元スレP「765プロに潜入、ですか?」
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201 = 34 :
伊織「でも…こう暑いと避暑地にバカンスくらいは行きたいわね」
春香「折角の夏休みだし確かに海には行きたいよね~」
響「美ら海が恋しいぞ…」
伊織「…!」
春香「…!」
響「…!」
伊織「何だ、簡単なことじゃない」
春香「行きたいなら…」
響「皆で行けばいいんだぞ!!」
202 :
!?
203 :
響「プロデューサー!海に行くぞ!!」
春香「慰安旅行ですよ、慰安旅行!!」
P「…は?」
双子だけでなくこいつらも暑さで頭がやられたのか。
クーラーは早いとこ直してもらう必要がありそうだな。
伊織「失礼ね、私達はいたって平常よ」
P「…あのな、そう簡単に旅行なんて行けるわけ無いだろ?」
スケジュール…はあまり問題無いみたいだが、旅行するにもまずは先立つものが必要になる。
だがしかし、この事務所にそんな余裕があるとは到底思えない。
小鳥「大丈夫ですよプロデューサーさん」
P「あ、ようやく復活しましたか。それじゃあ早いとこ書類を片付けてください」
小鳥「ぴよ…じゃなくて、お金のことなら心配いらないです。こういう時のためにちゃんと積み立ててる分がありますから」
P「…」
やはり音無さんは優秀な人物のようだ…が、今回の件に関してだけ言えば、その優秀さが少し恨めしく思える。
伊織「ほら、何も問題無いじゃない」
P「…分かった。一応社長に提案はしておく」
条件がクリアされてしまった以上、これ以上の反論は出来まい。
…我ながら諦めが早くなったな。
204 :
楽しみに待ってた
205 :
高木「慰安旅行か…いいじゃないか、行ってきたまえ」
高木社長の性格を考えれば答えは聞くまでも無いと思っていたが、まさにその通りだった。
もしこれが黒井社長相手だったら…特大の雷が落ちているところだな。
P「…分かりました。もちろん社長もご一緒されますよね?」
高木「いや、私は今回は遠慮しておこう。例のプロジェクトで色々動かなければならないことがあるのでね」
P「でしたら私も」
高木「おいおい、君は彼女達と一緒に行かないとダメだろう。折角の慰安旅行なんだから羽を伸ばしてくるといい」
P「ですが…」
社長にだけ仕事をさせるのは流石に気が引けるというものだ。
…それに正直な話、一緒に行かないほうが羽を伸ばせるような気もするし。
高木「ウォッホン、ならばこれは社長命令だ。律子君だけでは手が回らないだろうからね」
P「…はい」
確かに律子や音無さんにあいつらの面倒を任せるのはいささか無責任と言えるか。
どうやらこれも仕事の一環として諦めるしかなさそうだな。
206 = 34 :
P「…と言うわけで律子は日程の調整と出欠の確認、音無さんは交通手段と宿の手配、それと会計の処理をお願いします」
小鳥「分かりました♪」
俺は…とりあえず律子と音無さんの分も含めて、溜まってる仕事を全て処理しなければならないか。
…今日は残業決定だな。
それと、事務所の電話は携帯に転送されるように設定しておいて…。
ガチャ
雪歩「おはようございますぅ…」
真美「おー!ゆきぴょんおはよう~!」
旅行の準備を進めていると、また一人暇人が事務所に来たようだ。
彼女の名は萩原雪歩。
性格は大人しく物静かであり、清楚なイメージも相俟っていわゆる"守ってあげたい系"アイドルと言える。
自分に自信が無く落ち込みやすいところもあるが、それだけならばさして問題では無いのだが…。
207 = 34 :
雪歩「あ、あの、プロデューサー、ら、来週のオーディションで少し確認したいことがありまひて…」
真美「(あ、噛んだ)」
小鳥「(噛みましたね)」
P「(…噛んだな)」
…どうやら今日は真とは一緒じゃないみたいだな。
となると少々厄介なパターンだ。
P「何だ?」
雪歩「だ、台本のこの部分なんですが…」
P「ん?どれだ…」
確認のために差し出された台本を受け取ろうと、雪歩の方へ身を乗り出した瞬間…。
雪歩「ひっ…ひゃああああ!?」
P「(…しまった)」
か細い悲鳴を上げたかと思うと、雪歩は物凄い勢いで壁際まで後ずさった。
208 = 34 :
P「…律子頼む」
律子「あ、はい」
萩原雪歩の最大の弱点…それは男性に対して極端に苦手意識があることである。
今のこの状態でも大概だが、これでも四月ごろに比べればまだマシになった方だ。
何しろ初めて声をかけたときは事務所の外まで逃げ出したくらいだからな。
百歩譲って俺から逃げ出すくらいならまだいいのだが、下手すればレッスンやオーディションにも支障が出てくるので洒落にならない話だ。
頭ごなしに注意するだけでは、さらに苦手意識を強くしてしまうだろうし…。
今のところ適度にフォローの出来る真や春香と一緒に行動させることで、何とか被害を最小限に留めようとしているのだが…。
P「(…それでは根本的な解決にはならないか)」
雪歩「うぅ…ごめんなさい…」
春香「大丈夫、ほら涙拭いて」
雪歩「こんな…こんな私なんて…穴掘って埋まってますぅーーーー!」
律子「こ、こら事務所に穴を掘らない!!」
…ついでにこの謎の穴掘り癖も何とかしなくてはならないな。
209 :
そんなわけで気付けば慰安旅行当日の朝になった。
揺れる列車の中で流れ行く外の景色を眺めながら、悠々とコーヒーを啜る…何てことがこいつらと一緒で出来るはずも無いわけで…。
やよい「うっうー!楽しみですー!!」
あずさ「うふふ、皆で旅行なんてワクワクするわねぇ」
美希「…zzz」
亜美「あーっ、ヤキニクマンの録画するの忘れてた!!」
真美「今日キムチちゃんの出番っしょ!?うぅ…なんてこったい」
小鳥「大丈夫!こんなこともあろうかと事務所のレコーダーで予約してあるから安心して♪」
亜美真美「「おおっ!流石ピヨちゃん!!」」
律子「あんた達少しは静かにしなさい!」
P「…まさか全員参加とはな」
気分は修学旅行の引率教師だ。
210 = 189 :
クロちゃんが真っ当な悪役っぽくて新鮮だわ・・・
211 :
小鳥「まあまあ、プロデューサーさん。折角の慰安旅行なんですから全員参加はむしろ喜ぶべきですよ」
P「まあ、それはそうですが…」
全く、揃いも揃って暇人の集まりだな。
…とは言え、仕事のスケジュールで余裕があるのはプロデューサーである俺の力量不足のせいでもある。
ホワイトボードが真っ白…と言うわけではないが、仕事の増加量が伸び悩んでいるのも事実なわけで…。
P「はあ…俺もまだまだだな」
律子「あれだけ働いてまだまだって…プロデューサーは少し真面目過ぎですよ」
小鳥「そうですよ。だから今回の旅行でしっかり羽を伸ばしましょうね♪」
P「…ですね」
…確かに音無さんの言う通りではある。
早ければ来月にはプロジェクトが本格的に始動し始めることになるからな。
P「(プロジェクトの中心メンバー四人はもちろん、他のアイドル達も少なからず忙しくなる…。当然裏方である律子や音無さんの仕事量も増えるわけだし…)」
余裕がある今の内に各々をリフレッシュさせておくのは、非常に理に適っていると言える。
どんな職業でも言えることだが、ストレスは仕事の効率を著しく低下させる要因になるしな。
212 :
P「…律子もしっかり休んでおけ。旅行中はあまり仕事のことは考えなくていいぞ」
年齢以上にしっかりしているので忘れがちになるが、こいつはまだ未成年だからな。
プロデューサーという肩書きを背負っているだけでも重圧だろうに、今回のプロジェクトでは重要な役割を担っているわけだし。
律子「お気遣いありがとうございます。でも私はこう見えてタフですから、大丈夫ですよ」
小鳥「ふふっ、プロデューサーさん優しいですね」
P「…音無さんは心配無用みたいですね。帰ったら旅行中に溜まった仕事の処理を全てお任せします」
小鳥「ぴよっ!?」
律子「あはは…でも、プロデューサーこそ休めるときに休んだほうがいいですよ」
213 = 34 :
P「俺も心配は無用だ」
流石に自分の仕事のペースくらいは自分で管理できる。
…仮にも黒井社長の下で散々扱き使われてきたわけだしな。
その頃に比べれば今の境遇は遥かにマシと言える。
小鳥「ならプロデューサーさんには、この旅行でしかできないことをしてもらいましょうか」
P「…?」
この旅行でしかできないこと…?
まさか海で営業活動しろとでも言うのだろうか。
小鳥「ずばり、アイドル達とのコミュニケーションですよ!」
214 :
コミニュケーション(Communication)…すなわち思考の伝達。
言語・文字・身振りなどを媒介にして行うものだ。
P「…それならいつも仕事でしてるじゃないですか」
小鳥「そういうのじゃなくて、お互いを知るためのもっと気楽なお喋りですよ」
律子「ああ、確かに。プロデューサーはあんまり仕事以外でアイドルと話をしませんからね」
P「と言われてもな…」
音無さんが言いたいことは分かったし、直にアイドルと話すことの意味もここ最近になって理解し始めてはいるが…。
仕事以外で話す…あまりピンとこないのが正直なところだ。
小鳥「美希ちゃんを家まで送ってたときは結構お喋りしてたって聞きましたけど」
P「あれは美希が一方的に話してただけですよ」
実際、俺は聞かれたことに答えるか、相槌くらいしか打ってなかったからな。
ああいう感じでどんどん話題を振ってくれる奴ならまだ会話は成立するが、それ以外の奴に話せと言われても…話のネタが思い浮かばない。
215 :
律子「プロデューサーは深く考えすぎなんですよ。お喋りなんてもっと気楽でいいんですから」
小鳥「そうですねぇ、単純に趣味や好物の質問から始めてもいいですし…。あ、女の子は些細なことでも褒めてあげると喜びますよ」
P「褒める?」
仕事で結果を出した時とかなら分かりやすいが、日常会話で褒めるとなると…。
いまいちピンとこないが、やはりアイドルであることを考えれば、とりあえず容姿を褒めればいいのだろうか。
P「(ふむ…)」
小鳥「あれ、私何か変なこと言いました?」
P「いえ…ところで音無さん、今日は何だかいつも以上に素敵ですね」
小鳥「ぴよっ!?」
216 :
P「いつもの事務服も悪くないですが…そういったカジュアルな服装も新鮮でいいですね。可愛らしくてよくお似合いです」
小鳥「ぴ…」
P「前から思ってたんですが、あいつらに混じってアイドル活動していても何の違和感も無さそうですね」
小鳥「…」
P「これで仕事も出来るんだから、才色兼備とはまさに音無さんのことで…」
律子「ストップ!ストーーップ!!」
小鳥「…」ピヨピヨピヨピヨ
律子「やはり小鳥さんには刺激が強すぎましたか…。もうプロデューサー、一体突然どうしたんですか?」
P「褒めるのを試してみただけだが…やはり付け焼刃ではうまくいかないか」
結局俺が一方的に話してただけで、全く会話が成立してないからな。
お世辞で褒めるのは好きではないので、一応思ってることは素直に言ったつもりなのだが。
律子「もしかしてプロデューサー…天然ですか?」
P「…何のことだ?」
律子「やれやれ…。でもそうですね、たまには思いに任せた言葉を言ってみるってのも悪くないかもしれません」
217 = 34 :
そうこうしているうちに目的地である海水浴場まで辿り着いた。
しかしまあ、ピーク前だと言うのに随分と人で賑わっているな。
亜美「海だー!」
真「よ~し、今日はいっぱい泳ぐぞ~!!」
律子「ちゃんと日焼け止め塗ってからにしなさいよー」
響と真に関しては、多少日焼けしてもプラスポイントになりそうな気はするが。
それにしても、まだパラソルも立ててないのに気が早い奴等だ。
春香「プロデューサーさん!海ですよ、海!」
P「見れば分かる」
真美「はるるん置いてくよ~!」
春香「あはは、みんな待ってー!」
P「…おい春香、そんなに慌てるとまた」
ドンガラガッシャーン!!
…やはり転んだ。
と言うか砂場でその擬音はおかしくないか?
218 = 34 :
P「さてと…ん?」
千早「…」
小鳥「千早ちゃんは皆のところに行かないの?」
千早「私はあまり…泳ぎが得意ではないですから」
…で、海に来てるのに一人で読書をしてるわけか。
それも中々悪くないな、俺も真似させてもらおうか…。
春香「ち~は~や~ちゃんっ♪せっかくの海だよ!一緒に遊ぼうよ~」
…何て思ってたら、呼んでもないのに春香が千早を誘いにやって来た。
千早「あ、ちょっと待って…分かったから」
春香「ほらほら、早く♪」
219 = 34 :
P「…春香と千早は仲がいいんだな」
アイドル同士仲が良いのは別に悪いことでは無いのだろうが…やはり何となく違和感を感じる。
まあ、単純に俺が捻くれているだけなのだろうが。
小鳥「ふふ、プロデューサーさんもこんなところでボーっとしてないで、早く皆のところへ行かないと」
P「…別にいいですよ、荷物番もありますし」
小鳥「荷物なら私が見てますから」
P「はぁ…分かりましたよ」
春香といい音無さんといい、揃いも揃って他人の世話を焼いて楽しいのだろうか。
…仕方無い、気分転換に散歩でもするとしよう。
220 :
ワーワー!
スゲー!
海岸沿いをブラブラ歩いていると、賑やかな歓声が耳に入ってきた。
P「…ん?」
立ち並ぶ海の家の中で、一軒だけ妙に人だかりができているところがある。
何々…『求む完食者!ジャンボラーメン三杯!!』…何かの企画だろうか?
P「(よくある"食べきればタダ"ってやつか)」
他所と違う個性を出さなければ客の足を止めることはできない…どこの世界も似たようなものだな。
客「おお、ついに完食者が現れたぞ!」
一際大きな歓声が上がったと思ったら、どうやら達成した猛者が現れたようだ。
はてさて、どんな屈強な男だろうか…。
?「中々に美味でした。ところでお代わりを所望したいのですが…」
P「…」
…聞き覚えのある声だった気がするが、気のせいだろう。
うん。
221 = 34 :
やよい「あー!プロデューサーも潮干狩りですかぁ?」
P「…」
波打ち際で楽しそうに砂をかいてるツインテールに見覚えがあったので来てみたが…潮干狩りのシーズンはもう過ぎてるんじゃないだろうか。
教えてあげるのが優しさなのかもしれないが…あまりに純真すぎて言い辛いな。
伊織「あら丁度いいところに来たわね、喉が…」
P「却下だ」
伊織「むきー!まだ全部言ってないじゃない!!」
言わずとも分かるようになったのが何となく嫌だが…これも慣れと言うやつか。
P「それにしてもお前達二人は仲がいいな。…と言うより、やよいもよく伊織と付き合えるな」ボソッ
伊織「聞こえてるわよ…」ピキピキ
やよい「でもでも、伊織ちゃんはとっても優しいんですよー?」
P「ああ、確かにそうだな」
伊織「!?」
222 :
やよい「優しいし可愛いし…まさにスーパーアイドルです!!」
伊織「ちょっとやよい…恥ずかしいわよ」
P「スーパーアイドルかどうかはまだ分からんが…俺も概ねその通りだと思う」
ハム蔵の件もあるし、口は悪いが何だかんだで面倒見はいいしな。
だからこそ律子も…。
いや、これはまだオフレコだったか。
伊織「ってか、あんたまで何言ってるのよ!?」カアアッ
P「ま、優しくて可愛いのはやよいも同じだ。そういう意味ではお前らは似たもの同士かもしれないな」
やよい「うっうー!プロデューサーありがとうございますー!」
成程、音無さんの反応がアレだったから半信半疑だったが、褒めるのも確かに悪くないかもしれないな。
伊織も照れてるようだが悪い気はしてないみたいだし。
P「(ん…待てよ)」
これを上手く応用すれば、自分に自信が持てない雪歩の性格も改善されるかもしれないな…。
P「(…やってみる価値はあるか)」
223 = 34 :
真美「あ、兄ちゃん!」
亜美「一緒に遊ぼうよ~」
P「…(雪歩相手にはまず何て声をかけるべきか…)」
真美「おーい!…ふむ、どうやら気付いてないみたいだねぇ」
亜美「…ニヤリ」
真美「やりますか?」ガチャッ
亜美「当然っしょ!」ガチャッ
P「…」
真美「いち…」
亜美「にの…」
亜美真美「「さんっ!食らえ~!!」」ブシャー!
P「…!?」ビチャッ!
224 = 34 :
真美「…ごめんね兄ちゃん」
亜美「う~…無視した兄ちゃんが悪いのに~」
P「…百歩譲って水鉄砲で顔面に海水をぶっかけてきたのは許そう。だがな…流石の俺でも看過できないことはある」ビショビショ
例えば、追い討ちをかけるように俺の顔面にヒトデを叩きつけてきたり…。
怯んだところで私服のまま海に押し倒したり…。
P「財布と携帯を置いてきてたからまだ良かったものの…」
亜美「でも何でボーっとしてたのさ?」
P「…」
こいつの全く悪びれない様子を見ていると、何故か怒っている俺の方が馬鹿らしくなってくる。
全く、得な性格の奴だ。
P「…少し考え事をしてただけだ」
225 :
亜美「なるほどねぇ…確かにゆきぴょんの臆病な性格はいい加減何とかせねばなりませんな、真美殿」
真美「そうですな~、亜美殿」
P「(まーた小芝居が始まった…)」
参考意見を聞ければと思ったが、我ながら聞く相手を完全に間違った気がする。
同性で俺よりまだ雪歩に年が近いとは言え、こいつらの思考は完全に斜め上だからな。
亜美「何かいい案は無いものかねぇ…」
真美「はいはい!」
亜美「おお、真美殿!」
真美「ここに丁度いいお相手がいるであります!それで…」ゴニョゴニョ
亜美「…それは妙案ですな!」
P「前置きはいいから早く言え」
226 :
真美「ずばりっ、兄ちゃんにはゆきぴょんの男性恐怖症を克服するための生贄になってもらいたいんだよ!」
P「物騒な単語が聞こえてきたが…まあ、具体的な案があるなら聞こう」
正直、全く期待はしてないがな。
ダメで元々、下手な鉄砲何とやらだ。
亜美「良くぞ聞いてくれました!」
真美「夏の海で男女がすることと言えば…」
亜美「一つしか無いっしょ!」
P「…」
亜美真美「名付けて!『波打ち際でキャッキャウフフ、私を捕まえてごらん作戦』!!」
P「分かった。お前達に聞いた俺が馬鹿だったな」
227 = 34 :
亜美「ジョークだよ~兄ちゃ~ん」
こいつらの場合、ジョークと本気の境界が非常に曖昧だから困る。
って言うか、今のは割りと本気に見えたんだが…。
亜美「まあ、まだ作戦名しか言ってないからね。肝心の内容だけど…」
真美「とりあえずいっぱいお喋りすればいいってことだよ!」
P「経験を積ませるってことか…名前と全く関係無いが、お前達らしからぬまともな意見だな」
亜美「なっ!?」
真美「失礼だなー、兄ちゃんは」
用済みの双子はスルーするとして…。
何だかんだで結局そこに集約するわけか。
228 :
P「問題は話のきっかけだが…仕事関係の話じゃダメなのか?」
亜美「それじゃダメっしょ~」
真美「せっかくの休みに仕事の話はNGだよ~」
P「となると…やはり音無さん曰く『褒めれば喜ぶ』が妥当か」
真美「いいじゃん、それだよ兄ちゃん!」
亜美「うんうん、これならいける気がするよ!」
亜美真美「名付けて『褒め殺し作戦』!」
P「(…何なんだこの無駄なテンションは)」
じじくさいことを言う気は無いが、最近の若い奴のテンションには付いていけないな…。
229 :
響「おーい!プロデューサー!!」
双子との話が一段落付いた頃、真っ先に海に飛び込んでいった響が、手を振りながらこちらに走ってくるのが見えた。
亜美「お、丁度いいところにサンプル発見。それじゃあ実地訓練といきますか!」
真美「兄ちゃんもまずは褒め慣れないとだしね」
P「…」
まあ、確かに慣れておくに越したことは無いんだろうが…。
…いい様に遊ばれている気がするのは俺の気のせいだろうか。
響「はあっはあっ…見てみてプロデューサー!獲ったど~!!あはは、なんちゃって!」
そう言って響は嬉しそうに獲れたてピチピチの魚を見せ付けてきた。
お前はどこの無人島生活者だ…と、突っ込みたいところだが今は我慢しておこう。
P「(褒める…)おお、すごいな。お前にその気があるならアウトドア系の番組に出…」
亜美「(兄ちゃんストップストップ!)」
真美「(仕事の話になってるよ!)」
P「(む…)」
褒めてたつもりが無意識に仕事の話を繋げてしまったようだ。
もう少し意識する必要があるか…。
P「(褒める褒める…)ところで響」
響「ん~?どうしたんだ、プロデューサー」
P「お前は可愛いな」
亜美真美「「…ぶっ!」」
230 = 34 :
響「へ?え?」
P「まずその笑顔。とある奴からの受け売りになるが、お前の笑顔には周りを明るくする力がある」
響「え…う、あ…」
P「次にスタイル。背は低いがダンスで鍛えられてるから体は適度に引き締まってるし、今着ている水着も凄くよく似合っているな」
響「!」ボンッ!
P「ほんのり小麦色に焼けた肌もお前の健康的な魅力を引き出すのに一役買ってるし、765プロ一海が似合うと言っても過言では…って、顔が赤いが大丈夫か?」
響「…」シュ-
P「熱中症か?全く、ちゃんと水分を取って疲れたら休むようにしておけよ。お前に何かあったら…俺が困る」
…仕事のスケジュール的な意味で。
慰安旅行明けにそこそこ大きな舞台でバックダンサーをしてもらう予定があるからな。
響「…」
響「…う」
響「うがーーーー!!くぁwせdrfgtyふじこlp!!」
バッシャーン!!
231 = 34 :
突然奇声を上げて海に飛び込んだかと思うと、響は水平線の彼方へと消えていった。
よく見ると真も近くにいるようだが、二人とも随分と泳ぎが上手いんだな。
亜美「に、兄ちゃん…」
真美「天然にもほどがあるっしょ…」
P「…?」
それにしても『褒めれば喜ぶ』というのもやはり相手を選ぶみたいだ。
P「雪歩にはどうするかな…」
亜美「いや、とりあえずゆきぴょんには『褒め殺し作戦』は無しの方向で一つ…」
真美「下手すりゃ本当にゆきぴょんが死んじゃうよ…」
232 :
何故か双子にまで呆れられたことに不満を覚えつつ、再び散歩に戻る。
P「(待てよ…)」
そう言えば真は響と一緒だったみたいだが、それなら雪歩はどこに行ったんだ?
春香や美希たちのところにもいなかったし…。
P「(ん…?)」
視線の先に明らかに人為的に作られた砂山を見つけた。
そしてそれを取り囲むように近くには若い男が数人いて…。
P「…」
…こういう時の嫌な予感というのは、何故か当たってしまうものなんだよな。
233 = 34 :
チャラ男A「ねえねえ彼女、そんなところで埋まってないで一緒に遊ぼうぜぇ~」
チャラ男B「そうそう、きっと楽しいって」
雪歩「うぅ…」
チャラ男C「オイオイ、キミカワウィーネー」
P「…」
見つけたのはいいが、展開が予想通り過ぎていっそ清々しいな。
雪歩も雪歩で自分が掘った穴に埋まってるせいで逃げ場が無くなってるし…。
…とにかく早く何とかしなくては。
P「もしもし」トントン
とりあえず一番手近にいる男の肩を叩く。
チャラ男A「あ~ん?誰だあんた」
P「…悪いね、この子俺の連れでさ。人見知りな子だからそのくらいで勘弁してもらえないかな?」
234 :
チャラ男B「ちぇっ、行こうぜ」
チャラ男C「ウィー」
見た目はアレだが物分りのいい奴らで助かった。
ちゃんと引き際を心得ているあたり、健全なナンパと言えるな。
雪歩「あ、あの…プロデューサー…」
P「ああ、無理して出てこなくていい。怖かっただろ?」
苦手な男…それも複数に逃げ場の無い状態で囲まれたんだ。
落ち着くまでは自作の穴の中でゆっくりしてればいいさ。
雪歩「うぅ…ひっく」グスッ
P「…」
…今思えば雪歩の面倒は真や春香に任せきりだったからな。
結局俺は雪歩の男性恐怖症を言い訳にして、面倒事を放り投げてただけだったのかもしれない。
褒めるだの何だの言っても、結局それも上っ面だけの話だ。
弱点を克服する結果だけを求めて、本当に雪歩に必要なものが何なのかすら考えていなかった。
P「…真がいない今くらいは俺が見守っててやるさ。この旅行はお前達のためのものなんだからな」
今の俺に出来ることはこれくらいしかない。
それが無性に情けなく思えた。
235 :
雪歩が落ち着いた頃には海辺の日も暮れ始め、そろそろ夕食の支度に取り掛からなければならない時間になっていた。
ちなみにアイドル達のリクエストにより今日の夕食は砂浜でバーベキューとなっているのだが…。
P「材料と飲み物が足りない?」
器具一式は海の家でレンタルできるが、流石に食材と飲み物は自前で用意しなければならない。
人数が人数だし、十分過ぎるほど用意したはずなのだが…。
小鳥「それがその…荷物の一部を事務所に置いてきちゃったみたいで♪」テヘペロッ
P「…」
朝に言った俺の言葉を返して欲しい。
流石に可愛いだけじゃ誤魔化せないこともあるんですよ、音無さん。
236 :
P「仕方無い、歩いていける距離にスーパーがあったから買ってくるか…」
律子「え、プロデューサーさん一人で行くんですか?」
P「別に問題無いだろ」
律子「結構な荷物になりますし、何なら私も一緒に…」
P「お前まで一緒に来たら誰がこいつらの面倒を見るんだ」
音無さん一人じゃ心許ないし、まとめ役がいなけりゃ準備も進まないだろうしな。
流石にまだ遊んでるアイドルを連れて行くのは気が引けるし…。
P「そういうわけだから行ってくる…」
雪歩「あ、あの!」
P「ん?」
雪歩から自己主張とは珍しいな。
何か買ってきて欲しいものでもあるのだろうか。
雪歩「ええと、その…私が一緒に行ってもいいですか?」
237 :
雪歩「…」
P「(…どうしてこうなった)」
雪歩の発言はあの場に居合わせた俺と律子と音無さんを驚嘆させるのに十分過ぎる破壊力を持っていた。
…そりゃそうだろう。
何しろあの雪歩が、『自分から』『男である俺と』『一緒に行動する』という意思表示をしたのだからな。
呆気に取られていたところ、気付いたら音無さんに促されるまま一緒に行くことになっていたわけだが…。
P「(…気まずい)」
既に歩き始めて十数分経つというのに、お互いに口を開かないのでずっと沈黙が続いている。
とは言え不用意な発言をすればどんな地雷を踏むか分かったもんじゃないからな…。
P「(どうすべきか…)」
雪歩「…あの、プロデューサー」
238 :
俺の後ろを歩きながら雪歩が静かに口を開いた。
P「何だ?」
俺もあえて歩みを止めずに、一定の距離を保ったまま返答する。
雪歩「さっきは、その、ありがとうございました…」
P「ん?…ああ、気にするな。大したことはしてない」
結局、穴の近くで見守ってただけだからな。
いくら考えても気の利いた言葉は思い浮かばず、慰めてやることも励ましてやることも俺には出来なかった。
雪歩「それでも、嬉しかったです。プロデューサーが助けに来てくれて…」
P「…」
雪歩「私、ダメダメなんです。いつも真ちゃん達に頼ってばっかりで…」
P「…」
239 :
雪歩「プロデューサーとはやっとお話しできるようになってきましたけど、それでもまだ少し怖いですし…」
P「…」
雪歩「いつまで経っても臆病で、弱虫で…」
P「…」
雪歩「私、そんな自分を変えたくてアイドルになったんです。でも中々変われなくて…」
P「…」
雪歩「それで皆にいつも迷惑を、かけて…こ、こんな、私、なんて…」ヒック
P「…別にいいんじゃないか?」
雪歩「え…?」グスッ
240 :
P「…自分を追い詰めてまで無理に変わろうとしなくていいんじゃないか?」
雪歩「でも…」
P「…心配性なのも臆病なのも男が苦手なのも、全部ひっくるめてお前の"個性"なんだからな」
雪歩「…個性、ですか?」
P「誰にだって良いところもあれば悪いところもある。それで他人に迷惑をかけるのも時には仕方無い話さ」
雪歩「…」
P「結局は考え方次第だったりもするしな。心配性なのは慎重ってことでもあるし、自分に自信が持てないってのも、裏を返せば他人に迷惑をかけたくないって気持ちからきてるのかもしれない」
241 = 34 :
P「苦手なものに関してはそれこそ誰にでもあるさ」
雪歩「…プロデューサーにもあるんですか?」
P「くr…音無さんだな」
雪歩「ふふっ…音無さんが聞いたら落ち込んじゃいますよ?」
危うく黒井社長の名前を出すところだったが、最近はどちらかというと音無さんの方が苦手になってきてるからな。
もちろん本人の前では断じて言えないが。
P「まあとにかく、俺だってお前の長所くらいは把握してるつもりだ。こういう内緒の話でもお前相手なら安心して言えるし、何だかんだで意外と根性があるし…お前が事務所で入れくれるお茶も…その、旨いと思ってるしな」
雪歩「あ、ありがとうございますぅ…」
…何故だろう。
さっきまでは平気だったが、急に他人を褒めるのが気恥ずかしくなってきた気がする。
思い返すと俺はとんでもないことを言ってきたんじゃないだろうか…。
242 :
P「まあ、何だ…慌てていきなり変わろうとしなくても、ゆっくり自分のペースで進めばいいってことだ」
雪歩「ゆっくり、自分のペースで…」
P「その間のフォローはプロデューサーである俺の役目だからな。ちゃんと見守っててやるさ」
雪歩「プロデューサー…」
安閑とし過ぎてる気もするが…今のところはそれでいいか。
雪歩が今の自分の心情を素直に言葉にしてくれたから、俺も答えることができたんだからな。
結局、深く考えるだけ時間の無駄だったというわけだ。
…律子の言うとおり、たまには思いに任せて話すのも悪くない、か。
243 = 34 :
買出しから帰ってくるとすっかりバーベキューの用意が出来ていて、後はもう食材を焼くだけとなっていた。
小鳥「お疲れ様ですプロデューサーさん♪」
…この人はまるで全てお見通しと言わんばかりにご機嫌だ。
こういうところも含めて、やはり俺は音無さんが苦手なようである。
美希「も~、ハニー酷いの!ミキを置いてくなんて!」プンプン
P「…とりあえずおにぎり買ってきたからこれで我慢してろ」
美希「流石ミキのハニーなのっ!」
…こいつはこいつで相変わらず分かりやすい性格だな。
律子「それじゃ始めましょうか」
やよい「うっうー!お肉が一杯ですー!」
真「もうお腹ペコペコだよ」
真美「早く焼こーよー」
244 = 34 :
亜美「兄ちゃん肉とってー」
P「はいはい…」
焼けども焼けども追いつかず。
全く、成長期とは言えよく食べるな。
野菜もバランスよく食べろ…なんて母親みたいなことを言う気はないが、体型の維持はアイドルとして最低限やっておいてほしいものだ。
春香「プロデューサーさん、代わりましょうか?」
P「大丈夫だ。気にするな」
春香は春香で相変わらず他人の世話を焼きたがるようだ。
…だがこれもこいつの"個性"ってことなんだよな。
春香「でもプロデューサーさん全然食べてないですし…」
245 = 34 :
春香「ええと、はいどうぞ♪」
P「…」
そう言って箸で掴んだ肉を俺の口元まで持ってくる。
…やりたいことは分かるが、流石にそれは無理だ。
俺だって人並みの羞恥心くらいは持ち合わせているからな。
美希「あ~ん」パクッ
春香「あっ!?」
美希「モグモグ。春香、それはミキの役目なの。はいハニー、あ~ん」
…一瞬美希GJと思った俺の気持ちを返してくれ。
全く、揃いも揃って恥知らずな奴等だ。
雪歩「プ、プロデューサー!」
246 = 34 :
P「ん?雪歩も何か取って欲しいものが…」
雪歩「あ、あーん!」
P「あ…むぐっ!!」
声に呼ばれて振り返ったら、いきなり口に焼きたての肉を突っ込まれた。
P「あっちぃ!」ハフハフ
亜美「あのゆきぴょんが…!?」
美希「これはとんだ伏兵なの」
雪歩「ああ!?ごめんなさいごめんなさい!!こんな私なんて…」
P「ひょっと待て!」
スコップを取り出して穴掘りの準備を始める雪歩を慌てて静止する。
どうでもいいが、こいつはいつもどこからスコップを取り出してるんだ?
雪歩「穴掘って…?」
247 :
P「…ふー」
口の中の肉を飲み込み、水を一口。
まったく、下手すれば火傷するところだが…。
P「…美味かったぞ、ありがとな」
雪歩「…!」カアアッ
ここは素直に礼を言っておこう。
双子ならまだしも雪歩は純粋な気遣いからの行動だろうしな。
…かなり突拍子も無いが。
美希「もおっ!浮気は許さないの!」
P「お前は浮気の意味をしっかり辞書で調べて来い」
美希「雪歩も、ハニーを取っちゃヤなの!」
雪歩「ご、ごめんなさいぃ…(…でも)」
雪歩「(…プロデューサーの言うとおり、私も一歩ずつ自分のペースで変わっていけるように頑張ります。今みたいに失敗しちゃうかもしれないですけど…これからも、私のこと見守っててくださいね)」
続く。
248 :
一先ずお疲れ様、でいいのかな?
いつも楽しみに待ってます
249 :
おつー
長時間に渡る投下、僕は敬意を表する!
250 :
おつ
今回も楽しませてもらったぜ
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