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元スレキョン「世界でたった一人だ」
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ああそうかよ、クソッタレ。
嘲弄する藤原に、怒髪天を突く勢いの俺を、朝比奈さんがおろおろと見ているのが視界の端に映る。……すみません朝比奈さん、こいつばかりは生理的に気に食わないんです。
「そう挑発に乗ってばかりで、よく胃酸を溜め込まないな。その愚直さはいっそ尊敬に値する」
「いちいち厭味を言わないと会話も出来ねぇのか」
「最初に突っかかってきたのはあんたの方だろう。まあいい、僕の本題は別にある。どれだけ直情的に感情論を振り翳しても、こちらの用件を呑まないという選択肢は有り得ない。リターンの大きい条件を、わざわざ提示しに来てやったんだ」
何を言い出すのかと身構える俺に、軽蔑の目線を落とし、つまらなさそうな顔をした藤原は顎で周防を指した。
「……あんたらは閉鎖空間に入るつもりなんだろう。――周防を貸してやる」
周防九曜を―――貸す?
呆気に取られるとはこのことだった。俺は瞬き、まず藤原の発言が聞き間違いではないかと疑った。
互いに敵愾心を剥き出しにしているというのに、わざわざ協力要員を届けに来るなんて、一から十までが厭味と罵倒で出来たようなこの男の行動とは到底思えん。どうしても下心があるんじゃないかと勘繰ってしまう。
俺は低く唸った。
「……どういう風の吹き回しだ。何を企んでる」
藤原は俺の反応などとうに見通していたようで、嘲りを深めただけだった。何度受け応えてもムカつく野郎だ。
「――どうもこうもない。僕自身、未来に帰ることが出来ないのは不都合なんでね。あんたらに助力した方が、滞りなく事を進められると判断したまでのことだ。
そっちの端末と周防が共同で防壁を生成すれば、片方はパワーの出力、片方は構成の維持に役割を分担できる。より長く持続させられる筈だ。
……あんたにとっても、願ってもない提案だろう?」
周防の協力さえあれば、俺はハルヒの閉鎖空間内で五分以上の防壁を得られる。
確かに、魅力的な提案だ。確実にハルヒを取り戻すためにも、『時間』は喉から手が出るほど欲しいものだった。タイムオーバーで揃って発狂なんて事態になったら、目も当てられんからな。
だが、こいつの提示っていうのがどうにも気に入らないのである。橘京子あたりが言い出しっぺなら、まだ大人しく納得出来たかもしれないものを……。
苦慮の挙句に、俺は沈黙したきりであった長門に問いを投げ掛けた。
「――長門、どう思う?」
「受ける価値はある」
拒否を期待して投げてみたものの、長門は冷静な応答だった。利害から見て、適切だと判断した方を俺に伝える。
「……五分の防壁では、成功の見込みは薄い。先程協議したが、天蓋領域の力を利用すれば、最長で防壁持続時間を六十分程度にまで伸ばすことが可能。メリットは大きい」
「協議って、周防とか?」
「そう」
何時の間にやらだ。――まあ、同じ宇宙人的存在であるのだし、電波や信号で意思疎通が叶うのかもしれないが。
俺は嘆息した。感情に惑わされて利を喪い、ハルヒも連れ戻せないなんてことになったら、俺はただの大馬鹿だ。多少の憎み合いは飲み込むべきかと己を宥める。
「まさか、こんなに明々白々なリスク管理にさえ迷うとは……。呆れたものだな。あんたは類人猿か?」
「―――煩えっ!」
妥協の姿勢を見せた途端にこれだ。
ともかく、こいつとソリが合うなんて事態だけは、天地が引っ繰り返っても訪れやしないに違いない。
・ ・ ・
議論の結果、周防と長門は二人で防壁に必要な情報を補い合いながら構築することになった。これで閉鎖空間内に滞在するための『時間』の無さについては解決したわけだが、まだ残っている肝心要の部分にぶつかり、俺たちは再び頭を悩ませるはめになった。
古泉の他に、超能力者が居ないのだ。
「古泉の代わりになりそうな超能力者は、本当にもう一人もいないのか?……機関はどうなってるんだ」
「機関の構成員の殆どは、『睡眠』、または古泉一樹と同じく精神を病み行動不能。現状、動ける超能力者は古泉一樹のみ」
「――ならば、話は簡単だ。この男しか行ける者がないなら、この男に行かせればいい。何の不都合があるんだ」
「藤原、てめえは黙っとけ」
俺の一喝に、藤原は片眉を上げ、珍しく反駁もせずに俺の言葉に従った。討論になるのが面倒くさかっただけかもしれないが、茶々を入れる奴がいないだけで大助かりだ。
「長門。周防。お前たちの力で、閉鎖空間に侵入することは出来ないのか」
「出来ないことはない。だが、本来閉鎖空間は超能力者しか踏み入ることを許されない領域。彼でなければ侵入は難しい。また、侵入の際に防壁の精度が落ちるだろうことが懸念される。推奨はできない」
「そうか……」
すみません、眠気で頭が回らなくなってきました
予定より早いですが、一旦落ちようかと思います
落ちたらまた立てますので、保守してくださってる方は無理をなさいませんようにお願いします
眠かったら寝てください
それでは、失礼します……
予定より早いですが、一旦落ちようかと思います
落ちたらまた立てますので、保守してくださってる方は無理をなさいませんようにお願いします
眠かったら寝てください
それでは、失礼します……
任せろとか言っときながら寝オチしてた(´・ω・`)
>>1さん何時位に来れそうかな?
>>1さん何時位に来れそうかな?
>>188おつかれさん
保守
保守
1です、保守ありがとうございます…!
申し訳ないですが、家族の分も昼食を作らねばならなくなってしまったので
きちんとした再開が13時を過ぎるかもしれません
料理まで短い時間ですが、投下します
申し訳ないですが、家族の分も昼食を作らねばならなくなってしまったので
きちんとした再開が13時を過ぎるかもしれません
料理まで短い時間ですが、投下します
長門が推奨できないと断じる以上、やはり別の超能力者に来て貰うのが望ましいのだろうが、八方塞だった。
俺は話を聞いているのかいないのか、にこにこと純真に此方を窺っている、まるで子供に還ったかのような古泉に視線を移す。
閉鎖空間でハルヒの狂気に中てられた古泉を、またしても閉鎖空間に向かわせるなんて案は論外だ。考慮に値しないと脳内会議室から閉め出し、屑箱に投げ捨ててやりたい。
藤原の言う通り、他に有効な人材がおらず、それがこの状況においては採用せざるを得ない案だと頭では理解しているから、余計にだ。
――畜生。俺は歯噛みした。
嫌だ嫌だと駄々をこねてるばかりじゃ、もうどうにもならない段階だってことを自覚しろ、俺。
わかっている。最善の策が何かなんてことは、俺にだってもう分かっているのだ。だが――
「閉鎖空間に行きたいんですか」
いつだってこの古泉一樹の言葉は神出鬼没だ。
俺は眼を剥いた。それは俺が今日このマンションを訪れて以来、初めて聴いたと言っても過言ではない、古泉の「意味の通じる」問い掛けだった。
「古泉……!」
「虎穴に入らずんば竜を得ることもまた能わずです、僕も飛べます。幸福、安寧、成就。あそこは好きではありませんが、連れて行くのは容易いでしょう。目指すのは家内安全、必要でしょう?」
にこ、と微笑んだ古泉は、歯車の一つが外れて何処かに転がり落ちてしまったのだとしても――確かに俺たちの、古泉一樹だった。
「彼は、その精神性の総てを喪ったわけではない。……残存している。記憶の隅に、わたしたちのことも」
「……ああ」
長門の言葉を、俺は噛み締めた。
ハルヒだけじゃない、きっと元のお前も取り戻してやる。俺は誓い、少しばかり泣けそうな気分で、古泉の頭を撫でる様に掻き回した。
リロってなかった。>>1さん乙です
古泉かっけぇ
古泉かっけぇ
俺たちのやり取りを睥睨していた藤原は、はっ、と気に障る笑い方をする。笑みも憎々しげで、俺たちの何もかもが侮蔑の対象と言わんばかりだった。
「茶番は済んだか? ――いかに美談に仕立てようと、僕を怒鳴りつけておいて結局この男に行かせることに変わりはない。無策にやっと思い至ったのは成長だが、底の浅さが知れる」
今回の藤原の挑発に関しては全く正論で、俺は反論すらできない。虫が良いことばかり口にしていたことは、重々承知していた。
行かせたくない、だが古泉に頼まなければ、神人を相手取っていた古泉の孤軍奮闘すら無駄になっちまうのだ。どちらを取るかと言われたら、俺は世界創生を見過ごすより、今の世界を保つために行動する方を選ぶ。
それが『この世界が割と好きなんです』と語っていた、古泉一樹の望みでもあることを俺は知っている。
では、重ね重ね申し訳ありませんが、昼食のため一旦席を外します
13:30には戻れると思います
13:30には戻れると思います
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