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    元スレルナ「ルナのお友達になってくれる?」八幡「や、その友達とか良くわからないんで」

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    151 :

    見えない敵を口撃するには自分が言われて痛い言葉を無意識に選ぶとか云々

    152 = 98 :

    それでも構わない。

    できることは、もう少ないのだから。

    八幡「で、だ。お前に契約を上書きする余力は残っているのか」

    ルナ「ううん、もう一滴だって残ってない。あの化け物のせいで、力を使い果たしちゃった…」

    彼女のよわよわしい声音を聞くと、演技しているようには思えなかった。

    八幡「それなら、俺がここにいる意味もないな」

    俺は踵を返して、礼拝堂の出口へ向かう。

    ルナ「……明日になれば、できるかもしれないんだよ」

    八幡「くっ」ザク

    俺としたことが彼女の提案に、笑顔がこぼれそうになる。腕を引き裂いて、ぎりぎりこらえたが。

    八幡「ルナは案外正直なんだな。でも、それだと遅いんだ」

    ルナ「え?」

    八幡「それに、お前は無闇に力を使わないほうがいいらしいぞ。

    いつか枯渇してしまうんだと、ラビットさんが言っていた」

    ルナ「…ルナの心配するなんて、意地悪なのにおかしいよ」

    八幡「心配とは大げさだな。ただの世間話だ」

    それに、人生の最期くらい善行をしておけば、神様も慈悲をかけてくれるかもしれない。

    カンダタだって、人生に一度だけクモを助けて糸を垂らしてもらえた。

    ....なんだかんだで、結局地獄には堕ちてしまうのだけども。

    蜘蛛の糸ならぬ、梯子に手をかけたところでルナが声をかけた。

    ルナ「ヒッキーが死んだら、契約してあげてもいいよっ

    へんなことを考えないように、ルナの『家族』にするもん」

    八幡「そいつはどうも。だけど、今から新しく家族になるには、結婚でもしないと無理だ」

    ルナ「ケッコンってパパとママがしていたやつだ」

    八幡「そうそれ。親父曰く、この世で最も危険で陰湿な牢獄に閉じ込められることを意味するらしいぞ」

    ルナ「うー、パパとママは幸せそうだったよ」

    八幡「それは稀な例だな。ちなみに、離婚率は増加傾向にあるらしい」

    ルナ「ヒッキーとなら大丈夫だよ。ルナ、頑張れるもんっ」

    確かに、専業主婦として生きていくには、彼女は格好の夫かもしれない。

    なにせ、この大きい屋敷のご令嬢だし。幽霊だから食事用意しなくていいし。

    幽霊になったら実はすごい節約だよなーって。何を考えてんだ、馬鹿らしい。

    153 = 98 :

    八幡「…そうだ。もう一つ聞いておきたいことができた」

    ルナ「ん?」

    八幡「もし俺が死んだら、ラビットさんの契約はどうなるんだ。守るべき対象がいなくなるんだから、取り消しか?」

    ルナ「そうだよ。でも、幽霊になったら継続するよ。幽霊でもヒッキーはヒッキーだから」

    八幡「ほう、そうなのか」

    その返答を聞いて、俺はある種の決意を固めた。

    八幡「やはり、俺が死んでも契約はしないでくれ」

    ルナ「なんで?」

    八幡「ラビットさんと永遠に喧嘩しそうだから。いつか口論の末に刺されるまである」

    俺は、梯子を駆け上った。

    ルナ(…兎のお姉さんが、いるからだめなんだ)

    ルナ「ルナ、頑張るよ」グッ

    八幡「?。いや、頑張るな。俺は死んだらそのままがいいんだ」

    ルナ「うんっ!」

    八幡「分かってるのか?」

    ルナ「分かってるってば。早く死んで来てね」

    八幡「」

    154 = 98 :

    待ってくれた方、ありがとう
    今日は終わりです

    155 :

    読んでるよ

    158 :

    SS自体はかなり面白いから、外野に反応はあんまりしない方がいいぞ
    この板はそういうのに噛み付く人がいっぱいいるからな

    159 :

    全然反応してないのに反応しないほうがいいぞとかウケる

    160 :

    蓋を押し上げて、地獄からはい出た。

    天国とはほど遠い場所だが、新鮮な空気があるだけで人心地がついた。

    裏口の扉によりかかって、息を整える。

    八幡「…『早くしんできてね』、なんて嫌な送り言葉だよ。戦地に向かう若者にでもなった気分だ」

    既に死亡しているルナにとって、何気のない言葉だったのだろう。

    だけど、死に直面している人にとってはあまりに重く、冷たい言葉だ。

    八幡「行こう」

    それでも動けたのは、このままでは奴等にラビットさんが殺されるという、恐怖からだった。

    燃えるような勇気ではなく、身が竦むような恐怖で。

    まっすぐな正義ではなく、良心の呵責で初めて、誰かを救える。

    どこに行っても、自分は変われない。

    それでも行動の結果は同じことが、唯一の救いだ。

    俺は、裏口からよろめくように出て、死を求めた。

    もちろん自[ピーーー]る勇気なんてものは、これっぽっちも持ち合わせてはいなかった。

    161 = 98 :

    訂正

    蓋を押し上げて、地獄からはい出た。

    天国とはほど遠い場所だが、新鮮な空気があるだけで人心地がついた。

    裏口の扉によりかかって、息を整える。

    八幡「…『早くしんできてね』、なんて嫌な送り言葉だ。戦地に向かう若者にでもなった気分だ」

    既に死亡しているルナにとって、何気のない言葉だったのだろう。

    だけど、死に直面している人にとってはあまりに重く、冷たい言葉だ。

    八幡「行こう」

    それでも動けたのは、このままでは奴等にラビットさんが殺されるという、恐怖からだった。

    燃えるような勇気ではなく、身が竦む恐怖で。

    まっすぐな正義ではなく、良心の呵責で初めて、誰かを救える。

    どこに行っても、自分は変われない。

    それでも行動の結果は同じことが、唯一の救いだ。

    俺は、裏口からよろめくように出て、死を求めた。

    もちろん、自殺する勇気なんてものは、これっぽっちも持ち合わせてはいなかった。

    162 :

    化け物達と再び遭遇するのにさほど時間はかからなかった。

    向こうはこちらを探していたようで、屋敷の周りをうろついていた自分に気が付くと同時に疾駆してきた。

    地面を滑るように移動する化け物のおぞましさに、思わず一歩後ずさった。

    が、そこで留まったのは、俺は大馬鹿野郎だからだ。

    それから俺に襲い掛かろうとした化け物を、女戦士がなだめたのは不幸のつき始めだった。

    女戦士は、俺にうつ伏せに寝かせたかと思うと、両足の健を剣で手際よく傷つけたのだ。

    それから堪えずに周囲に響き渡った絶叫をかき消すように、静かに宣言した。

    天剣の乙女「これで、お前はまともに歩行することは叶わない。さきほどのようにはいかないと思え」

    痛みで悶絶しているときでも、その言葉は自分の心に深い影をおとした。

    すぐに、ことを済ませる気はないのか。

    せいぜい、ありったけの憎しみをこめて女戦士を睨みつける。

    すると、彼女は憐憫の表情を浮かべた。

    天剣の乙女「あのまま逃げてしまえば、私たちはきっと見つけることはできなかった。

    なのに、どうして出てきた」

    八幡「答えると、思うか」

    天剣の乙女「いいや、無意味な問いだ。だが、問わずにはいられなかった。

    この短時間で、お前をそこまで絶望させたものを知りたくなる」

    女戦士は、そこでふっと思いついたように尋ねた。

    天剣の乙女「あの子は、どこに置いてきた?」

    八幡「……。」

    天剣の乙女「フッ。お前も真実を知って、怖気づいたか。

    たとえそうだとしても、私は責めたりしない。助けるという行為は、自らを強いと信じている連中がすることだ。

    お前の助けなんて必要ないくらい、あの子は強く、かつ狂っていただろう?」

    163 :

    助けることは強者の驕りだと、彼女は言っている。

    しかしそんな理屈は、自分に通用しない。

    なぜなら、俺は弱者だからこそルナを助けた。

    そして、命を投げ出すような行為までしている。

    これが、強者のすることなんて、とてもとても言えない。

    八幡「アンタはまるで、見てきたように言うんだな。だが、大外れだ。

    そんなたいそうな理由で、ルナを置いてきたわけじゃない」

    歯を食いしばって、低い声で凄むと彼女は眉をひそめた。

    一瞬、視線が交錯してから、彼女は剣を下して肩をすくめてみせた。

    天剣の乙「非礼を詫びよう。どうやら、私が間違っていたようだ」

    あっけからんとした謝罪に、呆然とする。

    彼女は首元に飾られたロザリオを、掌に載せてみせた。

    天剣の乙「私は、生まれたときより主と共にあった。

    それから毎日欠かさず主を信奉し、主の教えを守り、無垢なる純潔を守り、神の兵となることを希望した」

    彼女は物憂げな瞳でそれを眺める。

    天剣の乙「これまでの日々で、邪悪を感じとる力はつけたが、とうとうなにか尊くて守るべきものを得ることはなかった。

    最近は特に、そう感じているよ」

    八幡「お、おう」

    目の前で自分の世界に没入されると、居場所がない。

    あと、この人マイペースだな。横から化け物が、じりじりと忍び寄っていることに気づいてないのだろうか。

    ホラー映画だったら間違いなく、数秒後にはスプラッターな場面になっている。頂けないことに、今回の被害者は自分だが。

    天剣の乙「だからこそ、救いを求める。すべての人間が個人であり、自由であり、それぞれが望む世界を開く。

    …私は、過去を全くないものにしたいわけではない。

    だが、私にも愛されて生まれた子として生きる権利はあると思うのだ。

    そもそも自身の幸福なしに、全世界の幸福なぞありえぬだろう?」

    なかなか直線的な考え方をするんだな、この子。実際、喋り方のせいで大人びてみえるが、いいところ陽乃さんくらいの年齢だ。

    八幡「それが、今の俺と何の関係があるんすか。宗教の勧誘なら、お金、もっていないですけど」

    164 = 163 :

    天剣の乙「お前たちは、その為の礎となれ。

    世界を開く門をつくるには、まず穴をあける必要がある。莫大なエネルギーが必要なのだ。

    例えば、大量の魂を消滅させたときのような」

    脳裏に呼び覚ましたものは、ラビットさんが屋敷で兎を爆発させたときのことだ。

    あれをもっと、大規模に起こしたらどうなるのか。

    確かに、空に亀裂が入るくらいには激しい爆風と熱をまき散らすだろう。

    そのための燃料代わりが俺たちね。

    八幡「わざわざ、ご説明してくれて助かる。なら、そろそろ介錯して魂ごと消滅させてくれるか」

    半ば本気で尋ねると、彼女は重々しく口を開いた。

    天剣の乙「恨め。お前を殺したのは私だ」

    それは罪の告白であり、彼女がそれでも進むことの意思表明だった。

    また、こんなバカげたことのために彼女は数分の間俺を生かしたのだ。

    なんて不器用な生き方だ。

    八幡「お前は、一生、幸せにはなれないと思うぞ」

    彼女の持つ剣の先は怯えるように震えた。

    それでも、一人の男の頸動脈を掻き切ったことは、某かの幸せを呼び込むはずのものだった。俺も、そう信じていた。

    165 :

    死んだあと、人はどうなるのか。

    その問いは、死んだあと帰ってくるものがいないかぎり永遠の謎である。

    しかし、俺はこの謎を解いてしまった。

    すなわち、一つの光の粒子となって、黒く覆われた世界を血液が如く巡るのである。

    周りには、似たような粒子がいくつもあり、それぞれが異なる色と形状をしている。

    青や赤、色鮮やかな原色が重なり合い、万華鏡のような様相を呈しているのに対して

    俺は、薄汚れた灰色である。なぜだ、とは問うまい。

    さりとて居心地も悪いのも事実、徐々に本流から外れて末端も末端、最も粒子の少ない場所に居座った。

    そして、現時点の状況を考える。

    俺は、死んだはずだ。

    あの女戦士に毒を吐いてから、もの見事に一撃で命を絶たれた。

    思わず首に手が伸びるが、果たして、どこが首で手なのかさっぱり分からない。

    特にすることもなく、その場でぐるりと一回転する。

    すると視界の大部分を黒色の毛で埋め尽くされていたが、その向こうに銀色に輝く物体が見つけた。

    はて、どこかで見かけたような気がする。

    果てしなく重い毛に体を押し付けるようにして、その正体を見極める。

    それはどこからどう見ても…女戦士の甲冑だった。

    そして、奇妙な低い音色がどこからともなく響き、女戦士がそれに答える。

    戦士「さっきの相手は…だった。今度は、あの子を探し出し…魂を…抜く」

    今度は満足気に鼻をならすような音色が心地よく流れる。

    それからは、ずん、ずん、と軽い振動が下から伝わってくる。

    まるで、歩いているような…。

    そのとき、自分の腕があれば精神を安定させるために、えぐっていただろう。

    なぜならここが天国ではないとしたら

    あの化け物の身体の中かもしれないという予感が、その灰色の粒子をますます暗くさせたからだ。

    166 = 98 :

    化け物の『中身』は犠牲者の魂だった
    彼女らは魂を刈っていたのです。より強力な魂を求めて

    間もなくくる展開はグロ暗いです、ご注意ください
    今日はおわりです

    168 :

    死が終わりと同意義ではないのなら、日本の自殺者は減るだろう。

    記憶や思考能力がそのままで、姿はどういうわけか光の玉になる。

    失ったものは、外界へ干渉する力だ。

    声は出ないし、何かを押すほどの力も重さもない。

    鋼鉄の虫かごで這い回る蟻になったような、焦燥と無力感が襲う。

    これは、地獄だ。

    なまじ、外界を観測できることが苦痛になる。

    化け物と女戦士は、なんらかの確信を持って屋敷内を荒らしはじめた。

    恐らく、俺が見つかったせいで近くにルナがいると思われたのだろう。

    死ぬことに夢中になっていた、自分のせいだ。

    ルナに対する親しみや同情はほとんどないが、自分のせいで危険な目に遭うのは、違う。

    臆病者の正義に、反している。

    169 = 168 :

    自分を裏切った罪を、これから背負うことになるだろう。

    死でも、償えないものができてしまったと思った。

    俺の意思とは無関係に屋敷内の家具が、音を立てて破壊されていく。

    化け物の馬鹿力によって、居間の三人掛けのソファは無残にもひしゃげて趣味の悪いオブジェクトへ変貌した。

    書斎に置かれた本棚は乱暴に倒され拍子に、内臓をぶちまける。

    例の簡素なアルバムは、念入りに踏みにじられ、千々に破かれる。

    そのたびに、化け物は征服感に満たされる。そして、咆哮を上げることで、どこかに隠れている獲物を挑発する。

    この惨状を見たら、ルナは嘆き苦しむだろう。

    幸せな思い出を他人に穢されて、平気でいられる人間はいない。

    まして霊は言うに及ばず。

    その姿を想像するのは、怖くてできなかった。

    理不尽に虐げられた子供の泣く姿をみると、人は傷つく。

    過去の自分と重ねてしまうからだと、思っている。

    だから、自分の放つ光が増々濁っていくのを感じながら、それをただ見ていた。

    170 :

    このウンコSSまだ続いてたのか

    171 :

    完結まで見たいからウンコは我慢しとけ
    もしくは一人で漏らしとけ

    172 = 168 :

    長い時間が経った。

    広い屋敷の大半を破壊したところで、安息じみた沈黙が訪れた。

    暴れまわっていた化け物が、ぴたりと動きを止め

    居間の暖炉を調べていた女戦士が、顔あげて慎重に剣を引き抜く。

    何事かと目をこらすと

    彼らの視線の先には、お世辞にも可愛らしいとは言えない顔立ちの、普通の大きさの兎が窓の前に立っていた。

    兎は、耳が萎えさせて言う。

    「あぁ今日は糞日だ。一発で見つけちまうなんて、この優秀すぎる耳が憎いぜ」

    それから、窓から外へ飛び出した。

    それを見て、化け物は狼のようにしなやかに跳躍し、後を追う。

    圧倒的な加速によって、景色がぼやけて見える。やはり、彼らの体のつくりは人間のそれとは異なるのだろう。

    兎以上の速さまで加速した化け物はあっという間に兎の背後に迫り、その手を伸ばす。

    「早ぇな!?」

    気づいた兎は進路を変えようとするが、時すでに遅し。

    化け物は、跳躍の為の隙を見逃さなかった。

    兎の縮められた脚を掴んだ瞬間

    「かかったな。糞人間」

    厭味ったらしい言葉と共に膨れ上がったと思うと、今まで圧縮されてきた紅蓮の炎波と目も眩むような極光が中から一斉に放たれる。

    思わぬ反撃を食らった化け物は、たまらずけたたましい悲鳴をあげて転げまわった。

    目の前が二転三転し、滅茶苦茶に叩き付けられる。

    だけどその間に、声を聴いたのだ。

    ラビ「ちゃんと手加減はしたわね?」

    大兎「あのサイズでは、したくなくてもそれと同じ結果になります。

    しかし、あれが本当にあの男なのですか?見た目がよりおぞましくなっております」

    ラビ「微かだけど、彼の魂をあれから感じるのよ。契約の効力も途切れていない」

    大兎「けっ肉体は失ったようですが、しぶとい」

    ラビ「…でも、よかった。終わってなかったのよ」

    最悪だ。終わっていたほうがまだましだった。

    173 = 168 :

    今夜は寝るまで書くので悪しからず
    完結したい

    175 :

    ここまで上手くいかないことなんて、これまであっただろうか。

    いや、割と思い当たるのが憎い。

    だけど、これだけは上手くいってほしかった。

    失敗したときはそう思うのだが、それでもだ。

    きっと、誰かの命を守りたいと願うなんて、初めてだからだろう。

    願いとは裏腹に、化け物は態勢を立て直し、叢から現れた彼女と一匹を睥睨する。

    獲物ではなく、殺すべき敵だと認識したのだ。

    同時に、背後から甲冑が鳴る音が聞こえた、

    天剣の乙「兎の霊を操る能力からして、あの子だと思ったのだが。日に二度もネクロマンサーと会うとは思わなかったぞ」

    ラビ「ねえ、ぶっ飛ばされたくなかったらあの毛むくじゃらに閉じ込められてるヒッ、ある男の魂を返してよ」

    天剣の乙「お前は自分の立場をまるで分かっていないな。並みのネクロマンサーが、私たちに太刀打ちできるとでも?

          今すぐ、逃げるべきだぞ。これが、それを許すかはまた別だろうが」

    大兎「けけっそんな傷だらけの姿で言われても、説得力がないです。逃げたいのはそちらでしょう?」

    正に売り言葉に買い文句で、一触即発の状態だ。

    逃げなければ本当に、殺されるのだと、ラビットさんに伝えたい。

    俺の為に、傷ついたり、死んだりするのは間違っていると伝えたい。

    俺がこんな姿になったのは、ラビットさんを巻き込まないためだったのだと伝えたい

    それで納得してくれれば、彼女は逃げてくれる。

    なのにどうして、言葉がでない。

    176 :

    オリキャラでやったら?
    原型留めてないし

    177 :

    面白いぞ、続けてください

    178 :

    俺に需要があるので最後まで見せてくれ

    179 :

    激しい感情は全身を駆け巡り、出口を求める。

    だけど、それまでだ。

    目を閉じることも、声にだして発散することもできない。

    感情は蓄積し、沸きかえり、無理やり押し込まれる。

    だめだと思っても、ラビットさんに目線を釘付けにされる。

    そして、気づいてしまった。

    彼女は、一見落ち着きを払っているようで、足が震えていたのだ。

    身も凍えるような悪意を放つこの化け物に怯えているのか、それとも実際に人を殺した女戦士に対してか、あるいはその両方だ。

    俺が、彼女に勝ち目がないと悟った瞬間、化け物は動いた。

    その爆発的な加速と共にまっすぐ彼女たちに向かうのではなく、あえて弧を描くようにして駆ける。

    大兎「この野郎ォ!」

    大兎は場を圧するように吠えると、彼もまた化け物に向かって突進する。

    二つの生き物が凄まじい勢いで、ぶつかり合った。

    そして、運動量の法則によって、両者ともに弾き飛ばされる。

    しかし、化け物はすぐに立ち上がり息をつく間もなく、襲い掛かる。

    まるで磁石のようにお互いに引き寄せられるように、幾度もなくぶつかるが

    化け物は決して取っ組み合おうとはしない。

    あの爆発を、警戒しているのだろう。

    もし女戦士の言う通り、魂を消費して爆発させるなら

    大兎は慎重に機会を伺う必要があるのだろう。

    もし失敗すれば、ラビットさんは一人で化け物と女戦士の相手をしなくてはならなくなる。

    それは、死を意味していた。

    180 = 179 :

    一方で、女戦士は卓越した剣術と盾さばきで、ラビットさんと悠々と渡り合っていた。

    ラビットさんが四方八方から繰り出す兎は、爆発する前に剣の錆になるか、早く爆発してしまい盾で防がれている。

    そして、ラビットさんの攻勢が弱まるのを辛抱強く待っている。

    その時が訪れれば、一瞬で勝負はつくとみているのだ。

    なのでラビットさんは、手を弱めるわけにはいかない。

    彼女は注意深く後退しながら、距離を置こうとしている。

    また時折、化け物と大兎の戦闘を盗み見ている。

    その隙を狙われ、危うく剣を躱し、兎を放って反撃をする。

    彼女がなにかを狙っているのは、明らかだった。

    181 = 179 :

    大兎と化け物の衝突の回数が、両手両足では足りなくなったところで

    ラビットさんは、決心したように女戦士に向かって言った。

    ラビット「友達とすこし話があるから、離れてもらうわ」

    その手には、四十枚余りのカードが束になっていった。

    ラビット『この敵を、私に近づけないで』

    一瞬の後にカードはすべて砕け、現れた兎の一群がラビットさんを守るように陣をしく。

    戦士「私を相手にこれほどの余力を残していたとは、賞賛に値するぞ。…次はないようだが」

    ラビットさんは、女戦士を大きく後方へ退かせたことを確認してから、肩で大きく息をする。

    彼女は短距離を全速力で走ったかのように、初めてこの戦闘で疲弊を見せた。

    それでも、彼女はするべきことがあるのだ。

    彼女は深呼吸をして息を整えてから、大兎に向かって窘めるように語りかけた。

    ラビット「もういいわ。力づくでは、その毛むくじゃらを倒せないのが分かったから」

    母親のように柔らかい声は、殺伐としたこの場にふさわしくない。

    女戦士は怪訝な表情で、ラビットさんを見る。

    しかし、肝心の大兎は見向きもせず

    大兎「まだ分からねえ!」

    と怒り心頭といった様子で叫び返した。

    182 :

    ラビットさんは、彼の勇ましい言葉に口元を綻ばせる。

    ラビ「そう。あなたなら、きっと倒していたと心から思う。

    あなた、負けたことがないものね」

    大兎「なら、そこで見てろ!こんな野郎は、すぐにぶったおす!」

    敬語もなにもない、荒々しい獣性を露わにし目の前の敵を押しつぶさんばかりに突撃をする。ラビットさんは、その様子をじっと眺める。

    ラビ「だって、賢いものね。勝てない相手が現れたときは、私を背負って逃げてくれた。

    魔女狩りに襲われたとき、置いていこうとはしなかった」

    大兎は返答しない。化け物を倒すことが、答えになるからだ。

    ラビ「あなたが私をどう思っているかは、分からない。

       いつも親しげに話しかけてくれるのが、嘘かもしれないと疑ったときもあった。

    本当はあなたが私をどう思っているのか、尋ねようと思った時もあった。

    でも、しなかった。あなたを疑ったことを知られるのが、怖かったから」

    ラビ「だから、ヒッキーに指摘されたとき、『周りからみたら、そうなんだ』と納得してしまったの」

    大兎「あの糞人間めっ」大兎は悲鳴ともつかぬ罵声をあげる。

    ラビ「でも、ごめんなさい」

    ラビ「……わたしはあなたを好きよ」

    183 = 182 :

    ラビ「いつも私を助けてくれたあなたが好き。でも、あなたは知らないでしょうけど

       私だってタスケテ欲しくないときはあったのよ。

       両親が火刑に処されて、村の真ん中で焼かれたとき、私も家族と一緒に死にたかった。

       独りで、こんな世界に生きたくなかったの」

    大兎「……。」

    ラビ「同じ過ちを、繰り返したくない。

       はっきり言うわ。あなたに助けられた今までの人生に価値なんて、なかった。

        自分にはどうしようもないような苦しくて、嫌なことばかりだったし、相手にも同じ思いをさせた」

    ラビ「だから、わたしのことを想ってくれるのが本当なら、力を貸して。私でも、他人の役に立てるところを見せたいの

    184 = 182 :

    大兎はぼそりと、言った。

    大兎「分かった、分かったよ。やれば、いいんだろう……ご主人様も立派な糞人間だ。俺様の気持ちなんざ、一つも考えやしねえ」

    大兎は了解したことを告げると、化け物から離れて女戦士に向かって今までみたこともないような勢いで迫る。

    今まで、兎たちの群れを切り払ってきた女戦士といえど、それを躱すのは不可能だった。

    盾を構え、衝撃に備える。

    それは、つまり足を止めてしまったということだ。

    一方、大兎はみるみるその速度を落としていく。

    戦士(突進してくるわけではないのか?)

    盾越しに大兎を覗き見て、串刺しにせんと剣を構える。

    大兎は、呆れたように笑った。

    大兎「まんまと接近を許すんじゃねーよ、糞人間。盛大にフラれた今の気持ちくらい、考えろ」

    その言葉にカウンターするように女戦士の剣が、大兎の喉を一突きした。

    そして、頭頂部から飛び出た剣が、へにゃりと歪んだ。

    熱によって、剣が鉄の融解温度に達したのだ。

    刹那、音速を超える伝播速度の炎が、触れるものすべてを破壊するだけの威力をもった衝撃波を生む。

    一言でいうなら、目の前の世界がすべて紅くなったのだ。

    それは血と炎で彩られた、美しい世界だった。

    185 = 182 :

    今日は終わりです

    187 :

    その景色に見惚れるのも、一瞬だ。

    凄まじい衝撃波が化け物を襲い、木っ端のごとく吹き飛ばしたのだ。

    運の悪い大樹にぶち当たるまで、目測にして十数メートルは飛んだだろう。

    さしもの化け物も、これには堪えたらしく、その場から動けないようだった。

    また体毛が炎によって焦がされ、黒く焼き付いている。

    しかし、生きている。

    よりその憎悪と怒りを増幅させながら、回復するのを待っているのだ。

    それは、誰に対するものなのか。

    爆心地に視線を向けると、そこには薙ぎ倒された樹木と土埃が舞うばかりで

    生存者は見当たらない。

    あれほどの熱量と衝撃波を直に食らって、生きていられる生物はいないだろう。

    しかも、アイツは爆発の直前にあきらかな致命傷を負った。

    だけど、それで終わりだとは思えない。

    今にも、あの生意気な声が聞こえてくるか、無駄に大きい躰がひょっこり出てくる気がした。

    だって、幽霊なんだろう。

    どんな苦難だって、すり抜けられるのがアイツなんだろう。

    こんなところで、終わるなんて、理不尽だ。

    188 = 187 :

    時間は悪戯に過ぎていく。

    木がパチパチと音を立てて爆ぜている。

    その間、化け物は躰を動かそうとしていた。

    右手の人差し指から始まり、右手の5本の指、それから右手首とゆっくりと力を伝える。

    動作は緩慢ではあるが、これといった不具合はないようだ。

    化け物は、復活しつつあった。

    そして、誰かに復讐を果たそうとしている。

    化け物がようやく立ち上がったところで、俺にもその相手を見つけることができた。

    洋服の大半が焼き焦げ、至る所に火傷を負ったラビットさんを。

    白くきめ細かい肌は、赤く水ぶくれを起こし、ひどいところでは黒く変色していた。

    目を覆いたくなるような、惨状だ。

    そして、彼女の表情は苦悶に満ちていて、それでも動けないでいた。

    彼女は、化け物より確実に深い傷を負い、そして弱っている。

    その彼女を化け物は殺そうとしていた。

    189 = 187 :

    化け物は、一歩一歩距離を詰めていく。

    ラビットさんは、そこでようやく気が付いたようだった。

    しかし、うごけない。

    ただ、その場で倒れ伏したまま、化け物がやって来るのを眺める。

    だが、彼女の深い藍色の瞳は、じっと化け物の中の自分を見ている気がした。

    責めているわけでもなく、止めてくれと懇願するわけでもない。

    『もう少し、我慢していてね』と、優しく語りかけていた。

    俺は戸惑い、そして混乱した。

    彼女は、なにかを狙っている。

    だが、自分にはそれが分からない。

    このままだと、殺されるのは彼女なのに、どうしてそんなに落ち着いていられる。

    なぜ、微笑んでいられるのだ。

    言いようのない悪寒が、全身を駆け巡った。

    彼女は、まるで、死を望んでいるようだ...。

    190 = 187 :

    化け物が、とうとう彼女の前に立った。

    化け物がもう威嚇のために咆哮することはない。

    それほどに、両者の差は開いている。

    化け物の体格は、ラビットさんの二倍近くあり、動けない彼女は化け物にとって

    餌も同然だった。

    化け物は、仰向けに倒れていた彼女に、乱暴に覆いかぶさった。

    彼女はその衝撃にこらえられず、小さく呻く。

    だけど、抵抗する素振りは見せない。

    化け物は、そのほっそりとした首すじへとゆっくり手を伸ばした。

    その直前に彼女は、囁いた。

    ラビ『私は、あのとき、幸せになる権利を失ったのね』

    それが、彼女のラストワードだった。

    独りの兎は、首を絞められて、しんだ。

    191 = 187 :

    今日は終わりです
    幸せな結末が良いのですが夢オチ()が許されるのか

    193 :

    目の前で、ぼきりと嫌な音を立てて、彼女の首が折れたのだ。

    終わってしまったと、おもった。

    彼女は、もうこの世界に戻ってこない。

    もう、二度と話すことはない。

    その事実が周りを取り囲んで、苛む。

    殺した奴が憎いだとか、何を彼女は狙っていたのかとか、そういう理性的なことはどこかへ吹き飛んでしまった。

    漠然とした悲しみが胸の奥から溢れて、心を溺れさせる。

    呼吸をするのが、苦しい。

    どうして、彼女は死んで、自分はこんなふざけた姿になってまで生きているのか。

    これは、間違っているじゃないか。

    俺が望んだ物語は、『自分は惜しくも死んだが、彼女は契約という縛りから解放されて、自由に生きていく』というものだったのに。

    あぁ、すべてがどうでもよくて、無関心だ。

    誰も、彼女を助けようとはしなかった。

    彼女自身すら、それを否定したのだから当然と言えば当然。

    だけど、それを受け止めることは、今の自分にはできそうもない。

    194 = 98 :

    自分の、この世界での物語は、ここで終わっていた。

    簡単にいえば、バッドエンド。

    主人公含めて、誰も救われない最低の終わり方だ。

    これからのことは、蛇足であり、後味を良くするために陽乃さんが用意したものに過ぎないと思っている。

    本来は報告書に書くほどのことでもない。

    しかし、自分への戒めと、忘却への恐れから続きを書こうと思う。

    まず、化け物は、長く生きられなかった。

    ラビットさんの呪い、というよりはネクロマンサーの呪いが化け物を殺した。

    ネクロマンサーを殺さば、穴二つとは、あの世界の諺である。

    なぜ、こんなことになったのか。

    それはネクロマンサーの成り立ちから書く必要があるだろう。

    もともとネクロマンサーとは、黄泉の国から死者を呼び起こすものだ。

    特筆すべき点として、死者はそれ自体が悪なのではなく、最後の日には呼び戻されて審判を受け

    永遠の生命を与えられる者と地獄へ墜ちる者とに分けるという復活の思想があることだ。魔女狩りで火刑にされるのは、そういう側面がる。

    そして、ネクロマンサーは悪魔の力を借りて、復活させると信じられていた。

    これは、神に対する冒涜であり、決して許してはならないものだった。

    ゆえに彼女らは迫害され、それに対する対抗策も講じている。

    それが、化け物を殺した呪いである。

    殺したものを、殺す。

    単純であるが、効果はあった。

    195 = 98 :

    ラビットさんがこの方法を選んだことは、二つの理由があると思う。

    一つ目に、あの大兎の爆発はあまりに強力で、そして不安定だった。

    化け物といえど、あれを至近距離で食らえば、蒸発していた可能性がある。

    自分もろとも、だ。それは彼女の契約に反していて、選べない。

    だから、最初に力づくで抑えようとしていたのではないだろうか。

    女戦士と化け物が強くなければ、また別の道があったと思う。

    二つ目に、彼女自身が、終わりを望んでいたことだ。

    間の悪いことに俺は、彼女を拒絶し、深く関わろうとしなかった。

    そして悪戯に彼女の傷を広げた。

    この点において、陽乃さんの期待を裏切らなかった自分が、悲しい。

    このまま鉛筆を置いて、身を投げたい気分だ。もちろん、布団にだが。

    196 :

    乙 pixivから来た

    198 = 98 :

    さて、化け物がやられたところまでは書いた。

    それからどうなったというと、化け物が死んですぐに頭上からえらく露出度の高い生き物がやってきたのだ。

    葡萄色のビキニアーマーに、背中には黒翼が忙しなく動いていて、首元からはふさふさの羽毛が生えている。

    一応、頭は耽美な女性の顔だがこれを人間と呼ぶのは憚れる。

    彼女は化け物の死体を一瞥してから、どこからともなく取り出した大鎌で化け物の首を切り落とした。

    魂が吹きこぼれるのを、手で押さえながら二人の名前を幾度も呼ぶ。

    どこかで聞いた名前だと思ったら、アルバムに載っていたルナの両親の名前が混ざっていた。

    恐らくは、彼らの通り名ではなく、フルネーム。

    なにかしらの強制力を感じる声によって、二つの魂が化け物の身体を通って出ていった。

    彼女は、それを大切そうに胸の谷間に押し込んだ。

    彼女は用が済んだととばかりに、化け物を軽々と担ぎ上げると、そのまま屋敷へ向かった。

    そのときの自分は化け物の身体の中から、ぼんやりとそれを眺めていた。

    ラビットさんが死んで、全てがどうでもよく思えたからだ。

    見ると、その女はルナの屋敷に精通しているらしく、屋敷の裏口へ回り隠し通路をいともたやすく見つけ、降りて行った。

    そして、待っていたと言わんばかりに駆け寄ってきたルナに、化け物の身体を渡したのだった。

    ???「きっと、この中に貴方の望む男がいるわ」

    ルナは、右手にペーパーナイフを握りしめて、お礼を言う。

    ルナ「死神さん、拾ってきてくれて、ありがとう!」

    それから、いそいそと化け物を解体し始める。

    体毛を取り除き、閉じ込められていた魂をひとつひとつ検分していく。

    お目当ての魂が見つからないらしく

    あれでもない、これでもない、と言ってぽいぽいと魂を放り捨てる。

    その魂たちは、まるで見えない引力に引っ張られるようにして悪魔像の口へと吸い込まれていった。

    199 = 98 :

    やがて、ルナは俺をその柔らかい手でつかむと、歓声をあげた。

    ルナ「ヒッキー、みぃつけた!」

    彼女は、俺を担ぎ上げて、その場でくるくると回る。

    それに飽きてやめたかと思うと、俺をじっと見つめはじめた。

    ルナ「なんかヒッキーの魂って変な色をしてる。ぷふふっ」

    余計なお世話だ、ほうっておいてくれ。

    ルナ「この姿は、いや?」

    別に、どうでもいい。

    ルナ「ルナはいや。形はあった方が、好きなの」

    ルナ「ヒッキーは、特別にルナの人形に入れてあげる」

    どうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいい。

    ルナ「あとはパパとママを返してもらえば、家族がそろうんだよ。

      その為にはまた百の命を奪えば、いいんだって」

    ルナの後ろで、女が妖艶な笑みを浮かべる。

    ルナ「これからはつらい時も、たのしい時も思いを共有して、分かちあうの。

       それって、すごく幸せなことなんだよ。

       今のルナの存在する理由は、その幸せが欲しいだけ」

    ルナは、その濡れた瞳をこすりながら、自分に尋ねる。

    ルナ「ねえ、ヒッキー」

    ルナ「ルナの家族になってくれる?」



    そこまでいったところで俺は、晴れてゲームオーバーになった。

    200 = 98 :

    気づけば、俺は病院の白いベッドで寝かされていた。

    そばには看護婦が付いており、彼女は患者の意識の覚醒を確認すると、部屋から出ていった。

    ぽけーっとその場で待っていると次は医師がバインダーを持ってやってきた。

    医師は自分の名前やら誕生日やらを聞いてきたので、意味も分からず答える。

    それをひととおり聞くと、壮年の医師はにっこりと笑った。

    医師「よかった。脳に影響はないようですね」

    はて、今の質問で分かるのだろうか。

    普段の俺だったら、クラスの誰に聞かれても答えるか怪しいのだが。

    疑問もさておき、医師は、俺の身体をさわり始めた。

    これはさきほどより、不快だった。

    患者の脚を親指で思いっきり押しておいて、痛いですか?なんてふざけた質問だ。

    問われる前にギブです、と言ってしまった男の気持ちを考えてほしい。至極、みじめだ。


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