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元スレ咲「これが私の麻雀だよ」

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201 = 185 :


 もうひとり、様子が変わった面子に目を向け、咲はそう思った。

 対木もこ。小動物的で、人形のような少女。
 あまり感情を面に出すタイプではない。それは浅い付き合いである咲にもわかっていたことだ。
 それが、いまはどうか。

 その薄紅を引いたような口が、僅かに歪み、笑みを作っている。
 そこに狂気のようなものを感じて、咲は思わず目を細めた。

(豹変した…いままでの凪いだ気配とは違う…)

 その変化は、すぐ横に付く健夜も察しているようだった。
 それがまた、咲の洞察を確信へ近付ける。

202 = 185 :


 もこの打ち筋が、その変化を裏付けた。
 時に荒く鳴き、時に鋭く通す。
 そうして強引ともいえる道筋を、拓いていく。

もこ「…ツモ…2000・4000…!」

 叩きつけられた和了牌が衝撃に震える。

(どうだろう…対木さんにも、確かな変化があった。それは…場の移ろいとは無関係に思える)

 もこの和了による点数の推移があり、そこで咲は勘付く。

(…点数が減ったら?あるいは相手に和了られたら…。どっちにしろ、やられた分だけやり返す感じかな…。色川さんとの違いは、色川さんが原点を基準としたものなのに対して、対木さんのはきっと基準点が存在しない…上にも下にも際限がないから、上手くやれば稼げるけど、下手を打てばそのまま飛ぶこともある)

 傷を負うほどに狂気を増すその様はまるで狂戦士。
 小さいそのシルエットは、チカラを揮うことをまるで躊躇わない。そして、奪われることさえもまた然り。

(センスの塊みたいなものだよこれは。だって、セオリーなんてまったく省みない荒っぽい麻雀だもの)

203 = 185 :


 そこまで考えた咲の前髪が、かすかな風に小さくそよぐ。

(風…?)

 不思議に思った咲の目に、南浦数絵の不敵な笑みが映る。

(…そっか。もう――南入)

 朝水、もこと垣間見えた才覚に忘れかけていたが、ついに来たのだ。彼女の独壇場となる場が。

 咲の予想を裏切ることなく、数絵のチカラは南場になって大きくなっていた。
 ノッてきたもこも、先程のもこの和了でわずかに沈んだ朝水も、南入した朝水の早さに追いつかないようだった。

朝水(すごい…南浦さん、なにかに後押しされてるみたいに力強い…!)

もこ(届かない…!)

数絵「ツモ――2000オール」

 圧倒的なチカラ。南場という水を得て活き活きと打つ数絵は凄まじい勢いだった。

204 = 185 :


(衣の最後の親も易々と流し、容赦なく和了ってくれおって…)

 序盤の勢いはどこへやら、点棒を失うばかりの衣が、椅子へと深くもたれて天上を見上げる。
 その表情には些かの悲壮感もなく、嬉々として輝かんばかりだった。

(――面白い!これこそが麻雀だ!)

 衣の瞳に、再び獰猛な光が灯る。
 衣の意気に、牌が応じる。
 
 やや手の伸びが鈍った数絵が警戒を抱く暇もなく。

「ツモ!1600・3200!」

 衣が今一度、場に降り立つ。
 数絵も、もこも、朝水も、それを見て、なおも笑う。

205 = 185 :


 南三局。あとたったの二局、されども勝負は行方知れず。
 
 楽しげに牌が躍る。

 いつの間にか、お互いがお互いを認め合っている。

 それは心も躍る、真剣勝負になっていた。

206 = 185 :


 ――


健夜「案外接戦だったね…トップが天江さん、次いで南浦さん、朝水ちゃん、もこちゃんか」

もこ「……負けちゃった」

健夜「全然、大健闘だよ。やっぱり私の見る目は間違ってなかったよ」

もこ「……」

 すこしだけ落ち込んだ様子のもこだったが、健夜の言葉に照れの混じった笑みを返した。

207 = 185 :


数絵「まさか、南場で私がまくられるとは思いませんでした」

「こっちこそ、衣が万全でないとはいえ、ここまで拮抗されるとは思いもしなかったぞ」

数絵「…うそでしょう?あれで万全じゃない?」

朝水「あはは…二人とも、最後の方が特にすごかったよ。いっしょに打ってて手に汗握っちゃった」

 一勝負終え、和やかな雰囲気が漂う。
 健夜は一頻りもこを褒めると、おもむろに立ち上がり、咲へと耳打ちした。

健夜「どうだった?みんなのチカラの程は」

「そうですね…まず色川さんはおそらく失点を取り戻そうとするチカラ。たとえば-10000の状況に際した場合、満貫や跳満に届き得る手を引き込むようなものかと。南場になってから思ったように動けてなかったのはきっと南浦さんの支配に競り負けてのことでしょう。
 南浦さんは有り体に言ってしまえば南場に強くなるもの。げん担ぎ程度かもしれませんが、席決めで南を引いたことも多少関係があるのかもしれませんね。
 対木さんについてはかなり曖昧になりますが、打たれたら打たれただけ段階的に強くなるものかと。条件が点数なのか放銃なのかはまだ判別できていませんが、かなりリスキーであることには変わりないですね」

健夜「そうだね…。私もだいたい同じ見解だよ」

 咲との答え合わせにうんうんと頷く健夜。

208 = 185 :


 やがて、健夜は思考を打ち切り、もこの横へと戻っていった。

健夜「もこちゃん。交代してくれる?」

 その言葉に、全員が驚く。
 もこがおずおずと席を離れると、入れ替わるように健夜が腰を下ろす。

健夜「さぁ。次は宮永さんの番だよ」

 その視線はどこまでもまっすぐで、咲の心まで深く突き刺さる。
 伸ばされた手は、すぐ目の前で咲を待っている。

209 = 185 :


 咲はひとつ息を漏らし、卓へと歩み寄った。

「天江さん、代わって」

「うん…」

 横にずれるように衣が退いた席に、咲が座る。

 咲と健夜、向かい合う構図での対面。

 場に、筆舌しがたい空気が横たわる。

健夜「それじゃあ…私と、打ちましょう」

「喜んで」

 緊張感が最高潮に達する。

 期せずして。人知れず。
 その勝負は幕を開けた。

210 = 185 :


 ――

朝水「いやー…すごかったね…」

 朝水の、何度目かもしれない漠然とした感想を、健夜は聞き流す。

健夜「んー…」

朝水「いや、ほんとに…すごいとしかいいようがないよあれは」

健夜「ん」

211 = 185 :


朝水「宮永さんがあっという間に嶺上開花で一局、その次の局で健夜さんが国士無双の槍槓和了り…たった二局、それもどっちも山を半分近く残して、そこで終わりだなんて…」

 朝水の言う通り、咲と健夜が卓に就いた半荘は、ただの二局で終わってしまった。咲のハコテンという劇的な幕切れだった。

 一局目。数絵の親から始まった最初の局は、五巡目、嶺上開花ツモドラ1で咲の和了。

 続く二局目。早々にカンをした咲の一萬を健夜が槍槓和了。親の国士無双、48000点によって咲の点数を一挙に取り、咲のハコテン半荘終了と相成った。

 結果だけを見れば、健夜が元世界二位の実力を見せつけたという形に思える。
 
 しかし、健夜本人は、そうは思っていなかった。

212 = 185 :


健夜「朝水ちゃんさ…おかしいなって思わなかった?」

朝水「え?なにが?」

健夜「あの場面で、宮永さんはカンを宣言する前に数秒、手を止めてたじゃない?」

朝水「そうだっけ?」

健夜「そう。手牌の槓子に手をかけ、直後に私を見た…そして、そこで一瞬目を閉じて、カンをした…」

朝水「それが?」

健夜「…」

朝水「なんなの?ねえ、気になるでしょ」

213 = 185 :


 健夜の思考には、もはや朝水の催促など届いてはいなかった。

 何度も、何度でも、巻き戻しては再生されるその場面。

 咲は知っていた。一萬のカンは、健夜の国士無双槍槓和了りに帰結することを。
 知っていて、勘付いていて、それでもなお強行したのだ。
 一体なんの為に?
 決まっていた。

 健夜がそれを成せるかどうか、見る為に、だ。

 健夜は咲の打ち筋を知っていた。そのチカラのおおよそも。
 対して咲は健夜のチカラの片鱗さえも知らないはずだった。
 初めから対等な勝負ではなかった。
 その前提の上で、咲はあえて貫き通したのだ。その勝負の意味を違えることなく全うするために。

214 = 185 :


 健夜にとって、咲のチカラを確と測る為の勝負であった。
 それと同じように、咲にとって、健夜の程度を測る為の勝負だった。
 それは久しく感じていなかった、試されるという感覚。
 
健夜(あの子はどれだけ…)

 健夜の心中は、斜陽に照らされたあの半荘第二局の和了後の卓上に縛られ、薄もやのような不透明感に囚われたままだった。 

 ――

215 = 185 :


 衣がふと目を覚ますと、薄暗闇のなかで佇むシルエットが映り込んだ。

 まだ日も昇らない時間帯。静けさが支配する空間で、同居人である咲が窓際に腰かけ、黄昏れていた。

「さき…?」

「…起こしちゃった?」

 申し訳なさそうに苦笑いする気配。眠気眼をこすり改めて見遣ると、その手には小さな花が収まっていた。

 わずかな光に映える、白い薔薇。
 先日、近くの雑貨屋に立ち寄った時に咲が手に取った造花だった。
 
 薄暗がりのなかで、白く映える薔薇を手にする咲はなんとも言い難い儚さを漂わせている。

216 = 185 :


 その姿を見つめていると、衣の記憶の底が、わずかに震えるような感覚に襲われた。
 放ってはおけないような、放っておいてはいけないような、そんな不安感が胸のなかで疼く。

 普段は滅多に聞けないような、咲の穏やかな声音が衣の鼓膜をやさしく打つ。

「…徒花なんだ。咲けど、開けど、意味はない。後には何も残さない。だれも、この手を取ってはくれない。だれも」

 抗いがたい心地よさに、衣の意識が再び眠りへ誘われる。
 なにかを言わなければならない。なにかを伝えるべきなのに、そのなにかははっきりと形になってはくれなくて。
 
 「…ごめんね。まだ眠いよね。ゆっくり休んで――」

 そのやさしさに包まれて、ついに衣の意識は安らぎを享受した。

 再び、静けさが世界を包み込む。
 そのなかで、彼女はひとり、世界が動き出すのを眺めていた。

217 = 185 :

中編第二幕カン

219 :

おつ

ミステリアスだな

220 :


これは面白い

221 :


ミステリアスな咲さんイイネ
もこっちの能力が気になる

222 :

おつ
どいつもこいつもプロレスラーかな?

223 :

おつー
南浦さんもかなり強化されてる気配

224 :

>>203
南入した朝水→南入した南浦 ですね
南南いいすぎてわけわからなくなってますよこいつ

一向聴地獄支配さえなければこんなものじゃないのと思って書いたんですけどちょっとアレでしたか
一応魔窟長野で個人戦五位だったわけですし…

228 :

一気に読んでここまで来たけど、面白い
期待だわ

229 :

面白い。続き楽しみに待ってる。

231 :

生存報告だけ置いておきます…

232 :

それだけでまだ生きていられる

233 :

安心

234 :

面白い

235 :

すこ咲がいい味してるし東海王者と咲さんの絡みも期待
闘牌描写もいいし咲さんところたんが同時に長野を出たことによって県予選のバランスも保たれる
素晴らしいからはよ

236 :

まだかな

237 :

そろそろ合宿編か県大会編にGOしてほしいですね。

238 :

まだかな?

239 :

まだなの?

240 :

前回の生存報告からもうひと月経つという事実に身震いする
まだ数kbしか書き進んでないですよ…

241 :

まってるわよー

242 :

待ち続けてますよー

243 :

生存報告してくれるだけで安心できる
待ってるからゆっくりやってくれ
急いで無茶苦茶になったら元も子ない

244 :

文章力があるだけにこれだけは言うわ
オリキャラはなぜ入れるか、どう使うかも大事だが
入れるなら入れると先に言っとけよ、配慮として
あと余計な背景とかもいらねーから

245 :

一言謝罪入れてるんだから今更蒸し返さなくても・・・。誰もお前の要望なんて聞いてないぞww自分の意見がすべて正しいと思っちゃう可哀想な奴だなww

246 :

まだなのか

247 :

依頼出してたし、もう来ないんじゃない

248 :

>>247
依頼なんてどこにでてるのか

249 :

>>244
>>140


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