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    元スレ勇者「感情が無い」

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    151 = 1 :

    勇者「どんなに傷を負おうとも、体が動き戦う意思さえあれば勝機は存在します」

    勇者「例えそれが僅かでも」

    鍛冶師「だがそう簡単に立ち上がれるものでもないだろう……」

    鍛冶師「そうか……お前は強靭な魂を持つ者なのかもしれないな」

    勇者「それは?」

    鍛冶師「強靭な魂を持つ者は不屈の精神を育み、鋼鉄の身体を造るという」

    鍛冶師「ただそうした者は、精神や思考に異常を来たすともされる。お前の場合は感情の欠落か」

    勇者「そんな大層なものならいいのですがね」

    鍛冶師「本当に夢の無い奴だな……」

    153 = 114 :

    普通に会話できるおっさんただものじゃないんだな

    154 = 1 :

    鍛冶師「ああ……行商と言えば、何でも北東の国の王子が結婚をするつもりという話を聞いたな」

    鍛冶師「それも相手は勇者だそうだ。遠い親戚とは言え同じ血筋の者だ。会いに行ってみるか?」

    勇者「……いえ、ここに来る前に会いましたので」

    鍛冶師「そうか。会ったという事は知り合いか」

    勇者「従姉です。自分にとって唯一の理解者、だと思います」

    鍛冶師「……良いのか?」

    勇者「いっそ自分にプロポーズしてくれないか、と言われました」

    勇者「ですが……王子でも俺でも、彼女にとって妥協の幸せなんです」

    155 = 1 :

    鍛冶師「お前も頭が固い奴だ。お前自身が気をよくしている相手に言われて尚動かないのか」

    勇者「彼女が感じているのは、共になる事を不安に思っているんだと思います」

    鍛冶師「不安?」

    勇者「自分には感情がありませんから、愛するという気持ちもよく分かりませんし」

    勇者「独占欲というか支配欲というか……相手に対する執着みたいなものも無い、少なくとも自分は感じません」

    鍛冶師「なるほど……言葉にできずにいるものの、お前を知るからこそ心の何処かで受け入れきれないのか」

    鍛冶師「お前はそれを理解していて尚、言動を変えてその従姉を受け入れようとしないのか?」

    157 = 1 :

    勇者「好いてはいます。いますが、伴侶として付き合っていけるかは」

    勇者「いや、きっと今の自分と彼女との接する形は変わらないのだと思います」

    勇者「それはとても相手を幸せにできるものでは……」

    鍛冶師「ふぅむ……難しい奴だ。達観しているというか諦めているいうか」

    鍛冶師「まあ良い、そこまで理解し自分なりの判断をしているのなら、私から口を出すべきではにのだろう」

    勇者「……何故、自分の事をそんなに気にかけて下さるのですか?」

    鍛冶師「何故、か……難しい事を聞くな。私が大人で君はまだ青年だからだろうか?」

    勇者「いえ、自分のような人間に、です」

    158 = 1 :

    鍛冶師「……その生気の無い顔と、人とも思えぬ起伏の無い感情」

    鍛冶師「たったそれだけの事で、お前は周りから辛く当たられていたのか?」

    勇者「……あれが辛いものかどうかは俺にはよく分かりませんが」

    勇者「先ほど話した従姉以外の者からは避けられていましたね」

    鍛冶師「逆に私には分からんよ。何故この程度の事でお前を毛嫌いしているのかが」

    鍛冶師「別に犯罪を犯したり、善悪が分からん訳でもなかろう?」

    勇者「そうですが……自分はそれが当たり前になってしまっていますので」

    鍛冶師「感情が無いからこそ、か……楽しみとか何か無いのか? 何の為に旅をしている?」

    勇者(何の為……)

    161 = 1 :

    勇者「楽しみは特にありませんが……旅は自分の居場所を探しています」

    鍛冶師「ほう?」

    勇者「自分に出来る仕事をこなし、それでいて問題なく過ごせる場所」

    勇者「最も、何処へ行っても同じ結果ばかりなので、無理な話なのでしょうが」

    鍛冶師「そうか……おかしなものだ。私にとっては、少々気味が悪いという程度で」

    鍛冶師「拒絶するほど嫌悪するものではなかったというのに」

    勇者「……そういった意味では貴方は変な人という事なんでしょうか」

    鍛冶師「お前……いや、そうだな。一人山奥で居を構えているのだ。普通ではないな」ハハ

    162 = 61 :

    良い奴だな鍛冶師

    164 = 1 :

    ……
    勇者「……それでは失礼します」

    鍛冶師「ああ、今日はゆっくり休め」

    勇者「明日何かあるのですか?」

    鍛冶師「少々な。なに、明日の朝食時にでも話すさ」

    勇者「分かりました。お休みなさい」

    鍛冶師「ああ、おやすみ」ガチャ

    鍛冶師「……居場所、か」

    165 = 1 :

    勇者「工房に?」

    鍛冶師「そうだ。今までやってもらっていた事を午前中に終わらせろ」

    鍛冶師「午後から工房に篭ってもらう」

    勇者「しかし自分ではまだ長く居られないのですが」

    鍛冶師「少し温度を下げるから安心してくれ」

    勇者「……武具製造の手伝い、ではないんですね?」

    鍛冶師「ああ、お前には鍛冶師として教えていく」

    鍛冶師「何故自分が、か?」

    勇者「はい」

    167 :

    顔がキモイなら仮面でもつければいいのに
    仮面ライダーかっこいいじゃん

    168 = 1 :

    鍛冶師「何時も思っている事だが、私が作業している時のお前の目は真剣そのものに見える」

    鍛冶師「何より、お前自身興味があるんじゃないか?」

    勇者「そうですね……仕事そのものが他者と接しなくて良いという点において、自分でもできる仕事ではないかと思っていました」

    勇者「ですが、これは完全に技術職なので……習得できるかと言ったら」

    鍛冶師「夢も何も無いな」

    鍛冶師「最も、初めから簡単だと傲慢になっているよりは良いか」

    鍛冶師「どうせ他に行く当てもないのだ。試しに程度の気持ちでいいから付き合え」

    勇者「自分としては願ってもない事ですが……よろしいのですか?」

    鍛冶師「私から提案しているのだ。お前はいいも悪いも心配するな」

    169 = 29 :

    勇者から鍛冶屋に転職か

    170 = 1 :

    勇者「……」ボケー

    鍛冶師「金槌というのも、案外疲れるものだろう?」

    勇者「剣を扱っているので筋力には並程度に自信がありましたが」

    勇者「やはり使っている筋肉が違うのですね」

    鍛冶師「そういう事だ。とは言え、やはり今のお前の身体能力は鍛冶師に向いているのかもな」

    鍛冶師「工房に居る時間も、金槌を振るい続けた時間も。私の知る限り最長記録だよ」

    勇者「今一実感が無いので何とも……」

    鍛冶師「まあそうだろうな」

    171 = 1 :

    鍛冶師「実技の方は飲み込みが早いし、しばらくは座学になりそうだな」

    勇者「書物のような物はありますか?」

    鍛冶師「奥の部屋を書庫にしている。興味が沸いてきたか?」

    勇者「教わる以上、自分で学べる事はできるだけ学んでおきたいので」

    鍛冶師「相変わらず分からない奴だ。向上心があるのか無いのか……だが、教える身としてはやる気があるのは嬉しいよ」

    勇者「……あの、師匠とお呼びしてもいいでしょうか?」

    鍛冶師「確かに師匠だな、構わんよ。しかし、そんな訊ねるような事でも無いだろうに、変に気を使うな」

    172 = 1 :

    ……
    勇者「……」ガァン ガァン

    勇者(何故だろうか……打つ度に何かが)ガァン ガァン

    勇者(気が晴れるとはこういう事なのだろうか)ガァン ガァン

    勇者(であれば今までの自分は常に気落ちしていたのか?)ゴォォォ

    勇者(いや……これが気が高ぶる、というものなのだろうか)ゴォォォ

    勇者(打つ度に鳴る音が、打つ度に散る火花が)ガァン ガァン

    勇者(この痺れは疲れなのだろうか……だが)ガァン ガァン

    勇者(頭の先から足の先まで抜けるこれは……)ガァン ガァン

    勇者(これが満たされるという事か)ガァン

    173 :

    魔王倒しに行かなくてもいいのか

    174 = 76 :

    勇者って称号だからな 魔王倒す職業が勇者なわけじゃないし
    まあこのSSの世界だと職業っぽいけどな

    175 = 1 :

    ……
    勇者A「ここが魔王城……」ジリ

    勇者C「こっちには聖剣があるんだ」

    勇者J「にしてもこの辺りには魔物がいないな」

    勇者G「きっと向こうの戦力ももう頭打ちなんだわ」

    勇者A「皆、覚悟してくれ」

    勇者C「当然だ」

    勇者J「行こうぜ」

    勇者G「絶対、生きて帰るんだ。皆で」ギュ

    176 :

    しえん

    177 = 166 :

    鍛冶屋と女魔王のSS思い出した

    178 = 1 :

    勇者A「魔王、覚悟!!」バァン

    ***「なんだ貴様達は?」

    ***「陛下、お下がり下さい!」

    勇者C「お前を倒し世界に平和を!」

    勇者J「ここで果てろ! 魔王!」

    勇者G「お前さえ居なければ……皆は!」

    ***「魔王? 待て、お前達。こちらの話を」

    勇者A「逃がしはしないぞ!」バッ

    179 = 76 :

    ところで戦争で城まで攻め込まれるってもう負けたようなもんだよな
    にも関わらずゲームで魔王が「馬鹿め!この私に勝てると思うのか!」とか驕ってるのはハッタリなのかバカだから負けたのか
    まあだったら最初から全力で勇者殺しに行けって話になるけどな

    180 = 122 :

    まさか鍛冶屋が魔王ってオチじゃ・・・

    181 = 1 :

    鍛冶師「お前が来てからもう半年か……」

    勇者「早いものですね」

    鍛冶師「お前はこれからもここに居るのか?」

    勇者「……今しばらくここに居たいと思います」

    勇者「一ヶ月……その間に、魔王討伐の報が入らないようでしたら」

    鍛冶師「そうか……それも仕方が無いな」

    鍛冶師「願わくば、それまで魔王が討ち倒されるといいのだが」

    182 = 176 :

    しえん

    183 = 1 :

    勇者(他の者達はどうなっているのだろうか)

    勇者(各地で魔物との戦闘の話は聞くが、壊滅に至る被害を受けたという話は無い)

    勇者(しかし……現状を放置する訳にもいかない)

    勇者(距離だけで言えば、とっくに魔王城には到達しているはず)

    勇者(であればこれはやはり……)キィィィン

    勇者(なんだこの魔力は)ィィィィン カッ

    勇者(?!)ゾワッ

    勇者「うっ!」ブルブル

    勇者(なんだ、この悪寒は……)ガタガタ

    184 :

    >>179
    戦力的には戦争というよりは暗殺のような感じなんだろう

    185 :

    あの報われない僧侶を思い出した

    186 = 1 :

    数日後
    勇者(あれは一体何だったのだろうか)

    勇者(しかし、あれから何も起こらない……風邪、という訳でもないだろう)

    行商「よお、先生はいるかい」

    勇者「ああ、奥に居るよ」

    行商「ありがとさん。そうだ、最高の朗報だ」

    勇者「どうかしましたか?」

    行商「魔王討伐に成功したって話だ! ここ数日、魔物も見ないしやっと平和になるかねぇ」


    その者の行動とは他所に複数名の勇者達の、熾烈極まる戦いの果て
    遂に魔王を討伐したという。
    そして、魔物は消え平穏が訪れたはずだが、何人かは不安を覚えずにはいられなかったそうだ。

    187 = 176 :

    しえん

    188 = 1 :

    勇者(魔王が倒された?)

    勇者(であればこの間のあれはなんだ?)

    鍛冶師「お前も腕を上げてきたな」

    勇者(とても魔王が倒されたものにも思えない)

    鍛冶師「この短剣も中々の物だ。この赤い柄も美しい」

    勇者(……魔王の真の力を解放した余波だとしたら)

    鍛冶師「……」

    勇者(いや、こんな所まで届くほどなら、誰一人勝ち目は無いだろう)

    鍛冶師「何時にも増して上の空だな。飯が冷めるぞ」

    勇者「……はい」

    鍛冶師「何かあったか?」

    191 = 1 :

    勇者「……師匠は先日、何かを感じませんでしたか?」

    鍛冶師「あれを感じ取れん奴はそうはいないだろう」

    勇者「師匠は……あれをどう思いになりますか?」

    鍛冶師「……」

    鍛冶師「とてもじゃないが良いものではないだろうな」

    鍛冶師「むしろ……災厄の前触れではないかとすら思う」

    鍛冶師「本当に、魔王は倒されたのだろうか」

    192 = 1 :

    勇者「やはり……流石はと言うべきか、師匠は師匠ですね」

    鍛冶師「む?」

    勇者「明日……ここを発ちます」

    勇者「魔王城に向かい、真相を確かめます」

    勇者「そしてもしもまだ魔王がいるのなら……」

    鍛冶師「ただ一人ででもか」

    勇者「はい」

    鍛冶師「そう、か」

    195 = 1 :

    翌朝
    鍛冶師「これを持って行け」

    勇者「これは……」スラァン

    勇者(なんて美しい一振りの……)

    勇者「よろしいのですか?」

    鍛冶師「貸してやる。必ず自分で返しに来い」

    勇者「師匠……」

    196 = 1 :

    鍛冶師「それとだな。ここはもうお前の家だ」

    鍛冶師「その剣の貸し借り無しに、必ず帰って来い。お前は私の最初で最後の弟子だ」

    鍛冶師「まだまだ教える事は山のようにある」

    勇者「はい……俺も師匠から教わりたい事が沢山あります」

    鍛冶師「……」

    鍛冶師「お前は自分の事を感情が無いと言う。確かに感情は無いのかもしれない」

    鍛冶師「だがお前には心がある。意思がある。お前は私の事を尊敬か何かをしているのだろう?」

    鍛冶師「心無くして、そんな思いは生まれまい。だからあまり、自分を卑下するな」

    勇者「……はい、ありがとうございます。行ってきます」

    197 = 29 :

    こう言う展開好きよ

    198 = 1 :

    勇者「……」ザッザッ

    勇者「……ふう」

    勇者(あれが魔王城か……もっと禍々しいかと思ったが、意外と綺麗な景観だな」


    勇者(生きている者の気配が感じられない)カツーンカツーン

    勇者(大きい扉……この先が魔王のいた部屋だろうか)ガチャ

    ***「何者だ!! 人間……? 我が主を亡き者にしても飽き足らず戻ってきたか!!」

    勇者(主? 魔王の部下か? しかし何故生きている)

    199 = 176 :

    しえん

    200 = 1 :

    勇者「側近と言ったところか……一体何があったんだ」

    側近「……貴様達は、何をしでかしたの分かっていないのか!!」

    勇者「俺はしばらく山奥に篭っていて生活していたんだ。差し支えないようなら話してもらえないか?」

    側近「……」

    側近「数ヶ月前、鎧姿の人間達が襲い掛かってきたのだ……」

    側近「それもあろう事か我が主である陛下を手にかけていったのだ!」ギリリ

    勇者「何故、お前は生きているんだ?」

    側近「……大方、部下である私など気にも留めなかったのではないか」


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