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元スレ梨子「5年目の悲劇」
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高森「ねえ、これって……」
高森の声で我に返る。
部屋の窓が開いていて、ベランダから1本のロープが垂らされていた。
雨の降る中、犯人はここから逃げたのだろう。
千歌「ところで、ダイヤさんが見当たらないけど……」
梨子「…………」
やっぱり、彼女のことも話した方がいい。
そう判断して、私は残っていた2人と一緒に部屋を出た。
高森の声で我に返る。
部屋の窓が開いていて、ベランダから1本のロープが垂らされていた。
雨の降る中、犯人はここから逃げたのだろう。
千歌「ところで、ダイヤさんが見当たらないけど……」
梨子「…………」
やっぱり、彼女のことも話した方がいい。
そう判断して、私は残っていた2人と一緒に部屋を出た。
曜「……ルビィちゃんは、向こうの果南ちゃんの部屋にいる」
306号室を出ると、曜が待っていた。
曜「果南ちゃんだって、鞠莉ちゃんがあんなことになって辛い筈なのに……」
梨子「っ……」
少し前に果南本人から話を聞いているせいで、つい「本当にそうなんだろうか」と無意味な反論をしそうになる。
梨子「……実は、さっきの電話のことなんだけどね」
衝動をぐっとこらえ、代わりに姿を見せないダイヤに関することを口にした。
306号室を出ると、曜が待っていた。
曜「果南ちゃんだって、鞠莉ちゃんがあんなことになって辛い筈なのに……」
梨子「っ……」
少し前に果南本人から話を聞いているせいで、つい「本当にそうなんだろうか」と無意味な反論をしそうになる。
梨子「……実は、さっきの電話のことなんだけどね」
衝動をぐっとこらえ、代わりに姿を見せないダイヤに関することを口にした。
高森「……それ、本当なの?」
梨子「犯人が前もってダイヤさんの声を録音していてそれを流した、ってなったら話は変わるけど、間違いない」
千歌「ダイヤさんが犯人だったら……もう、逃げたのかな」
曜「どうして?」
千歌「だって、ベランダにはロープが掛かってたし、梨子ちゃんに声を聞かれてるんだよね?」
高森「確かに筋は通っているけど……」
梨子「犯人が前もってダイヤさんの声を録音していてそれを流した、ってなったら話は変わるけど、間違いない」
千歌「ダイヤさんが犯人だったら……もう、逃げたのかな」
曜「どうして?」
千歌「だって、ベランダにはロープが掛かってたし、梨子ちゃんに声を聞かれてるんだよね?」
高森「確かに筋は通っているけど……」
高森の言う通りだ。
花丸を殺そうとしたが電話でSOSをされ、それに気づかないままダイヤ本人の声が乗り、逃亡。
一見辻褄は合っているが、そうすると何故魔法陣クロスを再び用いたのかという疑問が残る。
津島善子=犯人のシナリオの次は、黒澤ダイヤ=犯人のシナリオ。
犯人はどうしてそんな回りくどいことをしようとしているのだろう。
何より、私たちはもっと根本的な何かを忘れているような……そんな気がしてならなかった。
花丸を殺そうとしたが電話でSOSをされ、それに気づかないままダイヤ本人の声が乗り、逃亡。
一見辻褄は合っているが、そうすると何故魔法陣クロスを再び用いたのかという疑問が残る。
津島善子=犯人のシナリオの次は、黒澤ダイヤ=犯人のシナリオ。
犯人はどうしてそんな回りくどいことをしようとしているのだろう。
何より、私たちはもっと根本的な何かを忘れているような……そんな気がしてならなかった。
曜「とにかく、一旦部屋に戻ろう」
高森「……そうね」
千歌「…………」
梨子「あ、千歌ちゃん」
千歌「なに?」
向けられた視線に、何故か異様な冷たさを感じた。
高森「……そうね」
千歌「…………」
梨子「あ、千歌ちゃん」
千歌「なに?」
向けられた視線に、何故か異様な冷たさを感じた。
梨子「ちょっと、話があるんだけど」
千歌「……別にいいけど」
怯まず、私は彼女を部屋へ招く。
今のうちに、違和感を払拭しておきたかった。
千歌「……別にいいけど」
怯まず、私は彼女を部屋へ招く。
今のうちに、違和感を払拭しておきたかった。
────梨子の部屋。
梨子「はい、これ」
千歌「ありがと。それで、話って?」
備え付けのティーパックをゴミ箱に捨て、沸かしたばかりの緑茶を差し出す。
「あちっ」とカップを口から離す動作を見ていると、やっぱり千歌は千歌だ、とどこか安心する自分がいる。
梨子「はい、これ」
千歌「ありがと。それで、話って?」
備え付けのティーパックをゴミ箱に捨て、沸かしたばかりの緑茶を差し出す。
「あちっ」とカップを口から離す動作を見ていると、やっぱり千歌は千歌だ、とどこか安心する自分がいる。
梨子「前に千歌ちゃん“あのこと、忘れてないから”って言ってたけど……」
千歌「あー……あれね。うん、忘れて」
梨子「え?」
千歌「勢いで言っちゃったけど、あれ、私の自分勝手でしかないから」
梨子「どういうことなの? 話が全然見えないんだけれど」
千歌は、言おうかどうかを迷っているような節が見えた。
けれども少し考える動作をして、やがて紅茶を飲み干し、語り始めた。
千歌「あー……あれね。うん、忘れて」
梨子「え?」
千歌「勢いで言っちゃったけど、あれ、私の自分勝手でしかないから」
梨子「どういうことなの? 話が全然見えないんだけれど」
千歌は、言おうかどうかを迷っているような節が見えた。
けれども少し考える動作をして、やがて紅茶を飲み干し、語り始めた。
千歌「梨子ちゃん、東京の音大に通ってたんでしょ?」
梨子「うん、そうだけど……」
千歌「梨子ちゃんのお母さんから聞いたんだ。教員免許取れる方の学科も受験したけど、結局ピアノ専攻の学科にしたって」
梨子「確かにそう。浦の星で音楽教師をやってみるのもいいかなって思って」
梨子「うん、そうだけど……」
千歌「梨子ちゃんのお母さんから聞いたんだ。教員免許取れる方の学科も受験したけど、結局ピアノ専攻の学科にしたって」
梨子「確かにそう。浦の星で音楽教師をやってみるのもいいかなって思って」
千歌「私もそれを聞いて、教職課程の単位を取れる大学を選んだの」
千歌「曜ちゃんもその予定だったんだよ? 飛び込み選手もいいけど、浦の星で体育教師も捨てがたいって」
結局、家の仕事が忙しくて大学には行けなかったけど。伏目がちに、千歌は付け加えた。
千歌「曜ちゃんもその予定だったんだよ? 飛び込み選手もいいけど、浦の星で体育教師も捨てがたいって」
結局、家の仕事が忙しくて大学には行けなかったけど。伏目がちに、千歌は付け加えた。
梨子「……なるほど。そういうことだったのね」
ようやく彼女に関する謎が解けた。
私と千歌と曜。いつか3人で、一緒に浦の星で働く。
千歌はそれを夢見ていたのだ。
ようやく彼女に関する謎が解けた。
私と千歌と曜。いつか3人で、一緒に浦の星で働く。
千歌はそれを夢見ていたのだ。
千歌「ごめんね。考えてみれば、梨子ちゃんには梨子ちゃんのユメがあるんだし」
梨子「いいよ、そんな……」
千歌「結局、私も大学は中退しちゃったからね。お母さんたちにすっごく怒られた」
てへ、と舌を出す千歌。
なんだ、蓋を開けてみれば単純な話だったのか。
安堵しかけた表情は……しかし、次に紡がれた言葉で再度こわばることになる。
梨子「いいよ、そんな……」
千歌「結局、私も大学は中退しちゃったからね。お母さんたちにすっごく怒られた」
てへ、と舌を出す千歌。
なんだ、蓋を開けてみれば単純な話だったのか。
安堵しかけた表情は……しかし、次に紡がれた言葉で再度こわばることになる。
千歌「……ところでさ」
梨子「?」
千歌「誰が鞠莉ちゃんと花丸ちゃんを殺したんだろうね」
千歌の視線と声色が再び、暗さと冷たさを帯びた。
梨子「?」
千歌「誰が鞠莉ちゃんと花丸ちゃんを殺したんだろうね」
千歌の視線と声色が再び、暗さと冷たさを帯びた。
梨子「でも、ダイヤさんが犯人だって言ったのは千歌ちゃんじゃ……」
千歌「そんなワケないじゃん。紙なんかを前もって準備したりしてかなり計画を練ってるのに、電話で声を出してしまうなんてミスをすると思う?」
梨子「それは、そうだけど……」
千歌「それに、梨子ちゃんの話が本当ならダイヤさんは花丸ちゃんが鞠莉ちゃんを殺したって思ったことになるでしょ? 何でそうなるの? どうやって知ったの?」
まくしたてる千歌に、ただただ気圧される。
千歌「そんなワケないじゃん。紙なんかを前もって準備したりしてかなり計画を練ってるのに、電話で声を出してしまうなんてミスをすると思う?」
梨子「それは、そうだけど……」
千歌「それに、梨子ちゃんの話が本当ならダイヤさんは花丸ちゃんが鞠莉ちゃんを殺したって思ったことになるでしょ? 何でそうなるの? どうやって知ったの?」
まくしたてる千歌に、ただただ気圧される。
千歌「何でっていえば……言っておくよ。花丸ちゃんは分からないけど、私には鞠莉ちゃんを殺す動機はある。ああ、果南ちゃんもね」
梨子「ちょっと、どういうことなのそれ!?」ガタッ
突然すぎる告白に、私は思わず椅子から立ち上がる。
梨子「ちょっと、どういうことなのそれ!?」ガタッ
突然すぎる告白に、私は思わず椅子から立ち上がる。
千歌「話はおしまい。犯人推理するなら頑張ってね」
梨子「ちょっと、千歌ちゃん!」
足早に部屋を出た千歌を追いかける。
彼女は自室、203号室に入り扉を閉める。これ以上の追求は許してくれなさそうだ。
梨子「ちょっと、千歌ちゃん!」
足早に部屋を出た千歌を追いかける。
彼女は自室、203号室に入り扉を閉める。これ以上の追求は許してくれなさそうだ。
梨子「……あ」
諦めて部屋に戻ろうとして、私は気づいた。
まずい。鍵を持たないまま部屋を出てしまった。
客室の扉はオートロック式。このままでは部屋に入ることが出来ない。
諦めて部屋に戻ろうとして、私は気づいた。
まずい。鍵を持たないまま部屋を出てしまった。
客室の扉はオートロック式。このままでは部屋に入ることが出来ない。
高森「あら、どうしたの?」
マスターキーは誰が持っていただろうか。
そんなことを考えながら、念のためフロントに確認するためエレベーターへ向かうと、偶然にも高森と鉢合わせした。
梨子「ちょうど良かった。実は……」
マスターキーは誰が持っていただろうか。
そんなことを考えながら、念のためフロントに確認するためエレベーターへ向かうと、偶然にも高森と鉢合わせした。
梨子「ちょうど良かった。実は……」
────高森の部屋。
高森「それなら、私が保管してるわ。一番の年長者が預かっててくれると安心だ、ってね」
そう言われ、私は彼女の部屋、305号室へと案内された。
彼女の机には、スケジュールがびっしり詰め込まれている紙や、Aqoursの記事が載った雑誌などが置かれている。
高森「それなら、私が保管してるわ。一番の年長者が預かっててくれると安心だ、ってね」
そう言われ、私は彼女の部屋、305号室へと案内された。
彼女の机には、スケジュールがびっしり詰め込まれている紙や、Aqoursの記事が載った雑誌などが置かれている。
高森「こういうところって大体オートロックだからね。気を付けなよ?」
梨子「ありがとうございます」
マスターキーを受け取り、ぺこりとお辞儀をする。
返すのは夕飯の時でいいよ、と付け加えられた。
梨子「ありがとうございます」
マスターキーを受け取り、ぺこりとお辞儀をする。
返すのは夕飯の時でいいよ、と付け加えられた。
梨子「そういえば高森さんって、今でもスクールアイドルのイベントに携わっているんですか?」
高森「うーん……ちょっと違うかな。今は、『昔スクールアイドルだった人』のお仕事に携わってる」
高森「黒澤ちゃんや、元μ’sの矢澤ちゃんみたいにね。あと、元Saint Snowの2人なんかも」
梨子「あー……」
ラブライブ大会以降、Saint Snowともしばらく会っていない。
懐かしい名前に、あの頃に引き戻されたような感覚になる。
高森「うーん……ちょっと違うかな。今は、『昔スクールアイドルだった人』のお仕事に携わってる」
高森「黒澤ちゃんや、元μ’sの矢澤ちゃんみたいにね。あと、元Saint Snowの2人なんかも」
梨子「あー……」
ラブライブ大会以降、Saint Snowともしばらく会っていない。
懐かしい名前に、あの頃に引き戻されたような感覚になる。
高森「あの時はごめんね、0票の紙……辛かったでしょ?」
梨子「いえ、そんな……」
高森「隠さなくていいんだよ。顔に出てる」
梨子「……辛かった、です。みんな落ち込んでました。特に千歌ちゃん」
確かに辛かった。けれども一度壁にぶち当たったからこそ、私たちAqoursは軌道に乗り始めた。
……その軌道は、もう二度と元通りにはならないくらいに血塗られてしまったのだが。
梨子「いえ、そんな……」
高森「隠さなくていいんだよ。顔に出てる」
梨子「……辛かった、です。みんな落ち込んでました。特に千歌ちゃん」
確かに辛かった。けれども一度壁にぶち当たったからこそ、私たちAqoursは軌道に乗り始めた。
……その軌道は、もう二度と元通りにはならないくらいに血塗られてしまったのだが。
高森「μ’sやA-RISEが解散してから、スクールアイドルは数が爆発的に増えて、競争主義が目立つようになっていった」
高森「私は何だかそれが我慢出来なくてね。だって、観る人を楽しませるのもそうだけど、自分たちが楽しくなければやってる意味はあるのかなって」
高森の言葉に、初めてAqoursがスクールアイドルとしてラブライブに登録した日を思い出す。
5000グループ、或いはそれ以上のグループの中で、あの時、私たちは頂点に輝けたのだ。
高森「私は何だかそれが我慢出来なくてね。だって、観る人を楽しませるのもそうだけど、自分たちが楽しくなければやってる意味はあるのかなって」
高森の言葉に、初めてAqoursがスクールアイドルとしてラブライブに登録した日を思い出す。
5000グループ、或いはそれ以上のグループの中で、あの時、私たちは頂点に輝けたのだ。
高森「そんな時、あなたたちAqoursが現れた。めいいっぱいに楽しんで、輝こうとしているスクールアイドルに」
高森「私ね、期待してたの。一度スクールアイドル界隈の現実を見せて……そのあとでも輝けるのかなって」
高森「もしそれで辞めちゃったら、私の責任だった。でも、あなたたちは再び舞台に戻ってきた。まさか昔のAqoursまで連れて来るとは思わなかったけどね」
苦笑する高森。
昔のAqours……彼女は、ダイヤたちのことも知っていたのだろう。
高森「私ね、期待してたの。一度スクールアイドル界隈の現実を見せて……そのあとでも輝けるのかなって」
高森「もしそれで辞めちゃったら、私の責任だった。でも、あなたたちは再び舞台に戻ってきた。まさか昔のAqoursまで連れて来るとは思わなかったけどね」
苦笑する高森。
昔のAqours……彼女は、ダイヤたちのことも知っていたのだろう。
高森「いま黒澤ちゃんたちの仕事に移ったのは、あれ以来、競争が激化しすぎて見ていられなくなったからなの」
梨子「そうだったんですね……」
高森「だから、あのAqoursがまた集まるって聞いた時はすっごくワクワクしたのよ」
それが、こんなことになるなんて。
私は、犯人への怒りが己の中に湧いてくるのを感じていた。
梨子「そうだったんですね……」
高森「だから、あのAqoursがまた集まるって聞いた時はすっごくワクワクしたのよ」
それが、こんなことになるなんて。
私は、犯人への怒りが己の中に湧いてくるのを感じていた。
梨子「……なんだか、ごめんなさい」
高森「いいのいいの。5年って、人をこうも変えてしまうのかなって、ちょっと悲しくなっただけだから……」
物憂げな言葉に居たたまれなくなって、私は話を切り上げて高森の部屋を出た。
高森「いいのいいの。5年って、人をこうも変えてしまうのかなって、ちょっと悲しくなっただけだから……」
物憂げな言葉に居たたまれなくなって、私は話を切り上げて高森の部屋を出た。
エレベーターの『▼』のボタンを押す。
ふと、思った。
高森は一体何の用があってエレベーターに乗っていたのだろう。
結局その答えは分からないまま、夕食の支度が始まりそうな時間になった。
ふと、思った。
高森は一体何の用があってエレベーターに乗っていたのだろう。
結局その答えは分からないまま、夕食の支度が始まりそうな時間になった。
>>63からの犯人視点?は実は善子が殺されてるとか......? どうだろ
>>1がしねばいいのに
────17時頃、食堂のキッチン。
曜「なんで二人が殺されなきゃいけないんだろう」
梨子「分からないよ、そんなの」
スープの煮える大鍋をかき混ぜながら、曜が尋ねる。
結局、夕食は私と曜の二人で作ることになった。
食堂には今しがた果南とルビィが現れ、席で待機している。
千歌と高森もいずれ来るだろう。
曜「なんで二人が殺されなきゃいけないんだろう」
梨子「分からないよ、そんなの」
スープの煮える大鍋をかき混ぜながら、曜が尋ねる。
結局、夕食は私と曜の二人で作ることになった。
食堂には今しがた果南とルビィが現れ、席で待機している。
千歌と高森もいずれ来るだろう。
曜「そうだよね……。私にも理由は分からないし、しばらく東京にいた梨子ちゃんなら尚更、だよね」
梨子「うん……」
梨子「(5年も経てば人は変わる、か……)」
果南や高森の言葉が胸に刺さる。
一度殺されて、更に首を切断される。どんな恨みを買えばそうなるのだろう。
梨子「うん……」
梨子「(5年も経てば人は変わる、か……)」
果南や高森の言葉が胸に刺さる。
一度殺されて、更に首を切断される。どんな恨みを買えばそうなるのだろう。
曜「そういえば、水泳辞めた理由、梨子ちゃんには教えてなかったよね」
梨子「……うん」
曜「……本当はさ、水泳続けたかった。でもパパが身体壊しちゃって」
曜「ほら、私、パパと二人で暮らしてるから……」
曜「悔しかった。けど、私が仕事をしないと生活が出来ない。だから夢を諦めた」
曜「でも鞠莉ちゃんも花丸ちゃんは、これからって時じゃない……」
梨子「……うん」
曜「……本当はさ、水泳続けたかった。でもパパが身体壊しちゃって」
曜「ほら、私、パパと二人で暮らしてるから……」
曜「悔しかった。けど、私が仕事をしないと生活が出来ない。だから夢を諦めた」
曜「でも鞠莉ちゃんも花丸ちゃんは、これからって時じゃない……」
梨子「曜ちゃん……」
ギリ、と奥歯を噛みしめる音がこちらの耳にまで届く。
大企業の社長と小説家志望。二人とも、確かな未来や夢があったのに、殺された。
……水泳選手を諦めた曜にとっては、それがかなり堪えたのだろう。
私はまたしても、返す言葉を失っていた。
ギリ、と奥歯を噛みしめる音がこちらの耳にまで届く。
大企業の社長と小説家志望。二人とも、確かな未来や夢があったのに、殺された。
……水泳選手を諦めた曜にとっては、それがかなり堪えたのだろう。
私はまたしても、返す言葉を失っていた。
梨子「……痛っ」
不意に、左手に軽い痛みが走った。
曜「大丈夫!?」
梨子「うん、大丈夫……」
手元が狂って、包丁で指を切ったらしい。
恐らくまだ新品であろう真っ白なまな板に、じわりじわりと赤い染みが広がってゆく。
怪我人に仕事をさせるワケにはいかないと待機する側へと移され、残りの工程は全て曜に任せる形になった。
不意に、左手に軽い痛みが走った。
曜「大丈夫!?」
梨子「うん、大丈夫……」
手元が狂って、包丁で指を切ったらしい。
恐らくまだ新品であろう真っ白なまな板に、じわりじわりと赤い染みが広がってゆく。
怪我人に仕事をさせるワケにはいかないと待機する側へと移され、残りの工程は全て曜に任せる形になった。
食堂にいたのは、まだ果南とルビィの二人だけ。
二人とも表情は暗い。今でこそ化粧で隠しているが、ここに来る前はルビィの顔には泣き腫らした跡があったという。
指から血を流していることを心配されたが、包丁で少し切ってしまっただけだと宥めた。
……けれども、しばらくはピアノ演奏に支障が出るかも知れない。
二人とも表情は暗い。今でこそ化粧で隠しているが、ここに来る前はルビィの顔には泣き腫らした跡があったという。
指から血を流していることを心配されたが、包丁で少し切ってしまっただけだと宥めた。
……けれども、しばらくはピアノ演奏に支障が出るかも知れない。
ルビィが絆創膏を持っているらしいので、私は二人で彼女の部屋へ向かうことにした。
千歌「やっほ。二人揃ってどうしたの?」
道中、千歌とすれ違い、怪我のことなどを簡潔に説明した。
千歌「そっか、お大事に」
やはり彼女の態度はそっけない。何かを隠しているのか、それとも。
千歌「やっほ。二人揃ってどうしたの?」
道中、千歌とすれ違い、怪我のことなどを簡潔に説明した。
千歌「そっか、お大事に」
やはり彼女の態度はそっけない。何かを隠しているのか、それとも。
エレベーターに乗り、3のボタンを押す。
彼女は終始無言を貫き、気まずさだけが場に残っていた。
チン、とベルの音が鳴り、扉が開く。
梨子「────え?」
私は、私たちは、目の前にある“それ”に理解が追い付かなかった。
彼女は終始無言を貫き、気まずさだけが場に残っていた。
チン、とベルの音が鳴り、扉が開く。
梨子「────え?」
私は、私たちは、目の前にある“それ”に理解が追い付かなかった。
人だ。
倒れている人。
これは誰? 高森だ。
なんで倒れてるの? 背中から包丁が生えてる。
死んでるの? 息は──ない。
倒れている人。
これは誰? 高森だ。
なんで倒れてるの? 背中から包丁が生えてる。
死んでるの? 息は──ない。
ルビィ「ひっ……」
直後、耳を劈くような甲高い悲鳴が3階に響き渡る。
高森が殺された。惨劇はまたしても繰り返されたのだ。
直後、耳を劈くような甲高い悲鳴が3階に響き渡る。
高森が殺された。惨劇はまたしても繰り返されたのだ。
────食堂。
梨子「……」
気まずい食事はこれで二度目だ。
私は、視線を合わせないように気を付けつつ、全員の表情をうかがう。
千歌も、曜も、ルビィも、果南も。表に出しているかは個人差こそあれど、誰もが3人の死を悲しんでいるように見えた。
だがきっと、この中に芝居を打っている人物がいるのだ。
……我ながら、仲間を疑うことしか出来ない自分が嫌になる。
梨子「……」
気まずい食事はこれで二度目だ。
私は、視線を合わせないように気を付けつつ、全員の表情をうかがう。
千歌も、曜も、ルビィも、果南も。表に出しているかは個人差こそあれど、誰もが3人の死を悲しんでいるように見えた。
だがきっと、この中に芝居を打っている人物がいるのだ。
……我ながら、仲間を疑うことしか出来ない自分が嫌になる。
千歌「…………」ズズーッ
果南「ちょっと千歌、行儀悪いよ」
目立つ音を立ててスープを啜る千歌を窘める果南を横目に、思考を更に進める。
犯人はこの中にいる。いつしかそれは、確信へと変わっていた。
しかし、鞠莉と花丸だけならまだしも、今日久しぶりに再会したばかりの高森を殺す動機などあるだろうか。
何より、彼女だけは首を斬られておらず、刺殺されただけ。
果南「ちょっと千歌、行儀悪いよ」
目立つ音を立ててスープを啜る千歌を窘める果南を横目に、思考を更に進める。
犯人はこの中にいる。いつしかそれは、確信へと変わっていた。
しかし、鞠莉と花丸だけならまだしも、今日久しぶりに再会したばかりの高森を殺す動機などあるだろうか。
何より、彼女だけは首を斬られておらず、刺殺されただけ。
梨子「……」
私の脳内に、一つの仮説が浮上する。
マスターキーを取りに行く時に、高森とエレベーターで鉢合わせした時。
もしあの時点で彼女がこの事件に関する“何か”を掴み、それを調べる過程、或いは調べがついた後だったとしたら。
犯人によって、口封じをされた。
先の手間の凝った2件と違い、高森殺しは至ってシンプルだ。
あながち間違っていない……のかもしれない。
私の脳内に、一つの仮説が浮上する。
マスターキーを取りに行く時に、高森とエレベーターで鉢合わせした時。
もしあの時点で彼女がこの事件に関する“何か”を掴み、それを調べる過程、或いは調べがついた後だったとしたら。
犯人によって、口封じをされた。
先の手間の凝った2件と違い、高森殺しは至ってシンプルだ。
あながち間違っていない……のかもしれない。
だが仮にそうだとして、彼女は一体何を掴んだのだろう。
そして遺体の見つかった場所のことを考えると、ある明確な『壁』が生まれる。
遺体があったのは3階、エレベーターを降りてすぐ。
果南とルビィは共に3階の部屋、まして途中まで2人一緒の部屋に居たのだ。
ルビィは一度泣き腫らしの跡を隠すために自室に戻ったらしいが、どのみちエレベーターを使えば遺体があることに気付く筈だ。
勿論、果南とルビィが共犯の可能性や、2人して非常階段を使った可能性もないとは言い切れない。
そして遺体の見つかった場所のことを考えると、ある明確な『壁』が生まれる。
遺体があったのは3階、エレベーターを降りてすぐ。
果南とルビィは共に3階の部屋、まして途中まで2人一緒の部屋に居たのだ。
ルビィは一度泣き腫らしの跡を隠すために自室に戻ったらしいが、どのみちエレベーターを使えば遺体があることに気付く筈だ。
勿論、果南とルビィが共犯の可能性や、2人して非常階段を使った可能性もないとは言い切れない。
次に曜。彼女は私と一緒に夕食を作っていたという明確なアリバイがある。
私と行動する前に既に高森を殺し終えていた、というのならこの前提は崩れる。
しかし、これまた果南とルビィに遺体があることを騒がれてしまう可能性が大いにあるのだ。
と、なれば。
私と行動する前に既に高森を殺し終えていた、というのならこの前提は崩れる。
しかし、これまた果南とルビィに遺体があることを騒がれてしまう可能性が大いにあるのだ。
と、なれば。
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