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    元スレ咲「これが私の麻雀だよ」

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    102 :

    清澄団体戦出れず

    103 :

    アラフォーが全国周って選手集めて高校麻雀に殴りこみとかww こんなんテレビとかウィク麻で特集くまれるだろwwww

    104 :

    PCがご機嫌ななめでなかなか書き進まない
    ネタバレしすぎない程度に答えると、
    残りの二人は残念ながらいろいろがっかりされると思う。話の都合上しょうがないんだけど先に謝っときます。申し訳ない
    メディアがほっとかないだろ的な件は、ぶっちゃけ普通にネタにはされてると思います。主にトゥデイとかに。ただ、集まった面子的には時期的に無名な子ばっかなんでスポットライトはもっぱらアラサーにいくかと。そんな感じで特に話のなかでは取り上げません。

    106 :

    逆にこの時点で名が売れてる一年ってのどっちと泉と留学生組ぐらいでは?
    インターミドルに出てるなら全くの無名ってわけではないだろうけど

    107 = 104 :

    そこまでネタに富んでないっすよ…ちょっとオンボロってだけ

    無名っていうのは本当にまったくの無名ということで、大会とかの公式試合に出た形跡すらないってことです。そういう設定です。

    108 :

    続き楽しみ

    109 :

    面白い

    110 :

    楽しみだけどそこまで限定したら北海道からゆっきー来るんじゃないかと思ってしまうがそれだとがっかりしない。
    マジで誰だ。楽しみすぎるから早く続きお願いしますぅ

    113 :

    全然まだです(小声)

    114 :

    先に謝ります。大変申し訳ありません。
    >>33で言ったことは嘘です。中編がなかなか終わる見通しがつかないので中編だけは刻んで投下しようと思います。計画性のなさが露見してしまいまして大変申し訳ない。
    あとは注意事項といきたいですが長ったらしいのもアレなので省いてとにかく謝っておきます。読まれたら察しがつくかと思われますが本当色々と失望されたら申し訳ない。

    115 = 114 :


     未だ寒さの残る春先。
     厳しい冬を越え、緑が芽吹き始める季節。

     少女――宮永咲は父に見送られ、長野を発とうとしていた。
     
     行く先になにが待っているのか、不安はある。
     それも含めて、門出なのだと胸中で噛み締め、故郷を発つ。

    116 = 114 :


    「……で?」

     移動の汽車のなか、座席に深くもたれた咲は、隣の席に座ったちいさな影を呆れ混じりに見る。
     知らぬ顔ではない。その少女はトレードマークである大きなリボンをたのしげに揺らし、足をリズミカルに刻む。

    「汽車、汽車、ぽっぽ~♪」

     天江衣。咲に執心する、稀有な少女。
     突如咲の前に荷物を持って現れ、あれよあれよという間に引っ付いてきたのだ。

    117 = 114 :


    (まさか、小鍛治さんの集めた人のなかに天江さんも…はぁ、そうきたかぁ)

     内心で呆れの息を吐く。
     だめなわけではない。むしろ、麻雀の方は望ましいレベルにある。知らぬ仲ではないし、気安さもあった。
     彼女もまた、自分と同じで、自身の力を持て余している節もあった。ゆえに、咲と衣は似通った者でもあった。
     それにしても、と思わないでもないが、それでも拒絶する理由はない。

    (天江さんの件は、向こうについてから小鍛治さんを問い詰めればいいか)

     旅は道連れ。道中過ぎ行く景色も、慣れないであろう新生活も、共有できる相手がいるに越したことはない。
     
    「咲、これからは共に切磋する間柄だ!よろしく頼む!」

     差しだされたちいさな手を、咲は苦笑いで受け止めた。

    118 = 114 :


    健夜「ようこそ、茨城へ」

     到着した咲たちを待ち受けていたのは一年半振りに見る小鍛治健夜だった。
     その顔はすこし疲れているようにも見える。

     実際、咲たちを待つ間は健夜のとって準備期間ともいえ、慌ただしく動き回っていたために疲れているのは事実だった。

     そんな様子の健夜を見て、咲は用意していた言葉の数々を胸の奥にしまい込んだ。

    「これから、よろしくお願いします。小鍛治さん」

    健夜「うん。よろしくね。じゃあさっそくなんだけど」

     健夜が身体を傾けて指し示したのは一台の車。
     運転席には、スマートな女性が座っている。

    119 = 114 :


    健夜「乗って乗って。これからふたりの下宿先にいくから」

    恒子「へろー、大志を抱いてるかい少女諸君。私は名も無き人気アナウンサー、福与恒子。ヨロシクねん」

     想像の斜め上をいくフランクさに、後部座席に座った咲がちいさく会釈する。
     脇腹を小突く健夜、「およしになってすこやん」という冗談交じりのやりとりから、ふたりが親しい仲であることが窺えた。

    120 = 114 :


     車内から外の風景を眺め、ほうっと息を吐く。
     咲にとって、新天地である茨城はなにもかもが新鮮で、心のなかの幼い部分があらゆる角度から刺激された。

    「あれ!咲、あれなんだろう!」

    「ファミレスかな」

    「はみれす!衣、知ってるぞ!」

     目を輝かせて咲とは反対の景色を見つめる衣もまた、同じようだった。
     そんな後部座席の様子をミラー越しに見て、大人たちは微笑み合う。

    121 = 114 :


     やがて四人を乗せた車は大きな通りから小枝のような小道に入り、入り組んだ住宅街をさらに奥へと進んでいく。

     そうして辿り着いた先には、古めいた二階建ての集合住宅。
     ボロアパート、という感想がしっくりきた。

    健夜「ここが、これからふたりの住むおうちになります」

    「うむ!ボロい!」

    (言っちゃうんだ、それを)

    122 = 114 :


     三人を下ろすと、福与恒子は「ぐっどらっく」とだけ残して去ってしまった。
     
    健夜「大家さんが私の親戚の方なんだ。べつに特別融通が利いたりはしないけどね…」

    「でも、いいんですか?こっちでの生活を小鍛治さんに全面的に助けてもらっても」

    健夜「いいのいいの。みんなを引き込んだのは私なんだし」

    「衣には無用の気遣いだがな。とーかからお小遣いをもらってあるし」

    健夜(そりゃ、龍門渕だしね…かわいげないなぁ!)

     健夜には持て余し気味の貯えがあった。
     どうせ使い途がないのならば、と気前よく少女たちへの投資に使ってしまおうという腹積もりでいた。

    123 = 114 :


     門前で物珍しげに建物を眺める二人の少女に、ちいさな影が近づいていた。

     「健夜ちゃん、きたかい」

     親しげに話しかけてきたその人物は、やや細面で年齢を感じさせるものの、健夜に似通った面立ちの女性だった。

    健夜「泰江おばさん、こんにちは。こちら、残りのふたりです」

     泰江と呼ばれた女性は、人好きのする笑みでふたりの礼を受け入れた。

    124 = 114 :


     色川泰江。小鍛治健夜の叔母にあたる人物であり、大家でもある。

     物腰の柔らかい大家に迎えられ、咲と衣はいくぶんか緊張が解けていた。

    泰江「ふたりの部屋はこっち。はいこれ鍵、失くさないようにね」

    「はい」

    「わーい」

    泰江「お風呂とトイレは各部屋に備えてるけど洗濯物だけは共用ね。あとでうちの子をいろいろ教えにいかせるから、その時に詳しいことを聞いて」

     通された部屋は今時古風な畳敷きの部屋。
     外見からは想像もつかないほど手入れが行き届いてあり、清潔感のある部屋だった。

    125 = 114 :


     上り框のうえで足を止め、咲は部屋のなかを見渡した。
     これから生活していく居住空間を感慨深げに眺め、深呼吸する。

    「咲ー」

     開け放したままだったドアの影からぴょこんとリボンが揺れ覗く。

    「なに?天江さん」

    「そっちいってもいい?」

     すこしの不安が混じった声音で訊ねてくる衣を若干不審に思ったが、咲は拒む理由もないかと思い、「どうぞ」とだけ返した。

    126 = 114 :


    「…で?どうして荷物まで持ってきてるの?」

    「?だってこっちにきてもいいって」

    「あ、そういう意味?こっちの部屋がよかったの?じゃあ私はあっちに」

    「じゃあ衣も」

     咲が荷物を持って立ち上がると、衣も倣うように立ち上がる。
     奇妙な間があき、ふたりは見つめ合う形で固まってしまった。

     そんな硬直を破ったのは、部屋にやってきた健夜の声だった。

    健夜「あ、ふたりともおなじ部屋にいたんだ」

    「小鍛治さん」

    健夜「手間が省けちゃったね」

     健夜的にはそうだろうが、咲としてはあまり喜ばしくはなかった。
     しかし衣の我儘っぷり、強情さは咲もよく知っていた。
     諦めの境地で荷物を再度下ろした咲は、健夜の背後に控えていた人影に目を遣った。

    127 = 114 :


    「そちらは?」

    健夜「うん。色川朝水ちゃん。泰江さんの子で、私の姪にあたるのかな」

     紹介された少女、朝水は会釈だけして、目を逸らした。
     
    健夜「朝水ちゃんも宮永さんと同じで今年から土浦の一年生なんだよ」

    「へえ。私、宮永咲っていいます。これからよろしくお願いします」

     外行きの態度で自己紹介する。が、相手は横目でちろりと見ただけで、反応は極々薄いものだった。
     さすがにむっとしたが、続く衣の威勢の良い発言で咲の気勢は削がれてしまった。

    128 = 114 :


     それから二言三言、健夜のほうから取り成すような言葉をいただき、朝水の主導で色々な説明を受けた。
     あまり騒がしくしないよう、夜出歩くことは極力避けるよう、どうしても用事がある場合は大家に知らせてから、などなど。最後に付け足された部屋を汚くしないよう、という注意は他に比べて一際力が入っているように見えた。彼女が各部屋の管理をしていたのだろうか、と咲は取り留めもなく思った。

     一通りの規則を教えられ、ようやく一息ついた頃。
     健夜はすこし待つよう三人に伝え、部屋を出て行った。
     待つよう言われても、そもそもここがこれから住まう部屋なのだからどこにも行きようがないと咲は思った。

    129 = 114 :


     畳のうえで足を崩し、窓の外に目を向けると、青い空が広がっている。
     まぶしげに目を細めていると、朝水がふと立ち上がり、彼女もまた部屋を出て行ってしまった。
     
     きまずくなって出て行ったのだろうか。健夜は三人に待つよう言っていたがいいのだろうか。

     そんなことを思っているうちに、朝水はすぐに戻ってきた。

     その手には湯呑の乗った盆を持ち、部屋に上がると咲と衣の前に湯呑を差し出した。
     「いただきます」と一言いい、湯呑に口をつけると、程よい温度のお茶が口内を湿らす。
     渋みや苦みは控えめで、すっきりとした味わいが口のなかに広がる。淹れ慣れている味だった。

     落ち着く味にほうっと息をつく。不意に視線を感じ、ちらと見遣ると、朝水が盆を両手で抱えて咲の凝視していた。
     目が合うと、やはり視線を逸らされる。だが、出されたお茶のおかげで肩の力が抜けていた咲には、それが別段不快には感じなかった。

    (きっと、あまり人との付き合いが得意な子じゃないんだな)

     他人事のようには言えないか、と苦笑を漏らしながら茶を啜る。

    130 = 114 :


     そこでようやく戻ってきた健夜は、新たな顔ぶれを従えていた。

     朝水は、ちいさな健夜といった印象の子だった。まるっきり同じとはいかないものの、ハの字に下がった眉やどこか素朴な顔立ち、まとった緩めの雰囲気などがどこか血の繋がりを感じさせた。

     では、新たに登場したふたりはどうだろうか。

     片方は清楚といった印象だった。
     青いリボンで結った髪を揺らし、垂れ気味ながら芯の強そうな眼差しで咲を見つめている。
     凛とした眉や真一文字に引き締められた口、ピンと伸びた背筋や楚々とした佇まいから和風美人という言葉が似合った。

     もう片方。
     フリル過多な(おそらく)私服に、見てるこちらが痛ましく思えてしまうほどに身体のほぼ全面を覆っている包帯。
     片目もリボン風な包帯に隠れ、人形のような無表情でただそこに立っている。
     きっと、宮永咲という人生のなかでおよそ関わり合うことはないであろう、そんなインパクトを与える風体だった。

    131 = 114 :


     説明を求める戸惑いの目線に気付いた健夜が、ぎこちない笑みを湛えて紹介する。

    健夜「えっと、こちら、南浦数絵さんと、対木もこちゃん」

    「はぁ…宮永咲です。よろしく」

    「天江衣だ。よろしく!」

    健夜「えーと…この五人で、土浦女子麻雀部として、活動していこうと思います」

     その宣言に、咲は困惑した。
     いきなりのことだったからそれもしょうがないことではあるが、それ以上に、若干一名の激しすぎる動揺を目の当たりにして、どういうわけなのかと困惑していた。

    朝水「え?え?え?」

    健夜「朝水ちゃんは驚いていると思います。そうだよね。だっていま初めて伝えたから」

    「ちょっと待ってください」

     聞き捨てならない言葉があった。看過してはならない情報だった。

    132 = 114 :


     咲は健夜に向けて愛想十割増しの不自然笑顔を向け、低い声を器用に捻り出して問う。

    「小鍛治さん、ちゃんと『面子が揃った』って私に言ってましたよね?なのに本人の了承を得られてないとはどういうことでしょうか?」

    健夜「ちょっと待って、宮永さん、怖いよ!」

     咲から一歩距離を置き、手を伸ばして牽制する健夜。あまりの怖気づきっぷりに、横の数絵から呆れまじりの嘆息が吐かれる。

    健夜「ほら。私と朝水ちゃんのよしみでね?頼めば聞いてくれると思って」

    「完全に皮算用じゃないですか…しかも本人はかなり困ってるみたいですけど」

     そういい視線をやると、朝水は盆で顔を隠し、逃避の体勢に入ってしまっていた。

    133 = 114 :


     健夜は申し訳なさそうに頬を掻き、首を竦めた。

    健夜「ごめんね。本当は朝水ちゃんに無理に頼らなくてもいいようにしたかったんだけど…」

     そこで、言葉に詰まる。
     咲はその先に続くべき言葉を察した。つまるところ、健夜はメンバー集めに苦心していたのだ。

    「…まぁ、小鍛治さんですしね」

    健夜「はうっ」

     あまり意識せず口を突いた言葉だったが、それだけに健夜の心を深く抉った。
     大ダメージに健夜の足がよろめく。

    「それにしたって、事前に話を通しておくべきだったんじゃ」

    健夜「…それは、ほら。朝水ちゃん、私ひとりで頼んでも絶対逃げるから。みんなが揃った時に打ち明けて逃げ場をなくしちゃえばって…ね?」

    数絵「卑劣ですね」

    健夜「うぅっ」

     今度は横からの不意打ちだった。どうせ数絵が言わなくとも咲がおなじようなことを言っていただろうが、むしろ咲からの口撃に備えていただけにこの不意打ちは健夜の残った精神力を根こそぎ刈り取った。

    134 = 114 :


    健夜「そこまで言わなくたって…」

     くずおれる、もうじき三十路の伝説の肩に、ちいさな手がやさしく置かれる。

    「そう気にすることもない!な?」

    健夜「うわああああああああああん」

     なまじ子どもにしか見えない衣に慰めの言葉をかけられ、情けなさに拍車をかけられた健夜はついに泣き出したくなっていた。
     視界がぼやけていたから泣いていたかもしれない。あまり認めたくはないことだったが。

     どうしようもない空気になりかけていたその場を繕ったのは、意外にも朝水だった。

    朝水「と、とりあえず…詳しいお話を」

    135 = 114 :

    ちょっと寝る、

    136 :

    とりあえず乙!
    おもしろい

    137 :

    ググっても出ないからオリキャラか

    138 :

    全国優勝待ったなし

    139 :

    おつー
    叔母の子なら従姉妹なんじゃない?あと読み方も教えれ

    140 = 114 :

    「いろかわあさみ」ちゃんです
    従姉妹です。許してください
    唐突なオリキャラですがオリキャラのためのssではなく、話のためのオリキャラってことで許してください
    許してください!

    141 = 114 :


     ―― 

    「なるほど…」

     咲との約束、それぞれのメンバーを勧誘するにあたっての経緯、今後の方針等を健夜がかいつまんで説明したところ、見事なユニゾンでうなったのは咲と数絵のふたりだった。

     そして、その後に健夜に向かって放った言葉もまた、奇しくもおなじものだった。

    「バカなんですか?」

    健夜「うっ…そ、そんなふたりして貶さなくったって…」

    142 = 114 :


    「麻雀をろくすっぽ知らない初心者を、センスの有無だけで頭数に入れるのはどうかと思いますが。しかもそのセンスというのも又聞きした噂程度のものだなんて。正直小鍛治さんの計画性のなさには若干引きます」

    数絵「本人の承諾も得ていない、最近は麻雀に触れているのかもわからない、そもそもここ数年顔も合わせていないような親戚の子に対してよくもまあそこまで楽観的な期待を持てますね。そんなのでよくあれだけの大口を叩けたものですよ」

    健夜(こ、このふたり、こわいよう…)

     小動物よろしく震える健夜を前に、切り捨てるような弁舌はなおも止まらない。
     見かねた件のふたりがおずおずと助け舟を出した。

    もこ「………あ、の……わたし…がんばり…ます、から……」

    朝水「あ、あまり健夜さんを責めてあげないでください」

     あまりにもちいさな援護に、鋭いふたつの双眸が向けられる。
     健夜は無実のふたりを巻き込むまいと手を伸ばすが、時すでに遅し。

    「色川さんはやさしいんだね。いきなりへんてこな話に巻き込まれちゃったっていうのに」

    数絵「対木さんは悪くないんだよ。麻雀を覚えたいんだってね?だいじょうぶ、すぐに覚えられるよ」

    朝水「はぁ…」

    もこ「……あり、がと…?」

    健夜(私以外にはすっごくやさしいんだ…というか、私にだけめちゃくちゃ辛辣…?)

     納得のいかない健夜であったが、なんとか剣呑な空気が薄れたことにはもこと朝水に対し感謝し、話を戻した。

    健夜「でも、これで五人揃ったんだよ。土浦女子麻雀部は、ここからまた始まるんだ…」

    朝水「え?私、やるとは言ってないけど…?」

    健夜「はい?」

    143 = 114 :


    朝水「えっと…麻雀なんてもう何年もやってないし…」

    健夜「…土浦女子麻雀部は、ここからまた」

    朝水「聞かなかった体で話を進めないでよ…」

     肩を落とす朝水に、健夜はちいさく耳打ちする。

    健夜「気が乗らなくても、とりあえずすこしだけ付き合って!あとで進学祝い多めにあげるから!」

     肩越しに感じる白い目に怯えながら囁くその姿は紛れもなく情けない大人の姿だった。
     素の健夜の性格をよく知っている朝水は意固地になってもしかたないと悟り、目を伏せる。
     
    朝水「…来年はお年玉ちょうだいよ?」

    健夜「…わかってるって」

     こうして、五人目の説得は健夜の手腕(?)によってとりあえずは為されたように見えた。

    144 = 114 :


     改めて、これから共に闘う仲間たちを、それぞれ見回す。

     特に咲は注目の的だった。

     小鍛治健夜が、今回動くきっかけになった少女。
     小鍛治健夜が手ずから導きたいと望む少女。
     どんなだろう、と思われてもしかたがない状況だった。

     殊に、この中で咲についてほとんどと言っていいほど知らず、それでいて麻雀と、麻雀における小鍛治健夜の偉大さをよく知る南浦数絵は一際咲への興味を隠さずに発していた。

    (きまりが悪いなぁ)

     好奇の視線を浴びせかけられた咲はばつの悪い様子で身体をよじり、視線を外した。
     どうにか空気を変えようとあれこれ考え、

    「そうだ。衣ちゃん、制服を見にいこうよ」

    「おお!もうか!いいぞ、いこういこう!」

     ふと思いついた提案だったが、思った以上に食いつきが良い。
     これにて解散、という空気に持って行きたかった咲だったが、

    もこ「……私も…ついてって、いいです、か…?」

     ちろりと窺い見るように見つめられると無下にもしづらい。
     咲は「そうですね。まだでしたら、いっしょに」と答えた。

    145 = 114 :


     思わぬ飛び入りがあったものの、衣といっしょの時点でゆっくり落ち着いてというのも無理な話かと思い直して、咲は立ち上がろうとした。

     そして自然、視線が前方へと向き、そこでちらちらとこちらを見る者の姿が目に留まる。

    数絵「…ゥンン!天江さんと対木さんもいっしょか。それなら、うん、私もいこうかな。友好な関係を築く機会みたいだし」

     わざとらしい咳払いと共に、小柄なふたりをちらちらと横目で見ながら、空々しくのたまっている。
     咲の数絵を見る目が次第に疑わしげな目に変わっていく。

    「失礼ですが、南浦さんってちいさい子どもが好きなんですか?」

    数絵「本当に失礼だな。言葉には気をつけてくれ。それだと私が変質者みたいじゃないか」

    146 = 114 :


     先程の様子を見てそう思わないほうが難しいだろう、と咲は内心で独りごちた。
     実際、今も盗み見るような目は衣ともこを捉えている。どころか、いままで固く結ばれていた口が綻んで見えてすらいた。

    「…で、ついてくるんですか。天江さんと対木さん目当てで」

    数絵「人聞きが悪い。私も、親交を深めるためにご一緒しようと言ってるだけだ」

    「さいですか」

     いっそ空々しくさえある言い分は暖簾に腕押し柳に風。おそらく、どれだけ追及しようと彼女はけして自身の主張を曲げない気がした。

     ここまでくると、もはや何人いようが大して変わらないだろう。横での「制服かぁ、懐かしいな。みんなでだなんて、なんだか楽しみだね朝水ちゃん」「え、私たちもいくの…?」というやりとりも右から左、どうにでもなれと咲は溜め息を吐いた。

     ――

    147 = 114 :


     高校生活への準備期間である春休みはあっという間に過ぎ去り、入学式の日を迎えた。

     衣は二学年に編入ということで、一足先に通学している。
     衣が同学年の平均的な学力を大幅に上回っており、編入試験を余裕で通過していたことに咲が驚くという一幕もあった。

     なにはともあれ、今日から咲も土浦女子の生徒だ。
     真新しい制服をまとった新入生の列にまぎれ、式に臨む。

     特別目新しいことはない。老人の長話に付き合い、新入生代表者が頑張って練ったであろう長文を聞き流し、祝電の読み上げをうわのそらでやり過ごし、吹奏楽による校歌の演奏を聴き、ようやっと立ち上がる頃には尻が痛くなっていた。

    148 = 114 :


     渡り廊下に出た途端にざわめき始める周囲がすこしだけ鬱陶しく感じられ、咲は意識をべつのことへ傾けた。

     中学ではそこそこに周囲と付き合って、目立たずはぐれずの立ち位置にいられた。
     だが、まったく新しい環境ではそうはいかないかもしれない。
     いじめられたりしたらどうしよう。ふと芽生えた不安にすこしだけ気が重くなった咲は、道中、人だかりが出来ている箇所で足を止めた。

     クラス分けの結果が掲示板に貼りだされている。
     遠巻きに眺め、自分の名前を探していると、隣の生徒と肩がぶつかった。
     
    「あ、ごめんなさい…って、対木さん」

    もこ「……みやなが、さん……」

     包帯は控えめ、しかし頭に巻いたリボン包帯はしっかり装着した、異彩を放つ新入生、対木もこだった。 

     人混みに入っていく勇気がなかったのか、咲とおなじように遠巻きにクラスを確認しているようだった。

    149 = 114 :


    「あ、対木さんの名前あったよ」

    もこ「みやながさんのも……」

     お互いが、お互いの名前を発見し、指さす。
     その先は、おなじクラスの欄だった。

    「おなじクラスだね」

    もこ「……うん」

    「ちょっと安心した」

    もこ「……わたしも……」

     見知った間柄の相手がおなじクラスだと、やはり安心感が違う。
     微笑みを交わすふたりに、近寄る人影があった。

    数絵「やあ」

    「南浦さん」

    数絵「私もおなじクラスだったよ。色川さんもね。こうなってしまうと、天江さんが仲間外れになっちゃったみたいだね」

    「へえ、色川さんも」

    数絵「うん。とりあえず、教室に行ってみよう」

    150 = 114 :


     土浦女子高校において、第一学年の教室群は校舎の四階にあった。
     学年が上がる毎に、教室のある階が下がっていき、階段の昇降に伴う苦労も減るというわけだ。
     
     最年少である咲たちがえっちらおっちら列を成して四階まで上がり、クラス名表示プレートを見上げては各々割り振られた教室へと入っていく。

     五十音順に割り当てたであろう席順の表に従って着席する。
     周囲を見渡せば、他の生徒は近くの席になったクラスメートと雑談に興じたりしている。


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