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    元スレ八幡「心の声が聞こえる様になった」

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    401 :


    八幡「……出ない」

    (コールが鳴り響き、すぐに電源が切れていると、音声が流れる)

    (運悪く電源が切れている可能性もあるが)

    (多分、電話が来ると見越して切ったんだ)

    八幡「思い出せ」

    八幡「俺が初めてその気分を味わった時」

    八幡「俺はどうしていた」

    八幡「そこに、あの人の行き先のヒントがあるんだ」

    八幡「比企谷八幡、分かるはずだ。お前なら」

    402 = 401 :


    八幡「……陽乃さん」

    陽乃「……よく、私がまだここにいるって解ったね」

    (雪ノ下さんはあのデパートから動いていなかった)

    (俺も暫くその場から動けなかったからな)

    (鍛練を積んだ……ってか積まされた俺でさえ)

    (なら、雪ノ下さんもだと……思った)

    八幡「携帯の電源、入れておいてください」

    陽乃「電話が繋がらなければ」

    陽乃「優しい比企谷君は探しに来てくれるって思ったから」

    陽乃「ごめんね」

    403 = 401 :


    八幡「ゆ、雪ノ下さんがそんなこと言っても」

    陽乃「信憑性がない?」

    八幡「いや、あざといっす」

    陽乃「………………ぁ」

    陽乃「あははははははっ」

    八幡「(信憑性はある)」

    八幡「(だって)」

    八幡「(今の陽乃さんは素顔だ)」

    八幡「(そこにそれは嘘だと言うことなんか出来ない)」

    八幡「(それに、)」

    八幡「(陽乃さんの憂いを帯びた上目遣いを)」

    八幡「(あざといと言わないでどうする)」

    陽乃「私があざといなんて、比企谷君も面白いこと言うね」

    八幡「っ」

    八幡「(バカ言え)」

    八幡「(可愛いとか言っちゃったら色々終わるだろ)」

    404 = 401 :

    休みの方が出来ない現実
    次は夜か明日

    408 :


    八幡「俺のあざとい後輩に髪型とかちょっと似てるんで」

    陽乃「だからあざといって?」

    八幡「いや、まぁ……」

    (陽乃さんはいつも通りでいようとしている)

    (代替の仮面を使って、笑顔でいようとしている)

    (無理するな)

    (あれは結構キツイんだ)

    (覚悟とか意志なんて関係ない)

    (思いっきり、心に来るんだ……)

    八幡「っ」

    八幡「(普段なら自虐的に言えるのに)」

    八幡「(なんで、言えない)」

    八幡「(陽乃さんが相手だからか?)」

    八幡「(それとも俺が……普段通りじゃないからか?)」

    409 = 408 :


    陽乃「……けど、良かったね」

    八幡「(何が良かったんだ)」

    陽乃「雪乃ちゃんと、これまで通りでいられる」

    八幡「(それは雪ノ下との結果だ)」

    八幡「(だが、この二人にとっては……)」

    陽乃「私は大丈夫。雪乃ちゃんと険悪なのは元からだからねー」

    (陽乃さんは笑顔でそう言った)

    (出来たばかりの新品の笑顔)

    (葉山ならここで無難な一言を言えるだろうか)

    (葉山なら、ここでイケメンなことを言えるだろうか)

    410 = 408 :


    八幡「(なんで葉山なんだ……っ)」

    (強く握り拳を作る)

    (自分を殴って、混乱したふりして)

    (この人のための言葉を……)

    八幡「(意味わからん)」

    八幡「(陽乃さんの反応が怖い?)」

    八幡「(知るかそんなこと)」

    八幡「(混乱したふりなんて面倒なことしてられん)」

    八幡「雪ノ下さーー」

    陽乃「陽乃が良い。比企谷君はもう。何回か呼んでるんだから」

    陽乃「ねっ?」

    八幡「ぅぐ」

    (その要求)

    (その願いに俺は言葉を失った)

    (俺を見上げる表情が)

    (あざといと言うにはとても儚くて)

    (それを笑顔と言うには、悲しみに溢れすぎていたからだ)

    411 = 408 :


    八幡「ゆ、雪ノ下さん」

    八幡「何て言うか、変わりすぎじゃないですかね」

    陽乃「……そうかな?」

    陽乃「前から名前呼びはお願いしてたはずなんだけど」

    八幡「(確かにそうだ)」

    八幡「(陽乃さんの表情が張り付いた笑顔じゃないだけだ)」

    八幡「(ならどうしてこうも俺は陽乃さんに……)」

    八幡「(俺が変わったのか?)」

    八幡「(陽乃さんとの理解を期待し)」

    八幡「(陽乃さんの特別になれないかと期待して)」

    八幡「(……いや、最も変わった事がひとつある)」

    八幡「(それが起因)」

    陽乃「比企谷君?」

    八幡「な、なら。雪ノ下さんも名前で呼ぶべきなんじゃないですかね」

    八幡「……別に、無理にとは言わないですけど」

    八幡「(俺はこの人の強がりな弱さに)」

    八幡「(惹かれてしまったんだ)」

    412 = 408 :


    陽乃「………………」

    陽乃「…………比企谷君の心が聞こえない」

    陽乃「私が持ってた人に対する優位性が無くなっちゃったからね」

    (陽乃さんはその喪失を)

    (呪いが解かれたかのように、喜ばしく)

    (懐かしむような優美な表情で言う)

    陽乃「だけど。だからこその期待がある」

    (陽乃さんの目が俺を見つめる)

    (陽乃さんの仮面の剥がれた顔が、少し赤くなっていく)

    413 = 408 :


    陽乃「君が……八幡君が」

    八幡「!」

    陽乃「私と同じ気持ちかもしれないって」

    八幡「………………っ」

    (期待、希望、夢、願望)

    (それは必ず叶うとは限らない)

    (けれど、不安定で不確定だからこそ)

    (人はそれを抱き、すがり、傷付き)

    (けれどもまた抱き続けるのだろう)

    八幡「どうですかね。解りません」

    八幡「だから俺も……期待します」

    八幡「俺の目に映る陽乃さんのように」

    八幡「陽乃さんの目に映る俺が嬉しそうであることを」

    (その先に見えるものが幸福であることを期待して)

    八幡「(だから一先ず、俺は変わらなければいけない)」

    八幡「それじゃ……帰りますか?」

    陽乃「……ううん。デートしよっか」

    (俺の差し出した手を、陽乃さんは受け取る)

    (だから俺は、また期待する)

    (この手に応えたように)

    (この人なら、期待に応えてくれるかもしれないと)

    414 = 408 :

    これにて閉幕
    完結まで1年、半エタしてすまない
    最後までありがとう


    陽乃さんか期待に応え
    比企谷君が期待に応えられたのかはご想像にお任せします

    415 :

    陽八だったとは...

    おつですー!

    416 :

    乙です
    次回作も期待しています

    418 :

    素晴らしかった

    419 :

    長かった~
    ずっと見てたけど完結して良かった

    420 :

    おお、キッチリ完結してる。
    正直、未完だと思ってたけど、いい終わり方をしてて良かった。


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