元スレキョン「ハルヒに暇を出された」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★
401 = 25 :
木々に秋の色が忍び寄り、ほのかに色づきかけた葉が少々、その下に散らばっている。
ジョギングをする人々、犬を散歩に連れ出している人たち。
さわやかな秋特有の光景を眺めながら歩いていた俺に、ハルヒが意外な言葉をかける。
「ちょっとあそこ、座ろっか」
疲れたのか。
あるいは不思議が見つからないことに失望してか。
ハルヒは言いながら、近くにあるベンチを指差す。
403 = 25 :
「秋っていいわよね」
座ってしばらく、お互いの無言。
ふいにハルヒが口を開く
「…なんでそう思うんだ?まあ俺も好きだが…」
「暑くもないし寒すぎもしないし、食べ物もおいしいし、最高じゃない」
くだらない話。たわいない話。交わす言葉にたいした意味はなく、
…でも、とても心地のよい時間。
「こういう季節は外で行動したくなるわね」
「その意見には賛同するが、お前はいつも外で行動しているだろう?
…今だってそうだ」
ハルヒが俺の目を見る。
404 = 25 :
「なんだ…?」
「そうよ…そうだわ!『いつも』外で探索しているのに不思議が見つからない…
それは時間帯のせいだったのよ。変えるべきは時間よ!」
突然興奮したように早口になるハルヒ。
いつだったか、SOS団を結成することを俺に伝えた時に見せたのと同じ輝きを、
その目に湛えて。
「今日の夜!もっかい集合ね!」
そういうわけでこの瞬間、俺の貴重な休日が、夜までしっかり侵食されることが決定した。
405 = 25 :
星空の下。
夜風が、朝比奈さんの長い髪をゆらしているのが見える。
今夜は月が綺麗だ。
夜に再集合する旨を伝えられた俺たちは、今こうして、町のはずれの小高い丘の上にいる。
「きれいね…」
夜に集まるといっていきなり「天体観測するから!」なんて、
まあ、単純というかハルヒらしいというか。
407 = 25 :
それにしてもこの時期に行うのは少々季節外れではないだろうか。
夏の大三角や冬の大三角は聞いたことがあるが、
秋の夜空の有名な星はあまり聞かない。
そもそも天体観測は、天体に関してちゃんとデータ、記録をとりながら行うもので、
こうやってただ星を見ることは天体観望というのであってだな…。
「きれいなものですね」
ふいの声かけに俺は戸惑う。いつのまにか近くに、古泉が空を見上げながら立っていた。
408 = 25 :
「…案外、感傷に浸るほうなのか?」
「自然なことですよ」
お前のいう自然などあまりあてにはならないような気がするがな。
いつも不自然なまでの笑顔を顔に貼り付けているんだから。
「あなたがもちかけたんですか?」
「この星を見る会の開催をか?いいや。あいつが自分で言い出したんだよ」
俺がわざわざ星を見るためのイベントを主催すると思うのか?
…とはいえ俺自身、星を見るのがいやだと思っているわけではないということは、
認めなければならないだろう。
410 = 25 :
気の遠くなるような時間をかけて地球まで届くという星の光。
まだまだあるであろう見つかっていない星々。
果てがあるかも分からない広大な宇宙。
どれもこれも、神秘的と称するにふさわしい。
そこにあいつの求める「不思議」があるのかは分からないが、
夜空はいろいろなことを考えさせてくれる。
星には詳しくないが、もし、本当にその光が遥か昔のものなら、
今、その星は存在しているのだろうか。
412 = 25 :
俺もいつかは消える。それは人間である以上必然だ。
ならばせめて、あの星のように、あるいは月のように光るべきだろうか。
月が明るすぎると、星が見えづらいとも言うが、
そんなことは気にならないくらい、今日の月は綺麗だ。
「知ってる?みくるちゃん。今見えてる星の光って、実は何百年も前のものなのよ」
「え~本当ですか?遠いお話ですね~」
どうやらハルヒも俺と同じことを考えていたようだ。
朝比奈さんがその事実を本当に知らなかったのかどうかは分からないが。
「不思議よね。今はもう、あるかどうかも分からないのに…」
「まったくもって神秘的な話です」
古泉が二人の会話に入る。
414 = 25 :
「そういえば星というのは、真正面から見ると見えにくくなってしまうのをご存知ですか?」
実は直接見ているものよりも、視界の端にあるそれの方が明るく見えるんです」
「へーそうかしら?あんまり意識したことないけど」
俺の唯一の取り得の雑学が古泉によって語られちまうとは…。
まあ実際、俺もその話は知らなかったわけだが。
「そこまで極端に明度に差が出るわけではありませんからあまり意識できないのかもしれません。
それにしても星の光とは本当に不思議で…神秘的なものです」
「そう…、神秘的ね…。ねえ有希、有希はどう思う?」
415 = 25 :
「……神秘的かどうかは分からない。でも人はしばしば、星に願いをこめる。
なら星には、人が願いをこめたくなるような何かがあるのかもしれない」
長門が言う「人」が、自分以外の人を指すのか、
あるいは有機生命体のことをさしているのかは分からないが、
こいつにも思うところはあるのだろうか。
「何か…か。じゃあキョン、あんたはどう思う?」
やっぱり俺にも振るのか…。
俺にも「何か」みたいな言葉で思わせぶりに煙に巻く技術があればよかったんだがな。
まあ長門は煙に巻いたつもりはないのかもしれないが。
416 = 25 :
「…星ってのは人の世界でも、例えば『あいつは~界の星だ』みたいな感じに使われるからな。
やっぱり人間に与えてる影響ってのは結構大きいんじゃないか」
「そういうことじゃなくて、もっとなんかこう…神秘的な感想はないの?」
どういう注文だ。俺にそんな難しいことを求めないでくれないか。
ハルヒは溜息をついて再び星空を見上げる。
417 = 25 :
俺は同じように大きな溜息をつき、
誰かさんの話しを少しだけ膨らませて話してやった。
「さっきお前が言ったとおり、星の光ってのは気の遠くなるくらい長い年月をかけて地球に届いてる
らしいからな。俺たちがその光を見る頃には、もうその星はないかもしれないし、
逆にその光がここまで来る頃には地球、あるいは世界なんてなんてないかもしれないな」
壮大な話になってしまった。しかも半分はハルヒと同じことを言っただけだ。
ハルヒはしばらく空を見続けたあと、顔を俺のほうに向ける。
大きな目が、俺の視線をとらえる。
一瞬、その瞳が大きくなったような気がした。
そして再び空を見上げて、こう言った。
「…そうね、やっぱり神秘的ね」
…神秘的か…?今の話?
419 = 25 :
「そろそろ帰りましょうか」
それからしばらくして、ハルヒが静かにそう告げた。
座り込んで星を見ていたハルヒが立ち上がったのに応じて、
朝比奈さんが後に続く。
長門も、いつも読んでいる文庫本の代わりに持ってきていた
星の図鑑を手に、ゆっくりと腰を上げる。
それぞれ、来る前には抱いていなかった思いを抱いているだろうか。
少なくとも俺は…。
夜風が少し強くなる。
そして月が、雲に隠れた。
420 = 25 :
その日はそれで解散となり、俺たちはそれぞれの家路につく。
二日後、古泉がSOS団から追放されることを、その時俺はまだ知らなかった。
終
421 :
おお短いなw乙
422 = 25 :
短いけどこれで第二章は終わり
第三章は多分これよりは長い
保守&読んでくれてありがとうです
425 = 25 :
3が一番長いかな…
まだわかんない
428 = 393 :
とりあえず二章終了乙
三章も楽しみにしてるぜ
430 :
めっさ楽しみでゴワス
431 :
いま追いついた。これは期待ほす
433 :
支援
たった今彼女にフラれた…
437 :
乙!
次章に期待!
438 :
>>433
m9(^Д^)プギャー
439 = 329 :
3章は今日中に終わりそうな長さなのか?
440 = 20 :
>>434
ありがとう…
だれか硫黄と鉄粉まぜて熱したものをくれ…
443 :
>>40
そんな臭いもん自分で作りなさい
444 = 367 :
>>443
おまww
447 :
ほーっしゅ
449 :
キョンがついに異能に目覚めたのdatください
450 = 318 :
ほ
みんなの評価 : ★★★
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