女「しかれども…にて…是非もなく…候、と。よし、送信だな」
男「正座しながら携帯のメール打ってる姿って、どこか変だな」

女「このご時世、友チョコは基本だな」

男「もしかして手作りするんですか？」

女「ああ。といっても、作業はチョコを融かして固めるぐらいだが」

男「へぇ。やっぱりハート型にしてみたり？」

女「いや、素材の形そのままさ」

男「素材？　ははあ、アーモンドとか入れるんですね」

女「『梅こぶ』だ」

男「……はい？」

女「『梅こぶ』をな、チョコでコーティングするんだ。名付けて『チョこぶ』。まさに新感覚スイーツだな」

男「確かに色んな意味で新感覚そうですけどそれ美味しいんですか？」

女「分からないが、きっと美味いと思う」

男「『きっと』ですか……」

女「そうだそうだ、忘れてたが、うちは本当に親しい人には歳暮の類は贈らんのだ」

女「だから君にはあえてチョコを渡さないつもりでいる。悪く思わないでくれよ」

男（悲しいような、ホッとしたような……）

　

携帯「祇園精舎の鐘の声ぇ～」
女「む、メールか。なればこそ…まかり通り…候、と。さて、送信」
携帯「祇園精舎の鐘の声ぇ～」
女「ふむ、返信が速いな」
男「一日中メールするなとは言わんから、せめて着メロを変えてくれ」

かわいいな、やはりこのジャンルはいい

女「ひぁっ…！　つ、冷た…！」
男「どうしたんだ？　かき氷でも食ってるのか？」
女「乳間ネックレスが地肌に当たるたびに、ひんやりしてゾクゾクする」
男「だったら外しなよ！」

女「ふむふむ」

男「小難しい顔して何読んでるんだ？」

女「世間では癒し系なるものが流行しているらしい」

男「何年前の話だ」

女「この色付き蝋燭から出る匂いが心を落ち着かせてくれるという」

男「アロマキャンドルな」

女「そんなものに頼らんとも瞑想で事足りるのだが…未熟者が多い世の中になってしまった」

男「仕事中に瞑想する癖はやめた方がいいよ」

女「やはりアロマはこの香りが落ち着く…」
男「線香かよ」

女「ギャル文字のひとつやふたつ、この私の筆で書いてみせる！」
男「待て、そもそもギャル文字を毛筆で書こうというのがおかしい」

女「またライブのチケットが売り切れか…」
男「ライブって、バンドか何か？　それとも演劇系？」
女「歌も踊りもアクションもあるし、もちろん演技の質も抜群。
　　更にテンションの上がった客が叫びだしたりするぞ」
男「な、何だそれは…！？」
女「歌舞伎のライブだ。やはり歌舞伎は生で観ないとな」

>>161
中村屋！！

女「直江兼続は愛され体質だったんだろうな。なぜなら兜に『愛』の文字が」
男「あれは『愛染明王』の『愛』で、『愛情』の『愛』では
女「知ってる。わざとボケて可愛さをアピールしたんだ」
男「ツッコミ殺し…だと…！？」

女「先日同僚に可愛い顔が台無しと言われたんだ」

男「台無しになるようなことしたからだろ」

女「こう眉間に力を込めてお茶を淹れていただけだ」

男「する理由がわからない」

女「有限である水を無駄にしないためには、零れ落ちぬよう見張る必要がある」

男「さいですか」

女「そうしたら茶柱が立った」

男「そいつはめでたい」