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元スレ杏子「くうかい?」
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◇◆◇◆
「なおのことあんたを、魔法少女にするわけにはいかないな」
オオアマナの花びらが、風に流され、代赭色の空の彼方へ消えていく。
杏子は美樹さやかという少女に感じていた、妙な既視感の正体を掴みかけていた。
「どうして?
あたしは純粋に、恭介の体を――」
「純粋が故に、さ」
「……意味、わかんない」
「ひとつ、昔話をしてやるよ。
あんたと同じ、誰かのために奇跡を求めた女の子の話をね」
杏子は滔々と語った。
あるところに、小さな教会があった。
そこの神父は正直すぎて、優しすぎる人だった。
彼は新しい時代に相応しい、新しい信仰の形を求めた。
あるときを境に、教義から離れたことを信者に説教するようになって、
次第に教会に足を運ぶ人は減り、見かねた本部にも破門された。
「なおのことあんたを、魔法少女にするわけにはいかないな」
オオアマナの花びらが、風に流され、代赭色の空の彼方へ消えていく。
杏子は美樹さやかという少女に感じていた、妙な既視感の正体を掴みかけていた。
「どうして?
あたしは純粋に、恭介の体を――」
「純粋が故に、さ」
「……意味、わかんない」
「ひとつ、昔話をしてやるよ。
あんたと同じ、誰かのために奇跡を求めた女の子の話をね」
杏子は滔々と語った。
あるところに、小さな教会があった。
そこの神父は正直すぎて、優しすぎる人だった。
彼は新しい時代に相応しい、新しい信仰の形を求めた。
あるときを境に、教義から離れたことを信者に説教するようになって、
次第に教会に足を運ぶ人は減り、見かねた本部にも破門された。
誰もその神父の言い分を聞こうとしなかった。
酷いときには水を掛けられたり、石を投げつけられたりした。
神父には奥さんと二人の娘がいたけれど、
一家そろって、食べるものにも事欠く有り様だった。
上の娘は思った。
『どうしてお父さんは正しいことを言っているのに、
誰もお父さんの話に耳を傾けないんだろう』ってね。
貧乏なことよりも、飢えることよりも、そのことのほうが悲しかった。
キュウべえが女の子の前に現れたのは、まさにそんな折だ。
『みんながお父さんの話を、真面目に聞いてくれますように』
女の子は父親のために祈りを捧げた。
翌朝には、神父の教会には、押しかける人でごった返していた。
それまでのことが嘘のように、みんな、彼の言葉に聞き入った。
布施は山のように増えて、神父の家族が飢えることもなくなった。
酷いときには水を掛けられたり、石を投げつけられたりした。
神父には奥さんと二人の娘がいたけれど、
一家そろって、食べるものにも事欠く有り様だった。
上の娘は思った。
『どうしてお父さんは正しいことを言っているのに、
誰もお父さんの話に耳を傾けないんだろう』ってね。
貧乏なことよりも、飢えることよりも、そのことのほうが悲しかった。
キュウべえが女の子の前に現れたのは、まさにそんな折だ。
『みんながお父さんの話を、真面目に聞いてくれますように』
女の子は父親のために祈りを捧げた。
翌朝には、神父の教会には、押しかける人でごった返していた。
それまでのことが嘘のように、みんな、彼の言葉に聞き入った。
布施は山のように増えて、神父の家族が飢えることもなくなった。
しばらくは、平穏で幸せな日々が続いた。
魔女退治は楽なものじゃなかったけれど、
奇跡を父親のために使ったことを、
戦いの運命を背負ったことを、女の子は後悔していなかった。
でもあるとき……、からくりがバレた。
教会に詰めかける人たちを心酔させているのが、
信仰の力じゃなくて、魔法の力だということに気づいたとき、神父は怒り狂った。
上の娘を『人の心を惑わす魔女』呼ばわりして、勘当同然の仕打ちをした。
神父はだんだん壊れていった。
酒に溺れて、堕落して、最後は"一家"で無理心中さ。
神父のいなくなった教会に、人足はぱったりと途絶えた。
父親と母親と、小さな妹を失って、女の子はひとりぼっちになった。
「結局さ……、あたしの祈りが、家族を壊しちまったんだ。
他人の都合を知りもせず、勝手な願い事をしたせいで、誰もが不幸になった」
魔女退治は楽なものじゃなかったけれど、
奇跡を父親のために使ったことを、
戦いの運命を背負ったことを、女の子は後悔していなかった。
でもあるとき……、からくりがバレた。
教会に詰めかける人たちを心酔させているのが、
信仰の力じゃなくて、魔法の力だということに気づいたとき、神父は怒り狂った。
上の娘を『人の心を惑わす魔女』呼ばわりして、勘当同然の仕打ちをした。
神父はだんだん壊れていった。
酒に溺れて、堕落して、最後は"一家"で無理心中さ。
神父のいなくなった教会に、人足はぱったりと途絶えた。
父親と母親と、小さな妹を失って、女の子はひとりぼっちになった。
「結局さ……、あたしの祈りが、家族を壊しちまったんだ。
他人の都合を知りもせず、勝手な願い事をしたせいで、誰もが不幸になった」
人称を隠すことを忘れて、杏子は言う。
「そのとき、心に誓ったんだよ。
もう二度と他人のために魔法を使ったりしない。
この力は、すべて自分のためだけに使い切るって」
「なんでそんな話を、あたしに……?」
「まだ分からないのかい?
あたしとあんたは、似たもの同士なんだ。
違うのは、あたしが既に魔法少女で、あんたがまだ人間だってことくらいさ」
さやかは俯いて言った。
「自分みたいに不幸になりたくなかったら、他人のために奇跡を願うな。
あんたが言ってるのって、つまりは、そういうことだよね?
……勝手に、決めつけないでよ。
あたしが奇跡を願って、恭介の腕が治って、それでどうしてあたしが不幸になるって言うの?」
「そのとき、心に誓ったんだよ。
もう二度と他人のために魔法を使ったりしない。
この力は、すべて自分のためだけに使い切るって」
「なんでそんな話を、あたしに……?」
「まだ分からないのかい?
あたしとあんたは、似たもの同士なんだ。
違うのは、あたしが既に魔法少女で、あんたがまだ人間だってことくらいさ」
さやかは俯いて言った。
「自分みたいに不幸になりたくなかったら、他人のために奇跡を願うな。
あんたが言ってるのって、つまりは、そういうことだよね?
……勝手に、決めつけないでよ。
あたしが奇跡を願って、恭介の腕が治って、それでどうしてあたしが不幸になるって言うの?」
「奇跡ってのは、タダじゃないんだ。
希望を祈れば、それと同じ分だけの絶望が撒き散らされる。
そうやって差し引きをゼロにして、世の中のバランスは成り立ってるんだよ」
それは光あるところに影が生まれるのと、同じこと。
「たとえ恭介の幸せのために、あたしが不幸になったとしても、あたしは後悔しない。
さっき、そう言ったはずだよね」
「その気持ちが嘘だとは思わないよ。
でもね、自分でも気づかないうちに、正反対に裏返ってしまうのが、心ってモンさ。
どうして不幸を知らないうちから、後悔しないなんて断言できるんだい?」
希望を祈れば、それと同じ分だけの絶望が撒き散らされる。
そうやって差し引きをゼロにして、世の中のバランスは成り立ってるんだよ」
それは光あるところに影が生まれるのと、同じこと。
「たとえ恭介の幸せのために、あたしが不幸になったとしても、あたしは後悔しない。
さっき、そう言ったはずだよね」
「その気持ちが嘘だとは思わないよ。
でもね、自分でも気づかないうちに、正反対に裏返ってしまうのが、心ってモンさ。
どうして不幸を知らないうちから、後悔しないなんて断言できるんだい?」
さやかちゃん…
そうやって魔法少女になって「こんな体じゃ云々」とか言うつもりなのかい
そうやって魔法少女になって「こんな体じゃ云々」とか言うつもりなのかい
さやかのせいであんこちゃんがもう見れないのかと思うと許せそうにない
上條恭介は、喩えるなら、羽が折れた小鳥だ。
鳥籠に餌を運ぶさやかは、羽が治癒することを望みながらも、
心のどこかで、彼が再び空に戻ることを怖れているに違いなかった。
「上條恭介の腕が治って、またバイオリンに打ち込むようになって……。
寂しさを感じない、と言い切れるかい?
上條恭介の隣を、あんたが知らない女が歩いているのを見て……。
嫉妬しない、と言い切れるかい?
表舞台で活躍する上條恭介を、観客席の遠くのほうから見つめる日々に、
いつまでも甘んじられる自信はあるのかい?」
「……ッ」
「ねえ、美樹さやか。
あたしは、キュウべえに頼ったことを後悔してる。
親父は信者がいなくなっても、布教を諦めていなかった。
参っているように見えても、心は折れていなかった。
あたしたち一家は貧乏のどん底だったけど、だからといって飢え死にするほどでもなかった。
家族で力を合わせて、少しずつでも幸せを積み重ねていく方法はあったんだ。今から思えばね」
鳥籠に餌を運ぶさやかは、羽が治癒することを望みながらも、
心のどこかで、彼が再び空に戻ることを怖れているに違いなかった。
「上條恭介の腕が治って、またバイオリンに打ち込むようになって……。
寂しさを感じない、と言い切れるかい?
上條恭介の隣を、あんたが知らない女が歩いているのを見て……。
嫉妬しない、と言い切れるかい?
表舞台で活躍する上條恭介を、観客席の遠くのほうから見つめる日々に、
いつまでも甘んじられる自信はあるのかい?」
「……ッ」
「ねえ、美樹さやか。
あたしは、キュウべえに頼ったことを後悔してる。
親父は信者がいなくなっても、布教を諦めていなかった。
参っているように見えても、心は折れていなかった。
あたしたち一家は貧乏のどん底だったけど、だからといって飢え死にするほどでもなかった。
家族で力を合わせて、少しずつでも幸せを積み重ねていく方法はあったんだ。今から思えばね」
あんこちゃんの兄になって兄ちゃんとか言わせたい
言おうとしてるんだけど恥ずかしくてアウアウしてるところが見たい
つまりあんこちゃんあんあん
言おうとしてるんだけど恥ずかしくてアウアウしてるところが見たい
つまりあんこちゃんあんあん
やりなおせない過去。
とりかえしのつく未来。
杏子は瞼の裏に一瞬、父親と母親、幼い妹の姿を思い描いて言う。
「あの時のあたしと同じでさ。
あんたが上條恭介に幸せを与える方法は、他にもあるはずなんだ」
「腕を治す以外に、恭介を幸せにする方法なんてないよ」
「目先の奇跡に目が眩んで、それに気づいてないだけさ。
何も特別なことをする必要なんてない。
これまでどおり、足繁く上條恭介のところに通って、励ましてさ。
紛い物の奇跡じゃなくて、本物の奇跡が起こるのを待つ……。
それもひとつの、幸せの形じゃないか」
とりかえしのつく未来。
杏子は瞼の裏に一瞬、父親と母親、幼い妹の姿を思い描いて言う。
「あの時のあたしと同じでさ。
あんたが上條恭介に幸せを与える方法は、他にもあるはずなんだ」
「腕を治す以外に、恭介を幸せにする方法なんてないよ」
「目先の奇跡に目が眩んで、それに気づいてないだけさ。
何も特別なことをする必要なんてない。
これまでどおり、足繁く上條恭介のところに通って、励ましてさ。
紛い物の奇跡じゃなくて、本物の奇跡が起こるのを待つ……。
それもひとつの、幸せの形じゃないか」
>>677
お前が兄だろ
お前が兄だろ
「あたしが傍にいても仕方ないよ。
それに恭介は……、あたしのお見舞いを迷惑に思ってたの。
聞きたくもない音楽を聞かされて……、ずっと、無理に笑ってたんだ」
「それを真に受けるバカがどこにいるんだよ?
本気でそう思われてたなら、もっと早くに面会謝絶を食らってると思うけどね。
落ちこんでるときに酷いことを言っちまうのは、誰にだってあるもんさ」
はっと顔を上げたさやかに、杏子は続ける。
「交通事故に遭うことは、上條恭介の運命だったんだよ。
あんたは自分が身代わりになればよかった、と言ったけど、それは間違ってる。
人の才能に優劣はあっても、人の価値そのものに優劣なんてない。
あんたはもっと……、自分のことを大切にするべきだ」
出かける
次は早くても夜
残ってますように
それに恭介は……、あたしのお見舞いを迷惑に思ってたの。
聞きたくもない音楽を聞かされて……、ずっと、無理に笑ってたんだ」
「それを真に受けるバカがどこにいるんだよ?
本気でそう思われてたなら、もっと早くに面会謝絶を食らってると思うけどね。
落ちこんでるときに酷いことを言っちまうのは、誰にだってあるもんさ」
はっと顔を上げたさやかに、杏子は続ける。
「交通事故に遭うことは、上條恭介の運命だったんだよ。
あんたは自分が身代わりになればよかった、と言ったけど、それは間違ってる。
人の才能に優劣はあっても、人の価値そのものに優劣なんてない。
あんたはもっと……、自分のことを大切にするべきだ」
出かける
次は早くても夜
残ってますように
>>685
放尿予定って見えた
放尿予定って見えた
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