元スレ唯「平行世界の私達!?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
1 :
いつも通りの朝。
憂「お姉ちゃーん!そろそろ起きないと、遅刻するよー!」
唯「ん、ふぁ…う~ん」
普段と何も違わない、平凡で平和な一日が今日もまた始まる。
授業をうけて、放課後は軽音部のみんなとお茶して、ギー太もいっぱい弾いて――いつもと変わらない、だけど楽しい一日が始まる。
唯「いい天気だなぁ~」
憂「お姉ちゃーん?」
唯「今行くよー!」
あんな光景を目にするまでは、そう思っていた。
2 :
終わりです
ご愛読ありがとうございました
3 = 1 :
憂「明日からはもう少し早く起きようね、お姉ちゃん」
唯「申し訳ございません」
憂「うふふ――あ、梓ちゃん」
憂が前方を見て声を上げ、唯もその視線を追う。名前を呼ばれてちょうど振り返った梓と目が合い、唯はにっこりと笑った。
梓「おはよう憂。おはようございます、唯先輩」
唯「おはよーあずにゃん♪」ダキッ
梓「わっ!朝からやめてくださいよ先輩!」
憂「梓ちゃんも一緒に行こっか」
梓「うん」
4 = 1 :
他愛もない会話をしつつ、三人は校門をくぐる。
と、生徒たちが次々玄関へと向かう中、一人立ち止まってきょろきょろしている律の姿が目に入った。
梓「何してるんでしょうね、律先輩」
唯「さぁ…?聞いてみるのが一番だよっ」
唯「おーい!りっちゃーん!」
律「ん…?あっ唯!やっと見つけたぞ!」
唯「あれ?もしかして私に用だったの?」
律「用も何も、お前が急に走り出すから…って、あれ――もう大丈夫になったのか?」
唯「…え?」
律「いや、なんか様子がいつもと全然違ってたからさ」
5 = 1 :
律の言葉の意味がわからず固まる唯。憂と梓も駆け寄ってくる。
憂「おはようございます、律さん」
律「おはよ、憂ちゃん。ってあれ…その格好――」
梓「律先輩、おはようございます」
口を開きかけていた律に、梓が挨拶する。その彼女の顔を見た律の顔に、困惑の表情が浮かんだ。
律「ん?あ、あぁ、おはよう。えーっと…」
そして、耳を疑う言葉を口にした。
律「憂ちゃんのお友達?」
6 = 1 :
梓「え――な、何言ってるんですか?私ですよ、梓です」
律「梓ちゃんっていうのか。えっと、どこかで会ったかな?ってか、先輩って?私まだ高一だけど」
唯「り、りっちゃん、さっきから何言ってるの?なんか変だよ、今日のりっちゃん」
律「そ、そうか?んー、やっぱ私変なのかな」
梓「認めちゃうあたり余計に変ですよ」
律「うはっ、案外きついな梓ちゃん」
梓「…やっぱりおかしいです。まるで私のこと…知らないみたいに…」
律「ご、ごめんな。私、おかしいみたいだからさ」
憂「一体どうしたんですか?」
律「うーん、なんていうか…昨日までは普通だったんだけどさ。朝目が覚めたら、学校近くの公園に倒れてた」
一同「えぇ!?」
7 :
なんで普通に学校に来てんだよwww
8 = 1 :
梓「あの…それ、本当ですか?」
律「あぁ。自分でもびっくりしたよ。恰好もパジャマじゃなくて制服だし」
唯「え、えー…」
周りの生徒の数が少なくなってきた。唯はちらりと時計を見た。まだ予鈴までには少し時間がある。
律「混乱してとりあえずベンチに座って落ち着こうとしてたら――」
律「お前がニコニコしながらやって来た」
唯「…わ、私…?」
憂「あの、お姉ちゃんなら朝は私とずっと一緒でしたよ?」
律「マジで?いやでもあれは絶対に唯だったぜ?…ちょっと変わってたけど」
唯「変わってた?」
次から次へと出てくる意味不明な律の言葉に唯が眉をひそめた、その時だった。
律「ひゃー、危ない危ない。遅刻するところだったぜ!」
9 = 1 :
梓「律、先輩…?」
律「よう梓!…なんだよそのお化けでも見たような目」
梓だけじゃない。唯と憂も同じような顔をしていた。無理もない。
律が二人いる。異常な光景だ。
律「今の声、まさか――」
律「…ん?」
律達「ええええええええええええええええぇ!!?」
律「な、なん、な…えええええええええええぇ!?」
律?「どういうことなんだ…!?――やっぱり、私がおかしい…?」
憂「」
唯「りっちゃんが…二人!?」
あいた口がふさがらない一同。だが、そこに追い打ちをかけるかのごとく、彼女はやってきた。
「あ!えへ!りちゃあああああああああああ!」
10 = 1 :
梓「!?」
憂「」
唯「…嘘…」
「あはっwwりちゃ!あははwwwwいたぁ!!」
唯「――わ、たし…?」
奇声に近い笑い声をあげながら律に駆け寄る彼女は、唯そのものだった。
しかし、雰囲気は全くことなるもので、どこか異常さが垣間見える。
律?「こいつだ…公園にいた私を見つけたの」
唯「…ふぇ?」
律「あ、あわわわわ…私だけじゃなくて、ゆ、唯まで…」
唯?「がっこ!りちゃ!がっこ!」
律?「あぁ、学校だよ。そうか、お前早くここに来たくて走り出したんだな」
11 :
ほほう
12 = 1 :
皆が呆然とする中、どうも様子がおかしい方の律は、はしゃぐ唯にやさしく尋ねた。
律?「なぁ唯。お前、今日朝なんで公園に来たんだ?」
唯?「りっちゃ、いた」
律?「あぁそうだな。でも、お前の家から遠いだろ?」
唯?「ああぁ!いえ!りっちゃ!ゆい、ぽいされた!?」
先ほどのはしゃぎ様が嘘だったかのように、唯はボロボロ泣き始めた。
律?「ぽい…?」
唯?「おきたらういいないの。川なの」
首をかしげる律。だが、唯には何となく理解できた。
唯「――りっちゃんと同じように、朝起きたら家じゃなかったんじゃないかな?川岸にいたんじゃない?」
唯?「ああああぁ!えへ!そっくり!!」
唯「そうだね~(確かに変わってるなこの私」
13 = 1 :
予鈴のチャイムが鳴り響く。ポカンとしていた梓たちは、ハッと正気に戻った。
梓「え、えと、とりあえず…どうしますか?」
律?「私とこの唯は授業が終わるまでどこかに隠れてるよ。同じヤツが二人もいちゃ、みんなパニックだろ」
律「あ、あぁ、そうだな。何がどうなってんのかさっぱりだけど、とりあえず放課後もう一度話し合おう。音楽準備室、来てくれるか?」
律?「わかった。唯、私が一緒にいるから、しばらく大人しくしてような?」
唯?「りっちゃ!いっしょ!あはっ!」
唯「それじゃ、また後で。――憂!しっかり!もう予鈴なっちゃったよ!」
憂「はっ!あ、え、うん!そうだね!お姉ちゃんが二人で幸せだね!」
唯「憂、しっかり!!」
14 = 1 :
授業中
唯(私がもう一人…。まだ寝ぼけてるのかな、私)
律「」
唯(りっちゃんもずっとあんな調子だしなぁ…)
ため息をつきながら、窓の外へと目をやる唯。と、
唯「――ん…?」
校庭に佇む、見慣れない女性の姿が目に入り、唯は目を疑った。
薄汚れた作業服を身にまとい、深くかぶった帽子がその顔を隠している。長い黒髪と豊満な胸が、その人が女性だという唯一の手がかりだった。
唯(何してるんだろ、あの人。不審者かな…)
先生「こら、平沢。授業中だぞ。よそ見するな」
唯「は、はい!」
15 = 1 :
校舎裏
律?「暇だなぁ、唯」
唯?「あいす!おいし!」
律?「そっか、そりゃよかった。金があって助かったよ」
唯?「りっちゃ、どーぞ」
律?「いいのか?――ん、おいしい」
唯?「おいしwwwおいしwwww」
律?(しっかし…一体何がどうなってるんだ?私がもう一人。私のことを先輩と呼ぶ梓ちゃんの存在。知らないうちに外にいた。もうめちゃくちゃだ)
律?(どうやら唯も知らないうちに、変な場所にいたみたいだし)
律?(――ここは本当に、私の知ってる町なのか…?)
「こんなところで何やってるんですか、唯先輩に律先輩」
16 = 1 :
律?「!?」
唯?「あああぁ!あずにゃ!」
梓「授業サボってアイス食べてるんですか?…そんな人たちだとは思いませんでした」
律?「あ、梓ちゃん!?何でここに…そっちこそ授業はどうしたんだよ!」
梓「梓、ちゃん?何ですか気持ち悪い。――私は気づいたらここにいたんです。意味わかんなくて迷ってたら、先輩方がこんなところでサボってるのが見えたから――」
律?「気づいたらここに…?まさか…。梓ちゃん、私たち朝校庭で出会ったよな?」
梓「だからなんでちゃん付けなんですか?それに、今日律先輩に出会ったのは今が初めてですよ」
律?「…やっぱり」
梓?「今日の律先輩はどうも変ですね。とにかく、私は授業に出てきますので。先輩方も早く戻った方がいいですよ」
律?「駄目だ、梓ちゃん。――ここにいるんだ」
梓?「な、何言って――」
律?「いいから」
17 = 1 :
放課後
紬「二人とも何かあったの?元気ないみたいだけど…」
律「あぁ、うん。何ていうか、ドッペルさんに出会っちゃったっていうか…」
紬「…え?」
律「いや、何でもない。実際に見てもらった方がわかるだろ」
唯「説明しても信じてもらえないだろうしね」
紬「え、えーと…」
律「あぁ、澪掃除当番だから遅れるってさ」
唯「澪ちゃんびっくりするだろうね~」
律「気絶するんじゃないか?現に私だって気が遠くなったし」
紬「…?」
18 = 1 :
律「とにかく、早く準備室に入ろう。いろいろと厄介なことになると面倒だし」
そう言いつつ、律は鞄から準備室の鍵を取り出すと、小走りで階段を駆け上がっていく。
唯「あ、待ってよりっちゃん」
紬「厄介…?面倒…?」
ちんぷんかんぷんな様子の紬の背を押しつつ、唯も後を追って駆ける。と、
律「うわああああああああああああぁ!!」
上から律の悲鳴が聞こえてきて、二人は仰天した。慌てて駆け上がると、準備室の前で腰を抜かしている律の姿が目に入った。
唯「どうしたの、りっちゃん!」
紬「何があったの!?」
律「ム、ムムム…」
律の視線を追って、二人は声を失った。
律「ムギが…もう一人…!」
19 = 1 :
紬?「ご、ごめんなさい!ビックリさせちゃった?」
愕然とする唯。抜け殻のようになっている紬。
それもそうだろう。そこにいたのは、関取のように体格のよい、今にも制服が張り裂けそうな状態の紬だった。
律「ふ、二人とも、とにかく中に入ろう。運良く今の悲鳴は誰も聞いてなかったみたいだ。騒ぎを起こしちゃややこしいからさ、な?」
唯「う、うん」
紬「」
紬?「本当にごめんなさい。驚かすつもりはなかったの…って、わ、私…!?」
律「私と唯に続いてムギまでか…。ホント、何がどうなってるんだ?」
唯「ムギちゃん、いつからここにいたの?」
紬?「それが、よく覚えてないの。気が付いたらそこのソファで横になってて…」
20 = 1 :
唯「二人と一緒だね…」
律「ってか、その、随分体格いいな、このムギは」
紬?「そうかしら?」
唯「正直かなりすごいね…」
紬?「確かに立ってるのつらいわ。よいしょ」ギシッ
グシャバキドーン!!
唯「ソファアアアアアアアアアアアア!!」
紬?「さっきまで横になってたからかしら…。ごめんなさい」
紬「」
律「ムギの反応が新鮮に感じてきたよ…」
唯「一気に非現実的なことを目にしたから、早速感覚が麻痺してきたね私たち」
21 :
並行世界の唯が違い過ぎるよwww
22 = 1 :
律?「なんか今すごい落としたぞ?」ガチャ
唯?「えへwwwどーん!!!あは!!」
ずっと待機していた二人が、ようやく部室へとやってきた。
律「おぉ、来たか」
唯「入って入って」
紬?「え、えぇえ!!?唯ちゃんに、りっちゃんまで二人…!!」
紬「」フラッ
律?「おっと」ガシッ
律「これが普通の反応なんだろうな」
唯「この出来事に慣れちゃってる自分が怖いよ」
23 = 1 :
梓?「お邪魔しまーす」
唯「あぁ、あずにゃん聞いてよ。もう一人のムギちゃんまで現れたよ。気が付いたらここにいたんだってさ」
梓?「こっちの律先輩から話は聞きました。どうやら私ももう一人いるそうですね。…というか、この場合は私が“もう一人の梓”なんでしょうね」
唯「へ?」
律「ま、まさか…」
律?「そのまさかだよ。知らないうちに校舎裏に倒れてたんだってさ。この梓ちゃん」
唯「あずにゃんまで…」
紬?「え?え?話が読めないんだけど…」
梓?「私たちもあなたと一緒で、気が付いたら家じゃない場所で寝てたんですよ」
24 = 1 :
唯?「むぎちゃ!おきて!むぎちゃ!えへっww」
紬「う、う~ん…。今のは夢…?」
唯?「おごwwwむぎちゃ、おきたwww」
律?「お、よかった。気が付いたか」
紬?「大丈夫?」
紬「…さぁ、練習を飲みましょう。お掃除ちゃん澪してるっていうから、キーボードでも食べて待ってましょうね」
唯「ムギちゃあああああああああん!!」
律「ムギがここまで混乱してるのは初めて見るな…」
梓?「そのうち感覚が麻痺して、何でも受け入れるようになりますよ」
律「私らはもうそうなっちまったよ」
25 = 1 :
梓「唯先輩、律先輩、二人は来ましたk――」ガチャ
梓「なんか増えとる!!!」
梓?「どうもです」
紬?「お邪魔してま~す」
梓(えっなにあの関取)
唯「なんだか厄介な感じになってきたね…」
律「もう一人の私が出てきた時点で十分厄介だよ」
紬?「とりあえず、お茶でも飲んで落ち着かない?私が用意するわ」
紬「いえ、大丈夫よ…。ちょっと落ち着いてきたから。私が用意するから、みんなとりあえず座って」
26 :
ムギちゃんデブってかわいそう(´・ω・`)
27 = 1 :
律?「椅子足りるか?」
律「ソファを移動させよう。壊れてないヤツな」
紬?「私は椅子に座るわ。またソファ壊しちゃいけないし…」
唯「え、ちょ、ちょっと待ってムギちゃ――」
紬?「んっ、あら?肘掛けがつっかえて…ふんっふんっ」
梓「む、無理しないで…」
紬?「よいしょっ」バキベキボキ
紬の腹の肉に耐えきれなくなった肘掛けがへし折れる。
唯「いすうううううううううううううう!!!」
唯?「いwwwすwwwwww」
紬?「うん。これでよし」
紬「」
28 = 1 :
律「さて、ムギも落ち着いたところで、もう一回状況を整理してみるか」
唯「四人とも、気が付いたら全然訳がわからない所で寝ていたと」
梓「ワープ?する前の生活の記憶があるということは、四人とも何らかの超現象で突然生まれたとか、私たちから分裂したとかいう訳ではないですよね」
紬?「凄く現実味がない話ね、それ」
梓「すでに十分現実味がない状況なんで、突拍子もないことを考えるしかないんですよ」
梓?「やっぱり分裂って、突拍子もない話だよね…」
梓「え?」
梓?「や、何でもない」
律?「となると考えられるのは…平行世界ってヤツか?」
唯「へーこーせかい?」
梓「パラレルワールドってやつですよ。今私たちが生きているこの世界に並行して、別次元にも同じような世界がたくさん存在しているっていうお話、聞いたことないですか?」
唯「へぇ~…知らなかった」
律?「あくまで作り話…だと思ってたけど、どうもそれが一番正しい気がする」
29 :
おちんちんはえるン?
30 = 1 :
唯?「あー!あー!りっちゃ!!」
律?「そうだな、難しい話だから暇だよな。ちょっと我慢しててくれよ?」
もう一人の律に甘えるようにすがりつくもう一人の唯。律は優しくなだめる。
唯「じゃあ、みんなはここじゃない別世界の私たちっていうこと…?」
紬?「たぶんそうじゃないかな?昨日まで私がいた部室と雰囲気がちょっと違う気がするわ」
律?「それに、私は梓ちゃんをしらない。というか、まだ私は高一なんだ。後輩なんて、中学のときのヤツしかいないよ」
梓「マ、マジですか…」
梓?「でもその梓ちゃんっていうのやめてもらえませんか?なんだか気持ち悪いです」
律「私らは今高三だから…こりゃいよいよ平行世界説が濃くなってきたな」
紬「異世界…なんだか素敵…」
梓「ようやくこの異常な状況に慣れてきましたね。っていうか、楽しんできてますね」
31 = 1 :
>>29
生えないヨ
紬がうっとりとした表情をしていると、部室の入り口の扉が開いた。
澪「ごめん、みんな!遅くなった――…」
その音に振り返った一同と目が合う澪。その顔は、笑顔のまま停止した。
律「やべ…」
澪「――うん。ホコリでも目に入ったのかな?人数が多く見える」ゴシゴシ
唯?「あーっ!!みおちゃ!!」
澪「唯、なんだかご機嫌だな」
唯「み、澪ちゃん…とりあえず中に…」
澪「おいおい唯。何も機嫌がいいからって、増えなくてもいいだr――」
澪「」
急に真顔になった澪は、その場に卒倒した。
律?「澪おおおおおおおぉ!!」
32 = 1 :
律「――と、いう訳なんだ」
澪「」
梓「聞こえてないんじゃないですか?」
律「無理矢理にでも理解させないと、誰かがこの状況を見るたび発狂してたら話が進まないよ」
澪「あ…うふふ…今ならファンタスティックな歌詞が書けそうだぞ…」
律「おーい、帰ってこーい」
唯「りっちゃん、ここはガツンと一発気付けのビンタだよ」
律「なっ…それはさすがに可哀想じゃないか?」
唯「このまま澪ちゃんがずっと妖精さんとお花畑で駆け続けていても構わないっていうの?」
律「いや、でもさ…」
紬?「ここは私の出番ね」ブンブン
澪「わー!!わー!!もうしっかり理解できて自分でもビックリ!!信じられないぐらい今落ち着いてる私!!」
33 = 1 :
唯「さて、澪ちゃんもようやく理解できたところで…これからどうする?」
律「みんなが平行世界の住民だったとしても、ここに来た原因がわかんない以上、帰る方法もわからないだろうしなぁ」
頭を抱える一同。長い沈黙を、梓が破った。
梓「とにかく今は異世界の私たちとこの世界の私たちを区別する方法が欲しいですね。ムギ先輩と唯先輩ははっきりわかりますけど、私と律先輩は区別しにくいですよ」
澪「そ、そうだな。そっちの二人は何か自分しか持ってない特徴みたいなのないのか?」
梓?「私はあるっちゃあるんですけど…あまり披露したくないです。収集がつきにくいし、きっと皆さんも気味悪いと思いますので…」
唯「えぇ~、気になるなあ…」
梓?「すみません。もう少しだけ、考えさせてください。今は私のことは梓2号と呼んでいただいて構いませんから」
そう言いつつ、梓2号はタイをほどきポケットにしまった。区別をつけるためだ。
34 = 1 :
紬?「そっか。区別がつかないなら、作っちゃえばいいのよね」
律?「あ、じゃあ私たちもタイ取っとくか」
律「ま、良い機会だし、平行世界の私たちがどんなことしてるのか聞いてみたいな。もしかしたら、そこから解決策が生まれるかもしれない」
唯「じゃあ次は私――」
唯はもう一人の自分へと目をやる。が、クッキーをぼろぼろこぼしながらあうあう言っているその姿を見て、口を閉ざした。
唯「…は、聞いても無駄っぽいね」
律「じゃあ、私にお願いしようかな。なんか思い出深い話とか、特徴的なこととかないのか?」
律?「私?あー…私もあんまり披露するようなもんじゃないと思うんだけどな」
ガシガシと頭を掻きながら、もう一人の律はちらりと澪を見る。
澪「…?」
律?「…まぁいっか。こっちの澪は知らないだろうし。トラウマほじくり返すことにはならないだろ」
35 = 1 :
小さく息をつくと、彼女はブレザーを脱ぎ捨て、ブラウスの裾をたくし上げた。引き締まった腹がそこから覗く。
そこには、いやでも目につく傷跡が刻まれていた。
澪「ひ、ひいぃ!!」
律「な、なんだそれ…盲腸の痕か?」
律?「知らないってことは、やっぱここは違う運命をたどってる平行世界なんだな。――これ、ナイフで刺された痕なんだ」
唯「うぇ!?」
律?「こっちの世界の澪が、ストーカーに襲われてさ。助けに行ったらもうボッコボコにされて。挙げ句の果てには刺されちゃったってワケ」
律「」
律?「いやーあん時はやばかったなぁ。生死の境を彷徨ったってヤツ?相当危ない状態だったらしい」
律?「でも、みんなが助けに来てくれて、ずっと傍にいてくれたから、今の私があるんだろうな」
律?「大変な事件だったけど、やっぱ軽音部は最高だって再認識できた出来事だったよ」
律(予想以上に壮絶な人生を送ってらっしゃるこの人)
36 = 1 :
澪「み、見えない聞こえない見えない聞こえない・・・」
紬「そっちの世界の澪ちゃんは無事だったの?」
最高律「おう、怪我一つ負ってないぜ。でも、アイツが男五人に囲まれてる時はさすがに私も足がすくんじゃったよ。澪も相当心には傷を負っちゃったんじゃないかな…」
梓「ご、五人も相手に、よく突っ込んで行けましたね…」
最高律「そりゃ怖かったけど、あの時は澪を助けなきゃって必死だったからな。何の作戦もなかったから私はやられ放題だったけど、澪は助けられたからまぁ良かったよ。この傷跡も名誉の負傷ってヤツだな」
律「何ていうか、すげぇな…。こっちは腐るほど平和だぞ」
唯「うっぐすっ…えぇ話やのぉ」
最高律「なんか恥ずかしいなこれ」
紬「それじゃあ、次は私のお話を――」
紬?「えぇ!?私、りっちゃんみたいな凄い経験、あまりないんだけど…」
37 = 1 :
唯「何でも良いんだよ?私たちの世界は本当に平々凡々で変わったことなんて全然ないからさ」
紬?「う~ん…いろんな記憶はあるんだけど…あんまり言って良いことじゃない気がする」
澪「なんかみんなそんな感じだな」
梓「大丈夫ですよ。どんな変わったことでも、気にしませんから」
紬?「そうねぇ。印象深かった思い出と言えば、軽音部のみんなが丸々と太っちゃった事件かしら」
梓「…はい?」
紬?「一年生の時のことなんだけど、唯ちゃん以外みんな太っちゃったのよね。特に澪ちゃんは今の私より酷かったわ。こふーこふー言ってたもの」
澪「」
紬?「あまりに肥大化していた澪ちゃんの体に、当時ダイエットに成功していた私は見事に押しつぶされ、生死の境を彷徨ったこともあったわ」
唯(えっなに、何で異世界の私たちそんな波瀾万丈なの?)
律(何だろう、同じ命の危機でも全く違うこの感じ)
38 = 1 :
最高律「それ、十分凄い出来事だと思うんだけど…」
紬?「なぜかわからないけど、あっという間に回復したわ。そして、あっという間にまた太ったわ」
唯?「あはwwむぎちゃ、でぶwwwwでぶむぎちゃwww」
紬?「」
デブ紬「た、ただのデブじゃないもん!とっておきの、凄い特技があるんだから!」グスッ
梓>2号「凄い特技?何ですか、それ」
デブ紬「下のお口の破壊力は抜群なのよ!!」フンス
紬「」
デブ紬「こっちの世界の唯ちゃんの指を根こそぎいっちゃったこともあるわ!」
一同「」
梓>2号(唯先輩、何ヤってたんですか!?)
39 = 1 :
唯「下のお口?って何のこと…?」
律「下あごのことか?ってことは、唯の指を食いちぎったってのか…!?」
澪「き、聞こえない聞こえない聞こえない…」
梓>2号(あぁ…純粋というか、無知というか…)
最高律(下のお口って…ア、アソコのことだよな…。何で恥ずかしげもなく大声であんなこと言えるんだ…?)カアァ
デブ紬「それだけじゃないのよ!」
紬(ごめんなさい、もうやめて)
デブ紬「私の下のお口はダイヤモンドを生み出すこともできるんだから!」
一同「」
梓>2号(駄目だコイツ…早く、何とかしないと…)
40 = 1 :
デブ紬「何なら今ここでやってあげても――」
梓「み、皆さんの凄い秘密もわかったところで、そろそろ別なことしませんか!!?」
紬「そうね!ありがとう、もういいわ!」
立ち上がってスカートに手をやっていたデブ紬を、紬は笑顔で強引に押さえつけた。
律「でも、一体どうすりゃいいんだろうな」
梓>2号「結局そこに戻るんですよね。みんなここに来るまでに何があったかわからないんですから」
腕を組んでうなる一同。と、唯があれ?と声を出して澪を見た。
唯「そういや、平行世界の澪ちゃんは現れてないよね」
澪「…ホントだな。まあ、そのほうがいいよ。いたらややこしいし――なんかいろいろ凄い人が多いし、平行世界って…」
デブ紬「何で私の方を見て言うの?」
41 = 1 :
梓>2号「いやでも、そういう人に限って後から凄いのが出てきたりするんですよ」
澪「なっ!へ、変なフラグを立てないでくれ!そんなことないって、絶対」
律「へっへっへ…わかんねぇぞぉ?今にもその扉がガチャッと開いて――」
ガチャッ
澪?「おいお前ら!何で私をおいて勝手にお茶してるんだよ!そんなに私を除け者にしたいのか!!だいたいお前たちは(中略)謝罪と賠償を要求するニダ!!」ファビョーン
澪「」
律「マジか」
梓「これまた凄いのが来ましたね」
澪?「な…何だよ?何で私がいるんだよ!何でみんなそんないっぱいいるんだよ!…わかったぞ。またみんなして私をはめようとしてるんだな!ムギの財力でクローンを作って、私を馬鹿にしようってつもりだろ!」
梓>2号「いやいや…そんなことして何になるんですか」
紬「さすがにうちの会社でクローンを作ったりはできないわ。みんなあなたと同じで平行世界からやってきたのよ」
澪?「何わけのわかんないこといってるんだよ!?私が宇宙人だとでも言いたいのか!?」
42 = 1 :
澪?「わかった…お前たちがそんな態度をとるなら、私にも考えがある。もうここで死んでやる!」
最高律「なんでそうなるんだよ!?」
澪?「止めても無駄だぞ!もう決めたからな!屋上から飛び降りてやるからな!」
唯「なんていうか、凄いの一言に尽きるね…」
梓「…現れてそうそう死ぬなんて言い出す人ってなかなかいませんよ」
澪?「止めても無駄だからな!絶対に死んでやる!お前たちが私を必要としていないのがよくわかったよ!さよなら!お世話してやったな!」ダッ
凄い勢いで現れたもう一人の澪は、凄い勢いで去っていった。
最高律「あっ!おい!!」
デブ紬「ど、どうしたらいいのかな…」
澪「」
律「とりあえず、こっちの澪を起こしてやらなきゃ」
43 = 1 :
唯「澪ちゃん、澪ちゃん!」
デブ紬「よーし、ちょっと待ってて」ブンブン
澪「ハッ!目が覚めた!覚醒した!!だから殴らないで!!」
律「よし、気が付いたみたいだな」
最高律「それじゃ急いでもう一人の澪の方に――」
澪が気付いたのを確認して、皆屋上へ向かおうとした。
が、扉の向こうから大きな足音が響いてきて、再び荒々しく扉が開かれた。
澪?「何で誰も追いかけてきてくれないんだよ!?」
梓>2号(戻ってくるの早っ!!)
澪?「私は死ぬって言ってるんだぞ!もう絶対に死ぬって言ってるんだぞ!何で誰も心配しないんだ!!」
律「いや…じゃあ、何で戻ってきたんだよ?」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていたもう一人の澪は、ぴたりと口を閉ざした。
44 = 1 :
澪?「それは、あの、えっと…――り、律は、そんなに私に死んで欲しいの…?」グスッ
紬(すごく、面倒くさいです…)
律「そういうわけじゃなくて――」
澪?「そうだよな…。もう一人私がいるんだものな。もう私は必要ないよな。グスッわかった、もう消えるよ。今までありがとうな、律」
澪「あ、あの…」
肩を落として、ゆっくりと開いたままの扉へと足を進めるもう一人の澪。
最高律「お、おい、ちょっと待ってて――」
澪?「ねぇ律、覚えてる?…小学校の頃、友達がいなくて一人読書してた私に、初めて声をかけてくれたのが律だったんだよね」ピタッ
唯(まだ出て行かないんだ…)
45 = 1 :
澪?「本当にありがとう、律。お前がいたからここまで生きてこれたんだ。大好きだぞ」
律「澪…」
扉に手をかけ、ゆっくりと閉めていく。が、完全に閉まる直前、ぴたりとそれは止まった。
一同「」
澪? 扉?ω・`)チラッ
一同(め、めんどくさい…)
皆が固まる中、もう一人の唯だけが、ケラケラ笑いながらもう一人の澪に走り寄った。
唯?「みおちゃ!いかないで!みおちゃ、すき!」
澪?「ゆ、唯・・・?」
唯?「みおちゃ、いっしょwww」ギュッ
律(お、こりゃもしかして良い感じか…?)
澪?「うわっやめろよ!…なんだお前、とうとう池沼になったのか?」
律「」
46 = 26 :
過去のSSキャラが混ざってるのか
47 :
各SSから出張か
49 = 1 :
澪?「あひぃっ」ビクッ
澪「出て行って。今すぐに」
澪?「なんなんだよ…なんなんだよおおおおおおおぉおおおおお!!」ダッ
奇声をを上げながら走り去る澪。さすがに誰も彼女をフォローしようとはしなかった。と、
ガチャッ
澪?「お菓子もらうの忘れてた」ヒョイパク
澪?「うんうまい。貰って帰るわ」
ガチャッ
一同「」
50 :
ジアースに乗って戦うわけじゃないのか
みんなの評価 : ★★
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