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    元スレ上条「……なんでもう布団が干してあるんだ?」C.C「腹が減った。ピザをよこせ」

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    151 = 1 :


    上条「……はい?」


    突如として現れた、銀色の美しい髪を腰まで伸ばし、白い修道服に身を包んだ少女。
    名前をインデックスというらしい。『目次』?偽名だろうか……?
    だが、今はそんな事はどうでもいい。


    インデックス「……あれ?私の日本語、間違ってるかな?」


    そう言う彼女は首を傾げ、上条へと疑問の眼差しを向ける。


    上条「いや、言ってる事はわかりますが……。って、最近このパターン多いな……」


    C.C.といい、ステイルといい、この少女といい、
    何故こうも自分が日本語を理解できていないというような事をまず言うのだろうか?そんなにバカそうですか?
    そもそもいきなり見知らぬ人が現れて、なんかよくわかんない事言われたら、誰だって呆然とするだろ、と心の中でひとりごちる上条。


    インデックス「とにかく、しーつーに会わせて欲しいかも!」

    上条「ああー、いや、そのだな……」


    目の前で、C.C.に会わせろと言うこの少女は何者なのだろうか?
    服装から察するに、あいつらと同じ魔術師なのだろうか?
    上条は色々と考えるが、昨日の『猟犬部隊』の襲撃を考えると、迂闊にC.C.に会わせるのも気が引ける。
    そうして悩んでいると、後ろから声が掛かる。


    152 = 1 :


    C.C.「おい?お前、何をして……ッ!」


    そうして、彼女も玄関に近づいていく。そこで彼女は気づいた。
    今まで上条の背中で見えなかった相手の姿は、自分もよく知る少女のものだということに。


    インデックス「あっ!しーつーだ!」

    C.C.「……インデックス?お前、どうしてここに?」


    何故こんなところにいる?こいつはイギリスにいるはずでは?
    C.C.は首を傾げながらも、彼女に尋ねるが……。


    インデックス「しーつーに会いに来たんだよ!」

    C.C.「会いに来た?何故?どうやって?」


    そもそも、彼女はイギリスからそう簡単に出れる存在ではない。
    彼女の特殊な記憶術、『完全記憶能力』によって、彼女は10万3000冊もの魔道書を記憶する『魔道書図書館』だ。
    故に、その呼び名が『禁書目録』。
    その頭に眠る知識を利用すれば、世界の常識、ルールを作り変える事もできるだろう。


    インデックス「ふふん!それには語り尽くせないほどの壮大なドラマがあるんだよ!」


    そう言って、無い胸を張る彼女。
    上条はそれを横目で見つつ、C.C.にまず尋ねる。


    上条「C.C.の知り合いか?」

    C.C.「ああ、そうだが……」


    さすがのC.C.も随分と歯切れが悪い。
    いまいち状況を掴みきれていないようだ。


    インデックス「それよりも、ずっと歩いてたからお腹が空いたんだよ。何か、お腹一杯食べさせてくれると嬉しいな」ニコッ

    上条「こりゃ、なんつーか……不幸だ……」


    これが、上条とインデックスの最初の出会いだった。



    ―――――――――

    ――――――

    ―――


    153 :

    追いついた

    続き期待してる

    154 = 1 :

    はい、今日はここまでです
    とりあえず、第二章の開始、そしてインデックスの登場です
    明日も来れたら来たいですが、あまり期待しないで下さい……

    いつものように、読んで下さった方がいれば、感想、アドバイスをよろしくお願いします

    それではー

    155 :


    インさんが登場か
    これからどうなるのやら楽しみですな

    C.C.はまだルルーシュのこと引きずってるのかしら?

    156 :



    C.C.にとって、いつまで経ってもルルーシュは大きな存在なんだろうな…

    157 :

    上条さんならピザくらい自作するはず
    チーズは高いけど、それでも宅配よりずっと安い
    あるいはチーズさえも自作して……

    158 :

    そういえば昔、ホッカルが建てたやる夫スレで「他人の記憶に偽の記憶を植え付けるギアス」や「やる夫がコードギアスの世界に行くようです」で「人やものを操るギアス」、「おもいこみをさせるギアス」(うろ覚え)があったけど、この話じゃそういうオリジナルギアスはでないの?

    159 = 157 :

    SS速報でホッカルさんの名前を見るとは思わなかった

    160 :

    せめてインデックスは同居しないであげてくれ、上条さんの懐具合的な意味で。

    161 :

    こんばんわ
    量はあまり多くありませんが、これから投下します

    >>158
    一応、ギアスユーザー候補とオリジナル能力は考えてはいます
    しかし、物語の展開上、出すか出さないか悩んでおりまして…
    とりあえず、今のところ未定ということで…

    それでは投下します

    162 = 1 :


    ステイル「で?これは一体どういうことなんだい?」

    神裂「……」

    インデックス「す、すている、なんかちょっと怖いんだよ……。か、かおりも何か言ってほしいかも……」


    現在、時刻は午前9時。

    あれから、上条、C.C.、インデックスの三人は軽い自己紹介を済ませ、まず朝食の代わりに、
    一応は上条の非常食であるクラッカーを別け合って食べた。
    その際、こんなものが朝食だと?私を舐めているのか?とC.C.が文句を言えば、
    ううー、こんなものじゃ私のお腹は満たされないんだよ!と不満を言うインデックス。
    そんな二人に溜め息をつきながらも、とりあえずインデックスから事情を聞いた。

    それによると、まず彼女は突如としてイギリスから消えたC.C.を探しに来たということ。
    彼女は元々、『聖ジョージ大聖堂』というところにいたらしいが、ある日を境に、同じようによくそこにいたはずのC.C.の姿を見なくなった。それを不思議に思っていたら、今度は自分の世話係、といっても本来は自分の監視役だが、自身は友達と思っているステイル=マグヌスと、
    そしてよく遊びに来てくれる親友、神裂火織もイギリスから離れていることを代わりの世話係から聞いた。
    次々といなくなる自身の友達の行方が気になり、不安になった彼女は、こっそりと調査し始めた。
    幸い、彼女はその性格故に、イギリス清教内でも数多くの知り合いがいる。
    色々と聞き回った結果、彼らはとある『機密』を調査、回収しに行ったということ。
    インデックスは、C.C.がイギリス清教の『機密』であることを知っている数少ない人間の内の一人だ。ステイル、神裂もまた同様にだ。
    だから、今回の一連の友人失踪事件は、何らかの理由で失踪したC.C.を、ステイル、神裂の両名が追ったことで起こったのだと確信した。

    そして、それを最大主教ローラ=スチュアートにそれとなく尋ねると、返ってきた答えはイエス。
    彼らは、脱走したC.C.を追って、『学園都市』に向かったらしい。
    彼女には発信機を取り付けてあるから、見失うこともなく、すぐに三人とも帰って来るから何も心配はないと、
    ローラはステイルたちが持つのと同様のその信号受信機を振りながら言うが、インデックスは不安だった。
    には『あの日』が刻々と近づいていたのだから。
    このまま、彼ら三人に会えずに『あの日』を向かえたくはない。


    163 = 1 :


    そこからの彼女の行動は凄まじかった。
    初めに、イギリス清教の自分と親しいシスター達に『学園都市』への行き方を聞き、できれば秘密裏に行かせてほしいとお願いした。
    お願いされた者達は困惑したが、彼女は次第に涙声になり、仕舞いには泣きながら頼み込んできた。
    彼女に涙を見せられて、断れる者はいなかった。
    彼女の代わりに日本の学園都市近くのとある都市行きの飛行機のチケット、ビザを用意し、ある程度のお金と一緒に、彼女に渡した。
    『学園都市』に入るためのIDはさすがに準備はできなかったが、そこは自分でなんとかすると彼女は言って、
    協力してくれた彼女達に、涙を流しながらお礼を言った。
    もし、これがバレれば、下手をすれば彼女達は破門、そうでなくとも大きな罰を受けるはず。
    それを顧みずに、笑いながら協力してくれた彼女達に、心の底から感謝した。
    さらに彼女は、最大主教ローラ=スチュアートが持っていたもう一台の信号受信機を、
    彼女の楽しみである入浴中に探索、発見、これを奪取し、そのまま持ち去った。
    そうして、彼女は『学園都市』に向けて旅立った。

    その話を聞き終えた上条は、なんともすごい少女だ、と率直に思った。
    友達を探しに、色んな危険を冒しながら、ここまで辿り着いたのだ。その行動力は桁外れだろう。
    自分の隣に座るC.C.もさすがに唖然とし、彼女の金色の瞳が驚きの色に染まっていた。
    そして、その話を聞き終えて数分後、ステイルと神裂がやってきて、今に至る。

    上条たちに話したことと同様のことをステイルと神裂にも話すインデックス。話し終えたその直後……。



    バチンッ!



    なんとも痛々しい音が部屋に響いた。


    164 = 1 :


    神裂「……あなたは、あなたは何を考えているのですか!?」

    インデックス「か、かおり……?」


    その音は、神裂がインデックスの頬を打った音だった。
    そして、神裂は声を荒げてインデックスに語る。


    神裂「あなたは自分の立場がわかっているのですか!?あなたは多くの魔術師などからその身を狙われる存在なんですよ!?
       もしも、もしも襲撃でもされ、大事になったらどうするつもりだったのですか!?」

    インデックス「それでも!それでも、私はしーつーに!かおりに、すているに会いたかったんだよ!
           ……私には、私にはもう時間がないから……。最後に、三人に会えないままなんて嫌だったんだよ!」


    そう悲痛な声で叫ぶインデックスの目から、大粒の涙が零れた。


    上条(時間がない……?)


    一体どういうことだろう、と上条は思ったが、続く神裂の言葉にそれは掻き消された。


    神裂「だとしても!そうだとしても!もし、あなたの身に何かあったら、私はどうすればいいんですか!?
       親友であるあなたが、私の手の届かないところに行ってしまったら!私は!私はッ!」


    そう訴える神裂の目にも僅かに涙が滲む。


    インデックス「かおり、かおりぃ……」

    神裂「インデックス……」


    そうして二人は抱き締め合う。互いの無事と再会に歓喜して。
    互いの言葉は、互いの涙は、互いが想い合えばこそのもの。
    二人の絆は形ある、そして美しい、確かなものなのだろう。



    ―――――――――

    ――――――

    ―――


    165 = 1 :


    神裂「お見苦しい所を見せてしまいましたね……」


    数分後、落ち着きを取り戻した神裂はまず上条たちに詫びた。


    上条「いや、そんなことないさ。ほんとに仲良いんだな」


    上条は先ほどの二人の様子を見て、ある種の感動にも似た気持ちを抱いていた。
    ここまでお互いを心配できる関係など、そう簡単には作れないだろう。
    さらに横目で見れば、脇でステイルが甲斐甲斐しくインデックスの世話を焼いている。
    彼もまた、彼女と強い絆で結ばれているのだろうと上条は思った。
    この時点で、上条の心にあった魔術師達への疑念、疑惑の感情は綺麗に氷解していたのだった。


    C.C.「ふふふ、ここまでくると、ある種の依存にも見えるがな」

    神裂「べ、別に彼女に依存しているわけでは……」

    C.C.「ほう?だが、そんな赤い眼で言われても、説得力がないな」ニヤニヤ

    神裂「ッ!……べ、別に良いではありませんか!大切な親友なんですから!」

    C.C.「そうだな。久しぶりにお前の泣き顔も見れたからな」フフフ

    神裂「ぐっ!貴女という人は……」


    からかうC.C.。それに翻弄される神裂。
    その会話に、上条は、やれやれ、と言いながら入った。


    上条「まぁ、いいことじゃないか。お互いに心配してのものだしさ。
       歳もけっこう離れてるみたいだし、神裂から言わせれば、妹か子供を見るような心境なんだろ?」


    上条がそう言ったその瞬間、部屋の空気が一気に凍りついた。


    166 = 1 :


    ビタリと動きを止めるステイル。目を大きく見開いて固まるインデックス。何やらニヤニヤと笑うC.C.。
    ……そして、俯いて肩を震わせている神裂。


    上条「……あれ?俺、なんかマズイこと言った?」


    上条がそう疑問の声を漏らすと、俯いている神裂が僅かに声を震わせながら尋ねてきた。


    神裂「……あなたは、あなたは私が何歳に見えているのですか?」

    上条「えっ?」

    神裂「ですから、私が何歳くらいに見えるのですか、と聞いているのです」

    上条「いや、ええーと、その……」

    神裂「早く答えなさい」

    上条「は、はい!」


    口調こそ丁寧なものの、普段の物腰柔らかそうな態度とは打って変わって、有無を言わさぬ様子で尋ねてくる神裂。
    上条は背筋が凍る思いをしたが、ここで下手な嘘をつけば、何をされるかわからないと思い、素直に自分の思うままを告げた。


    167 = 1 :


    上条「ええーと、俺の倍くらい?」

    神裂「私は18です」

    上条「…………………………は?」グリグリ

    神裂「何故そこで信じられない顔をするのです?その耳掃除のジェスチャーは何ですか?」


    上条は耳を疑った。
    この目の前の女が18歳、だと?


    上条「……うっそだぁ!そりゃいくらなんでもサバ読みすぎだろー。
       お前、どう考えたって結婚適齢期過ぎちゃってるようにしか見えなひいいぃぃぃっ!?」


    言い終わる前に、超高速の神裂のパンチが上条の顔面のすぐ横を突き抜けた。
    身構えることすらできず、ぶるぶると震える上条に、神裂はいつも通りの平静な顔のまま言う。


    神裂「18です」

    上条「18ですよね!女子学生なのに攻略可能なアダルティ!神裂センパーイ!」


    がちがちと歯を鳴らしながら必死に笑顔を作る上条に、神裂はものすごく疲れたような溜め息をついて、その拳を引っ込めたのだった。



    ―――――――――

    ――――――

    ―――


    168 = 1 :


    年齢詐称騒ぎがひと段落して、上条は先ほど自分が疑問に思ったことをふと尋ねた。


    上条「そういえばさ、さっきインデックスが言ってたけど、もう時間がないってどういう意味なんだ?」


    上条のその問いかけに、またも室内は沈黙に包まれる。
    しかし、今回のそれは、とても重く、暗い空気を纏ったものであった。


    上条「ど、どうしたんだよ……?」


    上条は再度、彼らに尋ねる。
    そして、その問いかけに、ステイルが不機嫌さを滲ませながら言った。


    ステイル「上条当麻、君は何か勘違いしていないかい?僕らは君の仲間でもなんでもない。
         確かにC.C.の件では一時的な協力関係を結んだが、あくまでもその件だけだ。
         それ以外のことは、一切こちらの事情に首を突っ込まないでほしいね」

    上条「な、なんだよ、いきなり……」


    突如として、その態度を硬化させるステイルに困惑する上条。
    確かに、彼の言うことはわかる。
    しかし、彼の言葉は自分を遠ざけるというより、何かへの苛立ちをぶつけているように思える。
    そのように考えていると、今度は神裂が声を掛けてきた。


    169 = 1 :


    神裂「……上条当麻。今回のC.C.の件では、あなたに大きな借りができてしまいました。
       本当に感謝しています。私個人としても、今後、何らかの形で受けた恩を返したいと思っています。
       ……ですが、これ以上、私達イギリス清教の、『必要悪の教会』の内部事情に関わらないほうがいいでしょう。
       これは、あなたの身のためでもあります」

    上条「俺の、身のため?」

    神裂「はい。私達『必要悪の協会』には、敵対魔術結社、及び敵対魔術師が数多く存在します。
       その私たちと繋がりを持つということは、彼らに狙われる可能性も生じるということです」

    上条「……」

    神裂「さらに、今回、あなたが出会ったC.C.とインデックスは、私達『必要悪の教会』でも機密とされるほど重要な存在なのです。
       彼女たちを狙う輩が、彼女たちと接点を持つあなたを狙わないとは言い切れません。
       だから、あなたはこれ以上、私達に関わってはいけません」


    そう自分に伝える神裂の口調から感じるのは、彼女の善意のみ。
    彼女は本当に、自分の身を案じてこう言ってくれているのだろう。
    ……だが。


    上条「……神裂、お前がそう言って俺を心配してくれんのは嬉しいよ。ありがとな。
       ……でもさ、俺は目の前で困っている人を黙って見過ごせるような人間じゃないんだよ。
       もし、インデックスが何か大きな問題を抱えているのなら、それを取り除く手伝いをしたいんだよ。ただ、それだけだ。
       例え、自分に危険が降りかかろうともさ」


    僅かに笑いながらそう告げる上条のその言葉に目を丸くし、唖然とする神裂。
    この少年は、他者を救うためならその身を顧みないのか?会ったばかりの赤の他人の為に、その命を賭けるというのか?
    自分のように『力ある者』ならば話は変わるが、彼は今まで見てきた限り、ただの一般人に過ぎない。
    一体、彼はどういう人間なのだろうか?そう神裂は疑問に思っていると……


    170 = 1 :


    ステイル「おい、いい加減にしろよ、能力者。
         ……君は、彼女の事情を、その身に抱えている絶望を知らないから、そんなことが言えるんだよ」

    上条「だったら、まずその事情を教えてくれよ」

    ステイル「部外者に教えることなど何一つない。これは僕らの問題だ」

    上条「俺はもうこいつらと知り合っちまったんだ。無視は出来ない」


    イライラを募らせるステイルと、断固として退こうとしない上条。
    その二人を物凄く困った顔をして、オロオロと見るインデックス。
    もう取っ組み合いでも起こりそうだという雰囲気になったその時。


    C.C.「その娘は、あと一週間もすれば、全ての記憶を失ってしまうんだよ」


    突如、二人の言い争いに割り込んだ声。
    その言葉を吐いたC.C.は、ヤレヤレといった顔をして、二人を見ている。


    上条「……それ、どういうことだよ?」

    ステイル「C.C.!君は何を!」

    C.C.「いちいち騒ぐな。この男はもうすでに私やお前たちと深く関わっているんだよ。……お前たちが思う以上にな。
       そして、おそらくこれからも関わっていくだろう。なら、前もって事情を知っていた方がいいこともある。
       それに、ここで事情を話したところで一体何が変わる?この男が何かするとでも?」

    ステイル「確かに、そうだが……」


    彼女の言う通りではある。
    インデックスの事情を話したところで、この男には何も出来ないし、無害であるのはほぼ確実だろう。
    だがそれでも、彼女の最大の悩みであり、避けられない悲しい運命を、彼女の前で刺激されるのは我慢できなかった。
    そのステイルの心情を汲み取ったのか、彼女は、インデックスは微笑みながら語る。


    インデックス「すている、私は大丈夫だから……。もう、とうまとけんかしないで?」

    ステイル「……」


    そう言う彼女のその微笑は、どこか悲しげなものだった。
    それを見ながら、上条は幾分か遠慮がちに尋ねる。


    171 = 1 :


    上条「一週間後に記憶を失うって、どういうことだよ……?なんでそんなことがわかんだよ……?」

    C.C.「簡単なことだ。インデックスの記憶を消すのはこいつらだからな」


    そうC.C.が告げると、ステイルと神裂の二人は押し黙り、さっきよりも一層と陰鬱な雰囲気を醸し出す。
    その顔色も青褪めているようにも見える。
    インデックスもそんな二人を見て、口元をぎゅっと引き結んで、何かに耐えているようだ。


    上条「な、なんだって……?な、なんでそんなことするんだよ!」

    C.C.「そうしなければ、この娘は死んでしまうんだよ」

    上条「……は?」


    意味が、わからない。そうしなければ、インデックスが死ぬ?一体、何を言っているんだ?


    C.C.「何を言っているのかわからないといった顔だな。まぁ、当然といえば当然か」

    上条「……どういうことか、説明してくれ」

    C.C.「それを話すのは、私よりこいつらの方が適任だろう。なぁ、神裂火織、ステイル=マグヌス?」


    C.C.が声を掛けた二人を、上条は改めて見る。
    二人はしばし重苦しい沈黙を保ったままだったが、しばらくして、ついにその沈黙を破り、神裂は語り始めた。


    172 :


    神裂「……彼女は、インデックスは、その頭の中に10万3000冊もの『魔道書』を記憶している、『魔道書図書館』なんです」

    上条「魔道書、図書館?」

    神裂「はい。……あなたは、『完全記憶能力』という言葉に聞き覚えはありますか?」

    上条「『完全記憶能力』?」

    神裂「『完全記憶能力』というのは、『一度見たものを一瞬で覚えて、一字一句を永遠に記憶し続ける能力』だそうです。
       簡単に言ってしまえば、人間スキャナのようなものです」


    そう語る神裂のその声はひどく弱々しい。
    そんな神裂に代わり、ステイルが続ける。


    ステイル「……彼女のそれは僕達みたいな魔術でも、君達みたいな超能力でもなく、単なる体質みたいでね。
         それによって、彼女の頭には、大英博物館、ルーブル美術館、バチカン図書館、モン=サン=ミシェル修道院……。
         これら世界各地に封印され持ち出す事のできない『魔道書』を、その目で盗み出し保管しているんだよ。
         ……それ故に、『禁書目録』、『魔道書図書館』などと呼ばれているんだ。
         尤も、彼女自身には魔力を練る力がないから無害ではあるけどね」


    ステイルはそう吐き捨てるように語った。
    ……そして、それに対する上条は言葉を失った。
    『魔道書』?『禁書目録』?『完全記憶能力』?普通はそう簡単に信じられることではない。
    ……しかし、信じないわけにはいかなかった。
    何故なら、それを語る彼らの顔が、あまりにも苦渋に満ちていて、まるで血を吐くかのように紡いだ言葉だったからだ。
    そして、彼らの話は尚も続く。


    173 = 1 :


    神裂「……ですが、その一方でインデックスのスペックは凡人と変わりません」

    上条「……?」

    神裂「彼女の脳の85%以上は、10万3000冊の『魔道書』に埋め尽くされてしまっているんですよ。
       ……残る15%をかろうじて動かしている状態でさえ、凡人とほぼ変わらないんです」


    上条は考える。
    インデックスは、脳の85%以上を『魔道書』なんていう怪しいモノに埋め尽くされて、
    残った15%をなんとか利用して、こうして過ごしている……?


    上条「……そうだとしても、それがなんで、インデックスが死ぬことに繋がんだよ?
       なんで記憶を消す必要があるんだよ?お前、残る15%でも、俺達と同じだって……」

    神裂「はい。ですが、この子には私達と違うモノがあります」

    上条「……『完全記憶能力』」

    神裂「……その通りです。彼女はその体質のせいで、『忘れる』ということができません。
       街路樹の葉っぱの数から、ラッシュアワーで溢れる一人一人の顔、雨粒の一滴一滴の形まで……。
       彼女の頭は、そんなどうでも良いゴミ記憶であっという間に埋め尽くされてしまうんですよ……。
       元々、残る15%しか脳を使えない彼女にとって、それは致命的なんです。
       だから、自分で『忘れる』ことのできない彼女が生きていくには、誰かの力を借りて、『忘れる』以外に道はないんです。
       ……そしてそれは、きっかり一年周期で行われます。それがちょうど一週間後、7月28日の午前0時なんです……」


    そこまで言って神裂は口を閉ざした。
    その顔は今にも泣き出しそうで、苦痛に歪んでいる。
    すぐ傍にいるステイルも口を固く結び、その拳は血が滴り落ちるのではないかというほど強く握り締められている。


    174 = 1 :


    上条「そ、そんな……。ほ、他に方法は!?」


    そう叫ぶ上条だが、神裂は首を横に振る。


    神裂「……私達も、色々な方法を試しました。……それでも、ダメだったんです。
       私達では、彼女の頭の中にある10万3000冊の破壊は不可能です。
       『魔道書』の原典は異端審問官でも処分できませんから。
       だから、残る15%、彼女の『思い出』を抉り取る事でしか、私達は彼女の頭の空き容量を増やす事はできませんでした……」


    なんということだろう。こんなことがあっていいのか?
    『魔道書』なんていう怪しげなモノを覚えさせられ、それ故に記憶までもが消される……。
    たった一年で、家族や友人といった存在、楽しかった事、嬉しかった事、悲しかった事、辛かった事、笑った事、泣いた事……。
    過ごしてきた日々全てが無に帰る……。
    それは本人にとってどれほどの絶望なのだろうか。
    そして周りの人間にとって、いかに辛く、悲しいのだろうか。
    ……だから、簡単には諦められない。諦められるはずがない。


    上条「……なら、俺達ならどうだ?お前達、魔術側で無理ってんなら、俺達、科学側なら?」

    神裂「……そう、思っていた時期もあったんですけどね。
       絶対と信じていた自分達の世界では、インデックスを救う事ができない。
       ならば、ワラをも掴む気持ちでそう考えた事もありました。
       ……ですが、だからといって科学側に彼女を渡す事は、簡単にはできません」

    上条「な、なんでだよ!」

    神裂「まず、彼女は『禁書目録』です。そう簡単にイギリス清教の下からは出られません。
       イギリス清教は『学園都市』と友好関係にはありますが、私達の世界とは対極に位置するあなた方に、
       彼女の身を預けられるほど、私達はお互いを信用しきってはいませんから。
       ……それに、魔術側にできなかったことが、科学側にできるはずがないという自負もあるんでしょうね。
       得体の知れない薬を打って、体の中をメスで切り刻んで……。
       そんな雑な方法では、この子の寿命を削るだけだと思ってしまうんです」

    上条「そこは『上』にお前らが掛け合えよ!それに神裂、お前、ちょっと科学をなめてるぞ?
       何もそんな極端な方法で治療するわけじゃねぇよ。
       お前は記憶を殺すって簡単に言ってるけど、そもそも、記憶喪失ってのが何なのか、わかってんのかよ?」


    その問いに対する答えはなかった。返答に詰まる、というのが正しいようだが。
    その様子を見ながら、上条は床に散らばる『記録術』に関する教科書を取り寄せた。


    175 = 1 :


    上条はパラパラとページをめくりながら話す。


    上条「えっとな、一言で記憶喪失っつっても色々ある。老化、まぁボケもそうだし、アルコール、アルツハイマー病、TIA。
       ハロセン、フェンタニールなんかの全身麻酔とか、ベンゾジアゼピン類なんかの薬の副作用で記憶を失うこともあるみたいだな」

    神裂「?えーと……?」

    上条「簡単に言えば、人の記憶を『医学的』に奪う方法なんていくらでもある、って訳だよ。
       お前達にできない方法で、10万3000冊を抉り取る方法がさ」


    しかし、これは『記憶を取り除く』というより『脳細胞を傷つける』ようなものだ。
    上条は敢えてそれを告げなかった。魔術側でできなかったことなら、科学側で何とかしたい、何とかできるという想い故に。
    ひとまずは、彼らを納得させたかった。


    上条「それに、ここ『学園都市』には『読心能力』やら『洗脳能力』なんていう『心を操る能力者』なんてのもたくさんいるし、
       そういう研究をやってる機関もゴロゴロある。常盤台には触っただけで人の記憶を抜き取れる超能力者だっているらしい」


    そう語る上条だが、そこにステイルが割り込む。


    ステイル「例えそうだとしても、君達にこの子を預けることはできないね。君が言うそれは『賭け』だろう?
         それは『無謀』とも変換できるんじゃないのか?それに、『魔道書』はとても危険なんだ。
         宗教観の薄いこの国の住民が一冊でも見てしまったら、廃人コースは確定だよ。
         ……そして僕達には、少なくとも、僕達には彼女の命を繋ぎ止めてきた信頼と実績があるんだ」

    上条「だからどうした!可能性なら確かにある!目の前にある、僅かな可能性にでも縋ってみようとは思わねぇのかよッ!?」

    ステイル「君はまだ、彼女の苦しむ姿を見てないからそう言えるんだ。
         ……これから数日の内に、彼女に予兆となる強烈な頭痛が現れる。
         というより、もういつ現れてもおかしくない。
         激痛でもう目も開けられないような、寝たきりの状態が続くんだ。
         そんな彼女に、得体の知れない薬、得体の知れない能力、得体の知れない治療、そんなモノを試すのか?試せるのか?
         それができたら君は大したバケモノだよ。
         ……僕はやらせない。彼女の体をいじくり回し、薬漬けにするなんて認めない!」

    上条「……」


    176 = 1 :


    そう叫ぶステイルに、上条はすぐには言い返せなかった。
    そのインデックスの頭痛がどれほどのものかはまだわからないが、彼女にとっては耐え難い苦痛なのだろう。
    それに、ステイルの言う通り、上条が話したことは全て何の確証もない『賭け』だからだ。
    もし失敗すればどうなるか……。考えたくもない。
    ……でも、それでも。


    上条「……確かに、お前の言う通りかも知れない。
       でも、そんな理屈や理論を抜いて、この質問にだけは答えてくれ。
       ……お前は、お前達はインデックスを、本当の意味で助けたくないのかよ?」

    ステイル・神裂「ッ!」

    上条「インデックスの記憶を奪わなくても済む、その先ずっと笑って過ごしていられる、
       そんな誰もが望む最っ高に最っ高なハッピーエンドってヤツが、欲しくないのかよ!?」


    そう言い放った上条の言葉で、二人の吐息は停止した。
    自身の言葉に何を思っているのかはわからないが、確かにその心には響いたようだ。

    ……そして、その脇では、インデックスがポロポロと涙を零していた。


    インデックス「……私は、記憶を失わなくても済むの?」

    上条「ああ、俺達が絶対になんとかしてやる」

    インデックス「……しーつーも、かおりも、すているも、忘れなくても済むの?」

    上条「ああ、もちろんだ。これからは、ずっと死ぬまで覚えていられる」

    インデックス「……もう…みん、な…悲し、まなくて、済むの?」

    上条「ああ、みんなでずっと笑っていられるよ」

    インデックス「うぅ…うわぁああああああああああん!」


    彼女は、インデックスは泣いた。みっともないくらい大声で。
    神裂もそんなインデックスを抱きしめ、涙を零す。
    ステイルは目を瞑って、天井を見上げるような格好をしている。
    そして今まで傍らで黙っていたC.C.の顔にも、いつもよりも穏やかな笑みが広がっていた。



    ―――――――――

    ――――――

    ―――


    177 = 1 :

    はい、今回はここまでです
    感想、アドバイスなど頂けたら嬉しいです
    あと、途中、もの凄く見づらい箇所があり、申し訳ございませんでした……orz

    次回の投下ですが、来週からテスト勉強やらでかなり忙しくなるので、来週は来れるかわかりません……
    読んで下さっている方々には申し訳ありませんが、ご了承ください……

    178 :

    乙!
    テストがんばってね!

    179 :

    気長に待ってる

    180 :

    バイバイ、8単位!してきたわ

    181 :

    とりあえず生存報告と再開について

    えーと、テストが月曜日で終わるので、火曜日には投下できると思います
    しかも月曜日が一番重いんですよね…
    それが終わるまで少々お待ちください

    >>180
    自分も必修科目で随分とやらかしました…orz

    182 :

    ハハッテスト初日の科目は全滅だった……
    テスト前ギリギリに大量のレポート課題出すなよ……締切テスト初日とか…

    183 :

    こんばんわー
    昨日はちょっと忙しく、投下できませんでした、すみません……orz

    テスト終わって大いにワロタwwwwww

    ワロタ……


    それでは、気を取り直して、投下します

    184 :


    数分後、ようやく落ち着きを取り戻したインデックスが、泣き腫らした目をしたまま、
    目をグシグシと擦って、上条に近づく。


    インデックス「……とうま、ほんとにありがとね。私のためにそこまで言ってくれて。
           ……私も、諦めない。諦めたくない!だから、可能性があるなら、それを試してみたいんだよ」

    上条「ああ、わかった。俺も科学側からできる限りのことをやる。期待して待っててくれ」


    彼は、上条は、ここで弱気なところなど一切出さない。
    自分は『偽善使い』。何の確証もなくとも、目の前にいる女の子を不安にさせ、悲しませるようなことはしない。
    嘘なら、彼女の前ではそれを貫き通す。そして、自分は影でそれを本当にするように努力すればいい。

    そう上条は思いながら、インデックスの肩に右手を置いた。そう、右手を。
    ……少し間を置いた後。



    ストンと彼女の服が床に落ちた。


    185 = 1 :


    上条「……え?」

    ステイル「」

    神裂「」

    C.C.「」


    皆、言葉を失った。そこには、完全無欠に素っ裸のインデックス。
    彼女は目を擦っていたため、自分では気づいていない。


    インデックス「……あれ、皆、どうしたの?」


    突如として、黙り込んだ皆を不思議に思ったインデックス。
    ……それにしても、何かさっきよりやたらと涼しい、といか風通しがいい気がする。なんでだろう?
    目を擦るのをやめ、ふと目線を下にやると、そこには自身の肌が見える。ついでに自身の控え目な胸も。


    インデックス「……………………………ッ!」


    彼女の絶叫が部屋に響いた。



    ―――――――――

    ――――――

    ―――


    186 = 1 :


    神裂「……それで、あなたは一体何者なのですか?
    防御機能に関しては最高を誇る『歩く教会』を触れただけで壊してしまうなんて……。
    正直、まだ信じられません」

    上条「ははは……はぁ……」


    あの後、まずインデックスは近くにいた上条に思いっ切り噛み付いた。
    神裂は上条のベッドから高速で毛布を引き寄せ、インデックスに駆け寄り、それで包んだ。その際、上条を突き飛ばして。
    ステイルはそんな様子をしばし呆然と見ていたが、我に返ると、上条に向き直り、何かの呪文のような言葉を紡ぎ始めた。
    結局、それは神裂に止められたが、もしそうならなかったら、大変な事になってた気がする……。
    そして、C.C.はそんな様子を一人だけニヤニヤ笑いながら見ていた。


    インデックス「うぅ!人の裸を見ておいて、なんで溜め息なんてつくんだよう!」

    上条「あっ!いえ!その、なんと申しましょうか……。
       私も大変ドギマギしたというか、青春というか……。と、とにかく悪かった……」


    インデックスは毛布で包まったまま、上条をジトッと睨んでいる。
    そうしながら、彼女はは安全ピンを使い、服の形だけはなんとか直す作業をしているようだ。
    『歩く教会』は、その布地を縫っている糸という糸が綺麗に解け、ただの布地に逆戻りしていた。


    インデックス「ふん!バカにして!」

    ステイル「……まだ、こうして消し炭になっていないだけありがたく思うんだね」


    ステイルはドスを利かせた声で話したが、それに対してC.C.が笑いながら言う。


    C.C.「ふふふ、お前にとってもラッキーだったんじゃないのか?」

    ステイル「なっ!何を言う!僕はただ、彼女の『歩く教会』を壊したことに!」

    C.C.「なら何故、顔を赤くする?童貞坊や?」ニヤッ

    ステイル「黙れッ!この『魔女』がッ!」


    騒ぐ二人を見て、神裂は、はぁと溜め息をついた。
    そして、気を取り直して、もう一度上条に問いかける。


    187 = 1 :


    神裂「それで、上条当麻、あなたの力は一体……?」

    上条「えーと、俺の力っていうかさ、この右手。
    こいつで触ると、それが異能の力ならなんだって打ち消しちまうんだ。
    俺はこいつを『幻想殺し』って呼んでる」

    神裂「『幻想殺し』……」

    上条「ちなみに、俺のこいつは生まれた時からあるもんで、『身体検査』でも感知されない。
       まぁ、だから、こんな右手があっても、上条さんはレベル0の無能力者なんですよね……」

    神裂「……にわかには信じがたい話ですが、あなたのその右手。
       それがインデックスの『歩く教会』を破壊したのは紛れもない事実みたいですね。」


    『歩く教会』
    トリノ聖骸布、ロンギヌスの槍に貫かれた聖人を包み込んだ布地を正確にコピーしたものであり、その強度は法王級。
    物理、魔術を問わず、全ての攻撃を受け流し、吸収する最高の防御結界。
    それを触れただけで破壊した上条の右手に、神裂だけでなく、そこにいた誰もが驚きを隠せなかった。
    自分達、魔術師にとってはまさに最悪の相手だ。


    188 = 1 :


    上条「その『歩く教会』ってのは、そんなに凄いの?」

    神裂「はい。私はロンドンでも十指に入る魔術師ですが、その私でもあれを破壊するのは難しいでしょう」

    上条「マジですか……」


    そう考えると、この男の、上条当麻の右手はなんと恐ろしいモノなのだろう。
    ただの学生だと思っていたが、とんでもない話だ。


    神裂「神浄の討魔、ですか……」

    上条「んっ?なんか言ったか?」

    神裂「いえ、何も……」


    こんな力を持つ少年が、今後、どのような人生を歩むのか、神裂は少しばかり心配になったのだった。



    ―――――――――

    ――――――

    ―――


    189 = 1 :


    数分後。



    インデックスの『歩く教会』は何十本もの安全ピンで留められ、なんとか形だけは取り戻していた。
    その様を見てインデックスがあからさまに落ち込んでいたが、仕方なく、彼女は今、それを着ている。
    そして、そうこうしていると、C.C.から声が掛けられた。


    C.C.「それで?インデックスの記憶に関して、具体的にはどうするんだ?」

    上条「うっ!そ、それはだな!」


    あれから少しして、皆がようやく落ち着きを取り戻した頃。
    まずC.C.は上条に具体的な方法について尋ねた。
    しかし、彼から漏れた声は、何とも頼りないというか、痛いところを突かれたといった感じであった。


    ステイル「……まさかとは思うけど、あれだけのことをのたまっておきながら、何も考えがないなんて言わないだろうね?
         実際にやるかどうかは置いておいて、僕もとりあえずは君の話を聞いてみたくなったんだけど。
         ……もし、さっきのが、行き当たりばったりで、何の計画性もない上でチラつかせただけの希望だ、なんて言ったら……。
         燃やすぞ?」

    神裂「……私の『七天七刀』の錆にしますよ?」

    インデックス「わわ!二人とも、ちょっと怖いかも……」


    そんな上条に凄みを利かせる二人。
    そんな二人の様子に冷や汗を流しつつも、上条は考える。
    それに彼も自分が言った事を実現しようと、実現できると思っている。
    いい加減な気持ちなんかでは断じてない。


    上条「……と、とりあえずは、今すぐにでも情報収集、というか、そっちの道に詳しそうな人に話を聞かなきゃいけないな。
       俺みたいな脳医学に関してまるっきりのド素人じゃ、話にならない事も多い。……時間もないから、さっさとやっちまおう」

    そう上条は言うと、家の電話と電話帳を引っ張り、受話器を手に取った。


    190 = 1 :


    上条(さて、まずは誰に聞こうかね?やっぱそっちの道に詳しい医者とか研究者か?
       とはいっても、どう話したらいいもんかね……。うーん、まずは俺の知り合いの方がいいか?
       インデックスの事をペラペラ喋るわけにもいかねーし。
       もしばれても、そこら辺が信頼できて、尚且つそっちの知識がありそうな人っていうと、かなり限られそうだな……)

    うーん、と悩む上条。
    その時、部屋の片隅に置かれていた、自分の学生鞄が目に留まった。


    上条「学校……!そうだ!『あの人』に聞こう!」


    そう言うと上条はひとまず電話帳をほっぽり出し、自分の高校の連絡網を取り出して、ある番号へと電話を掛ける。


    ステイル「一体、誰に掛けているんだい?」

    上条「俺の学校の先生、というか俺の担任にだ。あの人なら、教師だし、そっちの方面に知識があるかもしれない。
       それに、スゲー優しくて、気も利く人だ。インデックスの事情がもしバレちまっても、上手くやってくれるはずだ。
       相談相手にはもってこいだよ」


    191 = 1 :


    相手を呼び出すコール音が続く。
    そして6回目のコールの後、ブツッという音と共に電話が繋がった。


    小萌『はーい。月詠ですー』

    上条「先生!俺です!上条です!」

    小萌『あれ?上条ちゃんですか?先生に電話なんて、一体どうしたんです?』

    上条「えーとですね、ちょっと『記憶術』に関して質問したいことがあって……」

    小萌『か、上条ちゃんが勉強の質問を!?やっと勉強の大切さがわかってくれたんですね!
       ……うぅ~、先生は今、ものすごく感動してます!』


    興奮気味にそう言う小萌に、上条は妙な罪悪感を感じながらも尋ねた。


    上条「えーとですね、人間の記憶に関する質問なんですけど。
       ある特定の、それも脳に深く刻まれた記憶だけを狙って、それを消すことってできますか?
       例えば、なんか強いトラウマかなんかで忘れられない記憶を消したいって時、医学的に、それだけを都合良く消せますか?」


    10万3000冊の『魔道書』さえ消せれば、彼女は普通に生きていける。
    大切な『思い出』を消すことなく、ずっと……。


    上条「……んっ?あれ?」


    だが、そこまで考えた時、上条はある違和感を覚えた。
    それが何かはっきりしないが、妙に頭に引っかかる、確かな違和感を。
    その違和感が何かを考えている時、小萌から答えが返ってきた。


    192 = 1 :


    小萌『うーん、医学的に記憶を消す方法は色々あるんですけど、それを故意にやるのはそもそも危険ですねー。
       まず、医学的に記憶を消すというのは、簡単に言えば、脳細胞を傷つけることなんですよー。
       それによって脳や他の記憶に影響が出ないとは言い切れません。
       そういうことなら、むしろ『精神感応能力』、『読心能力』系の能力者の方がいいかもしれませんねー。
       例えば、常盤台中学の超能力者、『心理掌握』こと食蜂操祈さんとかならあるいは』


    『心理掌握』
    自分も名前くらいは聞いた事があるが、能力者に頼るのは最後の手段だろう。
    無闇に、インデックスの頭を覗くのは、インデックスにも、覗いた本人にも、どんな影響が出るかわからない。


    上条「……あー、そうですか。……えーと、じゃあ、『完全記憶能力』ってあるじゃないですか?
       それって、どういったモノなんですかね?」

    小萌『『完全記憶能力』ですか?
       えーとですね、『完全記憶能力』とは簡単に言えば、一度見たものを決して忘れない能力のことですねー。
       どんなゴミ記憶、例えば、去年のスーパーの特売チラシとかも忘れることができないそうですー。
       知的障害者や自閉性障害を持つ人が、稀に常人をはるかに越えた能力を発揮する、『サヴァン症候群』などで見られるんですよー。
       『映像記憶』、『直観像記憶』とも言いますねー』

    上条「なるほど。……うーん、じゃあ、忘れることができない人達ってどういう風に生きているんですかね?」

    小萌『というと?』

    上条「いや、忘れることができないなら、普通に過ごしてたら、いつの日か脳がパンクしちゃうんじゃ……ッ!」


    193 = 1 :


    突如、言葉を切った上条。ここで彼は気づいた。先ほど、自分が感じた違和感の正体に。
    そう、『完全記憶能力』を持つ人間は、どんなゴミ記憶も忘れることができない。
    そうだとしたら……。


    彼らの寿命はどうなってしまうんだ?


    そう、仮に10万3000冊の『魔道書』だけを上手く取り除けたとしても、
    普通に過ごした1年で、脳の15%も使ってしまえば、インデックスの余命は6、7年ってことか……?
    それじゃあ『完全記憶能力』を持つ人は6、7歳で死んじまうって事なのか……?そんな不幸じみた体質なのか……?
    いや、待て。そもそも、1年で脳を15%も使うなんて、誰が言ったんだ……?

    そう考えていると、小萌がヤレヤレといった感じで答えた。


    小萌『あのですね、上条ちゃん。いくら『完全記憶能力』があったとしても、覚え過ぎて脳がパンクするなんて事はありませんよ?
       彼らは100年の記憶を墓まで抱えて持っていくだけです。人間の脳は元々140年分の記憶が可能ですからー』


    その言葉を聞いて、上条の心臓は、ドグンと大きく脈打った。


    194 = 1 :


    上条「そ、それでも、もし仮に、図書館にある本を全部記憶しちまったりとかしたら……?」

    小萌『はぁ……、上条ちゃん『記憶術』は落第ですねー。そもそも人の記憶とは一つではないんです。
       言葉や知識を司る『意味記憶』。運動の慣れなんかを司る『手続記憶』。
       そして思い出を司る『エピソード記憶』ってな具合に色々あるんですよー』

    上条「えーと、つまり?」

    小萌『つまりですね、それぞれの記憶は容れ物が違うんです。
       だからどれだけ本を覚えて『意味記憶』を増やした所で、思い出を司る『エピソード記憶』が圧迫されるなんて事は、
       脳医学上絶対にありえませんー』

    上条「じゃ、じゃあ、一年間だけで脳を15%も使って、たった6、7歳で死ぬなんてこともありえない……?」

    小萌『当たり前ですよー。そんな事、誰が言ったんですー?』


    頭に雷が落ちたかのような衝撃が上条の体に走った。電話もつい落としてしまう。
    だが、今の上条には、そんな事を気にする余裕はなかった。


    インデックスの『完全記憶能力』は人の命を脅かすようなモノではなかったのだ。


    ならば何故?何故こんな状況になっているんだ?
    ……考えられる理由など一つしかない。そう、それは、つまり……。


    神裂「一体どうされたのですか?あなたの先生は何と言っていたのですか?」

    ステイル「何を呆然とした顔をしているんだい?」

    インデックス「とうま?」


    上条の尋常ではない様子を不思議に思い、彼に問いかける三人だが、上条は反応しない。


    C.C.「まったく……。おい、お前、聞いているのか?」


    そう言いながら、C.C.は上条を軽く叩く。
    それで、ようやく上条は、はっと我に返った。そして、そのまま神裂達に尋ねる。


    195 = 1 :


    上条「……なぁ、お前達が所属するイギリス清教の『上』ってのは、どういう奴らなんだ?」

    ステイル・神裂・インデックス「え?」

    上条「……お前達の上司ってのは、自分達に都合が悪い事が起こった時とか、機密を守ったりするためには、
       どんな方法でも取るような連中なのか?」


    そう聞かれた三人は困惑した。一体、いきなり何を聞き出すんだ?
    質問の意図がわからず、答えあぐねていると、C.C.が代わりに答えた。


    C.C.「ああ。あの女狐なら、自分の都合を良くするためなら、どんな手も使うだろうな」


    それを聞いた上条は、そうか、と吐いて、一瞬、怒りを含んだ表情をしたが、それをすぐに収め、神裂へと声を掛けた。


    上条「神裂、今すぐ俺ん家の風呂場で、インデックスの体をよく調べてくれ。
       なんか妙なモノが仕掛けられてないか、探してくれ」

    神裂「え?あの、それはどういう……?」

    インデックス「と、とうま?」


    困惑をさらに深める二人。そこにステイルが割り込む。


    ステイル「上条当麻、君はさっきから何を言っているんだい?少しは事情を説明してほしいね?」


    そう尋ねるステイルに、上条は言った。


    196 = 1 :


    上条「……嘘、だったんだよ」

    ステイル「何?」

    上条「お前らが言ってた『インデックスの頭の85%は『魔道書』で占められてる』とか、
       『残りの脳の容量が15%』とか、『一年置きに記憶を消さないとインデックスは死ぬ』とか、
       そういった情報全部、教会がついた嘘だったんだよ!」

    ステイル・神裂・インデックス・C.C.「「「「ッ!」」」」


    上条がそう叫んだ瞬間、上条を除く4人に衝撃が走った。
    そんな中で、ステイルが信じられないといった顔をしながら呟いた。


    ステイル「な、何を言ってるんだ、君は……?現に、彼女は毎年、ひどい頭痛で苦しんで……」

    上条「脳医学的に考えて、いくら『完全記憶能力』を持ってたとしても、記憶のし過ぎで脳がパンクするなんてことはないらしい。
       ましてや、頭痛なんかとなんも関係なんかねぇんだ。だから、元々、インデックスは健康に生きていける体だったんだよ。
       ……なら、どうしてそんな風になっちまうのか?考えられる理由なんか一つだけだ」


    誰かがゴクリと唾を飲んだ。……そして、上条は言い放つ。


    上条「教会が、元々何も問題なかったインデックスの頭に何か細工したんだ!」


    197 = 1 :


    沈黙が支配する空間。誰もがその驚愕の事実に、発する言葉を失っていた。


    上条「……そもそも、冷静になって考えてもみろよ?
       『禁書目録』なんていう残酷なシステムを作るような連中が、おいそれとお前らに真実を全部話すと思うか?
       ……インデックスが10万3000冊の『魔道書』を持って、自分達の下を離れないようにするために、奴らは『首輪』をつけた。
       多分、それが、その頭痛とやらの正体だ」


    そう締め括った上条の言葉に反論する者はいない。
    むしろ、彼の言う通り、教会の『上』なら躊躇なく、そんなことでもやるだろうと思った。


    上条「だから神裂、まずはインデックスの体を調べてみてくれ。
       俺は『魔術』に関してはド素人っつーか、何も知らないからよくわからないけど、もしそういった何か細工があれば、
       それは多分『魔術』だろ?だから、そいつを確認するために、服脱がせて調べてくれ」


    そう言う上条に、神裂は静かに頷き、インデックスを連れて、上条に案内された風呂場へと入っていった。



    ―――――――――

    ――――――

    ―――


    198 = 1 :

    とりあえず、今日はここまでです

    テストが終わってほんとに嬉しい限りです
    今は、今だけは、この開放感に酔いしれたいッ!

    次の投下は、3日以内にできればいいなと……

    それでは、また次回ー

    199 :


    テストお疲れ

    ペンデックスにギアスは効くんだろうか?
    続き期待してる

    200 :

    両眼開眼してないと利かない気がする。なんとなく


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