のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,062,777人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレ京太郎「俺は、楽しくない」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 京太郎 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    1 2 3 4 5 6 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    1 :

    ・京太郎が主人公です。

    ・出来るだけ原作準拠で作りたいと思いますが、オリジナル要素は挟むつもりですので、そういうのが苦手な方はごめんなさい。
     性格とか喋り方がおかしいだろ! というのは作者の力不足なので、ツッコんでいただければなるだけ直します。

    ・スレ立てどころか書き込みさえ初めてなので、なにかマナー違反などがあれば教えていただければ幸いです。
     あと、麻雀の方の腕もちょっと自信が……って状態なので、モノローグとかで変な推察してたらごめんなさい。

    ・それではよろしくお願いします。
     時期は全国大会終了後、部長が引退した後の話です。

    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1354765709

    2 = 1 :

     全国大会で激しい戦いを繰り広げた夏も過ぎ、残暑の中に涼しげな風が混じり始めた9月上旬。休み
    明けのテストも終わり、清澄高校麻雀部は落ち着きを取り戻し大会前と変わらない普段の日常へと戻っ
    ていた。

    「ローンっ、だじぇ! 12000!」
    「うげっ。……はい」

     そして相変わらず不注意な打牌で点棒を毟り取られる少年が一人。麻雀部唯一の男子部員――須賀京
    太郎は残った自分の持ち点を眺めながらガックリと肩を落とした。

     『麻雀をしている姿よりも雑用している姿の方が板についてる』と揶揄される不憫な扱いの少年は、
    夏の大会が終わり、時間的余裕が出来て最近ようやく卓に混ぜてもらえるようになった。ただ経験を積
    むことが何より必須な初心者の段階で雑用という役割につき、麻雀牌に触れる機会が乏しかった為にい
    まだ素人同然の状態。全国大会を戦い抜いた面々を相手に、嬲られ続ける毎日である。

     東4局にして残りは5000点と少し。京太郎が指で弾くと、点棒はカラリと寂しい音を立てた。

    「こりゃあ勝てるかどうかより、跳ぶか跳ばないかの話になってきたなぁ……」

     弱気な京太郎の発言に、上家に座る桃色髪の巨乳少女――原村和の目がキラリと光る。

    「須賀君は攻めと守りの線引きが曖昧過ぎます。今の手も、親リーに突っ張るような手には見えません
    し」
    「うっ、返す言葉もない……」

     前局、条件反射のように京太郎が鳴いた發を横目に、和が冷やかとも取れる口調で京太郎を刺した。
     ドラが親に集まっていたという結果を踏まえると、今の京太郎の手では和了れても1000点。いつで
    も冷静なデジタル打ちの名手である和の言葉は、文句のつけようもない程に的確だ。

    3 = 1 :

    「だいたい、このメンツで打ってるときに京太郎は1位になったことないんだから、最初から勝つなん
    て未来はありえないじょ!」

     たった今京太郎に満貫を当てた対面の親が、麻雀卓に身を乗り出すように追い打ちをかける。
     ロリツインテールな麻雀部の元気印――片岡優希が落ち込む京太郎を愉快そうに眺めて八重歯を見せ
    た。

     大会中は優希の好きなタコスを調達したり、遠征ではしゃぐ優希のお守をしたりと、高校生にしては
    落ち着きのない彼女の面倒を根気よく見てやってきた京太郎だが、麻雀卓の上でそんな情に流される程
    彼女は甘くはない。むしろ、京太郎にちょっかいをかけてその反応を見るのが好きな彼女は、今のこの
    状況を前に、乗りに乗っていた。

     雀力には大きく開きがあるとは言え、京太郎にも意地がある。優希のあんまりな言い方に、しょげ返
    っていた京太郎もグググっと首をもたげる。

    「お、俺だってなぁ! 家でネト麻やったり本読んだり努力してんだぞっ! ちゃんと、役と点数計算
    も覚えたし」

     と、ついつい立ち上がり声を大きくして反論するが、

    「そんなのイッパシの高校生雀士なら知ってて当たり前だじょ」
    「というか、今さら過ぎます……。流石にそれでは勝てる訳ありません」
    「うぅ、そりゃそうだろうけどさ……」

    呆れ顔の両者共に一蹴され、ヘナヘナと椅子にへたり込んだ。

     実際に彼が牌効率などを全く考えずに打っているというわけではないが、それは京太郎が浅い麻雀経
    験の中で感覚的に考えた拙い理論。基礎からして違う自分以外の麻雀部員に「ちゃんと考えて打ってい
    る」というのは気が引けた。

     一人槍玉に挙げられる京太郎の様子を見かねてか、下家に座るショートボブの少女が「まぁまぁ二人
    とも」と助け船を出す。
     少し苦笑気味に人の良さそうな笑顔を浮かべる少女の名は、宮永咲。京太郎の中学時代からの同級生
    で、少々おっちょこちょいな面のある読書が好きな女の子である。

    4 = 1 :


    「京ちゃんだって頑張ってるんだし、あんまり言い過ぎるとかわいそうだよ」
    「まったく、咲ちゃんは犬に甘すぎるじぇ」
    「同感です。甘やかし過ぎても本人の為にならないかと」

     つれない二人の返事に、生来気の弱い性質である咲はたじろぐ。しかしすぐに持ち直し、大袈裟に両
    手を広げながら力説した。

    「だ、大丈夫だって! 京ちゃん、やる気と元気はあるんだし大会終わったから私たちも教えてあげら
    れると思うし、すぐに強くなれるよ!」

     ねっと顔を向けられた当の本人は、力なく麻雀卓に突っ伏して撃沈中。先程の二人の指摘がよほど効
    いた様子である。

    「はぁー……」

     そんな4人のやり取りを眺めながら、卓から離れて読書をしていた眼鏡を掛けた緑髪の少女が気怠そ
    うに溜息をついた。

     染谷まこ――現在の麻雀部で唯一の2年生であり、前部長の竹井久から大会後に部長職を引き継いだ
    麻雀部の新部長である。本来は割と面倒見の良い先輩である彼女なのだが、優希がはしゃいで京太郎が
    落ち込むというのは最近の麻雀部のお決まり。いささかうんざりとした雰囲気がその顔から見て取れた。

     彼女は、パタン、と読みかけの本を閉じ京太郎の背後へと忍び寄る。

    「ったく、ちょっと言われたくらいで情けないのう。男だったらシャキッとしんさいっ!」

     バシッ!

     まこの容赦ない喝は気持ちのいい音を京太郎の背中で鳴らした。
     堪らず京太郎は悲鳴を上げる。その様子に誘われ、麻雀部はしばしの笑いに包まれた。


     平和で明るく、活気に溢れたいつも通りの部活風景。


    5 = 1 :

    出かけるので、とりあえずここまで。

    ちょっと制作方針として誰かの意見を聞いてみたいところが出来ましたので、書き溜めも1章の1/3程度で止まっております。
    プロットがある物語ですしダラダラするのは悪いから、完成してから投下した方がいいんでしょうが……ごめんなさい。

    とりあえず今日はそこまで投下するつもりです。

    6 :

    原作準拠ってあるけど大会終わってるじゃん
    原作の何を準拠してんの?性格?対人関係?

    安価スレじゃないならやりたいように書くのが一番だと思うよ

    7 :

    他校の生徒になってたり学年、年齢が違ってたりするので溢れかえってる状況だと
    清澄で原作と同じ部員でやってるだけでも十分原作準拠してるように見える。

    8 :

    後は誰が誰をどうよんでるかと一人称にきを付ければ大丈夫なんじゃね それ気にする人多いから

    9 :

    ここからどうスレタイに繋げていくのか楽しみ。期待です

    10 :

    なんとなくヘルカイザー思い出した

    11 :

    この京太郎ダークサイドに堕ちそうだな

    12 :

    京ちゃんがフォース操るとか胸熱

    13 :

    京太郎「俺はシス卿だ!」

    14 :

    強くなってほしいな

    15 :

    ただいま戻りました。遅くなってすみません。

    >>6 確かに、おかしなこと言ってますね…ww 自分としては原作の設定+αで、原作の設定自体を変更することはないよって意味で
    原作準拠と書いてあったのですが、よく考えるとそんな線引きに何の意味もないことに気付きました。というかその考え自体がかなり曖昧ですね。


    後出しになってすみませんが、『オリジナル要素アリ』ということで。
    そういうのが苦手な方はごめんなさい。


    キャラ間の呼称や一人称は一応復習して抑えたつもりなんですが、間違っていたら容赦なく叱責して下さい。

    コメント、どうもありがとうございます! では続きから。

    16 = 1 :

     優希に囃されてから僅か数時間後。

    「つ、ツモっ!」
    「じょ!?」

     南3局、優希の親番で声を震わせながら和了宣言をしたのは、京太郎。

    「え、えっと、リーヅモ断ヤオ一盃口――裏2! ハネマンっ。6000、3000!」
    「は、跳満……。と、いうことは――」

     京太郎が指を折りながら覚束ない点数申告をする中、麻雀部の面々は驚きに包まれる。
     それもその筈、

    「もしかして俺、トップ……?」

    優希の親を流しオーラスを迎えた段階で、京太郎が咲を抜いて1位に躍り出たのである。悲しいことに、
    いつも開始から数局で戦線離脱してしまう京太郎にとって、リードをしたままオーラスを迎えることは
    初めての快挙であった。

     自分の計算が信用できない様子で、京太郎は確認するように周りを見渡す。優希が親被りになったこ
    とを小声で嘆いているのを尻目に、いち早く冷静さを取り戻した和が頷いてみせた。

    「そう、ですね。このまま須賀君の最後の親で逆転が無ければ、ですが」
    「ま、マジか……。うおぉ、緊張してきた!」

     京太郎以外の三人が潰し合っている隙に上手く抜きん出ることが出来た、まさに千載一遇のチャンス。
    優希の言う『ありえない1勝』がその日の内に現実となりそうになっていることに、京太郎は緊張と興
    奮に震えた。

    「ふふっ、頑張ってね京ちゃん。でも、そんな簡単に初勝利はあげられないかな?」

     喜ぶ京太郎に笑顔で応援の言葉を贈る咲。しかしその含みを孕んだ言い回しに、京太郎は即座に冷静
    さを取り戻した。

     ――そう、だよな。相手はあの咲や和なんだ。ここで気を抜いたらすぐにまた抜かれることは目に見
    えてる。
     でも、あとはこの1局だけなんだ! 食いタンでも特急券でも、なんでもいいから和了るだけ。それ
    なら俺にだって勝機はあるはず!

     希望を胸に覚悟を固め、京太郎は真剣な面持ちで自動卓のボタンに手を掛ける。

     オーラスの開始を告げる2つのサイコロが、カラカラと乾いた音を立て始めた。

    17 = 1 :


     配牌。京太郎の手牌は、索子の順子が一つ、筒子の両面塔子が一つ、辺張塔子が一つ、そして東の対
    子。ドラ表示牌は、九萬である。

     理牌をしながら、京太郎は頷いた。

     ――悪くない、むしろ良い。はず。ドラはないけど今点数は要らないし、とりあえず東を鳴けば役は
    出来る。あとはどっかで塔子が面子になってくれれば……。

     京太郎は、この局での方針を自分なりに固めながら、第一打を打つ前に今一度状況を確認する。

    東 京太郎:30700
    南 和:23900
    西 咲:26300
    北 優希:19100

     ――優希が1位になる為には、俺に5800点以上の手を直接ぶつけるか満貫ツモ。ほとんど満貫手以
    外にない状況だから手作りには時間が掛かるはずだ。南場だし。
     和の条件は、6800点以上の手で他家からロン和了りするか、5100点以上のツモ和了り。俺に直接ぶ
    つけるならば3400点以上。十分有りえそうだけど、俺も早さなら負けないはず……。
     一番怖いのが、咲だな。4400点以上の他家からのロン和了りに3300点以上のツモでいい。直接なら
    2200点以上。ドラでも絡ませれば簡単に越えられそうだ。こりゃ運頼みだな。

     神様お願いします、と祈りながら京太郎は最初の一打を打ち出した。

    18 = 1 :

     11巡目、京太郎は焦っていた。2巡目に和から出た東を早々に鳴けたのは良かったのだが、それから
    思うように手が進まない。雀頭はすでにできているので、両面か辺張のどちらかの塔子が埋まれば聴牌
    なのに、それが出ない。

     ――くそっ、優希からどっちかもらえると思ってたんだけど、甘かったかな。ツモれもしねぇし……。

     優希の切った萬子を苦々しげに見つめ、京太郎は密かに顔をしかめた。

     早く和了れる算段であったのに、気が付けばもういつ他家がリーチしてもおかしくない巡目。京太郎
    の鳴き以外に場に動きはないが、焦燥感と恐怖が胸を締め付ける。

     ――頼むっ!

     祈るように引いた12巡目の牌。
     それは京太郎が待ちわびた『聴牌への最後のピース』であった。しかも嬉しいことに辺張の方が埋ま
    り、両面での聴牌。
     京太郎は顔に出ないようにしながらも、喜びを隠せない。いつも最下位になって弄られている自分が、
    1位を目前にしているのである。意図せず、麻雀部の面々の驚く顔が頭に浮かんでくる。

     やにわに浮いた牌に手を伸ばす。

     ――よし、よしよしよし! もっと早く聴牌できると思ってたけど、でもまだ間に合うはず! 中張
    牌だけどまだ全然出てないし、和了る目はある!
     ふっふっふ。悔しがる優希の顔が目に浮かぶようだぜ。いっつもタコス買いに行かされてるし、今日
    くらいは俺がパシってやってもいい――

    19 = 1 :



    「――ごめんね、京ちゃん」


     唐突な咲の言葉に、逸っていた京太郎の心が一瞬で呼び戻される。背筋に、ゾクリとした悪寒が走っ
    た。

    「カン」

     手牌から3つの牌を晒し、咲が右端に寄せる。それはつい今しがた、京太郎が捨てた牌に他ならない。
     確信を持った堂々とした手つきで、咲が嶺上牌を掴む。ここまでくると、清澄高校麻雀部の人間であ
    れば嫌でも予見できる。

     やられた――!

    「ツモ。嶺上開花、役牌。2600点の責任払いです。これで私が再逆転して1位かな」

     大明槓からの嶺上開花は責任払い。この和了りで咲は28900点、京太郎は28100点となり、咲の逆
    転勝利である。

    「は、ハハっ……」

     京太郎の口から、思わず乾いた笑いが漏れた。それから脱力してずしりと背もたれに寄り掛かる。
     対面の咲は、イタズラが成功したような充足感のある顔で首を傾げた。

    「残念、でした?」
    「い、いや、残念ってか……」

     点数にだけ目を向ければ一歩及ばずといったところだが、京太郎は咲との大きな差を見せつけられた
    様に思った。先程まであんなに勝てそうだと気が逸っていたのに、終わってみると自分が捲られるのは
    必然の出来事であり最初から1位になれる可能性などなかったとさえ思えてしまう。
     嶺上開花で和了る時の咲は、そう感じさせる程の魅力のようなものを放っていた。


     とは言え、悔しいものは悔しい。

    「あ、あーもうなんだよー! 今日こそは勝てると思ってたのになぁ!」

     内に湧くモヤモヤとした感情を隠すように、京太郎は大袈裟な動きで天を仰ぐ。

    「えへへ、ごめんね京ちゃん。初勝利は次の機会におあずけってことで」
    「……はぁ。毎度のことだけど、つくづく恐ろしい奴……」

     人懐っこく笑う同級生にそれ以上言い立てる気も起きず、口を突いて出そうになる恨み言を飲み込ん
    で京太郎は溜息を一つだけ吐いた。

     確かに悔しいには悔しいが、普段から負け慣れているだけあって、京太郎は意外に飄々としている自
    分に気が付いた。1位にこそなれなかったものの、2位にはなることができた。それだけでも自分にと
    っては大金星だ、とむしろ良い方向に考えて自らを鼓舞する。

    「まぁあんなに接戦できたこと自体初めてだし、俺もちょっとは上手くなったってことかな」

     よしもう一半荘、と京太郎が気持ちを切り替えようとしたとき、

    20 = 1 :



    「――そんなことはないじょ!」


    と突然優希が捲し立てた。

    「京太郎は役と点数計算覚えただけで全然知識足りてないし、今回はたまたま高い手で和了れただけで、
    麻雀の腕はシロート同然だじぇ!」

     むっと、京太郎も顔をしかめる。

    「なんだよ優希。その言い方は酷いだろ?」
    「いーや、酷くないじょ! オーラスの手だって、私から鳴こうとしてるのが丸分かりだったし、自分
    の手作りに必死で全然のどちゃんと咲ちゃんのテンパイに気付けてなかったし」
    「う……。っていうか、和も聴牌(テンパ)ってたのか」

     話を静観していた少女は、目を向けられてコクンと頷く。

    「はい。平和ドラ2で、ツモか須賀君からのロンで逆転ですし、二人から出ても2位にはなれましたか
    ら、黙聴(ダマ)っていました。須賀君は流す気が無さそうでしたし、出てくるならそっちかな、とは思
    っていましたけど」
    「あっ! そうか、ノーテンでも1位で終われたのかぁ……。それに点数状況によってはみんなが1位
    を狙ってくる訳でもないんだよな。そこまで頭が回ってなかった……」

     自分が状況確認さえ出来ていなかったという事実に、情けないような、やるせないような気持ちを抱
    き京太郎は肩を落とした。折角運が味方をしてくれたのに、自分で勝利を逃したようなものである。そ
    れが、大負けした時よりも強く京太郎の心には堪えた。

     和はまだまだミスがあると示すように、麻雀卓に身を乗り出す。

    「頭が、と言うより、気持ちだけが空回りしていたようですね……。ちょっと手牌を見せてもらっても
    いいですか。――ほら、例えばここの牌を捨てずに持っていればここで両面になっていますし、ここで
    優希から鳴いて聴牌出来ていましたし……」

     己の未熟さを実感させられたところに、和からのありがたくて的確で辛辣な講釈を頂戴し、京太郎の
    背中はどんどん小さくなった。眼前で忙しなく動く和の細い指先を、京太郎はボンヤリとした目で眺め
    ている。

     ――じゃあ今の勝負、和なら1位になれたってことか?
     そりゃあそうだよな、俺なんかとは違ってしっかり状況も見れてるし、切る牌も的確だし。あんなチ
    ャンスを棒に振る俺が、てんで見てられない素人ってことなんだろうな。
     ……でも、なんでだろ? 放っておいてほしい、と思うのは……。

     徐々に京太郎の眉間に皺が寄ってくるが、顔を伏せている為周りの人間にそれを知る術はない。

    21 = 1 :

     思考が鬱屈とし始めた京太郎を見下ろし、4位に終わった少女が薄い胸を張り得意気に語り始めた。

    「ふふーん、これで分かったか京太郎! 貴様はまだまだ修行が足りないのだ!」
    「優希も、須賀君程ではないにせよ、お世辞にも足りているとは言えませんが……」
    「そこ、うるさいじょ!」

     デキる女教師の如く和を指差し静止させ、優希は項垂れる京太郎の頭をグリグリと弄る。

    「ほーらほーら、これに懲りたら負け犬は負け犬らしく、この私に勝とうなどとは夢にも思わないこと
    だな――」


     ――うるさいんだよっ!


     瞬間、体が動いていた。反射的に手を跳ね除け、卓を叩くように立ち上がった。

     手がジンジンと痛み、耳の中で自分の出した騒音が響いている。

     スッと頭の中の血が抜けた京太郎が見たのは、静まり返ってしまっている部室。全員が、絶句して京
    太郎を見ていた。

     ――やべぇ。つい頭に血が上っちまった、何やってんだ俺。みんな呆気に取られてるし、どうにかし
    ないと。

     京太郎は苦笑いで頭を掻き、軽口を言うように声のトーンを上げた。

    「アッハッハ、ごめんごめん。実は対局中からずっとトイレ我慢してて、結構厳しかったりなんだよね
    ー……」
    「な、なんだ。まったく、しょーがない犬だじょ、お前は!」
    「そうですよ。……それに、麻雀部は須賀君以外みんな女子なんですから、言動は配慮してもらわない
    と困りますっ」

     不安そうな目から一転、優希が勝気な瞳で京太郎を囃し立て、視線を逸らしながらもしっかりと和が
    女の子らしい繊細な指摘をしてくる。

     ――なんとか誤魔化せた、のか?

     苦しい言い訳ではあったが、この場が丸く収まるのであれば何も問題はない。

    「いやースマンっ! じゃあ行ってくるから。あ、染谷部長、俺に構わないでいいんで、次卓に入っち
    ゃってください」

     早口でそれだけ伝えて、京太郎は足早に部室を出た。背中からまこの声が追いかけてきたが、それに
    耳を貸すほどの余裕は今の京太郎にはなかった。

    22 = 1 :



     部室棟のシンとした廊下で、驚くほど大きな自分の鼓動の音だけが耳の中で響いた。

     ――全く、どうかしてるぜ。確かに優希の言い方はあんまりだったけど、アイツは見た目並に幼いと
    ころがあるし、第一いつも聞き流してるようなことであんなに腹立てるなんて……。
     それに、勝負に負けてあんなキレたような態度取ってちゃ、印象悪すぎだろ。俺が未熟なのは事実な
    んだから、もっと謙虚な気持ちでいないと。……あんな乱暴なことするなんて、最悪すぎだ!

     ガツッ、と拳を強く額にぶつけ、京太郎は長く溜息を吐いた。壁に背中を預け、人の気配のない廊下
    で独りごちる


     ――でも、なんだろうなこれ。

    「負け犬は負け犬らしく、か……」

     めちゃくちゃ悔しい。


     京太郎が部室へ戻るには、もう少し時間が掛かりそうだった。

    23 = 12 :

    イッチガキテター

    24 = 1 :

    ここまで。

    やっぱり、ヘルカイザーの話と被ってますかね…?
    まぁ、こういう話書きてー! ってなった作品の一つで、その欲求がこの話を作り始めた原点なんで、影響はめっちゃ受けてると思います。
    「パクリだ!」って騒がれる声が大きくなったら流石に止めますが、一応書きたい欲求がありますのでとりあえず許せる範囲までは見逃していただけると嬉しい…。


    と、聞きたいのはそこではなく。
    このシーンの麻雀ってどうでしょうか?
    どの程度麻雀描写しようかっていうので物凄く悩んでたんですよね…。

    京太郎の手牌。もしかすると対戦相手の手牌。みんなの捨て牌。
    そのあたりをこと細かく描写すると、非常に長くて野暮ったくて分かりにくいものになりそうで…。
    かと言ってあんまり手を抜きすぎると、このシーンみたく結果ありきで進んでる感が酷いんですよね…。
    1章の麻雀シーンはデモンストレーションみたいなものなのでよかったのですが、このまま続けるのも不安なので、
    意見を聞かせていただけないでしょうか。

    25 :


    あーこれは 腹パンきますね……

    26 :


    タコスにシャビさん的なものを感じる

    27 :

    ここって安価とるの?

    28 :

    乙です
    麻雀描写はそれでいいと思います

    29 :


    麻雀描写は今回ぐらいか、たまに要所で手牌描写を挟むかぐらいで良いんじゃないかな

    30 = 12 :

    京太郎主観で進めるならこのままで十分分かりやすいよ

    31 :


    このスレの京太郎は、ヘルカイザーのよりも、清澄部員への愛憎混じりの感情が前面に出ていて、
    読んでて胃が痛くなりそうだがそれそれはそれで楽しみだ。

    闘牌は別に問題ないよ。
    この描写のおかげで、京太郎の実力不足がどの程度のものなのか読み取れるし、
    優希にけなされるのも、そのことで京太郎が自尊心を叩き壊されて激昂してしまうのも、不自然でない展開だなと思わせられる。

    淡々と初巡から和了までの手を羅列し、どの手で誰が何を感じてどうしたのか、っていう場面展開の説明づけが見えにくいのでも
    ない限りは、闘牌は不要な描写だとは思われないだろうし、逆にそれが無いと内容が薄くなってしまうと思う。


    あとは、悩みすぎないで書いていってほしいな。

    32 :

    書き手じゃなくて良かった…

    33 :

    いいゾ~これ

    34 :

    >>27 安価は今のところするつもりないです。もう大まかな流れは出来てるのでそれに沿って書いていくだけですね。
     ただ誤字脱字、単純なミスなどは指摘していただければその都度訂正します。

    麻雀の描写は、特に問題無いという意見が多いですね。
    では、何が壁になってるとか何が筋だとか、点数差とか、そういう読みの描写が必要な時だけ書くことにします。
    今の所は、三人称だけど全部京太郎側についた描写って感じで書いてますが、シーンに応じて誰の側について描写するかは変わると思います。
    あんまり移動させまくると分かりにくいので自重しますが、まぁちょっとくらいは。

    大変参考になりました。どうもありがとうございました!
    今日で書き溜め大分減っちゃったから、次の投下は時間空くと思います。遅筆でごめんなさい。

    35 :

    こういうのは大好きだぞ。
    京太郎がどうなっていくのか楽しみだ。
    勝手だけど、頼むから途中で放置とかはせんでくれ。

    36 :

    まあ普通こうなるよなあ

    37 :

    乙ーまた一つ期待の新スレが増えたか・・・

    38 :

    安価は長くなるうえに荒れやすいからできれば無しでオナシャス

    39 :

    優希と和が異常なまでにうざく感じるから、強くなった京太郎に叩きのめしてほしい

    40 :

    麻雀って楽しいよね・・・

    41 :

    中の人直々に「そりゃお前は楽しいよな!」って言われちゃった咲ちゃんの悪口はそこまでだ!

    42 :

    >>40
    スレタイのセリフって多分咲が決勝で言った時に思ったセリフだろうな・・・

    そりゃカンすれば必ずゆうこ有効牌引けるなら楽しいわ

    43 :

    >>39
    タコスはともかく、和は手牌から反省点を教えてくれてるじゃん(内容は置いといて)
    京太郎がちょっと落ち込んでたから捉え方がアレになっちゃっただけで、対局後の反省・復習は上達に不可欠だろ
    叩きのめすとか、すぐにそういう方向持っていこうとするのは止めて欲しい(スレタイ的には仕方ないかもしれないけど)

    っつーか東場で残り5000点から南3局時点で一時的とはいえトップになるとか、点配分にもよるけど十分凄いと思う

    44 :

    見直ししてたら気付いたんですが、 >>22 の

    > ガツッ、と拳を強く額にぶつけ、京太郎は長く溜息を吐いた。壁に背中を預け、人の気配のない廊下
    >で独りごちる

    のところ句点抜けてますね…。大した間違いじゃないけど、完璧にして投下したと思ってただけにショック。

    >>43
    すみません、それはこちらの描写不足です。
    最初のシーンと、京太郎がキレるシーンは、別の半荘になってます。
    それを表す描写が『数時間後』しかないので勘違いされてもしょうがないですね…。今後はもうちょっと丁寧に描写します。


    あー、やっぱり優希と和ウザ過ぎますかね?
    ここまで見ただけでも、咲アゲと優希和サゲが著しい展開ですし、今後の展開でもそういう流れがありますので
    優希ファンと和ファンの皆様には不快な思いをさせるかもしれません。ごめんなさい。あとまこファンの方も、口調が自信なくて微妙にハブってる感じになってごめんなさい。


    いや、優希も和も悪い子じゃないんですよっていうか僕がそう書いているだけです。
    例えば優希が京太郎にあれ程ひどいことを言ったのは、親被りでラス目引かされて悔しかったからってのがありますし、
    京太郎を弄るのがいつもの流れですから、ちょっと行き過ぎて踏みとどまるべきところを越えちゃったってだけで。
    小さい頃なら誰でもそんな経験はあると思いますし、優希は異性との距離感が上手くつかめてない程精神的に成長段階ですので、そうなってもしょうがないかなーと。
    和の方は、逆に意識し過ぎてどこまで近づいていいものか測りかねてて、普段から京太郎に話しかけるという行為を躊躇して
    しまうので、このようにミスを指摘するという名目で体よく話し掛けられるときに張り切り過ぎてしまう、とか。
    まぁ読者の皆様が恐らく考えているように、「京太郎夏まで何やってたんだよ! 部内で打てなくてもネトマとかあるだろ!」って
    思って弱気な発言に辛辣な言葉で返す面もあるかも。あとマホに対する態度を見ると、結構教え子には厳しいのかなーと思ったり。
    本来みんなを見ていないといけないまこも、あれ程頼りになった前部長が抜けた穴を埋めないといけないという重責で余裕がなくなっている、んじゃないかと。高校生ですし。
    京太郎に感情移入してほしい作者の身としては、優希と和の態度にこんなフォローを入れると話がブレてしまってあんまり良くなさそうだと思い悪役のままで描写してますので、
    こんなふうに登場人物の心情を作品の外で語るのは御法度というか、逃げのようなものだとは思うのですが、あんまりな描写で読んでくれている方々を不快にさせる前に、ここでフォローさせていただきます。
    要は、上手くキャラクターのすれ違いを表現できない僕の実力不足です。まぁ上手くできそうにないから一方だけの視点にして逃げたってのもありますし。

    長文とかちょっとどころではなくイタイ感じですが、このSSを不快に思う方が減ってくれれば幸いです。友達にこのSSを見つけられてしまった以上にイタイことなどあるものか。
    次の投下で1章の一つの区切りが終わりかな。二つ目の区切りの書き溜めが終わった頃に投下します。

    45 :

    お、おう…

    46 :

    お、おう…

    48 = 41 :

    さすがになげぇ!?
    そういう時は説明より優希と和のさっきはいいすぎたかな…?みたいな話があるといいよ

    49 :

    好きに書いてええんやで?

    50 = 43 :

    別にそこまではディスりは感じてないなぁ
    何となく察せるし、気にする程じゃないと思う


    1 2 3 4 5 6 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 京太郎 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について