元スレ魔王娘「おかえりなさい、あなた様……」勇者「ああ、ただいま……」
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201 = 188 :
~~夜明け前 最西の街郊外 山中 洞窟前にて~~
女僧侶「……」
少年「どうかしましたか?」
女僧侶「少し寝つけなくて……。交代の時間はまだでしょうか?」
少年「まだ大丈夫ですよ。あなたは疲れているのだから、今は少しでも休んだ方がいい」
女僧侶「そうですね……」
少年「……」
女僧侶「……」
少年「……休まないのですか?」
女僧侶「外は……」
少年「はい」
女僧侶「外は風が冷たいのですね」
少年「そうですね、平野と比べて多少は」
女僧侶「勇者さまは寒くありませんか?」
少年「私は旅慣れていますので。それに眠気覚ましには丁度いい」
202 = 185 :
支
203 = 188 :
女僧侶「……」
少年「……女戦士さんもあなたの事を心配しています」
女僧侶「はい。皆さまに心配ばかりかけて、足を引っ張って……駄目ですね、私は」
少年「皆で旅をしているのだから、仲間を心配するのは当然の事です」
女僧侶「……あの」
少年「なんでしょう?」
女僧侶「あっ……いえ、何でもありません……」
少年「やはり私の事が怖いですか?」
女僧侶「えっ!?」
少年「『どうしてこの人は、平然と人を殺せるんだろう?』と?」
女僧侶「っ!?」
少年「『どうしてこの人は、人を殺して平気な顔でいられるんだろう?』と?」
女僧侶「ち、違うんです……仕方のない事だとはわかって……」
少年「『何かあれば、この人は私たちも平気な顔で見捨てるのだろうか?』と?」
女僧侶「違います! 止めてください!」
204 :
やっと追いついた
205 = 188 :
少年「違いますか? そう考えていないと?」
女僧侶「違います……違うんです……」
少年「でも、私の事がよくわからない。だから私を怖いと思っている。そうですよね?」
女僧侶「勇者さまがした事は間違っていない。間違っていないとは思うんです……」
少年「そう思って理解は出来ても、受け入れられない。だから、あなたは私の事が怖い」
女僧侶「……」
少年「……ですから最初に申し上げたのです」
女僧侶「えっ?」
少年「『私は勇者ではない』と」
女僧侶「そ、それは……」
少年「平然と人を殺せる私を『怖い』と感じている、あなたの感覚は間違っていない」
女僧侶「そう……なのでしょうか?」
少年「私はね、あなたが想像しているより、遥かに醜い人間なんですよ」
女僧侶「そ、そんな事は……」
少年「『ない』と言い切れますか?」
208 :
少年「私の過去を知らないあなたには、『ない』とは言い切れないはずです」
女僧侶「確かに私は勇者さまの過去は存じません! それでも……それでも……」
少年「……」
女僧侶「それでも! 勇者さまは子供たちに食糧を分け与え、商隊長さんを助けてくださいました!」
少年「ただの気紛れかもしれませんよ?」
女僧侶「気紛れなんかじゃありません! 気紛れなんかじゃないと……」
少年「……だから私を信じたい、そう言いたいのですか?」
女僧侶「えぇ、今はまだ信じているとまでは言えません。でも、少なくとも信じたいと思っています」
少年「正直で結構ですよ」
女僧侶「ごめんなさい……」
少年「あなたが謝る必要なんてない。先程も言いましたが、あなたの感覚が正常なんです」
女僧侶「勇者さま……」
少年「私のように、人を殺す事に慣れてしまっては、もはや正常とは言えないんですよ」
女僧侶「勇者さまは年も私と同じくらいだというのに、どうして……」
少年「その話はいずれ機会があれば。もう、夜明けです」
210 = 134 :
やっぱ少年うぜえな
司祭早く出て来てくれ
211 = 208 :
女僧侶「夜明け? 私の見張りの時間は……」
少年「少し早いですが、二人を起こしてきます。しばらくの間、見張りをお願いします」
女僧侶「ゆ、勇者さま……」
女僧侶(私が起きてから、そんなに時間が経ってないのに夜が明けてしまった?)
女僧侶(もしかして、私を起こさずに見張りを代わっていてくださったのでしょうか?)
女僧侶(私が疲れていると気遣って?)
女僧侶(……私の事だけじゃない)
女僧侶(あの子たちの事、商隊長さんの事……)
女僧侶(他人をあれだけ思い遣れる……)
女僧侶(そんな方が、冷たい心の持ち主であるはずがありません)
女僧侶(……)
女僧侶(少年『で、お前達を見捨てて逃げろとでも言うのか!』)
女僧侶(少年「それとも追っ手を皆殺しにすればいいのか?』)
女僧侶(あの時の勇者さま……あんな辛そうな姿はもう……)
女僧侶(信じて……良いのですよね、勇者さま?)
212 = 208 :
~~早朝 最西の街郊外 山中 洞窟前にて~~
魔法使い「それじゃあ今から転移魔法を使って、師匠の所に移動する」
少年「お願いします」
魔法使い「おっと、馬ははどうするんだ?」
少年「一緒に転移させるとあなたの負担が大きくなります。ですから、ここで放しましょう」
魔法使い「ああ、そうしてもらえると有り難いね」
女戦士「私達はどうすればいいのでしょうか?」
魔法使い「俺の近くに居てくれりゃいい」
女僧侶「それで大丈夫なのですか?」
少年「術者が転移対象を認識していれば問題ありません」
魔法使い「また俺の台詞を……」
女戦士「では、魔法使い殿と接触したりする必要はない訳ですか?」
魔法使い「ああ、その通りだ」
女僧侶「わかりました」
魔法使い「よっしゃ。そんじゃあ行くぜ!」
213 = 208 :
~~早朝 賢者の塔近郊にて~~
女戦士「これが転移魔法ですか……凄い」
魔法使い「これで追っ手の心配はなくなっただろ」
女戦士「向こう見える塔が、賢者殿のお住まいですか?」
魔法使い「ああ、そうだ。この距離なら四半刻も歩けば、塔に着くだろうさ」
少年「……」
女僧侶「勇者さま、どうかなさいましたか?」
魔法使い「何だ? 転移魔法で目でも回したか?」
少年「……いえ、何でもありません」
女戦士「それにしても……やはりここにも魔物がいる気配はないようですね」
魔法使い「そうだな。その魔物が出没しているって話、本当なのか?」
女僧侶「はい。各地の教会からの報告によれば……」
魔法使い「はん。教会の報告ってやつも当てにならねぇな」
女僧侶「……間違いであれば、それに越した事はありません」
魔法使い「へぇ……」
214 = 133 :
投下早すぎ猿食らうぞと思ったが回線複数持ってるみたいだな
215 = 208 :
女僧侶「何ですか?」
魔法使い「いや、あんたの事だから『馬鹿にするな!』って噛み付いてくると思ったんだけどよ」
女僧侶「申し上げたように、間違いであれば、それに越した事はありませんもの」
魔法使い「まあ、仮に魔物が出没していたとしても、この付近にはいねぇだろうよ」
女戦士「どうしてです?」
魔法使い「おいおい。俺の師匠はこいつの親父と一緒に魔王を倒した英雄だぜ?」
女戦士「間違っても魔物に遅れをとる事はないという事ですね」
魔法使い「その通りさ。遅れをとるどころか、近づく事すらしねぇだろうよ」
女僧侶「でしたら……」
魔法使い「うん?」
女僧侶「でしたら、各地から上がってきた、教会の報告はなんだったのでしょうか?」
少年「それを確認する為、賢者殿に会いに来たのでしょう?」
女僧侶「えぇ、その通りですわね」
魔法使い「ここであれこれと考えていても仕方ねぇってこったな」
少年「行きましょう。賢者殿の下へ」
216 = 208 :
~~早朝 賢者の塔 入口にて~~
女戦士「遠くから見ても凄いと思いましたが、これほどの造りとは……」
魔法使い「この辺りには古代文明の遺跡が多くてな。その調査の為に街があったんだよ」
女僧侶「街があったのですか、ここに?」
魔法使い「あんたらも知っているだろ? 魔王軍との戦いで滅んだ国があるってよ」
女戦士「もしやここが……」
魔法使い「この街だけじゃない。他の街も魔王軍に滅茶苦茶にされちまった……」
女僧侶「だから塔の周りに、これほどたくさんの廃墟が……」
女戦士「あの……もしや……」
魔法使い「ああ。滅んだのは俺の生まれた国さ……」
女僧侶「そ、そんな……」
女戦士「心無い事を聞いてしまいました……申し訳ない」
魔法使い「いいんだよ。確かに国は無くなったが、俺はこうして生きている」
女僧侶「あなたに神のご加護がありますよう……」
魔法使い「や、やめてくれ! あんたには悪いが、今更神の加護なんざ欲しくもねぇっての」
217 = 185 :
援
218 = 175 :
魔王娘とのイチャイチャはよ
219 = 208 :
女僧侶「そうですか……」
魔法使い「……どうぜ祈るなら、俺じゃなくて亡くなった連中に祈ってやってくれ」
女僧侶「……そうですね。そうさせていただきます」
女戦士「それにしても、魔王軍の襲撃を受けて、どうしてこの塔だけ無事なのでしょうか?」
魔法使い「無事じゃなかったみたいだぜ」
女戦士「そうなのですか?」
魔法使い「詳しくは知らねぇが、廃墟同然だった塔を師匠が再利用したって話だからよ」
女戦士「成る程……」
魔法使い「とはいえ、幾ら再利用といってもなぁ……」
女戦士「うん? 何か問題でもあるのですか?」
魔法使い「いや、これだけの塔を建築するのに、一体どれだけの労力が必要だと思う?」
女戦士「それは……百や二百の職人では済まないのではないかと」
魔法使い「そう思うだろ? でもな、この塔は師匠が一人で建て直したって話なんだよなぁ」
女僧侶「この塔をお一人で!?」
女戦士「馬鹿な! 不可能でしょう!?」
220 :
少年が切れ者過ぎてワロタ
221 :
世界観に凝るのもいいけど魔王娘の話もさっさと書いて欲しいぞ
222 = 208 :
魔法使い「俺もそう思ってさ。師匠に聞いた事があるんだよ」
女戦士「で、賢者殿は何と?」
魔法使い「『貴様のような若造が知るには五十年は早い』だってよ」
女僧侶「まぁ!? 賢者さまはお幾つでいらっしゃるのでしょうか?」
魔法使い「それも知らねぇ……つうか、うちの師匠はわからねぇ事の方が多いんだ」
女戦士「さすがは賢者殿といったところですか」
魔法使い「いや、意味がわからねぇよ」
女僧侶「それだけのお力をお持ちだから、勇者さまと共に魔王を討ち滅ぼすことが出来たのですね」
魔法使い「うーん、その話もなぁ……」
女戦士「うん? 何かあるのですか?」
魔法使い「いや、まぁ……」
少年「無駄口はそれぐらいにして、そろそろ中に入りたいのですが」
魔法使い「へいへい、ちょっと待ってろよ……」
魔法使い「……」
―――ギィィィッ!
223 = 208 :
女戦士「扉が勝手に開いた!?」
魔法使い「ああ、師匠に扉を開けてくれるよう、術で思念を送ったんだよ」
女僧侶「賢者さまが扉を開けられたのですか?」
魔法使い「この塔は魔法で守られてるからな。師匠が許可しなきゃ、蟻一匹は入れねぇようになってる」
少年「扉が開いたという事は、私達も中に入ってもよい、という事ですね」
魔法使い「まあ、俺がいるからだろうよ」
少年「では、まずあなたが塔に入ってください」
魔法使い「あ? 何だそりゃ?」
少年「あなたが塔に入って扉が閉まらないようなら、私たちも賢者殿に許可を得たという事になります」
魔法使い「そうかい。そんじゃ、お先に」スタスタ
女戦士「……」
女僧侶「……」
女戦士「扉は閉まらないようですね」
女僧侶「勇者さま」
少年「えぇ、私達も中に入りましょう」
225 = 208 :
~~早朝 賢者の塔 最下層部にて~~
女戦士「こ、これは……」
女僧侶「……何もありませんわね」
女戦士「広い空間があるだけで、塔内は空っぽではありませんか!?」
魔法使い「まあまあ落ち着けって」
少年「……」ジィーッ
魔法使い「ふん。あんたはわかったみたいだな」
少年「……床にある魔方陣ですか?」
魔法使い「ご名答」
女戦士「……この魔方陣が何か?」
魔法使い「こいつで上にある部屋に転移が出来るんだよ」
女僧侶「上の部屋に?」
魔法使い「まぁ、こいつも師匠が許可しなきゃ作動しねぇんだけどな。ほら、早くしろ」
少年「……」スタスタ
女戦士・女僧侶「「はっ、はい」」タッタッタッ
226 :
面白い
がんばってな
227 :
~~早朝 賢者の塔 上層部にて~~
女戦士「うわっ!?」
魔法使い「おいおい、ただの転移魔方陣だぜ? いちいち大声を出すなよ」
女戦士「突然目の前の風景が変われば、誰だって驚きます!」
魔法使い「こんなもの、要は慣れだっての」
女僧侶「……ここは?」
魔法使い「塔の上層部さ。あの階段を登れば、師匠の研究室のある階層だ」
女戦士「下へ降る階段もあるようですが?」
魔法使い「下の階層は空き部屋か物置だ。師匠に会いに来たんだから、今は関係ねぇよ」
少年「それなら上に参りましょうか」
女僧侶「ようやく賢者さまにお会い出来るのですね」
魔法使い「そうだな……はぁ……」
女戦士「うん?」
少年「どうかしましたか? 溜め息なんかついて」
魔法使い「いや、何でもねぇ。行こうぜ」
228 :
濡れ場はあるんだろうな?
支援
229 = 227 :
少年「……中に入らないんですか?」
魔法使い「いや……入ろうとは思うんだが……」
女戦士「何か問題でもあるのですか?」
魔法使い「あるといえばあるし、ねぇといえば……」
??『馬鹿面をぶら下げて、いつまで扉の前で呆けているつもりだ。さっさと中に入ってこい』
魔法使い「うおっ!?」
女僧侶「……女性の声?」
女戦士「今のは賢者殿なのですか?」
魔法使い「うぅっ……やべぇ……あんまり機嫌が良くねぇみたいだ……」
女僧侶「そうなのですか?」
魔法使い「あの声を聞けばわかるだろ! こんな朝っぱらから押しかけたせいか……くそ」
少年「賢者殿の仰る通り、扉の前でじっとしていても仕方ないでしょう。中に入りましょう」
魔法使い「待て! いいか! 頼むからあの人を絶対に怒らせるなよ!」
少年「怒らせるも何もないでしょう? 必要な話を聞く。それだけです」
ガチャッ……ギィィィッ……
230 :
しえーん
面白いよー
231 = 227 :
~~早朝 賢者の塔 研究室にて~~
賢者「……」ジロリ
魔法使い「し、師匠! ご無沙汰しております!」
賢者「はっ! 懐かしい顔じゃないか? それで、私に一体何の用だ?」
魔法使い「い、いや、実は……」
少年「お初にお目にかかります、賢者殿」
魔法使い「お、おい!」
少年「私達は国王陛下の命を受け、賢者殿にお尋ねしたき儀があり、ここに参上致しました」
賢者「ふぅん……」ジロジロ
女戦士(この方が賢者殿……)
女僧侶(勇者さまのお父上と共に、魔王を倒したという伝説の英雄……)
賢者「……なるほど。そういう事になっているのか」
少年「その叡智、お授けいただけますか?」
賢者「……いいだろう。話を聞いてやる」
少年「ありがとうございます、賢者殿」
232 = 135 :
ケンジャ!?ケンジャナンデ!?
233 = 227 :
…………
賢者「話はわかった。では、私に聞きたい事は次の三つという事だな」
賢者「一つ、人間界と魔界を繋げる場所に私が施した封印の状況」
賢者「一つ、魔物による人間界への侵攻」
賢者「最後に、魔王の復活の可能性」
少年「はい。仰る通りです」
賢者「では順番に話してやろう。まず封印についてだ」
女僧侶「お願いいたします」
賢者「封印は変わらず、その効果を発している」
女戦士「僭越とは存じますが、封印が何らかの方法で破られている可能性はないのでしょうか?」
賢者「万に一つもない。あれは私の持てる力を尽くした『多重性空間制御結界術』だ」
女戦士「た、多重性……えっと??」
賢者「『多重性空間制御結界術』だ。これぐらい一度で憶えられんのか」
女戦士「も、申し訳ございません……」
女僧侶「あの、よろしいでしょうか?」
234 = 227 :
賢者「何だ?」
女僧侶「その『多重性空間制御結界術』とは、どういったものなのでしょうか?」
賢者「そこから説明が必要か?」
女僧侶「も、申し訳ありません……」
少年「私達は賢者殿と違い世の理に疎いゆえ、ご教授頂ければありがたく」
賢者「……よかろう。術の説明をする前に、この人間界と魔界について説明が必要のようだな」
女僧侶「よろしくお願いします」
賢者「ふむ……そうだな。おい、貴様」
女戦士「な、何でしょうか!?」
賢者「人間界から魔界に行く為、魔界から人間界に来る為には、どうすればいいか知っているか?」
女戦士「い、いえ……存じません」
賢者「まず人間界と魔界、この二つの異なる世界は、それぞれ異なる空間に属している」
女僧侶「異なる空間ですか??」
賢者「そうだ。更に簡単に言うなら、決して越える事の出来ない壁にを挟んだ二つの家を想像しろ」
236 = 227 :
賢者「壁に隔てられた、この二つの家を行き来する為にはどうすればいい?」
女戦士「決して越える事が出来ない壁がある以上、それは不可能ではありませんか」
賢者「その通りだ。だが、ある時その壁に穴が開いたとする。そうすればどうだ?」
女僧侶「そうですね。通ることの出来る大きさの穴であれば、行き来は可能だと思います」
賢者「数は非常に少ないが、この世界にはそうした穴……二つの世界を繋ぐ通路が幾つか存在している」
女戦士「そんな通路があったとは……初耳です」
賢者「国も存在を公にしていないから、当然だろうな」
魔法使い「ま、知っているのは一部の人間だけさ」
賢者「この塔の周辺には古代の遺跡が点在しているが……」
賢者「ここから、約半日も北上した場所に、千年以上前に栄えた文明の遺跡が存在する」
女僧侶「千年以上も前ですか!?」
賢者「ああ。その遺跡の中に、魔界に通じる通路の一つがある」
女戦士「そんなものがこの近くに!?」
賢者「大きさもかなりのものだ。何せ魔王軍が侵攻に使ったぐらいだからな」
魔法使い「この通路はなぁ、師匠が勇者と一緒に魔界へ行く時にも……うげっ!?」ガンッ!!
237 = 227 :
賢者「さっきから喧(やかま)しい。私が説明している時に喋るな、動くな、息をするな」
魔法使い「い、いてて……何も魔導書を投げなくても……」
賢者「貴様なんぞの為に貴重な魔導書を投げるか。それは廃棄予定物品の帳簿だ、馬鹿者め」
魔法使い「……本当だ」
賢者「貴様の名前を帳簿に書かれたくなければ、案山子のように大人しくしていろ」
魔法使い「うぅぅ……酷いですよ……」
賢者「……さて、話を戻すぞ」
少年「お願いします」
賢者「魔王軍との戦いを終えた後、魔物達の侵攻を二度と許さない為、この通路に結界を張り巡らせた」
女僧侶「それが封印の結界なのですね」
賢者「そうだ。この結界によって、遺跡の通路を使った行き来は出来ないようになっている」
女戦士「なるほど……」
賢者「当時の私が持てる力を駆使して、複雑かつ複数の儀式呪法を用いた空間の行き来を遮断する術だ」
女戦士「その術を誰かが破ったという事はないのでしょうか?」
賢者「はっ! 例えや勇者や魔王であっても、あの結界術による封印は破れんよ」
238 = 227 :
女僧侶「勇者さまや魔王であってもですか!?」
賢者「そうだ。勇者や魔王であってもあの結界術は破れん。但し……」
賢者「勇者と魔王。人智を越えた力を持つ二人が手でも組めば別だがな」
女僧侶「そんな事は……」
賢者「ああ。普通に考えればありえん話だ」
女戦士「それでは、魔界へ通じる封印の結界は無事なのですね」
賢者「仮に結界が破られた場合、すぐに察知出来るように探知魔法も施してある」
魔法使い「そっか……じゃあ魔物の侵攻はありえないんですね?」
賢者「それはわからん」
女僧侶「えっ!?」
魔法使い「ど、どういう事なんですか、師匠!」
賢者「今から説明してやる。これが貴様らが聞きたかった二つ目になるな」
少年「はい。お願いします」
240 = 227 :
賢者「先程、二つの世界を繋ぐ通路が幾つか存在すると説明したな?」
女僧侶「はい、仰られていました」
賢者「私は何年もかけてその通路の在り処を調べ、それぞれに封印の術を施している」
魔法使い「なら、どうして!?」
賢者「落ち着け。すぐに頭に血が上るのは、貴様の悪い癖だ」
魔法使い「も、申し訳ありません。でも……」
賢者「魔物に国を滅ぼされた、貴様の気持ちは理解出来ん訳でもない。だが、私は教えたはずだぞ?」
魔法使い「『術者たるもの、常に冷静であれ』ですね……」
賢者「そうだ。私達術者は大きな力を持っている……」
魔法使い「『故にその力を正しく使う為に、常に冷静な判断が求められる』」
賢者「忘れている訳ではないようだな」
魔法使い「も、勿論です!」
賢者「冷静な判断が、仲間の危機を救う事もある。肝に銘じておけ」
魔法使い「はい……申し訳ありません」
241 :
面白い
242 = 135 :
面白いけど周りくどい
244 = 227 :
賢者「馬鹿弟子のせいで、話が脱線したな。済まなかった」
女僧侶「いえ、魔法使いさんのお気持ちを考えれば、仕方のない事だと……」
賢者「そう言ってもらえると助かる。こいつに代わって礼を言わせてくれ」
女僧侶「い、いえ……お礼を言われるようなことでは……」
魔法使い「いや、俺が話の腰を折っちまったんだ。すまなかった。師匠、話を続けてください」
賢者「では、話を戻そうか」
賢者「遺跡にある大通路を含め、各地にある通路は私が封印の術を施した……」
賢者「だが、未だ発見されていない通路がある可能性もある」
女僧侶「それでは、その通路を使って魔物が人間界に来ている可能性もあるわけですね?」
賢者「そうだ。その可能性は否定しない」
魔法使い「師匠、お聞きしたい事があります」
賢者「何だ?」
魔法使い「人間界と魔界を行き来するには、通路に依る以外の方法はないんでしょうか?」
賢者「他の可能性だな。貴様の考えを言ってみろ」
魔法使い「そうですね……考えられる手段としては魔法……転移魔法はどうなんですか?」
246 :
賢者「ほう……少しは使えるようになったじゃないか」
魔法使い「あ、ありがとうございます!」
賢者「貴様の言う通り、両方の世界を知っている者なら、転移魔法による世界の行き来は可能だ」
魔法使い「では、師匠は魔界に転移魔法で移動する事が出来る、そういう事ですね?」
賢者「そうだ。この人間界では私ともう一人、勇者にそれが出来たはずだ」
女戦士「……では、転移魔法を使って、人間界に来る事が出来る魔物がいるかもしれないのでしょうか?」
賢者「その可能性も否定しない。だがな、現時点では先に挙がった二つの可能性は極めて低いと言える」
魔法使い「師匠はどうしてそう思われるのですか?」
賢者「私が各地の術者達と連絡を取り合っている事は知っているな?」
魔法使い「はい。師匠の兄弟弟子や俺の兄弟弟子も含めて……ですよね」
賢者「そうだ。彼らとは定期的に連絡を取り合って、各地の情報を集めているが……」
賢者「魔王軍との戦い以降、人間界で魔物の姿を見たという情報は一度も耳にした事がない」
女僧侶「し、しかし、教会に寄せられた情報は一体……」
247 = 246 :
女戦士「えぇ『魔物に襲撃された』との話が各地に教会から挙がっております」
賢者「だから言ったのだ。『わからん』とな」
女僧侶「そんな!?」
賢者「確かに教会の情報網は侮れん。だが、私達の情報網には一切引っ掛かっていない」
少年「……それの意味するところは何だと思われますか?」
賢者「先程から黙っていると思えば……こいつらの前をそれを私に聞くのか?」
女僧侶「え……どういう事ですの、勇者さま」
女戦士「勇者殿は何かご存知なのですか?」
少年「知っている訳ではありませんが、二つの可能性が考えられます」
賢者「全く……私に話を振るとは、変わらずいい性格をしている」
魔法使い「えっと……何の話をしているんです、師匠?」
賢者「何でもない。気にするな」
魔法使い「はぁ……」
248 = 239 :
少年喋らんな
249 :
貴音のなでなで(響は寝る)
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