元スレ律「バンドミーティング」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★
51 = 17 :
唯「あ、これリマスタリング版再発されたんだー。ねぇ借りてって良い?良いよね。借りてっちゃお。あ、このEPってレアでプレ値付いてるやつだよね?どこで手に入れたの?」
律「あー、それはバイト先で…って、おい!何やってるんだー!」
唯「ぺヤング探しだよ!りっちゃん!」
律「こらー、今日は遊びじゃないんだぞー」
唯「だよね!」
52 = 17 :
律「新しい曲はさ、澪が途中まで作ってた奴があるじゃん?それを完成させる形で取り合えず、一曲やるのが良いと思うんだよ」
唯「うんうん」
律「でさ、アレンジとかリフ作りとかさ諸々、今まで澪がやってくれてた部分は唯にやって欲しいんだわ」
唯「うんうん…、って、えぇっ?!」
律「だから、アレンジとかさ…」
唯「一度言えばわかるよ。で、でも、そんなの私やった事無いし…」
律「大丈夫だって」
53 = 17 :
唯「ふぇ?」
律「この前みたいにさ、思いついたアイデアを形にして見てくれたら良いんだよ。私も色々するからさ」
唯「でも…」
迷ってんじゃねーよ。
律「澪だけじゃなくて、ムギや梓にも見えるようなおっきな塔を建てなきゃいけないんだぞ?」
唯「ん?」
律「大丈夫だって、唯なら出来るって」
唯「うん…」
54 = 17 :
もう、決心は出来てるんだ。
今までと違ってしまうかも知れない。
でも、それでも構わないんだ。
澪は逃げ出したくなったかも知れないけど、私は逃げない。
だって、唯がどこまで行けるか見てみたくないか?
それに、高いところまで行ければ、澪だけじゃなくて、ムギ、梓からだって見えるようになる。
戻って来る場所があるのは良いもんだぜ?なあ、澪。
55 = 17 :
唯に色々な事をさせてみると言うのは我ながら良いアイデアだったと思う。
今まで、楽をし過ぎてた反動だろうか、最初こそブーブー言う事が多かったが、どんどん新しいアイデアを出して来るようになる。
56 = 17 :
唯「ねえ、りっちゃん。こう言うのはどう?」
唯「りっちゃん、アレンジのここ変えてみたんだけど」
唯「ねー、このワウを効かせたイントロどう?爆発って感じだよね?」
私は唯の提案を聞きながらいちいちニヤニヤする。
唯「ね?これ良いでしょ?身体揺れちゃうでしょ?踊れるでしょ?」
57 = 17 :
今まで唯はほんの少ししか音楽に手を入れてこなかった。
ちょっとジャムってる時やライブの時に魔法を一つまみ。
そのちょっとした魔法にやられて入部した梓や、その凄さに気付いてしまった澪ってのは、それこそ今になってやっと分かった私なんかよりもずっと音楽の神様に愛されてるんだろうな。
でも、これからの魔法は純度100%だ。
きっと、凄い事になる。
58 = 17 :
唯「スネアをさ、もうちょい高音にチューニングして、で、もっと…、マーチ的に…」
律「あー、っと…?」
唯「だから、こうタタタタって」
律「手がつっちまうよ…」
唯「だからさ、ちょっと貸して。こう言う感じにして…。んで、リムショットでこうカカカカって…。分かった?」
ふふふ。
律「唯と音楽やれて良かったよ。凄くそう思う」
唯「りっちゃん、突然なに言い出すの」
律「まあまあ、急に感謝したくなったんだよ」
唯「変なりっちゃん」
律「そうかな?」
唯「そうだよ」
59 = 17 :
大義ってのは良いものだと思う。
HTTは、いや平沢唯はそれに値するアーティストだ。
つまり、こう言う事だ。
20年近くに及んだ友情の終焉。
退屈なレコード屋のバイト。
先が見えないアマチュアバンド生活。
そう言う諸々の苦痛の解消法を私田井中律は見つけたって事だ
60 = 17 :
デモテープは完成する。
澪の残したのを作りかけを完成させた曲。
私が鼻歌で歌ったのを、唯が起こして完成させた曲。
これはちょっと稚拙な曲だ。
これまでの曲、例えば昔にムギが作ってくれた曲のAメロBメロ、フック、フレーズを引っ張ってきて再構成させたみたいな曲だからだ。
才能の無い私にはこれが精一杯。
でも、逆に今までのHTTに一番近いかも知れない。
61 = 17 :
この二曲に唯のアイデア、アレンジを大量に盛り込んだ結果、作りも作ったりバージョン違いが6つずつ。
こんなデモテープを取り合えずどうぞ。
『放課後ティータイム』
Vo:平沢唯
G :平沢唯
B :平沢唯
Key:平沢唯
Dr:田井中律
63 = 62 :
さるか
64 = 35 :
終わりじゃないよな?
67 :
スマパンのアドアみたいだな保守
68 = 17 :
ふはっ、女の子2人バンド。
送られてくる山ほどのデモテープの中、少しはフックになってない?
おまけに一人はマルチプレイヤー。
レコード会社のお偉いさんはまだテクニック信奉なんて言う間抜けさを持ち合わせてるに違いない。
だったら、それを利用しない手は無い。
皆が才能に背を向けないで済むように。
69 = 17 :
デモテープを送ってから一月。
連絡は来ない。
私はちょっとがっかりする。
さて、ここで問題。
唯が才能が無いのか。
私に見る目が無いのか。
メジャーのA&Rマンに見る目が無いのか。
チャンネルはそのままで。
70 = 17 :
メール着信。
律「ん?唯から?」
すぐ来ての文字。
71 :
さるか
72 :
書いてる人がプレイヤーだと
ついわくわくして見ちゃう支援
73 = 17 :
唯のアパートに来るのって引っ越し手伝って以来だな。
いや、魔窟になってそうだから遠慮してたんだ。
唯「りっぢゃ~ん」
うぉ、玄関開けて0.1秒かよ。
律「ど、どうしたんだよ、鼻水垂らして」
唯「だっでぇ、だっでぇ…」
74 = 17 :
あっちゃー、やっぱ魔窟になってたか。
こう足の踏み場も無いと、唯一の生活スペースであろうベッドまで行くのも…。
あぁ、貴重な盤をこんな積み方をしやがって。
後でちゃんと言い聞かせなくては…。
唯「りっちゃん、早く早く…」
律「あ、うん。ほいほいっと…」
私は何とか孤島であるベッドに上陸して唯と共にノートPCを覗きこむ。
75 = 17 :
要するに、才能溢れる唯とだけ契約したいって事か。
唯「どうしたら良い…。こんなの私…」
しょうがねーなー。
律「契約するしかないだろ」
唯「で、でも…」
律「だって、私のせいで唯が先に進めないのって辛いしな。引き上げるんじゃなくて、自分のとこまで引きずり下ろそうってするようなのは友達じゃないだろ?」
もう一回言うぜ。
迷ってんじゃねーよ!
76 = 17 :
唯「りっちゃん…」
律「おいおい、抱きついてくるなよ」
唯「だって…」
律「唯がさ、武道館でやってくれればそれは私達の夢を実現してくれたって思えるからさ。ただ乗りなんて図々しいかも知れないけど、友達だと思ってくれてるなら、な?」
唯「う、うん…」
77 = 17 :
唯は最後まで渋ってたが、契約する事にした。
向こうの提示した条件はあまり良いものでは無かった。
アマ活動でも大した実績が無かったので、当たり前だが高額でも長期の契約でも無い。
1stアルバムの時点で契約の見直し、再検討。
全く、問題無い。
私には勝算がある。
唯の作りだすアートに自信がある。
78 = 67 :
のちの川本真琴じゃね?www
79 = 17 :
条件闘争が出来るような評価でも無かったが、
それでも契約に当たって一つだけのお願い。
80 = 17 :
律「ほーら、唯早くしないと」
唯「ま、待ってよ、りっちゃ~ん」
律「インストアイベント15:00からだぞ?今何ん時だと思ってんだよ」
唯「13:00です、えへへ…」
まったく、モーニングコールのあと二度寝するとは。
いや、予測可能ではあったけどさ。
81 = 17 :
私は唯のマネージャーになった。
それはこの世界に唯を放り込んだ私なりの責任の果たし方だ。
本当はバンドのメンバーとして見て行きたかったけど、でもそれが出来なかったんだから仕方が無いだろ?
A Dream Goes On Forever.
そのために自分に出来る事は何か?と言う単純な話で。
82 = 17 :
律「あ、渋谷のタワレコまでどんぐらいかかります?」
タクシー「そうですね~、この時間だと40分ぐらいですかね」
律「あー、やばいな…。リハ間に合わないかなー。…首都高入ったら少し早くなります?」
タクシー「あー、どうですかねー、でも、気持ちってとこですよ?」
律「構いません、それでよろしくお願いします」
83 = 17 :
それまで神妙な顔をしていた唯は、私とタクシー運転手の会話を聞いて元気を取り戻す。
少しは反省しろ。
唯「なんだ、楽々間に合いそうじゃん。りっちゃん、大袈裟だよー」
バカ野郎。
律「スタッフへの挨拶とかあるだろ?」
唯「そーだけどさー」
律「それにリハだって」
唯「でも、リハなんていらないよー。すぐに弾けるし…。それにあんな曲…」
おいおい、自分の曲、おまけに初登場オリコン一桁のスマッシュヒットをあんな曲扱いかよ…。
84 = 17 :
唯「私は『YUI』じゃないよ。平沢唯だもん…」
律「そう言うなよ」
唯「だってぇー…」
まあ、唯の気持ちも分からないでは無いけどな。
律「あ、クマ…。唯、あんま最近眠れて無いのか?」
唯「あー、うん…。ちょっと寝付き悪いかも…」
律「そっか。じゃあ着くまでちょっとでも寝ときな。着いたら起こしてやっから」
唯「うん、そうさせて…」
※現実のYUIには何の思うところも無いです。
ただ、このSS中では芸名として付けられていると言う事です。
85 = 17 :
唯の気持ちは分かる。
何しろ、このシングルで唯のやってる事は楽器を弾いてるだけだ。
しかも指定されたように。
曲の出来が悪いって訳じゃない。
とても良く出来たポップミュージックだし、私だって嫌いじゃないし、唯だって言うほど嫌ってはいないだろう。
PVも悪い出来じゃなかった。
天真爛漫にピアノ、ギター、ベース、ドラムととっかえひっかえ演奏する姿を撮ったPVは中々にキュートだし、そこに唯の才能の閃きってのを見出せるようにもつくられてる。
ただ、それもこれも唯のものじゃない。
周りが思う才気あふれる若手女性歌手ってのをシミュレートさせてるだけだ。
「平沢唯」とレコード会社の作り上げ、デビューさせた「YUI」と言う歌手は別物だ。
86 :
蛸壺屋的展開かと思ったのに
87 = 17 :
>>86
あれの影響もあるのは否定しないです。
でも、他のキャラがあそこまで唯に対して距離をとるかな、
と言うのがあったので…。
・・・
それでも、良いとこまで行く事は出来るかも知れない。
薄めて、能動的には音楽を聴かない人達に売る。
ダウンロード数を稼ぐ。カラオケで歌われる。
良いプロダクトだ。
88 = 17 :
そのかわり、天才の才能は失われる。
つまり、こう言う事だ。
鳥は翼を失い地面に墜落し、そして最後には出血多量で息絶える。
89 = 17 :
律「お疲れさまでした」
スタッフ「お疲れしたー」
まったく、唯の奴。
本番でアレンジをいきなりいじって来るか?
今日は必要の無いはずのギターを背負って出て来た時点で気付くべきだったんだが…。
でもでも、あんな遅刻寸前の入りって状況でそんな事にまで気付けってのは無理だろ?
90 = 17 :
今日はキーボードってのが唯のやるように言われた楽器だった。
キーボード弾き語り。
レコード会社が唯をどう売り出したいか分かるやり方だ。
91 = 17 :
バックバンド有りでってのが悪い方向に作用した。
スタッフの目を盗んでバンドメンバーと打ち合わせ。
少しでも音楽を齧ってる奴は唯の言い出す事の面白さが分かってしまう。
結果、録音されたものとはまるで別のものになる。
92 = 17 :
唯「りっちゃん、疲れたー。早く帰ろー。行ってるよー?」
律「ああ、今日は私も直帰だから…、ん?」
スタッフ「田井中さん」
律「あ、はい、何か?あー、唯行ってて?」
唯「ほいほーい」
律「えーっと…?」
スタッフ「あ、あの、今日の唯さん、CDとは全然違う感じでしたけど、凄く良かったです…」
律「あ、ありがとうございます…」
あー、唯?私達は自信を持って良いみたいだぜ?
93 = 17 :
スタッフ「それで、このバージョンで今度出るアルバムとかに収録されたりするんですか?」
さてと…。
律「あー…、それはですね…、あはは…」
ちょっと気まずいね、色々と。
スタッフ「そうなんですか…。いや、CDのバージョンより全然良かったから、惜しいなって…。あ、CDの方も良いと思いますけど、個人的には今日の方が好みかなって」
律「あはは、良いですよ。アフレコにしときます」
スタッフ「…すいません」
94 = 17 :
唯「りっちゃん、店側の人と何話してたの?」
タクシーが走りだすまでは、硬い表情。
2人きりと言う事でやっと口を開く。
唯は唯なりに気を使ってんだよな。
だから、外では不満を口に出さない。
レコード会社にも事務所にも、きっとメジャーデビューを勧めたり、マネージャーを買って出た私にも、不満はあるんだろうけど。
今日みたいなのは…。
まあ、耐えられないよな、全てをコントロールされるってのは。
だから、少しぐらいは発散したくなるよな。
95 = 17 :
律「いや、大した事無いよ」
唯「なら話してよ」
律「あー、そだなー…」
唯「気になるよー」
律「えっとな、今日やったアレンジの方がCDの奴より良かったってよ」
唯「あー…、そっか…」
おーおー、嬉しそうな顔しちゃって。
気持ちは分かるけどな。
96 = 17 :
唯「何かさ、りっちゃんとデモ作ってた時の方が楽しかったんだよね」
律「今は?」
唯「どうかなー?」
律「冗談はそんぐらいにしとけー?」
唯「冗談なんかじゃないよ」
唯の表情も声も見ない振り聞こえない振り。
だから返事もしない。
97 = 17 :
律「ほら、着いたぞ」
唯「りっちゃん…」
律「明日からまたアルバムの作業だからな。遅れんなよ…、いや、明日は不安だから迎えに来る。12:00に来るからちゃんと起きて顔洗うぐらいはやっとけよ」
律「ん?どうかしたか?」
唯「りっちゃん…、あのさ…」
律「ん?」
唯「何でも無い…」
律「今日は早く寝つけると良いな。じゃな」
私達はほんの少しだけ夢を見て、その夢が長く続く事を祈ってた。
その夢はいつの間にか悪夢になって、私達の中の一番才能ある一人を浸食しつつある。
98 = 17 :
律「おはよございまーす!」
スタッフ達「あ、おはようございます!」
唯は昔のような陽気さは無くボソリと
唯「おはようございます…」
プロデューサー「唯ちゃんおはよー。今日もよろしくねー」
律「おはようございます」
プロデューサー「りっちゃんもおはよう」
99 = 17 :
プロデューサー「はーい、OK」
唯「はい…、ありがとうございます」
プロデューサー「じゃ、少し休憩しよっか?」
100 = 17 :
唯はすっかり不機嫌そうなオーラを纏うミュージシャンと言う感じになってしまっている。
だから、その本当の感情に周りが気付かなくても無理は無い。
プロデューサーもミキサーもスタッフの全員に罪は無い。
ここに連れて来てしまった私に、そして一人唯の苦痛に気付いてしまう私には罪はある。
みんなの評価 : ★★★
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