元スレ唯「ムギちゃんのはつこい」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
1 :
澪「さ、今日も練習するぞ」
律「えーもうちょっとだけお茶してようよー」
澪「ばか、学園祭もうすぐだろ。
今練習しないでどうすんだよ」
唯「いーじゃんちょっとくらいー。
ムギちゃーん、紅茶おかわりー」
紬「……」
唯「ムギちゃーん」
紬「……」
唯「ムギちゃん?」
2 :
ムギちゃんはしつこいに見えた
3 :
唯「ムギちゃんのはっこつに」見えた
5 = 1 :
紬「……」
唯「ムギちゃん!」ゆさゆさ
紬「はっ! な、何かしら?」
唯「それはこっちのセリフだよ。
ボーッとしちゃって、どうしたの?」
紬「あ、ボーッとしちゃってた……?」
唯「してたよー、すごくしてた。
何度呼んでも返事ないんだもん」
紬「あら、そう……ごめんなさい。
それで、私を呼んだ用件は何?」
澪「練習しようって言ってたんだ」
紬「ああそうね、そろそろしなきゃね」
律「うぉい」
6 = 1 :
澪「よし、じゃあ始めるぞっ」
唯「はーい」
紬「いいわよ」
律「いくぞー、ワンツースリフォー」
ジャカジャカージャッカジャカジャカジャカジャカ
澪(……あれ?)
律(なんか……)
唯(……変?)
ジャーン♪
9 = 1 :
澪「……」
律「……」
唯「……」
紬「? どうしたの?」
澪「うーん、ムギ……
キーボードの音、だいぶずれてたぞ」
紬「え、ほ、ホントに? ごめんなさい……」
澪「いやそんな謝んなくてもいいけどさ」
律「でも珍しいな、ムギがこんなミスするなんて」
唯「具合悪いんじゃない?
さっきもボーッとしてたし……」
紬「う、ううん、大丈夫……」
澪「無理することないぞ、
体調悪いんなら遠慮なく休んでくれていいんだから」
紬「ほ、ほんとに大丈夫だから! もう一回やろ、もう一回」
澪「え、うん……」
10 :
なんだ俺か
11 = 1 :
しかしその日の演奏は散々なままで終わった。
紬「……ごめんなさい」
澪「いいっていいって、今日はたまたま調子が出なかっただけだろ。
また今度、いつもみたいに上手くやってくれればいいから」
紬「……うん」
律「澪ってムギには甘いよな、
私達の時はすげえ怒るクセに」
唯「日頃の行いの差じゃない?
ていうか『達』ってどういう意味」
紬「あ、私、戸締りしとくから……
みんなは先に帰ってていいわよ」
律「え、ああ、うん」
唯「えー、ムギちゃんも一緒に帰ろうよー」
澪「……ばか、ここは独りにさせてやれ」
律「じゃあな、ムギ」
紬「うん……また明日」
12 :
俺「じゃあ唯ちゃん一緒に帰ろうか」
13 = 1 :
帰り道。
唯「今日のムギちゃん、おかしかったね」
澪「ああ、そうだなあ」
律「体調悪いようには見えなかったけど……」
澪「とすると、なんか悩みでもあるのか」
唯「悩みかー……」
律「でもムギに悩みごとなんて想像できねえな」
澪「それはムギに失礼だ……」
唯「もし悩みがあるとしたらさ、どんな悩みなんだろ」
澪「うーん……家のこととか?」
律「あー、金持ちの家って複雑そうだよなー」
澪「成績が落ちたとか」
律「それはないだろ、この前のテストでもクラスで上位だったし」
14 :
続けたまえ
15 = 1 :
澪「また太っちゃったとか」
唯「そう? 別に太ったようには見えないけど」
澪「外見からは分からなくても、
1つ2つの数値の上下には過敏に反応してしまうのさ」
律「そうか……それがストレスになって……
太るのを気にするあまり食生活が乱れ……
そして摂食障害……入院……退学……」
澪「いきなり話が飛躍したな、
ていうか真面目に考えろ」
律「考えろっつってもなあ」
唯「ムギちゃんから直接聞かないことには分かんないよ」
澪「まあ、そうだけどさ……」
紬「みんなーっ!」たったった
唯「あ、ムギちゃん」
澪「噂をすれば……」
16 = 1 :
紬「はあはあ……唯ちゃん、これ」
唯「あ、携帯!」
紬「部室に忘れてたわよ」
唯「ほんと? ありがとう、ムギちゃん!」
紬「ううん、いいの。気にしないで」
澪(さっきの話は今はしないほうがいいな)
律「なあムギ、なんか悩みごt」
澪「オラァ!!」ボカッ
律「ゲフッ」
紬「? なあに?」
澪「いやーなんでもないなんでもない……
そうだ本屋寄ってかない? 本屋」
唯「お、いいね。確か今日は女性自身の発売日だし」
澪「そんなん読んでんのかよ」
唯「憂がね」
澪「……」
17 :
安易な百合にしないでね
18 :
えっ百合?
19 :
えっ百合じゃないの?
20 = 1 :
本屋。
律「澪は何買うんだ」
澪「好きな作家の新刊が出ててさ、それをね」
紬「へえ」
澪「あー、あったあった」
律「ほう、タイトルは……『16歳のはつこい』……
いやあいかにも澪が好きそうな」
澪「う、うるさい……! いいだろ別に」
紬「……」
澪「ん? ムギ?」
紬「……」
律「またボーッとしてら……おい、ムギ」
紬「……はっ!」
21 = 1 :
澪「どうしたんだよ、またボーッとしてたぞ」
紬「そ、そうだったかしら、ごめんなさい……
それよりこれ、素敵なタイトルの本ね。
私も買おうかしら」
律「おお、ムギも澪ワールドにハマるか」
澪「なんだ澪ワールドって。
ていうかムギも恋愛小説とか好きなんだな」
紬「好きっていうか、その……
いいかな、って思って」
澪「ふうん」
律「ところで唯はどこいった」
澪「女性自身買ってんじゃないか?
……ん?」
紬「……」
手に取ったハードカバーの表紙をじっと見つめる紬。
澪にはその紬の表情が、何か普通ではないように見えて……。
澪「…………」
22 = 12 :
恋ですね
23 = 18 :
これは男
24 :
気持ちはうれしいけどまじで困る
いくら金を積まれても流石に無理だわ…
25 = 1 :
唯「あ、みんないた」
澪「買ったのか、女性自身」
唯「うん」
律「憂ちゃん、そういうの好きなんだな……」
唯「そうなんだよねー。
休日なんかはお煎餅かじりながら
楽しそうにワイドショーの芸能コーナー見てるよ」
律「憂ちゃんの育てかたを見直した方がいいぞ」
澪「じゃあ、私達も会計済ませるか」
紬「え、あ、そうね……」
唯「りっちゃんは何も買わないの?」
律「私はいいや。お金ないし」
唯「ふうん」
その日、3人は本を買い、
あとは何ごともなくそれぞれの家路についた。
26 = 1 :
翌日、放課後。
ガチャ
唯「ちょりーっす」
澪「おう」
律「うぃーっす」
唯「ムギちゃんはまだ来てないの」
澪「うん、まだ」
唯「そういえばさ、
昨日のムギちゃんなんか変だったけど、
どうだった? 今日は」
澪と律と紬は3人とも同じクラス(1年2組)である。
律「今日は今日でまた……なあ」
澪「え? ああ」
唯「えーなになに?」
27 :
もしもしは気持ち悪い奴ばっかだな
28 = 1 :
澪「昨日ムギが私と同じ小説買ったんだよ。
で、今日は一日中、それを貪るように読んでた。
授業中も、休み時間も」
唯「へえ~」
律「それはそんなに熱中するような本なのか?」
澪「いや、私もまだ最初の方しか読んでないし……
ていうか熱中するかどうかは人それぞれじゃない?」
唯「ふうん……で、それどういう小説なの?」
澪「16歳の女子高生の、初々しい初恋を描いた小説だよ。
引っ込み思案な少女のひたむきな片想いの話……って
あらすじには書いてあった」
律「ほう」
唯「ボーッとしてて、演奏も手につかない……
恋愛小説……片想い……
それに熱中するムギちゃん……
もはや導き出される答えはひとつ!!」
澪「いや唯、それは私も考えたけど……短絡的すぎるぞ」
唯「そうかなあ、これ以外ないと思うけど」
29 = 1 :
澪「何にせよ、ムギの口から直接聞かないことにはさ……」
唯「んー、そっか」
律「なあなあなんだよ、
何を2人で分かった気になってるんだよ、
教えてくれよ」
澪「落ち着け」
唯「でも、どうやって聞き出す?」
澪「うーん……」
ガチャ
紬「遅れてごめんなさい!」
唯「あ、きた」
澪「よ、よう」
紬「今お茶の用意するわね♪」
唯「……なんかゴキゲンだね」
澪「……」
30 = 1 :
紬「そうだわ澪ちゃん、この小説とっても面白かった」
紬はカバンから例の小説を取り出した。
澪「ああ……今日一日中それ読んでたよな」
紬「うん、読み出したら止まらなくなっちゃって……
なんていうのかな、
主人公の気持ちに共感できることばっかりで」
澪(共感……)
紬「片想いの切ない気持ちがすっごくリアルで」
唯(切ない……)
紬「最後、想い人と結ばれたときは私まで幸せな気分になったわ」
澪「幸せ……ていうかオチを言うな!
私まだ読んでないのに」
紬「あ、ご、ご、ごめんなさい!
私ったらついテンションが上がっちゃってうっかり……」
澪「ああ、いやまあ、いいんだけどね……」
31 = 8 :
支援ぬ
32 = 1 :
律「…………ああ、そういうことか」
紬「? なあに?」
律「ムギ、好きな人いるんだろ!」
澪「こら――――っ!!」
紬「え? え? 好きな人……!?」
澪「あ、ち、違うんだ! 唯に好きな人がいて、な、唯!」
唯「え、ああああ、うん、そうなんだ! 実はね!」
紬「へえ、そうなの」
唯「それで、澪ちゃんに色々とアドバイスもらってたとこなんだー、
あはははは……」
紬「へえー」
澪「律……ちょっとこっちに来なさい」
律「はい……」
33 = 1 :
音楽室の隅っこ。
澪「おい……あんなダイレクトに聞いたらダメだろ」
律「でもそれが一番手っ取り早いじゃん!」
澪「台無しになっちゃうだろ、色々と」
律「何がだよ、気にしすぎだよ」
澪「おまえが気にしなすぎるんだよ」
紬「あの二人は何を話しているのかしら」
唯「さ、さあ……」
紬「ところで、唯ちゃんの好きな人って誰なの?」
唯「え、えーと……えー……
ちゅ、中学の時に同じクラスだった人で……」
紬「へえ」
34 :
スレタイが「むぎちゃんはしつこい」に見えて仕方がない
36 = 12 :
唯ちゃん僕のことが好きなんだね
相思相愛で嬉しいよ!!
37 = 1 :
唯「い、今は別の高校でサッカーやってて……」
紬「その人とは仲が良いの?」
唯「う、うーん……電話とかメールとかしたり……
あとサッカーの試合観に行ったりとかして……」
紬「そうなんだ。
付き合ったりとかはしないの?」
唯「それを澪ちゃんに相談してたとこだよ、うん」
紬「あら、そうだったの」
唯「でもムギちゃんがこんな話に乗ってくるなんて珍しいね。
まあ興味あるか~、高校生なら誰でも」
紬「え、あ、うん、そうね……」もじもじ
唯「……?」
紬「興味あるっていうか~、その、……」
唯「もしかしてムギちゃん……」
紬「……」
38 :
なんだこの漠然とした口調の違和感…
40 = 1 :
唯「ははーん」
紬「……、……」
唯「ムギちゃんも好きな人がいたりして……?」
紬「…………」もじもじ
唯「誰にも言わないから教えて、ね、ね」
紬「でもそんな……いない、いないわよ、うん」
唯「ウソだー、絶対いるでしょー……」
紬「いないってばあ……」
唯「誰にも言わないからさ……
いるかいないかだけ教えて!
それ以上は突っ込まないから!」
紬「ええ……」
唯「いる?」
紬「……」
唯「いるんだよね?」
紬「……………………」こくん
41 = 24 :
俺だったら嫌だなあ…(チラッ
42 = 1 :
唯「!!!!」
紬「だ、誰にも言わないでね……」
唯「う、うん……安心して」
(まさかホントにいるとは思わなかった……)
紬「絶対秘密よ、ねっ」
唯「うん、大丈夫。私、口は堅いから」
紬「そう、ならいいんだけど……」
唯「恋に悩んだときはいつでも言ってね、
相談くらいなら乗るから」
紬「う、うん……ありがとう」
澪「あの二人は何を話しているんだろ」
律「よくは分からないけど
問題の確信に迫るような会話をしている気がする」
43 = 1 :
唯「……」チラチラッ
澪「唯のアイコンタクト……」
律「そろそろテーブルに戻るか……」
律「よ、よう、何の話してたんだ」
唯「なんでもないよー、ね、ムギちゃん」
紬「ええ、なんでもないわ。
りっちゃんと澪ちゃんこそ、隅っこで何の話してたの?」
澪「こっちこそ何でもないよ」
唯「アヤシイね」
澪「なんでもいいだろ、じゃあ早く練習するぞ」
唯「ふぇーい」
紬「あ、ごめんなさい、私その前にお手洗いに……」
律「おう」
紬「すぐ戻るから……」
ガチャ
44 = 1 :
澪「……」
律「……」
澪「……で?」
唯「ムギちゃん、好きな人いるんだって」
律「おお、やっぱりか」
唯「でもそれ以上のことは分からないよ」
澪「いや、それだけでも大手柄だ、唯。
ムギが悩んでたっぽいのはこのことで決まりだな」
律「いやあ、でもムギがねえ、片想いねえ」
澪「想像もつかないな……相手が誰なのか」
唯「うーん……女子校だから男の人とは縁遠いはずなんだけど」
律「校内で男っつったら」
澪「教師?」
45 = 1 :
律「男の教師といえば……」
唯「古典の豊崎先生、物理の日笠先生、英語の佐藤先生、
数学の竹達先生……あとは~」
律「オッサン教師ばっかじゃん」
澪「流石に恋愛対象には……」
唯「あ、生物の米澤先生は?」
澪「えー、あの人は若いけど……
なんかみんなから嫌われてんじゃん。
生徒のこと変な目で見たりさ」
唯「うーん、じゃあダメか」
律「いや……ムギのやつ、マゾっ気があるから……
米澤から変な視線を送られているうち、それが快感に変わり、
恋が芽生え……」
澪「嫌すぎるわ」
46 = 24 :
やる夫かと思ったら佐藤先生だった…
47 = 8 :
さるよけ支援
48 = 1 :
唯「うーん……あ」
澪「なんだ?」
唯「いやあ……
ムギちゃんって女の子同士の恋愛が好きだから……
そのー」
澪「ムギ自身も女の子が好き……ってことか?」
唯「考えられない?」
澪「可能性としちゃ捨てきれないけど……
同性を好きだった場合、相手は誰になるんだろうな」
唯「……」
律「……」
澪「?」
唯「……」
律「……」
澪「え、私!?」
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