私的良スレ書庫
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元スレ沙希「ねぇ…」 八幡「」
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ガハマさん9巻以降ホントこういう役割が似合う女の子になったよねぇ
結衣「だから、かな…。ヒッキーにフられて…でもフった理由は特にないって言われてさ、でもなんか結構大丈夫っていうかさ…」
八幡「それなら良いけど…」
結衣「辛くないわけじゃないよ?やっぱ好きになった人と付き合えないってさ、結構クるし…」
そういう言葉は言わないでもらいたい。
マジで罪悪感がパないから。
つかマジでなんでダメだったんだろうなぁ…
あー、俺完全に婚期逃したわー。
いやそれだとまるで付き合って結婚みたいな小・中学生みたいな発想でそっちがキモ過ぎてパないけど。
でももしかしたらこれって俺、マジで一生……やめよう、考えると自殺しちゃうから。
結衣「ねぇヒッキー………」
八幡「あ?」
結衣「あのさ…」
八幡「なんだよ…」
結衣「やっぱ……やっぱヒッキーのこと……」
お、おいおいおい…これはアカンやつやろ絶対…。
由比ヶ浜、落ち着け、待つんだ。
結衣「…………」
八幡「…………」
結衣「…………」
八幡「…………お、おい。どした?」
なに?なんなのこの沈黙?
ドキドキし過ぎて俺の方が不安になっちゃったじゃないのよさ。
かーっ、こういう時マジどうして良いかわかんねーわー。
いやホントォ、この状況における俺の行動は何が正しいのか教えて欲しいんですけど変な話ぃ。
結衣「……んーん、やっぱいいや!この話はここまでってことで」
八幡「…お前がそれで良いなら……」
結衣「うんっ!これからもよろしくね、ヒッキー!」
八幡「…………おう」
その笑顔の裏にはいったいどんな想いが隠されたのだろうか。俺はどれだけの痛みを由比ヶ浜に与えたのだろうか。どれだけの痛みを由比ヶ浜は抱え込んだのだろうか。
多くの疑問がただ募るばかりだ。
だが、俺にはそこを追求できるほどの勇気がない。
例えそれらの疑問の解答を得ても俺にはどうしようもないし、きっとそれは由比ヶ浜自身が許してはくれないだろう。
どんな理由であれ、理由がないであれ、俺は由比ヶ浜の前では強くなければならない。
それが告白してくれた相手をフるということなのだろう。
雪乃「こんな所で何をしてるの、由比ヶ浜さん?」
八幡「うぉっ」
結衣「ゆきのんっ!」
突如後ろから声をかけられてビックリする俺を置いて由比ヶ浜は雪ノ下にガバッと抱きついた。
………なんか、こうね、仲が良いのは良いことなんだけどさ、1人忘れてませんかね雪ノ下さん。奉仕部ってもう1人いたよね?ねっ?!
俺のつぶらな熱視線に気付いたのか雪ノ下はわざとらしく首をかしげる。
雪乃「ーーーと、ヒキガエル、くん?」
八幡「違うから。そろそろ名前覚えてくれませんかね」
雪乃「気が向いたらね」
いやそんな微笑まれても…。
…………。
…………。
なんだろうか、この感じ、すごく久しぶりな気がする。
そう感じたのは俺だけではないらしく、由比ヶ浜が雪ノ下から身体を離して俺たちに微笑みかける。
結衣「なんか、久しぶりだねっ。こういう感じっ」
雪乃「そうね」
八幡「……だな」
雪乃「とは言っても実際、先週まではこんな感じだったのだけれど」
結衣「あ、あー……ゴメンねゆきのん」
八幡「……悪い」
雪乃「…別に。あなた達が関係を修復して、その………また奉仕部に来てくれるのなら、構わないわ」
結衣「ゆきのん……」
……最近の雪ノ下は、初めて出会った時から比べるとどうなっただろうか?
こんな台詞をあの頃の雪ノ下は言っただろうか?
見た目は依然として凛々しく、清く、気高く、美しい。
まるで絵画的なその姿は変わっていない。
変わったのは雪ノ下の中身だ。
あの頃には考えられないほど柔和になったと思う。いや俺にはまだちょっとかなり冷たいかもだけどね……。
でも、それでも確実に、俺たちは少しずつ理解を重ねていく上で今の関係になれたのではないか。
それでもまだ、全ては知らず、いや、俺はまだ彼女たちのことを1割も知らないのかもしれない。
それでもきっと何かが少しずつ、積み重なっているように思えた。
八幡「いい加減寒い。行こうぜ、部室」
雪乃「ええ」
結衣「うんっ!」
ーーーだから、だからこそ俺は、きっとまた、何かを大きく、間違えるーーー。
* * *
寒い。
2月も後半戦に入り、ニュースでは数日前に春一番が吹いたなどと報道されていたのだが、春の訪れを予感させないその冷気に俺は身をよじらせていた。
最近の俺の休日は、見事に休日としての機能を果たしていないように思える。
というのも先週の休みに続いて、俺はまた外に駆り出されていたからだ。
さも当然のごとく前に座るのはその場に似つかわしくない仏頂面の女の子。
いや一番相応しくないのは俺ですけどね?心得てますから何も言わないで。
八幡「用事ってなんだよ」
現在俺は例の如く、という表現もアレだが、サイゼに来ていた。
昼間はサラリーマンやOLやらで賑わい、もう少し時間が経てば部活帰りの学生で賑わう。
そんな昼の喧騒に包まれた屋内には明らかに浮いている俺と彼女。
俺の周りでそんな空気を発するのは雪ノ下か川なんとかさんのどちらかくらいであり、休日に俺と二人で会うことに抵抗のない方といえば明らか後者である。
つまるところ川なんとかさんといる。
沙希「いやなんかもうちょっとあるでしょ…」
八幡「は?」
沙希「別に。ただ会っていきなり単刀直入に会う理由を聞いてくるのがあんたらしいって思っただけだから」
八幡「あぁそう…」
そんなに変だろうか?
いやきっと変なのだろう。
話の振り方や話題提供等にはかなり自信がない。
なにせあの材木座に言われたくらいだ。あの材木座にっ!!
八幡「………あー、と。んで、用事って?」
はぁ、と大きく溜め息を吐くなり、何かを諦めたように持ってきたバッグをガサゴソし始める。
諦めないでっ!
八幡との会話を諦めないでっ!
話を振ったりは苦手だけど、振られた話題に返答するのはできるんだからっ!
長所を伸ばす教育方針でいこうよっ!
沙希「………これ、はい」
川崎がバッグから取り出したのは可愛らしい小包と縦横5〜7cmくらいの正方形の小さな箱だ。
八幡「なにこれ」
沙希「良いからはい、早く受け取って」
ずずいっと前に出してくるので不承不承にそれらを受け取る。
ふむ、どうやらこの小包の中にはクッキーが入っているようだ。
そしてこちらの箱には……と川崎に目だけで箱を開けて良いかを確認すると、そっぽを向いてからコクリと頷かれたので、そっと開ける。
中には箱いっぱいに敷き詰められた茶黒い物体。
それらの上には赤茶色の粉末がかけられている。
言わずもがな、チョコである。
八幡「お前、これ」
沙希「そ、それはあたしが作ったやつ。そっちのクッキーは京ちゃ…京華が作ったやつだから、その、た、食べてほしい、んだけど…」
八幡「お、おう…。………いや、どうしただんよこれ」
沙希「ほ、ほら、前にお礼するって言ったじゃん」
八幡「あ?それは弁当じゃ………あー、そういやそれとは別に、って…」
そう、確かにいつぞやの屋上でそんなような事を言われた気がする。
でも、お礼の内容が弁当とお菓子?
なんか食い物ばっかだなー。
まぁ有難いから良いけど。
沙希「だ、だから、だからその、ほら、なんか最近バなんとかってあったし、だからその、チョコとかクッキーなら丁度いいかなって思ってて…」
バなんとか?
バ、バー、バル、バリ、バカ、バナ、バー、バス、………あん?
2月の中頃にあって、チョコやクッキー渡すのが丁度良くて、バなんとか……。
おいそれって、それって、、バレンなにがしじゃねぇかッ!!!
沙希「………ねぇちょっと」
いや、落ち着け、落ち着くんだ八幡。
バレンなにがしチョコやクッキーを貰ったからといって、それは昨今では友チョコという意味合いすら持っているのだ。
決して異性として好きだから、などではない。
いくら川崎が毎日弁当を作ってきてくれたとしてもそれは好意的なモノでは断じてなく、ただ単にお礼をしてもらっているだけだ。
毎日クラスの女の子に弁当を作ってもらえるほどの事をした覚えは全くないが。
むしろしてもらい過ぎてるんじゃなかろうか。
沙希「……聞いてる?」
そうだ!これはしてもらい過ぎてる!
自分への見返りが多いのは良いと思っていたが、善意をもらい過ぎると罪悪感が芽生えてしまう。
だがここで善意に応えられる様に今後頑張るというのは典型的な社畜っぽい。
ならばここで、俺がとるべく行動はなんだ?
そう、善意を、斬るッッッ!!!!
沙希「……なんか言ってy」
八幡「川崎」
沙希「な、なに?」
八幡「これは受け取れない。正直毎日あんなに弁当作ってもらってるし、ここまでしてもらうのは割に合わない気がする」
沙希「そ、そんなこと別に…」
八幡「俺はお前にここまでしてもらえるほどの事はした覚えがない」
沙希「でも」
八幡「まぁアレだ、欲求と罪悪感の葛藤っつうか、正直今後もお前の弁当にはあやかりたいけど流石にそろそろ罪悪感がヤバいからな。これは受け取れん」
まぁだが、けーちゃんのだけは貰ってやらんとな。
さすがに「受け取ってもらえなかった」なんて川崎に言わせるわけにはいかんし、あんな幼い子にそんな言葉を聞かせたくはない。
正直川崎に対してもものすごく悪いことをしているのは分かっている。
もしかしたら少し涙目程度にはさせてしまうかもしれない、ほら、川なんとかさんって意外と打たれ弱いから。
だが川崎の反応はそれとは真逆だった。
沙希「……ふーん」
八幡「…なんだよ、ふーんって…」
沙希「別に。ただ、京華のも受け取らない最低な奴なんだと思って」
八幡「あー、そのことなんだが流石にあんな小さい子が作ってくれたものを返すのは申し訳ないかr」
沙希「あたしのを貰ってくれないなら京華のもあげる気ないから」
八幡「待て待て待て、これはお前のためでもある。おそらく返されたらお前の妹は悲しむ、いや泣くまであり得る。しかもそれを伝えるお前も辛いだろ?ならーーー」
沙希「ダメ、絶対ダメ」
八幡「いや、ここは俺も引き下がれねぇ」
沙希「あたしも引き下がるつもりは全然ないから」
八幡「お前な…」
しばしの睨めっこ。
むぅ…といった感じで睨め合いつつも意識はそこから少しずつ遠のいていく。
知り合いの女の子が、川崎が、俺のためにチョコを作ってくれている姿を想像していた。
いや、俺のためというのは自惚れか。
他の誰かにも作ったかもしれない。
まぁ校内で川崎がチョコを作ってあげる相手がいるとは中々思えないが。
八幡「…ちなみにコレって誰かのついでだったりするのか?」
沙希「は?」
八幡「いや、なんでもないです…」
沙希「……………りまえでしょ…」
ぼしょぼしょと喋る声はあまり聞こえなかったが、その喋り方が解答と同じなのでつい俺の頬に熱が宿るのが分かった。
ゆえに俺の返答も喉の奥に引っかかってしまい、また二人して黙ってしまった。
あー、こういう時なんて言えば良いの?
相手の言いたいことだいたい分かってるのにさ、は?なんだって?って聞き返せば良いの?
おいおいそれどこのなに鷹さんだよ…
いやでも自分で聞いといて何も言わないのは人としてどうかしてるよな、まぁ自分がある意味人としてどうかしてるのは分かってるんですけどね。
なんならもう人じゃないのかも。
雪ノ下、やっぱり俺ゾンビ谷くんだったぜ…。
八幡「お、あ、おう、そりゃどうも…」
沙希「………うん」
結局思考が脱線したがためにいつも通りの気持ち悪さMAXの返答を返してしまったではないか。
ていうかそこでそんな耳の先まで紅くして頷かれちゃうと困るんですよね、えぇ。
沙希「あのさ……」
誰が想像できただろうか。
確かに、俺の目の前にいる彼女、川崎沙希はいつもどこか気怠げで、基本無関心で、見た目がちょっと恐くて、でも結構当たりに弱くて、学校に友達はいなさそうで、弟たちを溺愛していて、そして黒のレースで。
そう、何とも形容しがたい女の子である。
八幡「なんだよ」
俺はいつもの如くきっと他人から見ると目が死んでて、しかも思考はいつだってくだらなくて、でも自称結構顔は整ってる方で、戸塚と小町と戸塚と戸塚と自分の事しか基本愛してなくて、ぼっちで。
そんな何とも形容しがたい、いや、むしろゾンビとかクズとかカスとかキモいとかゴミとかたくさん形容できちゃうんですけどちょっと泣いて良いですか?
まぁそんなかなりアレな俺。
そんな俺に対して放たれる言葉を世界中の誰が想像できただろうか、いやできない(反語)。
沙希「…」
彼女の俯いていたその顔が申し訳なさそうに動く。
少し口を引き結んで、眉間には力が入っている。
瞬間的に合わさった瞳にはどこか熱がこもっていて、逸らされた瞳には恥ずかしさが滲み出ている。
動きそうになった唇をバッと手が覆う。
それらは何かのサインだったのだろうか。
俺は気づかなかった。
こうした経験がないから。
だから俺は何も警戒していなかったのだ。
ゆえにその言葉は、俺を凍りつかせた。
沙希「…………好き…」
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