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    元スレ男「余命1年?」女「……」

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    51 :


    「ふー……」

    (早めに仕事切り上げて、編集長のいう通り女さんから話を聞こうと思ったけど……)

    (6時過ぎてんのに、まだ公園にちびっ子が数人残ってやがる)

    (……げっ、こっちきやがった)

    ちびっ子A「ねーねー、おじさん」

    「おっ、おじ……何かな、ボク?」

    (いかんいかん、こんな子供にイライラしてたらみっともないぞ)

    52 = 1 :

    ちびっ子A「おじさんは、ニートなの?」

    「……何だって?」

    ちびっ子B「ぼくのママが言ってたの。幼稚園の日に、公園のベンチに座っている男の人はニートだから、話しかけちゃだめだよって」

    (小さい子に何教えてんだ母親……!)

    (つーか、思いっきり話しかけてんじゃねえかよ!)

    「ボ、ボク? おじさんはね、ニートじゃないんだよ」

    53 = 1 :


    ちびっ子A「なら、おじさんは誰? 暇なの?」

    ちびっ子B「ぼくのママがね。暇そうにしてる男の人はロクデナシだから、話しかけちゃだめだよって言ってたの」

    (おかあさああああん! あんまり変な事教えないでえええええ!)

    「あ、あのなあ……」

    「フフッ……何してるんですか、男さん?」

    「や……やっと来てくれた」

    ちびっ子A「お姉さん、だあれ?」

    (女さんはお姉さんなのかよ。俺、一応まだ25だぞ?)

    54 = 1 :


    「私はねー……えっと、そういえばもう学生じゃなかった」

    「こっ、この人を待ってたんだよ、おじさん。だからここにいたの。彼女は、おじさんの知り合いだよ!」

    ちびっ子A「しりあいー?」

    (あー、まだ分かんねえか。幼稚園児だもんな)

    55 = 1 :


    ちびっ子B「おじさんとお姉さんは、ふーふなの?」

    「ブッ――」

    (その可能性を考えてなかった!)

    ちびっ子B「あのね、ボクの……むぐっ」

    「うんわかったわかった、それ以上言わなくていいぞー」

    「男さん、口を押えちゃ可哀そうですよ」

    「え、ああ……ごめんな」

    ちびっ子B「んーん、楽しかった」

    「そうかよ……」

    56 = 1 :


    ちびっ子A「あのね、ボクのおともだちのお母さんがね。
     男の人と女の人が一緒にいたら、その二人はふーふだから、話しかけちゃダメなんだって言ってたの」

    (そっちかーい!)

    「夫婦……////」

    「あはっ……あははは」

    (もうどうにでもなれ……)

    57 = 1 :


    (マセガキの戯言に過ぎない……とは分かっているが、予想外にでかい爆弾だったな)

    「あのー……さっきのは、あんまり気にしないでね?」

    「え? ああ、あの子供達の話ですよね。気にしてませんから、安心してください」

    「そう、なら良かった。……それで、本題なんだけど」

    「は、はい……その、どうでしたか?」

    「結論を言えば、通ったよ」

    「ほ……本当ですか? ……やったあ! 嬉しいです!」

    (おいおい、ガッツポーズなんかしちゃってまあ……)

    58 = 1 :


    「でも……編集長から、どうしても君に聞いておきたいことがあるって、言伝を預かってきた」

    「言伝……ですか」

    「君は、あの原稿を……本当に作品として売るつもりで書いたのか」

    「……」

    (編集長は、そう聞けば彼女の本心が分かると言っていたけど……未だにそれがどういう意味なのかわからない)

    「そう……ですか」

    「編集長の言い方だと、どうやら後は、君が了承するだけで出版できるみたいなんだ」

    (普通なら、了承するに決まってる)

    (だって、自分の書いた原稿が、本として世の中に出るんだぞ。そんなに嬉しい話があるか?)

    (こんなの、断るわけが……)

    59 = 1 :


    「……ごめんなさい」

    「……え?」

    「この話……無かったことにしてください」

    60 = 1 :


    「なんで……どうして!?」

    「ごめんなさい……ごめんなさい」

    「いや、謝って欲しいんじゃない! どうして、こんな旨い話を断るんだ!?」

    「それは……」

    「まさか……売りに出すつもりで書いたんじゃないって、そういうことなの?」

    「……」

    (無言……肯定なのかよ)

    61 = 1 :


    「どうして? だって、夢だったじゃん! 二人で協力して、君の本を出版しようって。君も、そう望んでたんじゃ……」

    「確かに……私の本をみんなに読んでもらえたら、それほど嬉しいことはないです」

    「だったら……!」

    「……でも」

    (女さん、顔……酷い顔だ。今にも泣きそうな)

    (でも……綺麗な顔だ)

    62 = 1 :


    「この本は、あなたに……男さんに読んでもらうために書いたんです」

    「え……だって、この原稿は絶対に通したいって……そう言ってたじゃないか」

    「そうです。この原稿が通れば、男さんに、面白いって認められたことになりますから!」

    「認められるって……確かに、面白かったけどさ……」

    (分からない……分かんねえよ。何を言ってるんだ)

    「つまり……あの原稿は、売りに出したくないって……そういうこと?」

    「……はい」

    63 = 1 :


    「……分かった。そう……編集長に伝えておくよ」

    「あの……」

    「……なに?」

    「また……書きますから。だから……えっと」

    「……はあ。分かってるよ。また、取りに来るさ」

    「……! ありがとうございます!」

    (メッチャ嬉しそうな顔。これで……良かったのかな、本当に)

    64 = 1 :

    とりあえずここまで。パクッてつなぎ合わせたってのは否定できない。

    65 :

    面白いならいんだよ、こまけえこたあ(松田鏡二

    66 = 36 :

    おもしろいから問題ない

    67 = 1 :


    (一度は、払拭しかけていた彼女の第一印象だったけど)

    (これで、また振り出しだ)

    (彼女は……この世に自分の生きた証を残したいと、本気で思っているのだろうか)

    (本当に……この世に未練なんて、ないのだろうか)

    68 = 1 :


    (本当に……この世に未練なんて、ないのだろうか)

    編集長「なるほど……大体予想通りだ」

    「どうして……彼女は、出版を断ったんでしょう。私には……まるで理解できません」

    編集長「なるほど。まあ、お前の言う事も分かる。どっちが正しいかと言われれば、世間一般ではお前だろうな」

    「だって、そんなの当たり前ですよ。自分の書いた本を、たくさんの人に読んでもらえるんです。
     自分の書いた本を、たくさんの人の手に取ってもらえるんです。そんなに嬉しい事が……他にありますか?」

    69 = 1 :


    編集長「男は、小説の応募経験があるんだったな」

    「……? はい、そうです。どれも、選考落ちでしたけど」

    編集長「それなら……彼女の感情が、お前に理解できないのも仕方のないことだ」

    「女さんの……感情……」

    編集長「男。作家が……人が、物書きをしたいと思う時は、一体どんな時だと思う?」

    「物書きを……? そんなの、本を出したい時に決まってるじゃないですか。誰かに読んでもらいたいからです」

    編集長「まあ、そうだな。それもある。だが……その根本にあるものは、一体何だと思う?」

    70 = 1 :


    「根本に……あるもの?」

    (人が文章を書く時なんて……自分を表現したいだとか、それで食っていくためだとか、そんな時じゃないのか?)

    編集長「……分からないか。それなら、答え合わせだ」

    編集長「人が物書きをする理由はな……誰かに、自分を認めて欲しいからだよ」

    「誰かに……認めて欲しいから?」

    編集長「そうだ。世の中に自分の存在を認知されたい。もっと有名になりたい。自分の文章力を評価してほしい」

    「それが……根底にあるってことですか」

    71 = 1 :


    編集長「男もそうだろう。小説を投稿した時、そんな風に思ったことは無かったか?」

    「それは……」

    (小説を書かなくなってから、随分時間が経っている。
     あの時の自分が、一体何を考えていたのか。はっきりと思い出すことはできない)

    (ただ……少なからず、そんな気持ちがあったのだろう)

    (小説を投稿する理由は、作家になりたいから。たったそれだけでいい)

    72 = 1 :


    「でも……だったら、なおさら彼女が断る理由なんて」

    編集長「女さんは、他に何か言ってなかったか?」

    「他に……?」

    『この本は、あなたに……男さんに読んでもらうために書いたんです』

    「確かに……言ってました。あの原稿は……」

    編集長「なら、それが彼女の本心だ。彼女は、そのために書いたのさ。
     ただ……その対象が、今回は少し狭かった。ただそれだけの事だ」

    (本当に……俺のために?)

    (ただそれだけのために……あの原稿を?)

    73 :


    (原稿……もう一回読んでみようかな)

    (……主人公が、ある男性と約束を交わす)

    (いつか、必ず二人で海を見に行こう)

    (足の動かない主人公は男性に連れられて、ようやく彼と海へ行ける算段が付いた)

    (だが……急激に薄れていく、主人公の意識)

    (聞こえるのは、もう彼の声だけで……)

    (主人公は車椅子に乗せられ、初めての海へ辿り着くが……既に、全身が動かない。目も見えない。
     あるのは、彼の声と、触れられた肌の感触だけ)

    74 = 1 :


    (そうして……初めての海で、主人公は息絶える)

    (やがて、天国に辿り着いた主人公は)

    (自分を追って天国までやってきた彼と、永遠の愛を誓うのだった……)

    「……ホント、これ以上ないくらいのバッドエンドだ……おもしろいけど」

    (女さんは……これを、俺のためだけに書いたのだろうか)

    「彼女が、俺に伝えたかった事……」

    75 = 1 :


    (まさか……もし自分が死んだら、追いかけてきて欲しいとか?)

    「ハハッ、まさかな」

    (そんなわけ……ないよな?)

    (……なんだか、無性に怖くなってきたんだが)

    「……直接、聞いてみるか」

    76 = 1 :

    そろそろ眠気に負けそうなので、ここまで。なるはやで更新します。

    >>65 >>66
    ありがとうございます。ご期待に沿えるよう頑張らせていただきます。

    77 :

    天国で結ばれるならbad endではないと思う

    78 :

    ゆっくりでいいからちゃんと完結して欲しい

    79 :

    (この公園で彼女を待つの、何だか慣れてきたな……)

    「お待たせ……しました」

    「ああ。大丈夫、そんなに待ってないよ」

    「それで……お話っていうのは?」

    「うん。ちょっと……この間の作品のことで、聞きたいことがあって」

    80 = 1 :

    「……!」

    (うわ……明らかに動揺してる)

    「その……俺に読んでもらうためって、結局どういう意味なのかな……って」

    「……本当に、分かりませんか?」

    「ああ、ごめん。俺には……」

    81 = 1 :

    「あの……あの小説はっ……私の……」

    「……?」

    (女さん……いつになく必死だ)

    「私のっ……想いの全てです」

    「想い……女さんの?」


    「はい……分かって、いただけましたか?」

    82 = 1 :

    「……えっと」

    (想いって……どういう事だよ)

    「で……ですから……////」

    (顔なんか真っ赤にしちゃって……真剣なのは伝わるんだけど)

    「えっと……つまり……」

    「っ……はい……」

    83 = 1 :

    (よく思い出せ……あの小説の内容を)

    (主人公は、何を求めていたのか)

    「つまり……君は」

    「君は……海に行きたいのかい?」

    「…………はい?」

    84 = 1 :

    「いやー、それなら早く言ってくれれば良かったのに。取材ならいつだって付き合うよ」

    「あの……どうして、そういう結論になるんです?」

    「え? 違うの?」

    「……ハア。男さん……失礼ですが、経験はお持ちですか?」

    「経験って……なんの?」

    「察しが悪すぎます。恋愛経験ですよ、恋愛!」

    (おおう……顔が近い! いい匂い!)

    85 = 1 :

    「えっと……その……」

    「なんなんですか、はっきりしてください!」

    「……くそっ、無いよ。不本意だけど……彼女いない歴が、そのまま年齢だ」

    「……でしょうね。そうだと思いましたよ……はあ」

    (何か、メッチャ呆れられてるぞ。俺、何かしたか? 全く身に覚えがないんだが)

    「その……何か気に障るようなことしちゃったかな?」

    「別に、何もされてません。ほんっとうに、言葉通り何もされてません」

    (……なんでそんなに不機嫌?)

    86 = 1 :

    「男さん」

    「はっ、はい何でしょう」

    「さっきの言葉、本当ですか?」

    「えっと……さっきの?」

    「しゅ・ざ・い!」

    「あ……ああ、海の話? 本当だよ、どこにだって連れていくさ。君の手伝いができるのなら」

    「……言質、取りました」

    87 = 1 :

    (ヤバい……何だか、メッチャ嫌な予感が……)

    「私を、旅行に連れて行ってください」

    「……へ? 旅行?」

    「はい。旅行です」

    「旅行って……ああ、日帰りでってことね」

    「……何言ってるんですか? 泊まりに決まってるじゃないですか」

    (ちょっと待ってちょっと待って女さん)

    88 = 1 :

    「泊まりって、ま、まさか……俺と!?」

    「たった今、そう言ったじゃないですか。ちなみに、断るのは許しません。さっき言いましたよね、取材ならいつでも付き合ってくれると」

    「う……うん。言った、よ」

    (女さん、いつになく強気だ。ホント、今日はどうしちゃったんだろう)

    「なら決まりです。取材ということで、海に旅行に行きましょう。それを新しい原稿のネタにします」

    89 = 1 :

    「えっと……ほ、本当に俺とでいいの? もっと、違う誰かの方が……」

    「また信用を失いたいんですか?」

    「はいっ! 今すぐ予約させていただきます!」

    (くっそ……こんなんで担当外されたら立場がねえ。付き合うしかないのか……)

    (まあ……嫌では、ないけれど)

    90 = 1 :

    短くて申し訳ないがここまで。次回は旅行から帰るところまで書きたいと思ってます。

    91 :

    ニヤニヤしてる

    92 :

    なんか栞を思い出すわ~

    93 :

    (……遂にこの日がやってきてしまった)

    「お待たせしました、男さん。いつもすみません、待たせてしまって」

    (なんか、やたら荷物多いな……女の旅行ってこんな感じなわけ?)

    「いやいや、約束の時間には全然遅れてないよ。それじゃ、行こうか」

    「え……あ、はい」

    「……どうしたの? この間の強気な君はどこに行っちゃったわけ?」

    94 = 1 :

    「だって……本当に連れて行ってくれるなんて、思ってなかったので」

    (何だよ……連れて行かないルートもあったのかよ)

    「いや、もう飛行機もホテルも取ってるし」

    「……! ありがとう……ございます」

    (ったく……可愛い顔してんな、ホント)

    「……それじゃ、行こうか」

    95 = 1 :

    (さて……機内に乗り込んだんだけど)

    「フンフーン♪」

    (声量は小さいけど、真隣だから……さっきから気になって仕方がない)

    「やけに上機嫌だね。鼻歌なんか歌っちゃって」

    「あ、そう見えます? だって、海なんて私、初めてなんですよ」

    「しかも、南の島だなんて! 興奮しない方がおかしいです!」

    96 = 1 :

    「そっか、じゃあ俺もおかしくないね」

    「……え?」

    「俺も、ちょっと楽しみなんだ。南の島なんて、修学旅行でも行ったことが無かったから」

    「……それなら、私とお揃いですね。私は、当時は丁度入院と重なってしまって、行けなかったんです」

    「うわ……それは残念だったね」

    97 = 1 :

    「その分、楽しんじゃいますから!」

    「……そっか」

    (楽しめれば……いいんだけど。多分、女さんは泳ぐのも無理だろうし)

    (海を見て終わりとか、そんな悲しいことにならなければいいんだけど)

    98 = 1 :

    (……何か、時間が経つのが妙に早い気がする。実家に帰る新幹線だと、3時間ですらクソみたいに疲れるのに)

    (気圧だって下がってるのに、妙に目が冴えて……眠れない)

    「……」ポテッ

    (うおっ!)

    (女さんの頭が……俺の肩に……!)

    「お……女さーん?」

    (……眠ってらっしゃる)

    99 = 1 :

    (あーもう……仕方ないな)

    「スー……スー……」

    (何だか、こうして眠ってると……普通の女の子みたいだ)

    (いや、そりゃあ普通の女の子なんだけど)

    (あと1年後には……なんて、全然思えないくらい生き生きとしてて)

    (きめ細やかな肌や、艶やかな黒髪、長いまつ毛……潤った桜色の唇)

    (……ちょっと、信じられないな)

    100 = 1 :

    「……男……さん」

    「っ!」

    (寝言か……あざといんだよ、全く)

    (うっかり……好きになるところだった)


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