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元スレ魔王娘「おかえりなさい、あなた様……」勇者「ああ、ただいま……」
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~~魔王城 玉座の間にて~~
勇者「はぁ……はぁ……はぁ……」
魔王「もう諦めてはどうか?」
勇者「うる……さいっ……」
魔王「大人しく引き下がるなら、命は助けようと言っているのだ。悪い話ではなかろう?」
勇者「そんな……甘言に乗せられるものか!」
魔王「甘言ではない提案だ。仲間は倒れ、貴様は剣を握った手すら動かせない」
勇者「くっ……」
魔王「今、適切な処置を行えば、仲間達の命も助かろう。勇者ともあろうものが仲間を見捨てるのか?」
勇者「そ、それは……」
魔王「聞け。私を殺したところで、貴様らの世界は何も変わりはせん。それは貴様もわかって……」
勇者「それでも俺は!!」
――ガチャッ
??「……お父様?」
勇者「はぁ……はぁ……はぁ……」
魔王「もう諦めてはどうか?」
勇者「うる……さいっ……」
魔王「大人しく引き下がるなら、命は助けようと言っているのだ。悪い話ではなかろう?」
勇者「そんな……甘言に乗せられるものか!」
魔王「甘言ではない提案だ。仲間は倒れ、貴様は剣を握った手すら動かせない」
勇者「くっ……」
魔王「今、適切な処置を行えば、仲間達の命も助かろう。勇者ともあろうものが仲間を見捨てるのか?」
勇者「そ、それは……」
魔王「聞け。私を殺したところで、貴様らの世界は何も変わりはせん。それは貴様もわかって……」
勇者「それでも俺は!!」
――ガチャッ
??「……お父様?」
魔王「娘よ、ここに来るなと言っておいたはずだ」
魔王娘「でも……お父様が心配で……」
勇者「……む、娘だと!?」
魔王「全く困った娘だ……ご覧の通り私にも守るものがある。だから簡単に死んでやる訳にはいかんのだ」
勇者「……っ」
魔王娘「あ、あの……お父様、そちらの方は?」
魔王「あぁ、勇者だよ。私の命を奪いに来た、な」
魔王娘「まぁ、お父様の命を!? どうしてそんな酷い事を……」
魔王「さてな。人間には人間の都合というものがあるのだろう」
魔王娘「あの……」
勇者「な、何だ?」ビクッ
魔王娘「どうしてお父様の命を狙われるのですか?」
勇者「そ、それは、魔王が世界を滅ぼそうとしているからに決まっている!」
魔王娘「でも……お父様が心配で……」
勇者「……む、娘だと!?」
魔王「全く困った娘だ……ご覧の通り私にも守るものがある。だから簡単に死んでやる訳にはいかんのだ」
勇者「……っ」
魔王娘「あ、あの……お父様、そちらの方は?」
魔王「あぁ、勇者だよ。私の命を奪いに来た、な」
魔王娘「まぁ、お父様の命を!? どうしてそんな酷い事を……」
魔王「さてな。人間には人間の都合というものがあるのだろう」
魔王娘「あの……」
勇者「な、何だ?」ビクッ
魔王娘「どうしてお父様の命を狙われるのですか?」
勇者「そ、それは、魔王が世界を滅ぼそうとしているからに決まっている!」
魔王娘「お父様はそんな事を致しません!」
勇者「なっ!?」
魔王娘「お父様は私にも周りの方々にも優しくしてくれます。世界を滅ぼすなんてとんでもありません!」
勇者「し、しかし……」
魔王「娘よ、話をするだけ無駄だ」
魔王娘「お父様もそんな事を仰るから誤解されてしまうのです!」
魔王「なっ!?」
魔王娘「お父様のそういう所、私は良くないと常々思っておりましたのよ?」
魔王「し、しかし……」
魔王娘「言葉が通じるのに、自分の考えを伝えようと努力しない事は怠惰ではありませんか?」
魔王「む、むぅ……」
勇者「……ぷっ」
魔王娘「……?」
魔王「な、何がおかしい!?」
勇者「なっ!?」
魔王娘「お父様は私にも周りの方々にも優しくしてくれます。世界を滅ぼすなんてとんでもありません!」
勇者「し、しかし……」
魔王「娘よ、話をするだけ無駄だ」
魔王娘「お父様もそんな事を仰るから誤解されてしまうのです!」
魔王「なっ!?」
魔王娘「お父様のそういう所、私は良くないと常々思っておりましたのよ?」
魔王「し、しかし……」
魔王娘「言葉が通じるのに、自分の考えを伝えようと努力しない事は怠惰ではありませんか?」
魔王「む、むぅ……」
勇者「……ぷっ」
魔王娘「……?」
魔王「な、何がおかしい!?」
勇者「さっきまで命の遣り取りをしていたお前が、娘に頭が上がらないとか……くっくっくっ」
魔王「貴様……今すぐ死にたいらしいな」
魔王娘「お父様!」
魔王「うぐっ……」
勇者「……はぁ、もうやめた」
魔王「やめた? どういう事だ?」
勇者「言葉通りだよ。なんだか馬鹿馬鹿しくなってきた」
魔王娘「まぁ、わかった頂けたのですね!」
勇者「最初からわかっていたよ。世界が乱れるのは魔王のせいじゃない」
魔王娘「では、どうしてお父様の命を?」
勇者「必要だったんだよ。人間がまとまるのに大義名分って奴がさ」
魔王「難儀な話だな」
勇者「確かに、これまで小競り合いは続けていたが、大きな争いにはなっていなかった……」
勇者「この戦いの発端も元はといえば……」
魔王「……もう、よかろう?」
魔王「貴様……今すぐ死にたいらしいな」
魔王娘「お父様!」
魔王「うぐっ……」
勇者「……はぁ、もうやめた」
魔王「やめた? どういう事だ?」
勇者「言葉通りだよ。なんだか馬鹿馬鹿しくなってきた」
魔王娘「まぁ、わかった頂けたのですね!」
勇者「最初からわかっていたよ。世界が乱れるのは魔王のせいじゃない」
魔王娘「では、どうしてお父様の命を?」
勇者「必要だったんだよ。人間がまとまるのに大義名分って奴がさ」
魔王「難儀な話だな」
勇者「確かに、これまで小競り合いは続けていたが、大きな争いにはなっていなかった……」
勇者「この戦いの発端も元はといえば……」
魔王「……もう、よかろう?」
勇者「はぁ……そうだな。どうでもいいか……」
魔王「ふっ、急に腑抜けたな」
魔王娘「お父様!」
魔王「あっ、いや……わ、悪い意味で言った訳ではなくてだな」
魔王娘「悪意がないのでしたら、そのような言葉遣いはお止めください」
勇者「本当、お前って娘の尻に敷かれてるんだな……魔王なのに」
魔王「う、うるさい! そ、それでこれからどうするつもりだ、勇者よ」
勇者「さぁ? 魔王討伐を果たせなかった俺に、帰る場所なんてないだろうからな」
魔王娘「まぁ、どうしてですの?」
勇者「あぁ、人類の希望って奴を背負った責任さ」
魔王娘「責任、ですか?」
勇者「人類の希望として、悪の根源たる魔王に挑み……」
魔王娘「ですからお父様は……」
勇者「わかってるって。魔王が悪の根源っていうのは、俺達人間の決めつけだ」
魔王娘「はい」
魔王「ふっ、急に腑抜けたな」
魔王娘「お父様!」
魔王「あっ、いや……わ、悪い意味で言った訳ではなくてだな」
魔王娘「悪意がないのでしたら、そのような言葉遣いはお止めください」
勇者「本当、お前って娘の尻に敷かれてるんだな……魔王なのに」
魔王「う、うるさい! そ、それでこれからどうするつもりだ、勇者よ」
勇者「さぁ? 魔王討伐を果たせなかった俺に、帰る場所なんてないだろうからな」
魔王娘「まぁ、どうしてですの?」
勇者「あぁ、人類の希望って奴を背負った責任さ」
魔王娘「責任、ですか?」
勇者「人類の希望として、悪の根源たる魔王に挑み……」
魔王娘「ですからお父様は……」
勇者「わかってるって。魔王が悪の根源っていうのは、俺達人間の決めつけだ」
魔王娘「はい」
勇者「それじゃあ、続けるけどいいかな?」
魔王娘「はい。話の腰を折ってしまい、申し訳ございません」
勇者「魔王」
魔王「なんだ?」
勇者「いい子だな、お前の娘は」
魔王「ふふっ、そうであろう? 我が自慢の娘よ」
魔王娘「まぁ、お父様ったら///」
勇者「……んんっ。それで、その悪の根源たる魔王に、人類の希望を背負って戦いを挑み……」
魔王娘「……」
勇者「逃げ帰ってきた腑抜けの居場所なんて、勇者じゃない俺の居場所なんてどこにもないさ」
魔王娘「そんな……勇者様に労(ねぎら)いもなく、それではあんまりではありませんか?」
勇者「そういうものさ。人っていうのは、自分の都合通りにいかないとそれを拒絶する」
魔王娘「あの……」
勇者「なんだ?」
魔王娘「差し出がましいようですが……こうされては如何でしょう?」
魔王娘「はい。話の腰を折ってしまい、申し訳ございません」
勇者「魔王」
魔王「なんだ?」
勇者「いい子だな、お前の娘は」
魔王「ふふっ、そうであろう? 我が自慢の娘よ」
魔王娘「まぁ、お父様ったら///」
勇者「……んんっ。それで、その悪の根源たる魔王に、人類の希望を背負って戦いを挑み……」
魔王娘「……」
勇者「逃げ帰ってきた腑抜けの居場所なんて、勇者じゃない俺の居場所なんてどこにもないさ」
魔王娘「そんな……勇者様に労(ねぎら)いもなく、それではあんまりではありませんか?」
勇者「そういうものさ。人っていうのは、自分の都合通りにいかないとそれを拒絶する」
魔王娘「あの……」
勇者「なんだ?」
魔王娘「差し出がましいようですが……こうされては如何でしょう?」
~~十五年後 王城 謁見の間にて~~
王様「確かにこれは余が勇者殿に与えた紋章……」
少年「……」
王様「そなたが勇者殿の息子というのは誠の話であるようだ」
少年「はっ」
王様「魔王を見事討ち取ったとの噂の後、その行方も知れず……」
王様「国中に触れを出して、所在を当たらせておったのだが……」
王様「まさか、そなたのように立派な息子がおったとはな」
少年「勿体無いお言葉です」
王様「して、勇者殿は息災であられるのか?」
少年「父は……先日病により他界してございます」
王様「な、なんと!? 救国の英雄が……既にこの世の者ではないと……」
少年「はい。最期まで陛下の事を案じておりました」
王様「確かにこれは余が勇者殿に与えた紋章……」
少年「……」
王様「そなたが勇者殿の息子というのは誠の話であるようだ」
少年「はっ」
王様「魔王を見事討ち取ったとの噂の後、その行方も知れず……」
王様「国中に触れを出して、所在を当たらせておったのだが……」
王様「まさか、そなたのように立派な息子がおったとはな」
少年「勿体無いお言葉です」
王様「して、勇者殿は息災であられるのか?」
少年「父は……先日病により他界してございます」
王様「な、なんと!? 救国の英雄が……既にこの世の者ではないと……」
少年「はい。最期まで陛下の事を案じておりました」
王様「そうであったか。余の事を思うてくれるのなら、近くにおってくれれば良かったものを……」
少年「父は魔王を討ち取った事で自分の役目は終わったと……」
少年「また、自分の存在が『王の治世の妨げになってはいけない』と申しておりました」
王様「そこまで余の事を考えて……そのような心配は杞憂であるというのに」
??「あの方らしいといえばあの方らしいですが、せめて居場所ぐらい教えて欲しかったものです」
王様「おぉ、司教殿ではないか」
司教「はい。勇者の子息が来ていると伺い、許可も得ずに参上致しました。お許しください」
王様「よいよい。そなたならいつでも大歓迎だ」
司教「勿体ない御言葉にございます」
王様「少年よ、司教殿はそなたの父上と共に、魔王を討伐する為に働いてくれたのだ」
司教「あの頃はまだ修行中で、一介の僧侶でしたが……いやはや懐かしい」
王様「魔王討伐後は英雄として周辺の教会をまとめ、今は余の治世の手助けをしてくれている」
司教「手助けなどとんでもございません。力の微力さに身の竦む思いです」
王様「何を言うか。そちが知恵を貸してくれるお陰で、余も随分と助かっている」
司教「身に余る御言葉です。私はただ、赤心を以って尽くすのみにございます」
少年「父は魔王を討ち取った事で自分の役目は終わったと……」
少年「また、自分の存在が『王の治世の妨げになってはいけない』と申しておりました」
王様「そこまで余の事を考えて……そのような心配は杞憂であるというのに」
??「あの方らしいといえばあの方らしいですが、せめて居場所ぐらい教えて欲しかったものです」
王様「おぉ、司教殿ではないか」
司教「はい。勇者の子息が来ていると伺い、許可も得ずに参上致しました。お許しください」
王様「よいよい。そなたならいつでも大歓迎だ」
司教「勿体ない御言葉にございます」
王様「少年よ、司教殿はそなたの父上と共に、魔王を討伐する為に働いてくれたのだ」
司教「あの頃はまだ修行中で、一介の僧侶でしたが……いやはや懐かしい」
王様「魔王討伐後は英雄として周辺の教会をまとめ、今は余の治世の手助けをしてくれている」
司教「手助けなどとんでもございません。力の微力さに身の竦む思いです」
王様「何を言うか。そちが知恵を貸してくれるお陰で、余も随分と助かっている」
司教「身に余る御言葉です。私はただ、赤心を以って尽くすのみにございます」
司教「それにしても……」
少年「なんでしょう?」
司教「いえ、あなたが私の知る勇者と瓜二つなので……少し驚きました」
王様「うむ、わしもそう思ってた。まるで勇者殿と話しているようだ」
少年「そうでしょうか?」
司教「えぇ。多少、雰囲気に違いはありますが。それに……」
司教「その黒髪……それが金色(こんじき)であったなら、本人と言われてもわからない程だと」
少年「この色は母親譲りと聞いております。それにしても……」
王様「ふむ、どうか致したか?」
少年「いえ……父と共に魔王討伐をされたとの事ですが、司教猊下は随分とお若くお見えになるので……」
司教「ふふふっ、その事ですか。こう見えて三十を超えているのですよ、私も」
王様「おう、司教殿はいつ見ても若く見えてな。羨ましい限りだ」
司教「日頃の摂生の賜物と思っております」
王様「む……摂生か。余には耳が痛いな」
少年「なんでしょう?」
司教「いえ、あなたが私の知る勇者と瓜二つなので……少し驚きました」
王様「うむ、わしもそう思ってた。まるで勇者殿と話しているようだ」
少年「そうでしょうか?」
司教「えぇ。多少、雰囲気に違いはありますが。それに……」
司教「その黒髪……それが金色(こんじき)であったなら、本人と言われてもわからない程だと」
少年「この色は母親譲りと聞いております。それにしても……」
王様「ふむ、どうか致したか?」
少年「いえ……父と共に魔王討伐をされたとの事ですが、司教猊下は随分とお若くお見えになるので……」
司教「ふふふっ、その事ですか。こう見えて三十を超えているのですよ、私も」
王様「おう、司教殿はいつ見ても若く見えてな。羨ましい限りだ」
司教「日頃の摂生の賜物と思っております」
王様「む……摂生か。余には耳が痛いな」
司教「ただ、若く見えるせいで、下の者からも威厳がないと良く言われてしまいますが」
王様「ははは、まぁ司教殿の実力は皆の知るところであるからな。気にする必要はあるまい」
少年「失礼な事をお伺いして、申し訳ございません」
司教「お気になさらずに。それにしても、君はどうしてこの城に?」
王様「そうだ。余もそれを聞きたいと思っていたのだ」
少年「はい。父が亡くなる前の事です。自分が死んだら陛下をお訪ねするようにと……」
王様「勇者殿が?」
少年「永い治世、陛下にあらせられても、きっと頭を悩まされている事もおありであろうと」
王様「……勇者殿がそう言っておったのか?」
少年「はっ……」
司教「成る程、彼がそんな事を……」
王様「勇者殿は、未来を見通す力も持っていたのか?」
司教「さぁ……どうでしょうか? ただ、常人とは違う力を持ってはいたようではありますが」
少年「私に何か出来る事がありましょうか?」
王様「実は……魔王が復活したのではないかとの噂が、最近耳に入っておってな」
王様「ははは、まぁ司教殿の実力は皆の知るところであるからな。気にする必要はあるまい」
少年「失礼な事をお伺いして、申し訳ございません」
司教「お気になさらずに。それにしても、君はどうしてこの城に?」
王様「そうだ。余もそれを聞きたいと思っていたのだ」
少年「はい。父が亡くなる前の事です。自分が死んだら陛下をお訪ねするようにと……」
王様「勇者殿が?」
少年「永い治世、陛下にあらせられても、きっと頭を悩まされている事もおありであろうと」
王様「……勇者殿がそう言っておったのか?」
少年「はっ……」
司教「成る程、彼がそんな事を……」
王様「勇者殿は、未来を見通す力も持っていたのか?」
司教「さぁ……どうでしょうか? ただ、常人とは違う力を持ってはいたようではありますが」
少年「私に何か出来る事がありましょうか?」
王様「実は……魔王が復活したのではないかとの噂が、最近耳に入っておってな」
少年「魔王が復活……ですか?」
王様「うむ。魔王が勇者殿に討たれたとの噂が流れ、強力な魔物達の姿を見る事もなかったのだが……」
司教「陛下、ここから先は私が」
王様「……うむ、では頼もうか」
司教「ここ最近、辺境の村々や街道で、魔物によるものと思われる襲撃事件が相次いでいます」
少年「魔物の襲撃……」
司教「はい。各地の教会からの報告なので、これは間違いありません」
少年「父から、強力な魔物は魔界に封印された。そう聞いておりますが?」
司教「その通りです」
司教「旅の仲間であった賢者が、人間界と魔界との間に強力な結界を張り……」
司教「魔物達はその結界を越える事が出来ないはずなのです」
少年「それが、人々を襲っていると?」
王様「その通りなのだ」
少年「魔物を封じ込めているという結界はどうなっているのでしょうか?」
司教「結界の状況を確認する為、調査隊を出したのですが……彼らとも連絡が取れなくなりました」
王様「うむ。魔王が勇者殿に討たれたとの噂が流れ、強力な魔物達の姿を見る事もなかったのだが……」
司教「陛下、ここから先は私が」
王様「……うむ、では頼もうか」
司教「ここ最近、辺境の村々や街道で、魔物によるものと思われる襲撃事件が相次いでいます」
少年「魔物の襲撃……」
司教「はい。各地の教会からの報告なので、これは間違いありません」
少年「父から、強力な魔物は魔界に封印された。そう聞いておりますが?」
司教「その通りです」
司教「旅の仲間であった賢者が、人間界と魔界との間に強力な結界を張り……」
司教「魔物達はその結界を越える事が出来ないはずなのです」
少年「それが、人々を襲っていると?」
王様「その通りなのだ」
少年「魔物を封じ込めているという結界はどうなっているのでしょうか?」
司教「結界の状況を確認する為、調査隊を出したのですが……彼らとも連絡が取れなくなりました」
王様「やはり、賢者殿に話を聞くのが良いのではないか?」
司教「はい。結界を作ったのはあの方ですから、それが最善だと考えますが……」
少年「……何か問題でもあるのでしょうか?」
司教「問題というか……賢者は難しい方なので、まともに相手にされるかどうか」
王様「勇者殿のご子息ならば、賢者殿も話を聞いてくれるのではないか?」
少年「私が、ですか?」
司教「陛下、実は私も同じ事を考えておりました」
王様「うむ」
司教「本来ならば、私が直接に彼の方の下に赴けばよいのでしょうが、今はそれも難しく……」
王様「司教殿は立場上、濫りに動く事も叶うまい。そこで少年よ」
少年「はっ」
王様「司教殿の代わりに賢者殿の下に赴き、事態の確認をしてはもらえまいか?」
司教「勿論、君一人で行ってくれとは言いません。教会からも人を付けましょう」
少年「私などでよければ喜んで」
王様「おぉ、頼まれてくれるか!」
司教「はい。結界を作ったのはあの方ですから、それが最善だと考えますが……」
少年「……何か問題でもあるのでしょうか?」
司教「問題というか……賢者は難しい方なので、まともに相手にされるかどうか」
王様「勇者殿のご子息ならば、賢者殿も話を聞いてくれるのではないか?」
少年「私が、ですか?」
司教「陛下、実は私も同じ事を考えておりました」
王様「うむ」
司教「本来ならば、私が直接に彼の方の下に赴けばよいのでしょうが、今はそれも難しく……」
王様「司教殿は立場上、濫りに動く事も叶うまい。そこで少年よ」
少年「はっ」
王様「司教殿の代わりに賢者殿の下に赴き、事態の確認をしてはもらえまいか?」
司教「勿論、君一人で行ってくれとは言いません。教会からも人を付けましょう」
少年「私などでよければ喜んで」
王様「おぉ、頼まれてくれるか!」
少年「はい。陛下からの命、どうして断れましょうか」
王様「ふふっ。こうしてお主と話をしておると、勇者殿と話をしているような錯覚を覚えるな」
少年「父とですか?」
王様「うむ、勇者殿もお主のように真っ直ぐな眼差しであったよ」
少年「……」
司教「では、私は教会に戻り人員を選出致します」
王様「おぉ、宜しく頼むぞ、司教殿」
少年「あの……」
司教「うん、どうかしましたか?」
少年「出来れば、私一人で行くという訳には参りませんでしょうか?」
王様「なんと!?」
司教「君が一人で? 一人でなければ何か不都合でもありますか?」
少年「いえ、父が亡くなった後はずっと一人旅だったもので……出来れば一人の方が……」
司教「平時ならそれでも良いかもしれませんが、事は世界の存亡に係わる事かもしれません」
王様「ふむ、司教殿の言う通りだな。それに先程も言ったが、魔物達の出没もあると聞く」
王様「ふふっ。こうしてお主と話をしておると、勇者殿と話をしているような錯覚を覚えるな」
少年「父とですか?」
王様「うむ、勇者殿もお主のように真っ直ぐな眼差しであったよ」
少年「……」
司教「では、私は教会に戻り人員を選出致します」
王様「おぉ、宜しく頼むぞ、司教殿」
少年「あの……」
司教「うん、どうかしましたか?」
少年「出来れば、私一人で行くという訳には参りませんでしょうか?」
王様「なんと!?」
司教「君が一人で? 一人でなければ何か不都合でもありますか?」
少年「いえ、父が亡くなった後はずっと一人旅だったもので……出来れば一人の方が……」
司教「平時ならそれでも良いかもしれませんが、事は世界の存亡に係わる事かもしれません」
王様「ふむ、司教殿の言う通りだな。それに先程も言ったが、魔物達の出没もあると聞く」
>>12
どうしてそうなる
どうしてそうなる
司教「陛下の仰られるように、魔物達の出没が確認されている以上、平時とは状況も違います」
少年「はい」
司教「確実に任務を成し遂げて貰わなければならないゆえ、複数の人員で当たるのは当然の事」
少年「……」
司教「仲間との旅も、しばらくは落ち着かないかもしれませんが、旅を続ける内に慣れると思います」
司教「私達も魔王討伐の旅に出た当初は、慣れない旅で苦労したものです」
王様「ほう、司教殿達もそうであったのか?」
司教「お恥ずかしながら。見ず知らず同士が突然一緒に旅をするのです。諍(いさか)いがあって当然かと」
王様「ふむ、言われみればそういう問題もあるのかも知れんな」
司教「ですが、それを乗り越えてこそ、仲間としての絆が強くなるものです」
王様「どうであろうか? 司教殿の言う通り、万全を期す為にも仲間と共に旅をしてはくれんか?」
少年「……陛下がそう仰るのでしたら」
王様「よし、決まりだ! それでは司教殿、改めて頼みますぞ」
司教「はい。それではしばしの御猶予を頂きます」
少年「はい」
司教「確実に任務を成し遂げて貰わなければならないゆえ、複数の人員で当たるのは当然の事」
少年「……」
司教「仲間との旅も、しばらくは落ち着かないかもしれませんが、旅を続ける内に慣れると思います」
司教「私達も魔王討伐の旅に出た当初は、慣れない旅で苦労したものです」
王様「ほう、司教殿達もそうであったのか?」
司教「お恥ずかしながら。見ず知らず同士が突然一緒に旅をするのです。諍(いさか)いがあって当然かと」
王様「ふむ、言われみればそういう問題もあるのかも知れんな」
司教「ですが、それを乗り越えてこそ、仲間としての絆が強くなるものです」
王様「どうであろうか? 司教殿の言う通り、万全を期す為にも仲間と共に旅をしてはくれんか?」
少年「……陛下がそう仰るのでしたら」
王様「よし、決まりだ! それでは司教殿、改めて頼みますぞ」
司教「はい。それではしばしの御猶予を頂きます」
~~二時間後 王城 謁見の間にて~~
少年「それでは、このお二方と共に西の果てにある賢者の塔を目指せば良いのですね?」
司教「えぇ、彼の方はそこに居を構えているはず。では二人共、彼の事を宜しく頼みましたよ」
僧侶「お任せください司教さま」
戦士「はい」
司教「女僧侶は信仰も篤く勉強熱心な才媛、女戦士は昨年の武術大会で優勝している程の腕前です」
女僧侶「さ、才媛なんてとんでもございません。まだまだ至らぬ事ばかりです……」
少年「お二人共よろしくお願いします。武術大会で優勝とは凄いですね」
女戦士「……」
司教「うん……二人共歳は若いですが、旅の仲間として君の力になってくれるはずです」
少年「これからよろしくお願いします」
女戦士「……よろしくお願いします」
女僧侶「こちらこそよろしくお願いしますわ、勇者さま」
少年「……勇者だったのは私の父で、私は勇者ではありません」
少年「それでは、このお二方と共に西の果てにある賢者の塔を目指せば良いのですね?」
司教「えぇ、彼の方はそこに居を構えているはず。では二人共、彼の事を宜しく頼みましたよ」
僧侶「お任せください司教さま」
戦士「はい」
司教「女僧侶は信仰も篤く勉強熱心な才媛、女戦士は昨年の武術大会で優勝している程の腕前です」
女僧侶「さ、才媛なんてとんでもございません。まだまだ至らぬ事ばかりです……」
少年「お二人共よろしくお願いします。武術大会で優勝とは凄いですね」
女戦士「……」
司教「うん……二人共歳は若いですが、旅の仲間として君の力になってくれるはずです」
少年「これからよろしくお願いします」
女戦士「……よろしくお願いします」
女僧侶「こちらこそよろしくお願いしますわ、勇者さま」
少年「……勇者だったのは私の父で、私は勇者ではありません」
女僧侶「え、でも……」
王様「確かに勇者はそなたの父であるのだ。些細な事に目くじらを立てる事もあるまい」
少年「しかし……」
王様「余の与えた勇者の紋章を持っておるのだ。その紋章に恥じぬ新たな勇者となってくれんか?」
少年「私にとっては父の形見ですが、新たな勇者にという事でしたら、これはお返しします」
王様「なんじゃと!?」
少年「確かに私の父は勇者でしたが、私はそれ程の器ではありません」
司教「君、陛下に対して無礼な言葉は許されませんよ!」
少年「……申し訳ございません」
王様「司教殿、待たれよ」
司教「いえ、しかし……」
王様「待てと申している。では、一先ずその紋章はそなたに預けておく」
少年「預ける、ですか?」
王様「そうだ。勇者よ、その紋章はそなたの父の形見でもあるのだろう。それを手放すとは何事だ」
少年「はっ……」
王様「確かに勇者はそなたの父であるのだ。些細な事に目くじらを立てる事もあるまい」
少年「しかし……」
王様「余の与えた勇者の紋章を持っておるのだ。その紋章に恥じぬ新たな勇者となってくれんか?」
少年「私にとっては父の形見ですが、新たな勇者にという事でしたら、これはお返しします」
王様「なんじゃと!?」
少年「確かに私の父は勇者でしたが、私はそれ程の器ではありません」
司教「君、陛下に対して無礼な言葉は許されませんよ!」
少年「……申し訳ございません」
王様「司教殿、待たれよ」
司教「いえ、しかし……」
王様「待てと申している。では、一先ずその紋章はそなたに預けておく」
少年「預ける、ですか?」
王様「そうだ。勇者よ、その紋章はそなたの父の形見でもあるのだろう。それを手放すとは何事だ」
少年「はっ……」
王様「そなたが今回の任務を見事に成し遂げた暁には……」
王様「新たな勇者として、正式にその紋章をそなたに授ける。それでどうかな?」
少年「……そういう事でしたら、それまでの間、この紋章をお預かりいたします」
王様「うむ。紋章に恥じぬ活躍を期待しておるぞ」
女戦士「……よろしいでしょうか?」
司教「ん、何かね?」
女戦士「そろそろ出発しませんと、今日中に隣の街まで辿り着くのが難しくなります」
司教「……そうですね。話も纏まったようですし、出発してもらいましようか」
王様「では、三人共、頼んだぞ!」
少年・女僧侶・女戦士「はっ!」
………
王様「……さて、どうなる事か」
司教「西の最果てにある街までは、特に大きな問題もなく辿り着けるでしょう」
王様「その先はどうであろうか?」
司教「その先は陛下の御威光も教会の力も及ばぬ地。正念場かと……」
王様「新たな勇者として、正式にその紋章をそなたに授ける。それでどうかな?」
少年「……そういう事でしたら、それまでの間、この紋章をお預かりいたします」
王様「うむ。紋章に恥じぬ活躍を期待しておるぞ」
女戦士「……よろしいでしょうか?」
司教「ん、何かね?」
女戦士「そろそろ出発しませんと、今日中に隣の街まで辿り着くのが難しくなります」
司教「……そうですね。話も纏まったようですし、出発してもらいましようか」
王様「では、三人共、頼んだぞ!」
少年・女僧侶・女戦士「はっ!」
………
王様「……さて、どうなる事か」
司教「西の最果てにある街までは、特に大きな問題もなく辿り着けるでしょう」
王様「その先はどうであろうか?」
司教「その先は陛下の御威光も教会の力も及ばぬ地。正念場かと……」
~~二週間後 最西の街近郊にて~~
商隊長「あと半日もしない内に、最西の街に到着しますよ」
女僧侶「ようやくですね、勇者さま」
少年「あの、その勇者というのは止めてくださいと何度言えば……」
商隊長「あっはっはっ、何をご謙遜なさいますか。その紋章をお持ちという事が紛れもない勇者の証ですよ」
女僧侶「えぇ。商隊長殿の言う通りですわ」
少年「はぁ……」
商隊長「いや~しかし助かりました。まさか勇者様御一行に商隊の警護をしてもらえるなんて」
女僧侶「ちょうど目的地もご一緒でしたし、何よりも教会の荷物を運ぶという事でしたので」
商隊長「ここまで何事もなく来られたのも、神の御加護でしょうかな?」
女僧侶「そうですね。神の御加護に感謝しましょう」
女戦士「……勇者殿」
少年「ええ、どうやら……」
商隊長「ど、どうかなさいましたかな?」
女戦士「どうも雰囲気がおかしい……もしかしたら、囲まれたかもしれません」
商隊長「あと半日もしない内に、最西の街に到着しますよ」
女僧侶「ようやくですね、勇者さま」
少年「あの、その勇者というのは止めてくださいと何度言えば……」
商隊長「あっはっはっ、何をご謙遜なさいますか。その紋章をお持ちという事が紛れもない勇者の証ですよ」
女僧侶「えぇ。商隊長殿の言う通りですわ」
少年「はぁ……」
商隊長「いや~しかし助かりました。まさか勇者様御一行に商隊の警護をしてもらえるなんて」
女僧侶「ちょうど目的地もご一緒でしたし、何よりも教会の荷物を運ぶという事でしたので」
商隊長「ここまで何事もなく来られたのも、神の御加護でしょうかな?」
女僧侶「そうですね。神の御加護に感謝しましょう」
女戦士「……勇者殿」
少年「ええ、どうやら……」
商隊長「ど、どうかなさいましたかな?」
女戦士「どうも雰囲気がおかしい……もしかしたら、囲まれたかもしれません」
商隊長「も、もしや魔物共が……」
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
少年「っ!? 皆、荷車の陰に!」
ドスッ! ドスッ! ドスッ!
商隊長「ひぇっ!?」
女僧侶「み、皆さん、お怪我は!?」
少年「こっちは大丈夫です!」
商隊長「わ、我々の方も大丈夫です」
女戦士「まずいですね……飛んできた矢の数を考えると、相手はかなりの人数かと」
少年「二射目は……来ないようですが」
??「はっはっはっ、情報通りじゃねぇか」
女戦士「何者だっ!」
??「何者かなんて、てめぇらには関係ねぇ事だろ?」
女僧侶「わ、私たちは教会の者です。それを知っての狼藉ですか!」
??「あぁ、糞ったれ教会の犬共と知っての狼藉さ」
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
少年「っ!? 皆、荷車の陰に!」
ドスッ! ドスッ! ドスッ!
商隊長「ひぇっ!?」
女僧侶「み、皆さん、お怪我は!?」
少年「こっちは大丈夫です!」
商隊長「わ、我々の方も大丈夫です」
女戦士「まずいですね……飛んできた矢の数を考えると、相手はかなりの人数かと」
少年「二射目は……来ないようですが」
??「はっはっはっ、情報通りじゃねぇか」
女戦士「何者だっ!」
??「何者かなんて、てめぇらには関係ねぇ事だろ?」
女僧侶「わ、私たちは教会の者です。それを知っての狼藉ですか!」
??「あぁ、糞ったれ教会の犬共と知っての狼藉さ」
女僧侶「く、くそったれきょうかい!?」
商隊長「あわわわっ!?」
女戦士「目的は何だっ!」
若い男「ふん。そんな事は自分達の胸に手を当てて考えやがれ、犬共が!」
女戦士(若い男……それにあの手にした杖……魔法の使い手か?)
女僧侶「だっ、誰が犬ですか!」
若い男「まぁいい。幾ら糞ったれ相手でも、人殺しは俺の主義じゃねぇ」
女僧侶「矢を射掛けておいて、今更何を……」
若い男「その荷物を置いていけば、命までは取らないでおいてやる」
女戦士「野盗……にしては」
女僧侶「矢を射掛け、教会を侮辱しておきながら……あなた方は盗みを働く下衆ではありませんか!」
商人「ぞ、賊をあまり刺激しては……」
若い男「だから、こっちにはそうしなきゃならない理由ってもんがあるんだよ」
少年「……理由とはなんです?」
商隊長「あわわわっ!?」
女戦士「目的は何だっ!」
若い男「ふん。そんな事は自分達の胸に手を当てて考えやがれ、犬共が!」
女戦士(若い男……それにあの手にした杖……魔法の使い手か?)
女僧侶「だっ、誰が犬ですか!」
若い男「まぁいい。幾ら糞ったれ相手でも、人殺しは俺の主義じゃねぇ」
女僧侶「矢を射掛けておいて、今更何を……」
若い男「その荷物を置いていけば、命までは取らないでおいてやる」
女戦士「野盗……にしては」
女僧侶「矢を射掛け、教会を侮辱しておきながら……あなた方は盗みを働く下衆ではありませんか!」
商人「ぞ、賊をあまり刺激しては……」
若い男「だから、こっちにはそうしなきゃならない理由ってもんがあるんだよ」
少年「……理由とはなんです?」
若い男「だから、そいつは自分の胸に手を当てて考えろって言ってんのよ!」
女僧侶「お話になりませんわ!!」
少年「あの……」
女戦士「何でしょう?」
少年「少し様子がおかしいと思いませんか?」
女戦士「そうですね。我々を囲んでいる気配はありますが、他の者が姿を現していません」
少年「居場所を悟られない為……という事は?」
女戦士「その可能性もありますが、現時点ではなんとも……」
若い男「おい! そこの二人! 何をこそこそしてやがる!」
少年「……皆をお任せして大丈夫ですか?」
女戦士「どうされるおつもりです?」
少年「お任せしても大丈夫ですかと聞いています」
女戦士「……現状を維持する程度でしたら何とか」
若い男「おいこら! 無視すんなお前ら!」
少年「では……お願いします」ダッ
女僧侶「お話になりませんわ!!」
少年「あの……」
女戦士「何でしょう?」
少年「少し様子がおかしいと思いませんか?」
女戦士「そうですね。我々を囲んでいる気配はありますが、他の者が姿を現していません」
少年「居場所を悟られない為……という事は?」
女戦士「その可能性もありますが、現時点ではなんとも……」
若い男「おい! そこの二人! 何をこそこそしてやがる!」
少年「……皆をお任せして大丈夫ですか?」
女戦士「どうされるおつもりです?」
少年「お任せしても大丈夫ですかと聞いています」
女戦士「……現状を維持する程度でしたら何とか」
若い男「おいこら! 無視すんなお前ら!」
少年「では……お願いします」ダッ
若い男「こ、こいつ! 突っ込んで!? くそっ!!」
女僧侶「魔法の詠唱!? 勇者さま危ない!」
女戦士(矢が飛んでこない……しかし、あれでは魔法の餌食に……)
若い男「くらえっ!!」
ゴウッ!!
若い男「なっ!? 火球が消えた!?」
少年「動くなっ!」スチャッ
若い男「う、うぐっ……」
少年「もう一度言う、動くな。動けばこの剣で胸を貫く」
若い男「く、くそっ……どうなってんだよ……」
少年「隠れている連中! こいつの命を助けて欲しければ、武器を捨てて出て来い!」
若い男「お、俺の事はいいから逃げろ!」
少年「動くなと言ったはずです」チクチク
若い男「ぐぅっ……」
女僧侶「魔法の詠唱!? 勇者さま危ない!」
女戦士(矢が飛んでこない……しかし、あれでは魔法の餌食に……)
若い男「くらえっ!!」
ゴウッ!!
若い男「なっ!? 火球が消えた!?」
少年「動くなっ!」スチャッ
若い男「う、うぐっ……」
少年「もう一度言う、動くな。動けばこの剣で胸を貫く」
若い男「く、くそっ……どうなってんだよ……」
少年「隠れている連中! こいつの命を助けて欲しければ、武器を捨てて出て来い!」
若い男「お、俺の事はいいから逃げろ!」
少年「動くなと言ったはずです」チクチク
若い男「ぐぅっ……」
>>13
お前のせいで
お前のせいで
子供A「やめろ! 兄ちゃんを放せ!!」
女僧侶「こ、子供!?」
若い男「馬鹿! お前ら逃げろっ!」
子供B「兄ちゃんを放って逃げられるかよ!」
若い男「お、お前達……」
商隊長「ぜ、全員……子供じゃないですか!?」
女戦士「どういう事……でしょう?」
少年「……全員、武器を捨てて一箇所に集まるんだ」
女僧侶「ゆ、勇者さま?」
若い男「お、俺の命ならくれてやるからあいつらだけは……」
少年「あなたの命なんて欲しくもない」
子供A「これでいいだろ! 兄ちゃんを放せ!」ガラン
少年「女戦士さん」
女戦士「はい」
少年「縄を持ってきてくれませんか? 念の為に彼を縛っておきたいので」
女僧侶「こ、子供!?」
若い男「馬鹿! お前ら逃げろっ!」
子供B「兄ちゃんを放って逃げられるかよ!」
若い男「お、お前達……」
商隊長「ぜ、全員……子供じゃないですか!?」
女戦士「どういう事……でしょう?」
少年「……全員、武器を捨てて一箇所に集まるんだ」
女僧侶「ゆ、勇者さま?」
若い男「お、俺の命ならくれてやるからあいつらだけは……」
少年「あなたの命なんて欲しくもない」
子供A「これでいいだろ! 兄ちゃんを放せ!」ガラン
少年「女戦士さん」
女戦士「はい」
少年「縄を持ってきてくれませんか? 念の為に彼を縛っておきたいので」
商隊長「隠れていたのは子供ばかりが十七人も……」
少年「私もまだ大人とは言える歳ではありませんが」
商隊長「い、いえ……別に馬鹿にしているわけでは……」
少年「さて、今度は答えてくれますね。どうして我々を襲ったんですか?」
若い男「……あんたら教会の人間だろ?」
女僧侶「この姿を見ればおわかりになるでしょう!」
女戦士「……」
少年「厳密に言えば私は違いますが……彼らはそうなります」
若い男「なぁ、こいつらの命は助けてくれ! 頼むっ!」
少年「先程も言いましたが、あなた方の命なんて欲しくありません。襲われた理由を知りたいのです」
若い男「理由か……あんたら本当に心当たりがないのか?」
少年「ないからこうして聞いているんです」
若い男「そこのおっさんは……そうじゃないみたいだよな?」
商隊長「えっ!? わ、私は……」
若い男「まぁいいさ、話してやるよ。その代わり、こいつらの命だけは助けてくれよ?」
少年「私もまだ大人とは言える歳ではありませんが」
商隊長「い、いえ……別に馬鹿にしているわけでは……」
少年「さて、今度は答えてくれますね。どうして我々を襲ったんですか?」
若い男「……あんたら教会の人間だろ?」
女僧侶「この姿を見ればおわかりになるでしょう!」
女戦士「……」
少年「厳密に言えば私は違いますが……彼らはそうなります」
若い男「なぁ、こいつらの命は助けてくれ! 頼むっ!」
少年「先程も言いましたが、あなた方の命なんて欲しくありません。襲われた理由を知りたいのです」
若い男「理由か……あんたら本当に心当たりがないのか?」
少年「ないからこうして聞いているんです」
若い男「そこのおっさんは……そうじゃないみたいだよな?」
商隊長「えっ!? わ、私は……」
若い男「まぁいいさ、話してやるよ。その代わり、こいつらの命だけは助けてくれよ?」
少年「……では、最西の街は駐在している司祭殿の圧政に苦しめられていると?」
若い男「そうさ、布施と称して教会が大金を要求し……」
少年「お布施……ですか」
若い男「あぁ、布施を出さなければ背教者として扱われ、役人の手で鉱山に強制連行さ」
女僧侶「し、信じられません! 教会の司祭さまがそんな事を!?」
若い男「信じるも信じないもあんたらの自由。最西の街に行けばわかる事さ」
少年「しかし、お布施を出さないからといって、何故役人が出てくるんです?」
若い男「最西の街は、首都から遠い辺境にあるって事もあって、教会の力が強い街なんだよ」
女戦士「……」
若い男「加えて、教会が独自にそれなりの兵力を抱えてやがる」
少年「教会がですか?」
若い男「教会が私兵を抱えているなんて常識よ? その姉ちゃんだってそうじゃねぇのか?」
女戦士「わ、私は……」
若い男「教会の命令には、絶対服従の狂信的な連中も多いからな。魔物より性質が悪いっての」
女僧侶「信徒の皆さんを侮辱するのは止めなさい!」
若い男「そうさ、布施と称して教会が大金を要求し……」
少年「お布施……ですか」
若い男「あぁ、布施を出さなければ背教者として扱われ、役人の手で鉱山に強制連行さ」
女僧侶「し、信じられません! 教会の司祭さまがそんな事を!?」
若い男「信じるも信じないもあんたらの自由。最西の街に行けばわかる事さ」
少年「しかし、お布施を出さないからといって、何故役人が出てくるんです?」
若い男「最西の街は、首都から遠い辺境にあるって事もあって、教会の力が強い街なんだよ」
女戦士「……」
若い男「加えて、教会が独自にそれなりの兵力を抱えてやがる」
少年「教会がですか?」
若い男「教会が私兵を抱えているなんて常識よ? その姉ちゃんだってそうじゃねぇのか?」
女戦士「わ、私は……」
若い男「教会の命令には、絶対服従の狂信的な連中も多いからな。魔物より性質が悪いっての」
女僧侶「信徒の皆さんを侮辱するのは止めなさい!」
若い男「はっ! さっきからうっさい姉ちゃんだねぇ、全く」
女僧侶「ぐぬぬぬぬ……」
少年「まぁまぁ、落ち着いてください」
女僧侶「で、でも!」
若い男「……まぁ、そういう訳で、役人共も教会の威光には逆らえないって訳よ」
少年「この子供達は?」
若い男「こいつらは布施を払えなくて、親が強制労働に遭ってる連中さ」
女戦士「……」
若い男「中には強制労働の果てに、親が命を落とした奴だっている」
子供C「と、父ちゃん……うぅっ……」
子供A「馬鹿っ! 泣くなっ!!」
少年「……どう思いますか?」
女僧侶「私には信じられません! 教会がそんな圧政を強いるなんて!」
女戦士「……真偽はわかりませんが、この子供達の栄養状況が芳しくないのは見ての通りです」
少年「確かに。皆、酷く痩せ細っているのは間違いありませんね」
女僧侶「ぐぬぬぬぬ……」
少年「まぁまぁ、落ち着いてください」
女僧侶「で、でも!」
若い男「……まぁ、そういう訳で、役人共も教会の威光には逆らえないって訳よ」
少年「この子供達は?」
若い男「こいつらは布施を払えなくて、親が強制労働に遭ってる連中さ」
女戦士「……」
若い男「中には強制労働の果てに、親が命を落とした奴だっている」
子供C「と、父ちゃん……うぅっ……」
子供A「馬鹿っ! 泣くなっ!!」
少年「……どう思いますか?」
女僧侶「私には信じられません! 教会がそんな圧政を強いるなんて!」
女戦士「……真偽はわかりませんが、この子供達の栄養状況が芳しくないのは見ての通りです」
少年「確かに。皆、酷く痩せ細っているのは間違いありませんね」
少年「商隊長さん?」
商隊長「はっ、はい!?」
少年「あなたは教会の依頼を受けて、最西の街にはよく行かれていますね?」
商隊長「わ、私は頼まれて荷物を運んでいるだけで何も……」
少年「……」ジロッ
商隊長「ゆ、勇者様……私の口からは何とも……お察しください」
若い男「……勇者だと?」
少年「そこまで聞けば十分です。女僧侶さん?」
女僧侶「はっ、はいっ」
少年「確認しますが、困窮した方々に救いの手を差し伸べる事は、教義に反していませんね?」
女僧侶「勿論です! むしろ進んで行うべき事と司教さまも常々仰られていますわ」
少年「では、荷物の一部はここに置いて我々は街を目指します」
商隊長「は?」
少年「困窮している子供達に教会の物資を施すのです。何か問題でも?」
商隊長「い、いやそれは……しかし……」
商隊長「はっ、はい!?」
少年「あなたは教会の依頼を受けて、最西の街にはよく行かれていますね?」
商隊長「わ、私は頼まれて荷物を運んでいるだけで何も……」
少年「……」ジロッ
商隊長「ゆ、勇者様……私の口からは何とも……お察しください」
若い男「……勇者だと?」
少年「そこまで聞けば十分です。女僧侶さん?」
女僧侶「はっ、はいっ」
少年「確認しますが、困窮した方々に救いの手を差し伸べる事は、教義に反していませんね?」
女僧侶「勿論です! むしろ進んで行うべき事と司教さまも常々仰られていますわ」
少年「では、荷物の一部はここに置いて我々は街を目指します」
商隊長「は?」
少年「困窮している子供達に教会の物資を施すのです。何か問題でも?」
商隊長「い、いやそれは……しかし……」
少年「女僧侶さん、問題ありませんね?」
女僧侶「は、はいっ!」
女戦士「……」
若い男「あんたら……どういうつもりだ?」
少年「どういうつもりも何も……話を聞いていなかったんですか?」
若い男「い、いや……聞いてはいたが……」
少年「ではそういう事です。女戦士さん?」
女戦士「はい」
少年「この荷車から一度荷物を降ろして、これとそっちの食糧を荷車に積み直します」
女戦士「わかりました。時間もありませんのですぐに終わらせます」
商隊長「こ、困ります! おやめくださいっ!!」
少年「この縄はもう必要ありませんね」
商隊長「あっ!?」
女僧侶「勇者さま、縄を解いては……」
子供達「「「兄ちゃん!」」」
女僧侶「は、はいっ!」
女戦士「……」
若い男「あんたら……どういうつもりだ?」
少年「どういうつもりも何も……話を聞いていなかったんですか?」
若い男「い、いや……聞いてはいたが……」
少年「ではそういう事です。女戦士さん?」
女戦士「はい」
少年「この荷車から一度荷物を降ろして、これとそっちの食糧を荷車に積み直します」
女戦士「わかりました。時間もありませんのですぐに終わらせます」
商隊長「こ、困ります! おやめくださいっ!!」
少年「この縄はもう必要ありませんね」
商隊長「あっ!?」
女僧侶「勇者さま、縄を解いては……」
子供達「「「兄ちゃん!」」」
少年「……野盗に襲撃され、荷の全てを奪われた事にしてもよいのですが?」
商隊長「それはもっと困ります!!!」
若い男「俺達は野盗じゃねぇ!」
少年「そんな事はどうでもいいでしょう?」
若い男「良くあるかっ!」
少年「あなた達は誰も傷つかず傷つけず食糧を手に入れる。私達は全てとはいかないまでも荷物を街まで運ぶ」
若い男「……」
少年「何か問題でもありますか?」
若い男「どうして……」
少年「うん?」
若い男「どうして俺の魔法がお前に効かなかった! お前、一体何もんだよ?」
女戦士(そうだ。この男の放った魔法の火球が、勇者殿の前でかき消すように消失した)
少年「何者と言われても……ただの旅人としか」
若い男「ただの旅人にあんな芸当が出来るか! それに勇者とか何とか呼ばれてやがったよな?」
少年「勇者だったのは私の父です。その子供というだけで、私には何の取り柄もありません」
商隊長「それはもっと困ります!!!」
若い男「俺達は野盗じゃねぇ!」
少年「そんな事はどうでもいいでしょう?」
若い男「良くあるかっ!」
少年「あなた達は誰も傷つかず傷つけず食糧を手に入れる。私達は全てとはいかないまでも荷物を街まで運ぶ」
若い男「……」
少年「何か問題でもありますか?」
若い男「どうして……」
少年「うん?」
若い男「どうして俺の魔法がお前に効かなかった! お前、一体何もんだよ?」
女戦士(そうだ。この男の放った魔法の火球が、勇者殿の前でかき消すように消失した)
少年「何者と言われても……ただの旅人としか」
若い男「ただの旅人にあんな芸当が出来るか! それに勇者とか何とか呼ばれてやがったよな?」
少年「勇者だったのは私の父です。その子供というだけで、私には何の取り柄もありません」
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