元スレ叔母「今日からココに住んで」男「ラブホテルで?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ○
351 = 350 :
受付「ま。わからんでもないよ、厳しいよね。年頃の男子じゃ、あの格好は」ケラケラ
男「そ、それでなんと言ってたんですか叔母さんは…?」
受付「んー? そういやなんて言ってたっけ…?」
男「…役立たず…」ボソリ
受付「サラッと暴言吐いたね、キミ」
男「と、というか、以前に俺言われましたから。叔母さんから直接、見すぎてるって」フィ
受付「なんと! そこでキミはどういう言い訳を?」
男「ラブホテルに住まわせてる人のセリフじゃない」カチャカチャ
受付「至極まっとうな切り返しだ…」
男「とにかく、俺の視線がどうであれ…あれから気にしてるんで…」
受付「そっかそっか。なら余計な心配だったね、ごめんごめん」ゴロロー
男「ええ、その通りです」ジュワワ…
受付「…いい匂い、卵焼き? オムライス?」
男「ビーフストロガノフ、オムライスです」チラ
受付「うへへ。凝った料理、お姉さん大好きだよ~」ぺしっぺしっ
男「脛叩かない。床に転がらない。掃除してますけど、この周り油飛び散ってて汚いですよ」
受付「ウチの部屋より綺麗だよ~」
男「……。それより、俺の方も前から言わせて貰いたいことあるんですが」
受付「あん?」
男「アンタの格好も相当露出度高いっすから」
352 = 350 :
受付「へ? そお?」(キャミ&ショートパンツ)
男「ええ、酷すぎますよね」
受付「どこらへんが? ここ? どこ?」キョロキョロ
男「全部だよ」
受付「ん~~~? でも、別にお姉さん相手じゃ欲情しないデショ?」
男「なんで基準が俺の価値観!? もっと自主性を持って!」
受付「キミが気にしないなら、あたしゃラフな格好で居たいよ。もう裸でも構わないし」ぺしぺし
男「女性としてどうなのか、と問うているんですけど。あと、邪魔です」
受付「じゃあウチを女として目覚めさせろよ!!」
男「なんでキレるんですか、そこで…」ドンヨリ
受付「やだやだー! お姉さんもいっぱしなオナゴとして認められたい~チヤホヤっとされたい~」バタバタ
男「わかりました」ジュゥウウ
受付「ほんとにっ?」キラキラ
男「じゃあ、受付さんの分だけ肉多めにしますよ」
受付「小学生かッ! でもありがと!」
男「……受付さん。俺、もう明後日には居なくなるんですよ。大丈夫なんですか」
受付「大丈夫とは?」
男「全部」
受付「さっきから一括りだねキミ! でぇーじょうぶだよ、ウチはよぉ」
男「…そう、ですか」
353 = 350 :
受付「これでも大人よ。つらーいことも、たのしーことも、好き勝手生きてやるさ」
男「………」
受付「がんばってね、男くん」
男「…はい」
受付「辛くなったら、沢山のお金持ってお姉さんのトコロ逃げ込んでおいで?」ンー
男「全財産持って転がり込みますよ、はいはい、危ないから抱きつかない!」
叔母「ただいまー」ガチャ
男「あ。おかえりなさい、叔母さん」
受付「おかえりっすー」
叔母「ん」コク
ヌギヌギ パサリ
叔母「ここ、熱いな。どうして冷房つけないんだ」
受付「ブレーカー脆弱なんで、料理中だと落ちちゃうんスよ」
叔母「なるほどな」ヌギッ パサリ
受付「景気付けに一杯イッちゃいます?」
叔母「金払え。今度やったらクビな」
受付「やだもぉ~ウフフ~オーナーったら~」
叔母「…………」
受付(あ。ヤバイ、マジの顔だコレ)
354 = 350 :
男「…あの」
叔母「男くん。あまりコイツ甘やかさないでいいよ」
受付「えぇ~そういうオーナーこそ男君を甘やかさ過ぎじゃないッスかぁ~」
カチャン!
男「あの!」
叔母&受付「?」
男「どーしてあなた達はすぐ俺の部屋でラフな格好になるんですか!?」
叔母「え?」
受付「まだ言ってるの? オーナーは何時だってタンクトップだし、ってぇええ!? アンタ…!?」
叔母「どうした?」
受付「びっくりした! パンツ一丁じゃないっすか! いつの間に!?」
叔母「ここ熱いから…」
受付「なんの説明にもなってない!!」
男「…こういうことですよ、受付さん」ドンヨリ
受付「えぇっ? な、なにがどうしたの…?」
男「最近、叔母さんは俺の部屋でタンクトップ&パンツ一丁で過ごすんですよ…」
受付「ウチ以上にヤバくない!?」
男「アンタ、自分もヤバイって分かってて止めなかったの?」
受付「ウチはまだいいじゃん! でも、オーナー! それじゃあ性的見られても文句言えないっしょ!」
355 = 350 :
叔母「待ち給え」
叔母「この格好について、私はきちんと了承を得たはずだよ、おとこ君」
受付「あるのッ!?」バッ
男「無いよッ! 当然のように言われてびっくりしてる!」
叔母「え、だって私のことは家族だって言ってくれたし…」オロオロ
男「あ、それか。いやでも、幾らなんでも限度ってものがありますよ…」ソワソワ
叔母「私は裸でもかまわないのに…」
男「善処してくれてたんですね! それでも!」
受付「じゃあ面倒だから、全員もう全裸っとく?」
男「おかしい! 急速に何かがおかしくなっていく!」
叔母「キミはきっと私が裸になっても気にしないだろう…?」キラキラ
男「え、いやっ! 想像しなくても状況的にヤバイと思うんですけど…!?」
受付「あっ! それならキミも裸になればいいじゃん!」
男「以毒制毒すぎるよ!?」
受付「ダメさ、こうなったオーナーは頑固。誰の注意も届かない」
受付「──なら、限りなく全裸に近く面積を抑えた格好をしてみよう!」
【水着に着替えました】
男「……どうぞ」コトリ
叔母「いただきます」
356 = 350 :
受付「いただきまーす」パシッ
男「お代わり自由ですからね。どうぞ、頂いて下さい」
受付「もぐもぐ。うめーなぁ、うんうん」
叔母「美味い」
男(平然と食べてる…ビキニスタイルで、二人共さも当然と…)
受付「なんか、海辺で食べるカレーの気分ッスね、コレ」
叔母「ここ数年行ってないな、海」
受付「ああ、まあ、うん、年取ると行き辛くなにますよね、海…」
叔母「だな…」
受付「近くの小さいプールとか…ほら、まだハードル低い場所ありますし…」
叔母「うん…でも物が食べれないしな…」
受付「…ッスね…」モグモグ
叔母「…ん…」モグモグ
男(重い…! 見た目は開放的なのに空気が閉じていく…!)
男「あ、あの! 二人とも全然見た目、若いですよっ? 普通に海なんて行けるかと…!」
受付「じゃあナンパされると思う?」
男「も、勿論です! おっ、俺だったら見逃さないなぁ~っ……!」チ、チラ
受付「ですってオーナー、良かったッスね!」ニコニコ
叔母「……やはり性的な目で私を……?」ササッ
男(余計なこと言っちゃった!!)
357 = 350 :
受付「違いますよ。彼は男性代表としての意見を言ってくれただけッス」セイセイ
男(う、受付さん…!)キラキラ
受付「──だからこの際、思い切って男目線で評価をゲロってもらいましょう」スッ…
男(!!?)
叔母「彼にか?」モグ
受付「ええ、男っ気ないウチらですし、良い機会だと思って」ヘヘッ
男「なん、なにをっ、突然言い出して…!? 一体俺に何を求めると…!?」
受付「どーもなにも、ウチらの水着姿見て良いかどうか答えるだけじゃんか」
男「さっき答えたじゃないですか!?」
受付「じゃ、それ続けて?」ニコ
男「なんっ…!」
叔母「先に失礼して」スクッ
男「──……ッ!!? 叔母さん、から…!?」
叔母「……どお?」テレ
男「どおって、言われましてもっ! それはっ、すごく、良い水着だと…!」
受付「水着はいいですって~! み・ず・ぎ、は!」
叔母「そっか……」
男「余計なこと付け加えないで! だぁっもぉう! 似合ってます、凄く扇情的で素晴らしいです…!」
叔母「…ん…」コク
358 = 350 :
男(なんてこと言わせるんだ全く…)カァァ
受付「なーんだ、やっぱりエロい目で見てたんだネ! 親族のこと!」
叔母「エッ…!」ササッ
男「おかしいですよね!? これ男性目線の話ですよね!?」
受付「うんうん。わかってるわかってる、じゃ次はウチだよ~」スクッ
受付「──どお? ウフッ!」キャピ☆
男「え? ああ、似合ってますよ。うん」
受付「感想薄っすッ!?」
男「いや普通に似合ってるから…とくに感想も無いっていうか…」ポリポリ
受付「ヤダー! もっと頂戴よエロい目線の感想! 欲情するぐらいいってよー!」
男「あ。水着にソースかかってますよ、染みつく前に拭いてくださいね」ニコ
受付「親かキミはッ!!」
男「え、親…それよか兄貴って気分ですね、この感じ…」
受付「はなからウチはオーナーより親族扱い……!!」
叔母「飯中に騒ぐなよ」モグモグ
受付「だってぇ…だって納得行かないんだもん! お姉さんこれじゃあ納得行かないんだもん!」
男「ちゃんと褒めたじゃないですか…」
受付「義務的過ぎる! もっともっと感情込めて褒めて…!」
男「えぇ~…嫌だなぁ…」
受付「嫌だなあ!?」ガーン
359 = 350 :
男「やっ、違っ!? 無理して褒めるのは違う気がして、その、だから…」
受付「んもーいいよもお! 外国でパツキンチャンネーに骨抜きになってこいや!」プイッ
男「うぐっ……じゃ、じゃあ正直に言いますけど、いいですか?」
受付「えっ?」
男「あんまり言いたくないんですよ、言う方も恥ずかしいですし…」
受付(やだ照れてる…な、なにさ…そう前置きされるとお姉さんも恥ずかしく…)テレ
男「じゃあ、覚悟して聞いてくださいね」テレテレ
受付「う、うん…」ドキ
男「毛、見えてますよ、そこ」カァァ
受付「…………………」スッ
男「あぁもぉう! やだやだ! こういうの男性目線として正しい指摘ですよね!?」
叔母「私は傷つくかな」モグモグ
男「えっっっ!?!??」
受付「……」ドンヨリ
男「あれっ!!?」
受付「…チョット…イッテキマス…」トボトボ
男「いやだって!? 勝手に水着に着替えたほうが悪くありませんこーいうの!?」
叔母「フッ」
男「いっ、いやーーーー! そんな意味深な笑みを浮かべないで叔母さん!!」
360 = 350 :
~~~
受付「じゃ、気を取り直して」
叔母「うむ」
男「な、なんですか、まだなにか続けるんですか」
受付「なにいってんの。キミの水着姿を褒めてないじゃん」
叔母「さあ、立って立って」チョイチョイ
男「えぇっ!? い、いや俺は良いですよ! 二人みたいに見せびらかせられる身体じゃないし…」
叔母「気にしないで良いよ。個人的に見たいだけだから」
受付「キミ、さっき何故そう褒めなかったの? そこまでアレが気になってたの?」ジトー
男「ぐっ…な、なんだっていうんだ…高校生の身体見ても楽しくないだろうに…」スク
叔母「…おー」パチパチ
受付「…うーむ…」コクコク
男「な、なぜに感嘆の評価を…」
受付「以前、酔って身体触ったときも思ったけど、フツーに鍛えてるよね」
叔母「立派だよ。叔母さんは感動してる」ウムウム
受付「お坊ちゃんってジムに通うように教育されてるの?」
男「べ、別に何もしてないですけど…ううっ…ものすごい羞恥心…!」
叔母「これなら外国の女子たちにも馬鹿にされないな」
361 = 350 :
受付「奴らひょろっこいのダメなんですかね?」
叔母「弱そうより、強そうなのが良いだろう?」
受付「生存本能的な奴ッスかね? すごそうだもんなーあっちの人のせいよくぅー」
叔母「たまに客で来るが、まるでスポーツのようだったな」
受付「…覗いたの?」
叔母「扉が半開きだったから…」
男(ひ、人の体を眺めつつ、外国の人の性…事情を語り合う…)
男「もう、良いですかね!? 座っちゃっても…!」
叔母「いいよ。最後に触らせてくれたら、ね」スッ
男「もしや脅されてます今!?」
受付「良いじゃん触るぐらい。オナゴと比べ、見て楽しむトコロ少ないもんね男子ぃ」ススス
男「あっ、ちょ、こっち近付かないで下さいよ…!?」
叔母「捕まえた」がしっ
もにゅもっ!
男「ひぁああああ!?」
叔母「…なにも悲鳴あげなくても…」
男「違います違います! 面積、状態、色々と考えて下さい! 背中に、思いっきり…!」
叔母「胸ぐらい気にしないよ?」
男「気に触って!!」
叔母「クスクス、家族なんだから別に平気」フフフ
362 = 350 :
男「家族でもアウトだよこの絵面!」
受付「では失敬して…」サワリ
男「あふぃっ!?」ビクン
受付「へ、変な声上げるでないぞ! やらしい気分みたいじゃろうに!」
男「さっきからアウトだっつってんでしょ?!」ガーッ
叔母「どうだ?」
受付「んーむー、非常に素晴らしい4つ割れッスかね。お見事」
叔母「じゃあ交代で」スッ
受付「どうぞどうぞ」スッ がしっ
男「さも当然のごとく…!!」カァァ
受付「あれ? ウチには抵抗ないの?」ウフ
男「え? まあ別に…」
受付「言うと思った! オラオラぁー!!」グリグリィ!
男「ちょほおおおおお!?」
受付「んっふふー! 押し付ければ関係ないもんネー! どうだ男子高校生、嫌でも意識されちゃうだろ!」ニカッ
男「………」
叔母「受付…」スッ
受付「あ、あれ? 男くん? オーナー? どったんスか?」
叔母「少し、時間を置こう」
受付「え? なぜゆえに?」キョトン
363 = 350 :
男「………」ストン
叔母「戯れが過ぎた、私としても後悔してる」
受付「急にどうしちゃったんスか、ねえ男くん? ちょっと…」チラ
受付「あ……えっと、あはは~……そ、そっか~…」
男「……」
叔母「煙草吸ってくる」パタン
受付「えっとぉ、お姉ちゃんも久しぶりにぃ? 男性と触れ合ったから、ソーイウの忘れっちゃってたってかー」
男「……」
受付「……」
受付「───ごめんネ! お詫びにオカズにしていいよ、さっきの感触!」くるっ ダダッ!!
パタン
男「………ううっ…するかアホ……」シクシク
~~~
受付「ま。お姉さんもキミも恥かしい所を見られた、お相子ってことでね!」
男「モウイイデス。サキ、ハナシススメテクダサイ」
受付「うぐっ! オーナーどうかフォローを!」
叔母「予想以上に立派だった」コクコク
男「身体つきですか!? そういうことですよね!? あぁもう、ありがとうございました!」
364 = 350 :
叔母(感謝された…)ホワホワ
受付「取り敢えずごちそうさまでした、っと。美味しかったよー今日もー」
男「あれだけ騒いでて食べるもんは食べましたね…」カチャカチャ
受付「そりゃあ食べれる機会も相当無いだろうしさ」エヘヘー
男「味わって食べてくれましたか?」
受付「もちのロンよ~」フリフリ
男「…お粗末さまでした。叔母さんはおかわり入ります?」
叔母「いや、私もこれで」スッ
男「はい。わかりました」
カチャカチャ ジャー
叔母「……」
受付「……終わりッスね」
叔母「ん? ああ、そうだな」
受付「満足できたッスか?」
叔母「……。どう思うかは彼の方だろう、私は関係無い」
受付「本当にそう思います?」
叔母「……」
受付「ウチ思うんスよ。多分、彼って知り合い殆どに言われてるって」
受付「───本当に、それでいいのかって」
365 = 350 :
叔母「フン。お前もか?」
受付「ウチはほら~こんなんッスから、何をどう言っても響かないっていうか~」
受付「──でも、残念がってるのは見せましたよ、ちゃんと」ニッ
叔母「……」
受付「あーあ、誰だろうなぁー? 最後の最後まで、いい人ぶり醸し出してるのって~」ゴロン
叔母「…お前なぁ」
受付「良いじゃないッスか。ワガママ、意地っ張り、子供っぷり」
叔母「責任者として面倒を見る。私の立場はそこまでだ」
受付「誰に見せるんですか、それ」
叔母「誰にって…」
受付「誰に、大人ぶりを見せて満足できてるんですか?」
叔母「………」
受付「よいしょっと。ま! 部外者のウチがどーのこーの言ってもアレですしネ!」ピカリン☆
受付「結局はそう、誰だって我儘言ってから考え始めても間違いじゃないって、想いますよ?」クル
シャアアア キュッキュッ
男「…あれ? もう行くんですか?」
受付「アパート戻って寝るよー! じゃ、明日のお別れ会でね~」フリフリ
男「あ、はい。おやすみなさい、受付さん」
受付「おやすー」パタン
366 = 350 :
男「さて…」
叔母「……」
男「あの、まさかですけど、この部屋で寝るとか言い出しませんよね?」
叔母「ちゃんと帰るよ。キミも荷物整理あるだろうから」スッ
男「もう終わらせましたよ。後は調理器具等をダンボールに詰めるだけです」
叔母「…手早いね」
男「ええ、普段から気を配ってますし」フキフキ
叔母「普段から? 転校は多かったと耳にしてたけど、一度も住居は変わらなかったのに?」
男「変なこと知ってますね……まあ、親がコロコロと学校変えてましたけど…」
男「まあ。そういうこともあって、私物を持たないようにしてたんです」
叔母「───……」
男「余分でしょう? 必需品だけ持ってれば簡単に動けるし、手間がかからない」
男「いちいち手順が嵩むものは省いて来たんです。今まで、ずっと」ニコ
叔母「………」
男「だから、ここに着た時は、すごく新鮮だった」
趣味で日本に来た人。物を片付けられない人。私物が部屋にごった返す人。
男「…みんな自分のモノで溢れかえってた。まあ、整理整頓はやってほしいですけどね」
男「だけど、いい経験が出来たと思います。自分には無いものを、沢山知れました」
男「だから……」
367 = 350 :
ぎゅっ
男「おっふ!」
叔母「……」ギュッ
男「んっ、んぐっ、んもーまたですかっ? ハグする前に確認取って欲しいと…!」
男「ってか!? 水着のまんまでやらないでくださいよ!? 見た目やばいやばい!」
叔母「…男くん」
男「え、はい?」
叔母「キミをここに住まわせた理由、知りたいかい」
男「……え、なんですか、それ? 理由、あったんですか?」
叔母「ん」
男「単に煙草とお部屋のせいかと思ってたんですけど…」
叔母「違うよ。……私は以前から思っていたんだ」
叔母「──キミが、いつでも切り捨てられる部屋を与えたかったと」
男「……」ピク
叔母「そう。何時でも何処にでも飛び出せる、そんな環境を作りたかった」
男「…なぜ?」
叔母「ラブホテルはね、その場限りで楽しむ楽園地なんだよ」
叔母「旅館ともビジネスホテルとも違う。一晩だけ【楽しい記憶】を補助する場所」
叔母「それ故に、どう一夜過ごすとも誰も咎めやしない。自由な空間なんだ」
368 = 350 :
男「…随分と洒落た場所ですね、ここ」
叔母「勿論。私はそれに生き甲斐を感じてるところもある」
男(妙にカッコイイ理由だな……)
叔母「私はキミに、どんな理由があっても抜け出せるよう整えていたつもりだった」
叔母「そして、その機会がやっぱり訪れた。明日にはもう出ていこうとしている、君がいる」
男「……そう、ですけど」
叔母「………」ギュッ
男(叔母さん…?)チラ
叔母「だから、ラブホテルはキミにとって幸せだったろう? 居心地が良かっただろう?」
叔母「余計な思い出を残したくないキミにとって、住み心地が良かっただろう?」
男「………」
叔母「言わなくていい。けれど、私は同時に望んでいたんだ」
叔母「──ここに残りたいと、ここに、私の部屋で住みたいと、望むぐらいに」
男「…叔母さんの部屋に…?」
叔母「ん」ナデナデ
男「あの…部屋に……あはは、無いなぁそれは…」
叔母「汚いもんね」
男「そうですよ! だって、幾ら片付けても難度だって汚れるし…」ギュッ
男「……どんなに片付けても、俺が必要と、されちゃって……」
369 = 350 :
叔母「………」ナデナデ
男「俺なんて片付けとか料理とか、お節介ぐらいしか脳がないのに…」
男「沢山…沢山…色んな人から求められて、優しくされて、溢れかえってて……」
叔母「うん」
男「今まで、誰にだって褒められたこと無くて、俺、責任感とかまったくないのに…」
男「…凄く、居心地が良かったです。このラブホテル、…いつだって逃げられると思ったから」
男「そんないい人ばっかりの中から、そんな期待から、逃げられると思ったから」
叔母「そっか」
男「叔母さん。俺、なんでこうなんですかね? どうして、自分に自身がないんですかね…?」
男「…どれだけ頑張れ、言われても、全然思えないんです。俺なんて、とか思っちゃうんですよ…」
男「……俺のこと、誰一人、必要としてくれてなかったのに……」
男「──俺は、こんな一時的な楽しい記憶を残して、外国なんて行けない」
スッ トン
叔母「…………」パッ
男「ありがとうございます。今まで、いっぱいいっぱいの楽しい日々、感謝しています」
叔母「うん」
男「…怒りますか?」
叔母「まさか。怒らないよ、私こそなにも出来なかったんだ、キミにね」
370 = 350 :
男「それこそ、まさか。ですよ、叔母さんのお陰で楽しい数ヶ月でした」
叔母「本当に?」
男「本当です」
叔母「………」スッ
男「……」
シュボッ
叔母「すぅー…」
男「……………」
叔母「はぁ、…うん、そっか」フゥー
男「…はい」
叔母「なら、お別れだね」ポンポン
男「そうですね」ニコ
叔母「うん」ニッ
男「……。じゃ、着替えてくださいよ叔母さん。風引いちゃいますよ」
叔母「そうだね」ゴソゴソ スッ グリグリ
ジュウウウ…
叔母「それじゃ、さよなら」
男「ええ。さよなら」
371 = 350 :
第十一話 終
明日にノシ
372 :
おつ
373 :
明日とは
374 :
たしか男は叔母さんさんの写真隠し持ってたよな……
今夜はそれ見ながらシコシコタイムか
375 :
44号室
叔母「それでは」
叔母「男くんの安泰な外国進出を願って、かんぱーい」
受付「かんぱーーーい!」
清掃「Cheers! カンパーイ!」
女「乾杯!」
女姉「…乾杯」
男「か、乾杯…」
ガヤガヤ ガヤガヤ
男(今日はいろんな人が集まったな…)チラ
女姉「ねえ」スッ
男「はいッ? あ、先生…今日はありがとうございます、来てくれて」
女姉「お礼なんて結構よ。先輩に無理やり連れてこられたようなものだし」
女姉「それより、気になってることがあるんだけど…」
男「はい?」
女姉「私だけ、どうしてジュースなの?」チャポ
男「……教師が酔っ払っては、体裁が悪いでしょうから」
女姉「な、なるほど…! 確かに…!」ハッ
376 = 375 :
男(ファミレスでのあの惨状を覚えていないのか……)
男「えーっと、その、仕事の方は大丈夫なんですか?」
女姉「もちろん。むしろ貴方がどうなのかしら。現状をきちんと把握できてる?」
男「え、ええ…まあある程度は…」フィ
女姉「あら。初めてみるわね、貴方の不安そうな顔」
男「転校に関して多少は自信があったんですが…つもり、のようだったようで…」
女姉「へえ…」マジマジ
男「な、なんです? そんな言うほど珍しいですか、俺の不安そうなトコロ」
女姉「そうね…」
女姉「国境を跨いで転校に教師として何も言えない……だから、私はきっと、貴方を信用しすぎてるのよ」
男「あの、結構意味が汲み取りにくいんですけど、つまりどういう…?」
女姉「ひっく」
男「───誰だァ! 先生に飲ませたのー!!」
女姉「えっ? ちょ、違う違う、今のただのしゃっくり…!」
受付「え、飲んだの? いつ!?」ビクッ
叔母「待ってろ後輩、一発でゲロってみせるから」スッ
女「いやぁー! もうあんなお姉ちゃん見たくないのにぃ!!」ササッ
男「とにかく俺の側から離してくれ! 誰か壁を! どうか壁役なってください!」ダッ
女姉「!?」
377 = 375 :
叔母「なんだ、ただのジュースじゃないか。びっくりした」ホッ
女姉「私は皆のリアクションに唖然としたままですけど……」ズーン
女「ち、違うのよお姉ちゃん? 私、ああでもきっと大好きだから!」
女姉「じゃあ私は一体貴女になにをしたのよ…?」チラ
女「ひっ! あ、ごめっ」ササッ
女姉「今、距離を取ったわよね? 怯えてたわよね? どういうことよー!!」
女「待って! 急に顔が近づいたからびっくりしちゃったというか!」
受付「待ち給え」スッ
女姉「う、受付さん…! 貴女ならきっと教えてくれますよね…!?」
受付「ウチと二人っきりのときならね?」ポン
女姉「やっ……ヤダー! そんなのヤダヤダ! なんで皆教えてくれないの!? なに!? 私なにしたの!?」
男「これはもう教えたほうが良いんじゃないんですか…」
叔母「言っても無駄だろう、あっちが信じない」
男「…そういや44号室の幽霊もそうでしたっけ」
叔母「ん。意固地というより、己の過ちを認めたくないんだろうね」
男(どっちにしろ意固地だ…)
叔母「おい、後輩。今日はお前の話をする為に呼んだんじゃないぞ」
女姉「わっ、わかってますって!」
378 = 375 :
受付「でもでも無礼講だよ? 愚痴悪口陰口、ビバ! カモーン! ネガティバー!」
男「祝いの席でとんでもないこといいますね、アンタ」ドンヨリ
受付「うえっへへー、なによー。かまととぶっちゃって!」
男「…なにが?」
受付「てめーも吐くんだよぉ! ホラホラ、あるでしょ? ゲロっちまえよぉ!」ぐりぐり
男「吐くもんないのにどうしろと…?」
女「あ。それ私も知りたい、貴方の愚痴って訊いたことないもの」
受付「ほうほう」コクコク
男「……トモダチ居ないこと愚痴ったよね俺……」
女「あれは愚痴じゃない。悩み、だから。もっと心の中の根本的な感情のコト!」
男「ちょっと待って。愚痴って考えて言い出すことなの? なんか違うよね!?」
受付「いーや! 良いこと言った女ちゅあん! だからブリバリ曝け出すのだ、青少年よ!」
清掃「──そこまでよ、ミンナ! フリーズよ!!」
女「清掃さん!? なぜ、貴方が止めるの…!?」
受付「ムム!」ババッ
清掃「フォクシィー、ボス……オトコの愚痴、聞き出しちゃダメ、ゼッタイ」
受付「根拠を言い給え、弁護人ケルドッグよ!」ガーッ
清掃「ワァオ! その名前久しぶり呼ばれたネ! へへっ」サスゥ…
379 = 375 :
男「ちょ、ちょっとケル君。その話続き気になるから、続けてくれない?」
清掃「オマカセ! …だってケルケル見たよ? 前にソーダンもらったとき、親のグチ言ったね?」
男「む」ピク
受付「へぇっ!? そうなんだ!?」キラキラキラ
女「本当に!? それ本当に!?」キラキラキラ
女姉(へ~…)チラ
叔母「………」ゴクゴク
男「何故に興味津々なんですか、二人共…」
女「ばっか、そりゃ気になるわよ! ですよね受付さん!?」バッ
受付「ねー! 普段良い子ちゃんぶってる奴の悪口きくの楽しいよねー!」
女「う、…うん! ですよねッ!」ニ、ニコ
男「バカな人に無理して合わせなくて良いよ!」
清掃「そのときボク思ったの……オトコの裏の一面、しっちゃったネって…」シュン
男「ええっ!? そんな変な感じだった…?」
清掃「そうよ! ギラギラしてた! もう目ン玉ぎょろぎょろ!」クワーッ
男「流石にそれは言い過ぎだって……ほら、他の人も引いちゃうし……」
女「見てみたい…」ホワホワ
受付「写メ撮りたい…巫女喜びそうだな…」ホワホワ
男「俺が変だったらアンタ等もうなんでも良いんだろ!?」
380 = 375 :
女「ち、違うの! 貴重性を言ってるだけで、馬鹿にしてるとかじゃなくて」
受付「貴重性そのとーり! だからシャツのボタン外せさせて?」ニパー
女「おっ、うっ!? そっのとーり…! とっととシャツ寄越しなさいよオラ!」ガーッ
男「それ追い剥ぎだからね!? た、助けてケル君!」
清掃「……ヒミツだったけど、ケルケルも第二ボタン欲しいのよ……」モジモジ
男「違うなあ!? 今そんな会話してなかったなあ!?」
ドッタンバッタン
女姉「こーなるんですね、結局は」
叔母「くっくっく」クスクス
女姉「楽しそうですね…えらく久しぶりに見ましたよ、その満面な笑顔」
叔母「そうか? ここ最近はよく笑うよ、確かに」
女姉「……羨ましいですね」
叔母「なぜ?」
女姉「そりゃそうでしょう。この歳なると、楽しいことも疲れるじゃないですか」
女姉「昔は当たり前にできたこと、そーいうのできないんです」スッ
コトリ
女姉「例え足元にソレが転がってても、拾って手に持つ気力すら減っていってる」
女姉「楽しいことをしたいのに、いつでも息抜きを考えているのに、いざ時間があっても手が出ない」
381 = 375 :
叔母「お前、彼氏できなさそうだな」
女姉「…わかってますよー、そんなことー」ブー
叔母「余裕がないんだろうな、もっと気楽に生きてみろ」
女姉「じゃあわたし、飲んでいいですか」
叔母「二人っきりのときなら」
女姉「……ありがとうございます、せんぱい」グス
叔母「どういたしまして」
女「きゃーー!?! 割れてる…! お腹が4つに割れてるわ…!」ババッ
清掃「わぉお……オトコ、鍛えてるのね…? 4つ、なのね…!?」ババッ
男「ひん剥いておいてまずそれなのか…っ」ズーン
受付「ぽこぽこだよね~」サスサス
男「ええいっ! 気安く触るな! 見せモンでも無い! さっさと返せ!」ブンッ
受付「きゃ☆」パッ
男「ったく…」バサァッ プチプチ…
男「ん?」チラ
女「…………な、なによ?」ドキドキ
男「な、なんで見てるの?」
女「いやっ、そのっ、別にぃ~……」じぃー
男「明らかに変な感じだったじゃんか…」
382 = 375 :
受付「わかるよ、キミ」ポン
女「ひゃいっ!?」ビックゥウン
受付「良いよね、シャツをバッサァ……って袖通す男子ね、エロいよね!」
女「んー!!??」
受付「お姉さんは分かってる。存分に語りなさい、つまり若い子の意見で後は語りなさい」シュピィーン
清掃(なぜかフォクシィーに後光がみえるよ……)
女「そんな、わたしっ、そんな変態的な目で見てたんじゃ…っ」ブンブン
受付「へそちら」
女「ほぐぅ……っ!?」ズキュン
受付「両袖ボタン留めの指の仕草」
女「むぐぐッ」ギュウウ
受付「ふふ、耐えるね。お姉さん気に入ったわ、貴女のこと……ね」ツツツー…
女「ちがいますちがいます! 私は全然ちがいます!」ピクピク
清掃「……オトコ凄いね」
男「なにが?」プチ
清掃「着替え姿にイロイロ言われてるのに動じてないのよ…」
男「もう慣れたよ」ニコ
清掃(グッドスマイル!)
女姉「受付さん…あんまり妹をいじらないであげて下さい…」
383 = 375 :
女「ネタクイ……? ゆるめ、て…え、え、そんなっ………眼鏡も欲しいよぅ」
女姉「けっこう乗り気ねアンタ!?」
受付「眼鏡、やはり若い…ふふ…さて可憐なオナゴから要望だよ、ジェントルメェン…」クル
男「誰がジェントルメンだよ」
受付「さぁウチの秘蔵な伊達メガネ、黒縁にノンフレ、なんでもこざれよ…」ジュラァア…
女「こんなに…こんなにたくさんあったら決められない!」ワッ!
女姉「気をしっかり持って! あほっぽいわよ今の発言!!」
受付「どお? 個人的に男君はド直球な黒縁でウブヤングハツをぶち抜いて欲しいな!」
男「俺、そんなミラクルな言葉初めて聞きましたよ」
受付「じゃ、つけないの?」ニッ
男「……はあ、別に何か減るわけじゃないし、それで」スッ
カチャ
男「──どう? 似合ってる、コレ?」クル
女「袖捲って…?」キラキラキラ
男(なんか更に要望されてるんですけど…!?)チ、チラ
受付「んぐらいやってあげなってばー!」ケラケラ
男「な、なんですかまったく…せっかく留めたのに、ほら、これでいいの?」グイッ
女「…っ…っ……っ…っ…っ!」コクコクコクコク…
清掃「すっごいウレシソウねボス!」
384 = 375 :
受付「これでズッキューン☆ 見事射止めたね、やるっ☆」コノコノ
男「すみません。さっきから俺、弄ばれているとしか感じてませんよ」キッパリ
清掃「アイアンマンねオトコ……!!」
女「──ハァ~~、なんかどっと疲れた…ちょっと横になる…」クテ…
女姉「はしゃぎすぎよ…」
女「うん…私も途中で気づいた…でもやめられなかったの、凄かったの…」ボソボソ
女姉「そ、そう…」ナデナデ
女「……自分だって見てたクセに」ボソリ
女姉「──……っ!?」ビクンッ
清掃「じゃ、オトコ。ボクで第2ボタンくれる?」パァァア
男「え”?」
清掃「大事なヒト、学生は学生にあげるって漫画にあったよ?」
男「それきちんと読み解いてる!? ち、違うよ、第2ボタンってのは…」オロオロ
受付「かんぱーい!」
叔母「乾杯」
男「…こういう時に限ってあん人はァ…!」
清掃「ダメ、なの?」シュン
男「そ、そうじゃないよ!? けど第2ボタンよりもっと違うものが良いなって…!」
385 = 375 :
清掃「違うもの?」
男「そうそう。もっとほしいもの、ないかな? ケル君にだったら俺、無理してでもあげるよ?」
清掃「ちがうものー……」ボー
男(って、少し言い過ぎたかな。逆に悩ませてしまったかも)
清掃「うん」コク
男「あれ? もう決まった?」
清掃「そうね、決まった。ケルケル、一番ほしいの言っていい?」ニパー
男「ど、どうぞ。が、頑張るから!」
清掃「ん!」ピッ
男「え、どれ? えっとどれのこと?」キョロキョロ
清掃「ケルケル欲しいの、オトコ!」ニコ
男「ぇ」
ぎゅっ
清掃「───オトコ、くれる?」じぃー
男「………はい?」
ざわ… ざわざわ…
男「ちょっと!? 皆もなぜそんな目で見るんですか!?」
386 = 375 :
叔母「やはり、か」
男「叔母さん!? やっぱりってなに!?」
受付「ぶっちゃけ惚れてるよね、ケルケル君」
男「WHY!? 言ってる意味、ワッカリマセーン!?」
女「……そっかぁ……」
男「そこ! そこ真面目に受け止めるな! ジョーダン、冗談だってば!」
女姉「外国はもっとオープンよ、なにせゲイ大国。頑張りなさい」ウンウン
男「なんだよもぉー!! 理解力ありすぎるよこの人達!?」
男「──ケル君!? ちょっとした冗談だってネタバラシよろしくッ!」バッ
清掃「…………」
男「ケル君…?」ドクン
清掃「冗談、思う?」
男「ぇ、だって、そんなっ! 俺たちトモダチ、だって…」
清掃「…………」
男「…………」ビク
受付「あぁ~えっと、ケルケル君? ちょっとお姉さん飲み物のお代わり欲しいなって~」
清掃「shut up」
受付「ウッス」
387 = 375 :
清掃「オトコ。本気よ、本気でケルケル欲しい思ってる」
男「……意味がわからない」
清掃「だめ?」
男「だめとかじゃない、そもそも! 君は何を言ってるのか俺には…!」
清掃「──だって!!」
男「っ…!」ビク
清掃「居て、欲しいよ…外国行ってほしくない、近くでトモダチで居たい…!」ポロポロ
男「──……」
清掃「ケルケルほしいよ…ずっとここにオトコいて欲しいよ…」グスッ
女「………」ギュッ
女姉「………」ナデナデ
男「…ぁ…」スッ
受付「はいはーい。落ち着こうねケルケル君、だーから止めたのに、言っちゃうんだもんな~」ポンポン
清掃「うぇ…っ…ひっぐ…」
受付「はい。一先ず席外させるから、みなさんはこの空気に負けずにファイトしてください!」グイグィ
男「受付さん…俺も…!」
受付「いいっていいって、気にすんなってば」シッシッ
受付「お姉ちゃんに任せとけ。君はなにも背負わなくていいから、ね?」ニッ
388 = 375 :
パタン
男「…………」
叔母「飲み物いる?」
男「いえ、いや! …その、大丈夫です」ストン
叔母「そっか」
女姉「えっと、その、取り敢えず、ケーキとか食べましょうか?」
叔母「私が切ろう」スッ
女姉「やめてくださいひとじにがでます」
叔母「大丈夫大丈夫」
女姉「そう言って過去どれだけの人を傷つけましたかね!?」
男「……ごめん」
女「なんで貴方が謝るの」ストン
男「………ごめん」
女「やめてよね。悪くないでしょ、誰も、清掃さんも貴方も」
男「……」
女「みみっちいわね。それが私のライバル? 笑わせないでよ、まったく」
男「…うん、そうだな、そうだよな」
女「そうだ、ねえ、最後に教えてくれない? ひとつだけ、貴方に質問したいんだ」
男「俺の、こと? 急にまたどうして…」
389 = 375 :
女「どうしても! ……いい?」
男「いいけど…」
女「じゃあ訊くわ、覚悟して答えなさいよ?」ぴっ
男「う、うっす」コクコク
女「好きです。付き合って下さい」
男「…………」
女「返事は?」
男「…ぇ、女姉「ええええええええええええ!?」
ガッチャバタゴーーーン!!!
男「うわっ!?」バッ
女「お姉ちゃん!?」
叔母「お前…! ちょっと、大丈夫なのか!?」
女姉「はっ…はっ…ははっ、びっくりしてコケちゃって…」
叔母「包丁を持ったまま転けるなよ…びっくりした…」ドキドキ
男「…怪我はない、みたいだな」
女「…みたいね…」
390 = 375 :
男「………」
女「…その、ごめんね、急に言っちゃって」
男「えっ? いや、えっと、待って、もっかい言ってくれない…?」
女「ハァ!? 今のもっかい言わせるの貴方は!?」カァァア
男「だってさ!? 衝撃的なことが続いちゃって、実感が全く湧いていこなくて…!」
女「ッ~~~!? なによッ、それッ! こっちは結構覚悟決めて告ったのに…!」
男「うーん、うんッ! 今、ちゃんと湧きました! 告白されましたね、俺!」コクコクコク
女「はががっ! ぐぅう~~! なによもう、全然それっぽくならなわよね本当に!」
男「ならもっと場所を考えてですね…」チ、チラ
叔母「……」ソワソワ
女姉「……」ソワソワ
女「あぁもう…そうよ、私はそんなやつよ、場の空気関係なくやっちゃう女よ…っ」
女「でもね! 意味が無かったわけじゃない! この告白はね!」バッ
男「ま、待って! 何を一人で盛り上がっているのですかね…!? 返事は!? したほうがいいよね!?」
女「…のよ…」
男「えっ?」
女「どーせ出来ないくせにしゃらくせーこと言うなって言ってんのよ!!!」
男「えぇええええっ!?」
391 = 375 :
女「もう分かってんの、貴方のこと。どうせ先延ばしにして外国いくつもりだった、違う?」ギロ
男「………………」
女「無言は肯定とみなす。以下、貴方に弁解の余地はなし!!」
男「ま、待て! 男として! 一人の男として語らせろ!」
女「却下」
男「圧政過ぎるだろ!」
叔母「…クックック…」
女姉「笑わない!」バシッ
男「なんなんだよ…全くなんなんだ! 俺は一体なにを求められてるんだ!?」
女「フッ、それはねアホタレ」
女「──一つでも貴方の心に、禍根を残すためよ。その為だけに告白させてもらったわ」
男「…は?」
女「さっきの清掃さんの告白。あれ、心に響いたの。行ってほしくないってキモチ、凄く伝わった」
女「それはきっと貴方も同じはずよ」
男「……」
女「だから増やす。もっと乗せる。歩き出せないぐらい、もっと負荷をかけてやる。グシャグシャにしてやる」
男「な、なんたる……」
女「もうそれやめろ! 逃げるな! いや逃げさせない! 私も逃げない! だから、重しになってやるわ!」ガーッ
392 = 375 :
女「心のなかに愚痴ってもんが湧いて出るぐらい、沢山の想いで繋いでやる!」
男「…繋いでやる?」
女「一瞬でも、歩くのが億劫になるぐらい、相当やばめの奴をね」ニヤリ
男「…女さん、俺は普通に返事をするよ?」
女「いいわよ。どっちにしろ、トモダチはオシマイね」
男「あ…!」
女「重大さに気づいたようね、間抜け。…私は不器用よ、なにをしても失敗だらけ」
女「でも、そんな私だから無茶ができる」
男「…女さん…」
女「せいぜいこの告白に悩み疲れ果てなさい、このモ、モテモテ!!」
男「…モテモテ…」
女「私は何時だって一発勝負なのよ。…けど、コロコロ意見変えて、ごめんね」フィ
スタスタ
男「どこいくんだ…?」
女「やることやったもの。私、帰るわ」
女姉「え、ちょっと、ケーキはどうするの…?」
女「……食べれるかバカ!」バァン!
シーン
叔母「もっと他に引き止めるものがあったんじゃないか…?」
女姉「すみません…大人として無いと思ってます、テンパりすぎました…」ズーン
393 :
女を追いかけろ
394 :
こっから男がどう動くかだ
395 :
叔母「まあ。人生いろいろだ、男くん」
男「この一瞬で起こりすぎてませんか…」
女姉「外国に転校、同性から告白、同級生からも告白…波乱万丈ね、貴方」
男「ケルくんのは違ってたでしょう!?」
女姉「妹もよ。あんな宣言なんて、合ってないに等しいものじゃない」
男「うぐっ」
女姉「貴方が責められるのは違う、けれど、周りから『何かしてほしいと』願われる」
女姉「誰も、正解なんてわかってないのよ。きっと……」コク…
男「先生…」
女姉「ヒック。あ、やばっ、お酒飲んじゃったコレ?」
男「先生ッ!?」
女姉「うぁー」バタリ
男「先ッ、叔母さん…! 早く介抱して上げて下さい!」
叔母「やっと酒が回ったか……」フッ
男「叔母さァーん!? なにしでかしちゃったの!?」
叔母「そろそろ、お開きだろうと思ってな」
男「え…? お開きって、終わりってことですか?」
叔母「ん。時間的にも、雰囲気的にも、このまま終わらせたほうがいい」
男「あ……そ、そうですよね! みんな居なくなっちゃったし、だから……」
叔母「うん」
396 = 395 :
男(何がいいたいんだろう、俺)
叔母「コイツをスタッフルームに運んでくるよ。片付け、やっといて貰えるかな」
男「は、はい!」
叔母「じゃ、後はよろしく。置いてきたら戻ってくる」
男「…はい…」
パタン
男「………」ポツーン
男「あ…片付け、片付けっと…」ガサゴソ
カチャカチャ ゴソゴソ
男「………」
男(にゃお…)
男「にゃ、にゃっ、にゃにゃにゃにゃおーーーーー!!!」ドタン! ゴロロー!
男「なんなんだよォー! もおー! 告白とか、行かないでとか欲しいとかもうもうもう!!」ごろろろろー!
男「……っ…」ムクリ
男「……」ギュッ
男(期待とかやめろ、そんな無責任なことよくもまあ言えるだけ楽だよな! 俺がやることなのに!)
男「……やることなの、に……」ハッ
男「………………」
397 = 395 :
~~
叔母「ただいま、…あれ?」
叔母(男君が居ない、というか片付けが完璧になされてる…流石だな…)キョロキョロ
叔母「外のトイレかな、気にせず部屋の奴使っていいのに」クス
叔母「明日から居なくなるからって……」
シーン
叔母「………」スッ
叔母「IHヒーターがあった周り…凄いな、油汚れが綺麗にされてる…」キュキュッ
叔母「大変だったろうに。まるで新品の壁紙同様だ」
叔母(あ。ホワイトボードを止めてた画鋲の穴、なにかで塞がれてる)スッ
叔母「本当に気が利くな、あの子は」スリスリ
チッチッチッチッ…
叔母「……」クル
叔母「…まるで何もない」シュボッ
フゥー
叔母「まるで、彼なんて最初から居なかったみたいだ」スゥー
叔母「ハァー…遅いな、彼」
叔母「………………」ピク
398 = 395 :
叔母(──匂いが、しない、ちょっと待て)
叔母(やけに小奇麗だと思ったら、彼の手荷物すらなにも、残ってない?)キョロ
叔母「はは」ポロリ
叔母「もう、行ったのか? ……熱っつ!」ジュッ
コロロ… ヒョイ…
叔母「…火傷した…」ヂンヂン
叔母「…彼に限ってそんなこと…でも追い詰められると思ってもない行動を…」
『キミが、いつでも切り捨てられる部屋を与えたかったと』
叔母「……」
『何時でも何処にでも飛び出せる、そんな環境を作りたかった』
叔母「…ああ、そういや私が言ってたんだっけ」
叔母(なら彼らしい行動だ。私は保護者として彼の立場を肯定しなければね)
『誰に見せるんですか、それ』
『誰に、大人ぶりを見せて満足できてるんですか?』
叔母「……」スッ
ジュゥウウ… グリグリ…
399 = 395 :
ストン
叔母「…誰でもないよ、受付」
叔母「私は、きっといい子でありたかっただけなんだ…」
叔母(彼の前でしっかりとした大人に、そんな自分に酔いたかっただけなんだ)スッ
【男の財布】ソッ…
叔母「…………………」
受付「うっすー、飲みなおしに着ましたっと。ってあれェ!? もう片付けてる!?」
叔母「あ………」
受付「オーナー!? そりゃないでしょおー!? 一言言ってくれても良かったんじゃ…」
受付「どうしたんスか、黙りこくって」
叔母「か、可能性として…彼が我々に黙って、空港に向かったとしよう…!」
受付「は、はあ…それで…?」
叔母「移動費はカードで支払うよう、彼は計画を立てていたよな?」
受付「ええ、まあ、財布に入れたらスられるかもって首から下げてましたね?」
叔母「……じゃ、あれはなんだろう……?」スッ
受付「財布っすね」
叔母「………」
受付「は? え、そういや荷物がないッスね、えっ? 行っちゃった、の? 既に? もうっ!?」
叔母「どうしよう……」
400 = 395 :
受付「ハァアアアア!? あんにゃろ、勝手に暴走して突っ走りやがってー!」
受付「……ま、そんなお別れもありっちゃアリか」ポリポリ
叔母「は?」
受付「人生イロイロ。やって後悔もまた経験、最後に彼が見せた子供じみた意地っ張りデショ?」
受付「んなら大人として見送りましょーよ。叱るでも電話でも手紙でも出来るし」
叔母「お前…じゃあ財布はどうするんだ…?」
受付「送りゃいいでしょ。どうせあのプラチナ、上限もハンパないでしょうし」
叔母「…………」ボーゼン
受付「何ショック受けてるんスか。望んだの、アンタなのに」
叔母「あ、ああ…そう、だよな…」
受付「その通り。こうなる可能性を知ってやってたのは、オーナーっすよ」スタスタ
カシュッ
受付「ぷはぁー! あぁ、不味い、やっぱこの酒は」
叔母「…………」
受付「で? どーするんスか、オーナー」
叔母「えっ?」
受付「理由。できちゃいましたね、彼を今から追いかける」ジッ
受付「───その財布、お金よりきっと大切にしたいモノ、入ってますからソレ」
みんなの評価 : ○
類似してるかもしれないスレッド
- 女「私、今日からイケメンくんと付き合うことになったの…」 (201) - [42%] - 2016/1/31 0:15 ☆
- 提督「ケッコンカッコカリのルールが変わった?」 (427) - [40%] - 2015/12/5 9:15 ★
- 上条「アンチスキルだ!」美琴「ジャッジメントよ!」 (881) - [40%] - 2011/8/5 8:31 ★
- 小町「お兄ちゃんの見た目かっこいい度ちぇーっく!」 (410) - [40%] - 2015/12/20 13:15 ★
- 八幡「俺ガイルのキャラをシャッフルする」 (745) - [39%] - 2016/6/22 15:30 ★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について