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    元スレ平沢進「東京のヒラサワです」翠星石「まきますか?まきませんか?」平沢進「違います」

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    201 = 197 :

    翠星石「えぇ~ウソですぅ!甘いものが嫌いな人なんているわけねぇんですから!まして、この翠星石の作った絶品スコーンですよ?ほーら、ひとくちで良いから食べてみるです!」

    平沢進「だから。そういう事以前にまず私の高品位粗食v2.0を返しなさいと」

    翠星石「だからだからうるせーです!…返したらスコーン食べてくれるですか?」

    平沢進「腹の虫よ応えたまえ。あ、ダメだ、粗食で非常に高い満足度を得る模様」

    翠星石「じゃあ返せねぇですぅ。ヒラサワがスコーンを食べて、お互いにうぃんうぃんのカンケーになれるまで翠星石は譲らねぇですよ!」

    202 = 197 :

    翠星石「えぇ~ウソですぅ!甘いものが嫌いな人なんているわけねぇんですから!まして、この翠星石の作った絶品スコーンですよ?ほーら、ひとくちで良いから食べてみるです!」

    平沢進「だから。そういう事以前にまず私の高品位粗食v2.0を返しなさいと」

    翠星石「だからだからうるせーです!…返したらスコーン食べてくれるですか?」

    平沢進「腹の虫よ応えたまえ。あ、ダメだ、粗食で非常に高い満足度を得る模様」

    翠星石「じゃあ返せねぇですぅ。ヒラサワがスコーンを食べて、お互いにうぃんうぃんのカンケーになれるまで翠星石は譲らねぇですよ!」

    203 = 197 :

    あ、ダブった
    すみませんホント…

    204 = 197 :

    平沢進「強情な人形が菓子を材料に強請りとは。世の惨憺たる未来の一端を目の当たりにしたようで落胆」

    翠星石「何言ってるですか!翠星石の未来はもう夢と希望と元気と愛と…良いものばかりの虹色に染まってるですよ!」

    平沢進「虹色も混合すれば黒なので」

    翠星石「何くらぁーいこと言ってるですか!翠星石の辞書にはそういうくらぁーい言葉は載ってねぇんで…って、あっ!」

    平沢進「はい。粗食は本懐を遂げ腹の虫の燃料となりました。玄米に宿る神霊に向け合掌」

    205 = 197 :

    翠星石「もう食べちまったですか!?食べるの早すぎですぅ!…というか、やっぱ量が少なすぎですぅ!ヒラサワがいくら霞食って生きてる仙人みたいな見た目でも足りるわけがないですよ!」

    平沢進「筑波山は別に昇仙の為の仙境というワケでもないので。霞という有機化合物を食した憶えもない」

    翠星石「仙人だろーが人間だろーがやっぱその量はおかしいって言ってんです!ほらほら、スコーンを食べてもっと翠星石みたいな元気ハツラツになるです!」

    平沢進「いや、どこぞの人形のような拡声器擬きになるのは御免なので。自身が騒音の爆心地となることほど不快な事は無い」

    翠星石「う、うるせーです!翠星石みたいになれるのが嬉しくねーわけがねーんです!ほら、早く食べるです!どうしても食べないってなら、実力行使してでも食べさせるですよ!」

    206 = 197 :

    平沢進「やれるものならどうぞ。そのスマートな御足をイリザロフ法に頼らず延ばす根気があるのなら」

    翠星石「ああー!!今遠回しにチビって言ったですね!む~っ!その言葉は翠星石を本気にさせたですよ!」

    平沢進「だって紛れも無い真実だし」

    翠星石「むぅ~っ!!真実を言われて傷つく乙女だっていくらでもいるんですよ!乙女心をもっと知りやがれですぅ!」

    平沢進「心について知っているのは画数が四文字ということぐらいだけなので。知りもしないことを知っていると声高に叫ぶほどに私は愚かではない」

    207 = 197 :

    翠星石「むー!!また屁理屈で逃げやがったですぅ!翠星石がいくら冷静沈着かつ篤実温厚だからと言って、いい加減に怒るですよ!」

    平沢進「世論の皆さんの一般的な視野フィルタを通して見た結果、翠の人形は既に怒りに震えていると表現できる状態かと」

    翠星石「むきーっ!!ま、まだギリギリ怒ってねーです!!翠星石はただ契約をしてほしくて……!」

    「…まったく、さっきからピーチクパーチク煩い子ねぇ」

    翠星石「……えっ!?」

    208 = 197 :

    平沢進「あ」

    翠星石「…その声は…っ!」バッ

    「短気は損気よぉ。仮にも薔薇乙女と在ろうものが、御菓子の一つでぐだぐだ喚くなんて…」

    水銀燈「乳酸菌、摂ってるぅ?」

    209 = 197 :

    翠星石「て、てめぇは……!!遂に来たですか…」

    水銀燈「ごきげんよう。私は薔薇乙女第一ドール、水銀燈。ノックも無しに夜分遅く失礼するわぁ」

    平沢進「私は平沢進だ。平沢唯じゃない」

    水銀燈「あら?これはどうもご丁寧に。最近はどこで人間に会っても、怯えられるか叫ばれるばかりでウンザリしてたのよねぇ」

    平沢進「我が家の挨拶は「なんだ!」とか「やかましい!」とか「うわー」とかではないので。そういう家もあるかもしれないが」

    水銀燈「へぇ、そうなの。じゃああの家は代々捨て台詞を挨拶にする家系だったのかしら…うふふ、真紅にはぴったりねぇ」

    210 = 197 :

    翠星石「!!てめぇ、この街で真紅に会ったですか!もしかして、もう真紅を…」

    水銀燈「あらぁ?そこの床でピーピー騒いでるのは…もしかして翠星石?小鳥の鳴き声かと思ったわぁ」

    翠星石「むきーっ!うるせーです!何が小鳥ですか!そんな背丈変わらねーくせによく言うですぅ!」

    水銀燈「あら、そう?背丈も器も段違いに違うつもりだけど。貴女のその色違いのお目目じゃ分からなぁい?」

    翠星石「色違いじゃねーです!オッドアイですぅ!」

    211 = 197 :

    平沢進「イリザロフ法の成功した人形ということか。やはり翠の人形も試してみるべきなのでは」

    翠星石「結構毛だらけ猫灰だらけですぅ!」

    水銀燈「いいえ、イリザロフ法は関係ないわぁ。私は生まれた時から他のドール達よりも強く、美しかったというだけよ」

    平沢進「へえ」

    翠星石「なーに言ってやがるですか!お前より翠星石のほうが強く美しーですぅ!ね、ヒラサワもそう思うですよね!」

    平沢進「……」

    212 = 197 :

    翠星石「なに悩んでるですか!!深刻な顔すんじゃねーです!こういう時はキミが一番だとか言うところですぅ!」

    平沢進「いや、ただ美とは時代と所在とシナプスの移りにより変わる為にどちらが明確に優れるとは言い難いってだけ」

    水銀燈「うふふ…少なくとも、いついかなる時代に置いてもそこの子が私に優った事なんてないわよ。時代の移ろいに左右される幅を越えて絶大に、ローゼンメイデンとしての品格が違うのだもの」

    翠星石「な、なっ……!」

    平沢進「ふーん」

    213 = 197 :

    翠星石「何がふーんですか!ちっとは反論してみやがれですぅ!仮にも翠星石のマスターなんですから!言われっぱなしじゃくやしーですぅ!」

    平沢進「想像上の既成事実を騙られても右眉を困惑という文字の形に傾げるしか出来ないので」

    水銀燈「あら…もしかして、まだ契約してないのぉ?アハハ、そりゃそうよねぇ。こんな小煩いだけのドールと契約したい人間なんているわけないもの」

    翠星石「はぁ!?このローゼンメイデンいちの才色兼備の愁眉秀麗な翠星石と契約したくない奴なんているわけねーです!ヒラサワが並外れた変わり者なだけですぅ!」

    平沢進「こうるさいというのとヒラサワが変わり者という点については大いに同意」

    214 = 197 :

    水銀燈「まあ、そんなことはどうでもいいわ。さて、136時間18分ぶりね、翠星石…。前も思ったけど、ホントに蒼星石と一緒じゃないのねぇ。なんかハンパでミジメな感じぃ」

    翠星石「ふん。てめーに言われる筋合いはねーです。蒼星石と翠星石は、近くに居なくたって繋がってるんですから」

    水銀燈「へえ、それはそれは…『絆』とやらでぇ?まったく、つまらない話。真紅もそうだけど、それ以外に言うことはないのかしらぁ。きずな、きずなって見えないものばかりに縋って。傷心がちなロマンチストみたい」

    翠星石「薔薇乙女がロマンチストで何がわりーですか!……でも、その口振りだと真紅を倒してはいねーみたいですね?もし倒してたらもっと邪悪に喜んでるハズですぅ」

    215 = 197 :

    翠星石「ホーリエも従えてねーですし…。真紅には会ったけど勝てなかったんですね。さすが真紅ですぅ!」

    水銀燈「ふん…真紅には挨拶をして来ただけよ。昔と変わらず、人間やドールと馴れ合うのがお好きなようで。まったく、無能なお友達に囲われて何が楽しいのかしらね」

    翠星石「ふーんだ。てめぇには解らねぇですよ。契約もせずに、人から力を奪い取るような分からず屋には!」

    平沢進「洋菓子を強請の道具に用いる人形が呟いても説得力が」

    翠星石「し、しーです!今は水銀燈と話してるんですから!隙を見せたら殺られるんです、ツッコまないでください!」ヒソヒソ

    平沢進「あ、そう」

    水銀燈「…?」

    水銀燈「…ええ。真紅の事なんか分かりたくもないわぁ。軟弱が移っちゃうもの。雛苺も、真紅も…欲しいのはローザミスティカだけ。あの子達の無意味な感傷なんて不必要なものなのよ」

    翠星石「…こほん。魂だけが欲しい、ですか…ホントに悪魔みてーなやろうですね。見た目通りに!」

    216 = 197 :

    水銀燈「あら。それだけはちゃんと分かるのねぇ。一応お目目が二つついてるだけはあるわぁ」

    平沢進「いや、天使の亞種である可能性も」

    水銀燈「…!?」

    翠星石「はぁ?んなわけねーですよ。どう見たって悪魔の化身ですぅ。ヒラサワ、もしかして鳥目で夜だから良く見えてねーんですか?」

    平沢進「失敬な。ただ、天使とは悪魔の偽名であったり、悪魔は天使の仮装だったりする。その水銀の化身もそうなのかと」

    翠星石「は、はぁ…。って!ツッコミは止めてって言ったじゃねぇですか!」ヒソヒソ

    平沢進「今のは純なる傍観者からの御意見でして。平手で人の頭にお決まりの奇声を叫びながら殴打を与える軽犯罪の真似事ではない」

    水銀燈「……へぇ。アナタ、中々面白いことを言うのねぇ。ま、私は神仏とは縁がないんだけど」

    217 = 197 :

    翠星石「え、ヒラサワの言葉が通じてるですか?センスのねー奴ですね!あんな小難しい割に意味不明なことを、マジメに聞いてる時点でお郷が知れるってもんですぅ」

    水銀燈「ふん。薔薇乙女のお郷は皆お父様の手の中でしょうに。ヘタな煽りは無言よりずっとイタイわよぉ」

    水銀燈「…まあ?貴女はお父様の手違いで生まれてしまったようだし、失言は仕方ないのかもだけど」

    翠星石「なっ……なぁーっ!!?てめぇ、今……!!」

    平沢進「あ、そうなの?」

    218 = 197 :

    翠星石「…んなワケねーですっ!!!翠星石は、お父様の寵愛を受けた誇り高きローゼンメイデンの一人ですぅ!水銀燈、それは翠星石と一緒に生まれた蒼星石への侮辱でもあるんですよ!」

    水銀燈「そう。一つとして生まれるべきだったものが分たれて生まれたの。貴女は、欠片となったローザミスティカのそのまた欠片…」

    水銀燈「貴女は最初から不完全さの写し身なの。完璧な乙女であるアリスには程遠い存在…それが生まれた時から決定づけられた上で生きるのが貴女たち。私に敵う道理がどこにあるの?」

    翠星石「…いくら最初に生まれたからって、言っていいことと悪いことがあるですよ」

    水銀燈「あ、怒っちゃった?図星をつかれるとヒトってすぐ頭に血が上るのよねぇ。自愛的なヒトに似るアナタ…やっぱり美しくないわ。それにいちいち煩いし」

    219 = 197 :

    翠星石「うるせーのはてめぇです。…スィドリーム!!」

    水銀燈「あらぁ…お喋りはここまでかしら」バサッ

    翠星石「ぜってー許さねーですぅ!!この翠星石の全身全霊の力を以て、なんとしても謝らせてやるですぅ!!翠星石と蒼星石が生まれたのが、間違いだなんて…!!」

    水銀燈「うふふ…間違いだというならローゼンメイデン自体がみんな間違いなのよぉ。だって、誰一人お父様の求めるアリスとして生まれることが出来なかったんだもの。その中でも、貴女たちは一人じゃマトモに立つことも出来ない憐れな子…」

    翠星石「黙りやがれですぅ!!翠星石は……一人でも闘えるですぅ!」

    220 = 197 :

    水銀燈「じゃあ、震えてるのはどうして?分かるわよぉ、初めて蒼星石抜きで闘った時、分かったのよねぇ?自分は一人じゃマトモに武器も振るえない…ジャンクだってこと」

    翠星石「だ、黙れ黙れですぅ!怯えてなんかねーですぅ!勇気一杯元気一杯なのが翠星石のモットーですぅ!」

    水銀燈「いいのよ強がらなくて。背中に蒼星石がいないと、怖くて足元が覚束無いんでしょう?」

    翠星石「ん、んな……んなことねーです!翠星石は…翠星石は…!」

    平沢進「………」

    平沢進「…被造物は皆、宇宙のつまらない冗談から生まれた」

    翠星石「…?」

    平沢進「場酔いのノリで無窮の世界の底に沈んだ原子がぶつかり合って分子が跳ね、それらが東京の人ゴミのごとく混ざり合って原始のスープが」

    平沢進「最初から何もかも手違いなのだから、今更何を怯える必要があるというのか」

    221 = 197 :

    水銀燈「…!」

    翠星石「…それって、フォローです?」

    平沢進「いや、冗談」

    翠星石「ズコー!急にヒラサワがマスターらしいことをしてくれたのかと思ったのに!」

    平沢進「マスターでもないのにマスターらしく出来るはずもなく。ヒラサワはヒラサワらしいだけ」

    水銀燈「アナタ、さっきから中々興味深い事を言うのねぇ。最初から手違い…ね。こっちに来てからも、向こうにいた時も、面白いことを言う人間ってあんまり居なかったから珍しいわぁ」

    平沢進「へえ、そう」

    222 = 197 :

    水銀燈「ま、だからと言って躊躇するつもりは無いけど。命が惜しかったら、頭を抱えて伏せてることねぇ。怪我の保証はしないけど、面白いお話の御礼に命の保証ぐらいはしてあげるわよ」

    平沢進「それはどうも。ただ、自宅の寝台以外で床を這い蹲う趣味は持ち合わせていないので」

    水銀燈「…ふーん。そう。まあいいけど」

    翠星石「ふー…兎にも角にも、頭がちょっと冷えたですぅ。でも、このまま水銀燈を許すつもりはねぇですよ!行きましょう、スィドリーム!!ヒラサワ!」

    平沢進「え。だからまだ私はマスターとかいう英単語の一種では無く」

    水銀燈「あら、やっとその気になったぁ?ちょっと気が削がれちゃったけど…お喋りにも飽きたし、じゃあやりましょうか」

    水銀燈「…このお喋りよりも闘いが長引くとは思えないけどぉ」

    223 = 197 :

    一旦ここまでです
    好きに御批判や御意見をお願いします

    224 = 197 :

    大変恐縮なんですが質問とかも多分ないと思うんですがもしありましたら受け付けております
    レス番の引用方法とか分かってないんですが自分の身の丈に合う程度に返答しますので気軽にどうぞ

    225 :

    >>224
    薔薇乙女の中だと誰が一番好き?

    226 :

    >>224
    ヒラサワと愉快な仲間たち、もといP-MODEL歴代メンバーの中だと誰が一番好き?

    227 :

    銀様と普通に会話出来てるのは流石
    文化人だけあってレベルが高い

    228 :

    >>225
    やっぱり翠星石ですね。次が蒼星石です。でも漫画読み返してたら皆健気で個性があっていいなぁと思いました(小並)
    クールな僕っ娘大好きなのですが何故か翠星石が一番好きでした 不思議ですね…
    >>226
    馬の骨歴が浅いのでP-MODELのメンバーに詳しい訳じゃないんですが、個人的にはことぶきさんですかね。過去のライブとか観てると実際どうかは知りませんが怪しすぎて平沢さんの相棒感がパないです まじカッコイイ
    あと一応Twitterで福間さんをフォローしてます()

    多分今夜には更新できると思います いつも遅くてすみません

    229 :

    昨日更新すると言いましたがすまんありゃウソだった
    代わりに今からします

    230 = 229 :

    翠星石「……と見せかけて!ぽーいっ!」

    平沢進「あ」

    水銀燈「……はあ?」

    平沢進「…あのねぇ」

    翠星石「ふっふーん…騙すなら味方から、ですぅ!ヒラサワ、いま翠星石のスコーンを食べたですよね!欠片をパクって!間違いねーです!別腹の虫に聞いてみやがれですぅ!」

    平沢進「なんという非道を敷く人形なのか。開いた口を洋菓子で塞ぐとは。開いた口が塞がらない」

    231 = 229 :

    翠星石「問答無用ですぅ!さあヒラサワ、約束を今こそ果たすですよ!さっきは一人でも闘えるって言いましたけど…一人より二人の方が心強いに決まってるですぅ!」

    水銀燈「…一体なんの話ぃ?つまらなそうだから聞くつもりは無いけど、この私を前にして人形劇を始めるなんていい度胸ねぇ」

    翠星石「劇じゃねぇです!うぃんうぃんカンケーの最後の橋渡しですぅ!」

    水銀燈「もっと意味が分からないわ。バカみたぁい」ゴオッ

    翠星石「どわぁああ!?ひ、ヒラサワ急ぐですぅ!」

    232 = 229 :

    平沢進「はあ。で、契約書は。まだ我が家の電話機は何も受信していないが。やはり国際FAXの為タイム・ラグが…」

    翠星石「だーかーら!契約書をFAXで送るシステムじゃねーんですって!ほら、これが指輪で…うわっと!?」バッ

    水銀燈「あら、惜しい」

    翠星石「あぶな……っと、これに口づけすればいいだけですぅ!」

    平沢進「えー……」

    翠星石「えーじゃねぇです!何今までで一番のイヤな顔してるですか!今そっちに指輪持ってきますから待ってやがれですぅ!」

    平沢進「だって口づけって。あのねぇ。少女漫画のテンプレートじゃないんだから…」

    233 = 229 :

    水銀燈「約束って、何かと思えば契約の事?面倒だしぃ、その前に終わらせて貰うわよぉ」

    翠星石「げっ!スィドリーム!もっとめいっぱい世界樹の葉を出すですぅ!健やかに~伸びやかにー!」

    水銀燈「邪魔くさいわねぇ。こんな草でどうにかなるとホンキで思ってるのぉ?」ズバッ

    翠星石「うっ、うわぁっ!あんなあっけなく…!もっとです、スィ……」

    翠星石「あ……あれ?」カクン

    水銀燈「…あら♪」

    平沢進「?…」

    234 = 229 :

    翠星石「しまった…です……ネジが…もう…きれるですぅ…!…契約してないまま…一気に力を使ったから……」

    水銀燈「アハハ、貴女にはお似合いの結末よぉ。蒼星石に死に顔がどうだったかぐらいは教えてあげるから、安心して逝きなさぁい」バサッ

    翠星石「く………に…逃げなきゃ……で……」フラッ

    水銀燈「させないわぁ♪最後くらいは静かにしなさいな。ローザミスティカ、有難く戴くわよ」

    翠星石「う…うわぁっ…!!…ひゃっ?」ヒョイ

    ドスッ!!

    235 = 229 :

    水銀燈「…あら」

    平沢進「……」

    水銀燈「ふぅん…。その子を庇うのお?もう少し思慮分別のある人に見えたけどぉ」

    平沢進「いや、何せ翠の人形はあろるの館前に配置されていたものをヒラサワが一時拾得しただけなので。持主の現れる前に破壊されたとあって私に賠償責任を発生させる訳にはゆかず」

    翠星石「ひ、ヒラサワ……ナイス…カバー……ですぅ……でも…この持ち方は……あんまり…ですぅ…子猫じゃ……ねーんですから…」

    平沢進「あ、つい」

    翠星石「ま……いいですぅ……じゃあこれ…指輪…です…」

    平沢進「はあ」パシ

    236 = 229 :

    水銀燈「!させないわよ」ドッ

    翠星石「!!ヒラサワ…急いで…!」

    翠星石「まきますか……?まきませんか………応えて、ですぅ…」

    平沢進「…………」

    平沢進「…では、何方かと言えばまく方向で」

    翠星石「よし来た…合点承知之助……ですぅ!」

    パァアアアッ!!

    237 = 229 :

    「…ふぅ~っ!」

    翠星石「改めて…!!薔薇乙女第三ドール、翠星石!!いざ参る、ですぅ!共に行くですよ、ヒラサワ!」

    平沢進「…光と共に蛇か蜘蛛かのごとき不完全変体が始まったりしておらず安堵」

    238 = 229 :

    翠星石「すかさず!…スィドリーム!最後の力で世界樹の枝を呼ぶですぅ!」パアァ…

    水銀燈「きゃ……ちっ!」バッ

    翠星石「今です!…ヒラ…サワ!超特急で…ネジをまくですぅ」

    平沢進「はいはい」キリキリ…

    翠星石「…はふ~っ!翠星石、かんぜんふっかつ!ですぅ!今までと同じだと思うなですよ、水銀燈!」

    水銀燈「…あーあ、契約しちゃったの。残念ねぇ、えっと…」

    平沢進「コール、ヒラサワ」

    水銀燈「そう、平沢さぁん。悪いけど、頭抱えて伏せてたとしても命の保証は出来なくなったわぁ」

    239 = 229 :

    翠星石「って翠星石の話を聞けですぅ!…心配するなです、ヒラサワ!代わりに翠星石が命の保証をするですよ!ケガの保証までは…ビミョーですけど!」

    平沢進「人形保険会社のCMか何か?生憎と間に合っておりますので」

    翠星石「ちげーです!セールス文句とかじゃねーです!…んじゃ、ホンキでいくですよ…スィドリームっ!!」

    ドバァアアアッ!!

    翠星石「おお~っ!そうです、これです!これぞ翠星石の実力ですぅ!」

    平沢進「うわっ。我が家が紛うことなき密林の巨木の仮住まいに。実に嘆かわしい」

    240 = 229 :

    翠星石「嘆いてる場合じゃねーですよ!後でちゃんと消しますから気にすんなですぅ。さあ、これで水銀燈をぐるぐる巻きに縛り上げてけちょんけちょんにしてやるです!」

    水銀燈(…ふぅん。契約して、蔦の量も力もかなり増したわね)

    水銀燈「けど…面倒になるとは言ったけどぉ、厄介だとは言ってないのよぉ?」ゴオッ

    翠星石「ふん!強がりですね!ヒラサワと翠星石が契約したいま、誰も翠星石を止めることなんて…!」

    ズバッ!! ズバッズバッ!!

    翠星石「……へ?」

    水銀燈「…いくら大きくても、草はただの草なんだからぁ」

    翠星石「え…!そんな…」

    241 = 229 :

    翠星石「し…信じられねーです…!契約もしてないドールが、世界樹の枝をこんなふうに切り倒せるはずが……!」

    水銀燈「うふふ…だから、格が違うと言ったでしょう?」

    翠星石「くっ…!でも、今ならスタミナに気を遣う事もねーです!ほら、スィドリーム!葉っぱで目くらましですぅ!」

    水銀燈「目くらまし?まったく、地味な手ねぇ」

    翠星石「何とでも言えです!(この隙に大きな枝で狙いをつけて…!)」

    水銀燈「させないわよぉ」ブオッ

    翠星石「どわぁっ!?風圧で葉っぱが全部っ…!?」

    242 = 229 :

    水銀燈「はい、じゃあねぇ」ドスッ

    翠星石「うわっとぉっあぶなぁっ!あっ!翠星石のヴェールが…!てめぇよくもっ!」

    水銀燈「…ちょこまかと鬱陶しいわねぇ。羽根で部屋ごとぜーんぶ吹き飛ばしてあげようかしら」バサバサ…

    平沢進「えー」

    翠星石「!!させるか、ですぅ!世界樹の枝を根本から伸ばせば、そのくらいっ…!」ズゥッ

    水銀燈「あら、なかなかやるじゃない。拡散した羽だと威力がちょっと足りなかったかしら?でもちょっと力を込めればぁ…」

    翠星石「うそっ!?これでも受け切れないなんて…っ…あっ、危な…!ヒラサワの楽器が…!」

    243 = 229 :

    水銀燈「…それを護ってるの?」ニヤ

    翠星石「え?…あっ!」

    平沢進「……」

    水銀燈「アハハ…自分で弱味をバラしちゃうなんて。だからアナタはダメなのよぉ!」ゴオッ

    翠星石「ス、スィドリームっ!!如雨露をお水で満たしておくれ…甘ぁいお水で満たしておくれ…超特急で!ですぅ!」パァアアア

    水銀燈「喰らいなさぁい」翠星石「ガードするですっ!」

    ドバァアアアッ!! ドス!!ドスドスッ!!

    244 = 229 :

    翠星石「ふひー、なんとか護りきれ…っ!?」

    水銀燈「隙だらけよ、おバカさぁん」ドカッ

    翠星石「どへっ!痛っ…!」

    水銀燈「吹き飛びなさぁい」ブオッ

    翠星石「どわぁああっ!?」

    平沢進「あ」

    翠星石「べふっ!…ひ、ヒラサワ…もう少し優しく受け止めるですぅ」

    平沢進「ヒラサワの動体視力に過度な期待は禁物。ついでに腕力も十人並以上の筋持久力を予想すべきでない」

    245 = 229 :

    翠星石「わかったです、ブルーカラー的な期待はしないようにするですよ!…けほっ…とりあえずありがとです、ヒラサワ」スタッ

    水銀燈「うふふ…こんなカンタンな罠にハマるなんてね。やっぱり、ドールズにとって契約者なんてただの重石だわ」

    平沢進「小煩い人形を鎮めるには五、六十キロの重石ぐらいでは足りないので。もう少しストーン的なものが欲しいほど」

    水銀燈「あ、そ。…何だか調子狂うわねぇ。…じゃあ、私がその子に乗っかれば丁度いいかしらぁ?」

    翠星石「ちょ、ちょっとヒラサワ!翠星石が頑張ってる時に茶化すんじゃねーですぅ!」

    平沢進「茶化したつもりはそこまで無かった」

    翠星石「多少あるんじゃねーですか!まったく……」

    246 = 229 :

    翠星石「しっかし…契約した全力の翠星石が、こんなに歯が立たないなんておかし…」

    翠星石「…「おかし」?あっ、そうだ!やっぱりヒラサワが食べなさすぎなのがダメなんですぅ!!ほら、このスコーン全部食ってしゃっきり目ん玉開けやがれですぅ!玄米じゃアリスゲームには勝てねぇですよ!」

    水銀燈「はあ?あのねぇ、菓子でアリスゲームが左右されたら苦労しないのよ」

    平沢進「私もあのねぇ…と言いたいところだが癪なことに腹の虫が重い腰を上げ渋々ながら頷いている。ヒラサワは仕方なしに目の前の三角菓子に手を伸ばす」

    翠星石「おおっ?力がさっきよりずっと高まったですぅ!さすが翠星石特製のスコーンですぅ!これなら……!!」

    水銀燈「……下手な冗談に付き合うほど私は暇じゃないのよぉ?遊びにも飽きてきたし…いい加減に終わらせてあげるっ!」

    ドバァアアアッ!! …チャララン♪
    ズバァアアッ!!
    ガキィイン!!

    水銀燈「…!」

    翠星石「え!?…や、やった!!水銀燈の攻撃を、初めて真正面から止めた…ですぅ!!」

    247 = 229 :

    平沢進「何やら同時にそこの窓が絹を裂くような悲鳴と共に崩れ落ちたが。私の心中を代弁してくれたかのよう。…ついでに金色の光明が見えたような気も」

    翠星石「す、翠星石の攻撃が余りにも強かったせいですかね!…っていうか、ウソつくなですぅ。テンペンチーが起きてもその仏頂面が変わるとは思えんです」

    平沢進「そう。だから今のはヒラサワお得意の比喩」

    翠星石「むーっ!それ気にいったですか!?全部それで返されたら翠星石のツッコミする隙間が無くなるですぅ!」

    平沢進「それは大助かり」

    翠星石「むき~っ!!」

    水銀燈(今の音色は……あの子、一体なんのつもり?)

    248 = 229 :

    翠星石「それより…水銀燈!見たか見たかーですぅ!!やっぱり翠星石はスゴいんですぅ!この調子で一気に畳み掛けてや…」

    水銀燈「煩いわよぉ」ブンッ

    翠星石「うわっひゃあ!?あべっ!…ヒラサワ、ちゃんと受け止めるですよ!翠星石の襟首は掴むとこじゃねーです!」

    平沢進「余りに短周期なデジャビューの出現にストーンも私も驚嘆の念を隠せず。ノストラダムスだかヨシュアだかの預言書か何かに記されていた確定事項の一種だったのかもしれない」

    水銀燈「…………はぁ」

    水銀燈「まったく、せっかくノッてきたところだったのに。横槍が入るなんてね。…興が醒めちゃったわ」フワー

    249 = 229 :

    翠星石「え?…に、逃げるですか!?勝負はまだついてねーですよ!さっきのこと謝れですぅ!このヒキョー者!!」

    水銀燈「はいはい。摘まれるのを待つだけの蕾が喚いたところで、気にする剪定者は居ないものよ。特にそれが、取るに足らない小さなものならねぇ」

    翠星石「うるせ……!」

    翠星石「ん…!えーとえーと、もっと優雅に…」

    翠星石「…どんなに小さくても、蕾の声を聴くのも庭師の大事な能力ですぅ!葉や枝の声も聴けねぇ真っ黒くろすけには解らねーかもしれねーですけど!」

    水銀燈「…へえ。少しは言葉を憶えてくれたみたいで、姉として嬉しいわよぉ。礼儀はまだ全然足りてないみたいだけど。じゃあねぇ」

    平沢進「またこんど」

    水銀燈「…また会いたいの?本当におかしなヒトねぇ」

    翠星石「ふん!もう二度と会いたくねーですこんちくしょー!」

    水銀燈「貴女には聞いてないわよ。…ふん」ビュオオッ

    250 = 229 :

    翠星石「…ホントに行っちまったですぅ」

    平沢進「そのようで」

    翠星石「……」ポカーン

    平沢進「しかし、水銀の化身の割に硬派ならぬ硬羽という中々ソリッドな表現方法を用いる人形で。おかげであろるの館が鴉のそれと見紛うようなくらぁーい館に様変わり」

    翠星石「……」

    平沢進「…え。何顔のパーツをシリアスverに取り替えたかのごとく神妙な表情になってるの」

    翠星石「うるせーです!翠星石だってたまには真面目な顔もするですぅ!ふぅー……」

    翠星石「………ぃいやったああああああーーですぅ!!!」ピョーン

    平沢進「うわっ。やかましい。あ、今のは挨拶ではない」

    翠星石「翠星石が!この翠星石が!!あの水銀燈を追い返したですぅ!信じられねーですぅ!!」


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