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    元スレ京太郎「俺は、楽しくない」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 京太郎 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    101 = 1 :


    〈ちょ、ちょっと待ってよ。京ちゃん、強くなりたいって思ってずっと頑張ってたのに、言い方が酷いんじゃ……〉

     その時、小さいながらも京太郎を擁護する咲の声が聞こえた。
     地の底に沈む京太郎に射した、一縷の光。

     ――咲、お前は俺の味方なのか……?

     伝説級の一戦となった、県予選団体戦決勝の大将戦最後の光景が、京太郎の目に浮かぶ。
     それは京太郎もよく知る、麻雀が嫌いだった筈の同級生が放った、とある言葉。

    〈咲ちゃんは、最近楽しそうだからいいじょ……〉

     ツキに愛され、人の愛を忘れてしまった悲しき少女。
     彼女の人生観さえ変えたそれは、決して京太郎に向けられた言葉ではない。

    〈そ、そんなんじゃ――〉

     しかし京太郎は、その言葉に幾度となく救われてきた。

    〈お昼休みとか〉

     それは一種の免罪符。麻雀の弱い自分でも麻雀部にいてもいいのだと思えた理由。

    〈うっ……〉

     揺れる京太郎の根底で、最後の支えとなっていたその言葉は――。

    〈……分かったよ。今度京ちゃんにそれとなく伝えておく〉



     『麻雀って、楽しいよね』



    〈――私も、最近の京ちゃんはどうかと思ってたし〉



     今度こそ、彼を助けることは出来なかった。


    102 = 1 :



    「は、ハハハ……。どういう、ことだよ……」

     後ずさりをしながら、フラリと扉から離れる。表情こそ笑っているものの、その姿はあまりにも痛々しく、危うい。

    「どうかと思うって、何がだよ……? 俺みたいな雑魚が、みんなの練習の邪魔してたこと? みんなに勝とうなんて思い上が
    っちゃったこと?」

     人気のない廊下に呟くような京太郎の問いを聞く者はいない。ましてや、答える者などいやしない。

     どんなに自分に嫌気が差しても、心が折れそうになっても、最後の最後にいつも京太郎を踏み止まらせてくれた言葉が、人が、
    京太郎を否定した。

     自分に残っているものは、もう何もない。

     麻雀部と扉一つ挟んだこの場において、京太郎は完全に孤独だった。

     ――咲。お前の言葉は、俺の勘違いだったのか……?
     麻雀が楽しいなら、麻雀が好きなら、誰でも麻雀を楽しむことが出来るんじゃなくて。
     麻雀を楽しんでいいのは、『お前たち』だけで――。

    「弱い人間は、俺は、ダメなのか……?」

     その声は誰の耳にも届かず、彼の震える瞳の前で空しく霧散する。

     からっぽになった京太郎の頭の中で、彼が大切に思ってきた『仲間たち』の声が延々と響き続けた。



     その日、家に帰った京太郎は、あの後自分がどんな顔をしてどんなことを話し、どうやって帰ってきたのか、何も覚えてはい
    なかった。

    103 = 1 :


    ここまで。

    余韻というものも大事だと思うので今回はKYな小ネタは無し。というかそんなふいんきじゃ…。
    吟味に吟味を重ねたけれど、こんなんでいいのかなーって感じですね。悩めば悩むほど文章が独りよがりになるし、
    謎の詩的表現が出てくるし、ある程度はしょうがないね(ガッカリ

    しっかし、なんで僕は地の文をこんなに固くしてしまったのか。ただ『しかもおっぱいが大きい』って書けばいいのに
    『加えて体つきがとても女性らしい』ってなんか青少年の清らかなエロっていうかただの変態みたいに……。
    でも『である』とか『否』とか書いてある文でいきなり『おっぱいが大きい』なんて、それはそれでアレだし。

    まぁこんな感じで1章の2つ目の区切り終了。チマチマやると盛り上がりに欠けるし、一気に投下したかった場面。
    次回辺りからオリジナル要素モリモリになってまいりますのでー、という予告&警告をしておきます。

    余談ですが、少しでも京太郎の感情をリアルに表現したいと思い、「俺だって勝ちたい! 負け続けるなんて嫌だ……!」とか
    「っなんでだよ、咲……!」とか、やたら情感を込めて朗読していたらマッマが心配そうな顔で部屋を覗き込んできました。
    僕はもうだめかもしれません。

    それでは。

    105 :

    おつー
    朗読はアカン…京ちゃんこのままダークサイドに堕ちてもいいのよ

    106 :


    読んでて胸が痛かった。皆悪気はないんだよな…
    でもキツイなぁ

    107 :

    こりゃ殺意の波動に目覚めるわ

    108 :

    ゾクゾクしてきたで

    109 :

    >>106
    タコス…京太郎がかまってくれない反動
    まこ…タコスの性格を考えての発破
    (おそらく)言葉足らず
    咲…(おそらく)最近の生活態度についての発言

    ってかんじだもんな……崩壊って些細なすれ違いから始まるよな

    110 :

    何か妙なリアリティがあるな
    インターハイの後に本当に起きてもおかしくない内容だし

    111 :

    楽しくなってきました!

    112 :

    いつか原作で男子麻雀編みたいな京太郎成長物語が描かれたら面白いんだけどなぁ
    もしくはバキのスカーフェイスみたいなスピンオフ的なので

    113 :

    咲ちゃんは間違いなく言葉が足りなかったことが……
    他三人は まこ>優希>和 の順で問題のある発言かなぁ
    京太郎の心中にあるように「なんか」は使っちゃあかんと思うんよ
    こりゃ京ちゃんのメンタル折れるわ

    114 :

    >>1乙!

    こりゃ堕ちたかな…

    116 :

    おつおつ
    オリジナル展開は楽しみだな

    117 :

    乙です。
    ここにもヘルカイザースレが。
    転校したりしないかな……京太郎

    118 :

    年単位でやってた奴らに月単位でしかも雑用ばっかやってたんだから勝てないってのはあるけど…
    これはできる奴はできない奴の心が分からない典型的な例

    119 :

    >>113
    >>109みたいに、タコスを焚き付けるためにあえてああいう言い方をしたんじゃないかな?

    「うかうかしてると、馬鹿にしてた奴に抜かれるぞ」って意味で

    120 :


    > 街灯の少ない暗い帰り道が、京太郎には光で満ち溢れているように感じられた。
    前回こんな文で締めくくっておきながら、次の回で突き落す作者は畜生。
    だが、その落差がいい。

    > やたら情感を込めて朗読していたらマッマが心配そうな顔で部屋を覗き込んできました。
    こういう入念な準備があるからこそ、読み手の心を打つ文章が書けるわけですな。
    申し訳ないが、次回の投下前も是非よろしくお願いしますww

    121 :

    >>119
    それにしても努力を怠ってるやつならまだしも努力してるやつに対して

    「なんかに」なんて言うのは酷くない?

    122 :

    タイミングと言い方が悪かったってかんじだなぁ

    123 :

    優希だけじゃない他の部員の目があるところでそう言うってことは、それが本心だと思われたって仕方ないだろ……
    他の言い方はいくらでもあったはずだし。

    124 :

    ここでその雑談をする必要はあるのか?
    雑談スレ行けよお前ら

    125 :

    みんなぐう畜過ぎるヤバイ


    むしろ雑談スレでいきなりこの話するほうが邪魔だと思うが……
    まあ何にせよ雑談は程々にね

    126 :

    てかまず堕ちる以前に麻雀部を辞めそう

    それでも麻雀続けて勝ちたいという意志が残っているなら雀荘狂いになるかな

    127 :

    おつー面白かったー
    京太郎に視点を当ててちょっとキャラを穿ってみるとこうゆうのってありえるかもって思えるあたりがなんか来るものがあるな
    大所帯の部活だったらレギュラー数より補欠のほうが人数多いからお互いが救われる部分あるかもしれないけど一人だけっていう状況は
    こうなるのも想像がたやすいっていうのもまた説得力あるなぁ

    運よく一勝はできたがあくまで麻雀始めたての凡人としてかかれてるのもご都合主義的じゃなくて読んて納得できるし
    その後の展開の落差にもしっかり機能してた

    なんか批評っぽいけどとにかく面白かったー。次も期待してます

    128 :


    ざっと読んで丁寧に書いてるのは好感が持てるわ
    でも正直展開が陳腐というか、すれ違わせて云々を描写したいにしても
    扉越しに盗み聞きとか安直過ぎるのは気になった

    129 :

    基本ベタな話であるしその辺は陳腐なくらいで丁度良いんじゃないかな

    130 :

    予想外の反響の大きさにビックリ。

    なにこの浸り過ぎた文章引くわー(^^; とか言われたら「ォウフ…」ってなってたから投下怖かったけど、
    楽しんで(?)いただけたようで何よりです。
    >ツキに愛され、人の愛を忘れた悲しき少女。
    のところとか、衣ちゃんの能力の象徴である『月』と化け物染みた彼女の『強運』(運と言っていいのかはさておき)を掛けた
    我ながらナイスな言い回しだと思ったり思わなかったりいやなんでもないですすいません。


    >>128
    あー、これは痛いところ突かれましたね…。
    実際これからの展開もありきたりっていうかなんていうか、
    読んでくれてる方の何人かに言い当てられてて無理矢理スルーしてたし…(目逸らし)

    予想を裏切らない展開は読者を裏切ることになるのかどうかは分かりませんが、
    それでもこの話を書こうと思ったのは、人のSS読んで浮かんだ妄想の中で滅茶苦茶悶える羽目になった
    とあるシーン(キャラの心理描写?)を自分の手で実現させたいって思ったからで、
    僕の構成力じゃその流れに持っていくには王道のど真ん中通るしかなかったんで、それもしょうがないかなって感じです。
    どんなに陳腐になっても、どんなに展開読まれても、そのシーンだけは絶対に面白くなるぞ!っていう自信がありますので
    今さらストーリーをどうこうする気もありません。
    まぁこれで「いやそのシーンもつまんねーよ」ってなっちゃったら「サーセンサーセン」って言いながら
    背中を丸めて敗走するっきゃなくなる訳ですが。

    つまるところ、「ストーリーは陳腐だけど、ウチは心理描写に自信アリ(笑)だから」ってことで。
    (核爆)とかにならないように朗読頑張ります。


    と、威勢のいいことを言いましたが次の投下の目途はまだ立っておりません…。
    いや、ほら、選挙とかあるし大掃除とかクリスマスとか年末年始は忙しいから…(震え声) どうして声が震えるのかはお察し。
    物語の大筋であるプロットを基に、1節毎をどういう流れにするか細かく箇条書きする小プロットなるものも用意して書いているんですが、
    今回はそれの作成があんまり思わしくないんですよね…。
    まぁ皆さんにモチベ上げていただいていますし、エターナることはないと思います。
    目途が立った頃に、生存報告も兼ねて何か書き込みでもしようかな。

    それでは。おやすみなさい。

    131 :

    安直なのは否定できんが無理に捻って無茶なことやらかすよりは素直に安直に走るのがマシだと思うよ

    132 :

    王道上等。
    「王道が何故面白いか理解できない人間に面白い話は作れないぞ!」
    という言葉があるくらいだ突き進もうじゃないか

    133 :

    最近こういうのなかったからすげー読みたいなー思った
    けどな、だけどな本編より長いであろうコメはEDまで全て終わってからにでもしような。気持ちは分かるけど、誰もそこまで聞いちゃいないから…どうしても言いたいことあったら例えば聞かれたことを一言二言しか答えないだけでも充分伝わるから

    134 :

    おれはイチの好きにしたらいいと思うよ
    投下のあとの長文レスもこのスレの個性ってことで、まあ>>103みたいに余韻が大事って思うなら、終わるまであんま説明しないほうがいいかもね。興が冷めることもなくはない

    135 :

    ここの奴らはそういうの寛容だから自分の書きたいもん書けばいいと思うな

    136 :

    新しくてつまらないものより手垢にまみれた面白いものの方がいいよねって小説家のだれだかがいってたな。
    投下後のレスはまぁ、うん。言わなくていいこといってるなーって感はなきにしもあらず。読みとばせばいいだけだからあんま気にはならんけど。

    137 :

    >130
    多分、クオリティに不安があるんだろ?
    だから長文で言い訳しておかないと、って切羽詰まった気になる。
    だが安心しろ。王道だけど、凄く丁寧に作ってある。自信持て。
    この作品は面白いから。

    138 :

    そういえばまだ元部長は出ないのか?

    139 :

    1です。先程小プロットを書き終えましたので報告。

    ネット上ではお喋りってなタチなのでついつい話し過ぎてしまうのですが、
    まぁ自分の書いたSSを楽しんでほしいっていうのが本懐ですし、それで興を削がれる方がおられるならば本末転倒。
    これからは無駄だと思うものは極力省こうと思います。

    >>138
     元・部長には後々出演していただく予定です。
     僕としては、辞めてからは時々部室に顔を出しつつ進学の為に受験勉強してるっていうイメージなんですが、
     原作で引退後の進路について言及されているのかが不安ですね。
     どうせなら原作の設定に合わせたいのですが、まぁどうであれ大した問題ではないです。

    今回は一気に投下する気はなく、区切りがいいところでちょくちょく投下しようと思いますので、
    そんなにお待たせすることはない筈です。
    それでは。おやすみなさい。

    140 :

    滅多矢鱈に既存の二次設定が無いだけでも安心して読めるからいいね

    141 :

    更新楽しみ

    142 :

    いいよいいよー
    こういうのあるにはあったけどここまで地の文付きで重厚なのはなかったし
    もっと全員曇るとなおいい(ゲス顔)

    143 :


     薄暗い室内。
     閉じられたカーテンは光を遮断し、今が昼なのか夜なのかも分からない。外界から完全に隔絶された部屋で、僅かな物音だけ
    が静かに響く。

     冷たいフローリングの床には数冊の本が乱雑に転がっている。ページの紙は真新しいにも関わらず、いくつも癖がついてしま
    っている様子が、それらが幾度となく乱暴に扱われたことを物語る。

     その中で、部屋で唯一の光源である、学習机の上に置かれたパソコンの青白い光が、この部屋の持ち主――京太郎の生気の感
    じられない顔を照らしていた。

     学校にはもう数日行っていなかった。それどころか、部屋から出ることすらほとんどなく、せいぜい軽食を取る時と用を足す
    時くらいのもの。
     あとはひたすらインターネットの世界で相手を探し、体力が尽きるまでオンラインの麻雀ゲームをプレイする。ふと気が付い
    たら眠ってしまっていて、意識を取り戻すやいなや中毒者のようにパソコンに齧りついた。

     誰が見ても病的で、異常な生活。
     先の一件で自暴自棄になってしまった彼は、己を破滅へと導くが如く執拗に麻雀を打ち続けていた。

     当然両親は心配し、京太郎に学校で何があったのかを問い質した。また、学校にも来ていない彼を心配してか、麻雀部の面々
    からも数度連絡が来ていた。
     だが京太郎は全く耳を傾けず、孤独な部屋の中でネット麻雀に逃げ込んだ。彼は自分がこれ以上傷つくことを恐れ、そして前
    へ進む気力も失っていた。

    144 = 1 :


     カチ。カチ。
     マウスを操作し無機質な音を立てながら、京太郎は淡々とゲームを進行させる。流石に慣れてしまったのか、一打に要する時
    間は以前と比べ格段に短い。

     振り込もうが、和了ろうが、彼の表情に変化はない。何の感動もなく、気概もなく、ただ効率と精度を突き詰めるだけの作業。

     ――今更こんなことをやったって、何になるっていうんだ。

     対局の合間に、何度も弱った心が京太郎に囁いた。

     ――邪魔者、お荷物、自惚れ野郎。その現実を突き付けられただろうが。俺は誰からもあそこにいることを望まれていなくて、
    誰からも必要とされていなかったんだ。
     唯一役に立てていたと思える雑用だって、あれだけの実績を残した部活なんだ。代わりなんていくらでも集められる。もうあ
    そこには、俺の居場所なんてどこにもないんだよ。
     未練がましく、まだこんなことやって。地道な努力が実を結ぶなんて、まだ本気で思っているのかよ。


     強くなることも、卓に入ることも、勝利を目指すことさえ、望まれてなかったのに……?

    145 = 1 :


     女々しくて、情けない。根暗で、惨めだ。そうやって、彼は自らを酷く追い詰めた。

     自分には誰かを責める権利はないと理解していたし、その気もなかった。溢れ出すやり場のない感情は、全て自分への罵倒と
    なって表れた。

     それは自傷行為そのものであったが、そうでもしないとどうにかなってしまいそうだった。ただただ苦しくて、消えてしまい
    たいと思った。

     だがそんな状態にあっても、京太郎には麻雀を捨てることがどうしてもできなかった。いっそ辞めてしまおうと思うと、必ず
    彼の中で美しく残っている記憶が京太郎の邪魔をした。

     初めて麻雀部を訪れ、麻雀牌に触った時の感動。
     ルールも知らない自分に優しく手ほどきしてくれた元部長の竹井先輩。
     その一挙一動で京太郎をドギマギさせた和。
     初めて和了した喜びに震える京太郎に、からかいつつも笑顔を向けた優希。
     自分の拙い打ち筋を決して笑わず見守ってくれた染谷部長。
     自分と同じくらいのレベルかと思えば、実は部内で一番の実力を秘めていた咲。

     思い出の中の彼はどれも笑顔に満ち溢れていて。
     それらを思い出す度に喉の奥から込み上げてくる感情を、京太郎は歯を食いしばって押し殺さねばならなかった。

     ここ数日の慢性的な睡眠不足と栄養失調により、頭の回転が非常に悪くなっているのは彼にとって幸いだった。ネット麻雀を
    している時はそれに集中するだけで精一杯で、余計なことを考えずに済んだからだ。

     傷つくことを恐れて独り闇に逃げ込み、膨大な絶望と憤りを抱え込み、それに耐え切れず自らを傷つける。

     負の螺旋の中で、誰にも止められることなく、京太郎は堕ちていった。


    146 = 1 :


    「んっ……」

     小さく呻いて、京太郎は微睡から目覚めた。机に突っ伏していた体を起こし、痛む節々を伸ばす。

     時計の時刻から察するに、どうやら十五分程眠っていたようだった。ネット麻雀の途中であった為、眼前のパソコンの画面に
    は一定時間操作のなかったことによる強制敗北を告げる文字が表示されている。

     ぼんやりとした様子でそれを眺めていると、何度も繰り返した筈の自問が膨らんで頭の中を満たしていく。

     ――どうして、俺はこんなことしてんだろう。

     ――どうして、こんなつらい思いをしてるんだろう。

     ――どうして、居場所を失ってしまったんだろう。

     ――どうして、仲間になれなかったんだろう。

     どうして。どうして。どうして……。

    147 = 1 :


     それは疑問と言うよりも、後悔。
     失ってしまったものは大きい。いや彼は失いさえ出来てはいない。最初から何も持ってなどいなかったことに気付いただけ。

     なおも尽きることなく湧き上がる失意の念。

     京太郎は顔を歪ませて机に拳を激しく叩きつけた。怒りで体を震わせながら、声を絞り出す。

    「分かってんだろうが、そんなの……」

     ――どうして?
     決まってる、弱いからだよ。どうしようもなく。
     強くなろうとする努力すら最近ようやく始めたばかり。遅かったんだよ、何もかもが。
     甘かった。大会が終わった後の先の見通しも、ただ一人の未経験者なのに危機感が無かったことも、何も言わないあいつらに
    甘え切っていたことも。全部。
     自分のせいだろ。自業自得だろうが。
     自分の行動が招いた結果で不平を言って、不満を持って、閉じこもって、逃げて。最低じゃねぇか。
     麻雀歴とか関係なく、俺自身の人間性が。醜くて、小さくて、弱くて。
     最初っから、俺はあいつらとは『違う方の人間』だったんだよ……。

     それは心の延命措置。自らを傷つけて溜飲を下げ、一時的に爆発の瞬間を遠ざけるだけのじり貧の逃亡戦。

     彼の精神はもう限界だった。

    「俺なんかが居ていい場所じゃなかったんだよ。あんなに、明るくて、元気で、まっすぐで……。そんな所だから――」


    「……そんな所、でも」


     ――それでも。


    「……ずっと、あそこに居たかった」


    「みんなと一緒に、麻雀やっていたかった……!」

    148 = 1 :


     感情は怒りから悲しみへ。自身を叩き伏せようとする理性の殻が破れ、紛れもない彼の本当の願望が顔を出す。

     もう抑えることは出来なかった。嗚咽と共に涙が零れ、京太郎は椅子の上で背中を丸めて袖に顔をうずめた。

     ――なんでだよ……。
     いいじゃねぇか。弱くたって。
     もの凄く出遅れたけど、頑張ってたじゃねぇか。
     雑用しか出来なかったけど、役に立ってたじゃねぇか。

     ――ダメな俺でも、受け入れてくれよ。

    「今更、突き放さないでくれよ……。見捨てないでくれよ……!」

     ――最初から優しくなんかするなよ。余計につらいんだよ……。

     先に光が全く見えない状況で、思い出と理想だけが膨らんで、そのギャップで押しつぶされる。

     自分にはない、彼女たちの強さが羨ましい。
     自分に優しくしてきた、彼女たちの好意が恨めしい。
     自分を拒絶した、彼女たちの言葉が憎い。

     だが一番憎いのは、どうしようもない自分自身。

     優れた能力もなく、人並み外れた強運もなく、積み重ねた経験もなく、決して折れない強靭な精神もない。そんな自分が憎い、
    自分の過去が憎い、その存在すらも。

     ――ダメだ、もう。何も考えたくない。

     過去のことも、未来のことも、考えたくはなかった。

     京太郎は涙を拭い、目先の苦しみから逃げ出すように再びネット麻雀を始めた。

    149 = 1 :

    ここまで。

    うーん、この文章量…。そんなに待たせることはないとは一体なんだったのか。
    自分の伝えたい感情ばかり先走って、うまく文章に表せているのか不安ですね。

    それでは。もうちょっとペースを上げていきたい。

    150 :


    この京ちゃん鹿児島に転校しそう


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