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    元スレルナ「ルナのお友達になってくれる?」八幡「や、その友達とか良くわからないんで」

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    201 = 98 :

    それなりに満足したらしい医師が去ったあと、自分がなぜここにいるのかを考え始めた。

    俺は異世界で調査という名の遭難していたはずで、こんな現代社会に舞い戻ってしまうような出来事はなかった。

    しかも、自分の姿は手も足もない光の玉になっていたはずだ。

    ルナと話した後、自分の身に一体なにが起きたんだ。

    混乱が極まってきたところで、病室の扉が静かに開かれた。

    陽乃「ひゃっはろー。なんて、今の状況には合わないか」

    彼女は自嘲気味に挨拶をすると、俺に小さく手を振った。

    陽乃「比企谷君、お医者様から聞いたよ。

    ひとまずは、無事でよかった」

    八幡「...雪ノ下さん」

    陽乃「大丈夫。比企谷君の抱いているであろう疑問は、全て解決してあげる。

       わたしはそのためにやって来たんだから。それと、謝罪もしなきゃね」

    陽乃さんが表情を曇らせて言った。

    202 :

    ダイブ式の仮想現実?
    しかもこれ他のメンバーも知ってた可能性大?

    203 = 98 :

    陽乃「そもそもの話をすると、比企谷君は異世界に行ってないの」

    八幡「は?」

    陽乃「異世界に見えるような、映像を脳に送り込んだだけ。

       異世界にあるものに触れたとき、その刺激を脳に与えただけ。

       比企谷君は、この世界にずっと存在していたし、それを私たちは観察していた。

    あのとき、比企谷君が乗ったのは異世界探査機じゃない。

    あれはね、とある企業とうちの大学が共同で開発したゲームの試作機なんだよ」

    八幡「つまり、俺は実験動物だったわけですか?」

    陽乃「動物でテストする段階はとっくに終わっている。

    これは最終段階、人間でしないと意味がないものなの」

    陽乃さんは出来の悪い生徒を愛しそうに微笑みかける。

    陽乃「それに人間による実験もこれまで何千回としてきた。

    比企谷君が、不幸なことになる確率は非常に低かったよ」

    八幡「じゃあその延長で、俺は無作為に選ばれたということですか」

    陽乃「ううん。比企谷君はね、いちばん過酷な条件で挑んでもらったの。

    比企谷君の会った子たちを、覚えてる?彼女らは、心に傷を負っているたでしょう。

    そういった子と関わって、さらにひどい目にあうようなストーリーを選んだの。

    彼女らと共感しやすい人間を主人公に据え置くことで、どのくらいのストレスが発生して、どのような影響がでるのか、調べる必要が私たちにはあった」

    八幡「なんのためにですか」

    沸き上がってきた怒りを懸命に抑えながら、尋ねる。

    204 :

    陽乃「比企谷君は、耐久試験を知ってるかな。

    自動車とか、そういった人間の命に関わるようなものには必ずそれをするの。

    自動車が衝突したとき、どれくらいの圧力が発生して、どれくらい破壊されるのか。

    気温が零度のとき、あるいは40度を超えるような猛暑のとき、エンジンはしっかりと回るのか。そういったことを調べるのが耐久試験。

    でもね、これには一つ大きな欠点があるの。分かる?」

    八幡「...いくら調べても、きりがないってことですか」

    陽乃「さすがだね。確かにありとあらゆる条件を調べれば、その分安全性は増すよ。

    だけど、時間とお金がかかり過ぎる。

    とくに現代社会の歩みは、そんなことを待ってくれない。

    企業が生き残るには、実際の生産までいかに早くたどり着けるかがとても大切。

    こういうときの常とう手段が、極限な状態での試験なの。

    より速い速度で、衝突して安全を確保できるか

    より低い気温、あるいはより高い気温下でエンジンが回るか。

    現実的ではないけれど、安全を証明してくれる一つの方法。

    それが比企谷君が選ばれた理由、納得してくれたかな」

    205 = 98 :

    八幡「つまり、俺が精神的に脆弱だから、選ばれたわけですね」

    刺々しく言い放つと、陽乃さんはさらりとかわした。

    陽乃「あれ、言ってなかった?。比企谷君は強かったよ」

    八幡「え?」

    陽乃「途中まではいい感じに絶望していたんだけど、急にルナ様の屋敷へ向かうーだなんて言い出してから、ハイになってさ。

    それからは意図的に状況がまずくなるようにしたんだけど、やりたい放題だったもんねー。

    その後、あの子が死んだとき、君は強いストレスを感じたけれど、あれは私も同じくらいの値を示したからやはり正常だね」

    八幡「陽乃さんも、したんですか」

    陽乃「もちろん。私の場合、あの子を改心させたところまではよかったんだけど

    目の前で骸骨にばっさりやられてね。あれはきつかったなー」

    八幡(それで、ストレスが同じ値かよ。

    俺の心が硝子でできているなら、陽乃さんの心はミスリルでできているな。現実のものでは推し量れないという意味で)

    206 :

    陽乃はゲームだっていう前情報ありだったのかな?
    それなら八幡の方が精神強度が上になりそう

    207 = 98 :

    陽乃「だから、今回の実験は、データとして企業に提出できるかは微妙なラインだね。

       これから、また実験をしなければいけない」

    八幡「またいたいけな少年少女を毒牙にかけるんですか」

    陽乃「ひどいなぁ、私だって、好きで嘘をついたわけじゃないよ。

       実験する前に情報を与えたかったけど、それでストレスが軽減されるようなことがあればデータに全く意味がなくなる。

       実際、私は研究に着手していたから、私の冒険データは認められない。

       すべて消去されて、記憶の中にしか残らないんだよ」

    八幡「…そういえば、それが異世界探査機という偽の説明は雪ノ下から聞きましたね」

    ワームホール理論だの宇宙ひも理論だの持ち出して理論で俺をねじ伏せた、雪ノ下の辣腕たるやまさにユキペディアの称号にふさわしい。

    もちろん、多少の嘘が含まれたもっともらしい事実、と言う意味でだ。

    陽乃「比企谷君は、雪乃ちゃんを信用しているようだったから、私からお願いしたんだよ。

       何度も泣きついて断られて、交渉に交渉を重ねた末のものだから、責めないであげてね」

    八幡(まあ、陽乃さんの本気の交渉にかかれば、俺にもカラスは白いと言わせることができるだろう。というか、カラスにスプレーをかけて染めるまである)

    陽乃「さて、大体説明したかな。比企谷君」

    陽乃さんは、ぴしりと姿勢を正して俺を見る。

    208 = 98 :

    陽乃「このたびは実験の件でご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。

    私の認識不足で、比企谷様を危険に晒したことは弁解の余地もありません。

    今後は二度とこのようなミスがないよう、最新の注意を払う所存でございます。

    何卒ご容赦のほどお願い申し上げます」

    陽乃さんは、両手を重ねて、頭を下げた。

    年上の女性に、ここまで真摯に謝られたことのなかった俺は、正直面食らってしまった。

    そしてすこしだけいいなと、思ってしまう。

    あの陽乃さんが俺に謝るなんて、もう望めないだろう。

    俺は数秒間、勝者の余韻を味わってから、頭を上げるよう伝えた。

    八幡「分かりました。もう、俺にちょっかいをださないでくださいね」

    陽乃「比企谷様とは、末永くお付き合いしていただきたく存じます」

    彼女は自然に筋肉がゆるむような笑顔で言った。それを見たら、俺はなにも言えなくなってしまう。

    けっして、美人に弱いわけではない。

    好意から発せられる本音に弱いのだ。

    209 = 98 :

    それから陽乃さんは、立ち去ろうとしていた。

    時刻をみると、すでに夕方だった。

    彼女が病室のドアに手をかけたところで、不吉な言葉を放つ。

    陽乃「そういえば、比企谷君が意識を失ってから雪乃ちゃんと、ガハマちゃんがすっかり気落ちしちゃったんだよね。

    ガハマちゃんなんて、後から説明したのに、私を止められなかった責任を感じているみたい」

    おもむろに額に手をあてて、物憂げなため息をついてみせる陽乃さんは、諸悪の根源である。

    八幡「雪ノ下さんが、なんとかしてください」

    陽乃「もちろん、私からもフォローするよ。でも、あの子たちが欲しいのは、私からの言葉じゃないんだよねえ」

    そう言い終わらない内に、陽乃さんの携帯端末が唸る。

    陽乃「比企谷君のことを知らせたから、もうすぐ来るんじゃないかな」

    彼女は端末を開きもせずに、言った。

    ...、陽乃さんが俺を精神的に成長させるために、今回の件を仕組んだとしたらと疑ってしまう。

    だけど、それでも感謝はしよう。陽乃さんと、俺を変えてくれたら物語と登場人物に。

    八幡「雪ノ下さんに、一つだけお願いがあります」

    陽乃「ん?なにかな。珍しいね、わたしにお願いなんて」

    八幡「あの子たちが幸せになれるエンドを、作ってほしい。

       もし、一般人があれを売り出しても、ヒットしないと思います」

    陽乃さんは、真顔でくるりと振り替えた。

    陽乃「私も企業に掛け合っているところ。

    プロデューサーがなかなかの難物で時間はかかるけれど、きっと作ってみせる」

    自信に満ち溢れたその言葉に、安心した。

    彼女なら、きっと叶えるだろう。

    それが雪ノ下陽乃という、女性なのだから。

    彼女が去った病室は、静かでほの暗かった。

    だけど、これから夜にかけては、きっと騒がしくなるだろう。

    比企谷八幡が、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜由衣に話したいことはたくさんあって

    彼女らもまたそれを貯めこんでいるだろうから。

    やはり俺の青春ラブコメは間違っている。それが分かったのだから、今回の物語に意味があったと、強く思う。




    おわり

    210 = 98 :

    半年以上ありがとうございました
    不適切な発言で非難轟轟のときがありましたが、励まされて続けることができました
    最後に言いたいのは

    読んでくださった方たちの感想なら悔いはないさ

    213 :

    おっつん

    214 :

    シャドバ知らないけど読んでたがもう終わっちゃったか

    215 :

    エレファント速報から来たゾ
    すげー好きだわこれ
    陽乃が体験したときの話も書いてほしい
    それかラビットネクロマンサーとルナが救われるルート

    216 :

    そう言って頂けると作者冥利に尽きます
    次作は考えていなかったのですが
    願わくは読者と作者が楽しめるssを投稿したいとと思います
    感想を書いてくださったことに改めて感謝いたします

    218 :

    初期の地雷ss書き感からの後半の黙々と投下し最後に丁寧な挨拶をのべて去っていく一流ss書き感のギャップに草


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