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    元スレ刹那「IS学園?」

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    タグ : - 前スレ→1299048345 + - インフィニット・ストラトス + - キルミーベイベー + - 乙女座 + - 刹那 + - 機動戦士ガンダムOO + - 真の名作 + - 魔法少女まどか☆マギカ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    1 :

    代行

    >>2以降に書きます)

    ID:TVj8mS7E0

    2 :

    9話以降も書くのか

    3 :

    >>1
    代行ありがとう

    ハム先生のAAが大きすぎたので次レスから行きます

    5 = 3 :

    1個め:
    http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1298877202/237n-
    2個め:
    http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1299048345/835n-
    3個め:
    ここ

    ~乙女座による前回のあらすじと伏線のまとめ~
    あえて言わせてもらおう、アニメを九話まで視聴するか、過去ログを読むべきであると!
    先刻承知だと言うのなら……付き合ってもらうぞ、ガンダム!

    ・ELSとの対話を終えた少年は量子ワープで地球に帰還しようとするも、到着したのは一夏少年のいないIS世界であった。
     この状況……青天の霹靂、いや、千載一遇の機会と言うべきか。
    ・ELSとISを融合させることにより、世界初の男性操縦者として学園に迎えられる少年。女性だらけの学園へ、男子生徒として一人転入することとなる。
     つまりはワンマンアーミー……たった一人の男性なのだよ。どれほどやれるか、刮目させてもらおう、ガンダム。
    ・ISエクシア(仮称)でセシリアの歪みを断ち切った少年。
     その圧倒的な性能に、私は心奪われた!

    ・自身を倒した少年の雄姿に、心を奪われたセシリア。
     惚れた理由など、どうでもいい! それが彼女の意思だっ!
    ・クラス代表になった少年は、クラス対抗戦で中国の代表候補生、凰 鈴音(ファン リンイン)と戦闘することと相成ってしまう。
     いざ、尋常に勝負!
    ・かと思いきや、特殊なISを装着した謎の第三者が試合に武力介入。少年らが撃退するも、対抗戦はお流れに。
     ええい、水入りか! アリーナも崩壊した……! あえて言うぞ少年、覚えておくがいい!
    ・なんと、そのISは無人機であった。コアも、登録されていない独自の物。その影には、例のアムロ声が……
     しぶとさは筋金入りか。私とて、因縁めいたものを感じてはいる。

    6 :

    おぉ!!待ってました

    7 :

    おついに来たか
    期待

    8 = 3 :


    ・翌日現れた着任者、シャルル・デュノア。一流ISメーカー‘デュノア社’の令息である。
     よくぞ来た! この私、グラハム・エーカーが、君の着任を歓迎しよう。
    ・イメージカラーと物腰の柔らかさから、シャルルに仲間の超兵を重ねる少年。
     しかし、少年に一夏のような男色の気はない。
    ・シャルルに何かを感じたティエリアは、刹那に自身の考察を伝える。
     どんなに性格を変えようとも、目を見れば分かる。
    ・明日、新たな転入生が。ラウラ・ボーデヴィッヒ……ネオドイツのガンダムファイターだ。
     アイパッチの下には金色の瞳……彼女もまた、イノベイターであると言うのか?
    ・転入早々少年にビンタをかますラウラ。だが、少年は金属生命体、ELS。逆に手首を傷めてしまうも、ラウラは果敢に宣戦布告。
     黄金の鉄の塊で出来ている少年が、ISすら装備していないゲルマン忍者に遅れをとるはずは無い
    ・教官に執着するラウラを目にした後、少年はシャルルの本当の性別を知る。
     男装とは……趣味か!?
    ・女性であることを知ってもなお、少年はシャルルを認めた。その事実に、シャルルは心を動かす。
     少年もまた、フラ(ッ)グファイターであったと言うことか。

    9 :

    続編?

    10 = 3 :

    >>9
    いかにも、その通りだ。歓迎しよう、フラッグファイター

    ・一夜が明け、少年とシャルルはIS戦で鈴音とセシリアを圧倒するラウラを目にする。
     これは、あまりにも一方的だ……
    ・その光景を目にし、少年は戦場に武力介入。ラウラと事を構えるも、寸でのところで千冬に救われる。
     生身でIS装着者と渡り合うなど、常人の業とは思えん。流派東方不敗の継承者か?
    ・その後、タッグマッチ開催の報せが入る。少年はシャルルとペアを組むことに。
     セシリアと鈴音は負傷により欠場か……一矢は報いるぞ。
    ・一回戦の相手は、そのラウラ・ボーデヴィッヒであった。
     手加減は無用……真剣なる勝負を!
    ・シャルルとの連携、戦士としての技量でラウラを上回り、見事撃破する少年。しかし、そのラウラは自らのISに取り込まれてしまう。
     ELSではない……だが、あれは一体……?
    ・強い脳量子波を放つラウラへ、少年はトランザムバーストで対話を試みる。
     私は……既に涅槃にいると言うのか……?
    ・ラウラの誤解を解き、彼女へ変革をもたらした少年。その思いに触れ、ラウラは凍った心を溶かす。
     人と人とがわかりあえる道を模索し続け、未来を切り開く。それが君の戦いなのだな、少年。
    ・その折、ラウラは‘過去に千冬がガンダムと交戦した’と言う情報を漏らす。
     少年の知り得ないガンダム……黒歴史の産物だとでも?
    ・明くる朝、少年のクラスへ颯爽と登場すると、少年の唇を奪ったラウラ。
     くぅっ……堪忍袋の緒が切れた、許さんぞ!

    ・時分は既に夏……臨海学校だ! 赴いた先で歴代主人公と戯れていた少年は、乙女座とビーチバレーをする羽目に。
     私を切り裂き、その手に勝利を掴んでみせろ!
    ・相方であるキングオブハートの力もあり、少年は見事勝ちを得る。
     私が越えなければならないのは、この少年だ。

    あらすじだけで3レスに及ぼうとは……私は聞いていないぞ!

    11 :

    待ってたぜ

    12 = 3 :

    ~乙女座によるこれからの方針~
    ・少年が異星人である以上、一夏は存在せず、結果的に箒と鈴音はヒロイン入りしないことになる。その上、ラウラの過去に無理が生じている。
     ISの作品だと言うのにメインヒロインに出番がないとは……このSS、存在自体が矛盾している!
    ・だが、IS学園が初対面の場であった人間……セシリア・シャル・ラウラに関してはそうはいかん。
     矛盾を孕んでも存在し続ける、それが生きることだ!
    ・セシリアを倒してしまった上、少年は一夏より優秀と来ている。メアリ・スーと言われても仕方がないな、これは。
     だが……メアリを越え、厨二を超越し、SSとなった! ご都合主義に耐性のない者は下がれ、ガンダムは私がやる!
    ・原作の展開をなぞる以上、ヒロイン達が少年に心を傾ける展開になり得る。
     NTRを嫌う諸君は撤退したまえ。信心深さが暴走すると、あらぬ悲劇を招く。

    これは前スレ>>279の後に続く文章だ。張り忘れてしまったらしい。
    少年がシャルの元へ向かったことを、不審に思った諸氏も多いことだろう。
    何と言う失態……だがしかし、この汚名、戦場で晴らして見せよう。


    ≪……段々と証拠が揃ってきているな、刹那≫
    (ああ。だが、例えそうだとしても、本人が打ち明けるまで待つべきだろう。それ相応の理由があるはずだ)
    ≪……変わったな、君も≫
    (ティエリアもそうだ)

     会話をかわしながら、刹那は床に何か光るものが落ちていることに気づいた。
     拾い上げ、観察してみる。
     シャルルが着用していたアクセサリーだろうか。彼のISと同じ、オレンジ色で染められている。

     落し物か。そう判断した刹那は、シャルルに届けに行かなければと、それをポケットにしまいこんだ。

    13 :

    待ち兼ねたぞ!!!!少年!!!!!

    14 = 3 :




     日が沈み、月が顔を出す頃。

     充分に海ではしゃいだ生徒たちは、皆一様に宿へと帰還している。


     自室に戻った刹那は、思考に時間を割いていた。
     考えるのは、ラウラの言葉。

     過去に千冬を襲った、ガンダムについてである。

     まず間違いなく、刹那ではない。
     刹那がこの地球に跳躍してきたのは、最近のこと。
     千冬が大会に参加していたその時、刹那はELSとの対話を行っていたのだ。出来るはずがない。
     何より、覚えも無かった。

     他人の空似、偶然の一致と言う線もある。
     だが。名称と、外見と、武装と。その全てが非常に似通っていると、ラウラは語っていた。

     ここまで来ると、出来すぎている。
     いくらなんでも、たまたまではすませられない。

    15 = 9 :

    相変わらずのあらすじのクオリティたwwww

    16 = 3 :

     加えて、ISに取り込まれたラウラが放った、強い脳量子波。
     この地球の人間も、向こうの一般人と同じく微弱な脳量子波を持っているが、

     ラウラのそれは、違った。
     ひどく、強いのだ。
     超兵やイノベイターには及ばないにしても、常人の比ではない数値を誇っている。

     また、刹那はラウラから常に強い脳量子波を感知していた。
     それ故、トランザムバーストの折の対話はいつも以上に意思の伝達を行えたし、二人は色々な面で似た物同士なのだ。
     それは、ラウラが刹那を気に入っている要素の一つには入るだろう。

     それと、眼帯で隠している、あの左目。前回寝床にもぐりこまれた際に目にした、あの、金色の瞳。
     刹那の――――イノベイターのそれと、同様である。虹彩が、変色しているのだ。
     ラウラ自身、右目は赤だ。ただのオッドアイではないようで、曰く、軍施設にいた頃の実験からそうなったらしい。

     実験で、イノベイターに近い能力を開花させるとは。
     思い出すのは、一人の少女。

     戦争に踊らされた、優しい女の子――――ルイス・ハレヴィ。
     彼女もまた、アロウズで様々な処置を施され、脳量子波を操るようになった。

     もし。もし、ラウラが、ルイス・ハレヴィと同じような境遇にあったのだとしたら。
     過去のガンダムの、正体は――――

    17 :

    しえん

    18 = 3 :


     ここまで考えて、刹那は保留と言う結論に至った。
     どうせ、答えは出ない。わからないことを、いつまでもうじうじ考え込んではいられない。


     今は、丁度予定も無い。風呂にでも入ってこようか。
     海から旅館に戻る際にシャワーを浴びたとは言え、一応体はしっかりと洗っておきたかった。

     さて、女子生徒の入浴時間は定められているが、一人しか居ない男性である刹那はそのあたり自由である。
     空いた時間ですませてしまえとのお達しもあり、
     食事前にリフレッシュでもしようと、刹那は浴場――それも露天風呂――に向かった、はず、なのだが。


     そこは、刹那たちIS学園の者とは違う団体が占拠していた。
     飛んでくる言葉から推察する限りは、学生と教師の集団――――

    19 = 3 :


     だろうに、教職であろう大人が、お猪口と徳利を手にしていたが。

    「お風呂はお酒を飲む場所じゃないでしょーっ!」
    「どうして風呂で酒なんか飲む!
     ここで飲んでは、アルコールがまわりやすくなって、最悪死に至る!
     そうでなくても、湯冷めして体が寒くなってしまう!」
    「飲酒者だけを殺す風呂場かよ!」
    「だが、君たちは酒もろくに飲めない教職員の苦労を知らねばならん!
     出資者は、聖職である以上私生活にも気を使えと要求してくる! そのつらさを何故分からん!」
    「だからって、未成年の前でお酒を飲むんじゃありませんよ! あなたは何やってんです、大尉!」

     酒を片手に入浴する教諭と、それを非難する生徒たち。
     未成年が同席しているにも関わらず、おおっぴらに飲酒していればそうなるだろう。

    20 :

    スクールデイズ?

    21 :

    待ちかねたぞ!ガンダム

    22 = 3 :

    「そうやってレッテルを押し付けるから、個人の意思は廃れ、政治は腐り、こうして私が酒を飲むに至ったのだ!」
    「エゴだよそれは! 貴様だって、教員だろうに!」
    「教員である以前に、私は人間だ!」
    「だとしても、子供の前でお酒なんて……それが人間のやることかぁーっ!」
    「わかる……わかるぞ……アルコール中毒者の意思が、俺の体に!
     だめだよ、そんなんじゃ、あんたドザエモンになっちゃうよ!」
    「私は節度をわきまえている!」
    「性懲りもなくっ!」
    「あんたみたいな奴がいるから、溺死者と中毒者がっ!」
    「お前は、ここにいてはいけない人間なんだ! 酒飲みは、ここからいなくなれーっ!」
    「魔法剣、ガーベラストレート卓袱台返しぃっ!」

     一歩進み出た少年が、お盆に手をかけ、一息にひっくり返す。
     名は体を表すと言ったところか、その絵面は卓袱台返しを髣髴とさせた。

    「なんだ……徳利が、死ぬ……!?」
    「俺はジャンク屋だからな、自分で物は壊さねぇ!」
    「酒をお湯に入れたら、意味ないじゃないか!」
    「僕たちは……取り返しのつかないことを……」
    「どうして……僕たちは、こんなことをしているんだろう……」


     それは、刹那も知りたいところであった。


    23 = 3 :


     風呂場での逆襲イベントを終えて、刹那は女子生徒と合流。
     メンバーが整ったことで、揃って夕食をすませることになる。

     日本人以外の面子も多いことから、テーブル席と座席とを選択できたが、刹那が選んだのは座席。
     テーブル席を希望する人間の絶対数に対し、枠そのものの総数が少なかったことが理由である。

     それに合わせたのか、シャルとセシリアも刹那と同様座席に。
     長時間の正座は厳しいと判断したらしいラウラは、遺憾の意を示しながらもテーブル席へ。


     そんなこんなで、食事が始まった。


    24 :

    俺がっ保守だ!

    25 = 3 :


     出されたのは、刺身やすき焼き、煮物に味噌汁、漬物、白米などの純日本食。
     日本の旅館だからと言うのもあるだろうし、他国籍の人間へと文化を浸透させる狙いもあるようだ。

     かつて日本に滞在――潜伏――していた刹那からすれば物珍しくはなかったが、
     ソレスタルビーイングとしての活動が本格化してきて以降、食事はほとんどレーションだったから、悪くは無いチョイスだった。


     わさびを箸で少量挟み、刺身の腹にそっと置いてやる。
     それから、身に少しだけ醤油をつけて、ゆっくりと、かつこぼさないように口へ運ぶ。

     久しく味わっていなかった、芳醇な味と香りが感覚を支配する。
     本来のうまみに加え、醤油とわさびがいいアクセントになっていた。
     文句なしに、美味しいと言える味だろう。
     学園側も、中々にいい店を指定したものだ。

     その味を堪能している刹那の、右手側の席に位置するシャルがふと問いかける。

    「ねえ、刹那」

     口中のそれを咀嚼し、飲み込んでから、刹那は答えた。

    「どうした、シャル」
    「これ、何かな? 確か……」

     視線で、指し示す。
     刺身の更に盛られた、緑色の香辛料――――わさびである。

    26 :

    シャルがシャアに見えちまった・・・
    死にたい

    27 = 3 :


     フランス生まれのシャルからすれば、馴染みの薄いものだろう。
     知らないのも無理はない。

    「わさび、だっけ?」
    「ああ、香辛料の一種だ。独特の香りと強い辛味がある」
    「へぇ~……」

     感嘆の声を上げながら、シャルが箸を伸ばす。
     密かに練習していたのだろう、その箸裁きは、一般的な日本人のそれと比べて遜色ない。

     ……が、今注目すべきはそんなことではなかった。
     シャルは、恐れを知らずに丸々一山いこうとしている。

    「待て、シャル。
     あまり量を取りすぎるな」

     静止の声に、シャルの動きが止まった。
     その一連の流れを目にしていたのだろう、給仕の仕事についているらしき少年が、おひつを片手にシャルへ警告する。

    「……一つだけ忠告がある」
    「えっ?」
    「……死ぬほど痛いぞ」
    「い、痛い……?」

     確かに、わさびには鼻に抜けるような感触を伴う。
     慣れていない人間は、それを痛みと捉える傾向にある。

    28 = 11 :

    ヒイロwww

    29 = 3 :


     それを伝えに来たしい少年は、言い切ると即座にきびすを返し、仕事を再開した。
     生徒のおかわりの要請に応え、茶碗にご飯を盛ってやっている。

     その背を見送りながら、刹那は補足した。

    「……少しにしておいた方がいい。
     興味があるのはいいが、慣れていないとつらいものがある」
    「う、うん……」

     どもりながらも、シャルは箸でわさびのてっぺんのあたりをつまむ。
     そのまま、おそるおそる口内へ招きいれ、

    30 = 3 :


     言葉にならぬ声で、悲鳴を上げた。

     目をぎゅっと閉じ、鼻に手を添え、眉をしかめる。
     目じりには、うっすらと涙が浮かんでいた。

     うつむいてしまうシャルへ、刹那は自らの湯のみを差し出してやる。
     震える手でそれを受け取って、シャルは緑茶に口をつけた。

     しかし、ここまで耐性がないとは。
     味そのものを把握させるために単体で行かせたが、
     こうなるのなら刺身と一緒に食べさせるべきだったか。

     刹那は、自身の不注意を呪った。

    「……すまない、俺のミスだ」
    「だっ、大丈夫……風味があって、美味しいよ」

     お茶を飲み終えたらしいシャルが、おぼつかない呂律で感想を述べる。
     ……全く、大丈夫には見えなかったが。

    31 = 17 :

    シャルは可愛いなあ!

    32 = 3 :

     しかし、大丈夫でない人間はもう一人いた。

     刹那の左側の一席に座っているのは、セシリア。
     普段とは違い、何やらもじもじと落ち着かない様子である。

     原因は、言わずとも知れた。
     足が痺れているのだ。
     イギリス人であるセシリアにとって、正座は苦行以外の何物でもない。

    「セシリア」
    「刹那さん……」
    「無理をするな。つらいのなら、テーブル席に移動しても……」
    「へっ、平気ですわ……」

     にっこりと笑みを作って、セシリアはその場を繕う。

    (この席を獲得するのにかかった労力に比べれば、このくらい……!)
    「しかし……」
    「刹那」

     刹那の言葉を、シャルが断ち切る。

    「女の子にはいろいろあるんだよ」

     そう言われては、刹那は黙るしかない。
     刹那は男である。気遣いはできても、心を読むことは出来ない。
     女性の事情であるのだから、男性である刹那がずけずけと踏み入ることは許されぬと言うものだ。


    33 :

    なんでシャルは天使なの?

    34 = 3 :


     食事を終え、刹那は一度部屋へと戻る。
     これは合宿ではなく臨海学校、スケジュールが詰められているわけでもない。
     消灯までは自由時間だ。

     さてどうしたものかと自室へ戻った刹那を迎えたのは、

    「久しぶりだな……会いたかった、会いたかったぞ、少年!」
    「お前は……!」

     昼間の乙女座。

    「まさかこのような場所で見(まみ)えようとは……何と言う僥倖!
     乙女座の私は、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない」
    「何故ここに……!」
    「決まっている……! 決着をつけるためだ!」

     乙女座は口端を吊り上げ、手で部屋の中央を指す。
     そこにあったのは、ゲームの筐体。四ボタン+一ボタン式のゲーム筐体が、四対セットで連結している。
     ゲームセンターにあるような、本格的なそれだ。

    「これは……!」
    「説明は不要だな? ここで引導を渡す!」

     叫ぶ乙女座。しかし、このゲームは四人用。
     二人でも遊べなくはないが、本来は二体二で行うものだ。

    35 = 3 :


     そんな疑問などとうに察しているのだろう、刹那に続き、部屋へ続々とメンバーが集まってくる。

    「これ、勝てば賞金がもらえるんでしょ? これでリィナを山の手の学校に……」
    「待っててくれよ、ティファ。必ず勝って帰るからな……!」
    「見せてもらおう……ガンダムのパイロットの腕前とやらを」
    「ここで奴を仕留めなきゃ、死に切れるもんじゃない……」
    「見せてやるぜ、最強の悪運ってやつをな!」
    「上手く言えないけど……あいつと、ガンダムと戦ってみたくなったんだ」
    「人が安心して眠るためには……!」

     これが皆、プレイヤーだと言うのか。
     いつの間に、こんな段取りをすませていたのか。

     だが、そんなことはどうでもいい。大事なのは、これからどうするかだ。

    「行くぞ、少年!」
    「……了解。全力で行く!」
    「よく言ったガンダムぅぅぅぅぅぅぅ!」


    36 = 3 :


    「俺のレッドフレームは、悲しみなんか背負っちゃいねえ! やれるはずだ!」
    「クロスボーンは、接近戦に強く調整されている。恐れるな……」
    「純粋に戦いを楽しむ者こそぉーっ!」
    「自分を捨てて戦える者にはぁーっ!」
    「トゥ! トゥ! トゥッ、ヌ゙ォォォ!? (キラキラバシュウウウウン) モウ、ヤメルンダッ!」
    「守ったら負ける、攻めろ!」
    「コウ・ウラキ、吶喊します!」
    「2000コストかい!? 早い、早いよ!」
    「ビーム・マグナムは、加減がきかない……!」
    「世界を滅ぼされてたまるかぁーっ!」
    「しつっこいんだよっ!」
    「行ってしまえっ!」
    「抵抗するんじゃない、行っちゃえよ!」
    「ははっ、ざまぁないぜ!」
    「ゴォォッド、フィンガー!」
    「ダァァァクネス、フィンガー!」
    「やめろ、シャア! ゲルググを使うんじゃない!」
    「そんな決定権がお前にあるのか!」
    「その薙刀を止めろと言ってるんだ! このままでは、過疎の冬が来るぞ!」
    「五飛、教えてくれ。俺はあと何ヶ月、トールギスⅢを待てばいい……
     ゼロは何も答えてはくれない。教えてくれ、五飛……」

    「さあ……勝負だ、少年!」
    「目標を、駆逐するっ!」


    37 :

    ひどい旅館だ

    39 = 3 :

     気づけば、朝になっていた。
     登った日が、眩しい。

     結局、一同は夜通しガンダムファイトとしゃれ込んでいた。
     ELSである刹那はともかく、普通の人間である連中はその辺で雑魚寝している。
     その中にも、ストレッチと筋トレに励む青年と老人がいたりしたが。

     顔を洗うべく、刹那は部屋を後にする。
     廊下に出て、洗面所へと歩を進め、


     ふと、妙な違和感を覚えた。

     原因は、中庭。
     土の中に、何か埋まっている。

     近づいて、観察。
     ウサギの耳だろうか、それらしき造形の物体が、地中から突き出ていた。
     その後ろには、ご丁寧に『ひっぱってください』と書かれた看板がつきたてられている。

    (……ティエリア)
    ≪……僕にもわからない≫

     さしものイノベイドにも、この不可思議極まりないアーティファクトが何なのかわからないらしい。
     まあ、駄目元で尋ねた以上、それほど期待もしていなかったが。

    40 :

    こいつ全てのイベントを回避しやがった‥‥

    41 = 3 :


     しかし、どうするか。
     ひっぱってくださいと懇願されているのだからひっぱった方がいいのかもしれないが、怪しすぎる。
     ひっぱった瞬間爆発でもしたらと思うと、迂闊にはひっぱれない。

     うんうんと悩む刹那の後ろから、声がかかる。

    「何をしてらっしゃいますの?」

     振り向けば、そこに立っていたのはセシリア。
     時間から考えるに、彼女は朝に弱いわけではないようだ。

     刹那が顎で地中のそれを示すと、セシリアは言葉に困ったように表情を歪めて、

    「……これは……」
    「俺にもわからない」
    「『ひっぱってください』……と書いてありますけれど」

     看板と耳とを交互に見やるセシリアに、刹那は踏ん切りをつけて、

    「……セシリア、離れていろ」
    「刹那さん?」

     耳に歩み寄り、思い切って手をかける。
     指示通りセシリアが後退しているのを確認してから、上方へと引き抜く。

    42 = 3 :


     抵抗もなく、耳が出てきた。
     ほぼ地上に出ている部分しかない。
     それ故、簡単に抜けたのだろう。拍子も抜けようと言うものだ。

     何だこれは、と手に持った耳をためつすがめつしていると、

    ≪上空から熱源……! 刹那、警戒を!≫

     ティエリアから、警告が入る。
     その報せを受け、刹那は掴んだ耳を放棄、ISを装着。
     ダブルオーライザーを象った装甲をまとい、セシリアを手元に引き寄せる。
     肩を掴まれたセシリアは、油断していたのだろう、あっけなく刹那に身を寄せた。

    「せっ、せせせ刹那さん? い、一体何を……!?」
    「動くな」

     焦った様子のセシリアへ返答しつつ、刹那はGNフィールドを展開。
     人二人分を包むよう出力を調整し、エトランゼの出現に備える。


     そして、それはやってきた。

     中庭に到達したそれは、派手に爆音と砂塵を上げつつ着弾。
     地形を変形させるほどの衝撃を、刹那たちに与えてくる。

     しかし、ISとて伊達ではない。
     GNフィールドにより阻まれ、それは威力を殺された。

    43 = 3 :


     そして、砂埃が晴れる。
     地面に突き刺さっているのは、にんじんのような形をした機械だった。
     それに遅れ、けたけたと笑い声が響く。
     そこには、わずかな狂気が含まれていた。

     刹那とセシリアが怪訝な目を向けると同時、にんじんが割れる。

     中から出てきたのは、人。
     艶やかな長い髪と、たれた目、そして着用しているキュロットスカートが特徴的な女性であった。

    「はっはぁ、引っかかったね~?」

     おそらく、埋まっていたあれは偽物で、引っこ抜いた瞬間に上から来ると言うフェイントなのだろうが、
     何かもう色々と破綻していた。

     と言うか、移動するのなら、機械の外見をにんじんにする必要性は皆無なように思える。
     にんじん、いらないよ。


    44 = 3 :


    「ごめんごめん、驚かせちゃったねえ。
     本当はあの子にやってもらうつもりだったんだけど……」

     後ろ手に頭をかきつつ、女性は続ける。

    「そう言えば、君は刹那・F・セイエイ君?」
    「……ああ」
    「じゃあせっちゃんだね、よろしくせっちゃん」
    「…………」
    「あっ、流石にせっちゃんじゃ嫌かあ。もう大人だもんねえ。
     じゃあせっさんかな? よろしくせっさん」
    「…………」

     ……なんだこいつ。
     思わず、刹那はそんな感想を抱いた。

     いきなり飛び込んできたかと思えば、いきなり人の名前を当てて、いきなりあだ名までつける。
     意図の読めない行動だった。

    45 = 3 :

    「そう言えばせっさん、ちーちゃんがどこにいるか知ってる?」
    「……ちーちゃん?」
    「知らないかぁ。そっかあ。しょうがないなあ。
     じゃあ、ちょっと探しに行ってくるね」
    「…………」
    「ばいばい、せっさん、また後でね~」

     手を振りながら、女性はぱたぱたと駆けていく。
     靴を脱いで廊下に上がると、教職員の寝室に向け走り出した。

     まさしく、嵐の様な騒がしさであった。
     マイペースと言うか何と言うか。

    「せっ、刹那さん。今の方は一体……?」

     ぽかんとしたままのセシリアが、刹那に状況の説明を求めてくる。
     刹那は首を横に振った。刹那自身、何もわからないのだ。


    46 = 13 :

    しぇん

    47 = 3 :


     昼。
     朝の準備を終えて、各クラスの専用機持ちは旅館近くの渓谷へと集合していた。
     近くに人が居ては、何かと不都合なのだろう。

     並んだメンバーをざっと一瞥して、千冬が口を開く。

    「よし、専用機持ちは全員揃ったな」

     左から、セシリア、鈴音、刹那、ラウラ、シャル、乙女座。

     ……乙女座?

    「……あの、専用機持ちじゃない人が混じってるんですけど?」

     違和感をぬぐいきれない鈴音が、千冬に質問をぶつける。
     予想していた千冬は、鈴音の目を見て、

    「私から説明しよう。実はだな……」
    「やっほぉーーーーーーーっ!」

     しかし、遠方から聞こえてきた声に、表情を渋めた。

     刹那にも、聞き覚えがある。
     この、高い声音は。

    48 = 3 :

     渓谷の岩肌を滑り降り、途中で壁を蹴る。
     爆発のように足元が弾け飛び、その第三者は空を舞う。

     キュロットスカートが、空気の抵抗を受け、なびいた。

    「ちーーーーーぃちゃーーーーん!」

     ちーちゃんとは千冬のことだったのか。
     ともかく、名を呼びつつ、女性は千冬に突撃。

     真正面から飛びつこうとするも、千冬の迎撃を受けあえなく失敗。
     頭を右腕で掴まれてしまい、接地を余儀なくされる。
     そんなことなどお構いなしに、女性は続けた。

    「やあやあ会いたかったよちーちゃん!
     さあハグハグしよう! 愛を確かめ――――」
    「うるさいぞ、束(たばね)」

     ぶっきらぼうに言い切る千冬。

    「相変わらず容赦の無いアイアンクローだねえ!」

     言いながらも、女性――――束は千冬の手中から脱出。

    50 = 3 :

     乙女座の前まで一瞬で移動し、大仰な身振り手振りでアピールを開始する。

    「じゃじゃーん! やあ! 元気だったブシドー?」
    「体調は万全です、プロフェッサー」
    「それは何より! うんうん、人間元気が一番だね!
     ……およ? おお、せっさん! また会ったね! 覚えてるかな?」
    「……ああ」

     二転三転する話を振られて、刹那はとりあえず頷く。
     何がどうなっているのか、何をどうすればいいのか、刹那はさっぱりわからない。

     その様を見かねて、千冬が言い含める。

    「束、自己紹介ぐらいしろ」
    「ええ~、面倒くさいなぁ~」

     渋々一同の前に出ると、束はくるりと一回転して、ぱっと両手を開く。
     ミュージカルやフィギュアスケートのような、そう言う芝居がかった動きだった。

    「私が天才の束さんだよ! はろ~ん!
     おーわりっ」
    「束、って……」
    「ISの開発者にして、天才科学者の……!」
    「篠ノ之束……!?」


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