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    元スレ七咲「先輩、部活やめちゃいました」

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    1 :

    廊下

    「な、七咲!」

    七咲「あ。先輩、お久しぶりですね」きぃこ…

    「う、うん! あのね、七咲っ!」

    七咲「すみません、その、何て言ったら分かりませんけど…」

    「っ…あ、うん? ど、どうしたの七咲?」

    七咲「…」

    「七咲?」

    七咲「…見ての通り、こんなことになっちゃいました」

    きぃこ

    七咲「もう、動けないそうです」

    七咲「───足、一生治らないそうですよ」

    2 = 1 :

    「そ、その…まだわからないよね? だって、ただの骨折だって聞いたし…!」

    七咲「…」

    「だ、だから七咲みたいな頑張り屋さんなら、すぐに怪我だって回復しちゃうよ!」

    七咲「…いいえ、先輩」

    七咲「これは骨折なんかじゃありません」

    「えっ? で、でも塚原先輩が大した病気じゃないって言ってたよ…?」

    七咲「…部活」

    「え?」

    七咲「部活のことは…もう言わないでください」

    「ど、どうして…」

    七咲「もう関係ないですから」

    きぃこ

    「関係無いって…っ」

    七咲「やめたんです、水泳部は」

    3 = 1 :

    「や、辞めた? 嘘だろ七咲、そんなことっ!」

    七咲「…本当ですよ」

    「だ、だって! まだ七咲は一年だし、これから治していけばまだまだ時間はたっぷりあるだろっ?」

    七咲「…言ったじゃないですか、もう動けないって」

    「そんなの嘘だよっ! 七咲、何を弱気になってるの…そんなの七咲らしく───」

    七咲「───私らしくってなんですか」

    「えっ…」

    七咲「…こんな事を言うのは、私らしくないってどういう事ですか。
       車椅子に乗って、もうやる事の出来ない部活を口にしたらダメだって言いたいんですか…っ」ぎりっ

    「ち、ちがっ…七咲…!」

    七咲「先輩」

    七咲「もう一度言います、この脚はもう動けないんです」

    七咲「───今後一生、私は車椅子から降りることはできません」

    4 :

    だからあんな時間に立てんなっつってんだろ
    今回はちゃんと終わらせろよ

    5 = 1 :

    「七咲…っ」

    七咲「…先輩、私が入院していた期間。お見舞いに何度も来てくれたそうですね」

    「う、うん」

    七咲「ありがとうございます、あの時は、一度も顔を見せなくてすみませんでした」

    七咲「──そして、これで最後にしてください」ぺこ

    「ど、どういうこと?」

    七咲「私に構うのは、これで最後にしてください先輩」

    七咲「今後はもう、私に会いに来ようとするのはやめてください。学校の廊下で見かけたときも、
       私には話し掛けもせず、出来れば眼を合わせることも避けてください」

    「な、七咲! んなっ…どうしてそんなこと言うんだよっ!」

    七咲「…それでは」きぃこ…

    「七咲!」

    七咲「……見られたくないんです…」

    「っ…」

    6 = 1 :

    七咲「…ごめんなさい、橘せんぱい」

    きぃこ…きぃこ…

    「あ……」

    「どうして…そんな事言うんだよ七咲。僕は…君のことを…!」

    七咲「…」きぃこきぃこ…

    「七咲ッ───」

    ~~~

    「───七咲ッ…!」がばぁっ!

    「っ…はぁ…っはぁ……」

    自宅 部屋

    「くそっ、またあの時の夢かよ……くそっ」ボスッ

    「……」

    「……七咲」

    「どうしてあんなこと言ったんだよ、僕は七咲のことをどれだけ心配していたと思ってるんだ…っ」

    7 = 1 :

    「…」ぽすっ…

    チュンチュン

    (もう朝か…)

    (学校、行きたくないな…いっその事今日はサボってしまおうか)

    (だってもう七咲を、見て見ぬふりをするのは疲れてしまった)

    (───七咲に会わないでほしいと言われて、三か月が経ってしまった)

    (あれから何度も教室に会いに行ったけれど、七咲の姿は無く)

    (…そしていつの間にか僕は、七咲に会う事が怖くなってしまって)

    (学校で七咲を見かけても、すれ違っても、僕は…)

    (……僕は七咲に話しかけることは、しなくなってしまった)

    「僕は結局、なにがしたかったのだろう…七咲に何て言って欲しかったんだろ」

    「……僕自身、なにをしたら良いのかわかってないクセに」

    8 = 1 :

    ~~~~~

    「……」

    梅原「よう、大将」

    「…おう」

    梅原「なんだなんだ、今日もさみぃーなぁオイ」

    「うん、ニュースによると今週末に雪が降るらしいぞ」

    梅原「マジかよ…そりゃ寒いワケだ」

    「試験前に風邪なんて引くなよ」

    梅原「わーってるよ、つか俺の事を心配する前に自分の事を心配しやがれ」

    「何言ってるんだ、僕は意外と試験対策はばっちしだぞ?」

    梅原「……えっとな、というか大将…朝から鏡見たか?」

    「鏡? どうして?」

    梅原「顔色がマジで悪い」

    「…本当に?」

    梅原「マジだ」

    9 = 1 :

    「そういえば朝は急いでたし、見てなかった気がする」

    梅原「だろーな、俺だったらその顔が鏡に映っちまったら絶対に休むな」

    「おいおい、そんなに悪いのか僕の顔色」

    梅原「俺が心配するほどに」

    「…重症だ、僕がインフルエンザにかかっても
       学校に来いと言った梅原がそんな事言うなんて…」

    梅原「へ? 言ったかそんなこと?」

    「言ったよ」

    梅原「…俺はんな鬼畜な事言わねーと思うんだが…」

    「……。そう言えばあの時、僕はお前に───」

    きぃこ…

    「──…っ!」ビク

    梅原「おい、どうした大将…おっと、すまねえ。邪魔になってるか」

    七咲「…ありがとうございます」ぺこ

    10 = 1 :

    梅原「おう」

    七咲「…」きぃこきぃこ…

    「………」

    梅原「…大変だなありゃ、車椅子で登校とかすげえ疲れんだろうに」

    「………」

    梅原「誰か押してくれる人とか、車で送ってくれる人が居ねえもんかね…なぁ橘?」

    「………」

    七咲「…」きぃこ…

    「っ……」

    梅原「おい、大将って」ぐいっ

    「えっ? す、すまんっ! ちょっとぼーとしてた…何て言ったんだ梅原?」

    梅原「いや、だからよ。車椅子で登校なんてつれーだろうにってことだよ」

    「そ、そうだよなっ? う、うん…誰か手伝ってくれる人がいればいいのにな…うん」

    11 :

    12 = 1 :

    梅原「…」

    「…そうだよ、な」

    梅原「なぁ、大将───うぉおおおっ!?」

    「えっ? うわぁああああ!?」

    ブォオオ!!

    梅原「な、なんだぁ!? 何か高速で通り過ぎてッ…?」


    「───七咲ッ! 今日は私が来るまで待ってるよう言っておいたでしょうッ!」


    「あ、あれはっ…」


    七咲「あ、すみません…その…」

    「また同じような事をしたら怒ると、言ったわよね」

    七咲「…はい」

    塚原「もう絶対に一人で行こうとするはやめなさい、いいわね?」

    14 = 1 :

    梅原「あれは…三年の塚原先輩だな、水泳部部長の」

    「……」


    塚原「こんなに汗をかいて…」

    七咲「…すみません、塚原先輩」


    「……」

    梅原「あの七咲って子だけどよ」

    「あっ…うん、どうした梅原?」

    梅原「水泳部辞めたらしいな」

    「…う、うん」

    梅原「なんつーか、思い切りが良いのか悪いのか分からねえけど。
       それでもああやって部活の先輩に構ってもらえるなんて、よっぽど気にいられてんだな」

    「それは、うん…当たりまだよ」

    「──七咲はとっても良い子だから、ああやって助けてもらうのは当たり前だよ」

    16 = 1 :

    梅原「じゃあ、お前さんはいかねえのか」

    「え? ……僕は良いんだ、だって」

    梅原「…だって?」

    「僕はその…」

    梅原「…」

    「……良いんだよ、とにかく。お前が気にすることじゃないからさ」

    梅原「そっか、大将がそう言うのなら俺は何も言わねえさ」

    「おう、というか急がないと遅刻しちゃうぞ」

    梅原「おっ! そうだったぜ、つかそもそも悠長に会話してる暇もねえんだったな!」だっ

    「急ぐぞっ」

    たったったった!

    「………」

    ぎりっ…

    17 = 1 :

    昼休み

    「……」ぼー

    「テラスでご飯、久しぶりだけど寒いなぁ」

    ひゅうううう~…

    「───ブエクシッ!」

    「ずずっ、危ない危ない…これじゃ風邪引いてしまうよ」

    「……教室に戻ろう。いや、その前に販売機でコーヒーを買っていこうかな」

    ~~~~~

    「あったかいあったかいコーヒ~っと」すたすた

    「んっ……むぐぐっ」

    「うん? あれは…」

    「とどいっ……て! んん~!」ぐぐっ…

    「ッ…!」ささっ

    (勢いで隠れてしまった…だけど、あの一生懸命に自動販売機のボタンを押そうとしてるのは…)

    「七咲…」

    18 :

    ブランコ乗ってるかと思った

    19 = 1 :

    (なにか飲み物を買いに来たのだろうか…だけど、今は一人みたいだ)

    七咲「んぐぅ…ぅっ…!」ぷるぷるっ

    (あんなに必死になってボタンを押そうと…車椅子だから、ギリギリ届かないんだろうな…)

    七咲「っ……」ぐぐっ

    七咲「──っはぁ! っはぁ…!」ガクンッ

    「あっ……!」

    七咲「はぁ……はぁ……くっ…」

    七咲「──もうちょっとで、届くはずっ…」

    (う、嘘だろ。まだ諦めないなんてっ…他の人に押してもらうよう頼めばいいのにっ…)

    七咲「ひぅっ…んっ~~! ん~っ!」ぷるぷる

    「七咲っ…ダメだ、もう見てられない───」ガタ!


    ポチ! ゴロン!


    七咲「! や、やったっ」

    「あっ…」

    20 = 1 :

    七咲「よい……しょっと…」ガタガタ…

    七咲「──…よかった、ちゃんと買えてる」


    (…届いた、あの高さのボタンに。ここから見ても決して安易に押せるような高さじゃないのに)

    (きちんと七咲一人の力で、押せたんだ…誰かに頼る事もなく、自分だけの力で…)

    「七咲…」


    「───逢ちゃんっ…!」


    「この声は…」


    七咲「あ、中多さん」

    紗江「あ、逢ちゃんっ…! 探したんだよっ? 美也ちゃんと一緒に何処に行ったんだって…っ」

    七咲「ごめんね、ちょっと喉が渇いて」

    紗江「ひ、一人で買いに行ってたの…? だ、だめだよ! いくら車椅子で動けるからってっ…!」

    七咲「…うん、ごめんなさい」

    21 = 1 :

    七咲「でもほら、見て中多さん。これ一人で買えたんだよ?」

    紗江「え…本当に?」

    七咲「うん。前は押せなかったのに、今日はやっと押せた」


    七咲「───一人の力で、誰かに頼ることなく買えたよ」


    「……」


    紗江「すっ…すっごぉい! 逢ちゃん一人でって…すごいよ逢ちゃんっ」

    七咲「ありがと、だけど心配させちゃったごめんね。美也ちゃんは何処に居るの?」

    紗江「あ、うんっ。あっちに居ると思うから…心配してるだろうし、いこ?」

    七咲「うん」

    きぃこきぃこ…


    「……」すっ…

    22 = 1 :

    「………」

    「僕もコーヒーを買わなくちゃ…」すた…

    「コーヒーコーヒーっと」

    ぴっ! ゴロン!

    「…よいしょっと」ガタガタ

    「あちちっ」

    「あち……」

    「……ボタンを押すのは、こんなにも簡単なことなのに」

    「七咲は…あれだけ苦痛に顔を歪ませながらじゃないと、買えないんだよな」

    「……」

    「…僕は一体、なにをしてるんだろう」

    教室

    コト…

    梅原「んあ? どうしたコーヒーなんか置いて」

    「やるよ、買ったけど飲む気が起きなくてさ」

    23 = 1 :

    梅原「オゴリか?」

    「タダだよ」

    梅原「んじゃ貰うぜ。今月はちょっとキツんだ」かしゅっ

    「……」

    梅原「──ぷは、やっぱ男は黙ってブラックだぜ!」

    「…なあ、梅原」

    梅原「ん、どした」

    「美味しいか、コーヒー」

    梅原「マズイけど? 実際そんなブラック好きじゃねーしな」

    「うん、わかってたけど。だけど美味しいかそのコーヒー」

    梅原「まあな、美味い」

    「だよな、うん」

    梅原「…んだよ、何を言いてえのかハッキリしろよ橘」

    「………」

    24 = 1 :

    「…それってさ、僕が買ってきた奴だろ」

    梅原「は? まあそうだな、うん」

    「梅原自身が自動販売機に買いに行って、それからお金を入れて、ボタンを押して取り出して」

    「…全ての工程を自分の身体ですることなく、それを今飲んでるお前は」

    「──それでも美味しいと言えるわけだな、梅原」

    梅原「…よくわからんが、怒ってんのか?」

    「怒ってない」

    梅原「じゃあ言い方変えるぞ。……ちっと落ち着け大将」

    「落ちついてるよ」

    梅原「いいや、どう考えたってイラついてるじゃねえか。何があったのかしらねえけど、八つ当たりすんな」

    「……」

    梅原「俺に当たっても、後で後悔するのはお前さんだろ」

    「……」

    梅原「──ま、それでスッキリすんならいくらでも来い。
       だが拳は出すなよ、その時は俺だって黙っちゃいねーからな?」

    25 = 1 :

    「…その」

    梅原「おう、どうした」

    「…すまん、お前の言う通りかも知れない。イラついてたよ、僕」

    梅原「だな」

    「ははっ、何やってるんだろう。梅原に当たっても意味無いのに…」

    梅原「ん~…ま、飲めよコーヒー。俺はもう要らねえからよ、ちょっと飲んで落ち着け」

    「……」

    梅原「いいから飲めって、な?」

    「……わかった」

    ごくっ

    「ぷはっ、うん…ありがとう梅原。ちょっと気分が落ち着───」

    梅原「──つぅーこって、空き缶の処理は頼んだぜ大将」

    「……。やりやがったな梅原!」

    梅原「橘が最後まで飲みほしたんだろ? 
       んじゃ捨てるのはお前さんだぜ、廊下の端にある空き缶用ごみ箱までな!」

    26 = 1 :

    「ぐぬぬっ…」

    梅原「ははは、八つ当たりされたお返しだ。これでチャラだぜ」

    「っ……そう、か。そうだな」

    梅原「おうよ、もうすぐ昼休みも終わるしよ。急いで捨てて帰って来い」

    梅原「じゃねーと、麻耶ちゃん先生に怒られちまうぞ」

    「わかった、んじゃ捨ててくる」すた

    梅原「キチンと捨てて来いよー」

    「わかってるよっ…ったく」

    がらり すたすた…

    (うっ、遠い…走れば間に合うだろうけど。誰かに走ってる所を見られたら怒られるだろうな…)

    「なるべく歩いてるように見せて、ちょっと早めにっと…」スタスタ

    (間に合うかな、まあ遅れてもちゃんと梅原に責任転換すれば良いだけだよな)

    27 = 11 :

    働かずに食う飯はうまい!

    28 = 1 :

    「よいしょっと」

    カラン

    「……」

    「…こうやって廊下を歩いて、空き缶を捨てることなんてそんなに大したことじゃない…」

    「こんなこと簡単な事だ、誰もが普通に出来ることであって…」

    「………」

    「……七咲…」

    放課後

    「……」

    梅原「橘ぁー、帰ろうぜ。んでもって帰り道、どっかゲーセンでも寄っていかねえか?」

    「……梅原」

    梅原「ん、どうした? 真剣な顔しやがって」

    「僕ちょっと行く所があるから。今日は一緒に帰れない」

    30 = 1 :

    梅原「…おお、用があるなら仕方ねえな」

    「すまん、また今度なら良いからさ」

    梅原「気にすんなって」

    「…ああ、そうしてくる」がたっ

    梅原「うおっ!?」

    「──待ってろ…七咲…っ」

    だだだだだっ

    梅原「……」

    梅原「はぁ、アイツも頑張るよなほんっと」

    ~~~~

    (放課後になってまだそんなに経ってない…一年の教室には居るはずだ)

    「七咲っ…!」だだっ

    (今さら七咲に会って何を話せばいいのかなんてわからないっ。
       …だけど、僕は今の七咲を放っておくことなんて出来るわけないよ…!)

    (誰もが普通に出来る事を、あんな風に頑張らなきゃいけない七咲を…!)

    (僕は見知らぬふりなんてっ…出来るわけないッ!)

    31 = 1 :

    「っ…しょっと…」たんっ

    「──見えた、七咲の教室っ…!」

    (後は七咲が居るかどうか確認して───)


    「──待ちなさい」すっ


    「えっ…!」

    「それ以上、七咲の教室に近づくのはやめなさい」

    「っ…ど、どうしてそんなことを?」

    「そのままの意味よ、わかるでしょう?」

    塚原「──橘くん、私が言っている言葉の意味をね」

    「えっと……わかりません、僕は七咲に会いたいだけで…」

    塚原「……」

    「な、七咲を傷つけるようなことなんてしませんよ?…むしろ、僕は七咲を助けたくてっ」

    32 = 1 :

    「っ…しょっと…」たんっ

    「──見えた、七咲の教室っ…!」

    (後は七咲が居るかどうか確認して───)


    「──待ちなさい」すっ


    「えっ…!」

    「それ以上、七咲の教室に近づくのはやめなさい」

    「っ…貴女は……えっと、ど、どうしてそんなことを…?」

    「そのままの意味よ、わかるでしょう」

    塚原「──橘くん、私が言っている言葉の意味をね」

    「…塚原先輩」

    塚原「とりあえず、こんばんわ」

    「こ、こんばんわ…その、先輩…?」

    塚原「ねえ、橘くん。ちょっといいかしら」

    33 :

    「先輩にはかんけーし」

    「考えろ、意味を」

    34 = 1 :

    「な、なんですか?」

    塚原「今から君は七咲に会いに行こうとしてたのよね」

    「…そうですけど」

    塚原「…」

    「……もしかして先輩、七咲に何か言われたんですか?」

    「近づくなって…先輩が言うのはおかしいですし、だから七咲に何か言われたのでしたら」

    塚原「いいえ、これは私の独断で決めた事よ」

    「え?」

    塚原「橘君にはもう、七咲に近づかないでほしいと……本気でそう言ってるの」

    「っ……ちょ、ちょっと待ってください! 先輩、あの時の言葉っ…忘れたんですか!?」

    塚原「……」

    「七咲が怪我をした時にっ…僕に七咲の事は頼んだと、言ってくれたじゃないですかっ」

    塚原「ええ、言ったわね」

    「だから僕はこうやって七咲に会いに来ただけですよ!
       なのにどうして塚原先輩がダメなんてことを…!」

    36 = 1 :

    塚原「じゃあ聞くけど、……どうして今なの?」

    「それはっ…」

    塚原「私は確かに七咲の事を頼むように言っておいた、だけどね?
       君はなぜか今頃になって七咲に会いに行こうとしている」

    「それは! 三か月前にっ…七咲に会いに行った時、もう合わないでくれと…!」

    塚原「へえ…それを真っ向から信じたのね、君は」

    「っ……だ、ダメだったと言うんですか」

    塚原「…」

    「僕だって何度も何度も教室に来ましたよ! だけど、七咲はそこに居なくてっ…」

    塚原「そのうちに、七咲と会う事もなくなったと」

    「………」

    塚原「じゃあずっとそうしてなさい、七咲に構うことなんてしないで」

    「っ…それが出来ないから、僕はこうやって七咲に会いに来たんです!」

    「今から会いに行って、七咲にどれだけ拒絶されようがっ…僕はどうにかして七咲に認めさせてもらいます!」

    「……どうして僕と会いたくないと思ったのか、どうしてもう話してくれないのか」

    「どうにかして絶対に、話してもらうつもりですっ!」

    37 = 1 :

    塚原「じゃあ聞くけど、……どうして今なの?」

    「それはっ…」

    塚原「私は確かに七咲の事を頼むように言っておいた、だけどね?
       君はなぜか今頃になって七咲に会いに行こうとしている」

    「それは! 三か月前にっ…七咲に会いに行った時、もう合わないでくれと…!」

    塚原「へえ…それを真っ向から信じたのね、君は」

    「っ……だ、ダメだったと言うんですか」

    塚原「…」

    「僕だって何度も何度も教室に来ましたよ! だけど、七咲はそこに居なくてっ…」

    塚原「そのうちに、七咲と会う事もなくなったと」

    「………」

    塚原「じゃあずっとそうしてなさい、七咲に構うことなんてしないで」

    「っ…それが出来ないから、僕はこうやって七咲に会いに来たんです!」

    「今から会いに行って、七咲にどれだけ拒絶されようがっ…僕はどうにかして七咲に認めさせてもらいます!」

    「……どうして僕と会いたくないと思ったのか、どうしてもう話してくれないのか」

    「どうにかして絶対に、話してもらうつもりですっ!」

    38 = 1 :

    塚原「私はともかく、七咲に拒絶されてるのに?」

    「も、もちろんです。僕はもう…見たくないんです」

    「……ああやって車椅子に乗って、努力をしている七咲を…っ」

    「傍から見てるだけなんて、とても辛いんですっ…!」

    「だから僕は七咲の傍にいて、その努力を手伝ってあげたいんですよ!」

    塚原「…」

    「虫がよすぎる話だってわかってます…三か月間の間にもっとやることがあったはずだって、わかってるんです」

    「……だけどキチンと話をして、七咲に理由を聞いて、ちゃんと足の怪我について頑張って行きたいんです」

    「…とても、今頃になってわかってしまったけれど……」

    塚原「──そう、本当に今頃よ橘くん」

    「えっ…どういう意味ですか…?」

    塚原「そのままの意味。君は最近の七咲を見てるようだから言うけれど、ねえ七咲って」

    塚原「──前よりも頑張ってるように見えないかしら?」

    40 = 1 :

    「頑張ってる…?」

    塚原「そうよ、何て言うのかしらね…足のけがをする以前より輝いて見えるのよ」

    「そ、そんなワケっ…! 自動販売機で飲み物を買うことすら、普通に出来ないんですよ!?」

    塚原「うん、だけど結局は買えていたでしょう?」

    「っ…そうですけどッ、でもそれは物凄く努力をしないといけなくて!」

    塚原「それよ、橘くん」

    塚原「──七咲は前よりも努力をしている、さらに言えば達成する喜びを感じつつある」

    「っ…」

    塚原「普段通りにやれたことが、努力をしなければ出来なくなっている状況に…彼女は適応し始めてるの」

    「…適応…?」

    塚原「ええ──…この三カ月の間にね」

    「三か月の……間にっ…」

    塚原「七咲は元々努力家だったから、心の切り替えも早かった。
       誰もが嘆く事を、悲しむ事を、彼女は一人で乗り切ってしまったの」

    41 = 1 :

    塚原「それからは早かったわ。暗かった表情にも明るさが戻って、
       なにかと諦めがちになっていた性格が、以前よりも強いものとなっていった」

    塚原「どんな困難なものでも、今の七咲は諦めることなく挑めるでしょうね、きっと」

    「……」

    塚原「七咲はそれほどまで変われたのよ、怪我でってことがちょっとアレだけど…」

    塚原「…それでも、七咲は以前よりも強い七咲になっているの」

    「……それは」

    塚原「キミも気付いていたのよね? 七咲が前よりも頑張ってる事を」

    「……」

    塚原「性格がだんだんと以前と変わらなくなってきていることも、わかっているはず」

    塚原「───だから、私が言いたい事もわかってくれてるはずよ…橘くん」


    塚原「君は七咲に近づいちゃ駄目。彼女の努力に水を差すようなことをしてはいけないの」

    42 = 1 :

    「…だけど、僕は…」

    「七咲にっ…ちゃんと話をしたくてっ、どうしてあんなことを僕に行ったのか…」

    「僕は…それを…」

    塚原「橘くん」すっ

    「……えっ、あっ…?」

    塚原「───どうか、お願いします」ぺこ

    「塚原先輩っ…!?」

    塚原「七咲にはもう、今後近づかないで」

    「そんなっ…僕は…とにかく頭を上げてください!」

    塚原「いいえ、君からちゃんと返事を聞くまではあげないわ」

    「そんなのっ…!」

    塚原「……お願い、七咲はもう一人で立ち直ったの」

    塚原「──彼女の努力を、無駄にさせないであげて」

    43 = 1 :

    「無駄って…」

    塚原「確かに君が関わることで、七咲は何かしら変わることになるかもしれない」

    塚原「だけど、だけどね。それはもう必要のないことなの」

    塚原「…むしろ邪魔だと言ってもいいわ」

    「っ…」

    塚原「彼女は君にどう言って拒絶したのかは分からない。だけど、少しだけ七咲の気持ちは分かるの」

    塚原「──七咲は一人で変わろうとしたんだってことは」

    塚原「君は優しいから、付きっ切りで七咲の面倒を見ようとしたはず」

    塚原「…七咲はそれが分かってたんでしょうね、だから…拒絶をしたのよ」

    「……っ」

    『──見られたくないんです…』

    塚原「…橘くん、私が言っている事は七咲の代弁と思ってくれていいから」

    塚原「──君はもう、七咲から必要とされてないのよ。ずっとね」

    44 :

    うおおお来てたああああ

    45 :

    よし、鬱ルートへまっしぐら!

    46 = 1 :

    塚原「彼女は変われたの、それを実際に証明できた」すっ

    塚原「キミの力を借りずに、一人だけで立ち直れた」

    塚原「今までも、そしてこれからも」

    「………」

    塚原「ここまでが七咲の代弁だと思ってくれていい」

    塚原「…今から言う言葉は、私だけの意見。七咲は関係なくて」

    塚原「私が橘くんに、言っておきたい事がある」

    「……なんでしょうか」

    塚原「うん、あのね。いつかきっと…もしかしたら今すぐにでも」

    塚原「七咲は君と会話しても平気だっていうかもしれない」

    塚原「…でもね、私はそうは思わない。
       確かに七咲は立ち直れたけど、それでも不安定なままなのは変わりない」

    塚原「橘くんが近づいてしまえば、彼女はきっと……甘えてしまうかもしれないから」

    塚原「私は今の七咲の努力を、維持させてあげたいの」

    47 :

    よし!梨穂子ルートだな

    48 :

    ここからどうやってハッピーエンドに持っていくのか>>1の腕が問われるな

    49 = 1 :

    「僕が近づけば、七咲は一人での努力を止めてしまうと…?」

    塚原「そう思ってる。それほどまでに、七咲は君の事を信頼していると、好意を寄せていると思ってる」

    「……僕は…」

    塚原「実際そうだからこそ、七咲は君を拒絶したんじゃなくて?
       君に甘えてしまう自分が想像できたから、七咲は君の傍から離れてしまった」

    「…」

    塚原「これは七咲の覚悟なのよ、怪我にしろ精神にしろ自分でやり通さなければ駄目だと決めた」


    塚原「七咲逢という、一人の女の子が掲げた強い想い」


    「七咲の想い…」

    塚原「この想いは、三か月間ずっと続けられた。頑張り続ける理由となり得た」

    塚原「……それを君は、壊して良いと思えるの? 橘くん」


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