元スレ男「余命1年?」女「……」
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151 = 1 :
男「ふあーあ……よく寝た」
女「ホント、ぐっすりでしたね。私が起こさなかったら、危ない所でしたよ」
男「いやいや、流石にスタッフさんが起こしてくれるでしょ」
女「もう、そこは素直にありがとうって言ったらどうなんです?」
男「そうだね……うん、ありがとう」
女「いーえ、どーいたしまして!」
男(ホント……眩しいくらいの笑顔だ)
女「……じゃあ、ここでお別れですね」
男「え、いいの? まだ公園だよ?」
女「いいんですよ。まだこんなに明るいですし」
男「……そっか。それじゃあ、また」
152 = 1 :
女「男さん」
男「……ん? なんだい?」
女「あの……ありがとうございました。本当に、楽しかったです」
男「えっ……何だよ、改まって」
女「今回は……いいえ、今回だけじゃない」
女「私、男さんと出会ってから……楽しくて仕方が無いんです」
男「……俺と出会ってからって……担当についてからってこと?」
女「はい。……私、それまで、何をしても楽しくなかったんです」
153 = 1 :
女「お父さんといても、友達といても、テレビを見ていても、何をしても」
女「心の底から、楽しいって思える瞬間なんて……多分、一度だってなかった」
女「それなのに……あなたと出会ってから、私の人生は変わったんです」
女「あなたと話していると……あなたと一緒に歩いていると……色んなものが、輝いて見えた。美しく見えた」
女「初めてなんです……こんな気持ち」
男「……女……さん」
女「私……知ってるんです。この感情が、どういうものなのか」
154 = 1 :
女「こんな……みんなと違って、生まれつきのハンデを背負っている私は、きっと人生を楽しむ資格なんか無いんだって、そう思ってました」
女「でも、そんな私が変われたのは、全部……あなたのおかげなんです」
男「……そっか、良かったよ」
女「男さん……」
男(その時の、女さんの顔は……多分、俺は一生忘れられないんだと思う)
女「男さん……大好きです。あなたの事が、この世で、一番……好きです」
155 = 1 :
ここで一旦区切りますが、まだ続きます。気長にお待ちくださると幸いです。
156 :
告白きたあああああああああああああああ
157 = 156 :
気長に待ちますよ!
158 :
乙
間黒男でも比良坂竜二でも大門未知子でも相良浩介でも誰でもいいから女さん治してやってくれや。
159 = 1 :
申し訳ないです、>>147と>>148の間に入れ忘れました。↓に上げておきます。
160 = 1 :
女「男さん男さん! これ、タコライスの素ですって!」
男「……ごめん、流石にそれはもう要らない」
女「えー、つれないなあ」
男「逆に聞くけど、昨日の今日で、どうして、また食べようと思えるの?」
男「君の辞書には、飽きるっていう単語はないわけ?」
女「えー! 飽きちゃったんですか!? あんなにおいしかったのに!」
男「いや……それは否定しないけど」
161 :
キンタコ懐かしいぜ
162 :
ラストまで頼むぞ
163 :
女さんの恋愛遍歴きになる
164 :
男「す……好きって……」
女「男さん」
男「はっ……はい」
女「返事は……まだ要らないです。きっと、男さんにも色々と考えるところがあるでしょうから……」
男「えっと……その……」
女「ですから……単純に、今の気持ちを伝えたかった。ただそれだけなんです……迷惑でしたか?」
男「めっ……迷惑だなんて……とんでもないよ」
165 = 1 :
女「本当ですか……よかったあ」
男(女さん……今まで、見た事の無い表情だ)
男(顔は少し赤らんでるけど……落ち着いてるっていうか、今の気持ちを味わっている途中というか)
女「……それでは、今日はこれで失礼します」
男「うん……気を付けてね」
女「もう、気を付けるも何も、家はすぐそこですよう」
男「……!」ドキッ
男(だめだ……彼女の一言一行に、心が……揺れる)
男「ま……またね、女さん」
女「はい……また、明日」
166 = 1 :
男「はあー……」
男(結局、何も言わないまま帰ってきてしまった)
男「俺……告白されたのか?」
男(まさか……モテ期なんて、生涯一度も来なかった俺だけど)
男(女さんは、本当に俺を好きになってくれたんだろうか)
男(俺みたいな……冴えない男を?)
男(何かの夢じゃないのか……)
男(嬉しい半分……困惑もあって、素直に喜べないや)
167 = 1 :
男(……会いたい、な)
男(って、さっき別れたばかりなのに、気持ち悪すぎだろ)
男(そういえば、また明日って言ってたか?)
男(もしかして、また編集部に来てくれるんだろうか)
男(……早く、明日にならないかな)
168 = 1 :
女「男さん、よろしくお願いしますね!」
男「君……いくら何でも、早すぎない?」
男(結局、今日も編集部まで来てくれたけど)
男「まさか……一日足らずで、一冊分書いちゃったわけ?」
女「いえ、構想は大体練ってありました」
女「昨日全て書いたのは……その、できるだけ早く……あの時の気持ちを文字に書きおこしたかったので」
男(つまり……一日で書いたんじゃねーかよ)
169 = 1 :
男(ありえねえ……ホント、とんでもない逸材だ)
男「えっと……それじゃあ、読んでもいいかな?」
女「はい! 喜んで!」
男(あれ? 今日は恥ずかしがらないな)
男(前みたいに、俺たちをモデルにした物語じゃないってこと?)
男(……! これ……)
男(引き込まれる……!)
170 = 1 :
男(一文一文に、思いが込められてて)
男(読み進める度に、主人公に気持ちが入り込む!)
男「すごい……な」
男(全身の毛が逆立つような感覚)
男(二番煎じで溢れているなかで……ここまでの作品を書いてくるなんて)
171 = 1 :
男「……女さん」
女「はい……何でしょう」
男「これ、主人公が男だけど」
女「……はい」
男「……女性が書いたとはまるで思えない。ミステリーとしては、かなりの出来だよ」
女「ほっ……本当ですか!?」
男(読み進めた感じ、前回のようなバッドエンドのフラグはどこにも立っていない。きっと最高の結末を迎えるんだろう)
172 = 1 :
女「良かった……本当に良かったです。実は、ミステリーを書いたのは初めてで……ちょっと不安でした」
男(ジャンルに限った処女作か……それでも、十分だよ)
男「ああ、きっと、今回も通るさ。それで……」
女「……ええ、勿論です」
女「今回は……出版するために書きました!」
男「ああ……ああ! 絶対通して見せるさ!」
女「私達、二人の夢ですからね! お願いしますよ、男さん!」
173 = 1 :
男(二人の……そうだった)
男(ホント……今更ながら、改めて考えると恥ずかしいな)
女「フフッ……えへへ。私達の……夢、かあ……」
男「おいおい……まだ決まったわけじゃないんだからさ」
女「はっ、はい……そうでした。浮かれるのはまだ早かったです!」
男「うん、よろしい。それじゃあ、今日もくつろいで……」
女「いえ、今日はここで帰らせていただきます」
174 = 1 :
男「え……何か、用事でもあるの?」
女「あ、いえいえ、そういうわけじゃないんですけど……まだ、書き足りないんです」
男「もしかして、まだ書きたいネタがあるってこと?」
女「はい! そういう事です!」
男(そっか……女さん、すっかり作家病にかかっちゃったんだな)
男「別に、空いてるパソコンとかあるから、それ使ってくれてもいいんだけど」
女「え……でも……えっと、ここだと……ちょっと」
175 = 1 :
男「ああ、そりゃあそうだよね。慣れない場所より、親しんだ場所の方が落ち着くよね」
女「いえ、違うんです。その……」
男「ん?」
女「ここは……男さんがいるから、ちょっと……集中できないっていうか。ここにいると、男さんにばかり気がいってしまいます」
男「え……そ、そっか。それじゃ……駄目だよね」
男(なんだよこの羞恥プレイ……!)
女「そっ、それでは……失礼します!」
男「あ、うん……気を付けてね」
男(行ってしまった……)
176 = 1 :
編集長「お前、何編集部でイチャイチャしてるんだ?」
男「もっ……申し訳ありません!」
編集長「ったく……見せつけやがって。うちなんか、最近カミさんとうまくいってねえってのに……」
男「あ……そうなんですか。あの、本当に申し訳ありません」
編集長「……いいよ、駄目とは言ってないさ。それよりも、原稿受け取ったんだろう?」
177 = 1 :
男「あっ、はい! 素晴らしいです、文句のつけようのない作品でした!」
編集長「そうか……なら、出版は確実だな」
男「はいっ……ありがとうございます」
編集長「こっちの方で確認をとる。決まり次第、男に連絡するよ」
男「はい! どうか、よろしくお願いします!」
178 = 1 :
男「……は? 今……何と、おっしゃいました?」
男(昨日の時点では、事がうまく運びそうだったのに)
男(何で……何で! こうなっちまうんだよ!)
編集長「だから、おめでとうって言ったんだ。来年の4月に出版が決まったぞ。良かったな」
179 = 1 :
男「来年って……どうしてそんなに遅いんですか!?」
編集長「男……何を驚いてる? 今に始まった事ではないだろう?」
男「そう……ですけど。どうして! よりにもよって、女さんなんですか!」
編集長「……男。それは、仕方のない事だ。出版枠が、そこまで全て埋まってしまっているからな」
編集長「それに、まさか女さんの作品を、受賞作品と同じ枠で出版するわけにもいかない。こればっかりは契約の問題で……どうしようもないことなんだ」
180 = 1 :
男「そんな……」
男(そんなことって……あんのかよ)
男(だって、来年の4月って……)
男(その時には……女さんは、もう……)
181 = 1 :
中途半端で申し訳ないですが、今日はここまでです。
ほとんど即興で、その場のノリで書いてますので、所々チグハグだったり伏線を拾ってなかったりするかもしれません。ご了承ください。
182 :
気になるところで終わらせやがって!ちくしょう!最後まで待ってるぞ!
183 :
男(女さんに、伝えるべきなんだろうか)
男(出版が、来年の4月になってしまったと)
男(俺達の夢が……叶わないかもしれない、と)
男(……伝えて、どうするんだ?)
男(伝えたところで、ただ悪戯に彼女を悲しませるだけじゃないのか?)
男(だが、隠したところで……いずれ知られてしまうに違いない)
男(いつまでも自分の本が出版されないことを、疑問に感じる日が来るだろうから)
男(わからない……どうするのが正解なのか)
男(俺には……わからない)
184 = 1 :
男(さて……毎度の事ながら、女さんと公園で待ち合わせしたんだけど)
女「……あっ、男さん!」
男「女さん……ごめん、遅くなった」
男(こっちに、ブンブン手を振ってる)
男(……可愛いな)
男(あの後、散々迷った挙句……女さんに話す事にした)
男(……真実を話すべきか、嘘を吐くべきか)
男(まだ……決めあぐねているのだけれど)
女「もうっ、男さんったら」
女「私、結構待ってたんですよ?」
男「うん、その……ごめんね、色々と立て込んじゃって」
男(ただ、俺が迷っていただけなんだけどね)
185 = 1 :
女「……ともあれ」
女「初めてですね!」
男「え? 初めてって……何が?」
女「私が、待つ側になった事です!」
男「待つ……ああ、そういうこと」
女「……はい。いつも私が、男さんを待たせてしまっていたので」
女「でも今回は、私が待ってましたよ!」
男(何だよ……その期待の眼差しは)
男(まるで、褒めて褒めてー……って、子犬が尻尾振ってるみたいだ)
186 = 1 :
男「……ああ、偉い偉い」ナデナデ
女「ふええっ!」
女「なっ……何してるんですか!?」
男「え、何って……ご褒美に頭撫でただけだろ?」
女「だけってなんですか! どうしていきなり……そんなこと……」
男「ごっ、ごめん! 嫌だった?」
男(しまった……流石に軽率すぎた……か?)
女「……男さん、女の子に対して、いつもそんな感じなんですか?」
男「まさか。女性の頭を撫でたのなんて、これが初めてだよ」
男(まあ、前に抱き着かれてるしな……酒入ってたけど)
男(頭なでなでくらい、今更……ねえ?)
187 = 1 :
女「へ……へえー、そうなんですか……」
女「ふーん……そっか……えへへ」
男「な……なんだよ、気味悪いな」
女「いーえ、何でもないです」
女「……別に、もっと撫でてくれてもいいんですよ?」
男「なっ……」
男(このタイミングで……上目遣いだと!)
男(く……断れるわけねえ)
男「……し、仕方ないなあ」
男「……これでいいかい?」ナデナデ
女「……!」
女「えへへ……ウフフ……////」
男(何だよ……だらしなく破顔させちゃって)
男(ホント……あざといんだっつーの)
188 = 1 :
女「……もう、いいですよ」
女「これ以上されると……ちょっと、ダメです」
男「え……ああ、分かったよ」
男「えーっと……それで……」
女「ふぅ……では、本題をよろしくお願いします!」
男「あ、ああ……そうだね」
男(本当のことを……話すべきなんだろうか?)
男(それとも……誤魔化すべきなんだろうか?)
男(何も、誤魔化しきれないわけではない)
男(出版が延期になりましたと言えば……その時は、多少は落ち込むだろうけど)
男(今この瞬間だけは……彼女を喜びに浸らせることができるんだ)
男(ただ、考えようによっては、それは残酷な事なのかもしれない)
男(要は、女さんを騙すってことだから)
男(……でも……でもさ)
男(出版されるのは、自分の死後になるかもしれないなんて)
男(そんな事実を突きつけられる方が……よっぽど残酷じゃないか!)
189 = 1 :
男「女さん……あの……ね」
女「男さん? どうしたんです?」
女「どうして……泣いているんですか?」
男「……え? 泣いてる……俺が?」
男(ああ……どうして)
男(頬を伝った、この一筋の雫の理由は……)
女「男さん……もしかして」
女「私の本の事で……何か、あったんですか?」
男「女さん……俺……俺……」
男「ごめん……ごめんね」
男「君が生きている間に……出版は、難しいかもしれない」
190 = 1 :
女「……!」
女「そう……でしたか」
男「ごめん……俺、何もできなかった……!」
女「……どうして、男さんが謝るんです?」
男「どうしてって……」
女「男さんは、何も悪いことなんてありません」
女「だって……仕方のない事、なんですよね?」
男「……女さん」
女「……それに」
女「出版は、決まったんですよね?」
男「……うん、決まったよ」
男「来年の、四月に」
女「来年……四月……そうですか」
女「……うん。大丈夫」
女「思ったほど、悲しくありません」
男(女さん……どうして、そんな笑顔を浮かべられるんだよ?)
191 = 1 :
男(……この笑顔)
男(いつかの、取ってつけたような、仮面の笑顔じゃない)
男(気持ちを押し殺して……それでも、必死に笑おうとしている)
男(俺に……責任を感じさせないために)
男(おい……俺)
男(まだ、あるんじゃないのか?)
男(女さんのために、やれることが……まだ、残ってるんじゃないのか?)
男「……女さん」
女「はい……?」
男「俺……できるだけの事、してみるから」
女「男さん……」
男「だからね……まだ、諦めないで」
女「……はい」
女「ありがとうございます!」
男(ああ……そうだよ)
男(俺は、彼女のこんな笑顔が見たいんだ)
男(まるで、太陽のように俺を照らしてくれる)
男(眩しい……笑顔をさ)
192 = 1 :
ここまで。夜にまた更新します
193 :
切ない
194 :
編集長「おい、男……何してるんだ?」
男「見ての通りです……」
男「お願いしますっ! どうか……どうか……」
男「女さんの本の出版次期を速めては頂けないでしょうか!?」
編集長「……あのなあ」
編集長「頭上げろ……」
編集長「男が、そう簡単に頭を下げるもんじゃない」
男「だからこそです!」
男「この件だけは……どうか、了承しては頂けないでしょうか!?」
編集長「前にも言っただろう」
編集長「出版は来年の4月。契約の関係で、動かすことはできない」
男「……っ!」
男「編集長っ!」
編集長「……なんだ」
男「彼女は……女さんは……あと1年、持つかどうか分からないんです」
男「そんな彼女に……華を持たせてやりたい」
男「だから……この通りです」
男「お願いします……全責任は俺が負います! だから……」
男「女さんの出版枠を……確保しては頂けないでしょうか」
195 = 1 :
編集長「……なあ、男」
編集長「お前の言いたいことはよくわかる」
編集長「だがな……お前も、3年も勤めたんだ。知らないわけではないだろう」
編集長「この業界は……売り上げが命なんだ」
編集長「既に枠が決まっている作品は、ほぼ確実に売れると予想される作品だ」
編集長「だが、女さんはどうだ」
編集長「これが……初めての作品だろう」
編集長「面白いのは認める……が」
編集長「何か賞を取ったわけでもない、前作も無い」
編集長「まさか、彼女の身上を表に出すわけにもいかない」
編集長「こればっかりは……どうしようもないんだ」
編集長「一個人の事情で、そう易々と変えていいものじゃない」
男「そんな……」
男(突きつけられた現実は……余りにも残酷だった)
196 = 1 :
男(……もう外は大分暗くなってるのに……あんまり肌寒くない)
男(ちょっと前は、夜になると、上着を着ないと耐えられなかったのにな)
男(女さんと初めて出会った春の季節が過ぎて……夏が、来ようとしている)
男(この世界は無常で……そして、無情だ)
女「……あっ、いた」
女「探しましたよー、男さん」
男「ああ、女さん。こんばんは」
女「こんばんは。……どうしたんですか? こんな夜更けに呼び出して」
男「うん、ごめんね。身体に悪いかなって思ったんだけど」
男「どうしても、相談したいことがあったんだ」
女「どうしても……相談したいこと……ですか?」
女「それって……その、もしかして……////」
男「そう……君と俺の未来に関わる、重要な話」
女「は……はい」
男「あのさ……」
197 = 1 :
男「出版社を、変えないか?」
女「はっ、はい! 私は全然…………え?」
女「出版社を……変える?」
男「ああ、そうだ」
男「正直に言って……ウチの会社で出版次期を早めるのは、とても難しいことなんだ」
男「だったら、他の出版社に持って行った方が、早く出版するには一番可能性が高いんだよ」
女「あの……その……」
男「なに、心配することは無いよ。女さんのあの小説は、完成度はかなりのものだ」
女「男……さん?」
男「なんなら、俺もついて行くよ。君だって、本屋さんに並ぶ様子を自分の目で見たいだろう?」
男「だからさ……明日にでも……」
198 = 1 :
女「待ってください!」
女「え……出版社を変えるって……どういうことですか?」
男「そのままの意味だよ」
男「今のままだと、女さんの本を出版するのは、随分と遠い日になってしまう」
男「だから、もっと早く出版するために出版社を変えてしまうのさ」
男「どう? いい案だと思わない?」
女「そんな……だって、そんなことしたら、男さんが……」
男「え……俺? ……そんなのどうだっていいんだよ」
男「とにかく、今一番大切なのは、女さんの小説をできるだけ早く出版する事だろ?」
男「……あ、もしかして、出版社に持ち込みに行くのは怖いかな?」
男「まあ、一見さんお断りの所も無いわけじゃないけど……大丈夫、俺が直接話をつけて……」
女「男さんっ!」
男「……っ!」
男(なんだ……今の)
男(女さんの声……だったのか?)
男(女さんが、こんな大きな声で叫ぶなんて……初めてじゃないか?)
男「女……さん? どうしたんだよ、そんなに大きな声なんか出して」
男「ここ、公園だし……近所に響いちゃったんじゃ……」
199 = 1 :
女「男さん……」
女「私……男さんにそんなことがしてほしくて、あんなことを言ったんじゃありません」
男「あんなこと……?」
女「夢……ですよ」
女「初めて出会った時に、約束したじゃないですか」
男「あ……」
男『必ず出版しましょう! 私も、全力でサポートさせていただきます!』
女『……それなら、これは私とあなたの夢ですね』
男『え、俺……じゃない、私もですか?』
女『フフッ、俺でいいですよ、変に気を遣わないでください。……だって、仮に本を出版できた時、あなたが一番喜びそうだから』
男『……分かりました。では、これは俺とあなたの夢です。必ず……必ず、2人で叶えましょう!』
女「二人で、協力し合って、必ず出版しようって……そう言ったじゃないですか」
男「でも……さ」
男「現に……夢が叶わないかもしれないじゃないか!」
女「夢なら、叶いますよ」
男「……え?」
女「私、一言も言ってませんよ?」
女「生きている間に出版したいなんて……一言も言ってません」
200 = 1 :
男「そんな……そんな!」
男「女さん……見たくないの!?」
男「自分の本が出版される瞬間に……立ち合いたくないって、それ、本気で言ってる……?」
女「……はい。本気ですよ」
男「そんな……なんで……」
女「……今の私には、もっと大切な夢があるんです」
男(もっと……大切な夢?)
女「ええ……とっても、素敵な夢です」
女「それはね、男さん」
女「私は、自分の命が尽きる、最後の瞬間まで……」
女「大切な人と……一緒に過ごしたいんです」
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