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    元スレいろは「せーんぱいっ」八幡「」

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    101 = 46 :




    下らない事を思考しているうちにも一色の話は続く。


    いろは「確かにじゃがいもみたいな顔でそんな台詞をキメ顔で言われた時は鳥肌ものでしたが、今はそういうことを言いたいんじゃないんです。いちいち話の腰を折らないで下さいっ!」


    また怒られてしまった。
    でも俺がショボーンとしていてもキモいだけなので、極めて平静に努めて、すまん、とだけ言っておく。


    いろは「私は自分が素を出せる場所が欲しいんじゃないんです。確かに素でいられたらそれが一番良いんでしょうけど、きっとずっと素でいたらその素までが自分の仮面になっちゃうと思うんですよね」


    ふむ、確かに言わんとしてる事は分かる気がする。
    きっと素であるということは本当の自分を晒すというだ。そんな本当の自分を見せていてもある時ふと自身を冷静にみると、それさえも本当の自分なのか分からなくなる。きっと俺たちは自分が分からないという感覚を恐れているのだろう。


    いろは「だから私が欲しいのは素の私で居られる場所じゃない。どんな私でもそれを私だと受け止めてくれる、そんな場所が欲しいんですっ」


    なーるほど、一色の気持ちはよく分かった。でも一つ引っかかる。


    八幡「お前の言いたい事は分かった。でもそれなら尚のこと、葉山で良いじゃないか。あいつはお前の全てを受け入れてくれるぞ」


    そう、葉山隼人。
    あいつは他人の全てを受け止めるはずだ。他人の悪い部分でさえも肯定してやり、むしろそれをそいつのプラスな面だと評価してやれる。俺には到底真似できん様な事をあいつはサラッとしてのける。


    いろは「そうですね。仮に私が葉山先輩と付き合ったとすると葉山先輩は私の全てを包み込んでくれそうです」



    102 = 46 :





    ならそれで良いじゃないか、そう言おうと思ったが一色がでも、と続けたことでその言葉は喉の奥まで戻っていく。


    いろは「葉山先輩の優しさは、んー、なんと言うか、なんだか温度がないんですよねー。冷たくもないけど、温かくもない、みたいな」


    ………それはつまり俺の優しさが温かいという事なのか?
    な、なんだか耳の裏まで一気に熱くなってきたぞ…!


    まぁこれまたコイツの言う事には納得だ。
    この大方一年、何かとあいつとは一緒だった。あいつの事はそれなりに見てきた…なんていったら海老名さんが発狂しそうだが。
    俺はあいつと接していく中であいつの人間性を少しは理解した。あいつのあの優しさが残酷だと言うことを。


    いろは「だから先輩、私は先輩の事が好きですっ。もう嘘はつきません。私は欲しいんです。先輩との……本物……」


    俺は正直に感動していた。
    俺を好きになった理由、自分が本当に求めるもの、それらを包み隠さず言った一色いろはに。
    俺はあんな酷い事を言ったのにそれでもなおかつ、好きだと断言する一色を、俺は凄いと思った。





    だがそれとこれとは話が別である。





    103 = 46 :






    八幡「一色、それでも俺はお前の想いにはまだーーーー」


    いろは「分かってます。先輩が一筋縄ではいかない事も、それに奉仕部のあの2人を特別に想ってることも」


    俺の言葉を遮る一色。
    そう、俺はここで一色の気持ちにすぐに返事をしてやる事はできない。
    なぜなら一色が話している最中もあいつ等の、あの2人の顔が脳裏に思い浮かんでいたからだ。


    いろは「先輩の中でもう答はでてますか?」


    俺はその問いには応えられなかった。
    まだ胸の奥を様々な想いと感情が渦巻いていたからだ。
    あたかもそんな俺を見抜いていたかの様に一色はクスリと笑みをこぼすと言った。


    いろは「明日、あの教室で4人で話し合いませんか?」

    八幡「………は?」


    いろは「いえ、話し合わせてもらいます。もう決めました。これは会長命令ですよっ」


    俺が事態を呑み込めないでいると一色は ほっ、と言ってベンチから立ち上がった。そうしてニコッと笑顔を作りながら俺の顔を見る。



    いろは「せーんぱいっ、帰りましょ」


    104 :

    いろはすはすはす

    105 = 46 :





    その後いつもの別れをする所で一色とわかれた。別れ際に一色は今日のことの謝罪ともう一言だけ付け添えて自宅へと帰っていった。


    『良い返事を期待してますよ』


    別れ際にこういう台詞をすっと吐くあたりに彼女の包み隠さないあざとさが出ていた。むしろもはやそれが一色らしいと思えて笑えてくる。







    家に着くとすでに時刻は23時を回っており、こんな時間帯に帰宅するのは初めてだった。
    初めに一色に呼び止められた際に小町には遅くなることは伝えておいたので、すでに自室で勉強をしているか、あるいは寝ているのだろう。
    俺も風呂に入り、自室へと上がる。
    ベッドに飛び乗り再び今日の事をざっと思い返す。



    あまりにも色々あった1日だった…。
    本当に今日は疲れた。
    でも今日が台風なら明日はスーパーセルが来そうだな…と予感している。

    …………はぁ、憂鬱だ……


    そんな思考をしている内にいつの間にか睡魔に呑まれ、気付かぬ内に深い眠りへと落ちていた。


    106 = 46 :

    今日は眠いのでこの辺にします。指摘等があれば色々と言って下さい。それではお休みなさいです。

    107 = 70 :


    いろはすはす

    108 :

    スマホで読む分には凄く読みやすい。
    2.3行で改行してるし、会話の前後を開ける基本ができてるしPCでもさほど変わるとも思えん。

    多分、地の文に読み慣れてない人も少数いるのだと思う。
    「」の度にツッコミを挟むのも文学的で、vip形式至上主義には煩わしいのかもしれない。

    内容が理解できない、だから話題を変えたい、変えられないから荒らす。
    こんな感じだろう。

    109 :

    おつおつ
    めんどうなやつらはほっといて
    自由に好きなように書いてくれ

    110 :

    乙乙
    面白いから外野は気にすんな支援

    111 :


    自分はPCから見ているけど、改行だけでも大分読みやすくなってるのでありがたいです

    112 :

    おはようございます!
    今日は午前中用事があるので投稿は昼過ぎになると思います、すいません。
    それとコメありがとうございます!完結まで頑張るのでよろしくお願いします!

    113 :

    期待してる

    116 :





    翌朝、激しく揺さぶられて重い瞼を開けた。
    さすがは冬だ。まだ暗い、真っ暗だ。
    俺は枕元の携帯で時刻を確認する。

    まだ5時過ぎじゃねぇかっ!!!!

    俺をこんな非常識な時間に起こすのは我が家では1人しかいない。なので当然ベッドの横には小町が立っている。
    寝ぼけ眼で小町を見やると小町はニコーッと笑顔をつくる。


    小町「どーんっ!!」


    そう言ってジャンプした小町は寝転がっている俺の上に大ジャンプした。当然俺は避けられず小町の下敷きになる。

    ぐべっ!!とこれまた気持ち悪い声が出てしまうが小町はそんなのお構いなしにモゾモゾと動き騎乗体勢へと移行した。


    小町「天使かと思った?残念、小町でしたっ!!!」


    にっしっしと少年のような笑顔で小町は言う。
    ………天使よりも天使に見える(確信)


    117 :

    天使だった!

    118 :





    八幡「…うっせ、早くどけ」


    小町「んもう、お兄ちゃんノリ悪いよ!小町がこんなことしてあげるのお兄ちゃんだけなんだよ?あ、今の小町的にポイント高い」


    八幡「ノリも何もこんな時間に起こされてるのにあるかよ。何の用だよ?」


    俺以外にこんなことしたらそいつ月まで吹っ飛ばせそうな気がするぜ。
    小町はえへへーと笑う。…全く悪いと思ってねぇなこいつ。


    小町「それでそれでぇー、昨日はどうだったのかなお兄ちゃん?例の生徒会長さんとっ」


    それが聞きたかったが為にこんな時間に起こしやがったなちくしょー。


    八幡「……別に何ともねえよ」


    小町「そんなわけないじゃん。小町に嘘とは頂けませんなお兄ちゃん。何があったの?言うまで小町はここをどきませんっ」


    むしろどくな、ずっと俺の側にいろ。と言いそうになったが何とか押し込める。
    んーむ、昨日昨日…。
    脳が動き出した事で昨日の事をゆっくりと思い出す。

    …そういや俺、昨日一色に告られたんだ。

    俺が思い返していると小町の目が輝いた。


    小町「お兄ちゃん一級鑑定士の小町は分かってしまったのですっ!!!」


    なんだその需要の欠片も感じられないやつ…。
    つか朝からテンション高過ぎてうぜぇ。


    小町「ズバリ!!お兄ちゃんは昨日!!例の会長さんに!!告白されましたっ!!!!」



    119 = 118 :





    ………なん……だと…

    一発で言い当てられた。
    さすがは一級鑑定士だ…。
    いや、関心している場合じゃない。
    なんで分かったの?もしかして顔に出てた?もしかして今俺の顔真っ赤っかなの?
    それとも顔に書いてあるの?おい一色、俺の気付かぬ間に何してくれてるっ!!


    俺が黙っていると、実際は動揺して何も言えなかったのだが小町が目を見開く。



    小町「………え?ホントに?」


    八幡「…は?お前気付いてたんじゃ…」


    小町「冗談に決まってるじゃん!お兄ちゃんが告白されたなんて誰も思わないし信じられないよっ!!」



    酷過ぎませんかねぇ。お兄ちゃんを何だと思ってるんだ。これでも俺はハイスペックなんだからな。
    頭脳明晰(国語学年3位)、目を閉じて微笑めば貴公子、目を開ければゾンビ、の俺だぞ!!


    ……最後が致命的過ぎるだろ。もう俺目開けないわ。



    120 :





    小町「お、お兄ちゃんが、告白…」


    何やらぶつぶつ言ってどさっと前に手を出し項垂れる。
    おいおい小町さん。小さなお胸がほとんど見えちゃってますよ。
    そのまま前かがみで何やら思案している小町はふっと顔を上げる。



    小町「…小町、お兄ちゃん離れ、ちゃんとするね」



    涙目になって俺に笑顔を向ける小町。
    そんな事言われたら俺も泣きそう…


    八幡「いやしなくていいから、つかするな。俺も妹離れする気ないから」


    小町「お兄ちゃん…」


    八幡「小町…」


    兄妹の愛がより強まった瞬間だった。
    感動でホントに泣いてしまいそう…
    だが小町はすでに、ケロッとした顔をしていて尋ねてくる。


    小町「ってことでお兄ちゃん!話、聞かせてっ」


    ………はぁ、こいつも負けじ劣らずあざといよなぁ。
    俺の感動を返せこの野郎。


    121 :

    あざとい、しかしそれがいい

    122 :




    八幡「…はいよ」


    もうこうなったら本当に聞くまでどかないのが小町なので俺は諦めて了承した。




    そして所々省かれてはいたかもしれないが昨日の事を話した。
    俺が話している間、小町はほえーとかうんうんとか相槌は打っていたが話の腰を折ったりはせず、じっと聞いていた。

    俺が話し終えると、うーんと唸ってから小町は口を開く。


    小町「…お兄ちゃん、これはマジだね。本気でお兄ちゃんを狙ってると小町はみた!」


    あぁ、もうそりゃ分かってんだ。
    昨日のあいつが嘘をついてたなんて思わないし、もし嘘だったら今すぐ[ピーーー]る。


    小町「んー、でもー、話を聞く限りじゃその会長さん、お兄ちゃんにとって妹キャラっぽいよね?それって小町とキャラ被っててそこは小町的にはあんまポイント高くないかなー」


    お前のポイント制度はほんとよく分からん。
    それとキャラなんて言うな。小町はキャラじゃなくて本物の妹だからな、俺は妹キャラなんて偽物より小町を愛し続けるぜっ!


    八幡「…それで小町、俺の相談にーー」


    そこで小町が手をピシッと俺の顔の前に出して言葉を遮った。そして手をぐーにした後、人差し指を立ててちっちっちとする。


    123 :

    ちっちっち!

    124 :

    いろはすも小町もかわいいなぁ

    125 :





    小町「それはダメだよ、お兄ちゃんっ。小町はあと少しで受験なんだし」


    八幡「そう、だな…。すまん…」


    俺はアホか。
    小町はもう少しで受験だ。こんなケロッとしている様に見えるが、実際は肉体的にも精神的にもかなり辛い時期のはずだ。そんな小町を頼ろうとしてしまうなんて、最低だな…

    頭の中で自分を責めていると、でも、と小町は続けた。



    小町「せっかく話してくれたお兄ちゃんにヒントくらいはあげちゃいますっ。さっきの話からすると今日の放課後その3人と話すんでしょ?」


    八幡「あぁ。考えただけで恐ろしくてチビっちまいそうだが…」


    小町「もう、これだからゴミいちゃんは。良い?今日その時になったらお兄ちゃんは喋らなくて良いの!」


    八幡「は?どういうことだよ」


    小町「ただ黙ってあの3人の話をしっかり聞いて。そしたらきっと、早いうちに答は見つかると思うよ。これが小町からのヒントですっ」



    ………さっぱり意味が分からん。
    俺はその場で無になってれば良いのか?だが一色が話す内容は当然昨日の事だろう。そして俺は当事者だ。きっと話を迫られるし、何かしらフォローしていかないと一色がアホな事を言いそうだし…

    だが、小町の助言はいつだって有力だ。今までも何度も俺を助けてくれた。ならやはり、従うのが吉なのだろうか…。



    126 = 125 :





    俺が思案していると、小町が、それにね、と続けた。



    小町「結衣さんや雪乃さんとは何度も接してきたし、その会長さんも話を聞く限りだと、皆ちゃんとお兄ちゃんの答を待ってくれるし、ちゃんと聞いてくれると思うな。だからこれはお兄ちゃんが自分一人で考えて、答を出すべきだよ」



    俯きながらそう言うと小町はすっと俺の上からどいた。そしてそのままドアの方へと歩いていく。


    八幡「………小町?」


    小町「……頑張ってね、お兄ちゃん。小町も、頑張るから…」


    語尾になるに連れ、だんだんと小さくなる小町の声。
    振り返ることもせず、俺に小さな背中を向けてそう挨拶すると小町は部屋を後にした。
    俺はそんな小町の小さな背中に声をかけることができなかった…。



    127 = 125 :





    学校への登校時、すでに俺の目は濁っているがそれに更に拍車が掛かっていた。
    朝から何だか疲れた…。昨日の疲れも取れてないし、こんなんで放課後はあいつらと…


    …………嫌だ、帰りたい。



    だがここで引き返さないあたり、俺の社畜根性が発揮されていた。もう俺は働いたら絶対社畜決定だよな。定年迎えるまでもずっと社畜でいられる自信があるぜ。
    うん、絶対に俺は働かないっ!!!専業主婦に俺はなるっ!!


    頭の中で自分の夢を語り終える頃にはすでに自転車置き場に自転車を置いて玄関へと歩いていた。
    歩きながら今すぐ時が止まることを、放課後にならないことを願っていると、後方からドンッと背中をカバンで叩かれた。
    後ろを見やるとニコッと満面の笑みの由比ヶ浜が立っている。

    ………うわ〜、できれば放課後まで会いたくねぇ奴と早速会っちまった…



    結衣「ちょっ、なんでそんな嫌そうな顔するわけっ?!せっかくヒッキーに声かけてあげたのに!」


    別に頼んでねぇし、他の生徒が見てくるからやめろよな。


    八幡「あぁはいはい。ありがとうございます。では俺こっちなんで」


    結衣「適当だっ?!ていうかヒッキーとクラス一緒だから道変わんないし」


    いや、それは他の生徒に見られると何かと面倒だから(主に由比ヶ浜が)別々に行こうという提案なわけだが…
    そんな考えもお見通しのように由比ヶ浜は俺の横に立つと微笑みかけてくる。


    結衣「大丈夫だよっ。だから一緒に行こっ?」


    ………はぁ、俺も雪ノ下もこいつの頼みになると断れないんだよなぁ。
    渋々はいよ、と了承すると由比ヶ浜は満足した様でトコトコと歩き出したので、俺もそれに続いた。


    128 = 125 :




    靴を脱いで上履きに履き替え歩き出したところで由比ヶ浜が話しかけてきた。



    結衣「ヒッキー、今日も部活行くよね?」


    八幡「ん?あぁ、そりゃ行くが…」



    なんだ急に?



    結衣「だよね。来なくちゃ、ダメだよね」


    八幡「あ?どういう意味だ?」


    なんだか背中を冷たい汗が走った気がする。


    結衣「大事な話、あるんだよね?」


    笑顔で俺の顔を見るとそう言った。
    な、なんだ?この笑顔がすごく怖い…


    八幡「あ、あぁ。で、でもなんでそれを?」


    結衣「今朝ね、小町ちゃんからメール来たんだ。今日は兄から大事な話があるんで聞いてあげて下さい、って」



    こぉまちぃぃぃぃいいいいいっ!!!
    何してくれてんだよ、さっそくヤバそうな展開だよぉ。
    笑顔を崩すことなくーーー逆にそれが怖いのだがーーー由比ヶ浜は続けた。


    結衣「楽しみにしてるね!どんな話なのかすっごく気になるし」



    129 = 125 :




    いつの間にか教室の前に着いていた様で、それだけ言うと由比ヶ浜はそれじゃ!とだけ言って中に入って三浦たちの元へと駆けて行った。
    俺はその姿を見送ってから自分の席へと着いた。そしてそのまま頭を抱え込んだ。


    ………ヤベェよ。由比ヶ浜さんマジ怖ぇよ。なんだか今にも後ろから刺されそうなわけだが、小町何してくれてんだよ…。
    何も喋るなってこういう事か、下手に喋ったりしたらお前死ぬぞって意味だったのか…。
    そうだな、俺は今日はもう何も喋りません。



    そんな事を考えていると肩をトントンと叩かれた。そちらを見やるとジャージ姿の天使が立っていた。


    彩加「おはよ、八幡」


    戸ぉぉ塚ぁぁぁぁぁぁあああああ!!!
    おっと、俺はつい今しがた今日は何も喋らないと決めたばかりじゃないか。
    ま、戸塚になら良いよな?な?


    八幡「ああ、今日も可愛いな戸塚」

    彩加「もう!僕は男の子だよ八幡!」


    何言ってるんだこの子は。男の娘の間違いだろう。


    彩加「……?八幡、なんかあった?」


    130 = 125 :





    八幡「い、いやそんなことないぞ?なんで……?」


    彩加「んー、なんか元気なさそうに見えたから。違うなら良いんだ!でもまた何かあったらいつでも相談してね。僕も八幡の力になりたいからっ」


    一生俺の側で俺を支えてくれ、と言いかけてやめた。何か嫌な視線を感じたからだ(主に海老名さん方面から、てか海老名さんから)。
    戸塚はまたね、と手を振って自分の席へと戻っていった。

    はぁ、戸塚最高ぉ……と余韻に浸っていると見慣れた顔が教室へ入ってくる。
    川山?川上?とりあえず川なんとかさんだ。俺と目が合うと少し気恥ずかしそうに顔を背ける川なんとかさん。


    川越「……おはよ」


    川島が挨拶してくる、がすまんな川中、俺は今日は誰とも喋らないと決めているんだ。戸塚は例外だがな。
    なのでコクッとだけ頷いて顔ごと逸らした。
    いやだって、ほら見てみろよ向こう。なんだか由比ヶ浜が睨んできてるしさ…。


    するとガシッと肩を掴まれる。そのまま川崎は(あ、川崎だ。まぁ分かってたけど)俺の前に回り込むとギロッと睨めつけてくる。


    131 = 125 :





    沙希「ちょっと、挨拶したんだからちゃんと返しなよ」


    んーむ、どうしよう。コイツがこうして俺の前に来てから由比ヶ浜の視線が一層強まった気がするんだが…。
    俺が考えあぐねていると、川崎はなぜか少し涙目になる。……可愛い。
    うん、これは不味い。


    八幡「悪い悪い、考え事してた」


    沙希「……それなら別に良い。アンタ、何か考え事してる時多いし…」


    チョロいなこいつ。
    プイと顔を逸らした川崎だったが少し口角が上がっている。
    やめろそれ、何か意識しちゃって告ってフラれちゃう所まで見えたぞ。

    そのまま川崎も自分の席へと戻っていく。
    ふぅ、危ない危ない。川崎ルートを選んで由比ヶ浜に殺されるとこだったぜ。



    そんなこんなで俺の本日の学校生活は大して喋ることなく終わった。
    と言ったらあたかも俺が普段喋っているようだがそんなことはない。普段から喋ることがないし、喋る相手がいないので俺はほぼ無言で学校生活を終えている。
    …おいどうした、俺の青春が上手く起動してないわけだが……。


    132 = 125 :





    時間というものは残酷だ。
    面倒くさい授業の時は遅く流れているくせに、嫌な事ーーー例えば中間・期末テストとか、この後の奉仕部に行くこととかーーーが目前に迫っているととても早く流れる。
    まぁ実際は自分の脳の感じ方次第だろうから残酷なのは時間というより俺の頭の中だ。


    最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると教材やらを詰めてそそくさと教室を後にする。
    足取りは重いが、いつまでも教室に残って談笑する相手がいないのと、由比ヶ浜と一緒に行きたくないという思いから早めに歩いた。

    気付けばすでに奉仕部の前である。
    ガラガラっと音を立てて中に入るとすでに雪ノ下雪乃は来て読書を始めていた。
    俺が来た事に気付くと雪ノ下は顔を上げる。


    雪乃「あら、今日は早かったのね早企谷くん。どうせクラスに喋る相手もいなかったのでしょうけど」


    八幡「うるせ。だいたいお前こそどうなんだよ」


    雪乃「と言うと?」


    八幡「お前はいつも俺より早いじゃねぇか。俺はいつだって授業終了と共に教室を出るのに俺よりも早いのはおかしい。どうせお前こそ喋り相手がいない教室が居づらくて全力ダッシュでここに来てんだろ」



    雪ノ下が全力ダッシュでここまで走って来る姿を考えたらシュール過ぎて今にも吹き出しそうだ。


    133 = 125 :





    俺の言葉に はぁ、とため息を吐いてコメカミを抑える雪ノ下。


    雪乃「走って来るわけないでしょう。ただあなたの足が軟弱なだけじゃないかしら?それに残念だけれど私は教室を出る際クラスの人からちゃんと挨拶されるわ。ただ、わざわざ立ち止まって無駄話をするのは苦手ではあるわね。」



    くっ、これが容姿、成績全てにおいて学年1位を連ねるものと容姿も成績もパッとせず性根が腐っている者の差か…


    雪乃「それはそうと比企谷くん、今日は私と由比ヶ浜さんに何やら大事なお話があるようだけれど…」



    ……小町か由比ヶ浜に聞いていたのか。
    まぁ良い、これで一々説明をしないで済む。



    八幡「あぁ、だが由比ヶ浜が来ないことにはーーー」



    それと一色もな。そもそもあいつが言い出した事だしな。
    俺の言葉を遮って奉仕部の扉が開かれる。やっはろー!と元気よく笑顔で入ってくる由比ヶ浜。
    タイミング良いな。
    そして由比ヶ浜の後ろからひょこっと一色が顔を出した。



    いろは「どうもですっ」


    雪乃「一色さん?依頼かしら?悪いけれど今日はーーー」

    結衣「違うみたいだよゆきのん」

    雪乃「………。どういうことかしら?」


    いろは「あーそれはですねー、今日お話があるのは先輩ではなく私からだということですー」







    ………あぁ、ついにこの時が来てしまった。




    134 :

    ジャッジメントタイム

    135 :

    運命の時

    136 :

    修羅場~

    137 :

    うっひょー

    138 :





    由比ヶ浜と一色が来てからすでに15分近くたっているが、誰も一言も喋らない。

    俺の横に座っている一色はこの沈黙が気まずいようで、ずっと下を向いている。
    雪ノ下も顔は正面に向けているが目線は下げている。

    ……ヤバいのはこいつだ…。
    そう由比ヶ浜である。
    無表情でじっと俺の顔を見てくるのだが怖すぎてまともに見れない。俺と目が合うとにっこりと笑顔を作るのだが、、あの笑顔はヤヴァい。
    普段はバカでうるさい由比ヶ浜なので、その変容は凄まじいものがある。





    全員が揃った後、皆黙って自分の席に着いたが、当然一色の席はないので、教室の後ろに積んである椅子を持ってきて俺の横へと座った。
    その行為を雪ノ下も由比ヶ浜もじっと見ていた。

    それから訪れた沈黙を破ったのはわずか5分後、ガラガラと音をたてて開かれたドアだった。やっとるかねー? と入って来た平塚先生だったが、俺たちが無言で机を囲んでいる姿を見て、


    「すまん、失礼した」


    とだけ言って教室のドアを閉めるとそそくさと帰っていった。
    うん、俺でもそうする。この空気は体に毒だ…。なので今すぐ俺もここから立ち去りたい。




    それからも沈黙は続いて今に至る。
    誰も喋らないし動かない。
    ………まさしく冷戦だ……



    139 = 138 :




    それからまた少し時間が経った後、痺れを切らした雪ノ下が はぁ、とため息を吐いて口を開いた。



    雪乃「一色さん、そろそろ話してくれないかしら?黙っていても何も分からないし、話があるということで来たのはあなたでしょう?」



    うん、さすがは雪ノ下だ。
    口調に若干イラつきがみえるが、ゆっくりと一色を諭すように話を促すあたりが如何にも雪ノ下雪乃らしい。



    いろは「あ、はい。ですよねー、すいません。それではーーー」



    話し始めるきっかけを得て喋ろうとする一色の言葉を由比ヶ浜が遮った。



    結衣「待って。ゆきのんダメだよ。こういう時はいろはちゃんが自分で話し始めるまで待たなきゃ。いろはちゃんもそこでゆきのんに甘えないで。自分で話があるって来たんだから、自分からちゃんと話し始めるべきだと思うよ」


    いろは「で、ですよねー。すみません」

    雪乃「そ、その通りね、悪かったわ」



    ゆ、雪ノ下が素直に謝っているだと…
    由比ヶ浜の言ってる事はものすごく正論だが、あの雪ノ下を一喝するあたり、すげぇ。
    由比ヶ浜は案外、保育士や学校の先生なんかが合っているかもしれない。



    140 :

    寝落ちかな?

    141 :





    再び訪れる沈黙。
    一色が由比ヶ浜に非を指摘され、しょぼんとなってしまったからだ。
    はぁ、これじゃあ一向に話が始まらねえな…



    八幡「由比ヶ浜、お前の意見は正論で大事だが、今は話を進める方が先決だろ?説教なら後にしてやってくれ」


    結衣「で、でも!………………ヒッキーのバカ………なんでいろはちゃんの味方するの………………」



    何やらブツブツ言っているが気にしない。悪いな、由比ヶ浜。


    八幡「一色もほれ。ちゃんと話せ。それとも代わりに俺が言ってやろうか?」


    俺が耳打ちすると一色は、 いえ自分でできますっ!と言って顔を上げた。



    いろは「では改めまして、お二人にお話がありますっ!」



    一色の声に下を向いて何やらブツブツ言っていた由比ヶ浜も、視線を下ろしていた雪ノ下も、顔を上げ、真っ直ぐに一色を見る。
    二人の視線が集まるのを確認すると一色はすっと息を吸って目を見開いた。








    いろは「実は昨日、先輩に告白させて頂きましたっ!」





    142 = 141 :

    すいません、再び寝落ちです。どうも23時を過ぎると眠くなってしまって…。
    進行も遅くて申し訳ないですが、今日からもまたよろしくお願いします。

    143 :

    待ってるよ

    144 = 141 :

    ちなみにいろはは雪ノ下の事は何て呼んでましたっけ?それと小町は雪ノ下のアドレス持ってましたっけ?

    145 :

    呼び方は確か雪ノ下先輩、メアドは多分持ってたと思うけど

    146 :

    >>145
    分かりました、ありがとうございます!

    147 :





    雪乃「…………はい?」

    結衣「…………え?」



    ………一色さん、ついさっきまで冷戦だったのになんでいきなり水素爆弾投下すんだよ…プーチンさんもビックリして腰抜かすぞ…

    二人とも固まっていたが、時期に雪ノ下が額に手を当て一色に尋ねる。



    雪乃「一色さん、もし私の聞き間違えでなければ、いえ聞き間違えであって欲しいのだけれど、この男に告白したと言ったのかしら?」


    いろは「はい、その通りです」


    雪乃「それはつまり、その………一色さんが比企谷くんの事をす、す、好き、という事で良いのでしょうか?」



    なんで敬語になってんすか雪乃さん…



    いろは「だからそうだと言ってるじゃないですかー。当然Likeの方じゃなくてLoveの方ですよ?」


    雪乃「」



    喋り出したことで腹をくくったのか、もう恥ずかしみもなく堂々と応える一色。
    聞いてる俺の方が恥ずかしくてヤバい。
    そんな一色に唖然として両手で額を支える雪ノ下。





    そんな時だった。



    148 = 147 :





    ガラガラァッと申し訳なさそうに教師雨ドアが開けられる。が、誰も入って来ない。なぜだか足音だけが遠ざかっていく。
    おい、開け逃げか…?
    皆がそちらに怪訝な視線を送っていると、遠ざかる足音が消え、逆にドンドンと近くなっている。一歩一歩がドスンドスンと鈍い音を立てている。

    もしや………


    嫌な勘は本当によく当たるもので、その足音の主はドアより2、3メートル前から声を発する。


    材木座「助けてよ、ハチえもーーーんっ!!!」


    見事に走り込んできた材木座。
    そのまま俺の元へ駆けてこようとしたが、いくら材木座といえど教室内の空気を感じとった様で、ぬぽん?っと奇怪な声を上げる。



    材木座「………これはいったいどういう事でござるか?我はまだ魔界を抜けておらなんだか?」


    意味の分からん設定を口にする材木座。
    そんな材木座を見て一色はドン引きしているが、雪ノ下と由比ヶ浜は違った。



    雪乃「…今は相手にしてる時間がないの。正直言って邪魔よ」


    結衣「悪いけど出てってくれる?」



    もはやゴミを見るかの様な無表情で材木座を見る由比ヶ浜と雪ノ下。
    材木座の方を見るともはや泣きそうな顔をしている。

    うん、これは仕方ないな。まぁ材木座だからどうでも良いけど。つか涙目の材木座とかキモいだけだし。



    149 = 147 :






    すると口をワナワナさせて喋り出す材木座。だからキメェよ。



    材木座「信じておったのに…ここの住人だけはなんだかんだ言いつつも我を構ってくれると信じておったのに…。見損なったぞ、八幡っっっ!!!」


    俺かよ…。


    材木座「こんな三次元の女などにうつつをぬかしおっtーーーー」


    結衣「帰って」


    材木座「はい、失礼しました。」



    おい、素になってんぞ。
    そのまま材木座はマジで泣きそうな顔をしながら一礼すると教室を後にした。
    そして由比ヶ浜は無言のまま席を立ち、教室の鍵をかける。

    材木座をたった一言で一喝して帰らせ、自分の席に着いてから俺の顔を見てニコッと笑顔をつくる由比ヶ浜は今にも身体中から炎を出しそうだ。

    願わくば、異能バトルは日常的に起こってほしくない。



    150 = 147 :





    この教室内の誰もが由比ヶ浜のその笑顔に恐怖を感じていた。
    本当に恐くて強いのは雪ノ下よりも由比ヶ浜の方な気がする。ラスボス臭がハンパじゃない!
    一色も雪ノ下も完全に顔を伏せている。俺も目を横にそっと逸らした。



    結衣「なんで目ぇ逸らすのヒッキー?」



    肩がビクッと跳ねる。
    あ、やばい。本当にチビりそうだ…。
    笑顔のまま喋る由比ヶ浜だが声が冷えきっている。



    八幡「いや、これはその……」


    由比ヶ浜「何か後ろめたい事でもあるのヒッキー?」


    その語尾にヒッキー持ってくるのやめてくれ。
    ユッキー…って言われてるみたいで怖い。お前は我妻さんなの?愛する人の為ならその人でも殺しちゃう1周目の世界からやって来た狂乱の女の子なの?

    ここは話題転換だっ。



    八幡「い、いやー、由比ヶ浜が後ろめたいなんて言葉知ってるなんて驚きだなぁ」


    結衣「話逸らさないで。何かアタシに隠したい事でもあるの?」


    無理だった。隠したいのは自分の身です。


    いろは「その、結衣先輩、今話があるのは先輩じゃなくて私なので、そのぉーーー」




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