元スレP「風俗嬢に恋をした……」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
1 :
アイドルのみんなの人気に火がつき、765プロの経営は大幅に改善した。
プロデューサーである俺は、相変わらず忙しい日々を送っているがもらえる給料は、以前からは考えられないほどあがった。
だが実際にはその給料を使うような暇が、俺にはない。
支払いや引き落としは全て口座からされるようにして、俺は通帳を見る事もしなくなった。
そこにある数字が、かえって自分を空虚にしていくようで空しくなったからだ。
今は仕事で忙しくしている間が、いや間だけが自分が生きているという実感がある。
アイドル達の為に、身を削っていると彼女たちとの関わりを感じられる。
広い世界の中で、自分だけが取り残されたような気持ちを味あわなくて済む。
いつしか俺は、定時退社やオフの日を忌避するようになっていた。
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2 = 1 :
伊織「アンタ、いったいいつ休んでいるのよ」
P「な、なんだ急に?」
伊織「先週はずっと仕事に来てたじゃない」
P「ライブが近かったからな」
伊織「昨日はそのライブが終わったから、全員オフのはずでしょ。アンタ休んだの?」
P「いや、後処理があったからな」
伊織「それで今はなにをしてるのよ」
P「営業、打ち合わせ、事務処理とかかな」
伊織「アンタいったいいつ休むのよ!」
伊織の言いたい事はわかる。
顔は怒っているが、その瞳は俺を心配している。
そう、わかっちゃいるんだ。
伊織「先週だけじゃない。先々週も! その前も!! そのまた前も!!!」
わかっちゃいるが、ほっといて欲しい。
オフなんて……嫌いだ。
ほら、他の娘も集まってきたじゃないか。
3 = 1 :
雪歩「ど、どうしたんですか……」
P「なんでもない。伊織が俺の事を心配して……」
伊織「アンタなんかの心配なんかしてないわよ! た、ただほら、ウチの事務所が監査とかそういうのにひっかからないか心配してるだけよ」
美希「でこちゃんのツンデレなの。でも、ハニーの心配はミキの仕事なの」
伊織「でこちゃんゆーな! それにそう言うなら、ちゃんと美希の仕事しなさいよ!」
美希「ミキの仕事?」
伊織「プロデューサーの心配をしなさいよ。そいつ、全然休まないじゃない! 毎日毎日遅くまで……いつか身体が壊れちゃうわよ!!」
真「確かにプロデューサー、ハードワークですよね。それにしても伊織、やっぱり心配してるんじゃないか」
4 = 1 :
伊織「ち、違うわよ! と、とにかくアンタは少し休みなさい!! いいわね!!!」
律子「そうね。本当の事を言うと、私も気になってたのよね。プロデューサー、今日はもうあがったらどうです?」
P「おいおい、そんなことできるわけないだろ。この後、ラジオだぞ」
美希「ミキと一緒に行くんだよね、ハニー」
律子「私が行きますよ。今日はもうそれだけがプロデューサーの仕事でしょ? いつも助けてもらってる分、こういう時は代わりますよ」
美希「いやなの! ミキはハニーと行きたいの」
伊織「さっき言ったでしょ、プロデューサーの心配をするっていうなら身体の心配もしたあげなさいよ!」
美希「……わかったの」
5 = 1 :
いや伊織、律子、正直ありがた迷惑なんだが……
もうこれ、今日は俺は帰る流れになってるじゃないか。あの殺風景で空しい部屋に……
春香「はいはいプロデューサーさん。今日はもうお仕事終わりですよ。良かったですね」
春香……そうか、春香も気がついてたんだな。俺が休んでいないことに。
P「わかった。みんなありがとうな、今日は帰るよ」
伊織と春香の緊張が、みるみるほぐれる空気を感じた。
本気で俺の心配をしてくれている。それはわかる。
けれど……俺は……
明るいうちから街を歩く俺。
家へなんか戻る気分じゃなかった。
けれど別に行くところも、行きたいところも無かった。
男「どーぞ」
手に押しつけられたチラシは、風俗店のそれだった。
P「風俗、か」
6 = 1 :
急に興味をそそられた。
俺だって男だからな。
金ならあるし、たまにはそういう遊びもいいだろう。
俺は風俗外へと足を向けた。
P「仕事を早引けして、風俗か。俺も言い身分だな」
自嘲気味に店を物色する。
そして俺はその店を見つけた。
P「なになに『ナイトハウス765』……?」
名前にまずびっくりしたが、派手な立て看板を見て納得した。
ここはどの娘もウチのアイドル模しているらしい。
まあよくある話だ。
P「どれどれ、どんなものか見てみようじゃないか」
興味本位から俺は、店に入った。
店員「いらっしゃいませ。当店は初めてでいらっしゃいますか?」
P「ああ。おすすめはどの娘?」
店員「どの子も粒ぞろいですが、一番人気はハルカちゃんですね」
7 = 1 :
P「というと、天海春香みたいな?」
店員「はい。ハルカちゃん、あのアイドルの天海春香のそっくりさんなんですよ。にひひ」
店員のお薦めのそっくりさんか。
俺は笑いが抑えられなかった。
どれほど似ているかはわからないが、俺は毎日のように本物に接している。
その俺からすれば、噴飯もののそっくりさんに違いない。
実際にそういう類の素人出演者が、たまにバラエティにも出る。
ま、いい。
どうせ暇つぶしの余興だ。
風俗のそっくりさんと、本物の比較も一興だろう。
P「じゃあそのハルカちゃんで」
店員「かしこまりました」
俺は案内された部屋へ入った。
そこには既に女性が待っていた。
その顔を見て、俺は我を忘れた。
そこには、春香がいた……
8 :
どこにあんの?
9 :
ぜひ期待したい
10 :
え?おわりじゃないよね?
12 :
なんという優良店
13 :
期待してます!
14 :
めっちゃ先が気になる
15 :
ドリームクラブかと思った
16 :
確かにドリクラかと思ったけどwwww
これは期待
17 :
ドリクラかと思ったらww
続きに期待。
18 :
やよいやいおりんのそっくりもいるのか…?
労基法にひっかかりそうなんだが楽しみだ
19 :
レスたくさんいただけてびっくりしています。書き手です。
少しずつでも更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
SS速報では初めて書きますので、色々と不慣れな点があると思いますが、なにとぞご容赦を。
読み返すと、誤字があって恥ずかしいです。
後々訂正をさせていただきたいと思います。
20 = 19 :
どうやら俺は呆然としていたらしい。
心配そうに春香が、俺に声をかけている。
?「……ですか? どうしたんですか?」
P「春香!? お、お前なにをやってるんだ!? こんなとこでなにしてる!!」
?「え? え?」
P「帰るぞ、春香!」
?「あの……お客様?」
ようやく俺は、ハッとした。
そうだ、この娘は春香じゃない。
P「あ、ごめ、すみません!」
?「いえ、こちらこそ」
P「あなたが、あまりにも春香に似ていたから……あの……」
?「はい?」
P「あなた、春香じゃ……ないんですよね?」
?「ふふふっ。似てますか? いやーなんか嬉しいなあ。私、ハルカです」
21 :
ああ、風俗街ね
アイマス知らないけど期待してる
22 = 19 :
P「そう、ですよね。あの……」
ハルカ「はい?」
P「あなたは、春香のお姉さんとかそういう事は……」
ハルカ「ない、と思いますよ。たぶん」
似ている……似すぎだ。
毎日のように顔を会わせる俺ですら、本人としか思えない。
顔はもちろん、背格好や体つき、仕草も似ている。
しげしげと見つめる俺に、春香……いや、ハルカは可笑しそうにしている。
ハルカ「似てるでしょう? 去年ぐらいかなあ、言われるようになって。指名が増えて、それで私ももっと似せようって、がんばっちゃったんですよね」
P「似てるなんてもんじゃない。よく知ってる俺でも、間違えるよ」
ハルカ「よく知ってる?」
P「あ! あー、その。俺は実は765プロの社員なんだ」
ハルカ「そうなんですか! すごいすごい! えへへ、関係者さんのお墨付きですね」
ハルカは無邪気に笑う。その表情や話しぶりすらも、春香としか思えない。
23 = 19 :
ハルカ「あ、いけない。お客さん、こんなお話は退屈ですよね。さ、どうぞ」
ハルカに誘われ、俺は中に入った。
ベッドと浴室、広くはないがほどほどに快適な室内でハルカはローブを脱いだ。
下は、アイドルっぽい衣装だった。いつも春香が着ている衣装に比べると、かなりチープだが。
ハルカ「ご指名ありがとうございます。ハルカです。お客さんは、好みのプレイとかありますか?」
P「プレイ?」
ハルカ「世間から隠れて、アイドルと実は付き合っているという設定とか」
恋人がアイドルか、普遍的でウケるかもな。
P「他には?」
ハルカ「お金や権力で、有名アイドルを無理矢理……とか」
P「……ひどいな」
ハルカ「でもそういうの、男の人はちょっとしてみたいんじゃないですか」
P「俺は嫌だね」
実際、金はかなり持っている。
765プロのアイドルを12人もプロデュースしている事もあり(竜宮小町としての活動は、律子の担当だが)、枕営業をかけられた事もある。無論、断ったが。
24 = 19 :
ハルカ「じゃあ恋人がいいですね」
P「ちょっとした要望なら、応えてくれる?」
ハルカ「そういう設定、っていうなら大丈夫ですよ」
P「じゃあ俺は、今から担当アイドルである春香に告白する。恋人になるところから始めたい」
ハルカ「いいですよ」
屈託無く笑うハルカは、本当に春香そのものだった。
そうだ、目の前にいるのは春香だ。
春香なんだ……
P「春香、俺は前からお前が好きだった」
その一言に、俺はびっくりした。
言葉の内容に、じゃない。
言った瞬間、なぜか俺は気が楽になった。
いや、胸のつかえや重みが取れたようだった。
そうだ。俺は、この言葉を言いたかったんだ。
きっと、ずっと。
ハルカ「嬉しいです。えっと……」
P「プロデューサーさん、って呼んでくれる?」
ハルカ「はい。プロデューサーさん。私も、ずっと大好きでした」
P「……」
25 = 19 :
不覚にも泣きそうになった。
いやいや、浸るな俺。ここは風俗店、この娘は風俗嬢。
憂さ晴らしもいいけれど、節度を忘れるな俺。
ハルカ「プロデューサーさん。私を……もらってください」
ハルカは俺の胸にそっと身体を預けてきた。
俺は彼女を抱きしめた。
節度なんかくそくらえだ。
彼女の身体の暖かさ、柔らかさが伝わってくる。
髪の香りが、漂う。
ハルカの顔を、改めて見る。
抑えられなかった。
ハルカ「! お、おきゃ……プロデューサーさん。もう! 唇はダメですよ。追加料金もらっちゃいますよ」
P「あ! ご、ごめ……」
ハルカ「えへへ、冗談。いいですよ、別に。プロデューサーさん、いい人そうだから許してあげちゃいます」
26 = 19 :
それから俺たちは、二人で風呂に入った。
衣装を脱いだ春香、いやハルカは俺も初めて見る。
それは、想像以上に綺麗だった。
思ったよりもセクシーだった。というとアレだが、正直俺は春香を過小評価していた。
イヤ、これは春香じゃなくてハルカだったか。
途中から俺は、よくわからなくなっていた。
そして俺は、ハルカを抱いた。
ハルカ「またいらしてくださいね」
P「ああ、今日はありがとう」
ハルカ「ふふ、そんなこと言うお客さんは珍しいですね。あ、お客さんじゃなかった。プロデューサーさんっ! じゃあ待ってますからね」
満ち足りた気持ちで、俺は帰途についた。
気がつけば、俺は笑っていた。
ニヤニヤしながら道を歩く俺は、端から見ればさぞや気持ち悪かっただろう。
だがその日の俺は、上機嫌だった。
なぜか笑みが抑えられなかった。
幸せだったんだ。
27 :
やったー
来てるー
28 :
ここまでかな?乙
29 = 19 :
伊織「いい休養ができたみたいね」
翌日仕事をしていると、伊織が言った。
P「そう見えるか?」
伊織「ええ。アンタやっぱり疲れてたのよ。今はいい表情してるわ」
確かに今日の俺は、上機嫌だ。
締まらない顔をしているという自覚もある。
真美のイタズラにも、雪歩の失敗にも、あずささんの迷子という事態に遭っても笑っている。
伊織「安心したわ。たった半日休んだだけでもそれだけ元気になるなら、まだまだ働けるわよね」
P「ああ。だから安心しろ。安心して、こき使え」
伊織「……そうね。でも、たまには休むのよ」
だからそんな心配そうな目で俺を見るなよ、伊織。
P「気をつける。その証拠に……」
伊織「な、なによ」
P「今日は定時で退勤するつもりだ」
伊織「へえ……って、ちょっと! 今夜は収録があるじゃないの!」
P「さっきは休めって言っただろ!?」
伊織「アンタこそ、安心してこき使えって言ったじゃない!!」
やれやれ、ようやく伊織も普段の調子を取り戻したか。
それにしても、今日はハルカの所へは行けないか。
30 = 19 :
春香「おはようございまーす! あ、プロデューサーさん。昨日はどうでした? 休めましたか?」
P「お、おう春香。おはよう!」
春香の顔を見て、俺は妙に緊張してしまう。
いやいや、昨日のアレは春香じゃない。
ちゃんと公私の区別はつけような、俺。
千早「? なにかあったんですか、プロデューサー」
P「え、ええ? なにか、って何が?」
千早「いつもと様子が違うと思うんですけど、春香と何かあったんですか?」
千早、鋭いな。
とは言っても、別に春香と俺は何かあったわけじゃない。
そう、春香とは何も無かった。
春香とはな。
P「別に何もないぞ。なあ、春香」
春香「うん、そうだよ千早ちゃん。昨日はね、プロデューサーさん早引けしたからどうだったかなーって思って」
千早「早引け? まさか体の調子でも?」
P「いやいや、お前は働き過ぎだから少し休めってな。伊織や春香が」
千早「……良かった」
ああ、千早も心配してくれてたんだな。
ていうか、俺は自分がやりたいから仕事していたけど、それでみんなに心配かけてたんだな。
反省。
31 = 19 :
P「これからはさ、俺も少し休むようにするよ」
千早「はい。私たちも、今はもう大丈夫ですから」
P「ああ、俺は少し過保護だったかもな。でも、いつでも頼ってくれていいんだからな。それは忘れるな」
千早「はい」
春香「プロデューサーさん、元気になったみたいですね!」
P「なんだ? 俺、そんな元気無かったか?」
春香「今だから言いますけど、昨日とかはひどかったですよ。私、心配で……」
P「春香……」
言いながら俺は、春香を抱きしめようとしていた。
いかんいかん!
昨日の体験が、頭の中でフラッシュバックする。
あれは春香じゃない。
昨日抱きしめたのは、春香じゃないんだ。
俺たちは恋人じゃない。
アイドルと、プロデューサーだ
32 = 28 :
まだだったかすまん
33 = 19 :
P「ありがとうな。自分の事って、なかなか自分ではわからないもんだよな」
春香「それは……うん、そうですよね」
P「これからは気をつける」
春香「えへへ。安心しました、プロデューサーさん」
P「それから……」
春香「はい?」
P「昨日は……昨日のことだけど」
春香「はい」
P「嬉しかった。ありがとう」
春香には、俺の言っている意味は伝わらない。
でもそれでいい。
春香「私こそ、いつもありがとうございます」
春香の笑顔。
そうだ、俺はこの笑顔が好きだったんだ。
この笑顔をまた、自分のものにしたい。
自分だけのこの笑顔に会いたい。
P「ハルカに……会いたいな」
俺は小さく呟いた。
千早「……」
34 = 19 :
>>32
とんでもないです。
自分も色々と不規則なので、不定期に書いていくと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
いったんここで、止まります。
呼んだりレス下さる方、本当にありがとうございます。
SS速報は初めてなんですが、なんか嬉しいです。
35 :
こんな風俗行きたい
乙
36 :
乙
願わくば春香以外も…
37 :
ふむ・・・
38 :
乙
ここからが気になるところだ
39 :
これは・・・続き期待
40 :
続きはよ
41 :
その後も俺は仕事が忙しく、ハルカの店に行けたのは一週間も経ってからだった。
ハルカ「もう来てくれないんじゃないか、って思ってました」
P「とんでもない。毎日でも来たかったよ」
ハルカ「忙しいんですか? プロデューサーの仕事って」
P「まあ楽じゃあないよな。ていのいい何でも屋、雑用係だし」
ハルカ「うそ」
P「嘘じゃないさ。知らない人は、楽な仕事って思うのかな」
ハルカ「私、プロデューサーってふんぞり返ってるのかと思ってました」
俺は笑った。
ハルカ「あ、こんな話なんかしてて、ごめんなさい。時間、もったいないですよね」
P「え? ああ、いいんだ。こうしてるのが楽しい」
ハルカ「おきゃ……プロデューサーさんって、本当に変わってますよね」
P「そうか?」
ハルカ「普通はみんな、時間がもったいないって言ってすぐに……ええと、わかりますよね」
P「それももちろんするけど、こうしてハルカと一緒にいるのが楽しい」
ハルカは俺の顔を、まじまじと見た。
ハルカ「ちょっと手伝ってもらえます?」
P「うん?」
俺が手を貸すと、ハルカはベットの位置を少し動かした。
手を貸すと言っても、ロックを外せば車輪がついており、ベットは簡単に動いた。
42 :
ハルカ「ここで……抱いてください」
P「そりゃいいが、何か意味があるのかい?」
俺はベットで待っているハルカを抱きしめた。
ハルカも俺を抱きしめながら、耳元で囁いてくる。
ハルカ「ここだと、カメラに映りませんから」
P「カメラ!?」
ハルカ「中にはアブナイお客さんもいますからね。自衛の為に仕方ないんですよ。変な事してきたら、怖いお兄さんが来てくれます」
P「そういう目にあったこと、あるの?」
ハルカ「明らかに異常な人は、もう受付で止められちゃいますけど中にはね」
P「許せないな」
ハルカ「そういうこと言うのも、プロデューサーさんを珍しいって言う理由ですよ」
P「え? なんで」
ハルカ「だいたいのお客さんはそういうの聞くと、根掘り葉掘り聞きたがるんですよ。どうだった、とか。感じたか、とか」
P「胸くそ悪い」
俺がそう言うと、ハルカは俺に抱きついてきた。
ハルカ「今日も私を、プロデューサーさんの彼女にしてください」
P「ハルカ……」
俺達は、本当の恋人のようなキスをした。
P「今日は追加料金は?」
ハルカ「え? もう! せっかくの気分が、台無し!!」
ふたたび俺達は、唇を合わせた。
そして愛し合った後も、俺達はずっと抱き合ったままでいた。
43 :
P「ハルカ以外のここの娘って、どんな娘?」
ハルカ「うーん。別に友達っていうわけじゃないし、かといって仲が悪いわけじゃないし……」
P「みんなハルカみたいに、アイドルに似てるのかい?」
ハルカ「あはは。まあ、タカネさんとかは似てますよ」
P「へえ、銀髪なのか?」
ハルカ「本人は、白髪が増えて最近は困るって言ってますけど」
P「なんだそりゃ? 銀髪じやなくて白髪なのか!?」
ハルカ「まだ40代だって、本人は言ってますよ。それに顔もわりと似てますし」
P「わりと、ね」
ハルカ「口調をマネるのが大変だって、言ってましたね」
44 = 43 :
P「他には?」
ハルカ「アズサさんは、胸のサイズが本物とまったく一緒です」
P「91か!? そりゃすごい」
ハルカ「似てるの、そこだけなんですけどね」
P「おいおい」
ハルカ「チハヤちゃんも、胸のサイズが本物と同じです」
P「似てるの、そこだけなんだろ?」
ハルカ「あたり」
俺は声をあげて笑った。
まったく、こんなに心底笑ったのはいつ以来だろう。
45 = 43 :
ハルカ「後は声がそっくりなイオリちゃんとか……他の娘の所へも今度、行ってみます?」
P「え? いや、俺はハルカがいい」
ハルカ「……あの、天海春香にそっくりですもんね」
P「……いや、そんな理由じゃない」
ハルカ「え……?」
P「本音を言うと、俺はハルカとこうしていると本物の春香と一緒にいるよりくつろいでいる」
ハルカ「それは、身体を許した関係だから。それだけですよ」
P「ハルカといると楽しい」
ハルカ「きっと、気を遣わなくていいからですよ」
P「どうだろうな……」
46 :
他の娘はいないのか・・・(絶望)
47 = 43 :
本物の春香……というのも変だが、春香といて緊張する事なんて無い。
むしろ楽しい。
しかしハルカといる時に感じる安らぎは、春香のそれとは全然違う。
P「ハルカに、惚れたかな……?」
ハルカ「商売の女に、そういうこと言っちゃだめです」
P「いや、本音だけど」
ハルカ「お互いに辛い思いするだけです。だから、言わないでください」
P「……わかった」
この商売、この世界にはそこなりのルールがあるのだろう。
俺は、そう納得した。
P「でも、また来るのはいいよな?」
ハルカ「待ってます。プロデューサーさんのこと、まってますね」
48 = 43 :
律子「どうかしたんですか? プロデューサー」
P「ん? どうかしたか?」
律子「手、止まってますよ」
P「あ、ああ、ごめん」
律子「最近なにか、考え事してるみたいですけど悩み事ですか?」
P「いや、そういうわけじゃ」
風俗に行きたくて、と言ったら律子はどんな顔をするだろうか?
そう言えばあの店にもリツコという娘がいるらしい。
アイドルの頃の律子を模しているのかと思ったら、スーツ姿でSでもMでもしてくれるらしい。
律子が自分のファンをマニアックと分析していた意味が、ようやくわかった気がした。
49 = 43 :
律子「そうですか? それじゃあ私の相談、聞いて欲しいんですけど」
P「なんだ? 恋愛相談とかは専門外だぞ」
律子「鈍感なプロデューサー殿に、そんなの期待していません」
P「え?」
律子「と、とにかく! 最近、千早の様子が少しおかしい気がして」
P「そうか?」
3日前にCDの収録をしたが、別段おかしな所もなかった。
声の調子も良く、楽曲の良さと相まって俺はヒットを確信していたが。
律子「なんて言うか、仕事はいいんですよ。もともと生真面目なタイプだし。ただなにか思い詰めてる気がして」
P「律子がそう感じるなら、俺も注意してみる。杞憂ですめば、それにこした事はない」
律子「ええ、お願いしますね」
俺は千早に声をかけてみた。
50 :
P「千早、おはよう」
千早「あ、おはようございますプロデューサー」
笑顔で挨拶をする千早。
その表情で、俺は事態の深刻さを悟った。
そもそも千早は、そんなに笑うタイプではない。
陰気とか暗いとか、そういう事ではない。
もともとは朗らかで、あかるい娘だ。
だが、克服はしたものの辛い過去と、持ち前の理知的な頭脳が彼女の笑いを制御している。
しかし千早はそれでいい、とも俺は思っている。
古い中国の言葉に『美人の条件は笑わない事』というのがある。
アイドルのプロデュースなどという仕事をしている俺からすると、やや疑問に思っていた言葉だが、千早と出会って俺も納得した。
滅多に笑わないこの少女が、笑った時はなんともいえない気持ちになれる。
この娘を笑顔にしてやりたい、そう思う。
だからこそ、俺は千早の為に必死でプロデュースしてきた。
その千早が今、俺の目の前で笑っている。
しかしそれは、俺の大好きな笑顔じゃなかった。
ぎこちない、不自然な笑顔だった。
P「……ちょっといいか? 話したい事がある」
千早「はい。私も、プロデューサーと話がしたかったので」
俺達は、事務所を出た。
近場だと他の娘と出会す恐れがあったので、車を出した。
入ったのは、顔見知りのカフェ。開店前だが、無理を言って入れてもらった。
みんなの評価 : ★★
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