オカルト打ちだよ
    作中でオカルト=能力という定義なら、能力者といっても過言ではない
    現にそれでなんども結果を残しているというのがね

    234 :

    作者の頑張ってる感が出てて良い。本編にも期待してるよー。
    リザベや怜ちゃんの取得過程とか見るとリア充になるってのが一番有効な手の気がするwww
    京ちゃんのスペックなら頑張りしだいで多分なんとかなるっしょw

    235 :

    オラ、お気に入り登録したったぞコラ

    236 :

    「バレンタインデーに小ネタ投下して、甘酸っぱいいちゃラブSS期待して読みにきた人に、全くバレンタインデー関係ないガチのシリアスギャグをお見せしてやんよ!」
    と思いながら勝手に一人で盛り上がってせっせと書き上げて、
    いざ投下しようという時に何故か鯖落ちしてて、
    「まぁどうせ時期関係ないし、それも笑い話にすればいいかなー」
    なんて思いながら復活を待って書き込みをしようとしたら何故か規制されてて…


    なんだこれ

    ばかみたい

    237 :

    イッチか?

    238 :

    テスト

    書き込めてたらご飯食べた後で投下開始。

    239 = 1 :


    『発端』

     その日は、よく晴れた一日だった。それはもう、文化系の部活に所属している人間なんかは、少々辟易してしまうような。

     ただ校舎から部室棟へ移動するだけで額に汗が滲んでしまうような暑さ。部室へ到着してすぐに、嬉しいことにコーラなんか
    用意されているもんだから、俺は一も二もなくそれに飛びついた。

     誰が持ち込んだのか、嬉しい差し入れに気を良くした俺はそのまま誘われるままに対局へ。コップ一杯をすぐに飲み干し、1.5L
    のペットボトルから2杯目を自分で注いで、席の右側へと置いた。

     そしてそれから約15分後。俺は脇に見えるその黒い液体に恨みがましい視線を送りながら、後悔の念に苛まれていた。

     喉を潤した時の充足感はとうの昔に消え失せて緊迫感を伴った強烈な衝動へと形を変え、今現在俺の体内でその存在を主張し
    ている。

     まぁ、要するに。




     トイレ行きたい。



    240 = 1 :


    『決意』

     状況は、1年生4人で卓を囲んだ半荘の、東2局。どっかで聞いた話によると、1半荘の平均時間は大体1時間半だというこ
    とだ。

     その情報を信用するなら、この半荘が終わって俺がトイレに向かうことが出来るのは約1時間と十数分後。

     それまで、我慢し続けられるか。


     ……ギリギリ、か?

     もしかするとアウトかも知れない。


     こんなことに頭を悩ませている俺だが、別に清澄高校麻雀部の規律に『対局中は席を立つべからず』なんてもんがある訳では
    ない。つまりここで席を立ってしまっても非難を受ける謂れはない。

     しかし、部室棟のトイレは一階にしかない。そして麻雀部の部室は最上階。ただ行き来するだけでも結構時間が掛かる。

     その間、自分の為にみんなに待ってもらうというのは心苦しい。この面子の中で俺が一番弱いってのもある。

     それに、なにより。

     あんなに勢いよくジュースを飲んでおいて、催してしまって我慢できませんなんて、あまりにもカッコ悪すぎると思う。

     自己管理が出来ていない子どもみたいな人間と思われるかもしれない。

     それか、耐えることの出来ない軟弱な男だと思われるか。

     お子ちゃまガールの優希とポンコツ少女の咲にそう思われるのはまだいい。しかし和に思われたら……?

     それは、考えるだに恐ろしい展開だ。


     ――そう。

     俺は、男として、そう簡単にこんなKYな尿意の奴に屈してやる訳にはいかないのだ……!


    「ん? どうかしたのか、京太郎?」
    「……いや、別に?」

     と思った矢先、『奴』の圧力を誤魔化そうと身をよじったことを対面の優希に見咎められた。

     落ち着け、俺。あまり変な動きをすると目立つ。

     あんまり動かないように、普通に。

     普通に。


     ……きっつい。


     こんなに動かないでいることが辛いとは思ってもみなかった。

     ど、どうなんだ俺、これ我慢とか出来るのか。なんかいつもより『奴』の勢力が強力な気がするんだけど。

     当者比1.5倍。耐えがたい欲求がどんどん脳内を埋め尽くしていく。

     まずいまずいまずい……! これをあと1時間?


     ――出来るかっ!

    241 = 1 :


    「ロン! 平和断ヤオドラ1、5800(ゴッパ)!」

     自問と自答がグルグル渦巻いていた思考に、不意打ちのように声が入り込む。

     ハッとして河を見れば、俺がほぼ無意識に切った二筒がダマで待ってた優希に当たったらしい。

    「ほらほら、早く有り金を差し出せっ!」
    「お、おう」
    「まいどー♪ さぁ連荘だじぇ!」

     半ば動かされるように点棒を渡し、卓の中心へと牌を落とし込む。

     機械的にそれらの動作を行っていると、ぼんやりとある考えが浮かんできて徐々に形作っていく。

     考えてみれば、俺の振り込みのお蔭で今の局はたった7巡で終わったんだよな。

     ってバカか俺は。結局連荘になってるんだから、長引いてるんだっての。


     じゃあ。

     別の奴なら振り込んでも良かった……?

     俺が率先して振り込みまくれば、この半荘の時間を短縮することが出来る……?

     その後で堂々とトイレに立つことが出来るんじゃないか。


     いやいや、麻雀部員が負ける為に打ってどうする。麻雀に対する冒涜だろ。


     そう良心が切り捨てようとするのだが、その誘惑が大き過ぎてどうしても捨てきれない。


     たった1半荘だけじゃねぇか。構いはしないって。

     どうせいつも負けてるし。


     自分から負けるのと勝負して負けるのとを同一視する程バカじゃないだろ。

     みんな真面目に部活やってるんだ。それを邪魔するなんて、部員としての禁忌を犯してるようなもんだ!


     綺麗ごとだろ。実際にこの半荘1回真面目にやることで何かを得られるなんて思ってないし、期待してもないじゃねぇか。

     大体、部員としての禁忌を犯すだなんて言いますけどね……。



     ――『高校生にもなって公衆の面前でお漏らし』なんて、人としての禁忌を犯してるようなもんじゃないんですか!?



     ……決着は、ついた。

     俺も冷静に考えた結果、部員としての面子よりも人としての面子を守る方が重要だという結論に落ち着いた。

     決してこの衝動に惑わされた訳ではない。両者を天秤に掛けて、どうしても捨てきれない方を選ぶ為の苦肉の策だ。

     確かに褒められた行為じゃない。それでも、何かを守る為に、捨てなければいけないものだってあるんだ。

     落伍者の烙印を押され、蔑まれて、後ろ指を指されても、構うものか。

     それでも俺は人として生き、人のままで死ぬ。


     だから。

     俺は、この半荘を早く終わらせることだけに全力を尽くす……!


    242 = 1 :


    『僥倖』

     東2局。優希の連荘。

     現状最も困るのは、優希の連荘が長く続くこと。

     親が続く条件は、親が和了ることと、流局した時に親が聴牌していること。

     正直、東場の優希が聴牌を逃すとは思えない。となると、優希が和了る前に子の誰かが和了らなければいけない。

     俺にその役目が務まるかと言えば、恐らく無理だと思う。

     こんなところで意地を張っても仕方がない。悔しいが、雀力の劣る俺が優希と速さで勝負したって話にならないだろう。

     分の悪すぎる賭け。突っ込む意味は、まるでない。

     幸い、俺の両隣の二人は共に超高校級のスーパー雀士だ。

     ならば俺がやるべきは一つ。彼女たちの和了りをアシストすること。

     俺に上手く欲しい牌を流す程の能力があるだろうか?

     いや、やるしかないんだ。

     やれる人はいる。それ知る方法はどこかにある。

     頭をフル回転させろ。思考、推察、予測、それらを駆使して、その人たちに少しでも近づけ。

     と、意気込んでみたはいいものの。

    「ちっ……」

     軽く舌打ち。

     アシストと言っても、勝手も知らないことだ。どうすればいいのか、見当もつかない。

     とりあえず無難に字牌から処理しながら、下家の和に視線を移す。

     玄人ともなると目線や表情で相手の狙いが読めると言うが、流石に全国レベルの選手。和の端正な顔から俺が読み取れる情報
    はない。

     和の河は、やはり字牌。最初はセオリー通りに浮き牌処理。

     いつもの和なら、やはり作りやすい平和や断ヤオが多い。あとはリーチ。

     その中で俺がアシスト出来るのは断ヤオだけ。しかし、もし鳴ける牌を俺が捨てたとして、和が狙い通りに鳴いてくれるのか。

     恐らくそれはない。

     鳴いて作った断ヤオ、役牌はたった1飜にしかならない。それならリーチのみと変わらないし、リーチの方がツモや裏ドラで
    飜数が和了る可能性がある。

     そう考えれば、得点期待値をしっかり考慮に入れる和が最初から鳴いて安く早く和了ろうとする訳がない。

     俺が和にアシスト出来るとすれば、そのタイミングは最後の1牌を流す時だけ。

     出来るだけ和への安牌を残さないように、和がリーチするのを待つしかない。

     じゃあ、咲は――。

     と上家の咲に目をやったところで、その様子に違和感を覚えた。

     妙に顔を赤らめながら、その表情を強張らせる嶺上少女。

     視線は手牌のもっと下、自分の足元に向けられて、その両腕は突っ張る様に腿の上に置かれスカートをしっかと掴んで、小刻
    みに震える全身にはとても麻雀を打つには必要ない程の力が入っているように見える。

     一瞬訝しんで――



     即座に理解した。

    243 = 1 :


     大きく吸って吐かれている割には荒い息づかい。時折チラリと場を確認して、再び下を注視する。

     きっとそれは、足元に興味を引く何かが落ちているからではない。

     出来るだけ時間を掛けずに場を進めつつ、俺の胸にとてつもなく大きなシンパシーと安心感が溢れ出してきた。

     そうだよ。俺がこんなんなってんのに、お前が平気なのはおかしいよな。

     あぁ、なんて奇跡的なめぐり合わせ。

     ありがとう、咲! お前がここにいてくれたことこそ、俺にとっての『神のご加護』に違いない。

     たぶん。いや絶対に、そうだ。


     なぁ、咲――?



     お前も、トイレを我慢してんだろ……?



     いつもの俺だったら、絶対に辿りつけなかったであろう答え。

     この特殊でおかしな惨状の渦中にいるからこそ、咲の変化にいち早く気付け、その真意を察すことが出来た。

     考えてみれば、なんてことはない。

     咲はその筋の人たちからは有名な『おしっ娘』属性の女の子。

     一般的高校生の俺でさえこの強大な尿意に晒されてんのに、まさか同じジュースを飲んだ咲が平気な訳があるだろうか。


     いや、ない。


     それならば、話は早い。咲と協力して、この半荘を手早く終わらせる方向へ動かせばいい。

     今までの俺の立場は、一人で俺の目標を達成する為に他の3人を上手く動かさなければならないという、孤軍奮闘状態。

     それが今度は、二人でこの目標に立ち向かえる。

     しかも、相方は全国でも有数の――いやもう最強と言っても過言ではないウルトラ麻雀少女と来たもんだ。

     これでダメな訳があるだろうか。


     いや、ない!


     焦燥と不安に押し潰されて張りつめていた精神が、一気に弛緩する。

     代わりに安堵と希望が湧いてきて、俺の後押しをしてくれる。

     今の咲に、俺の誘いを断る程の余裕があるようには見えない。

     ここにもう一人『仲間』がいることを伝えられれば、進んで協力してくれるだろう。

     しかも、咲の得意役は嶺上開花。俺がポンやカンでアシストを出来る可能性は高い。

     親の優希が得意とする東場で、いつ聴牌するか分からない和を待つよりも、より確実性が増す。

     ただ問題は、どうやって咲へと俺の意思を伝えるか。

     思案しながら咲へと目を向けるが、ショートヘアーの文学少女は周りを気にしている暇はないのか、下を向いたまま。

     一応他家が牌を捨てる度に目を通しているみたいだけど、この分じゃあただ牌を鳴かせてやっただけで俺の狙いを悟ってくれ
    るとは思えない。

     ということは、だ。



     ――俺が動くしかない。



    244 = 1 :


    『伝心』

     東2局1本場の6巡目。

     今俺の手牌の中に、まだ場に出ていない生牌は4つ。一索、七索、三筒、五萬。

     一枚切れなら、二索、四萬、南、の3つ。

     中張牌は生牌と言っても他家が持っている可能性の方が高い。

     じゃあ、この三つかな。

    「ふぅ……」

     と、一つ深呼吸。

     上手くやれよ、俺。

     軽く理牌をするフリをして、一索、二索、南を右端に寄せる。

     そしてテキトウに牌を手にし、右腕を伸ばす――

    「あっ」

     パタタ。

     俺の袖に引っかかった右端の3牌が倒れる。倒した。

     ハッと息を飲むような声。

    「っと!――悪い」

     慌てて牌を戻しながら、咲の反応を伺う――

    「ぁ……」

     ――反応した!

     目線の先には、南。

    「まったく、何やってるんだじょ!」
    「いや、ごめんごめん。ついうっかり」

     優希の指摘に、腕を上げて軽い謝罪で返す。

     すると怒ったような口調が一転。からかう様な声色で優希はにやけた。

    「まぁ見せ牌したところで、犬が損するだけだけどな! ふむふむぅ、6巡目までオタ風の南を抱えてて、索子の辺張塔子が有
    ってぇ?」
    「すいません、人の狙いを口に出すのは勘弁してくださいませんか……?」

     降参だと言うように下手に出るが、そんな狙いは毛頭ない。

    「ったく、見せちまったもんはしょうがない。じゃあこれは要らねぇよ」
    「ぁ……ぽ、ポンっ!」

     捨て鉢な態度で捨てた南に、咲が反応する。

     よし、狙い通り! 咲の風は南、これで役が出来た。

    「にゃは! 踏んだり蹴ったりだな、京太郎!」
    「うるせー!」

     踏んだり蹴ったり? まさかまさか。

     『願ったり叶ったり』だよ。ナイスフォロー、優希!

     お前がいい反応返してくれてなかったら、この怪しい動きを看破されて今頃疑われていたかも知れないぜ。

     なんて感謝の念は置いといて、咲の近くへ鳴かれた牌を滑らせながら、その素朴で慎ましい顔を見つめる。

    245 = 1 :



     切羽詰まった瞳が俺の視線に気づき、かち合う。

     周りにバレれないように、軽くウィンク。


     咲は一瞬目を見開き。

    「……」

     再び俯いてしまう。

     そのまま何事もなかったように、打牌。


     ……あれ、これ伝わってる?

     いや、いやいや。

     大丈夫だろ。自分で言うのもなんだけど、俺も相当余裕がない顔をしてる筈。

     同じ状態の咲なら察してくれる!

     ……たぶん。

     大丈夫だよな? 『何あのウィンク。京ちゃんキモい……』とか思ってないよな!?

     だって、うっかり見せ牌して、ヤケクソ気味に捨てた牌で鳴かれて、その上謎のウィンクって……。


     ――ダサすぎじゃねぇか!!


     途端に別の不安が湧きあがる俺の心境など知る由もなく、場が淡々と進んでいく。

     咲からのアプローチは、未だ何も無い。

     ……え、マジで伝わってないのか? 俺、センスのズレたナルシーなキャラになっちゃってんの?

     2つの意味で絶望的な気分になりながら咲の切った二筒を眺める。

     俺のツモった牌は一筒。

     三筒と一筒の嵌張塔子。その二筒が有ったら面子出来てたなーなんて意味のないことを思いながら。



     ――あれ?



     今更ながら、気付いた。

     咲の捨て牌の、その奥。

     咲の手牌。

     二筒が出てきた左から4つ目の位置が、牌が抜けたまま隙間になっている。

     なんでだ。普通、左端の3つを寄せて隙間を無くさないか。

     咲の癖……? 違う、今までこんなことやってるのを見たことはない。

     どういうことだ。なんで今日に限って。


     ――『特別』。

    246 = 1 :



     ゾクッと背筋に走る感覚。空回りしていた歯車が、カチッと噛み合ったように脳みそが回転し始める。

     これは、サイン。

     天啓にうたれたような、閃き。

     伝わってなかったんじゃない。咲は咲で、俺に意思を伝える方法を探してくれてたんだ。

     周りに悟られてはいけないあの場で、怪しげな反応を返す訳にはいかなかった。だから、咲はチャンスを待っていた。

     出来るだけさり気なく、俺だけが気付けるようなサインを送れるチャンスを。

     気付いてしまえば、あとは行動。

     俺のすべきこと、咲の望んでいることを、考え抜く。


     一つ分空いた隙間、その意味するものは。

     ――そこに、入れてほしいという合図。


     左から4番目という位置。

     ――咲の得意役は嶺上開花。左から3つ目までは同じ牌だということ。


     限界まで高速回転させた頭が、少ない情報を繋ぎ合わせていく。

     半ば決めつけ。確証はないが、確信がある。

     それでも、まだ足りない。

     俺の捨てるべき牌は……?

     生牌は3つ。三筒と一索と五萬。

     当てずっぽうで捨ててみるか?

     いや、もう10巡。そう悠長にしている暇はない。

     優希のリーチが入ってしまえば、俺もそう簡単に牌を捨てられなくなる。

     それに俺の手牌に入っていない生牌だっていくつかある。

     もし咲が待っている牌がそれだったら、俺が悩んでもしょうがない。

     よく考えろ、俺。

     咲程の雀士が、俺の考えることぐらい考慮出来ない筈がない。

     この14牌の中に、俺の捨てるべき牌があるんだ。

     何か、他にヒントは?


     ……二筒。


     咲の手牌の隙間。そこに入っていた二筒。

     ということは、あの3つの牌は、『二筒に隣接する牌』なんじゃないか……?

     そう考えると、候補は一筒か三筒。

     一筒は、手牌と河で2枚見えている。これで嶺上開花は出来ない。

     つまり、俺の捨てるべき牌は。


     ――三筒!

    247 = 1 :


    「カンっ!」

     良くできました、という言葉の代わりに、咲が気力を振り絞った声を上げる。

    「ツモ。嶺上開花、役牌。2600の1本場は、2900」
    「……はい」

     必死に気落ちしたような顔を作り、咲に点棒を差し出す。

     目が合う。

     パチリ。

     ぎこちないウィンクが返ってきた。

     以心伝心。

     持ち上がりそうな口角を隠し、達成感を味わう。

     伝わった。この上ない味方を手に入れた……!

     苦悶の表情をしながら慣れないことなんかするもんだから、まるで「腹痛にでも耐えているんですか」って聞きたくなるよう
    なウィンク。

     が、今の俺には世界で一番信用できるアイコンタクト。

     もう恐れるものなど何もない。

     俺一人じゃ何もできなかった。

     でも、二人なら。

     コイツとなら、どんな難関だって越えられる……!


     この瞬間。



     『トイレ行きたい同盟』が、結成された。



    248 = 1 :

    『順境』

     東3局は、咲の親番。

     親のノーテンでも流局で、俺が優希か和に振り込んでも流局。

     何もしなくても良さ気な局だったが、少しでも早く終わらせたい俺はどんどんクサいところの牌を切っていった。

     しかしそれがかえって他家の調子を崩したのか、結局振り込むことなく流局。

    「……ノーテン」
    「ノーテン」
    「聴牌」
    「テンパイっ」

     これで-1500点。2回の振り込みも合わせて原点から-10000点以上の失点。

     咲をアシストすることで場を進めつつ、自分の跳び終了の目も残しておく。

     同じ結果をもたらす2つのルート。どちらかに届けば、俺たちの勝ち。



     東4局。俺の親。

     俺が聴牌しなければいいだけの局。

     考えてみれば、俺と咲は連荘する気がないので、普通に打っている和と優希が親の時だけしか連荘の可能性はない。

     東場のラストのこの局と南場の4局で、合計5局。しかしその内『同盟員』が親の局は3つ。

     つまり俺らの勝負は、優希と和が親の2局だけだ。

     もちろん、俺たちが親の時も、流局するよりかは早く終わってくれた方がいいけれど。

     とりあえず他家のリーチでも待とうかということで、無難に浮き牌から切って行っていると。

    249 :

    昨日は鯖落ちてたからね、しょうがないよ

    250 = 1 :

     ――カチ。カチ。

     また来た。咲からの合図。

     捨て牌を考えているかのように手牌を見下ろしながら、手持無沙汰な右手を遊ばせるように右端の2牌を器用にクルクルと入
    れ替え続けている。

     俺がそれを視認したのを確認すると、ハタと動きを止めてそのまま手にしていた九索を捨てた。

     ツモりながら、考える。

     確かあれは、小手返しという技術だった筈。

     本来ならツモ切りを分からなくさせる為の技。あまりマナーがいい行為ではないとされてるから、部内でやる人間はいない。

     だから咲からの何らかのサインなのは間違いない。

     しかし、どういう意味だったんだ。

     ……九索の隣だから、八索?

     いや違う。それなら小手返しの意味がない。

     というか、俺がサインに気付いてからすぐに手を止めてたけど、あれじゃあ捨てたい牌と残したい牌が入れ替わってもおかし
    くなかったんじゃ――


     ハッとする。

     そうか。あの2つは『入れ替わっても問題ない牌』だったんだ。

     即ち、対子。

     アレは九索の対子の内一枚を落とした、というサイン。

     対子から1枚捨てて聴牌。それが待ち牌に関係するなら、それは順子の待ちでしか有り得ない。

     咲の待ちは、七索待ちの辺張か、八索待ちの嵌張。


     八索が欲しいのであれば、さっきみたいに九索を捨てた後に右端から2番目に隙間を開けていれば良かっただけの話。

     右端に1枚しか残っていなかったら、その待ちは単騎待ちか嵌張待ちのどちらか。でも単騎待ちにしても嵌張待ちにしても、
    九索の隣というヒントでどちらも八索に確定する。

     右端に2牌残して七索待ちのヒントと出来なかったのは、それで辺張待ちだと確定出来ないから。

     2牌が残っている場合、八索と何かの双ポン待ちの可能性を否定できない。

     それか、九索を捨てたってことで九索は手牌に使ってないと俺が思い込む可能性が高いと考えたのかもしれない。

     だから咲は、やり方を工夫しなければならなかった。


     つまり咲の待ちは、七索の辺張待ち――!


    「ロン。純チャン、一盃口。8000」
    「……はい」

     達成感などおくびにも出さず、素っ気なく点棒を手渡す。

     これで東場が終了。あとは南場を残すのみ。

     計画は、順調過ぎるくらい。

     最後に時計を見たのが、優希に振り込んだ東二局開始前。それから4局を終えるのに25分も経っていない。

     その上、今の振り込みで俺の点棒は残り7000点程度。4飜以上で跳べる位置。

     流石だぜ、咲。やっぱりお前がいてくれて良かった。




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