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    元スレ京太郎「俺は、楽しくない」

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    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 京太郎 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 :

    原作と大差ないな

    52 :

    周りの評価が怖いならチラ裏に書いてればいいじゃん
    面白ければ評価されるしつまんなければ叩かれるのは自然の摂理なんだから思うままに書けばいいよ

    53 :

    気持ち悪い

    54 :

    >>39みたいな奴は展開によっては絶対に出て来るからあまり気にしない方がいい

    主人公の事を評価しないから叩きのめせとか幼稚すぎる

    55 :

    個人的には、京太郎が強くなって他の部員たちをボコボコにする展開っていうのは割と見るパターンに感じるので
    精一杯頑張ってるのに届かないことの悔しさや無力感を話全体のテーマとして最後まで書くっていうのも新鮮でいいと思うんだ
    結局1の好きに書くのが一番だけどね

    56 :

    幼稚過ぎる(キリッが抜けてるぞ

    叩かれたくないならなぜ投下した

    57 = 49 :

    意見が欲しかったって書いてあるやん

    58 :

    京太郎がもっとひどい扱いでもいいのよ

    いやまあほどほどが良いとはいえ、日和ったら物語が成り立たなくなるから
    甘甘路線で行くならそれでもいいけど

    59 = 1 :

    あんまり人の意見を気にし過ぎるのもいけないみたいですね。
    というか何度もそう言ってくれているレスがあるのに変えようとしてなかったのだから、
    最初から人の意見なんて聞けてなかったっていう…ww

    まぁ、自分の書きたい話を書きたいように書こうと思います。
    気に入ってくれた方はどうぞ見て下さい。気に入らない方は申し訳ないけど、さようなら。
    そんな感じで。

    無駄なレス多くて申し訳ない。これからは極力投下だけにしますね。
    早くて明日、遅くとも明後日には続き投下します。では。

    60 :

    「原作と大差ない」んじゃなくて
    「他の二次創作と大差ない」んだと思う
    個人的には、原作基準で和と優希がそこまで京太郎にきつく当たるキャラかは疑問だが、
    そのくらいのキャラ改変はどこでもあるし
    納得いかなかったら自分で作品書いたほうが生産的だからな

    要はやりたいようにやるしかない

    61 :

    とっても面白い!
    つづけてくれ

    62 :

    まあ物書きならいちいち注釈や説明を入れずに文章だけで勝負すればいいんでないかい
    他のスレなんか会話文と仕草の擬音だけで済ませてるようなの沢山あるしな(気軽に読むにはいいけど
    そりゃ無茶な展開とか違和感ある行動とかあればツッコミ入るだろうが入ってから考えりゃいい

    63 :

    和のアドバイスで、これ捨ててなかったらこうだった、ってのは普通にムカつくわなww
    不要牌だと思って捨てたのが裏目になることなんて普通にあるんだから、たらればの助言されましても

    64 :

    和の打ち手としての性質上、牌効率と手の点数、待ちの広さを考慮据える考えだから
    理詰め麻雀だから仕方ない

    65 :

    3万点以下で西入はしないの?

    66 :

    話し込んでるとこ悪いんだけどそういうのは終わってからやってくんない?
    自分が思ってるようにかけばいいんだし、何より長文は読む気にならない

    67 :

    議論は他でやれって事だな

    続くと1も投下しづらいだろうし

    68 :

    行動、言動に無理がなくて、丁寧でいい感じ
    これからの展開が気になるでござる

    69 :




    「わっ、もう結構暗くなってる」
    「そうだな。早く帰らないとまた親父さん心配するぞ」

     日没刻。
     京太郎たちが学校を出ると、もう星々が目視できるほどに夜が迫っていた。

     二人は何か言う訳でもなく、帰路を並んで歩き始める。京太郎が部活後の片づけを引き受け、咲がそ
    れに付き添った為、他の部員は先に帰ってしまっていた。

     高校に入って少し珍しくなった、咲との下校。
     咲が麻雀部に溶け込んでいくにつれて、咲と京太郎が共に登下校する機会は減り、代わりに咲が和や
    優希といった同級生の麻雀部員と共に登下校する機会が増えた。それ自体は咲の環境の変化であるので
    京太郎も納得していて文句もないのであるが、このように気の置けない仲の友人と共にゆっくりと帰路
    に着くことは、京太郎は嫌いではなかった。

     月の出ない夜なので、夜空の黒を背景に無数の星の煌めきがよく映えていた。

     何気なく空を見ていた視線を落とし、京太郎は小さく口を開く。

    「別に、手伝ってくれなくてもよかったんだぜ? いつもやってることだし」
    「うん?……うん、ちょっとね」

     歯切れの悪い返答。

    「ちょっとって?」

     前方を向いたまま、京太郎が続きを促した。

     先程追い抜いた街灯に照らされ、彼らの影がゆらゆらと揺れている。

     咲は言葉を探すように沈黙し、ややあって京太郎を見上げた。

    「……京ちゃん、今日は残念だったね」
    「ん?」
    「ほら、あのオーラスまでトップだった半荘」

     あぁ、と気のない声を上げ、京太郎は自嘲的に笑って頭を振る。

    「あんなの、マグレだよマグレ。優希や和に指摘されたように、全然状況も見えてなかったし」
    「そんなこと……」
    「っていうか、最後の最後でキッチリ捲ってくれた貴方が言ったら嫌味っぽいですよ。宮永さん?」
    「そ、それはそうだけど……」

     おどけてみせる京太郎の言葉に、シュンと咲は俯いた。

     そのまま横目で京太郎を見て、ポツリと、

    70 = 1 :



    「でも京ちゃん、『アレ』本気で怒ってたでしょ?」


    呆気なく京太郎の真意を見抜いた。

    「っ……」

     京太郎は言葉に詰まるように固まり、立ち止まった。それを見て、咲の足も止まる。
     目の前に立つ咲の確信を持った目を見て、京太郎は言い逃れ出来ないことを悟った。

     京太郎は軽く息をついて、苦笑いを浮かべた。

    「ハハ、やっぱ気付かれてた?」

     咲は頷く。

    「そりゃあ。一番長い付き合いだしね」
    「まぁ、我ながら苦しい言い分だとは思ってたけどな」

     笑いながら、京太郎はバツの悪さを感じていた。

     麻雀部にいる間、京太郎は怒りなどの負の感情を極力周りに見せないように努力をしてきた。唯一の
    男子部員なので、怖がられたり警戒されたりして孤立するのを恐れていたからである。
     優希のジョークが琴線に触れてしまったのは、たまたま起きた事故のようなもの。京太郎自身二度と
    繰り返すまいと心に誓ったものであった。

     京太郎の苦しい言い訳でその場が丸く収まり、円満解決。そう考えていただけに、今さら咲にそのこ
    とを蒸し返されるのは気分が滅入った。

    「……あんなこともうやらないように気をつけるからさ、今日のところは見逃してくれ――」
    「優希ちゃんは」

     無理矢理会話を断ち切ろうとした京太郎を、咲が遮る。

    「言い方はちょっと酷かったけど、アレは京ちゃんなら許してくれるだろうって信頼してる証だし、本
    当は京ちゃんのことを、気に入ってるんだと思う」
    「和ちゃんも。京ちゃんならきっと分かるだろうって思っているから、厳しいことや難しいことも言っ
    てるんだよ」

     咲は京太郎の1歩先の位置から、真摯な目でまっすぐに見つめてくる。
     京太郎は気恥ずかしさともどかしさを覚えた。些細ことで腹を立てた自分が、まるで聞き分けのない
    子供のようだと言われているように思えた。

    「……分かってるよ。優希は子供っぽいところがあるし、和も自分が正しいと思ったら結構ズバズバ言
    ってくるタイプだしな。あのくらいで腹立てちまった俺が悪かった。ごめんなさいっ!」

     素直に京太郎は頭を下げた。咲が説教をして、京太郎が反省をして、終わり。これでこの気まずい会
    話は終わりにしたい、そう思った。

     しかし、咲はゆっくりと頭を横に振り、

    71 = 1 :



    「それでも京ちゃんは、それが嫌だと思ったんだよ」


    そう続けた。

     アスファルトを見ていた目を咲に向けて訝しむ京太郎に、咲は屈託のない笑みを返す。

    「二人の言葉に悪意がないのは本当だけど、それでも京ちゃんはそれが嫌だと思ったんだから、二人の
    気持ちだけを尊重して、『悪意がないのだから京ちゃんは我慢しなさい』なんてそんなのおかしいと思う」
    「怒りたかったら、変に我慢や遠慮なんかしないで怒ってもいいんだよ。友達ってそういうものでしょ?」

     それは京太郎にとって、全く想像のつかない言葉であった。
     怒った人間だけではなく、怒らせた方にも問題がある。考えてみればそうなのだろうが、果たしてそ
    れは男女の差がある場合でも成り立つものなのか。

     京太郎は少し考え、首を振った。

    「いや、やっぱり俺が悪かったよ」
    「そんな……」
    「咲だって、俺がいつもあんな乱暴な行動してたら怖いと思うだろ?」
    「確かにああいう風にされるとちょっと怖いけど……」

     京太郎に言い含められるように咲はスゴスゴと引き下がる。
     咲の言い分が分からないでもない。しかしだからと言って感情に任せて怒ることはあまりにも幼稚過
    ぎたし、男のプライドとして、そんなストレスにすら耐えられない人間にはなりたくなかった。

     引き下がった筈の咲はあっと小さな息を漏らし、何かを思いついたのか顔を上げてニンマリと笑った。

    「京ちゃん。乱暴なのは確かにいけない」

     大袈裟にうん、と頷き、

    「だからやり方を変えてさ――」

    咲はギュッと胸の前で両手の拳を握り、爛々と瞳を輝かせる。

    「麻雀で借りを返すっ! なんてどうかなっ?」

    72 = 1 :




     しばしの静寂。

     呆れ顔で京太郎が溜息をついた。

    「はぁ……。それが出来たらとっくにやってるよ」
    「むっ。それだよ京ちゃん! 麻雀の知識や腕よりも先に、勝とうという気持ちがないと!」

     いい?――と人差し指を立てて得意気に咲が続ける。

    「京ちゃんは確かに麻雀歴も浅いし知識も足りてないけど、裏を返せば一番伸び代があるってことなん
    だよ? 麻雀は運が絡むゲームなんだから、すぐに実力で追いつくのは出来なくても1半荘で1位を取
    るくらいなら絶対出来るようになるよっ!」
    「正々堂々と1位になって、『へへーん1位になってやったぜ。どんなもんだい』って言って見返して
    やればいいんだよ。その方が平和的だし、麻雀部員らしいでしょ?」

     いやそんなガキ臭いこと言わないけど、とツッコミながら京太郎は考える。

     ――言わないにしても……。そっか、『麻雀部員らしい』か。

     県予選の個人戦でも早々に敗退し全国出場する女子部員の面々を外から応援していた、麻雀部員とい
    うよりただの雑用として働いてきた京太郎にとって、それは得も知れぬ魅力のある響きだった。学校生
    活でも、友達にマネージャーだと弄られる程の京太郎は、自分が麻雀部の一員だという自信が日々薄れ
    つつあったのである。

     ――そうだよな、俺だって麻雀部の一員なんだ。

    「……うん、その通りだ」

     ――大切なのは、気持ち。既に実力で負けてるんだ、その上気持ちも劣ってるなんて、カッコ悪すぎ
    だろ……!

     ニ、三度頷き、勢いよく拳を空に掲げる。

    「よーっし、明日から本気で1位を狙ってやる! 優希に負け犬って言ったことを訂正させてやるぜ!」
    「ふふっ。その意気だよ、京ちゃん」

    「――咲っ」

     突然話を向けられた少女は目をまんまるに見開き、

    「分かんないとこ聞いたりとか……その、色々と協力してもらってもいいか?」

    「うんっ、もちろんいいよ!」

    気恥ずかし顔の京太郎の提案に、笑顔で大きく頷いて見せた。

    「サンキューな!――うおぉ、なんだか燃えてきたぜー! 絶対1位取るぞー!」

     沸々と湧き出す希望とやる気のままに、京太郎は両腕を大きく開いて叫ぶ。

     街灯の少ない暗い帰り道が、京太郎には光で満ち溢れているように感じられた。

    73 = 1 :

    ここまで。
    ようやく一つの区切り終了って感じですね。ついでに当初の書き溜めも終了……。

    >>63 実はこれは自分自身の体験談なんですよねー……。
    「もうパーツ出来てるんだし、鳴けば聴牌余裕やん!」って何も考えずに中張牌切りまくってたら
    先にリーチされてにっちもさっちも行かぬ状況に。
    巡目早いなら中張牌残してた方が……という後悔の結果。

    >>65 それって原作の大会のルールになってましたかね。
     賭け麻雀の時に動く金額が少なすぎて面白くないからっていうルールだと思ってたので
     競技麻雀だしケチがつくといけないから延長とかしないかなって思って勝手に良しとしてたんですが……。
     手元に咲原作ないので、また今度調べてみます。

    75 :


    いいなぁ。京太郎もいい方向に向かい始めた。

    77 :

    *オマケ*

    京太郎「ほら、見てくれよ咲! 打ち筋の参考にしようと昨日3つも麻雀本買ったんだ」

    「おー。やる気だね、京ちゃん! どんなの買ったの?」

    京太郎「うん、これなんだけど――」


    『速攻で逃げ切る麻雀理論』 著者:藤田靖子

    『完璧にわかる麻雀』 著者:三尋木咏

    『後悔しない人生設計~婚期を逃さない為に今出来ること~』 著者:小鍛治健夜


    「うん……今日の帰りに一緒に選んであげるから、今すぐ捨ててきなさい」

    京太郎「ファ!?」


    ―――――

    不遇な京太郎を見て荒んだ心を癒す、小ネタTimeでございます。
    ほら、あの、漫画の巻末についてる4コマみたいな感じで。まぁジコマンですごめんなさい。

    先日は遅くなるかもーとか言ったくせに今回結構早くに投下したけど、次は流石に遅くなると思います。
    大事なところだから、じっくり書いて後で心残りにならないようにしたいですし。

    調子とか詰まり具合によって変わりますが、1週間くらいかな? その分文章は長めにしますので。

    それでは。おやすみなさい。

    78 :

    なんで破産した人が出した財テク本みたいなのが混じってるんですかね

    79 :

    三冊目に麻雀のマの字も無いんですがそれは

    81 = 75 :

    最期のやつは切実すぎてもうね・・・

    82 :

    咏ちゃんのおかしいか?

    83 :


    行の開け方みたいな細かいところにも工夫が感じられていいね。
    そのおかげで、下の台詞とかが目立って、より強く印象に残った。

    > 「でも京ちゃん、『アレ』本気で怒ってたでしょ?」
    > 「それでも京ちゃんは、それが嫌だと思ったんだよ」

    京ちゃんのことが分かってる、咲ちゃんの言葉は響くな。

    オマケは……うん、これは本編とのギャップが強くてひどい (良い意味で)。


    >>82
    わかんねーて言う人が書く本じゃないだろうとww

    84 :

    >>83 わかんねーとか言いつつ分析はまともにしてなかったっけ?

    85 :

    >>79
    今出来ること
    ↑この辺に「ま」があるよ(震え声)

    86 :

    「若い男を賭け麻雀で借金漬けにして身柄を抑えるための麻雀トレーニング」とかに紙幅を割いてるんだろう多分

    87 :

    アカギを買ってクククと笑う京ちゃんの出来上がり

    88 :

    続きはよ

    89 :

    おもしろいな
    スレタイもあるし展開気になる

    90 :

     やる気になった京太郎は今までの生活を一変させた。
     若さを盾に体に無理を聞かせながら、麻雀の為に時間を惜しまず使い四六時中麻雀のことを考えて過ごす。それは、一般的な
    高校生にとって必要な時間すら犠牲にする程の思い入れ様であった。

     授業中では――

    「須賀ァ! 最近のお前は寝てるか授業に関係ない本を読んでるかのどっちかだな! そんなに先生の授業がつまらんかぁ!?」
    「あ、アハハ。やだなぁ先生。集中してないようで、ちゃんと聞いてますってー」
    「ほぉ。じゃあこの問2の解説をしてもらおうか……?」
    「……あー、そうくるかぁ。それは、その……ごめんなさいっ」
    「授業態度は減点しておくからな!!」

    教師に咎められながらも麻雀解説本を熟読した。

     昼休みには――

    「ふぁぁあ……」
    「……京ちゃん、なんだかいつも眠そうだけど、ちゃんと睡眠取ってる?」
    「あー……。毎日朝方近くまでネト麻やってるからなぁ」
    「だ、ダメだよちゃんと眠らなきゃ!」
    「大丈夫だって。足りない分は授業で補ってるし」
    「それ全然大丈夫じゃないよ……」
    「それより咲、ここの部分でちょっと聞きたいんだけど」
    「もぅ。……そこは、この牌が3枚切れてるから――」

    「……なんだか最近、二人の距離が近くなった気がするじょ」
    「そう、ですね……。須賀君が麻雀本を学校に持ち寄るようになってからでしょうか?」
    「おい犬っ! このやさしくてかわいい優希ちゃんがいつも躾けてやってるのに他の人に質問するとはどういう了見だ!」
    「んー?……いや、お前に聞いたら『ドーンと切ればいい!』とか『なんとなくこっち』とか出てきそうで怖いからパス」
    「なんだとー!」
    「い、いいんだよ。私も教えるのは勉強になるし、この前手伝ってあげるって言ったばかりだから……」

    1年生4人で弁当を囲みながら、咲に解説を頼んだ。

     家では――

    「いつまでゲームをやってるの!? もう夜遅いんだから寝なさい!」
    「これは部活の一環だっての!――ふむ、受け入れ枚数的にどっちを切るべきか……」
    「もう! お母さんはもう寝ますからね!?」
    「はいはいおやすみー。――うわ、七対子だったのか。これは要注意だな」

     母親に小言を言われつつも毎晩遅くまでネット麻雀に勤しみ、本で得た理論を実践しつつ経験を積んでいった。

     当然周りから心配する声は上がったが、京太郎は聞く耳を持たなかった。否、周囲も本気で止めようとはしなかった。一心不
    乱に一つのことに打ち込む京太郎の姿は、確かに危ういものがあったが、それ以上にまっすぐで見ていて気持ちのいいものだっ
    たからである。


    91 = 1 :


     そして一週間後。

    「ツモっ! タンピンツモ赤1で、2600、1300!」
    「うっ。ってことは……」
    「和を抜いて俺がトップだよな!――っしゃあぁぁ!!」

     南4局、31900点の和を28100点の京太郎がこの和了りで逆転し、京太郎は1年生同士で囲む半荘でついに念願の1位を手に
    入れたのである。ここ最近無理をしながら詰め込んだ努力が、意外にも早く実を結んだ。京太郎の胸の中に達成感が溢れる。

     思わずガッツポーズを取ってしまった京太郎に、咲が祝福の言葉を贈った。

    「おめでとう、京ちゃん! この前よりずっと強くなってたよ!」
    「あぁ、ありがとうな! お前が毎日教えてくれたおかげだよっ」
    「い、いやぁ、私なんて。京ちゃんが頑張ったからだよ……」

     続けて和も立ち上がり、京太郎に声を掛ける。

    「須賀君、初勝利おめでとうございます」
    「おう、ありがとう! 和!」
    「これを続けていかないと意味がないのですから、気を抜かないように」
    「は、ハハハ。お手柔らかに……」


    「――むむむっ」

     と、談笑する三人を見て膨れっ面をするタコス好きの少女が一人。優希は勢いよく椅子の上で立ち上がり、京太郎をビシッと
    指差した。

    「やいやい京太郎! 貴様、まさかたったの一勝で満足してやいないだろうな!? もう一半荘やるじょ!」
    「ん?――おう、望むところだ!」

     浮かれ顔で京太郎が椅子に腰かけ、二つ返事でサイコロを回す。その仕草と表情から、自分への自信が見て取れた。

     掲げていた、1年生で卓を囲む半荘で初めての1位を取るという目標の達成。京太郎が喜んでいるのはそれだけが理由ではな
    かった。

    92 = 1 :

     京太郎は今までの対局を経て、麻雀部の一同と自分との比べ物にならない実力差を痛感し、それを内心引け目に感じてきた。
     こうやって卓に混ぜてもらい上級者と打つことで自分は大きな経験を積めるだろうが、果たして部のみんなはどうだろうか。
    何度やってもツキが向いても1位になることさえ出来ない自分と打つことで、何かを得ることなど有り得るのだろうか。染谷部
    長が代わりに入った方がみんなの為になるのに、気を遣わせてみんなの練習の時間を自分の為だけに削っているのではないか。
     彼にとって、周りを犠牲にして自分だけが得をする状況は好ましいものではない。部内にそういったことを言うような人間は
    いないが、京太郎は常にその不安を持ち続けていた。

     だが今日、たった1半荘だけとは言え京太郎は1位になった。それは、京太郎でも他の部員の脅威となることがあるというこ
    との証明。根拠は薄いのかも知れないが、これで自分は麻雀部のみんなの練習相手くらいにはなれる実力を身に付けたのだと京
    太郎は納得出来ていた。
     ようやく、おんぶにだっこの状態を脱却出来た。実力は未だ足りないものの、一人の麻雀部員、一人の仮想敵としてみんなと
    の練習に参加できるのだ。京太郎は何よりもそれが嬉しかった。


     そんな思いに胸を膨らませる京太郎の対面にむくれ顔で優希が座り、常備しているタコスに齧りついた。慌ただしく咀嚼し、
    ゴクリと飲み込んで京太郎に吠え掛かる。

    「さっきの私はタコス力が切れてたんだじぇ。今度は最初っからフルパワーだ、光栄に思えっ!」
    「あぁ、本気で来てくれるなんてありがたいな。でも俺だって日夜努力して雀力鍛えてきてんだ、そう簡単に行くと思うなよ?」

     起家が優希に決まり、京太郎の真価を問われる第二戦が始まった――!

    93 = 1 :



     筈だったが。

    「ロンっ、親っぱねっ(18000)!」
    「マジか!?」

     喜び勇んで挑んだ二戦目は親の優希に追っかけリーチをしてあえなく撃沈。そのまま鳴かず飛ばずの4位。

    「ロン。ザンク(3900)」
    「うぐっ!」

    「ツモ。ゴミ(500・300)」
    「お、俺のラス親……」

     三戦目は和の早さに挑むも勝負にならず、成す術なくじわじわと削られてまたもや4位。

    「……よし、通らばっ!」
    「ごめん、通らないよ。ロン!」
    「え!?」
    「混一役牌、符跳ねして12000です」
    「ええぇぇ……」

     四戦目は逆転を狙ってリーチを掛けたところで咲に親の満貫を当てられ、やはり4位。

    94 = 1 :


    「だ、駄目だぁー……」

     流石に全国出場した麻雀部員だけあって、本気を出せば所詮付け焼刃の京太郎など相手にはならない。

     完膚なきまでに叩きのめされた京太郎は力なく諦めの言葉を発し、顎に強烈な一撃を貰ったボクサーのようにグデッと卓に倒
    れ込んだ。
     けたたましく鳴り響くゴングの代わりに、先程まで息巻いていた筈の優希が気抜けしたように鼻を鳴らす。

    「てんで話にならないじょ」

     グサリ。
     手痛い言葉が京太郎を貫いた。威勢のいいことを言っていただけに、とても決まりが悪い。

    「結局、犬は犬のままだったってことだじぇ!」
    「ほうじゃねぇ……。ちっとはマシになったと思ったんじゃが」
    「だから気を抜かないように、と伝えたのに……」
    「京ちゃん……」

     四者四様の反応。しかしいずれも呆れたような雰囲気の面々を前に、京太郎はますます縮こまった。

     ――いや、そりゃあ1週間かそこら頑張っただけでみんなに追いつける訳ないって思うけどさぁ……。こうも連続してラス目
    引かされるとはなぁ。
     ……ホントに、何が変わったんだ俺は。みんなの練習相手なんて、夢のまた夢じゃねぇか。

     自虐的な言葉が頭の中に浮かんでは消える。

     先程は確かに1位を取れたが、それはみんなが自分用に打っていたからではないのか。手を抜く、とまではいかないものの、
    一人実力のそぐわない者が混ざるだけで気持ちの入り様は大会での対戦の時とは全く変わってくる筈だ。結局、自分とみんなと
    の間にはまだまだ如何ともしがたい壁があったのだ。
     京太郎の胸の内にあった、『みんなの練習相手になれる』という自信は、にわかに薄れていった。

     ポン、と落ち込む京太郎の肩に小さな衝撃。次いでまこの声が降ってきた。

    「ほれ、いつまでもそうしておったら邪魔じゃあ。打つ気がないんならはよう代わりんさい」
    「……はい」

     呟くように返事をしてフラッと立ち上がった京太郎の姿を目で追いながら、満足げな顔をする優希が跳ねるような声で茶化す。

    「京太郎っ! 3連続ラス目の罰として、学食でタコス買ってこーい!」
    「アンタは罰でも何でもなくとも、いっつも行かせとるじゃろ……」

     優希が京太郎を学食までお使いさせることは珍しいことではないので、四人は気に留めることもなく次の半荘を始めてしまう。
    文句の一つも言う元気の出なかった京太郎は、どんよりとした空気を纏いながら背中を丸めて部室を後にした。

    95 = 1 :


     学食で優希のお使いを済ませた後、京太郎は部室のある最上階までの階段を歩いていた。
     険しい面持ちで、頭から離れない先程の醜態に思いを巡らす。

     ――ホントに俺、強くなってるのか? このまま頑張ってたら、みんなと肩を並べて戦える日が来るのか……?

     京太郎は麻雀部の中で自分だけが初心者だということで、自分を軽んじている節があった。
     たった一人雑用に専念して大会に出場する部員たちの為に尽力し、大会からその前後の合宿に至るまでの長期間ずっと牌に触
    れなくとも不平不満を漏らさなかったのは、京太郎が類い稀なる雑用好きだった訳でも何でもなく、ひとえに彼の『麻雀部の負
    担にはなりたくない』という自己卑下からくる自己犠牲の精神の為である。

     須賀京太郎という人間にとって、『素人である自分が全国区レベルの麻雀部に迷惑を掛けること』は罪に等しかった。だからこ
    そ、他の麻雀部員の練習時間を削っているかもしれない自分の現状を恐れ、自分が練習相手になれるかどうかに執着してしまう。

     ――迷惑を掛けているかもしれないのは怖い。
     でも卓に入らないように、なんてしたくない。麻雀から離れるなんて、絶対に嫌だ。

     それでも京太郎は、もう一度雑用だけに始終する生活には戻りたくなかった。京太郎は麻雀が好きだった。

     実は麻雀とは何の縁もなかった京太郎が麻雀部に入部した動機は、品行方正で見目麗しく、加えて体つきがとても女性らしい
    和となんとかお近づきになりたい、という下心あってのものだった。しかしズブの素人で何度もダメ出しを受けながらも人と卓
    を囲んで麻雀に興じる時間はとても充実していて、京太郎は次第に麻雀自体に魅力を感じるようになっていった。

     そして今の彼には、『麻雀で誰よりも強くなりたい』という人並みの願望が芽生えていた。麻雀から離れ、強くなることを放棄
    することは、彼の中で選択肢と成り得なかった。

     ――もし俺がみんなの練習相手になれる程強くなれば、誰に負い目を感じることなく、みんなと切磋琢磨していくことが出来
    る。
     それが仲間ってもんだろ。それが麻雀部員ってもんだろ。

     そしてそれが、ささやかな彼の理想。

    96 = 1 :

     自分の理想は未だ遥か遠いところにある。三連続の最下位で、それを自覚させられてしまった。
     もしかして今の自分は雑用係の時と何も変わっていないのではないか。そんなことを、どうしても考えてしまう。

     ――夏の大会中、俺は雑用だった。いたらいたで助かるけど、俺じゃないといけない仕事じゃない。あの時の俺は清澄高校麻
    雀部の一人じゃなくて、ちょっと便利な部外者の内の一人だった。
     でも夏の大会が終われば、俺もまた卓に入れてもらえるようになると思ってたし、そうすればきっと麻雀だってもっと上手く
    なれると思ってた。麻雀部の一員として、みんなと一緒に競え合える日が来るんだって。

     だが、それは過程を度外視した楽観的希望に過ぎなかった。
     自業自得だと京太郎の理性が言い聞かせるのに反発して、理想を語る京太郎の欲の声が大きくなる。

     ――俺だって、麻雀が好きだ。牌に触れた時間は一番短いけど、この気持ちだけはみんなにだって負けないって思ってる。
     いつも平気なフリしてるけど、ホントは勝ちたいに決まってる。
     弱い弱いって弄られて、大負けしてんのにヘラヘラ笑って。そんな自分、認めたくなんてなかった。
     みんなは立派な舞台で活躍してんのに俺だけせっせと雑用スキル磨いて、部外者扱いされてんのに「俺は役に立たないからい
    いですよ」なんていい子ぶって。これまでの自分がどれだけ情けない人間だったかなんて、ずっと分かってたんだよ……!

     ギリッと歯を噛みしめ、拳を握る。

     抑え込んでいた感情の奔流。言葉にならない思いが京太郎の中で暴れ、零れていく。

    97 = 1 :


     その時、ふと、


    「大切なのは、気持ち……」


    京太郎の口から洩れたある言葉。
     それは先日の咲との会話で京太郎自身が悟った、子供のように愚直で、しかし眩しい程に一途な信条。

     気付くと京太郎は階段を昇り終えており、部室のある最上階の床の上に立っていた。

     神の啓示を受けた敬虔な信者のように、荒れていた京太郎の様々な思いが一つの方向へ迷うことなく向かっていく。

     ――そうだよな、気持ちなんだよな。勝とうという気持ち。絶対に追いついてやるって気持ち。
     俺はみんなと戦えるようになりたい。その為には実力が必要。だったら――!

    「こんなところでウジウジいじけてる暇なんか、ないよなっ」

     ――そうだよ。結局俺の理想の為には、頑張り続けるしかなかったんだ。
     大体今日だって、なんだかんだ言っても1位にはなれた。俺が強くなってるって証拠じゃねぇか。
     言われたことのないことを心配しててもしょうがない。迷惑を掛けてると思うなら、すぐにでも追いついてやって何遍でも練
    習相手になってやりゃあいいだろうが。
     前に進む。ちょっとずつでも。悩むことなんて、何もない!

     弱った心を奮い立たせ、京太郎は力強く部室へと足を進め始めた。その眼光は鋭く、彼の強い意志が見て取れる。
     もう迷ったり落ち込んだりするものか、そう思った。

     部室の扉の前に立ち手を掛けようとした、その時、


    〈――まったく、犬の急成長にはビックリだったじぇ!〉

    甲高い優希の声が扉を突き抜けて耳に届いた。

    98 = 1 :


     京太郎はハタと手を止め、部室の外から会話に耳を傾けた。扉の向こう側で、優希が更に続ける。

    〈アイツには自分の立場というものを教えてやる必要があるじょ!〉

     ――くそっ、優希の奴好き勝手言ってくれるぜ。

     優希の何気ない軽口が、京太郎の心をざわつかせる。

     ここで怒ったらこの前と同じだ、そんなこと出来ない。京太郎は無邪気な言葉の痛みをグッと堪えた。

     ――大したことじゃない、いつものことじゃねぇか。
     むしろありがたいぜ、あの優希がこんな俺の成長を認めて対抗心を燃やしてくれてるんだから。

     決して折れず曲がらず努力を続けると志したばかりの京太郎。今の彼の心は優希の言葉にへこまされることはなく、ストレス
    を跳ね除けて自らを励ます程の力強さを持っていた。

     だから彼はこの状況にもある程度落ち着きを保っていて、部室の前を離れることもしなかったし、会話に乱入することもしな
    かった。



     不幸なことに。


    99 = 1 :


    〈ほぉー。優希に出来るかねぇ……〉
    〈なっ!? センパイ酷いじょ!〉

     優希の言葉に茶々を入れるまこの声。過剰に反応する優希をよそに、大袈裟に抑揚をつけた調子で続ける。

    〈アンタは最近気が抜けとるようじゃけぇね? 部活中でも京太郎なんかに後れを取ることもしばしば〉
    〈そ、それは、油断してただけで……〉

     ドクン。京太郎の心臓が嫌に跳ねた。

     ――京太郎『なんか』ってなんだよ。まるで俺が負けるのが当たり前みたいに……。

     いつも後ろから京太郎たちの姿を見て、世話を焼いてくれていた先輩の言葉は京太郎の心の深くに刺さった。
     まこは京太郎がいくら弱くとも、卓から外すようなことはしなかった。だから染谷部長は自分のことを一人の部員だと認めて
    くれているんだとまこを信頼していた京太郎にとって、京太郎を貶めるまこの姿は酷い裏切りのように感じた。

    〈油断なんて言い訳にはならん。そんなようじゃ、その内京太郎にも追いつかれてしまうじゃろうねぇ〉
    〈そ、そんなことはないじょ! あんなパシリのシロート雑魚雀士が私に追いつくなんて、1万年掛かってもありえないじぇ!〉

     まこに焚き付けられるままに優希が京太郎をこき下ろす。
     しかし彼の顔に浮かぶのは、怒りではなく、戸惑い。

     ――染谷部長、俺は確かに弱いです。でも、それをネタになんかされたくはなかった。特に、あなたには……。

    〈優希、流石に言い過ぎです〉
    〈うぅ……〉

     優希が罵詈雑言を喚き続けそうだったのか、和がぴしゃりと釘を差す。

     だが、語調は弱まるものの言葉が止むことはなく。

    〈だいたい、最近の京太郎は、犬の癖にナマイキなんだじょ……。私が話しかけても無視したりあしらったりして相手にしない
    し、麻雀麻雀っていつもそればっかりだし、つまんないじょ……〉
    〈優希……〉
    〈別に、私は――〉

     紡がれる少女の言葉は、


    〈京太郎が麻雀強くなったって、全然嬉しくなんかないのに……〉


    己の非力にもがく少年を、どん底にまで突き落とした。

    100 = 1 :


     ――なん、だよ……それ。
     俺はお前らに追いつきたくてこんなに頑張ってるのに、お前らがそれ否定するのかよ。
     俺はずっと弱いままでいいって、そう思ってたのかよ。

     麻雀部のみんなは仲間だから、自分の努力を肯定してくれている。京太郎はそう思っていた。
     だがそれは自分の思い上がった考え、勘違いだった。
     息が止まる程の衝撃。自分の立っている地面が急に無くなったかのような、絶望感。

    〈……まぁ、須賀君の今日の1勝もたまたま運が向いていただけのようでしたし、まだ私たちの練習相手が務まるようなレベル
    ではないことは確かです〉

     自分では、練習相手にならない。

     ――和、やっぱり俺はお前らの練習の邪魔してたんだな……。
     言ってくれればいいのに。「練習にならないので抜けて下さい」って。いつもの自分に絶対の自信を持ったあの顔でさ。
     余計な気なんか使ってくれんなよ。おかげで、罪悪感でいっぱいだ……。

     今まで自分がやってきた行動は、彼女たちの優しさにつけこんで、独りよがりに立ち振るまっていただけ。
     それは、まさしく後悔だった。彼女たちとの時間が好きだったからこそ、自分が許せない。

     ――最初から、俺は独りだったんじゃないか。誰も、俺を仲間となんか見てなかったんじゃないか。
     雑用役としてじゃなく、『俺自身』が必要とされたことなんか今までに一度でも有ったか……?

     脳裏によぎる最悪の疑惑が消えてくれない。
     今まで必死に否定して、認めないように抗ってきた京太郎の闇の声が、じわじわと思考を蝕んでいく。


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