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    元スレP「765プロに潜入、ですか?」

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    251 :

    ゆきぽは穴掘りかわいい

    252 :

    あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

    『おれは堅物のイケメンPを書いていたと思ったらいつのまにか天然ジゴロPになっていた』

    な…何を書いてるのかわからねーと思うが
    おれも何を書いたのかわからなかった…
    頭がどうにかなりそうだった…

    ツンデレだとかコミュ障だとか
    そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
    もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…(AA略



    本当はもうちょっと慰安旅行(夜)が続くんですが、ここまででかなり長くなっちゃったので一度区切りました。
    どうも冗長になりすぎるのが悪い癖のようです。
    まあ、今回は誕生日祝いということで亜美真美の出番を当社比三割増しにしたせいでもあるのですが…。

    しかしストーリーが動くとか言っておきながら、肝心の本筋は最初の2レスで終わってしまったでござるの巻。

    今宵も長々付き合っていただきありがとうございました。
    支援、感想、批判、突っ込みetc…反応してもらえるのが何よりの幸せです。



    それでは。

    253 :

    。支援くらいいくらでもしてやる

    254 :

    こういうところで批判しても無粋だし周りから叩かれるだけのような気がする

    まあ面白かったので乙

    256 :

    冗長?
    大いに結構
    むしろもっとやれ
    今日も安定して面白かった乙

    257 :

    乙でした
    中心人物の4人ってのは伏線なのかな?文脈的に律子は入ってないっぽいし
    続き楽しみにしてますね

    258 :

    乙乙

    259 :

    今回も面白かったです
    無理をしない程度で完結まで書き続けてください!
    乙でした

    261 :

    ドーン!

    美希「キラキラなの~」

    貴音「花火の音は耳だけでなく心にも響きますね」

    雪歩「あぁ…消えちゃった」ポトッ

    春香「線香花火って何だかちょっと切ないよね」

    やよい「ごうほうはなふきゆき…?」

    伊織「"号砲花吹雪"よ」

    あずさ「何だかとっても凄そうな名前ね~」

    P「全く…」

    食べるだけ食べたと思ったら今度は花火大会が始まった。
    若い奴らは切り替えが早いと言うか何と言うか。

    まあ、旅行を満喫しているようで何よりではあるが。

    小鳥「~♪」

    P「随分とご機嫌ですね」

    小鳥「ええ、今日は色々素敵なものを見させていただきましたから」

    P「そうですか。俺は酒でも飲んで色々忘れたい気分ですけどね」

    小鳥「!良かったら今夜一緒に…」

    プルルルルルル

    P「失礼、電話です」

    小鳥「…ぴよ」

    262 :

    P「(…高木社長か)…はい、Pです」

    高木『おお、P君。そっちの様子はどうかね?』

    P「お疲れ様です。お蔭様でアイドル達は楽しんでいるようですよ」

    高木『そうかそうか、それは何よりだ。どうだ、君も少しは羽を伸ばせたかね?』

    P「…ええまあ、それなりには」

    結局仕事の延長線上だった気はするが…野暮なことは言うまい。
    気分転換という意味では多少は効果があった気がするしな。

    高木『うむ。それにしても折角の機会だから私も行きたかったんだがねぇ。こう見えて昔は海の…』

    P「それで高木社長、このタイミングでお電話を頂けたということは例の話はうまく進んだということですね」

    高木『ああ、そうだったそうだった。大事な話を忘れるところだった』

    全く、相変わらず間の抜けた人だ。
    一応ちゃんと仕事をこなす辺り、単なる御恍け社長というわけではないようだが。

    高木『ゴホン、君達のプロジェクトの要となる『アミューズメントミュージック』と『THE DEBUT』への出演が正式に決定した』

    P「…ありがとうございます。これでようやく、ですね」

    高木『うむ、君達には期待しているよ。それじゃあ律子君にも伝えておいてくれたまえ』

    263 :

    P「…というわけだ」

    何故か項垂れている音無さんを放置しつつ、律子に高木社長の話を伝える。

    律子「そうですか…ついに動き始めるんですね」

    P「ああ。良くも悪くもこのプロジェクトで765プロの今後が決まることになる」

    律子「…私に務まるでしょうか?」

    P「それは俺が判断することじゃない。結果は最後に付いてくるものだからな」

    律子「…ですね」

    …まあ、個人的な意見を言わせてもらえば、俺は律子なら十分やり通せると思っている。
    こいつのプロデューサーとしての素質は今までの仕事振りから既に把握しているしな。

    どちらかと言えば、"やってもらわねば困る"という方が正しいのかもしれないが。

    P「正式な発表は帰ってからになるだろうが、必要ならメンバーには前もって伝えておいてもいい。その辺の判断はお前の好きにしろ」

    とは言え、律子が担当する三人の内の一人にはあまり安易に伝えてはならない気もするが。
    喜ばせるのはいいが、また無駄にテンションを上げられても困るからな。

    律子「私は帰ってからにしておきます。プロデューサーはどうされますか?」

    P「そうだな…」

    俺が担当する"あいつ"なら…。
    前もって伝えるのも悪くないかもしれない。

    264 = 34 :

    花火を終えた後、俺達は今夜泊まる宿へと向かった。
    "あづま宿"…貴音の言葉を借りれば"奥ゆかしく歴史を感じさせる佇まい"とでも言うべきだろうか。

    伊織「ま、期待はしてなかったけどね」

    開口一番に言う台詞がそれか。

    確かに予算の都合もあるが、急な話にも関わらず無事に人数分の予約が取れただけでも是として欲しいものだ。
    その点は音無さんの功績と言えるが。

    やよい「みんなでお泊りなんて合宿みたいですぅー!」

    P「何の鍛錬もしてないけどな」

    亜美「兄ちゃんはしてたんじゃないの?」ニヤニヤ

    P「…」

    …こいつにしては随分とまた痛いところを突いてくるな。
    否定できないのが何とも歯がゆいところだが。

    265 = 34 :

    今日は無駄に一日が長く感じたが、宿に入ってしまえばこちらのものだ。
    男が俺一人である以上、部屋は必ず[俺:その他]で分かれることになるからな。
    これでようやく静かに…。

    ガラッ

    亜美「兄ちゃんいいなー!一人部屋じゃん!」

    真美「でもでも~、何だか狭くて寂しそうですな~」

    P「あのな…」

    こいつらは少しでも静かにしてると死んでしまう病気なのだろうか。
    朝から晩までこののテンションに付き合ってたら流石にこちらの身が持たない。

    P「俺はこれから風呂だ。悪いが暇つぶしなら他を当たってくれ」

    亜美「ふふーん、お風呂の前にちょっとだけでいいからー」

    真美「お願いしますよ旦那ぁ!」

    P「ダメだ」

    266 :

    P「…」

    結局押し切られてしまった…。
    どうやら俺の苦手なものリストにこの双子の名も追加しなくてはならないらしい。

    亜美「いやー実は温泉の前に軽く汗を流そうと思いまして…」

    真美「じゃんじゃかじゃーん!765プロ卓球大会を開催します!!」

    「よーっし!気合入れるぞー!」

    「自分も負けないぞー!」

    汗なら既に海で大量に流してきただろうに、揃いも揃って無駄に元気が溢れているようだな。
    …帰ったらダンスレッスンの時間を増やしてやろうか。

    小鳥「あら、プロデューサーさんも来てくれたんですね」

    P「本意では無いですがね…。で、これから何が始まるんですか?」

    春香「卓球ですよ、卓球!」

    それは見れば分かる。

    267 :

    P「へー、亜美・真美ペアvs真・響ペアのダブルスか」

    やよい「はいっ!」

    P「精々怪我しないようにな。それじゃあ…」

    美希「ええー!?」

    春香「そんなごく自然に消えようとしなくても…」

    どう考えても、俺がここにいなきゃいけない理由が見受けられないからな。
    別に止めはしないからお前達で好きに楽しんでいればいいさ。

    小鳥「まあまあプロデューサーさん、折角なんで見ていきましょうよ。それとも…どちらが勝つか賭けでもします?」

    P「賭け?」

    小鳥「プロデューサーさんが勝ったら、これからの時間はプロデューサーさんの自由意思で過ごせるよう皆に言い聞かせますよ」

    P「…音無さんが勝ったら?」

    小鳥「そうですねぇ、今夜お酒に付き合ってもらう…というのはどうでしょう?」

    P「(…ふむ)」

    折角の旅行だからな…確かに夜くらいは静かに過ごしたいところだ。
    負けても音無さんと酒を飲むだけだし、賭けの内容だけ聞けばリスクは少なそうだが…。

    P「双子特有のコンビネーションがあるとは言え、765プロの中でも身体能力の高い真と響相手では、流石に亜美と真美が不利なのでは?」

    対戦のカードが五分でなければそもそも勝負が成り立たないからな。
    これでは先に選んだほうが明らかに有利だ。

    小鳥「ふふふ、ならプロデューサーさんから先に決めてもらってもいいですよ」

    P「随分と余裕ですね…。まあいいでしょう、それなら遠慮なく真・響ペアにしますよ」

    小鳥「じゃあ賭けは成立と言うことで。…楽しくなってきましたね♪」

    268 = 34 :

    単純な運動能力の高さもあるが、ダンスのレベルが近いこともあって真と響は一緒に仕事をする機会が結構ある。
    故にお互いの相性はそんなに悪くない…いや、むしろどちらかと言えば良いはずだ。

    そう考えれば尚更勝負は見えているように思えるが…。

    P「(音無さんの思惑が読めないな…妙に余裕そうだが)」

    小鳥「~♪」

    春香「じゃあ始めるよ~」

    美希「真クン、頑張るの!」

    「もっちろん!全力でいくよ!」

    貴音「響、全力で戦うのです」

    「ふふん、余裕だぞ」

    伊織「あんた達も精々頑張りなさいよ」

    亜美「いおりんの応援があれば百人力ですな!」

    真美「よ~っし、いっちょやりますか!」

    269 = 34 :

    亜美「ハイパーアルティメットォ…サーーーーブッ!!」ポコッ

    大層な名前を付けているが、ただの天井サーブである。

    「甘いよっ!」ビシッ!

    真美「うわわっ!」

    あっさりサーブを返され、鮮やかに真・響ペアが得点を決めた。
    どうやら予想通りの結果になりそうだな。

    小鳥「…ふふふ」

    P「…?」

    それでも音無さんは不敵な笑みを崩さない。
    一体何を考えているんだ…?

    「よーっし、今度はこっちがサーブだぞ」ポーン

    小鳥「響ちゃん頑張って!プロデューサーさんも応援してるからね!」

    「へあっ!?」スカッ

    P「!?」

    270 = 34 :

    「何やってんのさ響!」

    「うぅ…ゴメンだぞ」

    P「(まさか音無さんの狙いは…)」

    小鳥「プロデューサーさんが響ちゃんのこと見てるわ!」

    「うぅ…恥ずかしくて」スカッ

    小鳥「響、お前は可愛いな(キリッ」

    「全然集中できないぞ…」スカッ

    P「(最初からこの言葉攻めにあったと言うのか…?)」

    美希「むーっ、ハニーがそんなこと言うなんて」プンスカ

    やよい「何だか私も恥ずかしくなってきましたぁ」

    伊織「…そうね」

    271 = 34 :

    亜美「いっえーい!」パシッ

    真美「やったね!」パシッ

    戦力外となった響の分も真が奮闘していたが…結局力及ばず。
    勝利したのは双子ペアだった。

    「…」

    P「…」

    小鳥「私の勝ちですね、プロデューサーさん♪」

    敗者に語る資格無し。
    これに関しては音無さんと双子の作戦勝ちを認めざるを得まい。

    P「…約束は守りますよ」

    小鳥「うふふ、プロデューサーさんと夜に二人きり…ああ、いけないわ小鳥。だって私達は…」

    P「…折角だからあずさも一緒に飲まないか?」

    あずさ「あら、いいんですか?」

    P「もちろんいいですよね、音無さん?」

    小鳥「…ぴよ」

    272 = 34 :

    あずさ「それじゃあ…」

    小鳥「かんぱ~い!」

    P「何度目だ…」

    軽く一杯付き合うつもりだったが、何だこのザル二人組は。
    机の上には缶チューハイの空き缶が山になっていると言うのに。

    あずさ「プロデューサーさん、ちゃんと飲んでますか~?」

    P「飲んでるから気にするな」

    あずさ「うふふ、女の子相手にそういう態度はダメですよ~」

    小鳥「そうですよ~、プロデューサーさんは堅過ぎると思います!」

    P「はいはい」

    小鳥「大体ですよ!こんな美人二人を侍らしてるんですから、もう少し締まりのない顔をしたらどうでふか!」

    呂律も回ってないようだ。
    全く、見事なまでの絡み酒だな。

    273 = 34 :

    あずさ「ところでぇ…プロデューサーさんは運命の人とか信じてますかぁ?」

    P「運命の人?」

    そう言えばあずさは運命の人を探すためにアイドルをやっていると、前に高木社長から聞いた覚えがある。
    随分と変わった理由だが、それでモチベーションを維持できるというのなら何も言うことは無い。

    あずさ「うふふ、私はまだ見つかってないんですけどね」

    P「俺は…信じるも信じないも無いな」

    何を持って"運命の人"と定義するのか俺には分からないし、そもそも"運命"というのも結果に対するただの後付けでしかない。

    あずさが言ってるのは恐らく将来を共に歩む相手のことなのだろうが…それなら尚更今の俺には関係ない話だ。

    小鳥「ああ、私の運命の人は一体何処に…。早く迎えに来てくれないと溶けちゃいますよぉ…」

    P「…」

    音無さんは完全に思考回路が麻痺しているようだ。
    一応年齢は俺より上のはずなのだが、全くそうは見えない。

    酒を飲んで前後不覚に陥る様ではまだまだだな。

    あずさ「にゃんにゃんにゃあん、うふふ♪」

    P「…」

    あずさ「はいっ!プロデューサーさんもご一緒に!にゃんにゃんにゃあん♪」

    P「お前もか…」

    274 :

    P「全く…」

    自分の部屋は酔っ払い二人に占拠されてしまったし、宿の中をうろつけばまた双子に捕まる危険性がある。
    仕方が無いので酔いを醒ますついでに、外の風に当たりに来たのだが…どうやら此方にも先客がいたようだな。

    貴音「あなた様、奇遇ですね」

    P「ああ、そうだな。お前も風に当たりに来たのか?」

    貴音「いえ私は…」

    そう言って自分の手を空に向け、闇夜に浮かぶ月を指差す。

    貴音「月がとても綺麗でしたので。都会ではあまり見られませんし」

    P「そうか…」

    空に浮かんだ月はまるで真珠のように丸く、優しく光り輝いていた。
    これだけの月となると、確かに街中にいては中々見る機会が無いかもしれない。

    貴音「月を見ていると心が安らぎますね。見守ってもらえるような心地良さです」

    そう言って月光の下で微笑む貴音の横顔は、言葉とは裏腹にどこか物憂げで若干の儚さを感じさせた。

    P「…」

    275 :

    P「…以前お前は響の笑顔を太陽みたいだと言ったが、お前の微笑は例えるなら月ってところか」

    貴音「…?」

    P「太陽から元気を貰えるなら、月からは癒しを貰える…我ながらピッタリだと思うが」

    貴音「相も変わらず、あなた様はいけずなのですね。その様な言の葉で私達の心を乱して…」

    P「心外だな」

    …そういう売り文句でユニットを組むのも悪くないと思っただけだ。
    これに美希を加えれば太陽と月と星でイメージのバランスも良くなるしな。

    だが、残念ながら新ユニットの企画に関しては俺が担当する話ではない。
    それは律子の領分だ。

    貴音「心外、ですか。…そうかもしれませんね。私にはあなた様の胸中が見えません」

    P「当然だ」

    他人の心がそう簡単に読めるなら誰も苦労はしない。
    こいつなら読心術を心得ていてもさして違和感は無いがな。

    …どの道、俺の心の内を読まれるわけにはいかないが。

    276 :

    貴音「…私達と話しているときでも、時折あなた様の瞳は何処か別のものを見ている時があります」

    P「…また唐突な話だな」

    他人の顔を観察しても楽しいことなどないだろうに。
    こいつの考えていることは未だによく分からん。

    貴音「もしや…あなた様の胸の内には何か重大な秘め事があるのではないのですか?」

    P「…!?」

    何だこいつは…。
    本当に読心術でも使えるのか?

    貴音「私はまだあなた様の笑った顔を見たことがありません。あなた様の瞳は常に険しく…まるで何かに囚われているような深く暗い瞳です」

    P「…」

    随分と鋭いところを突いてくる。
    ただの惚けたお姫様と思っていたが…中々どうして侮れないようだ。

    …だが、こいつに俺の何が分かると言う。

    P「…くだらないな」

    貴音「…?」

    P「俺がもしお前達に隠し事をしているとして…それがどうした?」

    貴音「私は…いえ、私達はあなた様を信頼しております。ですから…」

    そう言って貴音は凛とした曇りの無い瞳で俺を見つめてくる。
    "目で物を言う"とはこういうことなのか。

    P「…」

    貴音「…」

    P「…あくまで仮の話だ。本気にするな」

    その瞳はあまりに真っ直ぐ過ぎて、俺にはこれ以上直視することはできない。
    視線を逸らして、適当な言葉でお茶を濁すしかなかった。

    貴音「あなた様…」

    P「…夜風に当たり過ぎると体調を崩す。お前もほどほどにしておけ」

    277 :

    待ってました!

    278 :

    逃げ出すように貴音の前を去り、俺はまた一人になった。

    P「(囚われている…そんなことくらい百も承知だ)」

    貴音の言葉はまさに正鵠を射ていた。

    確かに俺は囚われているのだ…他でもない自分自身の"夢"に。

    P「(だがそれがあいつとの約束だからな…)」

    芸能プロダクションを設立する…そんな大層な"夢"は元々俺が考えたものではなく、俺の友人が考えたものだった。

    二人で馬鹿みたいに"夢"を語って、馬鹿みたいに目標を立てて、馬鹿みたいに競い合って…。
    そうしていつか"夢"は叶うと馬鹿みたいに信じていた。

    だが今、あいつはもう何処にもいない。

    だから俺はあいつの代わりに"夢"を叶えなければならないのだ。
    そのためには手段は選ばないとあれだけ自分に言い聞かせてきた。

    今更後戻りなど…出来るはずもないし、するつもりもない。
    もう先に進むしか道が無いのだから。

    279 = 34 :

    P「ここにいたか」

    この事務所の空気に流されていては、いずれ自分を見失ってしまう可能性がある。
    そうならないためにも、今は全力で目の前の仕事をこなすしかない。

    そのためにまずやるべきこととして…俺は如月千早のもとを訪ねた。

    千早「プロデューサー、何か御用ですか?」

    P「少し話すことがあってな」

    千早「はあ」

    P「…いや、その前に少し聞きたいことがある」

    千早「何でしょうか?」

    P「お前は春香達と同じで皆でワイワイ騒ぐのは好きか?」

    千早「…?仰ってる意味がよく分かりません」

    P「そのままの意味だ。他人と仲良く遊ぶのは好きかと聞いているんだ」

    千早「…嫌いではありませんが少し苦手です。それに今は…遊ぶよりレッスンを積む方が大切だと思ってますから」

    予想通り…いや、期待通りの回答といった方がいいか。
    他のアイドル達からはこんな答えは返ってこなかっただろうからな。

    280 :

    P「そうか。なら次の質問だ」

    千早「はあ…」

    P「…お前は今まで疑問に思ったことはないのか?」

    千早「何がですか?」

    P「他の奴らに比べてお前の仕事量が極端に少ないことに対してだ」

    千早「…!」

    俺が765プロに来てからの三ヶ月間、千早に対しては殆ど仕事を入れず、ほぼレッスンのみでスケジュールを組んでいた。
    もちろん意味あっての行動だが、並のアイドルなら文句か意見の一つくらい出てもおかしくは無いはずだ。

    …だが千早は違った。
    今の今まで文句を言われたことは無く、レッスンの手を抜いている様子も全く無い。

    千早「…それは、私の実力が不足しているせいですから」

    そしてこの返答である。

    そう、こいつには他のアイドルに無いストイックさがあるのだ。
    それに加えて、決して自身の才能に甘んじない向上心も併せ持っている。

    才能がありながら努力も出来る…そして自らを律することも出来る。
    俺が求めていたのはそういう人材だ。

    P「お前ならそう言うと思っていた。だが仕事を入れなかったのは別に他のアイドルに比べてお前が劣っていたからというわけではない。どちらかと言えばむしろ逆だ」

    千早「…逆、ですか」

    P「プロジェクトが本格的に動き出す前に、お前のイメージを先行させたくなかったからな」

    千早「プロジェクト…?」

    P「ああ。この旅行が終わればすぐにでも全員が知ることになるが、お前には先に話しておく必要がある」

    281 :

    P「765プロはこれから、俺と律子それぞれが担当する二つのプロジェクトを進めていくことになる」

    千早「…」

    P「一つは"プロジェクト竜宮小町"。トリオユニット"竜宮小町"を結成し、765プロの看板アイドルとして育てる計画だ」

    千早「トリオ…三人組のユニットですか?」

    P「ああ。とは言え、こちらの担当は律子だからあまりお前に関係は無い。重要なのはもう一つの方だな」

    千早「…はい」

    P「…三人の個性を掛け合わせ、より大きな相乗効果を生み出すのが"プロジェクト竜宮小町"の目的だとすれば、もう一つのプロジェクトの目的は全く対照的と言える」

    千早「…」

    P「一人の個性を最大限まで引き出し、一点特化型のアイドルとして昇華させる…それが俺の企画、"プロジェクト歌姫"だ」

    千早「!」

    282 = 34 :

    P「"プロジェクト歌姫"はその名の通り、765プロから本格的な歌手を生み出す計画だ」

    個人的な意見となるが、俺はアイドルの存在感を構成する一番のファクターとなるのは"歌"であると考えている。
    そして、765プロに来て千早の歌を初めて聞いたとき、その考えは確信に変わった。

    …圧倒的な歌唱力は、圧倒的な存在感へと昇華させることができるのだと。

    ならばそれを765プロの知名度向上に使わない手は無い。
    故に俺はこのプロジェクトを企画したのだ。

    P「そのために必要な舞台を整えるのが俺の仕事で、お前の仕事はその舞台の上で全力で歌うことだ」

    千早「…」

    P「とは言え実際はそう簡単な話ではないがな。デビューに向けてやらなければならないことが山積しているし、当然レッスンの量も今までの比ではない」

    千早「…」

    P「故に…やるかやらないかの最終判断はお前に任せようと思う。お前はどうしたい?」

    283 :

    千早「答えは決まっています。やらせてください」

    P「…即決だな。こちらとしては都合が良いが」

    千早「当然です。千載一遇のチャンスを逃がすつもりはありません」

    P「尤もな意見だ」

    こういう理に適った判断が出来るのも千早の長所の一つと言える。
    もとより、断られるとは微塵も思っていないがな。

    P「お前と竜宮小町の三人には先駆者として765プロを牽引してもらう必要がある。故に765プロの将来はお前達にかかっていると言っても過言ではないが…その荷を背負う覚悟はあるのか?」

    千早「…私には歌しかありませんから。歌い続けるためならどんなことであろうと…」

    千早の歌に対するこの執念も、プロジェクトを遂行するために必要な要素の一つだ。
    俺が"夢"に囚われているとしたら、こいつは"歌"に囚われているようだからな。

    …だからこそ俺は千早をプロジェクトの柱石として使うことを決めたのだ。
    黒井社長にとっての俺がそうであるように、こういうタイプの人間は御し易いことこの上ない。

    P「なら話は成立だ。よろしく頼む」

    千早「はい、こちらこそよろしくお願いします」

    …これでようやく全てが始まる。
    今はただ千早と共にこのプロジェクトに全力を尽くすだけだ。

    …全ては"夢"のために。



    続く。

    284 :

    「夢って言うのは呪いと同じなんだ 途中で挫折したものはずっと呪われたまま……らしい」

    285 :

    まあ、夢と呪いって人によっては=でなりたつからなあ・・・
    特に「死んだ誰かのために」なんてのは代表例みたいなものだし

    286 :

    名台詞ですねぇ…また555見たくなってきました。
    今回は短めですが前の話とワンセットということで一つ。

    今日も今日とて休日出勤という地獄が待っていますが、仕事中に妄想(構想)を広げることにします。

    Pはいつかどこぞの主人公の台詞みたいに他人(アイドル)の夢を守る事が出来るようになるのでしょうか。



    それでは。

    287 :


    555のあの話は熱かったなぁ…

    288 :

    乙ですー

    「……夢は砕けたら終わりなのかい?
    (中略)
    夢のカケラをモザイクにして額縁に入れれば、その隣にまた額縁が欲しくなる。
    額縁がでかいか小さいかは人それぞれでも、一生かけて壁を額縁で一杯にできたら幸せだろうね」
    (王様の仕立て屋7巻より)

    こんな台詞を思い出した。
    夢を遂げられるのはごく一部でも、夢を見ない人に魅力は出ないんですよね。

    289 :

    ウィ

    293 :

    社長「なにをしとるのかね、君らは」

    296 :

    ちょっと期待しちまったじゃないかww
    むやみにあげんなww

    297 :

    全ては自分の遅筆ゆえ…お許しください。
    くっ…自分で週一ペースと言ったのにも拘らず…情け無い。

    298 :

    高木「…以上が今後の765プロの方針だ」

    旅行から帰った765プロの面々に、高木社長の口から正式にプロジェクトの内容が伝えられた。
    喜ぶ者、驚く者、戸惑う者…各々の反応は千差万別だが、共通して言えるのは…。

    春香「千早ちゃん、やったね!」

    千早「ええ、選ばれた以上は全力を尽くすわ」

    真美「亜美ばっかりずる~い!」

    亜美「へへっ、真美の分もやっちゃうよ~!」

    貴音「あずさ、誠に目出度きことです」

    あずさ「私に務まるか不安だけど…頑張るわね」

    やよい「うっうー、さすが伊織ちゃんですぅー!」

    伊織「ま、スーパーアイドル伊織ちゃんなら当然よっ!」

    …羨む奴はいても、選ばれた者を本気で妬む奴は誰もいないということだ。
    何故こいつらはここまで純粋に他人の幸せを祝福することが出来るのだろうか。

    俺には理解できなかった。
    …いや、理解する必要なんて無い、か。

    299 :

    きたたたたたたたあたああああああ
    待ってたぞ

    300 :

    プロジェクトに自分が選ばれなかったことに関してどう思っているのか。
    仕事の送り途中、何気無く美希に話を聞いてみた。

    美希「うーんとね、確かにハニーがミキを選んでくれなかったのはショックだけど…」

    P「…」

    美希「でも、千早さんなら仕方無いって思うの。だって千早さん、誰よりも歌に真剣だったし」

    P「…そうだな」

    だからこそ俺も千早を選んだのだ。
    つまりは、そのことを他のアイドル達も理解していると言うことなのだろうか。

    …だとすれば随分と殊勝な心掛けと言えるが。

    美希「でも、ミキのこともちゃんとキラキラさせてよね!」

    P「分かってる」

    プロジェクトが動き始めた以上、不要な考えは捨てて前に進むしかない。
    この疑問もこれ以上悩むほど重要な問題ではない、か…。


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