元スレキョン「ハルヒに暇を出された」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★
151 = 148 :
保守早々ktkr
俺は運がいいようだ
152 = 25 :
翌日の朝。
目覚めてすぐ、正常であって、そして異常であるハルヒのことが頭をもたげる。
今日こそは、聞かなければならない。
昨日今日と、目覚ましにしては少々荒い妹のボディーブローを受けることなく起きることに、
俺は成功していた。
なぜだか早くに目が覚めてしまう。
まるで崩れゆくSOS団の影が、俺に重くのしかかり、
その重みで俺を無理やり眠りから引きずり起こしているかのようだ。
坂道を登る足取りは今日も重い。昨日と、内容も調子も変わらぬ谷口の声。
いなす業が手についてきているようで、俺はなんとも複雑な気持ちになる。
思えばその日、鶴屋さんに会うまで、俺はほとんどまともな会話をしなかった。
153 :
俺もPCつけたら丁度きてくれてたぜ!
支援
154 = 25 :
教室の前に立ち、昨日よりいささか決然と扉を開く。
しかしそこにハルヒの姿はない。
絶対にハルヒを問い詰めるつもりでいた俺は少しばかり拍子抜けしつつ、
鞄を自分の席に置いてあいつを待つ。
しかしあいつは来なかった。
流れていく時間はとても長く、それでいて重い。早く団活の時間が来て欲しいような、
来て欲しくないような、矛盾をはらんだ心情。
学生の本分であるはずの授業の内容は、昨日に引き続き
俺の頭には入らない。
昼休み。谷口や国木田の誘いを断り、俺は弁当を持って部室へ急ぐ。
あいつに、会わなければならないからだ。
155 = 25 :
部室棟に向かうその途中。
昨日と同じく少しばかり早歩きをする俺の後ろから、
ここ二日で聞いた中ではおそらく一番元気のよい声が聞こえた。
「おーい、キョンく~ん!」
振り返る。
長い髪をたなびかせたその人は、
やはりこの数日に見た中で一番の笑顔を輝かせながら俺のもとへ駆けてくる。
「どうしました?鶴屋さん」
俺の声はどんな風に聞こえただろう。
重く、疲れた声だっただろうか。
それともいつもと変わらなかいものだったのだろうか。
あいつと、同じように。
157 = 25 :
「実は伝えておきたいことがあるのさっ」
俺の声の調子がどうであったかは分からないが、
鶴屋さんがそこに触れることはなかった。
「なんですか?」
「みくるがね、今日、学校休んじゃったみたいなんだ」
瞬間、思い出されるはあの光景。
古泉を訪ねて行った時に、聞かされた事実。
SOS団からの、団長直々の追放、その後の学校の欠席。
追放と同じく、昨日の今日だ。
長門に聞きたいことが増えちまった。
しかも、飛び切り厄介なやつが。
158 = 25 :
「どうしたんだいっ?キョンくん!」
鶴屋さんが若干首を傾げ、
大きな眼で俺の顔を見ている。
「あ、すみません、いや朝比奈さんが休みとは…」
「おやおや~?心配なのかなっ?」
いたずらっぽい表情で、からかうように俺の目を見てくる鶴屋さん。
確かに、朝比奈さんがただ休んだだけでも俺は心配しただろう。
しかし事は、もはや心配程度で済む話ではない。
「…はは、ええやっぱり心配ですよ。朝比奈さんはSOS団の一員ですから」
たとえ無理やり作り出したものだったとしても、よく笑い声が出たものだ。
愛想笑いにもなっていないであろう俺の笑顔を、鶴屋さんが見る。
自身は、その笑顔を絶やすことなく。
160 = 25 :
「いや~実は学校にも何も言ってないみたいでね。
でもハルにゃんのことだから、きっとみくるが無断
で部活を休んで帰った~って怒っちゃうでしょ?」
それじゃみくるがかわいそうだからね、と、鶴屋さんは明るい声で付け加える。
そう、いつものハルヒならそう言って怒り、次の団活では勝手に休んだ罰だと
かいって、朝比奈さんをいじりたおすだろう。下手をすれば俺もとばっちりを
受けるかもしれないな。
でももう、あいつはいつものハルヒであっていつものハルヒではない。
それに、朝比奈さんはもう昨日から、SOS団の団員ではなくなってしまったのだ。
でも、そういえばさっき俺は、無意識のうちに「朝比奈さんはSOS団の一員だ」と言った。
そこに、偽る心は少しもなかった。
それならこの嘘は、本当にしなければならない。
そう、俺は思った。
162 = 25 :
「わざわざありがとう御座います鶴屋さん。
朝比奈さんのことは、ハルヒに伝えておきます」
「うん、よろしくねっ。それじゃ!」
鶴屋さんは終始笑顔のまま、俺の前から去った。
俺も、俺の目的地へと急ぐ。
少しばかり時間は減ったが、あいつに言うべきことは増えたのだから。
部室の前。
肩でしていた息を整え、俺は扉を開く。
一瞬、ハルヒと同じように長門も扉の向こうにいないんじゃないかという
恐怖が頭をよぎったが、長門は昨日の団活の時と寸分たがわぬ位置の
椅子に腰掛け、今日も本を平開いていた。
もしかしたら、ハルヒもここにいるんじゃないか、そう思っていたのかもしれない。
長門しかいない部室を見て、俺が安堵とともに覚えた失望の感の正体は、あるいは…。
166 = 25 :
液体ヘリウムのような目が、部室の扉を開いた
侵入者の方に向けられる。
「長門、色々聞きたいことがある」
「………そう」
長門は本を閉じて立ち上がり、普段俺と古泉がボードゲームを興じる時に使う
椅子にこしかけた。
「…あなたも」
今日は長門に促され、俺は鞄を机の上におき、椅子を引いて腰を下ろす。
走ってここまで来たせいで、まだ少し体が火照っているのが分かる。
「長門、今のハルヒの精神状態は?」
「…普通。特に変化は見られない」
変わらない答え。
というより、ハルヒの精神状態に関してこれ以外の答えが返ってきたことはない。
167 = 25 :
「その状態はずっと続いているのか?…つまりおととい、古泉が解雇通告を受けた
ときから今までって意味だが」
「そう。多少の変動、浮き沈みは見られるが、それは一般的な有機生命体なら
みな有する程度の乱れ」
あいつが一般的かどうかは激しく怪しいけどな…。
「…しかし」
長門がなおも続ける。
「強いて言えば、変動が見られたときは確かにある」
169 = 25 :
「…教えてくれ」
「これはおとといよりも前の話。涼宮ハルヒが古泉一樹を辞めさせた日の二日前の夜」
二日前?今日は…水曜、おとといは月曜だから、その二日前は…土曜か。
ん?たしかその日は……。
「この精神状態の変動はあくまで普段の状態に比べれば大きいというもの。
今までにも多々あったレベルの変動。そのときは小規模な閉鎖空間の発生が
確認されているが、古泉一樹たちが通常通り対処している」
確かに俺は、古泉からその旨は聞いていない。
ということはやはり長門の言うとおり、別段俺に報告するほどのものでもなかった
ということだろう。
だが、その二日後に…ハルヒは変わっちまった。
変わることなく、変わってしまった。
171 :
保守しようと来たらもう来てたな
ktkrしたかったのに…これじゃキテタコレだな。
kttkr
172 :
追いついた
期待
174 = 25 :
ハルヒのその精神の変動が、二日後のあいつの行動に関係しているのか?
特別異常なものではなく、今までも何回もあったレベルのその乱れが。
…土曜。その日の夜。
あいつの心が揺れ動いた。
その二日後。夕方。
一人目の団員が追放される。
その翌日。
一人目が消え、二人目が追い出される。
そして今日。
二人目が消えた。
消えた…?いや、ただ学校を休んだだけでそう判断するのは早尚か。
しかし……。
「長門、古泉と朝比奈さんの方に変化はないか?」
長門は、おそらく俺以外には分からないんじゃないかというほど
わずかばかり首を傾ける。
「…変化?」
「いや…例えば…」
こんなことは聞きたくなかった。
「二人はまだ、この世界にいるか?」
176 :
しぇん
177 = 25 :
「……二人にも異変はない。ただなぜ学校を欠席しているのかは不明」
俺はほっと、胸をなでおろす。
しかし依然、二人が休んでいる理由は分からない。
その時、俺はあることを思い出した。
「…俺は昨日古泉に電話をした。だが結果は『電波が届かない』だった。
何でなのか、心当たりあるか?」
「……電波が…届かない?」
長門も不審に思ってくれたらしい。
そう。あいつが普段、電話に出ないことはもちろんある。
あいつは機関の人間だからな。色々と忙しいんだろう。
しかし、未だかつて、「電波が届かないかもしくは電源が入っていない」と返されたことはない。
いつでも連絡を取れるようにしておくことは重要なことだ。
それは俺に対しても同じのはず。可能性は低いが、俺からハルヒに関する重要な
報告があるかもしれないしな。
それにあいつは、任務の関係で携帯の電波が邪魔になったり、閉鎖空間に入るときには、
電話を外に置いてくるか、もしくは同じ番号のいつでもつながる電話の方に転送することなっている、
と言っていた。
つまり、先の文句が電話から流れてくるなんてことは、ありえないのだ。
古泉がこれらの事前対策をとれなないまま、予期せぬ事態に陥っていない限りは。
179 = 25 :
「…朝比奈みくるにも電話を」
さきほどの発言からしばらく黙っていた長門が突然口を開き、
俺はハッと我に帰る。
「急いで」
「朝比奈さんにか?…分かった」
俺は携帯を取り出し、登録している朝比奈さんの番号を探す。
俺から朝比奈さんに電話をかけたことは今までほとんどなかったが、
ア行であるその名前を見つけるのはたやすかった。
古泉の時と同じ、しばらく続くコール音。
そして、音は鳴り止み、あの声が聞こえる。
「お客様のおかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、
電源が入っていないため、かかりません」
沈黙と焦りが俺を襲う。
その言葉は俺にとって、沈黙と同じだった。
180 = 25 :
「長門、だめだ。古泉の時と同じだ」
「貸して」
長門が手をさしだす。
俺はその小さな手に、携帯を引き渡す。
「………」
長門は黙って携帯を耳に押し当てている。
そして5秒ほどで耳から離し、それを俺の手に渡しながらこういった。
「…しまった」
181 = 172 :
支援」
184 = 120 :
wktkし過ぎて空腹も忘れちまうぜ!!
185 = 25 :
長門が「しまった」なんて言葉を発するのを聞く機会は、
もうないかもしれない。
こんなチャンスに立ち会えた俺はある意味幸運だが、
それを踏み潰して余りある悪寒が俺を襲う。
あの長門が、「しまった」と言った。
これだけで、俺の心臓は激しく打つ。
この上ない危機を覚悟しなければならないと感じて。
「なんだ、どうした長門?」
「うかつだった。二人の気配に異変がないことで私は安心していた。
しかし今、私は電話を通して電波の流れを読み取った。この電波は、
私たちと同じ世界には向かっていない。感知できない」
いきなり饒舌になった長門を前に、俺は少し混乱する。
…つまりどういうことなんだ?
「二人は、今私たちのいる空間にはいない」
186 = 25 :
衝撃の宣告。
たった今、長門が否定したばかりのその内容。
俺は思ったことをそのまま口に出す。
「だがお前はさっき二人に異変はないって…」
「世界から消えた感覚はなかった。しかし特異空間の中においてさらに
同質の別の特異空間に対象が移動した場合、私はその消失を感知できない」
特異空間の中において…?
「あまりはっきりしたことは言えない。ただしこれだけは確か」
長門は、俺をまっすぐ見据えて言った。
「…私たちはすでに、閉鎖空間の中にいる」
187 :
なんということでしょう
188 :
これは今まで読んだハルヒSSでも一番クオリティが高い
私怨
189 = 25 :
理解が追いつかない。
古泉と朝比奈さんが俺たちと同じ空間にいない、それだけでも
ここ最近、いやここ数ヶ月くらいで一番の驚きなのに、
…俺たちまですでに閉鎖空間の中にいる?
「どういうことなんだ長門?お前は気がつかなかったのか?」
焦りと不安からか、声が少々大きくなる。
俺は決して、長門を責めるつもりはないのに。
「…気がつかなかった。いつから閉鎖空間の中にいるのかも分からない。
うかつだった。…私のせい」
「違う!」
さっきよりも大きな声が出る。
長門のその言葉は、もしかしたら俺が引き出してしまったものかもしれないというのに。
「…お前は悪くない。悪いのは…」
…悪いのは?
190 :
がんばれ
192 = 115 :
も り あ が っ て ま い り ま し た !
193 :
劇中劇のといい、今週は良作に巡り逢える事が多い
シエンタ
194 = 25 :
その先にあるはずの言葉を、俺は知っているのか。
その先の言葉を口に出す勇気が、俺にあるのか。
理解を拒否する頭。
それを拒否す思考が、同時に働く。
理解しなければならない。
受け入れなければならない。
SOS団の解雇。
そして、世界からの追放。
それともあいつにとって、SOS団が世界そのものなのか?
いずれにしろ、SOS団からの追放がトリガーになっているならば、
もはや向き合わなければならない事実は一つ。
…ハルヒが、SOS団の団員を消している。
197 = 25 :
なぜ?
理由は分からない。
思えばずっと、俺はあいつに理由を求めてきた。
なぜ古泉を、朝比奈さんを追い出したのか。
しかし事態はそんな甘いものじゃなかった。
古泉と朝比奈さんは、もうこの世界にいないのだ。
そして、それはおそらく、ハルヒのせいで。
無意識下?意識的?
消失?
願望を実現する能力?
集めたはずのピース?
閉鎖空間?
世界を創りかえる力?
人を…消す力?
脳裏に浮かぶはあいつの言葉。
「人間はそのような存在を…『神』と定義しています」
199 = 188 :
タイトルは『涼宮ハルヒの変貌』だな
200 = 193 :
つハルヒに蝦を出された
みんなの評価 : ★★★
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