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    元スレ男「なんだこれ?」卵「......」

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    201 = 190 :

     上機嫌で魚を陸に上げて袋に詰め込んでいく男、
    ふと心配になってスタンブレードを見てみるも、とりあえずは
    壊れている様子は無いようだ。

     ただ、今ので随分電力を消費してしまったが。
    一応…友が荷物に入れてくれたのか予備バッテリーが二つ程あるので、
    一先ずは気にしないでおく。

     ちなみに、電気漁は違法らしいが、大事の前の小事である。
    友に至っては既に、銃刀法すら違反していると思うし。

     ちなみに、16匹中の4匹が手足の生えた謎の生物だったりする。
    大きさは大体10センチから15センチ程度、
    口の中にピラニアのような牙がびっしりと生えそろっており、明らかに
    魔物だ。

    「これ…食えるのかな
      サハギン…の子供??」

     不安にはなるが、とりあえず魚類は魚類?だし、死んではいるので
    持ち帰る事にした。
     まぁ、シンディかバジ子辺りが食べるだろう…と思う。

    202 = 190 :

    『食べないでぇぇ、食べないでくださぁぁぁい
      私…美味しくないですよぅううう』

    「クケケケケケェェェェェ!!」

     荷物を手早くまとめて洞窟に帰ろうとする男に、突然素っ頓狂な女の
    悲鳴が聞こえる。

     草木を掻き分けて走る音…、その後ろからも聞こえる声は明らかに人間ではなく
    魔物の声だった。

     逃げる方の女の声は英語なので、半分は意味が分からなかったが
    前半は食べないでくれと言っているようだった。

    「こっちだ!来い!!」

     助けるか否か、一瞬迷ったが見過ごす訳にも行かないので
    男は声を上げる。

     ややあって男の声に気が付いたらしい声の主は、草木を掻き分けながら
    男の方に向かってくる。

    『助けてぇぇ…、助けてくださぁあぃ!』

     ややあって草叢から出てきた女は、いつぞやのスティーブン氏と同じような
    軍の服を来た白人の女の子だった。

     歳の頃は男と同じぐらいの高校生ぐらいの年齢、
    ジャケットに記された文字は、これまたいつぞやの
    スティーブン氏とおなじく「UNITED STATES ARMY」の文字が。

    203 = 190 :

    「……って、アンタ軍人かい!」

     思わず突っ込みを入れる、軍人が素人に助けを求めないで欲しい、
    首を突っ込んだのは自分でもあるが。

     ともあれ、のんびりしている余裕はないようで
    軍人女の後を追って、一体のゴブリンが茂みから飛び出してくる。

     手には大鉈を持った赤い一際大きな体躯をした片目のゴブリン、
    何度か遭遇した因縁のある、あのボスゴブリンのようだ。

    「よう、また会ったな」

    ボスゴブリン「クケケケケケェェェェェ!!」

     男の姿を視認するなり、ボスゴブリンは驚いた表情を一瞬浮かべるも
    直後に憎悪でその表情が歪められる。

     幸いにしてこのボスゴブリン以外のゴブリンは見当たらないようだ。

    「あれ?おめぇ…仲間いねぇみてぇだな
      もしかして、見捨てられたんか?」

    ボスゴブリン「ガギャギャギャギャアアアア!!!」

     言葉が通じるのか通じないのか、しかし男に馬鹿にされている
    空気は伝わったのか、ゴブリンは悔しそうに地団太を踏む。

    軍人『なんだか知らないけど
        更に激おこプンプン丸ですぅぅぅ!』

     そんなボスゴブリンの迫力に圧されたのか、軍人女は男の
    背中に隠れる、英語だったから意味はさっぱり分からないが。

    204 = 190 :

    ----------------------------------------------------------------------
    とりあえず、この辺で
    ストックはあるにはあるけども、読み返すので。
    ----------------------------------------------------------------------

    「…アンタも平然と民間人を盾にするんな。」

     ため息をつきつつ、男は手にしていた釣竿を横に振るう
    重りの付いた糸は風切音を立てて宙を舞い、ゴブリンの頭に当たるかとおもったが

     さすがにゴブリンはそんなものに当たる程間抜けではないようで身をかわす。

    ボスゴブリン「ギャ!?」

     しかし重りは躱せたようだが、その直後の毛バリが引っかかったようで
    釣竿に重い手応えが返って来る。

    「…っしゃー!!釣ったどー!!」

    ボスゴブリン「ギャギギギギギギギギギ!?」

     返しのついた釣り針はボスゴブリンの頬に深く食い込み
    男が泉の方に引っ張っていくと、ボスゴブリンは大きな水音を立てて
    岩場から水面に転落する。

     すげぇ、痛そうだが…この程度でどうにかなる相手だとも思っていない、
    直ぐに水面から上がって来るだろう。

    「…ほら、今の内にとっとと逃げるぞ
      分かるか?エスケープだ」

    軍人『は…はいい!』

     軍人女の手を引いて荷物を捨てて逃げようとするが…、
    ボスゴブリンはいつまでたっても陸に上がってこない。 👀

    205 :

    「もしかして…泳げないのか?」

     疑問を口に出すが泳げない訳ではないらしい、ゴブリンは手足をばたつかせながら
    悲鳴を上げつつ水面から上がってくる。

     男は釣竿を引いてもう一度水に落としてやろうと思ったが…。

    ボスゴブリン「ギャギャァァアアアアァァ!!!」

     ボスゴブリンは悲鳴を上げつつ、手にしていた鉈を取り落として
    釣り針を引っ付けたまま、森の中へと消えていく。

     ちなみに…ゴブリンの尻と後ろ足に、例のサハギンの子供が噛みついていたのを
    男は見逃さなかった。

    「あー…潜って捕ろうとしなくてよかったぁ」

     ボスゴブリンの取り落としていった大鉈を拾い上げつつ、しみじみと思う。
    潜って魚を捕まえようとしていたら、あのボスゴブリンと同じく魚(サハギン?)に
    尻を齧られていただろう。

    軍人『あ…あのぅ…、助かりました有難うございます
        私、あのまま食べられちゃうかとおもいましたぁぁぁぁ』

    206 = 205 :

    「…………………。」

    軍人『で、ですね…
        ぶしつけな質問なんですけど、貴方どなたでしょうか?
        ここで何されている方なんですか?』

    「……………………………………。」

    軍人『……………………………………。』

    「……………………………………。」

    軍人『………………………えっと………。』

    「……………………………………。」

    軍人『……もしかして、英語わかりません?』

     上目使いに見て来る軍人女がちょっと可愛い、
    可愛いのだが…それよりも先に言ってやりたい事がある。

    207 = 205 :

    「やっかましい、何を言っているかさっぱりわからんっちゅーんじゃ!」

    軍人『……ひぃ!!』

     突然爆発した男の言葉に軍人女がたじろぐ、
    イチ高校生の言葉に軍人が圧されないで欲しい気もしないでもないが。
     男はさらに言葉を続ける。

    「いいか!外人!よく聞け!外人
      ここは日本だ!日本!
      ジャポンで!ジャパンだ!」

    軍人『…は、はい。』

    「いっつもいっつも『英語ぐらい普通、どこの世界でも通用しますよねー』と言わんばかりに
      平然と英語で話してきやがって!」

    軍人『ひぃ…すみません、すみません
       英語使ってすみません。』

     軍人女がさらになにか言っているようだが、
    男には一切言葉は通用しなかった。

     さすがに、ソーリーとか言っているのは一応分かるには分かるのだが。

    208 = 205 :

    ----------------------------------------------------------------------
    とりあえず、ストックが無くなったので、この辺で
    ----------------------------------------------------------------------

    「その癖こっちが外国に行って母国語を使ったら
      『英語も使えないなら国から出るな』っぽいような事言いやがる!
      そっちこそ、少しは日本語覚える努力してから日本に来いっちゅーんじゃ!」

    軍人「喋れますぅ!日本語喋れますから、落ち着いてください」

    「普通に日本語喋れてんじゃねーか!!!おー??」

    軍人「ひぃぃぃぃぃ…すみません、すみません
       日本語喋れてすみません。」

     どうやら素晴らしい国際的コミュニケーション能力で、
    国境を越えた信頼関係を築き上げる事が出来たようだ、

     彼女が怯えた小動物のような瞳で男を見ているが、きっと気のせいだろう。

    軍人「で、あのあの…
       助けてもらってありがとうございます」

     どうでも良いけど、軍服と台詞のギャップが凄い。 👀

    210 :

    ----------------------------------------------------------------------
    >>210
    ども、ペースダウンですんません。
    ----------------------------------------------------------------------

     いかにも軍人っぽい森林を意識した色の迷彩服を着用しており、
    胸と背中が分厚く見えるのは防弾チョッキでも着ているからだろうか

     型式は分からないが背中にアサルトライフルをぶら下げて、腰には
    馬鹿デカイ拳銃を2丁着用している。

     こちらはゲームに出てくる有名な拳銃なので名前は知っている。
    S&W M500ともう一つはデザートイーグルだ。

     しかし…デザートイーグルはともかくM500なんて趣味な武器
    現場に持ち歩くだろうか。

     歳の頃は男や幼馴染と同じぐらい、大体高校生程度と言った所だろうか
    日本人は童顔だと言うし、外国人の見た目は外見のそれ以上だと言うから
    年下なのかもしれないが、よくわからない。

    軍人「あ…あのあの、今度は日本語ですよね?
        言葉…ちゃんと通じていますよね?」

     不安気に瞳を潤ませながら覗き見る軍服少女を見つつ
    さらに男は考える。

     さて…どうしたものか……。 👀

    211 = 210 :

     暫く思慮した挙句に、男の導き出した結論は。
    軍服少女の頭の撫でつつ男は優しい声を掛けて上げる事にした。

    「怪我は無かったか?お嬢ちゃん
      さっきは怒鳴ったりして大人げなかったな」

    軍人「え?」

     豹変した男の様子に今度は軍服女…いや軍服少女が絶句する
    心なしかプライドを傷つけられたような、そんな表情をしている。

    「で、君は一人なのかな?
      お友達とかどこかに隠れているのかな?」

    軍人「あ…あのあの…ちょっと待ってください
        さっきから今までの間に、貴方の中でどういう結論になったのか
        教えて欲しいんですけど」

    「ん?友達とサバイバルゲームをしに遊びに来ていて
      化け物騒動に巻き込まれた、可哀想な軍服少女A」

    212 = 210 :

    「怖かったよなー、友達があんな目にあって
      心配しなくては良いなんて言えないけど、とりあえずはもう大丈夫だからなー」

    軍人「ちょっと待ってください!頭ぽんぽんしないで下さい!
        なんか妹を見る兄のような生暖かい目で見ないでください!」

     軍服少女は服の下から何やら認識票のようなものを取り出し、憤慨しつつ男に突きだす。

    軍人「ほら!ここ見てください!
        この階級って書いてある所」

    「うん、英語読めない」

    軍人「『少佐』って書いてあるんですっ!!」

    「少佐かー、ガンダムで言うと
      マリュー・ラミアス艦長とかだったかな、艦長だと結構偉いなー」

    軍人「…………なんか例えが少し引っかかりますけど」

     男の台詞にやや首を傾げるが、少佐と言う階級がどれ程のものなのか
    男が理解したと思ってくれたらしい。

    軍人「そうなんです、こう見えて私は『少佐』さんなんです
        会社で言うと部長さんぐらいなんです」

     誇らしげに胸を張る軍人女。

    213 = 210 :

    「んじゃ、俺はブライト・ノア大佐で───」

    軍人「わかっていませんっ!」

     軍人女の表情がコロコロ変わる、
    うん…和む。

    「わかっているって、少佐殿」

    軍人『…これだから、平和ボケした日本人って奴は』

     何やら英語でぶつぶつ言っていたようだが
    男には分からない

    「で、少佐ちゃんは
      なんだってゴブリンに追われていたんだ?」

    軍人「えっとー……、その…
      草叢でちょっと…油断していた時に不意を突かれまして」

     下をうつむきつつ人差し指をつんつんさせながら
    ブツブツと言う軍人女。

    214 = 210 :

    「……つまり、草叢でウンコしようとしていた時に
      ゴブリンに見つかったんだな」

    軍人「せっかく人が言葉を濁そうとしたのに
       ダイレクトに言わないでくださいっ!」

    「よくズボンを上げる暇があったもんだなー
      さすがに、ケツ出している時に頭を割られて死にたくはないよなー」

    軍人「デリカシーってものは無いんですか!?」

    「なんだと!?俺は空気の読めるデリカシーがある男って
      ご近所で評判なんだぞ?」

     クソ田舎だからご近所と言える程家が近いのは幼馴染の家ぐらいしかないが
    友の家は結構距離あるし。

    軍人「もういいです、それよりも貴方
        こんな所で何をしているんですか?」

    「………何ってなぁ…」

    215 = 210 :

     軍人女の問いに男は顎に手を当てて少々思慮する、
    川のせせらぎと心地よい風が流れる事数秒。

    「…ダチとキャンプに来たら、化け物に襲われて散り散りになって
      どうやって合流しようとしたものか、途方に暮れている真っ最中?」

    軍人「何で疑問形なんですか」

    「ちなみに、俺は普通の高校生だから、アンタの期待している回答は
      用意できないからな
      民間人な、民間人。」

    軍人「……………民間人が、こんな所に?」

    「君だって民間人じゃないか
      サバゲーしている間にお友達と逸れたんだろ?」

    軍人「違いますっ!」

    216 = 210 :

     まぁ、冗談はさておき…。
    少佐はともかく、本物の軍人であるのは間違いない。

     そもそも、スティーブン氏の持っていたアサルトライフルは
    ちゃんと実弾が装填された本物だった訳で。

    「けどアメリカ軍がなんだってこんな日本の片田舎に
      やっぱ、この化け物絡みって訳か?」

    軍人「そ…それは…
      …………ですね…えーと。」

     男が問いただすと軍人女は答えに詰まるのかもごもごと口ごもる。

    「まぁ、言えないだろうな
      守秘義務ってのは、やっぱりあるだろうしなぁ」

    軍人「は…はい
      そうなんですよ、これバラすと減俸されちゃうんですよ」

    217 = 210 :

    ----------------------------------------------------------------------
    話が全然進んでいない気がする、
    とりあえず、この辺で。
    ----------------------------------------------------------------------

     いや…任務内容を民間人にリークして減俸で済むのか?
    詳しくは知らないけど、軍法会議モノだと思うのだが。

    「そうか、んじゃ任務頑張ってくれ
      俺は帰るから」

    軍人「わわわわわわ…待ってください
      待ってくださいよぅ…、話します…話しますからぁ
      一人は嫌なんですぅ、食料が尽きて蛙さんとか焼いて食べたり
      雨の日に木の洞の中で寂しさを紛らわす為に一人歌いながら夜を過ごすのは嫌なんですぅ」

     軍人女を置いて本気で洞窟に戻ろうとする男に
    軍人女は涙目で必死に引き止める。

    「アメリカ軍って…こんなボンクレを少佐にするほど
      人材不足なのか?」

    軍人「うぅ…ボンクレは酷いです
      自覚していますけど」

     自覚しているんかい。

    軍人「でもでも…あの
      ちゃんと試験パスしたんですよ!?しかも主席で」

    「あー…居るよなぁ…
      勉強できる馬鹿って。」 👀

    218 :

    いかん、話が支離滅裂になって来た
    UPしようと思ったけど読み返し。

    219 :

    ----------------------------------------------------------------------
     矛盾が出たら、ごめんねー
    もう出ているかもしれんけど、ごめんねー。
    ----------------------------------------------------------------------

    軍人「ほえー…蛹みたいですね」

    「蛹?
      病気じゃなくて?」

     泉から洞窟に戻り、白くなって動かなくなったシンディを
    見るなり少佐殿が告げた言葉はそれだった。

    軍人「もしくは、ドラゴン?だと
        爬虫類だから脱皮って事でしょうかね、この子死んではいないですよ?」

    「それで、どれぐらいこのままの状態が続くんだ?」

    軍人「それはなんとも、なんせ未知の生物ですからねー
        一週間かー、一カ月かー、体の大きさからして一日って事はないでしょうけども」

     ボンクレとは言えプロの視点(?)から
    そう断定してくれれば、一先ずは安心と言った所だろうか。

     男は湧水を沸かしてインスタントのコーヒーをカップに淹れる、
    携帯用のコンロの燃料とコーヒーは貴重品ではあるが。

    「随分詳しいな」

    軍人「それはまぁ、そういう部署でしたからー
        鉄砲撃つだけがウチの仕事じゃないんですよ
        ………おほー!!文明開化の香りがするぅー」

     コーヒーの入ったカップを渡してやると
    少佐殿は嬉々としてコーヒーカップに口を付ける。 👀

    220 = 219 :

    軍人「にしても、素敵なアジトですね
        水もありますしー、テントもありますしー」

    「アジトって、お前」

     確かに、隠れ家には違いないが。

    「んで?
      そろそろ本題に入らせてもらおうか」

    軍人「ここで何が起きているか、ですか?
      聞かない方が貴方の為だと思うんですけどね」

    「ここまで関わって置いて
      今更な気もするんだが」

     今更だが普通の生活に戻れるのだろうか不安にはなる、
    戻りたいとは思うし、戻れないにせよ妹や友人達だけでも
    元の生活に戻れたら、とは思う。

    軍人「それもそうですけどね、まぁ平たく言うと
      生物の研究と言った所でしょうかね?」

    「研究?この山奥でか?」

    軍人「山奥の方が都合が良いんですよ、
        秘密裏に研究する必要がありますからね。」

     そこで言葉を切って、軍人女はコーヒーを一口すする。

    「秘密裏に研究って、あの化け物達の事か
      やっぱり」

    軍人「どちらかと言えば、あの化け物を生み出す親玉の事ですね
      あの魔物は魔王って存在が生み出しているみたいなんです。」

    「……………魔王様ねぇ」

     訝しげな表情で男が口を挟むが、軍人女は気にした感じでもなく
    そのまま言葉を続ける。

    221 = 219 :

     ──ただ、軍人女の話をそのまま話すと、非常に長くなるので、要約すると──。

     1.異世界には昔から魔王と言う驚異が存在するらしい。

     2.地球はその異世界人の古代人達が、移住先として用意したシェルターのようなもので
       用意したものらしい。

     3.しかし、そこに移住する事は魔法を捨てる事になるため
       魔法文明を捨てられなかった異世界人は異世界に留まり、
       一部の人間がこの地球に移り住んだらしい。

     4.やがて、魔王は一度封印されて平和が訪れ、
       そして長らく地球世界の事は忘れ去られてしまったとか何とか。

     5.長い時を経て、魔王が再び復活…
       すっかり平和ボケした異世界人が魔王に滅ぼされるのは時間の問題だったらしい。

     6.異世界人は魔王を相手にするより、魔法は扱えなくて不便だが
       複製世界の地球に移住した方が楽だと思ったらしい。

     7.しかし、万一の移住先として用意されたこの地球は
       魔法が使えないにも関わらず、魔法技術以上の科学技術が発達していたらしい。

     9.地球に移住する訳にも行かず、寧ろ地球から技術供与を受けて
       異世界の魔王の討伐に成功した………らしい。

    222 = 219 :

    「与太話も良い所だけど、
      それなら解決しているって事じゃねーか
      魔王様とやらや倒したんだろ?」

    軍人「それだけならめでたし、めでたしだったんですけどね
        寧ろその後が問題だったみたいなんですぅ」

     ──再び話が長くなるので、要約すると──。

     1.現実世界から異世界へと向かった勇者(暫定的な呼び名)が科学技術と魔法技術を駆使して
       魔王を封印し一先ずの平和が訪れた。

     2.現実世界の勇者は魔王討伐の報酬として、魔王の死体を
       研究材料として持ち帰って来た。

     3.すると、範囲は限定的ではあるもののこの世界で魔法を使えるようになり
       魔王の死体から魔物を作り出す研究も進み、これまた限定的ではあるもののコントロールも可能となった。

        つまるところ、自由に生物を進化・変化させる魔王の能力は魔法を扱える画期的な発見どころか
       医療………果ては不老長寿の研究にすらつながる可能性があったらしい。

     4.新たな技術…魔法技術の研究が進めば、文明は大きく変わるが
       あまりに画期的すぎる研究となったため、現在の科学文明に大きく影響を及ばさないよう
       秘密裏に研究がつづけられた。

     5.しかし、完全にコントロールされていると思いきや
       事故が発生し、魔物達が暴走を始めた。
       管理施設のゲートを破壊し逃走、山に魔物が散るも…魔法が使える効果範囲。
       つまりは、魔王の亡骸からは大きく離れることは無かったらしい。

    223 = 219 :

    「つまりは、シリアルナンバーが記された魔物ってのは
      その『施設』から脱走した魔物って事か?」

    軍人「そう…なりますね
       脱出している魔物達が勝手な増殖・多様化をしている例もあるみたいですが
       基本的にはそうみたいです」

    「で?お宅ら軍人は
      その研究を奪い取るのが目的って訳か?」

    軍人「奪い取る…と言うよりは、私達は
       情報収集のスパイみたいな感じだったんですけどね。」

     少佐って、スパイ活動もするのか?良くわからんけども
    ……ん?

     ふと、男は軍人女の言った内容を脳内で咀嚼する。

    「つまりは、死体魔王の影響下にしか魔物が居ないって事だよな」

    軍人「そういう事になりますー。」

    「魔物が出るって事は、ここは魔王の影響下にある範囲内で
      俺は魔法を使えるって事なのか?」

     男の台詞に軍人女は腰の拳銃を抜いて、弾倉を外し
    装填されている弾丸を取り出す。

     つまりは、弾丸が装填されていないただのお飾り拳銃だ。

    軍人「これ、撃てますか?」

    「撃てるも何も、今弾丸を取り出したばかりじゃねーか」

    224 = 219 :

     手渡された拳銃を男が手に取ると、ずっしりとした重みが帰って来る
    大型拳銃な事もあって随分と重い。

    軍人「撃ってみて下さ──────
        ちょっと、弾丸が装填されていなくてもこっちには向けないでください!
        あと、引き金に指をかけないで、指は伸ばしておくんです
        これだから平和ボケした素人は」

    「しゃーねーだろうが、銃なんて持った事もねーんだから」

     言われるままに手にした銃を洞窟の外に向けて引き金を引くが
    当然、何も起きなかった。

     弾丸が抜かれているから当然だ。

     男はそのまま拳銃を軍人女に返すと、拳銃を受け取った軍人女も同様に
    洞窟の外に拳銃を向ける。

     引き金を引くと…爆音が炸裂し、洞窟内に銃声が反響する。

     テレビドラマとかで聞く花火が炸裂したような弾ける事ではなく、
    雷のような爆音、さらに洞窟の中という音が響きやすい中で炸裂したから
    溜まった物ではない。

    軍人「────────────。」

    「────────────。」

     軍人女もこの結果は予想していなかったらしく、頭がくらくらしているらしい。
    ややあって、耳鳴りが収まり。

    軍人「いやー、
        洞窟の中って、凄い音が反響するんですね。」

    「アホか!鼓膜が破れると思ったわ!」

     とりあえず、ツッコミを入れる………がそれよりも。

    225 = 219 :

    「今のが『魔法』って事か?」

    軍人「まぁ…そういう事になります」

    「便利っちゃー、便利なんかね
      銃弾の数を心配せずに無限に撃てる訳だし」

    軍人「無限でもないですし、リボルバーとかじゃないと銃が壊れかけますし
      それに集中しながら撃たないといけないんで、隙が大きいんです
      ライフルとかなら相性が良いんでしょうけど」

    「魔法ってのはもっと長い念仏を唱えて発動させるもんだと思ったけどなー
      うんたらかんたらメラゾーマ!!みたいな感じで」

    軍人「そう言うのもありますよ、呪文をちゃんと勉強すれば
       そっちの方が上手く発動できるらしいです
       つか、いきなり火炎系の最強呪文ですか」

    「だよな!?
      イオナズンとかメラゾーマとかだよな!?
      最強は」

    軍人「全くです、何なんですか最近は
       メラガイアーとかイオグランデとか
       バギムーチョなんて意味が分かりません、カラムーチョですか!」

     意気投合した所でコーヒーカップを合わせて乾杯する、
    ドラクエは海外では人気がイマイチとか聞いた事があるが、結構話が通じる子らしい。

    226 = 219 :

    ----------------------------------------------------------------------
     ひとまず、8投げ
    後のストックはもう一度読み返し。

    続ければ続けるほど難しくなるんね
    ----------------------------------------------------------------------

     でも話がそれ掛けたので、それは置いて置くとして。

    「どっちにせよ、俺にゃ魔法とやらは使えないって訳か」

    軍人「そんな事ないですよ?秘密はコレです」

     袖をまくりあげて軍人女は銀のブレスレットを見せる、
    あまり趣味が良いとおも思えない銀のブレスレットに、何かを表示するディスプレイが付いて
    良くわからない宝石のような、ガラスのようなものも付いている。

    軍人「『魔導器』って呼ばれているものでして
        これがあると、魔王の影響下だと魔法が使えるみたいです」

    「くれ」

    軍人「ダメですっ!これ一つしか無いですし
        私の生命線なんですから」

     腕を隠して男と距離を取る軍人女、
    冗談で言ってみただけだが、そんな過剰反応しなくても。

    「傷を治したり、死人とかも生き返るのか?」

    軍人「修練を積めば、傷は治せるんでしょうけど
        私には無理ですねー」

     しかしまぁ、大凡の事情は良くわかったけど、
    ここまで民間人に話ても良い話なんかねー。

     一通りの事情を聞いた所で晩飯(例の魚を丸焼きにしてみた)にして
    これからどうするかは明日改めて話し合う事にして、今日はもう休む事にした。

     随分長い事話してくれていたから、平気だと思っていたが軍人女は随分衰弱しているようで
    テントに入るなり、寝息が聞こえてくる。 👀

    227 :

    乙です
    いつも楽しみにしてます

    228 :

    ----------------------------------------------------------------------------------------
    >>227
    ありがとう、でも素人丸出しでごめんよぅ。
    ----------------------------------------------------------------------------------------

     とりえず男が見張りに立つ事にして、昨日は余裕が無かったものの
    今日は魚を焼いたままその火を焚火にしていた。

     これでもう何度目の夜を過ごす事になったのだろうか、
    いい加減この状況にも慣れて来たし、おかげで筋肉痛もほぼ回復した。

     が…妹や友と別れて何度目の夜だろうか、
    昼に撃ってみた信号弾の反応は無かった。

     シンディの足に括りつけられた地図には向かう先が記されてはいたが、
    生存確率は絶望的なのかもしれない。
     
     最大限にポジティブに考えるならば
    友人達は魔物を研究している『施設』に向かった訳だから、そこでその『施設』の人達に
    保護されているかもしれない。

    「コンタクトしてみるのが、妥当か?」

     少なくとも、それで友人達が無事かどうかは判明するだろう
    『施設』の連中が知らないと言えば、考えたくは無いけど無事では居ないだろう。

     だが『施設』のスパイでそこから逃げ出してきたっぽい、軍人女は捕まるかもしれない
    というか、自分も捕まって口封じで殺される可能性も高い。

    「手詰まりか?」 👀

    229 = 228 :

     いや…むしろ。

    「『施設』の連中は俺達に気が付いている上で泳がせている。」

     そう…考えるのが妥当な気がする。

     幾らなんでも、信号弾には気が付くだろう
    施設から逃げ出した魔物達は恐らく24時間監視されているはず。

    「─────────いや、
      それ以前に俺達が山に入り込んだ時点で、『施設』は気が付いているんじゃないか?」

     仮定に仮定を重ねた推論だが、軍人女の与太話を信じるならば
    国家レベルどころか世界レベルでの重要施設だ、なんせ科学技術に相当する魔法技術の
    発明・研究だ。

    「キャンプにノコノコやって来た、たった4人の民間人の学生なんぞ、
      立ち入り禁止とか言って追い返すか、知られたら口封じに殺すのが普通な気がする。」

    軍人「随分簡単に口封じとか、殺すとか言うんですねー」

    「お?」

     洞窟の中から聞こえた声に振り向くと、男の上着を羽織った軍人女が立っていた、
    さっきまで疲れ切って寝ていると思ったのだが。

    「悪い、起こしちまったか?」

    軍人「いえいえ、お気遣いなくー
      民間人に見張りをさせて、プロのお姉さんが寝ている訳にはいきませんからー」

     軍人女の上から下までをじっくりと観察し、ため息を吐く。
    どうみてもコスプレの軍服を着た、小学生か良い所で中学生の姿にしか見えない。

    230 = 228 :

    「プロのお姉さんねぇ」

     男が半眼のまま呻くと、割とショックな表情をする軍人女。

    軍人「あ、なんですかその目は
       こうみえてエリートさんなんですよー?出世街道まっしぐらなんですよ?
       この年で少佐って凄いんですよー」

     どうやらそこそこコンプレックスらしい。

    「うん…なんか凄いかどうかもよく分からないけど
      今時点だと肩書きなんて、多分クソの訳にも立たないからな」

     片付けてあった折りたたみ椅子を取り出し、焚火の前に出すと
    軍人女はサンクスと言いつつ男に並んで座る。

    軍人「実際やると思うんですよね、死人に口無しですからー
       でもそれをやらない理由、いえ…逆に言えば
       それをやれない理由があると思うんです」

    「やれない理由」

    軍人「おそらく、貴方達にだけある何か
        心当たり無いですかねー?」

     軍人女の言葉に男は更に深く思慮する、
    迷い込んだ人を口封じして機密を守る、俺達を殺せない理由。

    (いや、そもそも。)

     迷い込んだ人は脱出が目的だったり、ハイキングが目的だったり
    山菜取りが目的だったり、はたまた狩猟が目的だったり、
    まぁ大体そんな所が動機だったりするだろう。

    231 = 228 :

     では、自分達がここに来る動機は何だったか。

     ハイキングが目的の半分だった、しかしそれは恐らく他の連中と同じ事、
    それだけなら追い返されたり、口封じに殺されたりしただろう

     ────────もう半分の目的は何だったか?
    シンディを親に返す、もしくはこの森に返すののが当初の目的だった。

    (シンディが目的だった?いや違う)

     脳内で出した結論を男は即座に脳内で否定する、
    それだけなら、男達を拘束してシンディ…卵から孵った竜を奪い取るなり
    何なりのアクションがあっただろう。

     『施設』の連中が静観する理由、現状維持で静観しなければいけない理由。

     あと一つのピースを探して考え込む男。

     しかし、そんな男の思考を阻害するかのように、突如大地が揺れ
    体が揺さぶられた。

    232 = 228 :

    軍人「ひゃぁああああぁぁぁぁぁぁ!?」

    「うぉおおおぉおおぉおおぉ!?」

     重低音の地響きと世界を揺るがすかのような大地の震動、
    視界が上下に激しく揺れ、洞窟の脇にある崖からパラパラと崖下へと
    石が落ちてくる。

    軍人「…じ…じじじじ…地震ですか!?」

    「ここここ…こいつは、デカイぞ!?」

    軍人「…は…早く、洞窟へ」

    「馬鹿野郎!!」

     地震に慣れていないのか軍人女は慌てて洞窟の中へと逃げ出そうとするが、
    男はその軍人女の手を取って手繰り寄せ、抱き寄せて頭を守る姿勢を取る。

     岩場に囲まれた頑丈そうな洞窟だから一見安全そうにも見えなくもないが、
    万一に地震で落盤してしまったら確実にアウトだ。

     外は外で落石の危険もあるが、焚火をしている洞窟前の広場は若干広くなっている
    洞窟の中に戻るよりはまだ安全そうな気がする…と思う。

     ややあって地震が収まると、若干高台になっている洞窟入り口から見下ろせる
    眼下の森林の一部に、大きく引き裂かれた闇の谷がぽっかりと口を開けていた。

     まるで、日本を引き延ばそうとしたら千切れましたと言わんばかりの深い闇の谷
    しかし、その深いと思われる谷の底からは溶岩や火山ガスが噴き出す訳でもなく、
    奥底まで闇の口が広がっているだけに見えた。

    233 = 228 :

     森の中に谷が形成されると、激しい揺れが収まる
    考えるまでもなく、あの谷を形成する為に激しい地震が起こっていたのだろう。

    軍人「何々!?何ですか!アレは」

    「わかんね、ありゃぁ一体?」

     疑問を口にしようとした男に答えるかのように、いくつもの魔物や
    人影がその谷から飛び出してくる。

     谷底の奥からドラゴンに跨った甲冑の騎士達、それに続くは
    背中に翼を生やしたローブを纏って杖を握った魔法使い風の人、
    竜が持った巨大なバスケットのような籠から飛び出したのは
    自らの身長より大きい斧を抱えた、ずんぐりした体形の人間だった。

     そんな、剣と魔法の世界の冒険者達っぽいような連中が何人も
    谷底から現れ、大地へと降り立ってゆく。

     遠目にしか判らないが、数にして精々が十数人ぐらいではないだろうか?

     先頭の甲冑の人間が剣を掲げると、続く兵達が雄叫びを上げてそれに続く。

    「攻め込んできた?」

     そう、表現するのが妥当だろうか?

    234 = 228 :

     敵か味方かは判らない、判断材料が無い以上は見つからず静観するのがベストだろう、
    幸いにして今夜は満月なので割と距離がある連中を視認する事が出来る。

    「ファンタジー…だなぁ」

    軍人「魔物達と戦う見たいです」

     谷から出現したファンタジーな兵士達に森から飛び出した魔物達の群れが襲いかかる、
    巨大な棍棒を持った見覚えのあるサイクロップスや、これまた巨大な体躯をしたトロールと言った所か?
    上半身が端正な顔をした人間で下半身が馬の弓を持った馬人間も居る。

    軍人「わー…結構イケメンですー」

    「下半身が馬でもええんかい」

     思わず反射的に軍人女にツッコミを返す男。

     それはさておき、サイクロップスが振り下ろした棍棒を、
    兵士が素早いステップで躱して剣を抜き放ちサイクロップスの瞳に突き立てる。

     まるで淀みが無い完全に戦い慣れた動作、まるで魔物と戦うのが当たり前と言わんばかりの
    日常を過ごしてきたのだろうか。

     たった一つの瞳を失って手当たり次第に棍棒を振り回して暴れるサイクロップス、
    しかしそんな闇雲な攻撃が当たる訳でもなく。

    235 = 228 :

     そしてローブを纏った人間がこれまた当然とばかりに杖を掲げると
    杖の先から電撃が程走り、激しい雷撃がサイクロップスに直撃する。

    「どう見ても魔物と戦い慣れている感じだな」

    軍人「人間の動作じゃないですー」

    「ん?」

    軍人「雷の攻撃はどう見ても『魔法』ですし、
        最初の人が一撃を躱した動作もどう見ても人間の筋肉量で出来る動作じゃないです」

    軍人「力の強さは筋肉の量と密度によって決まります
        どれだけ鍛えても人間は象の力を越える事は出来ません」

     軍人女の言葉に応えるかのように、戦場では数メートルのトロールが持った武器を
    細い剣で受け止めている女の騎士が見えた。

     馬鹿デカイ木の棒を細いレイピアのような武器で受け止め、
    さらにその細いレイピアを素早く突き出して、トロールの全身を穴だらけにしていく。

     続く大斧をもった、低身長の男が斧を横に一閃するとトロールの体を真っ二つに引き裂く。

    「派手だなぁ」

    軍人「まるで、重戦車ですねー」

     自分なら生き残る為に逃げ回る、それでも逃げ切れな場合は武器でもなんでも使って
    逃げ切る隙を作り出す、どうしても逃げ切れない場合は仕方が無いから戦うと言った感じだ。

     しかし、兵士達の戦いはまるで逃げる事を意識していない。

    236 :

    「そりゃ、俺もゲームの中じゃ
      逃げるコマンドは最後の選択肢だけどさぁ」

     今までこそこそと逃げ回っていたのがアホらしくなるような戦いっぷりだ
    ややあってたった数十秒で魔物群れを軽く屠った冒険者達。

     その中の一人がこちらを見た気がした。

    「やべぇ、こっちを見た!?」

    軍人「火を消してください!!」

    「わかってんよ!!」

     軍人女に言われる間もなく、焚火に向かって男は水をぶっかける
    本来はキャンプ場では水ではなく砂を掛けて火を消すのがマナーなのだが
    そんな余裕はない。

    238 = 236 :

     リーダーに続いて、仲間達もそれに続こうとした所で。

     突如……轟音に続いて光の矢、とでも言うようなものがその仲間達の一団を貫いた、
    貫いた一撃は一団の中央に着弾し、炸裂した後に大地に小さ目のクレーターを作り出す。

    軍人「レールガン!?」

    「なんだと!?」

     これまたゲームの中で聞いた事がある、確か物体に電力を流して超高速で射出するとか言う
    電磁加速砲とかって、こちらはSFな兵器だ。

     思わぬ一撃にファンタジーな兵士達はその場で散開し、電磁加速砲の第二射が再び轟音と共に
    発射される。

    「SF対ファンタジーかよ」

    239 = 236 :

    ----------------------------------------------------------------------------------------
    8投で納まりきらなかったけど、今日はこの辺で。
    ----------------------------------------------------------------------------------------

    軍人「おそらく、こっちは『施設』の方の人間です」

     タングステンの高速弾は今度は大地にすら当たる事なく、虚空を貫き闇へと消えていく、
    しかし、この派手な武器の発射元はファンタジー兵達に知られてしまったようだ。

     リーダー格の男が何やら叫ぶと(何を言っているのか全く聞き取れなかったが)、
    ロッドを持った兵が光の玉を射出元に向けて発射する。

     しかし、これは攻撃目的ではなかったらしく空中に光の玉が展開すると
    まるで小さな太陽が弾けるかのように辺り一帯を照らしだす。

     灯りに照らし出されたのは、これまた5人の人間で
    一人が巨大な大砲を持っているのが見て取れる。

     恐らくこれが件の電磁射出砲だろう。

     まるで某有名な新世紀ロボットアニメのパイロットスーツのような、
    ボディラインがくっきり出るスーツを着用し、両手両足にはプロテクターのような
    アタッチメントが装着されている。

     男が3人と女が二人、明るく照らし出されているものの顔はフルフェイスのような
    マスクが装着されており、判別する事は出来ない。 👀

    240 :

    軍人「数では『施設』の人間の方が劣勢ですね、
        それに、後ろの3人は動きが鈍いですー
        明らかに戦闘慣れしていないです」

     前に出た男2人の動きは洗練されたものだ、兵達の放った
    火炎の矢を最低限の動きで躱し、その内の一人が手にした
    人の身の丈程ある長刀でファンタジー兵の一人を一刀両断した。

     文字通りに一刀両断、頭から綺麗に左右に真っ二つとまでは
    言わなかったが、首から胴まで袈裟懸けに一撃で両断し
    物言わぬ二つの屍となった兵の一人は血飛沫をまき散らしながら
    大地に転がる。

    「なんだよ…それ…。」

     男と軍人女の居る位置は戦闘区域から大きく離れていたが
    それでも、先程の魔法灯りのお蔭で良く見えた。

     軍人女が戦闘慣れしていないと指摘した
    後ろ3人は間近で見たその現実離れした惨状に
    パニックになっているようだ。

    241 = 240 :

    軍人「あーあ、足が止まっちゃってますよ
        あれじゃ、格好の的ですねー」

     当然それを見逃すファンタジー兵ではなく、3人に向けて魔法を放つ
    雷と炎と氷の三種の魔法が降り注ぎ、殺された仲間に対する怒りなのだろうが
    激しい魔法の嵐が荒れ狂う────しかし。

    「無傷?」

    軍人「か、どうかは分かりませんけどね
        どうやら、あの妙なスーツには対魔法効果があるみたいですね
        それに、さっきの攻撃を見るに力の増幅効果もあるようです」

     荒れ狂う魔法の中から飛び出した一人の女が、剣を抜刀し
    魔法発動時に隙が出来るのか、魔術師風のローブを着た人間に剣を一閃する。

     一閃された剣はまるで粘土でも斬るかのように易々とローブ人間の首を
    跳ね飛ばし首を失った人間から大量の血液が吹き上がる。

    「まるで、虐殺だ」

    軍人「対人戦の戦いと言う物は、
       殺しよりも怪我させる事を重視させます」

     男の言葉を聞きとがめたのか、軍人女が言葉を続ける。

    242 = 240 :

    軍人「前線にて銃弾一発が一人の怪我人を生み出した場合、
        それを救助する兵2人と合わせて、3人の戦力をその場から損失させる事が出来ます」

    軍人「それに、怪我を直すまでの病院のコスト、リハビリまで視野に入れると
        遥かに敵の損失は大きいでしょう」

     基本拳銃は殺す為の武器ではなく、相手を怪我させる武器だと聞いた事がある
    気がする。

     無論、軍人女が持つような馬鹿でかい拳銃は例外だろうが。

    軍人「殺したというよりも、怪我をさせたというだけなら
        こちらの兵のメンタリティも傷がつきませんでしょうしね
        しかし────。」

     目の前で起きている戦いは、殺しの為の戦いだ
    いや、そもそも。

    「あの、妙なスーツは
      人と戦う用の装備じゃないんじゃないのか?
      化け物と戦う為の装備だから、オーバーキルになるんじゃないか?」

    軍人「そう、かもしれませんね
      あんな素人臭い動きで、戦う事ができるんですから。」

     目の前の戦いはリアルな映画を見ているような感覚だ、
    今では化け物から逃げ出す戦いだった、だがここからは
    人との戦いに巻き込まれるという事だろうか。

     ふと…背後から物音がして、軍人女と男が振り向く。

    243 = 240 :

    「なっ!」

    軍人「何々!?なんですか!?」

     遠目に観戦モードで見入っていたため、周りの警戒が疎かになっていたようだ、
    背後には魔法で飛んできたのだろうか、白い鎧を纏って巨大な戦斧を持ったファンタジーな
    戦士が立っていた。

     歳の頃は30台中盤から後半と言った所だろうか、鎧の下は筋肉質の体躯が隠れているのだろう。

     あの巨大な魔物を倒した連中の一人だ、素人の男やボンクラ軍人の軍人女では
    成す術も無いだろう。

     好意は無さそうだが、敵意と言う訳でもない様子だ、
    明らかに戦い慣れをしていないであろう相手を見て、どうしようか判断に困っていると言った所か。

    戦士「お前達、あの仮面連中の仲間か?」

    「仮面連中?ああ、あそこのスーツ連中の事か
      連中が俺達の事をどう思っているか分からんが、俺達は連中なんぞしらん
      …………と言ったら、アンタは納得してくれるのか?」

     とりあえず、言葉が通じる相手のようだ
    言葉が通じれば戦いは回避できるかもしれない。

    244 = 240 :

    「ついでに、戦争の経験した事の無い平和ボケした世界に住んで居る
      民間人だ…………と言ったらアンタは満足してくれるのか?」

    戦士「戦争が起きて人が死んでいる現状を目の当たりにして
       それでいて、その腰に剣をぶら下げていてふざけた事を言うなと
       こう応えるだろうな、俺はっ!!!」

     突如身をよじり、戦士が戦斧を振り回すと闇夜に火花がまき散らされる、
    金属同士が激突する激しい音、刃を止めたものの戦斧の勢いを止めきれなかったのか
    闇夜から飛び出した何者かは数メートル弾き飛ばされる。

    戦士「おいおい、もう追いついてきやがったのかよ
       下の連中を放っておいてこっちに来るとはな」

    ???「退け…この人に手を出すなら容赦はしない」

     先程まで戦っていたスーツ女の一人が戦士に向かって警告を発する。

    「───────まさか。」

     聞き覚えのある声だった、昔から何度も聞いた声。

    245 = 240 :

    「まさか、お前。」

     フルフェイスメットの下からの声だが、聞き間違える筈も無い
    認めてしまうと

    「お前…幼馴染…か!?」

    ???「………………………。」

     帰って来たの沈黙の返答、しかし男はもう確信していた。
    後ろのレールガンを持った男は恐らくは友、その隣に居る小柄な女は
    妹、そして…先ほど人間を斬殺したのは幼馴染だと。

    「答えろ!お前は………いや
      お前達はそんなの着て何をしてんだ!!」

    戦士「ピーチクうるせぇな、小僧
      ガキの出番じゃねーっつの」

    「うるせぇ!テメェこそ黙って居ろ!オッサン!
      お前の幕じゃねーよ!」

     恐らく目の前の戦士も、妙な戦闘スーツを着た3人よりも
    自分は弱いだろう、本気を出すまでも無く男を一撃で殺す力を
    持ち合わせているのは先ほどの戦闘で見て取れた。

     だが、頭に血が上ってそんな思考はどこかに行っていた。

    「答えろよ!
      芋!幼馴染!友!」

    246 = 240 :

    ----------------------------------------------------------------------------------------
    今日はこの辺で。
    ----------------------------------------------------------------------------------------

    「越えちゃいけねーラインってのあるよな?
      俺達は…いや殆どの日本人はそのラインを越えない向う側で
      平和に暮らしていたんだけどな」

     言葉と同時にメットの下から現れた顔は、やはり予想通り
    友の顔だった。

    「俺達はそのラインを越えちまった…………それだけだ
      だけど相棒、アンタはまだ戻れるギリギリラインの向こう側だ」

    幼馴染「だから、私達が
      代わりに全部終わらせるから、手を引いて
      この山もシンディも魔物も私達の事も全部忘れて向うにもどって頂戴」

     友に続いて顔を表したのは幼馴染だった。

     全部忘れて、元の生活に戻れという事だろう、
    だが、そんな事は出来るはずもない。 👀

    248 :

    申し訳ないとは思うのですが、4月から少々立て込んでおりまして。

    249 :

    >>248
    待ってるよ

    250 :

    戦士「おいおい、こっちもガキじゃねーか
       この世界ってのは、ガキが人を殺すのかよ」

     マスクの下から現れた顔を見て戦士が何か言うが無視。

    「それで、俺にどうしろって言うんだ」

    幼馴染「大人しく捕まって頂戴、
        抵抗しなければ、痛い目に合う事もないわ」

    「捕まる・・ね、
    別に逃げるつもりの無いけど、
    俺が捕まったらどう言う扱いになるんだ?」

    「家に帰してくれる、らしいぜ?
      もっとも、ここ一カ月ぐらいの記憶と引き換えらしいけどな」

     記憶を奪われるのか、それで平穏無事な生活に戻れるなら悪くはない
    悪くは無いのだが。

    「だが、さっきの
      『俺達が肩代わりする』ってのは何だ」

    幼馴染「そのままの通りよ、返してもらえるのは男
       貴方一人だけよ」


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