元スレ男「余命1年?」女「……」
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101 = 1 :
女「男さん……」
男「ん? 何かな?」
女「あの起こし方は……ちょっと有り得ないです」
男「人に寄りかかって寝る方が悪い」
男(空港に到着して、俺からも少し呼びかけたけど……いつまで経っても女さんは起きなかったものだから)
男(彼女の頬を引っ張って、無理やり起こしてやった)
102 = 1 :
女「……ちょっと酷くないですか? 普通に起こせないんですか?」ムッスー
男(そしたら、この通り不機嫌になってしまったけど)
男「悪かったって、機嫌直してよ……ほら、見てみな」
女「えー……あ」
男(やっぱり、凄いよな)
男(言葉を失う時って、多分……こういうのを見た時なんだろう)
103 = 1 :
女「これが……海」
男「俺も、こんなに綺麗な海は初めて見た」
男(もうゴールデンウィークもとっくに過ぎたってのに、たくさんの人が泳いでる)
男(それだけ、人気のある観光地ってことか)
104 = 1 :
女「……いいなあ」
男「泳ぎたい?」
女「頷いたら、泳がせてくれるんですか?」
男「……無理、だね」
男(女さんにとっては、こんな光景も……蛇の生殺しでしかないんだよな)
男「ごめんね……全然、そこまで考えて……」
105 = 1 :
女「……ホテル」
男「え?」
女「どこにあるんですか、ホテル。早く荷物下ろしたいです」
男「あ……ああ、そうだね。この近くにあるんだ。海がとても綺麗に見渡せる場所だよ」
女「そうなんですか!? 楽しみです……えへへ」
男(良かった……元気が戻ったみたいだ)
106 = 1 :
女「すごーい!」
男「うわー……絶景だね」
男(窓から入る風が気持ちいい)
男「写真とは、全然違うな」
男(流石に、高いだけある)
男(俺がいつも泊まるような相場と、3倍は違うからね……)
女「ホント凄い……今日は、男さんにビックリさせられっぱなしですね」
107 = 1 :
男「さっきから凄い凄いって……いつもの表現力はどこに置いてきたんだよ?」
女「えー、だって違くないですか? 文章力があれば話すこともできるだなんて、編集者らしからぬ単純思考ですよ?」
男「そういうもんなのか……」
女「もー、しっかりしてくださいよ、男さん」
男(風が……女さんの髪がたなびいて……まるで映画のワンシーンみたいな)
男(いや……そんなのよりも、ずっと美しい)
108 = 1 :
女「……男さん? どうしたんですか、ボーッとして」
男「えっ……いや、何でもないよ、うん」
男(だから、あざといんだって……)
男(手すりに上半身を預けて、顔傾げてこっち見つめてくるなんて)
男(俺じゃなかったら、今絶対ヤバかったぞ)
109 = 1 :
女「変な人ですねー。まあ……予約した部屋を見た時から、おかしいって思ってましたけど」
男「え……何かおかしいかな?」
女「普通……こういう時って、2部屋取りません?」
男「あ…………ああっ!」
男(やっちまった……!)
男(旅行なんて、大学の友人と行って以来だから……そこまで頭が回らなかった!)
110 = 1 :
男「ごっ……ゴメン! でっ……でも、ほら、ベッド2つだし!」
女「そういう問題ですか?」
男「い、今からでも変えられるかなあ!? きっと、頼み込めば変更してもらえるんじゃ……」
女「男さん」
男「ひっ、ひゃいっ!」
男(やべ! 変な声でた!)
111 = 1 :
女「……構いませんよ、私」
男「……え?」
女「どうせこんな大きいホテルだと、当日変更は難しいでしょうし……それに」
男(そ、そんな見つめんなよ……今、恥ずかしさで顔真っ赤になってんだからさ……)
女「……きっと、男さんは何もしないじゃないですか」
112 = 1 :
男「え……と……」
男「否定は……できない」
女「フフ……だと思いました」
男(……なんで、そんな顔すんだよ)
男(そんな寂しそうな顔……君には似合わないよ)
113 = 1 :
男「……あの、さ」
女「はい?」
男「……海、見に行こうよ。泳がなくたって、きっと楽しいよ。……ほら、海だけじゃなくて、この近くにも色々店とかあるし!」
女「……そう……ですね。はい……行きたいです!」
男(良かった……いつもの笑顔だ)
114 = 1 :
女「……男さん」
男「ん? どうしたの?」
女「……私……男さんの、そういう……ところが……」
男(女さん……顔が)
男(耳まで、真っ赤に染まってる)
男「女……さん?」
女「っ……なんでも、ないです。ほらっ、早く行きましょう! 私、お腹空いちゃいました」
男「う、うん……それじゃ、行こうか」
男(何だったんだろう……まあ、気にしなくていいか)
115 = 1 :
続きは夜書きます
116 :
おつ
待ってる
117 :
女「男さん! このタコライス、すっごく美味しいです!」
男「うん、俺も驚いた」
女「なんでも地元の方々に、キンタコの愛称で親しまれている店らしいです!」
男「へえー、キンタコねえ」
女「お持ち帰りもできるらしいです! 男さん、お願いしますね!」
男「え、まって。まだ食べるの?」
女「だって美味しいんですもん。食べなくちゃ勿体ないです!」
男「そうかー勿体ないか―、それなら仕方ないね」
118 = 1 :
女「男さんっ、ここのステーキ、美味しいらしいです!」
男「まってまって、さっき食べたばっかじゃん。それに、このパックのタコライス……」
女「是非入りましょう! 是非!」
男(そんなに目を輝かされたら……)
男「……仕方ないなあ」
男(断れないじゃん……)
119 = 1 :
女「ふー、美味しかったですねえ」
男「……うん、そうだね」
男(もう……大分苦しいんだけど)
女「あっ! ここ、この間テレビで特集されてた天ぷら屋さんですよ!」
男「え……へ、へえー、そうなんだ……」
男(まさか……いや、まさかな)
120 = 1 :
女「流石に……入れないですね」
男「はは、そうだよねー。流石にお腹いっぱ……」
女「こんなに食べてばかりだと、男さんのお財布が心配です」
男「よっしゃ上等だあ! 食えるもんなら食ってみろよ!」
女「え! いいんですか! それなら、喜んで!」
121 = 1 :
男「うっぷ、もう……食えね……」
女「男さん男さん、持ち帰りのタコライス食べましょう!」
男(マジで、ブラックホールみたいな食べっぷりだな……)
女「ふー……綺麗ですね」
男「……うん。まさか、こんなに綺麗な海を見ながらご飯を食べられるなんて。夢みたいだよ」
男(今食べてるのは、女さんだけだけど)
122 = 1 :
女「……もう皆さん、いなくなっちゃいましたね」
男「あー、だってもう7時だし。まだちょっと明るいけど、みんなご飯食べに行ってるんじゃないかな?」
女「そう……ですよね。なら……」
男「女……さん?」
男「な……なにしてるの?」
女「何って……決まってるじゃないですか」
123 = 1 :
男「ちょ……! こんな所で脱ぐなよ!」
女「え、だって、誰もいませんよ」
男「俺俺! 俺がいるから!」
女「大丈夫ですよ、だって……」
男(ああ! 最後の一枚が……)
124 = 1 :
男「……あれ? 女さん、それ……」
女「はい! この日のために選んだ、とっておきの水着です!」
男「水着って……」
女「どうです? 似合ってますか、男さん」
男「あっ……急に走っちゃ身体に悪いって!」
女「大丈夫ですようー! だって、薬飲んでますから!」
男「いや、でも……」
125 = 1 :
女「本当に大丈夫ですよ、だって……」
男「ちょ……女さん! それ以上は……」
女「キャッ……男さん、服……濡れちゃいますよ?」
男「もう……濡れちゃったよ」
男(靴の中に、海水が入り込んで……膝下までビッチョビチョだ)
女「だって男さん、水着じゃないのに……」
126 = 1 :
男「流石に、泳ぐのはマズいって。俺だって、ちゃんと調べたんだから」
女「……どうやって?」
男「それは……インターネットとか」
女「……フフ。男さんらしいですね」
女「でも、大丈夫です。自分の身体の事は、自分がよくわかってますから」
男「いや……だって」
127 = 1 :
女「泳げますよ」
男「……女……さん?」
女「……泳げますよ? ちゃんと……健康な人と、同じように」
男(女さん、腕が……微かに、震えてる)
男「……女さん」
女「……はい」
男「……帰ろう、ホテルに」
128 = 1 :
女「フンフーン♪」
男(シャワーの……水の音が……)
男(別に、やましい事してるわけでもないのに……)
女『男さんが先に入ってください! 服が濡れて、ビショビショなんですから。風邪引いちゃいますよ?』
男(そう言われて、先にシャワー浴びたけど)
男(なんか……待機してるみたいで)
男「……アホかっ、何もねえよ」
129 = 1 :
男(だって、この旅行は……ただの取材なんだから、さ)
女「ふー、気持ちよかったー」
男「そう? ただのシャワーじゃん」
女「シャワーのお湯も、何だか高級感に溢れてますよね!」
男「そ、そう?」
男(意味が分からん。お湯が高級ってどーいう事なんだよ)
130 = 1 :
女「……なんか、男さん。浴衣カッコいいですね」
男「えっ……そ、そうかな」
男(そんなこと言ったら、女さんの方がよっぽど……)
男(風呂上がりのシャンプーの匂いとか、濡れた黒髪とか)
男(浴衣のせいで……強調された、身体のラインとか)
女「……なんですか、そんなにジロジロ見て」
男「え!? いや……その……ごめん、そんなつもりじゃ」
131 = 1 :
女「……もう。やっぱり、男さんは男さんですね」
男「……何言ってんの?」
男(女さん、背中向けて……ドライヤーかな?)
男(……冷蔵庫?)
女「これ、さっき買ってきたんですよ」
男「それ……ワインじゃん」
女「男さんがシャワー浴びてる間に、下のコンビニで買ってきちゃいました」
132 = 1 :
男(そんな……舌なんか出して)
男「もう20歳なんでしょ? 悪いことじゃないよ」
女「そうはいっても、中々慣れなくて。一人じゃ買ったことも無かったんですよ」
男「お酒は強いの?」
女「んー、そうでもないのかな。大学の友達と飲みに行ったときは、そんなに酔わなかったです」
男「へー、あんまり飲まないんだ?」
女「あ、いえ。ジョッキ三杯と、ワイン二杯くらい、友達と。あ、あと温かいのも、おちょこで飲んだかも」
男(メッチャ飲んでるやん……)
133 = 1 :
男「ふ、ふーん……とりあえず、開けようか」
男(あれ……)
男「女さん……これ、いくら?」
男(これ……コンビニに置いてるなんて。やっぱり高級ホテルは違うな)
女「……秘密です」
男「お金渡すよ。流石に悪いから」
女「いえいえ、いいんですよ。飛行機代も、ホテル代も、食事だって、お世話になりっぱなしですから」
男「それはそれでしょ。学生と社会人なんだからさ」
女「元、ですけどね。もう、律儀だなあー」
134 = 1 :
男(あれ、女さん……既に酔ってらっしゃる?)
男(そういえば、さっき若干それっぽい匂いがしたような)
女「もー、男さんは細かい事を気にし過ぎなんですよー」
男(なんか、身振りもいつもより大げさだし……)
男「女さん……いつの間に……」
女「男さんもジャンジャン飲んでください! 折角私が買ってきたんですから!」
男「ちょ……!」
男(近い近いデカい近い近い何かいい匂い!)
男「……もう、仕方ないな」
135 = 1 :
男(あー、なんか、いい気分になってきた)
女「男さん」
男「……ん? なに?」
女「男さんはー……ホントはゲイなんですか?」
男「は!?」
男(いきなり何言い出すんだこの子は!)
男「そんなわけないだろ!」
136 = 1 :
女「だってー、私を見ても、全然そんな風に見てくれないし」
男「そんな風にって……君ね」
女「男さん、私より、編集長? と話してる時の方が楽しそうですよ」
男「そ、そんなわけっ……」
女「じゃあー……」
男(な……胸、当たってるって)
男「女さん……腕にっ……」
女「じゃあ、男さんはー」
男(ええい耳元で囁くなあっ!)
137 = 1 :
男「女……さん!」
女「男さんは……私と話してて、楽しいですか?」
男「そりゃ……あ、楽しい……よ」
女「どんな風に?」
男「どんなって……君みたいな可愛い子と話せたら、嬉しいよ、男としても」
女「だって……この間、男さん……年上がタイプって言ってたじゃないですか。あれはどーいうことなんですか?」
男「いや……だから、そんなの関係なく、君は可愛くて……魅力的だってことだよ」
138 = 1 :
男(何言ってんだ俺……こんな歯の浮くようなセリフ、素面じゃ絶対言わないだろうに……)
女「……本当、ですか?」
男「俺が嘘つくような男に見える?」
女「……半分くらい?」
男「凄い微妙だね、それ」
女「……フフッ、そっかあ」
男「ちょっ……女さん!?」
男(抱き着いてきたああああああ!)
139 = 1 :
男(腕が……背中に……!)
男(胸に……顔を押し付けんなって!)
男「女さん! 流石に、これは……」
男「……?」
女「……スー……スー……」
男「……えぇ」
男(……マジかよ)
140 = 1 :
男(女さん……軽かったな)
男(こんな小さな身体のどこに、あの量の食べ物が入るんだろう)
男(……あ、女さんのバッグ)
男(ホント、どうしてこんなに大きなバッグが必要なんだか)
男(ちょっと中身、見てみるか?)
男(……いやいやいや、いくら何でもそれはマズいだろ)
141 = 1 :
男(……)チラッ
女「……スー……スー」
男(……少しだけなら、いいよな)
男(……えーっと、着替えと……化粧品か? あとは……ん?)
男(なんだ、この紙袋……やたら大きいな)
男(中身は……え、これ)
男(……見間違いじゃない。これは……)
142 = 1 :
女「……スー……スー」
女『お父さんは、私の事なんてどうだっていいんですよ。もうすぐ……いなくなるんですから』
男(……酔いなんて、吹き飛んだ)
男(どこかで……夢なんじゃないかって、思ってたんだ)
男(それか、女さんの悪い冗談なんだって)
男(だって、そう思ってしまうくらい、女さんは元気に見えたから)
男(もしくは、病院の診療ミスとか……ちょっと大げさに言ってるだけで、実はたいしたことありませんでした、とか)
男(心のどこかで期待してたんだ、俺)
男(何を今更……こんなに、動揺してんだよ)
143 :
男(あの後……結局一睡もできなかった)
男(……果てしなく眠い)
女「……どうしたんですか、男さん。眠れなかったんですか?」
男「ああ、ちょっとね。そういう女さんは、すごく元気だね。昨日はよく眠れたかい?」
女「はい! なんだか、すっごく安心して眠れたような感じです!」
女「正直、昨日はどうやってベッドに入ったのか、記憶に無いんですけど」
女「男さん、何か覚えてます?」
144 = 1 :
男「いや……全く」
男(嘘だけど。ホントはメッチャ覚えてるけど)
男(お姫さまだっこで女さんをベッドに寝かせたってことは……言わないでおこう)
女「そっかー、仕方ないですね。仕方ない!今日はとことん遊びましょう!」
男「いや、後はもう帰るだけだよ」
女「ええ! どうしてですか!?」
男「だって、あんまり遅くなると、ほら……お父さんが心配するでしょ?」
145 = 1 :
女「……」
男(やっべ、失言だったか?)
男「……お土産、どっかで買って帰ろうか」
女「え、お土産ですか? ……いいですね! 何買っていこうかな!」
男(なんとか……誤魔化せたかな)
146 = 1 :
女「やっぱり、沖縄っていったらちんすこうですよねー!」
女「あっ、サーターアンダギーも捨てがたい!」
女「うーん、迷っちゃうなあ!」
男「あはは……好きなだけ買いなよ。お金は心配しないで」
女「えっ、いいんですか!? じゃあ……お言葉に甘えて!」
男「抱えすぎて落とすなよー」
男(もう……はしゃいでるなあ)
147 = 1 :
男(考えてみると、彼女にとっては今更薬なんて、大したことじゃないのだろう)
男(薬を一目見ただけで、こんなに動揺してしまうなんて……なんて情けないんだろう)
男(自分自身、こんなに弱いとは思わなかった)
男(それに比べて……女さんは、強いな)
男(不条理な運命を背負って、それでもなお、あんなに輝かしい笑顔を浮かべられるんだから)
148 = 1 :
女「否定しないんですね? 言いましたね?」
女「じゃあ……もし私が作ったら、食べてくれますか?」
男「そりゃあ……まあ……作ってくれるなら、食べるけど」
女「やった! 嘘は駄目ですからね? 男に二言は?」
男「……無いよ。なんだその確認の取り方」
女「フッフッフ……期待してくれてもいいんですよ? 私、これでも料理は好きなんです!」
男(ここで得意って言わないあたり、妙に謙虚なんだよなあ。……酒さえ入ってなければ、ね)
149 = 1 :
女「……男さーん」
男「……うん……起きてるよ、まだ……」
男(ヤバい……滅茶苦茶眠い)
男(行きの飛行機ではあんなに眠れなかったのに……寝不足だからかな。帰りの飛行機は、全部寝て過ごしそうな勢いだ)
男(せっかく女さんが起きてるのに……俺だけ寝ちゃったら申し訳ないし)
女「男さん……目が半開きですけど。ホントに起きてます?」
男「ああ……起きて……る」
女「フフッ……可愛いなあ」
150 = 1 :
男「男は……可愛いって言われても……嬉しくないよ……」
女「……男さん……もし」
男「うん……なに?」
女「……もし、昨日のホテルでの出来事を……私が全部覚えてるって言ったら……どうします?」
男(……覚えて? ホテル……何か、あったっけ?)
男(ああ……眠い。ごめん、女さん。もう、起きてられなさそうだよ)
女「……あらら、寝ちゃった」
女「…………ばか」
みんなの評価 : ○
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