私的良スレ書庫
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元スレ灼「個人戦は見学して行くから……」
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村吉さんとか実は好きでした
それと三尋木プロとか、シノハユや本編で情報が追加されたら今までの投下分の人間関係等は引き継ぎますが、設定には寄せるつもりですので多少ズレが出てもその辺はご容赦を…
それと三尋木プロとか、シノハユや本編で情報が追加されたら今までの投下分の人間関係等は引き継ぎますが、設定には寄せるつもりですので多少ズレが出てもその辺はご容赦を…
村吉アナはあのふんわりした見た目から毒舌なのがいい
佐藤アナは常識人なのにスーツで谷間作るってどういうことなの……
佐藤アナは常識人なのにスーツで谷間作るってどういうことなの……
乙
常識人で人が良くてもセックスアピールだけは忘れない佐藤アナが好きです
常識人で人が良くてもセックスアピールだけは忘れない佐藤アナが好きです
りつべの脱がし癖考えたら今後ジャケットのボタンが外れることもあり得る(真顔)
とはいうけどアニメや漫画だからうつるけど
いくらセックスアピールしても実況解説はテレビ写らなくね
ということはアピールしてる対象は隣にいるプロか
いくらセックスアピールしても実況解説はテレビ写らなくね
ということはアピールしてる対象は隣にいるプロか
おつー相変わらず面白かったです
こーこちゃんアホアホ言われすぎw
こーこちゃんアホアホ言われすぎw
リッツもアニメで佐藤アナ見て何でこの人スーツの胸開けてるの?と思ったらしいが送った設定見たらそういう指定だったとか
忘れてんじゃねーよw
忘れてんじゃねーよw
楽だから家でジャージ着てるだけなのに同じジャージ組で括られることに若干不本意なすこやん
あらたその誕生日だと揺杏、玉子、菫、照、咲、やえさんあたりかな
3年生時なら姉妹仲も落ち着いてるだろうし丁度いい
3年生時なら姉妹仲も落ち着いてるだろうし丁度いい
玄『あっ』
灼「……なに?」
玄『ほら、日付回ったから……灼ちゃん、お誕生日おめでとう!』
灼「ああ……ありがと」
そういえば、明日……というか、今日だったか……ついこの間穏乃のお祝いをしたというのにすっかり忘れていた
ひとつ学年も上がって、ハルちゃんもプロチームと無事に契約して学校を去り……阿知賀女子麻雀部部長として、しっかりしないといけない
そんな気持ちから自分自身のことが多少疎かになっていたのかもしれない
新しい顧問の先生も麻雀にはあまり詳しくないみたいだし……ただ、インハイで結果も出したしハルちゃんのこともある。 学校全体で麻雀部を応援してくれている……しっかり今年も結果を出したい
まずは部員の勧誘から……うん、こう考えるとやっぱり去年の清澄と似ている環境だ。 また竹井さんに相談してみようか……
玄『灼ちゃん?』
灼「あ、ごめ……」
もともと、玄とも勧誘をどうするかって話をしてたんだった……急に誕生日とか言われて忘れてた
だってちょっと……いや、かなりうれしかったし
玄『ねえねえ、灼ちゃん』
灼「なに?」
玄『私が一番だったよね?』
灼「……なにが?」
玄『お誕生日のお祝い!』
灼「うん」
玄『やったぁ!』
灼「……なにがそんなにうれしいの?」
玄『だって、一番に灼ちゃんにお祝い言えたから! 親友だもんね!』
灼「……そか」
玄『そうだよ~』
なんだ、もう……アレだな。 恥ずかしい子だな、玄は。 いや、こっちが勝手に恥ずかしがってるんだけど
……ハルちゃんが麻雀から離れたのと同時に私も麻雀から離れて、玄とも少し疎遠気味になってた時期があったけど……それでも誕生日のお祝いは毎年言いに来てくれたっけ
よく覚えていたものだと感心してたけど……親友とか言われると、なんか、恥ずかしくなってきた
玄は、いい子だ。 本当に。 ……親友だし、よく知ってる
玄『あ、灼ちゃん! ちょっとお電話かわるね?』
灼「ん」
宥『灼ちゃ~ん』
灼「宥さん、こんばんは」
宥『こんばんは~お誕生日おめでとう~』
灼「ありがとうございます……大学の方はどうですか?」
宥『うーん……まだよくわからないけど、うまくやっていけると思うよ。 知り合いがいてよかったよ~』
宥さんは、大阪の麻雀がけっこう強いらしい学校に進学した……らしいというのは、単純にインカレの方はあまり知らないというだけだ。 宥さんが頑張るんだし、これからは少し調べてみようか
……話を戻すと、キャンパスの方で千里山……元千里山か。 園城寺さんと出会ったらしい
インハイで活躍したものの、体調の問題でその後の大会は出たり出なかったりで安定せず、プロはいったん諦めてとりあえず大学でのんびりやる……なんて話を二条さんや清水谷さんから……宥さんや穏乃経由で聞いていたけど、まさか宥さんと進学先が一緒になるとは思わなかった。 これも縁ってやつかな?
宥『そういえば、明日……今日? の、お昼からだよね?』
灼「はい……照さんたちの、プロデビュー戦」
宥『灼ちゃんも見に行くんでしょ? 会場で合流できるかな~』
4月に入ってプロリーグも開幕し、新人プロたちも出場機会が出てくる
照『試合に出れそうだから、予定が合えば見に来て』
そんなシンプルな手紙と一緒に大阪会場での観戦チケットが1枚届いたのは先週のことだ
……その2日後にやえさんから連絡が来て、チケットを3枚ほど追加で送ってくれた
やえ『……人数分用意できなくて悪かったわね』
そんな風に言っていたけど、ちょうどよく……と言ったら変になるが宥さんは園城寺さん繋がりで、対局が組まれている別チーム所属の江口セーラさんからチケットをもらえたらしい。 園城寺さんと一緒に観戦に行くそうだ
やえ『私の出場機会はまだ先になりそうだけど、見に来てやってよ。 あんたの誕生日だから絶対勝つって、張り切ってたから』
そんな風に言われると見に行かないわけにもいかない
せっかくの仮入部期間に一日とはいえ学校を空けてしまうのは問題かもしれないが、これも勉強の一環だ。 遊びに行くわけじゃない
……遊びに行くわけじゃないから!
玄『小走さんがチケットくれたんだよね? ちゃんとお礼言わなきゃ……あ、でも会えるかなぁ?』
宥『試合後なら少しぐらい会えるんじゃないかなぁ』
玄『試合後だとミーティングとかもあるかもしれないし……』
宥『でも試合前に行くのは無理だよぉ……玄ちゃんたちは学校もあるし……』
学校をサボるのはさすがに……だもんね。 授業が終わってからだと……中堅戦ぐらいには間に合うだろうか?
玄『それにしても、なんだか変な感じだよねぇ……夏に打った人たちがもうプロになってるなんて』
灼「それは、たしかに……」
宥『知り合いも多くて誰を応援するか困っちゃうねぇ』
灼「そうですね……みんなにお世話になってるし……」
照さんとやえさん、江口さん、洋榎さん、それに弘世さ……弘世さん
多くの知人がプロ入りしたので当然と言えば当然だけど、よくも今回これだけ集まったものだ
……弘世さん、これから人気出たら世間的に弘世様が定着しちゃうんじゃないだろうか
いや、大宮だしはやりんみたいな呼び名で定着するのだろうか
…………すーみん、とか?
まあいいや、なんでも
正直、あだ名よりもみんなにどんな称号が付けられるかの方が気になる
『Grand Master』とか『The Gunpowder』とか、カッコいいの付くんだよね。 誰が命名してるのか知らないけど
なんだろう、アレかな? 『光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士』とか、そういう感じかな?
あ、弘世さんはそのまま『Sharpshooter』かな?
まあ、この話も今のところはどうでもいい……とりあえず、今回は照さんを応援させてもらうとしよう。 試合のチケットも頂いてしまったことだし、やえさんも同じチームだから一番縁も深いし……そもそも、直接対決が起こることもそうそうないだろうし、要所要所で知り合いを応援すればいいだろう
宥『灼ちゃーん』
灼「……はい」
宥『私、明日は朝一番で園城寺さんと一緒に会場行くから、今日はそろそろ寝ちゃうね~』
灼「わかりました……おやすみなさい」
宥『おやすみ~』
玄『おやすみ、お姉ちゃん』
灼「……玄はまだ寝ないの?」
玄『だって、勧誘とか、そういうお話も途中だったし……』
灼「……もう眠いでしょ?」
玄『……眠くないよ?』
灼「……今、欠伸したでしょ」
玄『してないよ? ……してないよ?』
灼「いいよ、無理しなくて……私も眠いし。 また明日考えよ」
玄『ん……うん、わかった。 ……ふぁ』
灼「やっぱり欠伸した」
玄『えへへ、ほんとはちょっぴりおねむだったのです……それじゃあまた明日ね、灼ちゃん』
灼「ん……おやすみ、玄」
玄との通話を切ると、いくつかメールを受信していることに気づく
穏乃に憧に……他にも、夏のインターハイで知り合った人たちから
『誕生日おめでとう』
それだけのことなのに、すごくうれしく感じる
穏乃も憧も、明日学校で会うんだからその時でもいいのに……
ニヤニヤしてる自分がちょっと気持ち悪いな、なんて考えながらみんなに返信をして、ひとまずベットに入った
テンション上がっちゃって、子どもか、私は
灼「……あ、ハルちゃんも…………」
プロ入りして、私に構ってる暇なんてないだろうに……
灼「……ふふふっ」
単純に明日の試合が楽しみなのもあるけど、本当にうれしくて、うれしくて……
……ちゃんと眠れるか、心配だ
――――――
憧「あ、灼さんおは「灼さーーん!!」しず、声でかい!」
灼「おはよ」
穏乃「おはようございます! お誕生日おめでとうございます!」
憧「おめでと! せっかく大阪まで行くし、また服とか買ってく?」
灼「ありがと……試合、最後まで見たらたぶんそんなに時間ないよ?」
憧「むぅ……やっぱり? ご飯食べて帰ってくるようかなー」
穏乃「まあいいじゃん! おいしいもの食べて帰ってこようよ! 今日は奢りますよ! 奢り!」
灼「いいよ、気持ちだけで……この前新しいジャージ買ってたし。 キツいでしょ?」
穏乃「いや、それでも灼さんの方が大切……」
憧「ちょっと待ったぁ!」
穏乃「う?」
憧「えっ? ……え? またジャージ買ったの……?」
穏乃「奮発していいの買っちゃった! ほら、新年度だしジャージも新しく心機一転! 頑張ろうかなって……」
憧「もっとちゃんとした服を買いなさいよ!?」
穏乃「ちゃんとしたジャージ買ったよ?」
憧「だから……あーもう!」
このやり取り、いつまで続くんだろうか
憧も諦めずによくやるものだ……
灼「……あまり騒ぐと目立つよ?」
憧「っ……と、まあいいわ。 この件に関してはまた後でじっくりと……」
穏乃「あっ! 玄さん! おはようございまーす!」
玄「おはようみんな!」
憧「あ! ちょっとしず! 聞いてるの!?」
たぶん、聞いてないよ
そして、聞いてたとしても響いてないよ
灼「……とりあえず、今日の学校が終わったら駅に集合で」
――――――
電車に乗って大阪に向かう……対局の方はまだまだ点数も平らで、じっくりと進んでいるようだ
ネットで配信されている対局の様子を、早回しで先鋒戦からチェックする
憧「瑞原プロ、さすがに先鋒戦で振り切れなかったかー」
穏乃「野依プロはやっぱり守備固いもん」
灼「やっぱり三尋木プロ稼ぎすぎ……」
玄「あ! 次鋒戦、弘世さ……弘世さん出てるね!」
灼「……フリフリの衣装着てるね」
憧「……大宮のユニフォーム、はやりん寄りだからね」
穏乃「あ、振り込んだ! うーん……弘世さ……弘世さんといえどもプロ相手だとキツいかなぁ……」
憧「でも……これ! 南2と南3で狙い撃ち決めてる!」
玄「神戸と大阪から取り返してトントンかな?」
今日の前半戦は大宮から瑞原プロ、神戸から野依プロが出場しており、かなり盛り上がったようである
瑞原プロからバトンを引き継いだ弘世さんは今のところは微失点と言ったところだが……まあ、プロ一戦目でこれなら全然いいんじゃないだろうか
得意の狙い撃ちも決めているし、自分の武器が通じるということでむしろ自信になったんじゃないかな……
憧「あ、速報! 横浜がツモ和了りで次鋒戦終了!」
穏乃「あちゃー……弘世さ……弘世さん、ちょっとマイナスかぁ」
灼「多少は仕方ないよ……中堅戦、オーダーどうなってる?」
憧「速報……更新まだでーす」
玄「……ん、もしもし? お姉ちゃん?」
穏乃「宥さんですか?」
灼「現地からリアルタイム中継……」
憧「宥ねえ! オーダーは!?」
宥『今、こっ……い盛り……よ~』
電話口からは、歓声でかき消され気味の宥さんの声が聞こえる
どうやら、相当な盛り上がっているらしい
玄「うん……うん……大阪の中堅が洋榎さんで神戸が江口さん!?」
憧「ほんとに!? ライバル対決か!」
穏乃「愛宕プロ……お母さんの方も! たしか大阪で中堅だったよね!?」
それは、盛り上がりそうだ……大阪は最近低迷気味だったし、今季オフで以前エースだった愛宕プロの娘、洋榎さんを獲得したことでかなり戦意を上げていた
洋榎さんは小学生時代から全国大会で結果を出しているし地元開催の試合だ。 ここで当ててきたのはまあ当然とも言えるだろう
そして、神戸。 同じ関西圏から名門千里山で二年生からエースを張っていた江口さんを獲得している。 チームの顔の野依プロが堅守を売りにしていることから火力の高い江口さんを引っ張っていったんだろうと言われているが……
……大阪と神戸は、どうも互いにライバル意識が強いらしい。 互いに大阪の名門校である姫松・千里山からエースを引き抜いてきているわけだし、どっちがより良い人材を獲ったか白黒つけたいんだろう
単純に地元の期待の星であるふたりのライバル対決だ。話題にもなる
穏乃「見たい見たい! 間に合うかな!?」
憧「騒いでも電車は早くならないって! 恥ずかしいからおとなしくしててよ、もう……」
灼「……後半戦には間に合うんじゃないかな、たぶん」
玄「うん、うん……わかった。 ありがとうお姉ちゃん」
憧「切れた?」
玄「うん。 なかなか聞こえないし……状況動いたら教えてくれるって~」
穏乃「うー……待ちきれない! テンション上がってきた!」
憧「だーかーら、やめろっての!」
穏乃「あうっ」
玄「ふたりとも! 仲よくしないとダメだよ~」
……仲いいな、この子ら。 小学生みたいになってるけども
会場の最寄り駅に到着した時点で、前半戦は南3局……横浜の選手が速攻で安手を江口さんから出和了りしたところだ
穏乃「ああっ! セーラさん振っちゃった!」
憧「江口セーラなら2900ぐらいすぐ取り返すっしょ」
灼「……この映像見る限り、洋榎さん確実に煽ってるよね」
玄「……まあ、あのふたりも仲いいし平気なんじゃないかな……?」
憧「平気ではないでしょ……前々からのことだけど、プロなら模範になるべきじゃないの?」
灼「たしかに……」
そんな会話をしながら、会場まで軽く駆け足で向かう……後半戦の開始には間に合うな
穏乃「見えたっ! 会場!」
憧「スピード上げないっ!」
灼「……じゃ、私はここで……」
玄「え!? 灼ちゃん見に行かないの!?」
灼「そうじゃなくて……みんなのはやえさんが用意したけど、私のは照さんが用意したから……」
憧「あ、観戦席……」
灼「わりと遠い」
玄「そんなぁ……」
どうせモニター観戦なんだから席なんて自由でいいと思うんだけど、プロの試合ともなるとそうはいかないらしい……まあ、安全管理の問題とかもあるんだろうし仕方ないけど
穏乃「……残念だけど、仕方ないですね……」
灼「ふたりともそんなに落ち込まなくても……」
玄「だって、せっかくだし一緒に見たかったよ……」
憧「試合終わればすぐ会えるんだし我慢しなさいよ……そもそも小走さんがチケット送ってくれたから私たちも来れたんだし……」
灼「……残念だけど、また後で」
穏乃「うー……よしっ! 応援頑張りましょうねっ!」
3人と別れて自分の観戦席に向かう……まあ、こればっかりは本当に仕方ないんだけど……ひとりで観戦か……
灼「…………ちょっとさびし……」
最近……いや、夏ごろ……ううん、麻雀をまたはじめてからかな
ハルちゃんが麻雀を棄てて、それに拗ねて、ちょっとひねくれて……なんとなく人と距離を置くようになって……
友だちはいたけど、素直に、仲よくしたりなんかはできなかったように思う
それが、また玄と一緒に過ごすようになって、宥さんとも昔みたいに話すようになって……穏乃と憧とも仲よくなって……
県大会でやえさんをはじめとした晩成の人たちと
東京に出る途中に千里山の人たちと会って……清澄のみんなや憩さんたち、他にもたくさんの人たちと出会って……ひとりで過ごす時間はほとんどなくなって
昔は、別にひとりでもなんともなかったのになあ……
……ちょっと感慨深い。 麻雀やっててよかった、なんて思ってみたり
咲「あっ、灼ちゃん」
玉子「遅かったであるなあ」
灼「今日は授業があったから……」
玉子「照の出番に間に合ってよかったのである!」
咲「お姉ちゃん、ここまで出番ないとたぶん大将だねー」
灼「そだね……」
灼「ん?」
玉子「どうかしたのであるか?」
咲「どうしたの?」
灼「咲と、玉子さん!?」
玉子「ずいぶんと久しぶりであるなあ」
咲「たまに電話はしてたけど、顔合わせるのは久しぶりだよねー」
灼「いや、そうだけど、そうじゃなくて……」
灼「……照さんに呼ばれたの?」
玉子「うむ! デビュー戦だから是非と言ってチケットを送ってくれたのである! お陰で四月早々に学校をサボってしまったのである……」
咲「あはは……私も今日はサボっちゃいました……お姉ちゃんが絶対来てって言うから……」
灼「……そか」
なんだ、もう……それならそれで照さんも最初から教えてくれればいいのに……ああ、1枚だけだったのもこっちの分取ってたからか……
そんなことより……まず、疑問がひとつ……いや、ふたつ
灼「ふたり、知り合いだったっけ?」
玉子「初対面である!」
咲「お姉ちゃんが友達呼んでるって言ってたから……えへへ、玉子さんいい人だからすぐに仲よくなれたよ」
灼「……そう」
……咲には伝えてたのか。 なんだろう、これは……ああ、照さんだしな。 たぶんサプライズの一巻とかなんだろう
……それじゃあ、最大の疑問
灼「……咲、ひとりで来れたの?」
咲「まさか! お父さんと一緒に来たよ?」
灼「ああ……それは、まあそうか」
デビュー戦だから、ってチケット送ったなら家族全員に届くよね、そりゃあ
そもそも、咲がひとりで大阪まで来れるわけないし……咲も今暗に認めてたし
灼「……そっちの空き席?」
咲「うん、お父さんとお母さんの席。 お姉ちゃんの出番まで外で話してるって」
灼「……よかったね」
咲「うん!」
詳しくは、結局聞いてないけど……また家族みんなで仲よく暮らすんだって、咲は夏にそう言ってた
照さんが関東のチームと契約したからそうはいかなかったみたいだけど……それでも、家族仲は良好になってるらしい
……本当に、よかった
咲「あ……そういえば、灼ちゃん」
灼「なに?」
咲「お誕生日おめでとう」
玉子「おめでとう!」
灼「……ありがと」
咲「本当は、昨日の夜のうちにメールしようと思ってたんだけど……ちょっと、よくわからなくって……」
灼「……大丈夫。 届いてたよ、空メール」
努力は伝わってきた。 努力は。
……夏の終わりにスマホ買ったって言ってたと思うんだけど、いまだに使い方がわからないのか……
玉子「私もそうしたいのはやまやまだったのであるが……照がサプライズだと言っていたのでな! どうせなら直接言おうと思ったのである!」
灼「わざわざ、ども……」
玉子「なぁに、直接言われた方がうれしいであろう? 今度食事でも奢ってやるのである! なんでも好きなものを言うとよいぞ!」
灼「……夏にそれを言って照さんが…………」
玉子「…………灼、すまん……さすがにアレの二の舞はノーである……」
灼「お気持ちだけで充分……」
咲「すみません、お姉ちゃんがご迷惑を……」
玉子「なに、咲が気にすることでもないのである! 」
灼「……でも、それとなく言っといた方がいいよ。 照さん、さすがにちょっとおかし食べすぎだと思……」
咲「だよね……」
なんて、そんな話をしているうちに対局は進み中堅戦も終了した
……収支は江口さんの方がプラスだけど、洋榎さんの大阪が一位キープしてるんだよなぁ……あ、なんかまたもめてる
いや、じゃれてるのか
洋榎さん、もうちょっとなんとかならないのか……昔からああいうコミュニケーションの取り方してるんだろうけど……それこそ憧の言ってた通りプロなんだから
というか、インハイの時から思ってたけど……中継のカメラって試合の合間とか撮るとこないのはわかるけどさ、関係ないところ映しすぎだよね
去年の夏の県大会とか……晩成が敗退したあとにやえさんが巽さんと抱き合ってるの撮られてて後から顔真っ赤にして怒ってたし
咲「……副将戦まで何分ぐらいあるっけ?」
玉子「10分休憩である!」
咲「わ、私ちょっとおトイレ行ってきます」
灼「……ひとりで行ったら帰ってこれないでしょ? ついてく」
咲「べ、別にひとりでも……」
灼「ほんとに?」
咲「……お願いします」
……なんで毎回こういうときにちょっと強がるのか。 別に迷惑だとも思ってないのに……
玉子「ふーむ……それでは、これでなにか飲み物でも買ってきてほしいのである!」
灼「あ、はい……」
ポンと渡される千円札
玉子「お釣りで好きなものを買ってきてよいぞ~」
咲「え、でも、ちょっともらいすぎじゃ……」
玉子「?」
灼「……ありがとうございます。 飲み物、なんでもいいですか?」
玉子「よきに~」
咲「いいのかな、こんなにもらっちゃって……」
灼「玉子さん、ああいう人だから」
咲「……もしかして、この調子でお姉ちゃんに……」
灼「……照さん、ほんとに遠慮しないよね」
咲「恥ずかしいなぁ……」
それにしても、玉子さんのああいうとこは先輩っぽいな。 器が大きい感じする。 千円だけど
……私もやってみようかな。 下のふたりにおつかい頼んでみたり……
灼『穏乃、憧、おつかい頼んでもいい?』
憧『えー』
穏乃『まかせてください!』
灼『てきとうに、飲み物を……』
玄『お茶淹れようか?』
灼『……えと、ジュースを…………』
玄『そっか! じゃあ私が行ってくるからみんなで練習しててよ!』
灼『……これ、お金』
玄『いいよいいよ、ジュースぐらい私が出すから!』
灼『いや、そういうわけには……』
玄『いってきまーす!』
灼『あ、ちょっと……』
……そもそも穏乃と憧のふたりをおつかいに行かせること事態無理なんじゃないか?
…………まあいいか、そもそもキャラじゃないし
灼「……じゃ、売店で適当に買ってくるから。 用が済んでも動かないで待ってて。 迎えに来るから」
咲「え、でも」
灼「待ってて」
咲「……はーい」
灼「よろしい」
咲がお花を摘んでる間に買い出しに……時間があるなら待っててもよかったけど、休憩時間短いしね
咲と歩いてたら間違いなくいつの間にかはぐれて迷子になるし……これって、方向音痴とかそういう話じゃない気もするんだけどどうなんだろうか
玉子さんと、咲と、自分の分の飲み物と……適当にみんなで食べられるおかしでも買っていこうか
「鷺森灼?」
灼「?」
浩子「ああ、やっぱり……松実宥さんが来とるって言うとったんで」
絹恵「久しぶりやね! 灼ちゃん!」
灼「あら、ども……今日は洋榎さんの応援?」
浩子「いや、セーラの応援ですわ……あのアホ、チケット代ケチりよったんで」
絹恵「あはは! まあ、お姉ちゃんらしいわなぁ……さっきもまたセーラさんとじゃれとったし、朝はちょっと固かったけどあんま緊張せんでいけたみたいや」
浩子「そういう点ではラッキーやったな。 顔見知り相手で落ち着いたみたいやし」
灼「なるほど……」
洋榎さんでも緊張とかするのか……まあ、元プロの母親のこととかもいろいろあるだろうし当然か
……宥さんの名前が出たと言うことは、たぶん一緒の席を取ってあるんだろう。 江口さんに用意してもらったって言ってたし……宥さんと園城寺さん、絹ちゃんと船久保さん……この面子だと二条さんも来てそうだ。 宥さんとも仲がいいし
浩子「ああ、そういえば鷺森さんお誕生日ですよね? おめでとうございます」
灼「……ども」
……宥さんに聞いたのかな?
絹恵「え? そうなん? 言ってくれたらなんか用意しとったのにー」
灼「そんな気にしなくても……」
絹恵「あ! じゃあ、とりあえずこれ! 今買ったたこ焼きあげるわ! まだ手ぇつけとらへんし!」
灼「そんな、気持ちだけで充分……」
絹恵「ええからええから! こっちはなんかあげたいんやもん……友だちなんやから遠慮せんでよ」
灼「……ありがと。 いただきます」
絹ちゃんは礼儀正しく義理堅い。 同い年なのにすごくしっかりしてるし……身体も……
……まあ、気にしても仕方がない。 この体型じゃないと着れない服もあるし……揺杏だって素晴らしい個性だって言ってたし……うん、気にしてない。 気にしてないぞ、うん
絹恵「にしても浩子ちゃんよく灼ちゃんの誕生日なんて知っとったなぁ……私聞いたことなかったわー」
浩子「インハイ前に散々情報収集したから覚えとったんや……頭に入れたデータはいつでも引き出せるようにしとかんと意味ないやろ?」
クイッと眼鏡を持ち上げてニヤリと笑う船久保さん
今年、県予選で晩成を破れば彼女の率いる千里山とも確実に戦うことになる……去年はこちらのデータが少ない状況で全国に臨めたけど今年はそうもいかない。 辛い戦いが続くだろう……
……船久保さんも絹ちゃんも友だちなんだけど、なんとなく船久保さんはライバルって意識が強い。 大会で直接打ったからかな?
負けたくないと、思う
絹恵「あ! そういえば一昨日は浩子ちゃんも誕生日だったんやで!」
灼「へぇ……おめでとう」
浩子「どうもです。 一足お先に18や」
絹恵「私は当分17や……なんかずるない? 18とか超大人な感じするやん?」
灼「男だったら結婚もできるしね」
浩子「女やから16で結婚できるけどな」
灼「……18禁コーナーにも」
浩子「入れんわ」
灼「……せやな」
浩子「せやせや」
絹恵「そう考えるとあんま変わらんなぁ」
浩子「実際、私と絹ちゃんでそんなに顕著な差なんてないやろ」
灼「…………そうだね、眼鏡キャラなのも一緒だし」
浩子「おう、胸見るのやめーや」
灼「……何も言ってないのに」
絹恵「こんなんあってもジャマなだけやで?」
浩子「絹ちゃん、それは持ってる側が言ったらアカンわ」
灼「持ってない側が言うのと少し意味合い変わってくるから」
絹恵「え? か、堪忍な……」
なんて、バカらしい話をしてるとポケットから振動……メールかな?
灼「ちょっと失礼……」
咲『』
灼「あ」
忘れてた。 やっぱり空メなのか。 というか電話した方が早いのに……電話の操作はできるはずだよね? 夏以降、咲からも電話はかかってきたし……
灼「……ごめ、ちょっと連れが…………」
浩子「ああ、すみません。 むしろこっちが引き留めてしまって……」
絹恵「っていうか副将戦も始まっとるやん! すっかり忘れてたわー」
浩子「ま、洋榎とセーラの出番は見れたしちょっとぐらいええやろ」
絹恵「一応録画もしてきたしな! お姉ちゃんのデビュー戦やし!」
浩子「恥ずかしい結果にならんくてよかったな」
……なんだかんだ愛宕一族で仲いいんじゃないか。 そりゃあ、悪いだろうなんて思ったこともなかったけど
灼「……じゃ、また」
浩子「ええ。 春期では会えなかったしな……しっかり人数揃えて来ぃや」
絹恵「今度はもっと時間に余裕あるときに大阪来てぇや! あ、なんなら試合終わったらお姉ちゃんたちに会い行くし時間あるなら連絡ちょうだい!」
灼「ん……ありがと」
互いに大きく手を振って別れる……とりあえず、咲が移動していないことを祈りながらお手洗いに向かった
灼「……咲」
咲「あ、灼ちゃん!」
灼「ごめん、待たせちゃって……副将戦も始まっちゃってるし……」
咲「うぅ……置いていかれちゃったかと思ったよ……」
本当に、これは申し訳ない……咲を放っておいて別の友だちと話してたわけだし
……咲、ちょっと泣きそうだし
灼「……ごめんね」
咲「……大丈夫だよ、灼ちゃんちゃんと来てくれたし」
咲「……それよりもさ! 私、頑張ったんだよ! ちゃんとメールできたでしょ?」
灼「…………来たよ、空メール」
咲「えぇ!? おかしいなぁ……ちゃんとできたと思ったんだけど……」
……何をどうやったら送信するときにメールが白紙になるんだろうか
まあ、福路さんなんかは機械に触ると爆発するらしいしそういうこともあるっちゃあるのかもしれない
……いや、ないって。 おかしいよ、両方。 特に福路さんは
咲「……はいっ! メール送ったよ! 今度こそ……」
灼「…………」
咲『』
灼「……できてないけど」
咲「あれっ? 本当に……? 変だなぁ……」
……まあ、かわいいからいいか
灼「よしよし、いいこいいこ」
咲「むー……背伸びしてまで撫でないでよ……」
……咲、意外と大きいよね。 いや、私が小さいんだけど
玉子「灼、咲……」
咲「ごめんなさい、副将戦始まっちゃってますね」
灼「玉子さん、すみません……お待たせしてしまって。 お茶ですが、どうぞ」
玉子「うぅ……寂しかったのである……もしこのままふたりが帰ってこないうちに咲と照の親だけ帰ってきてしまったらどうしようかと……」
それはたしかにキツい
友だちの親って、なんか距離感難しすぎるし……望さんにはよくしてもらってるけど、憧のお姉さんだしまたちょっと違うか
玉子「はぁ……ようやく少し安心できたのである……試合の方もよく知らないプロばっかりで……」
咲「ああ……私もあまり詳しくないから……お姉ちゃんのチームメイトも三尋木プロとやえさんぐらいしか知らないし……」
灼「……咲、やえさんと知り合いだったの?」
咲「ちょっと前にお姉ちゃんが友だちだって紹介してくれて……夏の個人戦で顔も知ってたし、二月三月辺りにお話もしたよ。 私、冬休みはお姉ちゃんのおうちにも行ってたから」
……ということは、照さんはやえさんを家に泊めてたのか。 バレンタインにそんな感じの話をしてた気がするし
それにしても、タイミング被らないようにスケジュール調整とかしないのか
……あ、いや、できないのか。 照さんだもんね……弘世さんも自分のことで忙しかっただろうし
……亦野さんがお世話やらされてたりしなくてよかった
玉子「どうせなら、やえも今日出番があればよかったのであるがなあ」
咲「ふふ、お姉ちゃんも一緒にデビュー戦したかったって言ってましたよ」
灼「ん……でも、新人ふたりを同時投入はかなりの冒険になっちゃうし」
玉子「いっそ照を先鋒にしてみても面白かったと思うのであるが……」
灼「野依プロと瑞原プロがいるし、それもね……」
咲「そのふたりの相手は三尋木プロじゃないと厳しいよね……」
プロの試合を楽しみに来た。 それは嘘じゃないんだけれども……こう、ずっと知り合いが試合に出ていただけになんとなくてこう、はっきり言うと退屈な感じだ
みんなそれほどプロに詳しいわけでもないのに、各選手の起用、運用についてあれやこれやと議論してみたりして楽しむ
結局、やえさんと照さんを使えって文句を言うだけなんだけれども
咲「あ、副将戦終わる?」
玉子「これ前半戦であるか? 後半戦であるか?」
灼「さあ……?」
途中から全然モニター見てなかった……せっかく来たのに、もったいない
まあ、照さんを見に来たんだから問題ないといえば問題はないんだけど
灼「……そういえば、もこは? 照さん呼ばなかったのかな?」
玉子「もこ、そんな人の一杯いるところは怖いから行きたくないってごねたらしいのである」
灼「……らしいっちゃ、らしいけど」
咲「もこって、対木もこちゃん? 国麻で打ったなぁ……」
玉子「もこは、ちょっと人見知りするのでな」
灼「照さん、構いすぎて何回か噛みつかれてましたよね」
玉子「懐かしいのである……」
咲「ふふ……もう、お姉ちゃんのことだからケーキとか顔にグイグイ押しつけたりしたんでしょ?」
灼「ん……私もやられたことある」
玉子「照ももこも、たいがい変なやつであるからなあ」
灼「それ、玉子さんが言う?」
咲「……灼ちゃんが言うの?」
……つまるところ、みんな変なやつなんだな
咲「……あっ! お姉ちゃん! お姉ちゃん出てきたよっ!」
灼「ふふっ……咲、はしゃぎすぎ」
玉子「おお……こうしてみると、やっぱり照はプロになったのだなあ……」
会場の大型モニターには、宮永照の姿。 会場のロードスターズファンたちも大いに盛り上がっている
インターハイ個人戦三連覇の英雄だ。 小鍛治健夜の後継たる新人として世間的にも注目されている
中堅戦、副将戦と勢いに乗られて押し込まれた横浜は現在4位、トップとの点差は34000点……高校の大会だったら余裕で逆転してしまったようにも思えるけど、今度の戦場はプロが相手だ。 果たしてどこまで通用するのか……
照『……ツモ、300・500』
咲「和了った! お姉ちゃんが和了ったよ!」
灼「ふふっ……もう、見ればわかるよ」
玉子「速い! さすがである!」
照『ロン、2900』
照『ロン、7700』
照『ツモ、4000オール』
灼「……照さん、すごすぎない?」
玉子「むむむ……桁違いなのである……」
咲「私のお姉ちゃんだよ! 私の!」
……ほんとにはしゃいでるな。 疎遠な期間が長かっただけに喜びも大きいんだろうけど。 かわいいな、くそっ
玉子「そんなこと言ったら、私の親友であるぞ!」
灼「そこ、張り合うの……?」
というか、そんなこと言ったら私の親友でもあるし……
結局連続和了はそれ以上続かなかったけれど、その後も細かく打点を刻んで逆転。 照さんは派手にプロデビュー戦を飾った
……洋榎さんは今までと変わらない堅実な守備と攻撃で互角以上にプロと渡り合ったし、江口さんも持ち味である高い火力を見せつけた。 弘世さんだって収支はマイナスになってしまったものの得意の狙い撃ちで流れを打ち止めにしたし、みんな新人としてはかなりの活躍をしたんだけど……その印象をかき消してしまう程の大活躍だ
咲「勝った! お姉ちゃん勝ったよ!」
灼「うん。 すごい……」
玉子「本当にすごいのである……」
言葉もない、といったところか。 すごすぎて呆然としてる
咲は座席でぴょんぴょんと跳ねてはしゃいでいる。 かわいい
咲「見た? 最後の和了り! こう、ぐわーって来てバーンって!」
灼「……とりあえず落ち着こうか」
子どもか。 自分も相当打てるのに、なんだその感想は
いや、私もテンション上がっちゃって拳とか思いっきり握りこんじゃってるけど
……ちょっと恥ずかし
玉子「む! モニター、ヒーローインタビュー! 照である!」
灼「……照さんが逆転したしね、当然」
咲「やったぁ! すごいすごい!」
だから咲は……いや、もういいか。 私もちょっとはしゃぎたい気分だし
『宮永選手、大逆転です! おめでとうございます!』
照『ありがとうございます!』
咲「お姉ちゃん! お姉ちゃんだ!」
玉子「照がしゃべった! しゃべっているのである!」
そりゃあ、会場MCのお姉さんがインタビューに行ってるんだからしゃべるだろう。 クララが立ったみたいに言わなくても……
それにしても、会場の歓声もすごい。 みんなテンション上がりっぱなしだ
三尋木プロがいるのに宮永照まで獲って……この活躍を見るとロードスターズは今季も安泰かな
照『自分の力がどこまで通用するのか不安もありましたが、同じチームの先輩方や支えてくれる友人、家族……なによりも応援してくださるファンの皆様のお陰で……』
咲「お姉ちゃん、すっごく緊張してるなあ……」
玉子「そうであるか? 昔からあんな感じでテキパキと取材には答えていたであろう?」
咲「それっぽいこと言ってるだけですよ。 嘘は言ってないんだろうけど、すごく……なんというか、明るくてハキハキしてて……普段と全然違うでしょう?」
灼「……正直、はじめて話したとき驚いた。 いつもニコニコしながら立派なこと言ってたし……」
咲「そういうものだって思ってたからなんじゃないかな? 高校の間はお決まりの文句をいくつか用意しておけば対応できたんだろうけど……今後メディアの前で話す機会も増えるだろうし、ボロが出ちゃわないか心配だなぁ……」
玉子「照は存外不器用であるからなあ……」
灼「麻雀の方の実力はあるし、多少話すの失敗しても大丈夫だよ」
咲「そういう問題じゃないけどね……っていうかお父さんとお母さん帰ってこなかったなぁ……ちゃんと見てるのかなあ」
灼「……私たちがいたから、気を遣わせちゃったかな……?」
玉子「むぅ……まあ、会場は広いし席に戻らずとも後ろの方で立ち見とかもできなくはないのである」
『それでは、会場のファンのみなさんに一言お願いします!』
照『チームが日本一になれるように精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします!』
……いつの間にやらインタビューも佳境になっていたらしい
照さんはそつなくこなして無難に締めたようだ
咲「あ、お姉ちゃん……ようやく終わったからホッとしたみたい」
玉子「……そうなのであるか? いつもの笑顔であるぞ?」
灼「いつもの作り笑顔だね」
咲「あはは……たしかに、取材の時とかいつもあんな感じだよね……ほら、お姉ちゃんの顔見てくださいよ ちょっと気が抜けてますもん……やっぱり苦手なんだな、ああいうの……」
灼「……とてもそんな感じには見えないけど」
……あんまりすごいんで直接話してないと忘れがちだけど、照さんもやっぱり私のひとつ年上の女の子なんだよね
普段はあまり口数も多くないし私が思ってるよりも大変で負担になってるのかもしれない
そして、きれいに締まったと思ったら……モニターの中でMCのお姉さんが慌てた様子でまた口を開く……たぶん、この人も新人なんだろう。 聞くべきことを聞き忘れて焦ったのかもしれない
……別に、そのまま終わっておけばこっちにはわからないのに
『宮永選手、プロ入り一戦目で大逆転の初勝利です! 今、この喜びを一番に伝えたい人は?』
照『灼、勝ったよ。 誕生日おめでとう。 ぶいっ』
『えっ?』
照『あっ』
照『……い、いや、違う。 今のは、アレ。 アレです。 その、ほら……あ、その、咲、違う。 す、菫、助け……あ、いや、菫はいないんだった、や、やえ……うん……えっと、えーと』
照『…………』
照『ありがとうございました! さよなら!』
『え、あー、その、宮永選手でした! ありがとうございました!』
ぶいっ。 じゃねーよ
あっ。 じゃねーよ
なにやってんだあの人……ピースサインとかいらないから
完全に放送事故じゃないか。 最後なかったことにして逃げてるし
というか、名前出されちゃったんだけど
玉子「……最後の質問、完全に素だったのである」
咲「終わったと思って油断してたから……なにも考えずにそのままポロっと言っちゃったんじゃないかな……?」
灼「…………」
玉子「……世間の今までのイメージ、完全に崩壊したのである」
咲「早速ボロが出るというか、ボロボロになったね……」
灼「…………」
咲「……大丈夫? 灼ちゃん」
灼「……ちょっと、名前呼ばないで」
咲「え……」
灼「違……その、目立つから」
咲「あ、ああ、そういうこと……そうだね、珍しい名前だしね」
玉子「……とりあえず、ここでボケッとしていても仕方がないのである。 照は試合のあとなら少しぐらい会えそうだと言ってたのであるが……」
咲「……今ので反省会じゃないかなぁ」
灼「……玄たちと合流しよっか」
咲「ああ、阿知賀のみんなで来てるんだ」
灼「ん……やえさんが人数分チケットくれたから」
玉子「では、私も挨拶ぐらいはしていくのである……早く戻らないと、明日も学校があるのでな」
灼「……日帰り?」
玉子「昨日の夜にこっちに来たので一泊二日である! まあ、さすがにこの時期からサボりぐせをつけてはいかんからなあ」
灼「……お疲れさまです」
玉子「いやいや、今日は楽しかったのである! 試合も、灼や咲と会えたのも満足であるぞ!」
――――――
穏乃「久しぶり、咲! お姉さん初勝利おめでとう!」
玄「……えっと、宮永さんすごかったね! 咲ちゃん!」
咲「久しぶり! ありがとうございます!」
憧「……ほんと、すごかったわ。 信じらんない」
咲「……あはは」
怜「おいしいなぁ、灼ちゃん」
灼「……おいしいんですかね」
絹恵「謎の人物『アラタ』って話題になってるで? SNSとかでもホットワードに……」
宥「灼ちゃんあったかーい?」
泉「ホット言うてもそういうことではなくってですね……」
浩子「んー……珍しい名前だし、誕生日まで割れてるとなるとすぐに特定されるんやないか? 去年のインハイから多少プロフィール出てるわけやし……」
灼「……勘弁してほし」
照さん、気を抜きすぎ……人前で緊張するのはわかるし、私もあそこから追加でなんか聞かれるとは思わなかったし
ただ、パッとアレが出た時点で……本当に、私のためにも勝つって思ってたんだと思うとうれしかった。 初試合でもっと他にも考えることあっただろうに……
まあ、それとこれとは話は別なんだけど
絹恵「……あ、ちょっとごめんな、電話……お姉ちゃんからや!」
咲「え、お姉ちゃん?」
絹恵「あ、こっちのお姉ちゃんで……」
咲「あ、そうですよね……私に電話来たのかと思ったよ」
怜「お姉ちゃんお姉ちゃんややこしいなぁ、お姉ちゃん」
宥「ややこしいねぇ」
玄「お姉ちゃんもお姉ちゃんだからややこしいよぉ」
憧「ややこしいからあんたも黙ってなさいよ、玄」
絹ちゃんが電話を始めると、外野が何故かお姉ちゃん談義で盛り上がり始める
……そういえば、船久保さんから見ると洋榎さんは従姉妹だしお姉さんみたいなものなのかな……?
灼「…………」
浩子「……? ああ、特にそういう感じでもないですよ。 あいつアホやし。 世話焼いてやってるぐらいですわ」
灼「……ま、その方が想像つくかな」
……なんだかんだでお姉さんしてる洋榎さんも想像つくんだけどね
絹恵「灼ちゃん、はいこれ」
灼「ん?」
洋榎『おう、灼! 今日はうちの応援にわざわざ来てくれてどうもな!』
灼「……あ、はい、ども」
なんか、そういうことになってるらしい。 たしかに応援はしてたけど……まあいいか
洋榎『いやあ、堅実で華麗な打ち回しで話題をかっさらう予定だったんやけどな? 宮永が逆転とかしたせいで霞んでまうわ……中堅ってのはそういうとこは損やな。 後から出番来た方がそりゃあ印象にも残るってもんや……まあ、それでもうちの力をもってすればそのうち麻雀といえば愛宕洋榎って時代が来るんやけどな!うちの打ち筋は玄人好みなんや! 真の麻雀好きは宮永みたいなのよりうちの方が好きやねん!セーラの奴もボコってやったしある程度は満足だわ! あ、宮永と言えば自分おいしいなぁ? 全国ネットで名前まで出されて……誕生日やって? おめでとな! 今からミーティングやから特になんもできんけど浩子にでもたかっといてくれてええから……』
……相変わらずよくしゃべる人だな。 口を挟むタイミングがない
洋榎『んじゃ、そういうわけで! じゃな!』
灼「あ」
切られた
随分と一方的なコミュニケーションだったな
絹恵「お姉ちゃん、なんやって?」
灼「……なんかいろいろ言ってたよ」
絹恵「あはは、ごめんな? なんだかんだでお姉ちゃんも緊張しててん……チームは逆転されたけど結果はよかったから安心したんやろなあ」
浩子「セーラにちょっかいかけてなんとか平静を取り戻した感じでしたからね……ほい、鷺森さん」
灼「……なに?」
浩子「電話。 セーラや」
いつの間に電話なんか繋がったんだろうか……まあ、気にしても仕方がない。 代われと言うなら代わっておこう
灼「……もしもし」
セーラ『おう! 鷺森、誕生日おめでとさん! 』
灼「ありがとうございます」
セーラ『これからミーティングあんねん、たいして話もできんけどな……どやった? 区間トップや! 洋榎のやつ捲ってやれんかったのは無念やけどな』
灼「よかったですよ。 持ち味の火力、活きてたと思います」
セーラ『そやんな? 俺の火力も捨てたもんやないやろ? 大阪、俺と洋榎のどっち獲るかで散々悩んだらしいからな……神戸で活躍しまくって洋榎より俺を獲っとけばよかったって思わせたるねん。 プロ入りして目標が一個増えたわ』
……江口さんは、ちゃんとこっちと話しをする気があるみたいでよかった
セーラ『……なあ、宮永やらかしとったが大丈夫か?』
灼「……さあ、まだどうなるんだか……照さんの方はいろいろと不味そうですけど」
セーラ『そらそやな! あいつも大概やで……竜華もやらかしタイプだしいろいろ心配になってきたわ……俺も怜も、浩子も付いてやれないからなぁ』
清水谷さんも、プロ入りしている。 今週中には出番があるだろうと言われているがどうなるものやら……
セーラ『ああ、怜と言えば元気にやっとるんか? 最近直接会えてないねん……仕方ないんやけどな。 学校の方で宥姉ちゃんと一緒になってよかったわ……なんだかんだで俺も竜華もずっと一緒で離れるの初めてで不安なんや。 過保護にし過ぎな気もするんやけどな』
灼「ん……だいじょぶだと思います。 宥さんも園城寺さんと一緒になって安心したみたいで……麻雀部にもふたりで入って楽しくやってるみたいですよ」
セーラ『そうか! 鷺森の目から見ても楽しそうなら大丈夫やろな!』
……どうも、かなり信用してもらえてるらしい。 かなりうれしかったりする
セーラ『ああ、そんでな……『セーラ!』 あ、はい! すんません! 今行きます!』
灼「……今のって」
セーラ『おう、野依プロや! いや、あの人あんま喋らんから……うぉ、ちょ、テンション上がってきたわ! 声かけられてもうた! すまんな! じゃあ行ってくるわ!』
灼「お疲れさまです……」
浩子「……なんや、セーラの奴浮かれてませんでした?」
灼「……野依プロに声かけられてた」
浩子「はぁ……チームメイトなのにそんなんか……まあ、あの人相当の口下手やしそんなもんなんかなぁ」
咲「いやいや、うちのお姉ちゃんはそんなもんじゃないですよ!」
絹恵「いや、うちのお姉ちゃんかて……」
玄「おもちならうちのお姉ちゃんが一番……」
怜「うっへっへ……たしかに、お姉ちゃんは竜華に負けず劣らずええ体しとるよなぁ……」
宥「く、くろちゃー……園城寺さんも……」
浩子「ああ、あっちの話か……何事かと思ったわ」
今度は姉自慢大会になってるらしい……変態ふたりは自重しろ。 宥さん困ってるじゃないか
憧「……灼さん、携帯鳴ってるよ?」
灼「あ……ごめ、ありがと」
試合後すぐでこの辺りはまだまだ人が多い……気がつかなかった
やえ『照がやらかしたからちょっと会えなそう。 ちゃんと説教しとくから安心して帰りなさい』
……まあ、そうなっちゃうか
灼「……照さんとやえさん、会えなそうだって」
穏乃「えぇー! ……まあ、仕方ないかあ……プロともなると、今日の試合の反省会とかもみっちりやるんだろうし!」
灼「……そうだね」
そういうことにしておこう。 穏乃にとってはふたりは(直接のではないけれど)かっこよくてしっかりものの先輩らしいし、夢を壊してはいけないだろう
咲「うぅ……お姉ちゃん、久しぶりに家族でご飯食べられると思ったのに……」
……こっちはちょっとかわいそ
灼「……一緒にご飯食べいく?」
咲「うーん……そうしたいけど、今日は家族で来てるから」
灼「うん……そうだね。 それじゃあ、また今度だ」
咲「うん……遅くても、また夏には会えるから」
灼「……そだね」
また、数ヵ月後にはインハイがある……ちゃんと会えるように、頑張らないと
浩子「宮永さん、思ったよりも自信家なんやな」
咲「え、あ、そういうわけでは……」
……咲はすぐちっちゃくなるんだから……もうちょっと、自信持ってもいいと思うんだけど
――――――
咲と別れ、大阪のみんなと食事を済ませて――私の誕生日だし、洋榎さん・江口さんもデビュー戦で活躍したからって、けっこう豪華なお食事をいただいてしまった――帰りの電車に乗る
宥さんは、今日はこのまま園城寺さんのおうちにお世話になるらしい。 その方が学校に近いし……いつも玄と一緒にいるイメージがあったけど、大学に上がってまた少し意識が変わってきたようだ
とても仲のいい姉妹だけど……妹離れが始まってるのかもしれない。 玄はお姉ちゃんに友達が増えてよかった~、なんて言ってたけど、ちょっと寂しそうだ
……もうちょっと、構ってあげようかな。 結局、宥さんと一緒にいられる時間が減って寂しいのは私も……きっと、憧も穏乃も同じなんだし
ちら、と視線をやると玄と穏乃はぴったりくっついて眠ってしまっている。 はしゃぎ疲れたんだろう
灼「……憧」
憧「んー? なに?」
灼「今日、どだった?」
憧「楽しかったよー。 灼さん様々! 瑞原プロの対局生で見れなかったのは残念だけどね……菫さんの対局にも間に合わなかったし」
……夏以来、憧はなんだかんだで瑞原プロ、はやりんのファンになってしまったらしい
何度かライブも行ったようだし、会場で弘世さんとも会ったりしたらしい……いつの間にか仲良くなってたようで驚かされる
灼「ん……それに、やっぱり会えなかったしね。 残念……あ」
憧「……ふふ、また電話? 今日は人気者だね、灼さん」
灼「弘世さんだ……出てもいいかな? 電車だけど……」
憧「菫さん? いいんじゃない? この車両私たちしかいないし」
灼「……じゃ、失礼して」
菫『やあ、鷺森……誕生日おめでとう。 今、平気か?』
灼「ありがとうございます……だいじょぶです。 デビュー戦お疲れさまでした」
菫『ああ、ありがとう……今回試合に出た新人四人でマイナスなのは私だけだ……少し情けないな』
灼「そんなことな……プロでも通用してましたよ。 普通はいきなり結果出せたりしませんから……」
菫『ふっ……ありがとう。 実は、さっきまでのミーティングでもはや……瑞原プロに褒められたんだ。 もっと鍛練を積めば充分後を任せられるようになるって……』
ちょっと、いやかなりウキウキしてるのが声からわかる。 私も、ハルちゃんに褒められるとうれしかったし……弘世さんもそういう気持ちなんだろう
憧「すごいじゃないですか! はやりんに!?」
菫『ああ、憧も一緒なんだな……うれしかったよ、本当に。 ……憧れの瑞原プロが今は私のチームメイトだ。 好きなものは好きで仕方がないが……私もプロになったんだ。いつまでも1ファンの気分ではいられない……努力して、肩を並べられる雀士になれるよう頑張るよ』
灼「……そして、ゆくゆくはアイドルに?」
菫『それは当然……あ、いや! まずは一人前の雀士になるとこからだ! そりゃあ、私だって小さい頃はアイドルに憧れたりすることもあったが……いや、はやりんには憧れているけど、その……』
憧「菫さん、テンパりすぎ」
こう、つい、からかいたくなるんだよな……真面目な話をしていたのに申し訳ない
菫『あ、ああ! そういえば! 鷺森に謝りたかったんだ! 照が迷惑をかけただろう?』
相も変わらず話題転換の下手な人だ……本当にすまなそうに言うものだから、適当に流すつもりもないんだけど
灼「ん……それはそうですけど……別に弘世さんが謝ることではないですから……」
菫『いや、しかし私の管理が……』
憧「管理もなにも、もう違うチームじゃないですか」
菫『……言われてみればその通りだな。 照も私の名前を出していたし、なんだか世話を焼いてやらんといけない気がして……』
灼「……やえさんがなんとかしてくれると思います」
菫『小走が心配だよ……あいつの世話は体力がいるんだ。 話もいまいち聞かないし……』
憧「小走先輩は世話好きですから、悪態つきながらなんだかんだで面倒見ますよ」
菫『ふふ……そうだな。 少し、寂しい気もするが……』
菫『……それじゃあ、遅くにすまなかったな。 今日の牌譜の確認もしたいし、そろそろ失礼するよ』
灼「ん……あまり根詰めないでくださいね。 休むのも仕事のうちです」
憧「また連絡くださいね! 応援してますから!」
菫『ああ、ありがとう……鷺森、憧。 おやすみ』
灼「おやすみなさい……」
憧「……菫さん、大変そうだね」
灼「でも、楽しそうだった」
憧「うん……憧れの人と一緒なんだもん。 灼さんだってわかるでしょ?」
灼「ん……弘世さん、モチベも高そうだし……これからまだまだ伸びるんじゃないかな。 目の前に目標にしてる人がいるんだもん。 いくらでも頑張れるよ……頑張りすぎが心配だけど」
憧「ほんとそれよね……まあ、体調管理の大切さもちゃんとわかってる人だから平気だと思うけど……菫さん、ちょっと……夢中になる性質だしなぁ」
はやりんとかね。 ……まあそれこそ、そのはやりんが側に付いてるわけだし、危なそうならしっかり止めてくれるだろう
憧「あ、菫さんから連絡来たわけだし……そろそろ小走先輩や照さんも手が空くんじゃない?」
灼「……連絡してみても、いいかな?」
憧「してあげたら? 照さんなんてそれこそやらかしちゃったし……あっちから連絡とりづらいかもしれないわよ?」
灼「ふむ……」
そう言われてみるとそうかもしれない。 夏ごろとかは咲とのことも……けっこう、そういうの気にする人なんだよね
……普段からもっといろいろ気にするようにすれば失敗も減ると思うんだけど
灼「……じゃ、電話してみる」
憧「うん、それがいいわよ」
灼「ところで……さっきから気になってたんだけど」
憧「……なに?」
灼「さっきからくっつきすぎじゃ……」
憧「……これくらいの距離じゃないと電話聞こえないし」
灼「…………」
憧「……別にいいでしょ!? だってしずと玄引っ付いて寝ちゃったし! 暇だし! さびしいじゃん!」
灼「怒らないでよ……別に、全然いいから」
憧「むー……それなら最初から言わないでよねー」
憧は、付き合いが長くなるにつれてちょこちょこ甘えてくるようになった。 他の人の目がない時だけだけど
普段はしっかりちゃっかり者の憧だけど、こういう時はやっぱり下っ子なんだなと思う
穏乃は、けっこう早い段階で懐いてくれたし、礼儀正しくて……無邪気にこっちを慕ってくれてるのもわかるから思う存分かわいがれる後輩なんだけど……
逆に憧は、慣れてからは友だちのように気安く会話するしあんまり後輩って感じはしない。 むしろ、普段に反してたまにこうして甘えてくるからこそ年の近い妹みたいに感じる
灼「…………」
憧「……なに? なんで撫でるの?」
灼「……別に、かわいいから」
憧「……んへへ。 なぁに言ってんの、今さら」
灼「かわいいかわいい」
憧「知ってますー」
灼「……それじゃ、改めて」
憧「おー……いきますかー」
照『……もしもし』
灼「照さん、お疲れさま」
照『……ごめん、灼……ちょっと、油断しちゃって……』
灼「ん……だいじょぶだから、気にしないで」
照『……すっごく怒られた。 チームの人にも、やえにも……三尋木プロは面白いからいいよって言ってたけど……』
やえ『いいわけないでしょ! このバカ! あんた、プロとしての自覚が足りないのよ!』
照『……ごめんなさい』
やえ『だいたい、三尋木プロは三尋木プロでアレなのよ! ……もう、結局上も活躍してたしいいよーみたいな感じで! 強けりゃなんでもいいわけ!? そんなんだから風紀が乱れんのよ!』
憧「……小走先輩、いきなり上層部批判ですか?」
やえ『糺すべきところは糺さないとダメに決まってんでしょ!』
灼「それは、まあ……仰る通りで」
やえ『はぁ……まったく……弘世はよくこんなのと三年間もやれたわね……』
照『あ……ごめん、やえ……見捨てないで……』
やえ『見捨てるわけないでしょ、友だちなんだから』
照『やえ……!』
やえ『……あ、その……っ! か、勘違いしないでよ!? 別に、同じチームになっちゃったから、仕方なくだかんねっ!?』
照『……ふふ、わかった』
やえ『なに笑ってんのよ!?』
憧「……相変わらずね」
灼「ほんと……安心した」
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