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元スレ灼「個人戦は見学して行くから……」
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久「ま、私も怒られるのは嫌だし封印しときましょうかね」
灼「よろしく……穏乃が真似すると憧も怒るし……」
久「二人して保護者みたいねぇ」
灼「後輩の面倒見るのも先輩の仕事……」
久「ふふ、その通りね。 咲と和の個人戦も残ってることだし私もしっかりしなきゃ」
よっこいしょ、と一声かけて竹井さんが立ち上がる
灼「……それ、ちょっと年寄くさいですよ」
久「……さっきから思ってたんだけど、結構はっきり言うわよね」
灼「性分なもんで……」
久「ふふ……ま、鷺森さん面白いから気にしてないけど」
華菜「灼ー? こっち空いてるから話終わったなら入ってくんないかー?」
咲「部長もよかったら……」
久「はいはーい、今行くわ……それじゃ、今後ともよろしくね」
パチリとこちらにウィンクをする――そういう仕草が似合うのはちょっと大人っぽくて羨ましいかな
灼「言われずとも……」
清澄のみんなは私にとっても友だちだし、来年も全国で会いたいと思ってる
今年は負けてしまったけど、チーム力は拮抗していると思うし……両校とも若いチームだ。 差はそこまでないはず……
私の先を行く人はたくさんいるけれど……立ち止まるわけにはいかない
久「あら? なんだかやる気満々?」
灼「……私にも目標はありますし、負けてられないので」
とりあえず、遠い目標までの長い道……まずは今年の優勝チーム、清澄を作ったこの人を越えなきゃね
灼「……こちらこそ、よろしく」
カン!
灼ちゃんはしっかりものだ
今まで、私がなにかお手伝いできたことは少なかったと思う
小さなこととはいえ、灼ちゃんの力になれることがうれしいのです
玄「灼ちゃんにプリンとオレンジジュース、竹井さんにガム……」
それにしても、灼ちゃんがチームのことでそこまで悩んでいたとは思わなかった
やっぱり部長をやっていると私にはないプレッシャーもあるんだろうし……だから同じ部長に就いてる竹井さんに相談したんだろうけど……
玄「……私、やっぱり頼りにならないのかなぁ……」
同学年の友だちとしては、最初に相談してほしかったんだけど……
大会でも全国1戦目はともかく、2回戦からは園城寺さんやチャンピオンにいっぱい削られちゃってエースとしての働きができなかったし……
……もしかしたら、あまり信頼されてないのかも……
玄「いやいや! そんな、まさか……」
そんなことで……あ、いや、麻雀部である以上そんなことではないけど……もし、灼ちゃんに役に立たない子だと思われてるとしたら……
玄「…………」
本当なら、大会で信頼を取り返したいんだけど……
それでも次の大会が秋以降になる以上、他のことで少しでも巻き返しとかないと……
玄「あ、灼ちゃんに嫌われちゃう……?」
ダメだ、それは絶対にダメだ……!
まず、このおつかいを百点満点で……いや、百二十点取って信頼を取り戻さないと……!
気合いを入れてコンビニに足を踏み入れる
ダッシュで、って言われてるしできるだけ早く戻らないと……!
まずは、オレンジジュースだ……正面のパックのジュースを手にとって買い物かごに入れ……ん? ちょっと待てよ……
玄「灼ちゃんは、どのメーカーのジュースが好きなんだろう……?」
ただオレンジジュースと言われたからって適当に買って帰るのは素人の仕事だ
灼ちゃんが真に求めている物を持ち帰ってより良い評価をいただかないと……
灼ちゃんが普段飲んでるのは……
玄「……私が淹れたお茶だ」
部活の時間だとみんなでお茶飲んでるし……食堂でお昼食べるときはお水だし……
玄「ど、どうしよう……」
電話して聞いてみる……のはダメだ
恐らく灼ちゃんは竹井さんとのお話も一段落したはずだし、一局打っているはず……つまり、ここで私が電話したら練習の流れも途切れちゃうだろうし迷惑になる
それに、一人でおつかいもできないダメな子だと思われてしまう可能性もあるし……
玄「……三種類ぐらい買っていけば間違いないよね……?」
お次はプリンだ
ジュースを選ぶのに時間をかけちゃったし急がないと……
まあ、プリンなら悩むところもないし……
玄「……!?」
普通のプリン、焼きプリン、生クリームが乗っているものにモンブランが乗っているものまで……
玄「ど、どれを買っていけば……」
灼ちゃんの好みに合うのは……
玄「うぅ……灼ちゃん普段あまりお菓子とか食べてないしわからないよぉ……」
灼ちゃんはしっかりきっちり。 部室で間食をとることはほとんどない
穏乃ちゃんがお菓子を持ってきてみんなで食べたりとか、そういうのはあるけど……
……お、お姉ちゃんに電話して……
玄「……いや、それもダメ!」
お姉ちゃんに電話したらたぶんお姉ちゃんは灼ちゃんにどれが好きなのか聞くだろうし、そしたら私はやっぱり一人でおつかいもできないダメな子だ
しかも、高2にもなってお姉ちゃんに頼らないとなにもできないダメな子だと思われる危険性もあるし……こうなったら!
玄「……全部買っていこう」
最後に、竹井さんに頼まれたガムだ
プリンを選ぶのにもかなり時間かけちゃったし、早く買って帰らないと!
……この場合、灼ちゃんのおつかいのついでに竹井さんに頼まれたもので、灼ちゃんと直接関係性はなく重要性が低いと考えられるけど、それは違う
竹井さんは清澄の部長で、今回灼ちゃんが相談相手に選んだ人だ
灼ちゃんは竹井さんを頼ったわけだから、つまり竹井さんのお世話になっているのだ
転じて、灼ちゃんの率いる麻雀部の一員としてお礼をするのは当然のことである
そして灼ちゃんは竹井さんから部長としてのお仕事についてヒントをもらいたいはずだから、
私がここでいい働きをすると竹井さんは私に……ひいては灼ちゃんにいい印象を持ち、結果として灼ちゃんのためになる
つまり、私は灼ちゃんに嫌われずに済む!
玄「よし! ここで挽回しなきゃ……!?」
な、なんかいっぱいある……!?
私、普段ガムとか噛まないんだけど……緑のとか黒いのとか……ブルーベリーにライムミント……? 他にもたくさん……
竹井さんの好みなんて知ってるわけないよぉ……
玄「の、和ちゃんに電話して……」
でも、ここで電話しちゃったら今まで一人で頑張った意味がなくなっちゃうし……
むむむ……こうなったら仕方がないし……
玄「……5、6種類買っていけばひとつぐらい当たりがあるよね……?」
コンビニの袋を持って一生懸命に走る
結局、悩んでいるうちに予定より大幅に時間が経ってしまった
急がないと……ダッシュで行かないと……!
玄「あうぅ……走りにくいよぉ……」
最初の想定以上に買ったために、荷物が意外と重くなってしまって走るのも少し大変だ
ホテルまでやっとのことでたどり着くも、エレベーターは全部上に行ってしまったところだ
玄「そんな、これ以上時間をかけたらみんなに嫌われて……」
灼『玄……買い物ひとつにこんなに時間がかかるなんて……もうおしゃべりしてあげないんだから』
穏乃『玄さん、幻滅しました……もうおかし分けてあげませんから!』
憧『がっかりだわ……これからはお昼ご飯も別々で食べるからね』
宥『玄ちゃんあったかくない……』
玄「そんなの嫌だよぉ……」
玄「……こうなったら、階段で行くしか!」
階段を一段飛ばしでぴょんぴょんとかけ上がる
玄「急がなきゃ……急がなきゃ……!」
……というか、竹井さんにもお買い物を頼まれている以上、和ちゃんたち清澄のみんなにも嫌われちゃうかも……
玄「急いで……っきゃあ!」
焦りのあまり、階段につまずいて転んでしまう
玄「いったぁ……って、荷物!」
中身を確認すると、ガムとジュースは無事だったけれど……複数個のプリンは衝撃で中身が少し崩れてしまっている
玄「ど、どうしよう……」
――――――
灼「ツモ、1000・2000の一本場で1100・2100……よろしく」
華菜「むぅ、競り負けたか……ほらよ」
久「あら……素直に悪待ちした方がよかったかしら」
咲「……よく考えたら素直に悪待ちって、言葉おかしいですよ?」
華菜「よく考えなくてもおかしいぞ?」
久「それもそうね……ねぇ鷺森さん、松実さん……玄さん少し遅くない? 何かあったのかしら?」
灼「ん……そういえば……時間かかるようなもの頼んでないと思うんですけど……」
玄「た、ただいま……」
久「あら、噂をすればね……大丈夫? 遅かったじゃない」
玄「え……」
灼「玄、ありが「ご、ごめんなさいっ!」え?」
玄「お、遅くなってごめんなさい!! あ、灼ちゃん……その、プリンも落としちゃって……」
灼「ん……別に平気だよ。 食べられないわけじゃないし……って、なんで泣いてるの!? 」
玄「う、うぇ……あ、あ゛ら゛た゛ち゛ゃ゛ん゛!!」
灼「は、はい」
玄「わ、私のこと嫌いにならないでぇぇぇ!!」
灼「え、いや、なんの話……?」
玄「わ、私、簡単なおつかいも時間かかっちゃうし、プリンも落としちゃうし……」
灼「気にしなくていい……っていうか、なんでこんなにたくさん……?」
久「あら、ガムもいっぱい……」
玄「その、どれがいいのかなって……考えたんだけどわからなくって……」
灼「そんな、適当でよかったのに……」
玄「でも、灼ちゃんに喜んでほしくて……私、最近役立たずだし……」
灼「そんなことないと思うけど……」
玄「う、うぅ……あ、灼ちゃん……」
灼「え、ちょ……お、落ち着いて……」
久「ふむ……鷺森さん! 今必要な台詞はこれよ! 気持ちを込めて読み上げて!」
灼「竹井さん……ありがとうございます……!」
久「さん、はいっ」
灼「……く、玄のことなんて全然好きじゃないんだからねっ!」
玄「ひぅ……や、やっぱり嫌われて……」
灼「え、あ、違……」
華菜「灼も少し落ち着けって」
咲「部長もまた変に茶化さないでくださいよ……」
優希「今のは『大好き』って意味だじょ?」
玄「優希ちゃん……そうなの?」
優希「私は専門家だから間違いないじぇ!」
京太郎「なんの専門家だよ……ほら、タコス作ってきたぞ」
優希「おぅ! 大儀であった!」
京太郎「取り込み中みたいだからあっちで食べようねー」
優希「はーい」
玄「灼ちゃん……」
灼「その、なにがどうなって私が玄を嫌うって話になったのかはわからないけど……そんなことはないから」
玄「ほ、本当に……?」
灼「信じられない?」
玄「そ、そんなことないよっ!」
灼「うん、ならいいけど」
玄「…………」
灼「……さっきも言ったけど、頼りにしてるから……その、もっと自信を持ってほし……」
玄「……うん」
灼「来年は私たちが最上級生だし、まかせられるところは玄にもいろいろお願いするから」
玄「うん」
灼「玄は阿知賀のエースだから、信頼してる」
玄「うん!」
灼「じゃ、一緒にプリン食べよ? 玄がいっぱい買ってきてくれたし」
玄「あ、ごめんね? 買いすぎちゃって……」
灼「みんなで食べればいいから、気にしないで」
玄「いろいろあったから悩んじゃって……次からは灼ちゃんが好きなの買ってくるから」
灼「ん、私も次からはちゃんとなにがいいのか言うから……」
玄「灼ちゃんは、なにが好きなの?」
灼「……黒ごまプリン?」
玄「黒ごま……」
玄「ごめんね、売ってなかったよぉ……」
灼「!? いや、だから泣かないでほし……」
カン!
玄はなにか余計なこと考えると片っ端から裏目るイメージ
しっかり者だけどうっかり者のイメージもあるなぁ
しっかり者だけどうっかり者のイメージもあるなぁ
すごく眠い…出番の分散は次回も有珠山にしてバランスが取れたらいいなと思いつつ、投下
灼「……私も一緒に行くよ?」
玄「一人で大丈夫だよ? 心配しないで!」
灼「いや、玄一人にまかせるのも悪いし……ハルちゃんに入ってもらえば面子も足りるから……」
玄「赤土先生に見ててもらった方が効率も上がるから……飲み物とアイスだけならそんなに重くもならないし」
憧「平気って言ってるしいいんじゃない? 今たまたま空いてるのが玄なんだし、今度は別の誰かが行けばいいじゃん? それに言い出したら聞かないしさ」
灼「ん……それじゃあ、よろしく」
玄「うん! すぐに戻ってくるから待っててね!」
穏乃「すみません、よろしくお願いします!」
宥「玄ちゃん、いってらっしゃい」
玄「いってきます!」
晴絵「はい玄。 おつりはとっといていいから」
玄「すみません、ありがとうございます」
憧「あ、なんなら私が行ってきてもいいけど」
穏乃「いや、ここは一番足の早い私が……」
灼「現金な……」
晴絵「現金だけに?」
宥「あったかくない……」
そんなこんなで2回目のおつかいです
前回、少し失敗してしまったのでこれはいわばリベンジなのです
玄「今回はちゃんとなにがいいのか聞いてきたし、大丈夫!」
灼ちゃんはそこまで気にしてないみたいだけど、私としてはやっぱり気になるし……
今度こそ……そう! 汚名返上するんだ!
再び、コンビニに足を踏み入れる……今度こそ失敗しないよ!
玄「まずは……きゃあ!」
扉が開いた瞬間、すれ違った人の買い物袋とぶつかってしまう
……なんか、このコンビニと相性悪いのかなぁ
玄「す、すみません! ごめんなさい! 拾います!」
「こちらこそすみません! ちょっと荷物が多すぎて……あら?」
玄「あ、その制服……岩館さんと同じ……」
誓子「あ、阿知賀のエース!? す、すみません! いつもうちの部員がすみません!」
玄「え、あ、いや! こちらこそご迷惑をおかけしているみたいで……」
――――――
誓子「ふぅ……荷物、拾っていただいちゃってすみません。 あらためてまして、有珠山高校の桧森誓子です」
玄「いえ、私がぶつかっちゃったのが悪かったので……阿知賀の松実玄です、よろしくお願いします」
誓子「こちらこそ、よろしくお願いします」
玄「それにしても、その荷物……どうしたんですか? すごい量ですけど……」
桧森さんの手にはパンパンに膨らんだビニール袋が4つ……いや、5つかな? 部活みんなの分にしても尋常じゃない量の買い物だ
誓子「あー……その、恥ずかしながら罰ゲームで……私が成績最下位だったから3日分のおかしと飲み物を一人で買い出しに……」
玄「麻雀ですか」
でも、罰ゲームかぁ……少しそういうのがあった方が練習自体のモチベーションも上がったりするのかな?
うちは大会終わっちゃって多少燃え尽き気味だし……灼ちゃんや赤土先生に提案してみようかな
誓子「あ、いえ……その、バトルドームです」
玄「……バトルドーム?」
誓子「爽がどっかから『掘り出し物だ!』 とか言って買ってきて……昔CMとかしてた……」
玄「ああ、あの……」
揺杏『ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!』
爽『超!エキサイティン!!』
玄「……なんだかすごく鮮明にイメージできました」
誓子「……なんかすみません」
玄「それより、荷物少し持ちますよ? その量を一人じゃ危ないです」
誓子「え、でも……」
玄「いつもみんなが岩館さんにお世話になってるみたいですから」
誓子「……むしろ迷惑かけてません? 最近変な服……というか、布切れを縫い合わせた服とは認めたくないなにかを作ってるし……」
玄「うーん……実は、私自身はあまりお話ししたことなくって……」
よくわからないけど、憧ちゃんに『巻き込まれるからあまり関わらない方がいい』って言われてるんだよね……
それでも、憧ちゃんも穏乃ちゃんも素敵な服を作ってもらったって喜んでたし……
玄「いえ、やっぱり迷惑になんてなってません! たくさんお世話になってます!」
誓子「そ、そう……なのかな? 揺杏、しょっちゅう遊びに行ってるから不安で……」
玄「いえいえ、よろしかったら皆さんで遊びに来てください!」
誓子「あは……ありがとうございます」
玄「さ、それじゃあ行きましょう! 宿泊先、どちらですか?」
誓子「え、あ、荷物……すみません、そこの道を右に……」
玄「それにしても……」
誓子「はい?」
玄「なんというか……随分と、あー……チャレンジメニューですね」
袋の中身は明らかにイロモノのおかしやジュースでいっぱいだ
誓子「ああ……半分ぐらいは罰ゲーム用なの」
玄「罰ゲーム……」
誓子「うち、なにやるにもそんな感じで……」
玄「罰ゲームが強さの秘密?」
誓子「いや、どちらかと言うと退屈な日常のスパイス的な……すっかり習慣になっちゃって」
玄「そういうものですか」
誓子「何やるにしてもお遊び気分と言うか……爽も揺杏も昔からあまり変わらなくって」
はぁ、とため息をひとつ……言ってるわりには笑顔だし別にそれが嫌というわけでもないんだろう
玄「岩館さんや獅子原さんとは長いんですか?」
誓子「幼馴染みってやつかな……小学校で一回別れて高校でまた合流したんだけどね
」
玄「うちと似た感じですかね? 私にとってはチームの構成はお姉ちゃんと幼馴染みで……憧ちゃんは中学で別れてまた高校で合流でしたから」
誓子「地域で固まってる感じかぁ……うちは、なるかとは小学校からの付き合いでユキは高校からの知り合いだけど」
玄「あ、でもこっちも灼ちゃんと憧ちゃん穏乃とゃんは面識なかったし……地域の区分け違うと近所でもあまり顔会わせなかったりしますから」
誓子「あ、わかるわかる。 顔は知ってるんだけど小学校上がってから名前知った子とかいたなぁ……」
しばらく田舎トークで盛り上がっていると、桧森さんの足が止まる
どうやら、目の前のホテルに宿泊しているようだ
誓子「松実さん、よかったら上がってって? 荷物持ってもらっちゃったし、なにかお礼させてよ」
玄「え、でも……いいんですか?」
誓子「阿知賀の子には普段揺杏かまってもらってるみたいだし、ね?」
他人の好意は無下にしちゃいけない、ってお母さんも言ってたし……ここは、お言葉に甘えようかな
玄「それじゃあ、少しだけ……」
誓子「どうぞどうぞ、いろいろあるから遊んでってね!」
誓子「帰ったよ、開けてー」
二人とも両手が塞がっているため、桧森さんがこつこつとつま先でドアをノックしながら声をかけると、しばらくしてから扉が開く
成香「ちかちゃん、おかえりなさい」
誓子「ただいま……お客さん来てるよー」
玄「こんにちは、お邪魔します」
成香「あ、どうも……」
揺杏「あれ? 玄ちゃんじゃん」
爽「ちーす」
由暉子「どうも、はじめまして」
成香「ってああ!! ちょ、止めてくださいよ!」
爽「バトルドームがバトル中に止まるわけないだろ!」
由暉子「戦いは非情です」
揺杏「ボールを成香のゴールにシュゥゥゥーッ!!」
爽「超! エキサイティン!」
成香「ちょ、これはノーゲームですよね!? ねぇ!? 」
揺杏「いやいや、普通に罰ゲームっしょ」
由暉子「ルールですから」
爽「ほら、罰ゲームくじ引いて!」
成香「えぇ……そんな、ちかちゃんもなんとか言ってくださいよ」
誓子「えー……成香が開けてくれないと、私も松実さんも外で立ちっぱだったわけだしさ、こう、少し……」
爽「はぁ……仕方ないなぁ……じゃあチカに免じてバトルドームの罰ゲームは無しで」
成香「まあ、それが妥当ですよ」
爽「代わりに玄ちゃんにくじ引いてもらって成香が罰ゲームな!」
成香「は!? どうしてですか!?」
爽「成香がすぐに扉を開けないから荷物持ってくれた玄ちゃんを待たせちゃっただろ!」
揺杏「そーだそーだー」
成香「意味不明で怖いです……」
玄「え? この箱の中から引けばいいんですか?」
由暉子「1枚お願いします」
成香「引かなくていいですから!」
誓子「あはは……」
爽「あれ? つか玄ちゃんはどうしてここにいんの?」
誓子「え? 今さら? たまたま会って荷物持ってくれたのよ」
玄「すごい量だったので……」
爽「そっかそっか! まぁおかしとジュースぐらいしか出ないけど遊んでってよ! どれに挑戦する?」
成香「飲み物をすすめるのに挑戦という単語が選ばれるのは怖いです……」
由暉子「お客様に罰ゲーム用の飲み物を出すのはどうかと思いますが」
玄「……それでは、このつぶつぶドリアンジュースを」
誓子「む、無理しなくていいからね? やめといた方がいいと思うよ?」
揺杏「どうする? バトルドーム続ける? なんか他のやる?」
爽「玄ちゃん来たことだしみんなで遊べるやつやるか! 人生ゲームとか!」
誓子「せめてトランプとかにしよう!? 何時間遊ぶ気なのよ……」
爽「じゃあトランプにするかー」
由暉子「また大富豪ですか?」
揺杏「6人だしその辺が無難かな? とりあえずローカルルール確認してからな」
成香「どうしてわざわざ?」
爽「こないだ揺杏について遊びに行ったときには北海道から鹿児島までいて大変だったんだよ」
誓子「地域差あるって言うからね……」
由暉子「松実さんは普段どのようなルールで遊んでますか?」
玄「えーと、8切りに11バック、スペ3……」
爽「あ! もう面倒だしいっそ特殊ルール廃止しね?」
玄「ああ、そういう手がありましたか」
誓子「そうすると貧民層勝ち上がるの辛くない?」
成香「革命だけ残しておくとか……」
爽「成香レボリューション!」
揺杏「レボッてるね!」
成香「なにか知らないけどやめてください!」
爽「9ダブルで」
由暉子「いきなり9ですか……パスで」
玄「えっと、10出します!」
誓子「うーん……私もパスで」
成香「11バックで……」
揺杏「バックしないぞ? パス」
爽「Aダブル! 出る?」
由暉子「パスします」
玄「うわ……パスです」
誓子「そっち二人は?」
成香「ありません……つい忘れちゃいますね、特殊ルール無しって」
揺杏「なー……思ったよりムズいぞ……パスね」
爽「しゃ! じゃあ革命して3出してあがり……」
成香「あ、革命返します」
爽「えっ」
玄「おぉ……」
誓子「なるかすごーい」
由暉子「……本内先輩レボッてますね」
揺杏「成香レボリューション!」
成香「だからやめてください! 恥ずかしいですから!」
由暉子「カッコいいのに……」
誓子「……ふむ、爽はラスト1枚3かぁ……」
玄「罰ゲームは逃れられそうですね……」
爽「え、ちょ、マジで?」
――――――
揺杏「罰ゲーム!」
誓子「わーわー」
由暉子「1枚どうぞ」
爽「くっ……」
成香「頑張ってくださいね」
爽「成香のどや顔うっぜぇーわマジで」
玄「どんな罰ゲームが入ってるんですか?」
誓子「激辛スナックとかヤバ気なジュースとか、あとはさっきみたいな買い出しとか? それと最近は……」
爽「……『試作品その4、ジャージ(背面に大きくたぬきをプリント)試着』」
揺杏「大当たり~!! はいこれ! 着て!」
由暉子「……えっと、ほら、たぬきさんかわいいですし」
成香「早く着替えてきてくださいよ」
爽「成香調子乗んなよ! 畜生! 次のゲームでは絶対私が勝つからな!」
誓子「大量の謎衣服の試着が……」
玄「えぇ……しかもなんか見たことある組み合わせで複雑なんですけど……」
誓子「余計なインスピレーションもらってきてるみたいで……」
揺杏「そんな、毒電波なんてチカセンひどいっすよー」
誓子「そこまで言ってないよ!?」
玄「でも、たしかにたぬきさんはかわいいですねー」
揺杏「なー」
由暉子「ジャージはともかくたぬきさんはかわいいです」
揺杏「うーん……ジャージ本体も結構頑張ったんだけどなぁ……裏地にもちっちゃくたぬきさん入れたり……」
誓子「……松実さんは天然なのね……ユキも。 揺杏はふざけてるだけ。 私がおかしいわけじゃないはず、うん。 私はいたって普通の女子高生……」
爽「なぁ揺杏」
揺杏「お、着た? どう?」
爽「ジャージ、上しかないんだけどいいのか?」
揺杏「うん、仕様だから。 あ! でもそれ以外脱いでね?」
爽「えっ」
揺杏「仕様だから。 ファッションだから」
爽「……マジですか?」
揺杏「流行ってるよ、ごく一部で」
爽「それ流行ってるって言わなくね?」
揺杏「いやいや、私東京着てから3人は見てるし」
由暉子「へぇ、それじゃあ本当に流行ってるんですね」
成香「……東京怖いです」
爽「……いやいや、揺杏の証言だけじゃあ信憑性が」
揺杏「玄ちゃんも見たことあるっしょ?」
玄「あ、うん。 見慣れてると言うかなんというか……」
誓子「……高鴨さんと?」
玄「薄墨さんと国広さんです」
爽「揺杏が服卸してるヤバ気な三人衆じゃねぇか!」
玄「ヤバ気な三人衆って……」
揺杏「うっせ! 罰ゲームだろ! 早く着替えろ!」
成香「そうですよ。 早く着替えてきてくれないと次のゲームできないじゃないですか」
爽「成香鼻につくな!? 大富豪になったからって調子に乗って……」
成香「いいから大貧民はさっさと罰ゲームやってくださいよ」
爽「……ゴメン」
誓子「なるかが勝った!?」
由暉子「本当にレボッてますね」
成香「それ気に入ったんですか!?」
爽「じゃじゃーん! 着替えてきたぞ? どうだ?」
揺杏「お、案外似合うかも」
玄「かわいいですよ!」
誓子「かわ……いい、のかな? うん、かわいいんじゃない……?」
由暉子「たぬきさんはかわいいですよ」
成香「次はなにします?」
爽「開き直って出てきてみたら反応微妙ってどういうことだよ!?」
揺杏「私と玄ちゃんは見慣れてるし?」
玄「たぬきさんかわいいですよ?」
由暉子「はい、たぬきさんはかわいいです」
爽「 つかユキもさっきからたぬきさんの話しかしてねぇし! 成香にいたっては無視か! もう一回大貧民でお願いします!」
誓子「特殊ルール無しだしカード交換も無しでいいよね?」
由暉子「戦力差出すぎるのでそれでいいと思います」
揺杏「貧民の誓子先輩が言ったのが気になるけど……で、着心地はどうよ?」
爽「あ、それは普通にいいわ……部屋着にしたいくらい」
揺杏「じゃあ普通に穏乃に回しても大丈夫かな……もう少し改良して……あ、悪い電話だ、カード先に配っといてー」
玄「おまかせあれ!」
成香「松実さん手際いいですね」
玄「えへへ、意外と器用なんですよー?」
爽「つか貧民のチカが配れよー」
誓子「あ、そっか……ごめんね松実さん」
玄「いいですよ、これぐらい……ジュースもいただいちゃいましたし」
由暉子「え、つぶつぶドリアンジュース飲んだんですか?」
玄「おいしかったです!」
誓子「……おいしいんだ、アレ」
成香「私はアレ飲まされたとき一服盛られたかと思いましたけど……」
玄「えー? けっこういけますよ、これ」
ふふ、楽しいな……最近は麻雀ばっかりだったからトランプとかそういう遊びも久しぶりだし……
帰ったらたまにはみんなを誘って……
揺杏「もしもし? 灼? え? ちょっと落ち着いて……」
玄「ん?」
揺杏「玄ちゃんが買い物から帰ってこない?」
玄「あっ」
揺杏「携帯も持たずに? 二時間近く経ってる?」
玄「…………」
誓子「……もしかして松実さん、買い出し途中だった?」
玄「は、はい……」
揺杏「え、うん、今うちの宿舎に……」
誓子「すみません、私が連れてってしまいまして……」
玄「灼ちゃんごめんねぇ……」
灼「いや、無事ならよかったんだけど……」
カン!
乙ー
レボってるっていいな今度使おうw
ところで爽の上半身ジャージオンリーの参考画像はよ
レボってるっていいな今度使おうw
ところで爽の上半身ジャージオンリーの参考画像はよ
誓子「本当にすみませんでした!」
玄「ご、ごめんね灼ちゃん……お買い物の途中なのに桧森さんに着いていっちゃって……」
誓子「その、荷物持ってもらっちゃって、そのまま上がってってくださいって! 引き留めたのは私なので!」
灼「いえ、玄だったら荷物持つの手伝うって言うのもわかりますし……なにもなかったなら、よかったです」
揺杏「灼が電話先で超慌ててたからビックリしたわー……ちょっと泣いてたし」
灼「な、泣いてな……!」
玄「し、心配かけてごめんねぇ! 灼ちゃん!」
灼「あ、暑いから、抱きつかないでほし……」
穏乃「いやぁ、でもほんと無事でよかったです! 外のコンビニまで見に行ったけどいなかったし連絡もつかないし……」
晴絵「携帯はちゃんと携帯してくれよー?」
玄「はぁい……」
憧「なんもなくてよかったね、宥ねえ」
宥「うん、すごく心配しちゃったよ……」
玄ちゃん、おうちではとってもしっかりものなのにお外に出るとちょっとうっかりさんなんだよね……
……もしかして、私がしっかりしてない分玄ちゃんがおうちではしっかりしてくれてるのかなぁ?
宥「…………」
憧「ん? どしたの?」
宥「私、お姉ちゃんだし……もっとちゃんとできるように頑張るね」
憧「ん? うん……あのさ、玄が帰ってこなかった理由って別にあると思うよ?」
宥「え?」
憧「ほら、あれ」
爽「せっかく来たし遊ぼうぜ! バトルドーム持ってきたから!」
穏乃「うわ! 実物はじめて見た!」
玄「実は私もちょっと気になってたんですよね……」
由暉子「個人戦あるのに遊んでばっかりでいいんですか?」
爽「息抜きも大事!」
晴絵「うん、それもそうだな」
揺杏「しゃあ! 監督の許可もらったし阿知賀のみんなも遊ぼーぜ!」
誓子「私たち毎日遊んでるでしょ……」
灼「……大変そうですね」
揺杏「誓子先輩もノリノリで遊んでるから同情することないよ?」
誓子「ちょ、やめてよ揺杏!」
爽「一人だけ真面目ぶんなよなー……だいたい一番負けず嫌いなのチカだし」
成香「なんだかんだで一番熱くなってるのはちかちゃんですね」
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- P「ちひろさんの様子がおかしい……」 (71) - [39%] - 2018/10/15 2:47
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