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    元スレ美琴「ねぇ、今のキス…もう一回…」

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    タグ : - とある魔術の禁書目録 + - デスノート + - 上条当麻 + - 上琴 + - 御坂美琴 + - 美琴 + - 黒子 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    52 :




    「…べつに話していただかなくてもいいのですけれど、」

    白井はぼそぼそっと小さな声で、そう呟いた。


    何をきかれるのかドキドキしながら、美琴はゲコ太タオルを
    とるためにそろそろと腰をおろしてタオルを掴む。


    「もう随分と、あの類人猿と連絡をとっていないようですわね」

    少し前までは、「たまにはアイツから連絡してこい!」とか「あのバカまだ返事を返さないつもりかしら!」
    なんてことを(黒子がいても気にせず)部屋でイライラ口調で愚痴てみたり、
    携帯を開いてはニヤニヤ、ニヤニヤと(黒子からすればいじりようの無い)
    おのろけ顔全開のお姉様の様子に鳥肌をたてていたものだ。


    そう、それがここ最近全くない…具体的に言えば一週間。

    あの類人猿との関わりが一時的なものであれ、
    今は断たれていることは安易に察することができた。


    「えっ…あ、あー、そういえば、そうかもねー…
    ま、まぁ特に連絡とる必要も無いし…べつに…なにも…」

    美琴は、なんとも言えない言い訳っぽい返事を返した。

    美琴の答えなんてはなっから、聞く気がなかったように
    白井はそのまま言葉を続ける。



    53 = 1 :




    「お姉様のそのおかしな様子は、あの類人猿が原因なのでしょう」


    「うっ!」


    「何があったかは知りませんが……お姉様はあの類人猿に
    連絡を取ら無いようにした。けれど、思いの外、
    相手も連絡して来ず、半分意地になってしまい、お姉様は素直に連絡がとれなくなった……」

    「……、」


    美琴は何か言いたげに、唇を開こうとしたが湿ったゲコ太を
    ギュッと握りしめただけだった。

    「……会いたいのに会えない、その欲求の果てには
    夢にまであの類人猿が出てきてしまう始末………と、いったところでしょうか」

    「っ!!!?そんなわけ……っ」

    「まぁ、なぁんの証拠もない黒子の考えですわ。
    聞き流してくださって結構ですので」



    「……アンタ、」


    証拠はないと言いながら確信を得ている話し方だった。
    何をどこまで気づかれているのか、美琴は怪訝そうな目を白井に向ける。

    何があったとか、夢の内容とか…肝心なところまでは掴まれてはいないようだが、
    自分の心情まで悟られてしまい美琴は顔を紅潮させた。




    54 = 1 :




    「おほほ、そんな顔なさらないでお姉様。
    (またあの類人猿への殺意がわいてしまいますわ~)」

    白井はスカートの下、太ももにいつものホルダーを装備した。
    金属矢が白井の思いを感じ取ったようにギラついている。


    そろそろ時間なので、と言ってカバンを持った白井は美琴の目の前までくると……。

    何か言いたげに、美琴にその瞳を向けてきた。

    今度は何やら言いにくそうに口の中で言葉をもごもごさせながら。



    「…まぁ…わたくし、あの方なら……大丈夫だと、思いますわ」

    本当なら言いたくない言葉を振り絞るように唇を開いたものだから、
    言葉がどうにも小間切れ気味だ。

    「え」

    「お姉様のこと、大切にしてくださる……殿方ですし……
    わたくしも…上条さんのことは信頼しております」

    白井からの思わぬ言葉に驚く。

    美琴は目の前、少し視線の高さが違う彼女をそっと見つめていた。




    55 = 1 :




    見上げるように、瞳を向けた白井は美琴の頬につんと
    人差し指をつきつけた。

    「んっ!?」


    「お姉様から連絡をとってみてはいかがですか?
    待つばかりなんて、お姉様には似合いませんもの」

    美琴が一歩踏み出せないでいるのを後押しするように
    白井は優しい笑顔を向けた。


    「……別に、意地になって連絡してないわけじゃ、……ないわよ」

    美琴は頬に当てられた白井の指先をそっとのけた。

    「今日あたり、連絡しようと思ってたところ」

    そして、白井の頭に自分の手を置いて、ゆっくりと動かす…まるで猫でも撫でるみたいに。



    重くなってた心がほんの少しだが軽くなった……そんな気がした。


    黒子のおかげね、とそんな風に思いながら美琴はふっと笑みを浮かべた。


    「ありがと、黒子」


    「お姉様らしくそうやって笑っていてくださると、わたくしも幸せですわ」


    ―――今にも飛び付いて、お姉様の胸元で思いっきり甘えたいですが………



    ―――こうやって頭を撫でられるのも……悪くないですわ



    本当の猫みたい。
    愛しい人に触れられて満たされていく心に白井は、
    その満たされていく感覚を噛みしめるようにそっと瞳を閉じていた。




    56 :

    黒子は本当にいい女だよな

    57 :

    黒子すてき

    58 = 1 :




    白井がジャッジメントの仕事に行くのをお風呂あがりの服装のまま見送った。



    美琴は一人になった部屋で携帯電話を睨みつけていた。



    ディスプレイには、メール画面。

    宛先設定は、“上条当麻”。


    「…で、なに?“久しぶりーっ!”とかいきなりはっちゃけちゃうわけ…?」



    はぁっ…と美琴は短くため息をついた。

    “会いたい”ただその気持ちを伝えられたらいいだけなのに。

    メールが返ってこなかったら、会うことを断られたら……
    ついつい浮かぶマイナス思考。



    ―――あぁ!だめ!らしくない考えはやめる!

    白井の言うとおり、待つばかりは自分に似合わない。
    何とか行動を起こそうと宛先設定まで、頑張ってみたが
    その先をどうすれば良いのか分からず、一文字打ってはクリアボタンの繰り返し。

    ついに、美琴はピタリと動きを止めてしまった。


    どうしたらいいか分からなくなったから……だけじゃない。

    自分の思いを打ちこもうとするたび…



    ――――――あの出来事を思い出す



    「………アイツと、」

    美琴はそっと唇に触れた。
    忘れられない感触を思い返す。



    ―――…アイツのここと、私のここ…触れてた……



    そう、唇を重ねた。

    本当なら美琴だって飛び跳ねて喜びたい。


    けど、そうもいかない理由があるのだ。

    「………」

    触れた唇の感触とともに、その時の出来事が鮮明に思い起こされる。





    59 = 1 :




    ―☆――――
    ―――――――――
    ―――――★――………



    「あ゛あぁー!もうっ!なんで、こう動かないのよ」

    ゲームのコントローラーを高く持ち上げ、投げるんじゃないかって勢いで、
    ゲームオーバーを知らせる画面にむかって美琴は声をあげた。

    そんな、彼女の隣に座った上条は遠慮がちに美琴にむかって手を伸ばす。

    「み、御坂さ~ん。ゲームに夢中なのも分かるのですが、漏電だけは勘弁ね」

    美琴の苛立ちを治めるように頭にぽんぽんっと二回触れた。

    体をピクリと反応させた美琴は、そろっと上条の方に顔を向ける。

    「ん、どうした?」

    「っ!」

    彼のふにゃっとした、柔らかく笑う顔に胸が高鳴る。

    言ってやらないが、すごく好きな顔。
    何かに締め付けられるように美琴の胸はきゅうっとなった。


    ―――な、なにそんな顔して笑ってんのよ!意味わかんない!


    「なんだよ、その半笑い……気味悪いぞ」

    「ッ!?……う、ううっう、うっうるさいっ!笑ってないわよ!」

    こちらに目を向けたかと思えばすぐに視線をそらしてしまったニヤニヤ半笑いの美琴に
    心底分からないといった表情の上条だった。



    60 = 1 :




    美琴は手にしていたコントローラーを置いてゲームのスイッチを切っていた。


    「あれ、もうゲームやめんの?」

    「うん」

    今日は天気も悪いからということで、上条宅でお家デートということになった。

    入った瞬間、話題にも困って美琴は真っ先にゲームに食いつき、
    かれこれ一時間ほどゲームをやりこんでしまう。


    上条は美琴の隣に座ってゲームの実況中継でもするように
    「今だ!そう!そこで必殺技をな…」、「ちげーよ、それじゃねえって」
    なんて言いながら、笑って美琴がゲームをしている様子を見ていた。

    うん、なんだかとても楽しそうに。
    もちろん、美琴もなんでもない二人で居るこの時間が楽しかった。

    こんなはずじゃなかったのに!なんて後悔はずっと付きまとってはいたが。




    ……そんな楽しかった雰囲気はどこに消えたか。

    美琴がゲームのスイッチを切った途端に、空気が変わってしまった。



    「……」
    「……」

    はじめての彼の家、二人きり。

    美琴だって意識しないわけじゃない。


    何かあるかも知れない、彼もそういうつもりなのかも知れない。

    考えるほど緊張して、手の汗を握って、速くなる鼓動をなんとかできないものかと考えていた。




    61 = 1 :






    ―――あれ?何ですか、この空気……



    なぜか、美琴も俯いてうんともすんとも言わなくて
    部屋は…しんっと静まり返っていた。


    「あー…何か飲むか?っても何もねーから下の自販機いってくるけど」

    上条はこの空気をなんとかしようと、何がいい?と、
    美琴にたずねながら立ち上がった。


    「あ、ちょっ…私も行くっ」


    美琴は上条に追いつこうと勢いよく立ちあがる。

    ずっと座っていたせいか立ち眩んで、美琴はバランスを崩した。

    「ぅあ、」

    その足元が一瞬くらっと揺らいだ。
    少し体がぐらついただけで美琴はうまくバランスを取り戻すことができたのだが…

    「おい、御坂っ」


    上条が余計なことに、美琴の体に向かって手をのばそうとした。

    そして、同時に己の不幸の力を発揮して、コントローラーを踏みつける。

    「いでっ!!!」

    「なっ、ちょっ…!」

    思った以上の痛みに、上条は立っているバランスを
    一気に持って行かれてしまった……




    ―――――バタンッとベッドに着地。


    二人分の体重を受け止めたシングルベッドはギシィっと悲鳴みたいな音を上げた。



    うまいこと乗りかかったのか、二人とも大した痛みはない。



    ただ、着地の仕方がまずかった―――――。



    62 = 1 :


    ここまで。
    また明日来ます。


    美琴さん早く上条さんに連絡とってください。
    ただのらぶらぶいちゃいちゃ書きたかったのに何か変な流れ……


    ミコっちゃん、まじハァハァなんですけど。
    なんであんな可愛いの?上条さんとわんわん、にゃんにゃんするといい


    63 :

    乙!

    この二人の不器用さと初さがたまらん、ニヤニヤする

    64 :

    初心ですなあ
    でもそこが良いんだけどねおつおつ

    65 :

    乙ー
    ここからどんな風にいちゃいちゃ展開になっていくのか楽しみ

    68 :

    初心で不器用な上琴がドストライクすぎて困る
    超乙

    71 :





    「ふにゃっ!」


    「……ってぇ」

    美琴の体の上に、上条の体が重なっていた。

    何がどうなったのか、とにかく今までに無いくらい
    自分の体が彼の体に触れている。


    自分の状態を正しく理解しきれず、美琴の頭の中は混乱していた。



    ―――あ、や、どっどうしよ…!!!!
    あああ、コイツの…いい匂い…~って違う、そうじゃなくて!
    な、私…どう…な…っ…ぇぇッ!?




    「あ、う…ぁ…」


    「うわ、ごめんっ!!!痛いとこねーか!?」

    美琴の苦しげな声に気づき、上条は慌てて、ガバッと顔をあげた。


    「あ…」



    「あ」





    肘だけついて顔を上げたものだから、距離が近い。

    鼻先がつんと当たってしまうんじゃないかというくらいに。



    至近距離で視線が交わったままの二人は、お互い頭の中で
    この状況について考えているようだった。



    ―――これって…なんか、なんかっ!!


    もしかしたら起こるかも知れない先のことを想像して
    頬をじわじわ赤くさせる美琴。


    一方で、上条は離れねぇと……と考えつつこの距離で
    視界に入ってくる美琴の姿に……つい、まじまじと見入ってしまう。




    72 = 1 :




    離れようと判断をくだすべきだったが、上条の思考はそれを後回しにしたようだ。


    ―――おぉ、なんかいい匂いするな~……なに、この安心感……


    とか。


    ―――睫毛長ぇー……へぇ、けっこう瞳って茶色なんだなぁー……



    とか。


    上条はどこかぽーっとする頭の中でそんなことを考えていた。



    ――――ちょ、ちょっと…これは本当に…




    ――――いやいや、しかし、これは…かなり…




    とにかく、二人ともが思ったことは……



    ――――唇が、近い――――



    ほぼ同時に互いにゴクリと息を飲み込んだ。


    上条の下で身動きの取れない美琴は頬を染め、
    緊張からか瞳をうっすら濡らしていた。
    そんな弱々しい雰囲気は上条の何かをチクリと刺激する。


    相手の瞳の中にいる自分が見えるくらいに、互いにその瞳を覗き込む。
    近すぎて逃げ場の無い二人の瞳がしっかりと交わった。


    ドキッとして、上条の体に一瞬、力がこもって少し揺れた。

    小さな振動に、美琴がビクッと肩を震わせる。



    ―――え、あ、なに…私、どう…した………ら…


    美琴は瞳を合わせているのに耐えきれなくなったのか、
    逃げ場のない瞳をそっと閉じた。




    73 = 1 :




    「!?」


    ―――ちょっとちょっと、御坂さんってば…
    いや、俺もダメだろ…ふ、雰囲気に流されすぎ…



    美琴が瞳を閉じたのは、まるで何かのサインみたいで。


    ―――ちくしょ…っなんだよ、この気持ち…


    自分自身にも、隠そうとしていた思いが溢れそうになった。



    ―――もっと触れたい……


    ―――いや、だめだだめだ!コイツはそんなつもりじゃねーだろうし……



    なんて、考えてもみたがその考えは一瞬で消えてしまった。


    閉じた、瞳。

    赤く上気した、頬。

    やわらかい、唇。



    『………すき』


    その唇から、そう言われたのだ。



    なぜだか、美琴が言った言葉が頭の中でこだましていた。


    『…アンタのことが……』


    荒くなる呼吸を隠すように小さく小刻みに息をするたび、
    美琴の小さな胸元が上下している。


    『……すきなの』


    「………」


    もしかしたら、美琴も同じことを考えてるんじゃないか…上条はそう思った。

    『……大好きなの』


    ―――触れたいって、そう……思ってもいいんだよ…な?





    74 = 1 :




    「…美琴」


    ―――へっ!?
    今、美琴って…呼ばれ……


    思わず、閉じた瞳を開けそうになったが何かが近づく気配に
    すぐに瞳をぐっと閉じ直す。


    ゆっくりゆっくり、上条と自分の間にできた小さな空間が
    揺らいでいくのが分かった。


    美琴は、思わず息を止めた。


    揺らいだ空気に混じって、


    熱い体温が、柔らかな感触が……――――



    「…んっ」

    ちゅっと唇が触れた。


    ―――う、あ、キス……これ……っ




    心臓が跳ねて、飛び出しそうだった。

    自分が理想的に描いていたファーストキスとは随分と違っていた。

    けれど、なぜたが分からないこの満たされる気持ちに
    頭の中はまだ混乱しつつも特別なことに美琴は嬉しくて仕方がなかった。

    「…はぁ」

    上条が顔を上げて、ほんの数センチ唇が離れた。

    美琴はうっすらと瞳をあけて、上条の姿を確認する。


    ぼやっと、はっきり見えないが今触れたであろう上条の唇が目に入った。



    ―――もっと、キスしたいかも



    彼の唇の感触をもう一度確かめてみたい…なんて、
    美琴はそんなことを考えていた。



    今の幸せな感触を、もっと確かなものにしたかった。



    75 :

    これだけ。




    ………初々しさの中に多少なりとも、アレな感じはあるかもです…


    >>66
    ミコっちゃーん(笑)
    こんなのあるんですね、ありがとうございます
    超楽しい気持ちになりました
    で、ミコっちゃんはどこにいるのですか?

    76 :

    ミコっちゃんなら上条さんの隣にいるよ
    おつおつ

    78 :

    乙なんだよ!

    79 :

    みこみこみこみこ
    ミコっちゃーーーーん!!!

    80 :

    乙すぎるぜい

    86 :





    すると突然、上条の手が頬をギュッとつかんできて美琴は目を丸くした。





    ――――へっ




    何だろうなんて、考える間もなくて。


    「…っ…ふっ…ぁ」

    やや強引に上条の手で顔を拘束されたまま、再び唇を重ねられた。


    美琴自身も、望んだ二回目のキス……



    ……の、はずだった。



    (え、な…)


    けれど、先ほどとは違う。



    「みこ……」
    「んっ……ん、あ…っ」

    重ねるだけじゃなくて、上条の唇は美琴を違った形で求めてきていた。

    「んぁっ…っん…んんっ」

    唇を唇で覆って、ついばむように何度も触れてくる。


    (…ちょっ…なん…これ、…や)


    ちゅっと唇を重ねた時の幸せはそこになかった。

    唇を固く閉じて、首をすぼませた美琴は小さく抵抗する。

    けれど、上条の手に捕らえられているためにうまくその唇から逃れられない。

    何だか分からない感情がこみ上げてくる。

    胸が熱くて、苦しい。


    自分の知らない感覚に支配されそうで、熱くなる身体とは逆に
    心はヒヤリと温度をさげていった。



    87 = 1 :




    「んっ…んんー!!」

    小さく抵抗を見せても、閉じた唇を舌を使って無理やり開けようとしてくる上条に
    美琴は急にぞくっと背中から身の毛がよだつ感覚におそわれた。




    ―――…あれ…なんで、私…


    「ん…ぁ…」


    唇を舌でなぞりながらまた噛みつくように上条は迫ってくる。


    ―――…今、コイツのこと



    「は…っ…はぁ」
    「…っぁ」

    呼吸を整えるためか、上条の唇が少し浮いた。
    美琴は、瞳を開いて彼の姿を確認する。




    ――――…こわいって、思ったの…?――――





    「美琴…」

    やだ、そんな風に名前呼ばないでよ。



    聞き慣れたはずの声には、何かを求める色が含まれているように聞こえた。

    鼓動が早くなる。

    なんとも言えない不安に美琴は押しつぶされそうになった。


    ――――キスより先のことぐらい知ってる……



    「…っ」



    美琴は息を飲み込んだ。


    上条の手が頬を離れ、その指が美琴の髪をすいていく。


    彼の目には、自分の姿が見えてないんじゃないか、そう思わされるくらい
    上条の瞳には鏡みたいに自分が、ただ“映っている”だけだった。


    合わさる視線が、交わらない。



    88 :

    あれ…続きは…?

    89 = 1 :




    視線のゆく先が変わった、上条の目がふいに落とされる。


    彼の表情が見えなくなった。


    「ーーー…ッ!」

    美琴の首筋に向かって上条が顔をうずめるように近づいてきた。
    熱い息が吹きかかったせいで美琴の体が震える。


    震えた理由は、それだけじゃない。

    上条が自分に何かを求めてくることに心が追いつかず、
    不安な思いに駆られたから。


    「…ちょ……っ」

    美琴の肩に上条の右手が触れた。
    不安そうに、体にピタリと寄せられた美琴の腕を上条の手が触れていく。

    胸元の近くを通って、腰のくびれ当たりまでくると、
    その手は美琴のスカートの上に置かれた。

    「…っ!」


    慣れたような彼の行動は、なぜだか普段は忘れている年の差を意識させられた。

    ―――焦っているのは、自分だけで……


    私は子どもで、

    アイツは大人で、


    そんな風に思わされてる気がした…。



    ―――アンタにとって、こうゆうのは……

    平気でできることなの?



    90 = 1 :





    私はアンタとなら、そういうことしたってかまわない。

    したいって、そう思ってる。



    アンタの特別になりたい


    体も、心も、

    アンタを求めてる…―――




    でも、子どもの私が邪魔したのよ……――――――








    「ゃっ……ぃゃ……」

    美琴は小さく呻くような声をこぼす。


    その声すら、彼には届かない。




    「―――……やめてよッ!!!」



    上条は、美琴の叫ぶような声にビクッと体を震わせて顔をあげた。


    「ーーー…っ!?」

    その時になってやっと、上条の目に美琴が映る…
    鏡じゃなくて、しっかりと彼の意志でその姿がとらえられていた。


    美琴の瞳の奥が不安に揺れているのが、上条にもすぐに分かった。


    「……あ」


    ―――…俺、何してんだ……


    好きな人にこんな表情をさせているのは紛れもなく自分だ。



    ―――……なんで、御坂にこんな顔させてんだよ……




    91 = 1 :





    ……言い表せないくらい、上条の表情が一瞬で悲しい色で塗りつぶされる。

    そんな彼の表情に美琴には別の後悔の思いが沸き立っていた。


    ―――アンタにこんな顔させたくなかった…


    自分だって、望んでいたのに。
    それなのに、まるで彼を責めるように拒んでしまった。


    悲しみに沈んだ上条の顔を見て、自分が彼を傷つけてしまったんじゃないか……

    美琴は、そんな風に思ってしまった。



    「…みこ…と……」

    上条がゆっくりと、おきあがり仰向けのままの美琴の隣に腰を落とした。





    「…ごめん………」

    「………」

    美琴は黙ったまま、厳しい視線で天井を見つめる。

    「…ごめん…御坂……」



    繰り返された、言葉に美琴は……―――――――




    「―――――……帰る……っ」




    92 = 1 :




    「……みこ…!」


    引き止めようと思った。
    美琴に向かって伸ばした右手がピタリと止まって
    自身の体の横にストンと落とされた。

    逃げ戻った右手にぐっと力が込められる。


    「―――……な、なーんか、悪いわね…………」


    美琴は鞄を抱え込むと上条に背中を向けたまま、
    なるべくいつもの自分で、いつもの声になるように言った。


    「……今日は……黒子と約束あったから…そろそろ帰ろうと
    …思ってた…のよね…」



    少しでも、上条の気持ちを楽にさせたかった。



    「―――…気にしなくて…いい…から…」

    玄関口でそう言うと、美琴は上条の部屋を後にした。


    「――――――…美琴………」


    最後、扉を閉める前に聞こえた…自分の名前を声に気づかぬふりをして……――――。





    ―――――――――
    ―――――――――――――
    ――――――――――――――――――

    94 :

    おつ!
    寧ろこういうの好きよ
    重苦しい雰囲気が先にあるからこそ、後のいちゃらぶが光るのさ

    95 :

    おつおつ
    ミコっちゃんまで焦らし上手に

    97 :

    乙!
    なんか読んでる俺もこのSSの上条さんみたいな気持ちだわ…
    こんな状態で週末までお預けとか生殺しすぎww


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