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    元スレ承太郎「怪異だと?」

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    タグ : - ジョジョ + - 化物語 + - 承太郎 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    101 :

    乙!
    しかし人間の女に隙を付かれるようなヤツならエジプトに辿りつく前に死んでるような......

    102 :

    確かに隙が多いな
    とてもエジプト帰りだとは思えん。

    103 :

    字面だけ見たらエジプト帰りがなんぼものんじゃい!ってなるけどなwwww帰国子女とでも?wwww
    実際は死亡者が何人も出てる上に、生涯の友と呼べる人を二人と一匹失ってるというヘビーさ
    暗くしろってことじゃないけど軽すぎるかなー?って感じるな

    あと地の文に違和感
    だが期待

    104 :

    承太郎なら口の中にカッター突っ込まれる前に腕掴んでるだろうな

    105 :

    そういや西尾ってジョジョのノベライズ書いてたよな?

    106 :

    その話は荒れそうだからやめよう

    107 = 105 :

    >>106
    何故?

    108 = 103 :

    そういう発言が出るあたりをお察し下さい

    110 :

    その話は荒れそうだからやめよう(二回目)

    111 :

    俺はあれそんなに酷くないと思ったんだがなー
    それはともかく乙

    113 :

    饒舌な承太郎に違和感

    114 :

    更新期待してあげあげ
    ネタかぶったから、頑張って欲しい

    115 :

    >>114
    スティールさんの言葉を思い出すんだ
    ネタ被りなんて気にせずスレタテダ
    そも、ジョジョとのクロスはほぼ無いんだからきみが開拓するんだ。期待してる

    116 :

    更新まだかなと期待してあげあげ

    117 :

    なんか無理やり原作をなぞってて承太郎に違和感を覚えるが期待

    118 = 117 :

    承太郎に違和感を覚えるが期待

    119 :

    この違和感は新手のスタンド使いの仕業

    120 :

    やるなら承太郎じゃなく仗助の方がしっくりくるな

    121 :

    ここ最近忙しくて更新できませんでした、すいません。
    投下します

    122 = 121 :

    忍野「『おもし蟹』」

    戦場ヶ原が事情を語り終わったところで、忍野は、「成程ねえ」と頷いた後、しばらく天井を見上げてから、ふと思いついたような響きで、そう言った。

    戦場ヶ原「おもしかに?」

    戦場ヶ原が訊き返した。

    忍野「九州の山間あたりでの民間伝承だよ。地域によっておもし蟹だったり、重いし蟹、重石蟹、それに、おもいし神ってのもある。
    この場合、蟹と神がかかっているわけだ。細部は色々ばらついているけど、共通しているのは、人から重みを失わせる──ってところだね。
    行き遭ってしまうと──下手な行き遭い方をしてしまうと、その人間は、存在感が希薄になるそうだ、とも。存在感どころか、存在が消えてしまうって、物騒な例もあるけれどね」

    承太郎「…蟹、か……だが、なぜ九州のやつがこんなところにいやがる」

    忍野「日本の片田舎で吸血鬼に襲われたきみがそれを僕に訊くなよ。場所そのものに意味があるんじゃないからね、別に。そういう状況があれば──そこに生じる、それだけだ」

    勿論、地理気候も重要だけれど、と付け加える忍野。

    忍野「この場合、別に蟹じゃなくてもいい。兎だって話もあるし、それに──忍ちゃんじゃないけれど、美しい女の人だっていう話もある」

    承太郎「ほお……月の模様みてーだな」

    忍野「まあ、お嬢ちゃんが行き遭ったのが蟹だっていうんなら、今回は蟹なんだろう。一般的だしね」

    戦場ヶ原「名前なんてのは何だって構いませんけれど……それも、空条くんが言っていた、『スタンド』なんですか」

    忍野「違うよ。おもし蟹は『怪異』だ」

    承太郎「……『怪異』と『スタンド』はどう違うんだ?」

    忍野「『怪異』は『スタンド』も含めての呼び名だよ。『怪異』ってのは、怪しくて異なるものの総称だからね。ちなみに『おもし蟹』は神様で『スタンド』は…守護霊に分類されるかな。」

    承太郎「…成る程」

    123 = 121 :

    忍野「ま、お嬢ちゃんは、運の悪い中じゃあ運のいい部類だよ。そこの承太郎くんなんて、行き遭うどころか襲われたんだから。それに較べればお嬢ちゃんは全然マシだ」

    戦場ヶ原「どうしてですか」

    忍野「神様なんてのは、どこにでもいるからさ。どこにでもいるし、どこにもいない。お嬢ちゃんがそうなる前からお嬢ちゃんの周りにはそれはあったし──あるいはなかったとも言える」

    忍野は言う。

    忍野「勘違いするなよ、お嬢ちゃん。きみは何かの所為でそうなったわけじゃない──ちょっと視点が変わっただけだ」

    戦場ヶ原「視点が?何が──言いたいんですか?」

    忍野「被害者面が気に食わねえっつってんだよ、お嬢ちゃん」

    唐突に、辛辣な言葉を、忍野は放った。
    戦場ヶ原の反応が気になったが──しかし、戦場ヶ原は、何も、返さなかった。
    甘んじて受けたようにも思えた。
    そんな戦場ヶ原を、忍野は、
    「へえ」
    と、感心したように見た。

    忍野「なかなかどうして。てっきり、ただの我儘ぬかすアマちゃんかと思ったけど」

    戦場ヶ原「どうして──そう思ったんですか」

    忍野「おもし蟹に遭うような人間は大抵そうだからだよ。遭おうと思って遭えるもんじゃないし、通常、障るような神でもない。吸血鬼とは違う」

    障らない…

    忍野「憑くのとも違う。ただ、そこにいるだけだ。お嬢ちゃんが何かを望まない限り──実現はしないんだ。
    いや、もっとも、そこまで事情に深入りするつもりはないけれどね。僕はお嬢ちゃんを助けたいわけじゃないんだから」

    勝手に助かるだけ──。
    こいつはいつも、そう言うな。

    124 = 121 :

    忍野「いいよ。わかった。体重を取り戻したいというのなら、力になるさ。承太郎くんの紹介だしね」

    戦場ヶ原「……助けて──くれるんですか」

    忍野「助けない。力は貸すけど」

    そうだね、と左手首の腕時計を確認する忍野。

    忍野「まだ日も出ているし、一旦家に帰りなさい。それで、身体を冷水で清めて、清潔な服に着替えてきてくれる?こっちはこっちで準備しておくからさ。お嬢ちゃん、夜中に家、出てこられる?」

    戦場ヶ原「平気です。それくらい」

    忍野「じゃ、夜中の零時ごろ、もういっぺんここに集合ってことで、いいかな」

    戦場ヶ原「いいですけれど──清潔な服って?」

    忍野「新品じゃなくてもいいけど。制服ってのは、ちょっとまずいね。毎日着ているものだろう」

    戦場ヶ原「……お礼は?」

    忍野「は?」

    戦場ヶ原「とぼけないでください。ボランティアで助けてくれるというわけではないんでしょう?」

    忍野「ん。ま、その方がお嬢ちゃんの気が楽だっていうなら、貰っておくことにしようか。じゃ、そうだね、十万円で」

    俺のときとは随分対応が違うじゃねえか……。

    戦場ヶ原「十万円──ですか」

    忍野「払える?」

    忍野は戦場ヶ原に問う。
    戦場ヶ原は、
    「勿論」
    と、言った。
    戦場ヶ原「どんなことをしてでも、勿論」

    125 = 121 :

    そして──
    そして、三十分後──今現在だ。
    戦場ヶ原の家。
    もう一度──見回す。
    衣装箪笥と卓袱台、小さな本棚の他には何もねえ。
    まるで昔の苦学生だな。
    忍野は戦場ヶ原のことを、俺よりは全然マシだとか言っていたが、それはどうなんだろうな。
    命の危険とか、周囲に及ぼす迷惑って意味じゃあ、確かに、春休みに吸血鬼に襲われた俺や、ゴールデンウィークに猫に魅せられた羽川の方が悲惨だったと、言えるのだが……。
    まあ、俺にわかる話じゃねえ。

    戦場ヶ原「シャワー、済ませたわよ」

    戦場ヶ原が脱衣所から出てきた。

    承太郎「……おいてめえ…………なぜ服を着てねえ……」

    戦場ヶ原「持って入るのを忘れていかのよ。そこをどいて頂戴。服が取り出せないわ」

    承太郎「……部屋の外にいる……終わったら呼んでくれ」

    戦場ヶ原「あら、心配しなくても羽川さんには内緒にしておいてあげるのに」

    承太郎「……羽川?」

    戦場ヶ原「彼女、空条くんの片恋相手じゃないの?」

    承太郎「違う…」

    戦場ヶ原「そんなんだ。よく話しているから、てっきりそうなんだと思ったのだけれど」

    ……一応クラスの中のことも見ているのか。

    承太郎「…よく話しているのは、あいつが勝手に話しかけてきているだけだ」

    戦場ヶ原「身の程知らずな口振りね。羽川さんの方が、あなたに片恋だとでも言いたいの?」

    承太郎「違う……単に面倒見がいいだけだ…」

    戦場ヶ原「羽川さんも──忍野さんの、お世話になったのね?」

    承太郎「ああ……」

    戦場ヶ原「ふうん、そう。でもね、空条くん。悪いけれど、私はまだ、忍野さんのことを、半分も信頼できてはいないのよ。
    彼のことをおいそれと信じるには、私は今まで、何度も何度も、騙され続けているわ」

    承太郎「…………」

    そうだな……確かにあの野郎は人から紹介されたところで、易々と信じられねえだろう。
    戦場ヶ原みてえな経験をしていれば、尚更だ。

    126 = 121 :

    戦場ヶ原「ねえ、空条くん。一つ訊いていい?どうでもいいことなのだけれど」

    承太郎「……何だ…?」

    戦場ヶ原「月の模様みたいって、どういうこと?」

    承太郎「?…………ああ…あれだ…蟹のことだ。兎だったり美人だったりする……と、忍野のやつ、言っていただろう。
    …月の模様は兎だったり、蟹だったり、美人の横顔だったりすると言うらしいからな」

    戦場ヶ原「そうなんだ。そんなくだらないことをよく知っているわね」

    承太郎「……前に、ある占い師に、教えてもらったもんでな………」

    戦場ヶ原「そう…………終わったわよ」

    承太郎「そうか」

    戦場ヶ原「もしも全てがうまく行ったら、北海道へ蟹を食べに行きましょう」

    承太郎「……好きにすりゃあいい」

    戦場ヶ原「あなたも行くのよ」

    承太郎「なぜだ?」

    戦場ヶ原「あら、知らなかったの?」

    戦場ヶ原は微笑した。

    戦場ヶ原「蟹って、とっても、おいしいのよ」

    承太郎「…………」

    ……それとこれと、どういう関係があるのか、俺には分からなかった。

    127 = 121 :

    夜中の零時、少し過ぎたところで。
    俺と戦場ヶ原は、例の学習塾跡に、バイクで、戻ってきた。後部座席用の座布団には、戦場ヶ原の家にあったものを使用した。
    バイクを夕方と同じ場所に停め、同じ金網の裂け目から敷地に入ったら、入り口のところで、忍野はもう待っていた。
    ずっとそこにいたという風に。

    戦場ヶ原「……え」

    その忍野の服装に、戦場ヶ原が驚く。
    忍野は、白ずくめの装束──浄衣に身を包んでいた。ぼさぼさだった髪もぴったりと整えられて、夕方とは見違えてしまうような、少なくとも見た目だけは小綺麗な格好になっていた。

    戦場ヶ原「忍野さんって──神職の方だったんですか?」

    忍野「いや?違うよ?大学の学科はそうなんだけれど、神社に就職はしていない。色々思うところがあってね。何、この服装は、単純に身なりを整えただけだよ。
    神様に遭うんだから、僕だって、きっちりしておかないとね。雰囲気作りだよ」

    戦場ヶ原「は、はあ……」

    承太郎「…………?」

    ……若干過剰反応じゃあないか?確かに、面食らう格好だが……

    忍野「じゃ、さっさと済ませてしまおう。三階に、場を用意しているから」

    言って、忍野はビルの中の暗闇に消えていく。
    夕方のように、戦場ヶ原の手を引いて、忍野を追った。

    戦場ヶ原「ねえ」

    意を決したような口調で、戦場ヶ原が言った。

    戦場ヶ原「あの蟹は──今も私のそばにいますか?」

    忍野「そう。そこにいるし、どこにでもいる。ただし、ここに降りてきてもらうためには──手順が必要だけどね」

    128 = 121 :

    三階に到着した。
    教室の中の、一つに入る。
    入ると、確かにそれらしい場が、出来ていた。

    忍野「ま、結界みたいなものだよ。よく言うところの神域って奴ね。そんな気張るようなもんじゃない。お嬢ちゃん。そんな緊張しなくたっていいよ」

    戦場ヶ原「緊張なんて──していないわ」

    忍野「そうかい。そりゃ重畳だ」

    言いながら、教室に入る。

    忍野「二人とも、目を伏せて、頭を低くしてくれる?」

    承太郎「何?」

    忍野「神前だよ。ここはもう」

    そして──三人、神床の前に、並ぶ。

    承太郎「なあ──忍野」

    忍野「なんだい?承太郎くん」

    承太郎「俺がいる意味はあるのか?」

    忍野「一応、いざってこともあるからね。多分大丈夫だけれど、いざってこともあるにはあるさ。そのときは、承太郎くん、きみがお嬢ちゃんの壁になってあげるんだよ」

    承太郎「……何だと?」

    忍野「その不死身の身体と無敵のスタープラチナは何のためにあるんだ?」

    承太郎「…………」

    戦場ヶ原「空条くん」

    戦場ヶ原がすかさず言った。

    戦場ヶ原「わたしのこと、きっと、守ってね」

    承太郎「…ああ……」

    129 = 121 :

    忍野は供物の内から酒を手にとって、それを戦場ヶ原に手渡した。

    戦場ヶ原「え……何ですか?」

    戸惑った風の戦場ヶ原。

    忍野「お酒を飲むと、神様との距離を縮めることができる──そうだよ。ま、ちょっと気を楽にしてってくらいの意味で」

    戦場ヶ原「……未成年です」

    忍野「酔うほどの量は飲まなくていいさ。ちっとだけ」

    戦場ヶ原「…………」

    逡巡した後で、結局、戦場ヶ原はそれを一口、飲み下した。それを見取って、戦場ヶ原から返還された杯を、元あった場所に、忍野が返す。


    忍野「さて。じゃあ、まずは落ち着こうか」

    正面を向いたまま──
    戦場ヶ原に背を向けたままで、忍野は言う。

    忍野「落ち着くことから、始めよう。大切なのは、状況だ。場さえ作り出せば、作法は問題じゃあない──最終的にはお嬢ちゃんの気の持ちよう一つなんだから。
    リラックスして。警戒心を、解くところから始めよう。ここは自分の場所だ。きみがいて、当たり前の場所。頭を下げたまま目を閉じて──数を数えよう。一つ、二つ、三つ────落ち着いた?」

    戦場ヶ原「──はい」

    130 = 121 :

    忍野「そう──じゃあ、質問に答えてみよう。きみは、僕の質問に、答えることにした。お嬢ちゃん、きみの名前は?」

    戦場ヶ原「戦場ヶ原ひたぎ」

    忍野「通っている学校は?」

    戦場ヶ原「私立直江津高校」

    忍野「誕生日は?」

    戦場ヶ原「七月七日」

    質問と、回答が、続く。
    そして、何度目かの質問。

    忍野「今までの人生で」

    忍野は変わらぬ口調で言った。

    忍野「一番、辛かった思い出は?」

    戦場ヶ原「……………………」

    戦場ヶ原は──ここで、答えに詰まった。

    忍野「どうしたの?一番──辛かった、思い出。記憶について、訊いているんだ」

    131 = 121 :

    戦場ヶ原「……お」

    沈黙を守ることのできる──雰囲気ではなかった。

    戦場ヶ原「お母さんが──」

    忍野「お母さんが」

    戦場ヶ原「悪い、宗教に嵌まったこと」

    言っていたな…。悪い宗教に嵌まった、と。
    だが──それは。
    それは…。

    忍野「それだけかい?」

    戦場ヶ原「……それだけって」

    忍野「それだけじゃ、大したことではない。信仰の自由は認められている。」

    戦場ヶ原「…………」

    忍野「だから──それだけじゃない。言って御覧。何があった。お母さんが悪徳宗教に騙されて──そのあと」

    戦場ヶ原は、下唇を強く噛む。

    戦場ヶ原「う──うちに、その宗教団体の、幹部の人が、お母さんに連れられて、やってきて」

    忍野「幹部の人がやってきて、どうした?」

    戦場ヶ原「じょ──浄化、だと言って。儀式だといって──私──を」

    戦場ヶ原は、苦痛の入り混じった声で言った。

    戦場ヶ原「わ──私に、乱暴を」

    忍野「それは、暴力的な意味で?それとも──性的な意味で?」

    戦場ヶ原「性的な──意味で。そう、あの男は、私を──」

    …色んなものに耐えるように、戦場ヶ原は続ける。

    戦場ヶ原「私を──犯そうとしたわ」

    132 = 121 :

    忍野「……そうかい」

    ……成る程な
    いくつかの事に、説明がついた気がするぜ。

    戦場ヶ原「近くにあったスパイクで、殴ってやったわ」

    忍野「……勇敢だね」

    戦場ヶ原「でも──お母さんは私を助けてくれなかった」

    ずっと、そばで見てたのに。
    戦場ヶ原は──淡々と。
    淡々と、答える。

    戦場ヶ原「どころか──私をなじったわ。そして、私が、その幹部に、怪我をさせたせいで──お母さんは」

    忍野「お母さんは、『ペナルティ』を負った?」

    戦場ヶ原「はい」

    忍野「娘が幹部を傷つけたんだから──当然だね」

    戦場ヶ原「はい。だから──私の家族は、壊れたわ。完全に壊れて──完全に壊れたのに、それなのに、まだ、その崩壊は、続いている。続いています」

    133 = 121 :

    忍野「お母さんは、今、どうしてる?」

    戦場ヶ原「知らない」

    忍野「知らないということはないだろう」

    戦場ヶ原「多分、まだ──信仰を続けているわ。懲りもせず──恥ずかしげもなく」

    忍野「それも、辛いかい?」

    戦場ヶ原「辛い──です」

    忍野「どうして、辛い?もう関係ない人じゃないか」

    戦場ヶ原「考えてしまうんです。もしも私があのとき──抵抗しなかったら、少なくとも──こんなことには、ならなかったんじゃないかって」

    壊れなかったんじゃないかって。
    壊れなかったんじゃないかって。

    忍野「そう思う?」

    戦場ヶ原「思う──思います」

    忍野「本当に、そう思う?」

    戦場ヶ原「……思います」

    忍野「だったらそれは──お嬢ちゃん。きみの思いだ」

    忍野は言った。

    忍野「どんな重かろうと、それはきみが背負わなくてはならないものだ。他人任せにしちゃあ──いけないね」

    戦場ヶ原「他人任せに──し」

    忍野「目を開けて、見てみよう」

    そして──
    忍野は目を開けた。
    戦場ヶ原も、そっと──目を開けた。
    そして──そこに、今まで何もなかった場所に、『蟹』がいた。

    134 = 121 :

    戦場ヶ原「あ、ああああああッ!」

    戦場ヶ原が──大声を上げた。
    かろうじて、頭は下げたままだが──その表情は、驚愕に満ち満ちていた。身体が震え──一気に汗が噴き出している。
    取り乱していやがる。
    あの──戦場ヶ原が。

    忍野「何か──見えるかい?」

    忍野が問う。

    戦場ヶ原「み──見えます。あのときと同じ──あのときと同じ、大きな蟹が、蟹が──見える」

    忍野「そうかい。僕には全く見えないがね」

    忍野は振り返り、俺を見る。

    忍野「承太郎くんには、何か見えるかい?」

    承太郎「……ああ、見えるぜ。馬鹿デカい蟹がな」

    忍野「………………」

    …何だその顔は。

    戦場ヶ原に向き直る忍野。

    忍野「本当は蟹なんて見えて、いないんじゃない?」

    この野郎……。

    戦場ヶ原「い、いえ──はっきりと。見えます。私にも」

    忍野「……そう。だったら言うべきことが、あるんじゃないか?」

    戦場ヶ原「言うべき──こと」

    そのとき。
    戦場ヶ原は──顔をあげてしまった

    135 = 121 :

    「オラアッ!」

    戦場ヶ原が顔をあげた瞬間飛んできた蟹を、スタープラチナで、殴る。
    蟹は吹っ飛び──派手な音を立てて壁にぶち当たり、落ちる。

    承太郎「やれやれ…素早い野郎だ。とりあえず当てるのがせいいっぱいだった」

    しかし、蟹は落ちるとき逆さまになってしまっていた。
    いくら素早くても、蟹ってぇのは逆さになってしまえば無力そのものだな…。
    逆さになってもがいているうちに、近づいて、スタープラチナで押さえつける。

    承太郎「忍野、どうすりゃいい」

    忍野「そうだねえ……そのまま、潰しちゃってくれ。それでも一応、お嬢ちゃんの悩みは、形の上では解決するからさ。形の上ってだけで、根っこのところは残っちゃう姑息療法で、僕としては気の進むやり方じゃないけれど…、言葉が通じないなら戦争しかない」

    承太郎「……分かったぜ…『スタープラチナ』…!」

    戦場ヶ原「ま──」

    「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアッー!」

    『スタープラチナ』で、殴る、殴る、殴る。
    しかし蟹は──『おもし蟹』は、全身に亀裂がはしったものの、潰れきらなかった。

    承太郎「ン…こいつ。これだけ殴ったのにけっこう丈夫なやつだな…」

    もう一度、殴ろうとして──

    136 = 121 :

    戦場ヶ原「待って」

    戦場ヶ原が、俺を止めた。

    戦場ヶ原「待って──空条くん。さっきは──驚いただけだから」

    戦場ヶ原は言った。

    戦場ヶ原「ちゃんと、できるから。自分で、できるから」

    承太郎「…………」

    戦場ヶ原は俺の足下の蟹に対して、姿勢を正して、手をついて、ゆっくりと──頭を下げた。
    土下座の──形だった。

    戦場ヶ原「──ごめんなさい」

    まずは、謝罪の言葉。

    戦場ヶ原「それから──ありがとうございました」

    そこに、感謝の言葉が続いた。

    戦場ヶ原「でも──もういいんです。それは──私の気持ちで、私の思いで──私の記憶ですから、私が、背負います。失くしちゃ、いけないものでした」

    そして最後に──

    戦場ヶ原「お願いです。お願いします。どうか、私に、私の重みを、返してください」

    最後に、祈りのような、懇願の言葉。




    戦場ヶ原「どうかお母さんを──私に、返してください」




    137 = 121 :

    蟹は、既に抵抗しなくなっていた。
    起こし、手を離す。
    自由になった途端に戦場ヶ原へと向かって行き、まるで同化でもするかのように──消えた。

    戦場ヶ原は、全てが終わったことを理解しても、姿勢を崩すことなく、そのままわんわんと声を上げて泣きじゃくり始めてしまった。

    だが忍野は──

    忍野「……うん?」

    と、何故か、不思議そうに、首を傾げていた──

    138 = 121 :

    ここまでです
    承太郎に違和感を感じてしまうのは私が未熟なせいです。すいません

    仗助のほうが良いという方、私も少し迷ったのですが吸血鬼も出るので承太郎にしました。ご了承ください

    139 :


    気にすんな俺は楽しんでる

    141 :

    乙乙。
    強いて言うなら、阿良々木さんが承太郎に代わる必然性を示すことが出来ればいいんじゃないかな?
    違和感があろうが、「この話は阿良々木さんじゃ成り立たないな」と思えたらそれはそれで良作だし

    142 :

    俺の心配は、ホリィさんと月火と火憐だけだぜ!

    143 :

    蟹の硬さに
    > 承太郎「ン…こいつ。これだけ殴ったのにけっこう丈夫なやつだな…」
    とこぼすのは凄く承太郎っぽかった

    違和感っていうのはこればっかりはしょうがないことだからあまり重く考えないでね
    承太郎ならこうする、あるいはこう言うだろうな…っていう考え方もいいかもね。ツェペリさんも言ってたし

    とにかく乙です

    144 :

    ここからガハラさんがスタンド習得ですねわかります

    145 :

    ラブ・デラックスなんてどうだ

    146 :

    エコーズACT3が最初に思い浮かんだ
    逆だった

    でも対象の体重を軽くする能力って強そうだな

    147 :

    お互いのパンチの威力が下がりそうだな

    148 :

    重力操るスタンドいたじゃん

    150 :

    オリジナルスタンドも、クロスキャラがスタンド使えるようになるのも個人的には嫌だな
    せっかくのクロスがいつものジョジョになってしまうし、既存スタンドもオリジナルスタンドも采配が非常に難しいとも思う

    まあ、結局は >>1!君の意見を聞こうッ! ってことで1つ


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