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元スレ八幡「俺の知らない俺がイル」

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101 = 1 :

八幡「存在しない敵を攻撃するために団結しているって……?」

陽乃「ある意味合理的じゃない? 誰も傷つかない世界の完成だよ?」

八幡(なんでそれ知ってんのこの人)

八幡「……それにしたって端から見たら」

陽乃「それは言っちゃいけない約束だよ、比企谷くん」

八幡「……というか、恨む相手がなんであれなんですかね」

八幡(彼らが一心不乱に投げる先にあるのは巨大な円筒形だ。上面に突起物がついているのが見える)

八幡(あれはまるで……)

八幡(……いや、皆まで言うまい。野暮な話だし、意味も理由もわかりたくない)

陽乃「外で充電切れにでもなったんじゃない?」

八幡(言っちゃったよこの人!)

102 = 1 :

八幡「……いろんなのが、いるんですね」

陽乃「だから言ったでしょ? 『なり損ない』だって」

八幡「…………」

陽乃「でも、みんな『比企谷八幡』になりたいって、そう願ったが故のこの現状なんだよ」

八幡「でもこんなの……っ」

陽乃「『俺』じゃないって?」

八幡(ああ、またか。この人にはすべてお見通しなのか)

103 = 1 :

陽乃「じゃあ君は誰なの?」

八幡「質問の意味がよくわかりませんが……」

陽乃「そんなに難しいことを聞いたつもりはないよ。シンプルな質問」

八幡「比企谷八幡、というのが望んでいる答えですか?」

陽乃「うん、そうだね」

八幡「俺が別人とでも言いたいんですか? 顔も声も何もかもが俺ですし、それに人は自分自身以外にしかなれないって言ったばかりじゃないですか」

陽乃「比企谷くんの言っていることは何一つ間違っていないよ。でもね」

八幡「はい?」

陽乃「今の君は比企谷くんじゃないよ?」

葉山「はっ? ……ってあれ?」

104 = 1 :

陽乃「確かに比企谷くんの言う通り、個人を個人たらしめるのは多くのものが必要で、否定するにはそれら全ての否定が必要だよね」

葉山「俺は……!? どうしてこんな……っ」

陽乃「ではそれは不可能かと問われればそうでもない。人がその人であるのは他人による認識が必要不可欠なんだよ。聞いたことない? 『人は二度死ぬ』ってセリフ」

葉山(聞いたことがある。昭和の作家の言葉だったはずだ)

葉山(一度目は肉体が滅んだ時で、二度目は人から忘れ去られた時。某少年マンガのおかげで知名度も高い文句の一つだ)

陽乃「ある個がその自我を保つとは、その個以外の存在から異なるものであるということを認識され、承認されること。そしてここはそもそもが第三者の認識によって成り立っている場所」

葉山「何が……言いたいんですか……?」

葉山(俺はついさっきまで『比企谷八幡』だったはずだ。なのに今の俺はなぜか『葉山隼人』だ)

葉山(なんと言えばいいんだろう。自分で自分の定義ができない)

葉山(俺が『比企谷八幡』だったという記憶は存在しているのに、俺の認識は自分が『葉山隼人』だと言っている)

105 = 1 :

陽乃「その認識は記号一つで簡単に瓦解しちゃうからね。キャラクターのアイデンティティなんてものは、作為的な錯誤によって容易に消えてなくなっちゃうくらいに脆弱なんだよ。だから――」

雪乃「こんなこともできるわ」

葉山「!?」

葉山(目の前の雪ノ下さんの姿が何の前触れもなく雪ノ下へと変わった。姿形や声も何もかもが雪ノ下雪乃そのものだ)

雪乃「世界なんて結局は実在しているわけではなく、あなた自身の脳内で形成された幻に過ぎないもの。だからその取っ掛かりが変わってしまえば世界なんて」

平塚「簡単に変わるんだ」

葉山「……っ!」

葉山(最早言葉にすらならない。目の前にいる人間が次々と別の人物へと成り代わっていく)

106 = 1 :

いろは「じゃあ先輩はそんなところでどうやって自分を自分であると言うんですか?」

小町「今、小町の前にいるのは誰なのかな?」

結衣「ヒッキー? それとも隼人くん?」

葉山「なんなんだよ……っ! これは……、こんなの……っ!」

陽乃「あーあ、めんどくさくなっちゃった。元に戻ろっと」

八幡「……!?」

八幡(唐突に全身に懐かしい感覚が戻る)

八幡(今の俺は、自分が『比企谷八幡』であると自覚できる)

八幡(それでも別人になった奇妙な感覚がへばりついていて気分が悪い)

陽乃「認識によって成り立っている世界は、別のものだと錯覚させてしまえば途端に輪郭がぼやけちゃう」

陽乃「実際そうでしょ? この世界を記号によって知覚し脳内で形成している君ならわかると思うけど」

陽乃「そうだよ。君に、話しかけているんだよ」

107 = 1 :

八幡「雪ノ下さん……?」

陽乃「あ、ごめんね。ちょっと別の人と話してた」

八幡「別の人……?」

八幡(辺りを見渡しても当然誰もいない。ここには俺と陽乃さんの二人以外、誰もいないのだ)

陽乃「まぁ比企谷くんには関係ない話だよ。さてと、話を戻すとね」

八幡「は、はぁ……」

陽乃「こんな風にちょっとしたことで君は誰にでもなれる。そんな数バイトで定義される不安定な存在の君は、はたして本物なのかな?」

八幡「本物って……、そうじゃなかったら何だって言うんですか」

陽乃「わかってるくせに。本物じゃないならそれは、偽物だよ」

108 = 1 :

八幡「偽物……」

陽乃「そう」

八幡「俺が、偽物……。……何を言っているんですか」

陽乃「じゃあ逆に聞くけどね。今君は隼人になった。目の前にいる私はいろんな別人になった。そんな超常現象を体験している君が、本物の『比企谷八幡』なの?」

八幡「そんなの……っ」

陽乃「本当は全部わかっているくせにー」

八幡「そんなこと……」

八幡(ああ、わかっている。何ならこの異世界漂流の途中から薄々気付いていたまである)

八幡(それでも気づかないフリを続けたのはなぜか。原因は一つに収束する)

八幡(恐怖だ)

109 = 1 :

陽乃「本物の比企谷くんがこんな目に遭うわけがないでしょ? ファンタジーの世界の住人でもないのに」

八幡「…………」

八幡(そんなの、当たり前の話だ。本来の俺はもっと現実的な世界に生きる、もっとひねくれた性格を持った高校生だ。こんな世にも奇妙な物語にもなりそうな事件に巻き込まれることは、到底あり得ない)

陽乃「そんな偽物の比企谷くんと話している私も同じように偽物だし、関わってきた人間もみんな偽物なんだよ」

八幡「みんな偽物……」

陽乃「そう。君が嫌った嘘と欺瞞の存在なんだよ」

八幡「……う」

陽乃「ん?」

八幡「……違う」

陽乃「えっ?」

110 = 1 :

八幡(この異変に巻き込まれてからずっと考えてきた)

八幡(どれだけ認めたくなくても、思考することはやめてくれなかった)

八幡(もしも俺が偽物であったとして、はたしてそれで俺の存在が嘘であると言えるのか)

八幡(否。『俺が今ここにいる』という事実は、決して否定し得ない)

八幡(俺は本物の『比企谷八幡』ではないのかもしれない。それでも『俺』という意識が存在していることは紛れもない事実だ)

八幡(『我思う、故に我あり』)

八幡(懐疑主義の泥沼に陥ったデカルトが見つけた唯一無二の真実)

八幡「『俺』が今ここにいることは嘘じゃない」

111 = 1 :

陽乃「でも、君は本物じゃないんだよ? なりたがってなり損なった、あの辺にたくさんいるのと同じ偽物」

八幡「……確かに、俺は本物の『比企谷八幡』じゃないのかもしれません」

八幡「でも、この世界にとっての『比企谷八幡』は俺なんですよ」

陽乃「?」

八幡「この世にも奇妙な物語にありそうな世界の中では俺は本物なんです」

八幡「逆にここにオリジナルがいたとしたら、そのオリジナルこそ偽物と言われるべきでしょう?」

陽乃「発想の転換だね。屁理屈とも言えるけど」

八幡「でも、事実じゃないですか」

112 = 1 :

陽乃「君は偽物は嫌いだとばかり思ってたけど」

八幡「別に好きじゃないですよ。でも俺に関係ないところの話ならわざわざ躍起になって否定なんてしません」

陽乃「ならなおさら、今の君は君自身が最も嫌う存在なんじゃないの?」

八幡(そうだ。自己矛盾を起こしてしまっていることは自覚している)

八幡「でも俺が、この世界が俺を『比企谷八幡』であると定義すれば、この世界にとっての俺は本物なんです」

陽乃「……?」

113 = 1 :

八幡「雪ノ下さんの口振りから察するに、この世界にとっての唯一無二の『比企谷八幡』は俺なんですよね?」

陽乃「……それは、あの有象無象と比較して言っているの?」

八幡「そうですよ」

陽乃「それはまぁ、この書き方はそうなんだろうね」

八幡「物事の真偽を相対的に決定するのだとすれば、俺らの世界を、俺を偽物と言及できるのは、その外部にある本物によってのみ」

八幡「つまりそれを抜きにして単体の、ある個体として考えればこれが本物なんです」

八幡(あまりにもムチャクチャな暴論だ。徹頭徹尾破綻してしまっている。でもそうでもしないと現状の肯定なんて無理難題はできやしない)

114 :

陽乃「へぇ。君ってそんな相対主義だったっけ?」

八幡「……どうでしょうね」

陽乃「ふぅん……。なるほどねぇ。同意はできないけど否定もしないよ」

八幡「でも……」

陽乃「でも?」

八幡「……いえ、なんでもないです」

陽乃「元の世界に戻りたい?」

八幡「!」

115 = 1 :

陽乃「いいよ、別に」

八幡「…………」

陽乃「ま、それも――」

八幡「偽物でも構わないですよ」

陽乃「……そう。君はそういう風に捉えるんだね。うん、わかった」

八幡「いいんですか?」

陽乃「見たいものは見れたからね。いろんな状況に陥って混乱する姿!」

八幡「そんな嬉々として言うことですか」

陽乃「もうちょっと本当のことを知って驚いて欲しかったけどな。ヒントを出し過ぎちゃった。失敗だね」

116 = 1 :

陽乃「じゃ、バイバイ」

八幡「雪ノ下さんは――」

陽乃「『私』はいないよ? こんなことができる『雪ノ下陽乃』は君の偽物にはいないからね」

八幡「……そうですか」

陽乃「同情とかしてるならそれは君の勘違いだよ?」

八幡「……!」

八幡(まただ。しかしもうここまでやられると驚きはしない)

陽乃「じゃ、そっちの私と雪乃ちゃんによろしくねー」

八幡「まっ――!」

キィィンッ!

117 = 1 :

――

――――

八幡「……ん」

結衣「あ、ヒッキーやっと起きた!」

八幡「ここは……部室?」

雪乃「寝ぼけているのかしら。あなた、ずっとここで寝ていたのよ」

八幡「寝てた……」

結衣「そうだよ。何だかうなされているみたいだったけど、怖い夢でも見たの?」

八幡(夢……だったのだろうか。今までの出来事は全部)

八幡(徐々に思い出してくる。そうだ、放課後俺はここに来て、珍しく他に誰もいなくて、昨日の夜更かしが原因の睡魔に襲われて……)

八幡(……と同時に夢の内容が薄れていく。さっきまで俺は――)

118 = 1 :

八幡「……さぁ、もうよく覚えてねぇよ」

雪乃「そう。夢なんてそんなものよね」

結衣「あたしもすぐに忘れちゃうなー。たまに良い夢だったりすると残念って思う!」

八幡(もしもあれが夢でなく現実だったとしたら……)

八幡(……いや、今となってはもう無意味だ。胡蝶の夢と何ら変わりない空想でしかない)

八幡(同様に今の世界や俺自身が偽者であるかどうかもまた判断し得ない)

八幡(まぁ、どちらにしても変わらないが)

雪乃「ねぇ、葉山くん」

葉山「えっ?」

119 = 1 :

八幡「今、なんて……」

雪乃「どうしたのかしら、ヒキガエルくん。そんな比企谷くんに飲まれたような顔をして」

八幡「もはや訳がわからないんだが」

八幡(……今一瞬、変な感じが)

八幡(気のせいか……?)

雪乃「はい、紅茶。冷めちゃうからあなたの分は入れてなかったの」

八幡(そう言って雪ノ下が『紙コップ』にポットの中身を注ぐ。)

八幡(良い香りだ。その心地よさにさっきまで考えていたことがどこかへ飛んでいってしまった)

120 = 1 :

八幡(紅茶を口に含み何となく窓の外へと視線を移す)

八幡「もう冬も終わりだな」

結衣「そうだね。あっ、今度みんなでお花見しようよ!」

八幡(花見か、悪くない。それには是非戸塚を呼ぼう。小町も呼んで、いやあいつは呼ばなくてもついてくるか)

八幡(あとは平塚先生に逗子に藤沢に、……材木座も来ちゃうなそれ)

八幡「ま、行けたら行くわ」

八幡(そんな来るかどうかもわからない未来に胸を馳せながら、俺はもう一度紙コップに口をつけた)



121 = 1 :

以上で終わりです。
長い間お付き合い頂きありがとうございました。かなり迷走しましたがやりたいことは全部やれました。
最後に過去作載せますので、よかったら読んでみて下さい。

八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」

八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語はまちがっている」いろは「特別編ですよ、先輩!」

八幡「はぁ、だりぃな……」葉山「やった!!」

八幡「はぁ……」戸塚「どうしたの?」葉山「やった!!」

八幡「嘘だろ……小町が……?」

八幡「はぁ、小町……」??「やった!!」

八播「誰かが俺のことを呼んでいる」??「ねぇ」【俺ガイル】

八幡「気の向くまま過ごしてた二人だから」雪乃「そうね」

雪乃「安価で比企谷君を更生させましょう」 八幡「はぁ?」

【俺ガイル×世にも】八幡「諸行無常……ってそれは違うだろ」

いろは「私、先輩のことが、好きです」八幡「……えっ?」

八幡「一色が死んだって……?」

結衣「うたかた花火」

八幡「その時には俺は死んでいた」

123 :

pixivにも載せてんだな閲覧数やブクマ、コメ欄の感想共に評価最低の妥当な評価だったが
HACHIMANvsとかいう糞ssの後追いだろ?便乗する主体性のない糞錯者は死ね塵

124 :

おつおつ

125 :

なんとなくそんな気はしてましたが、貴方でしたか。面白かったです。お疲れ様

126 :

面白かったわ 乙


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