のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,062,784人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレ男「なんだこれ?」卵「......」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    ←前へ 1 2 3 4 5 6 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    101 = 100 :

     しかし、それでも油断をしていたようだ
    車で大分ゴブリン達から離れて逃げ切ったと思った、
    そうそう追いつく事はできないと。

    幼馴染「早く!車に乗って!」

     全員が武器を手に車まで走って戻ろうとする、
    しかし、それを行動に移そうとする一瞬前。

    魔物「ゴウァアアアアァァァァ!!!」

     姿を現したのは5メートル程の巨人だった、
    赤黒い血に染まった槍斧─ハルバードとか言ったか?を手にした巨大な人間、
    ただし、その上半身は茶色い牛だったが。

    幼馴染「…………ミノタウロス!?」

     幼馴染が魔物の名前を告げる、ゴブリンと違って
    ゲームでは主人公達が、戦いに慣れたころに出てくるような
    相手だ。

     ゴブリン達と異なり、幸い牛人間はその一体だけだが
    二階建ての家程の巨体は脅威だ。

    102 = 100 :

     今すぐ走って車に乗り込むべきだ、が…恐怖で
    体が金縛りにあった。

     今すぐ全速力で逃げ出すべき…なのだが、今は
    逃げ出さなかった事が幸いした。

     ミノタウロスは獲物を見定めるように、様子を見ている
    背中を向けて逃げ出したら、野生の本能が働いて
    逃げ出した奴を全力で追いかけてきただろう。

     空からシンディの吐いた火の玉が落下してくるものの、
    ミノタウロスは大きく吠えると、手にした得物を一閃すると
    炎の玉は裂かれて散った。

    「…ははは…こいつは、やべぇのが出た…。」

     足が恐怖で震えている、あの大斧でこの軍人さんを
    引き裂いたのだろうか?

    ミノ「ヴォァアアアアアアァァァァァ!!!」

     再び大きく吠えて威嚇すると、足で地面を蹴って
    物凄い速度で突進する。

    103 = 100 :

    「ひぃっ!」

     妹が小さく悲鳴を上げるも、ミノタウロスの標的は
    車だったらしい、停めてあった車をあっさりと突き飛ばすと
    車はあっさりとひっくり返る。

     どうやら、いつでも逃げられるようにエンジンを掛けっぱなしに
    していたため、生き物とでも認識したのだろうか。

    ミノ「ヴォァアアアアアアァァァァァ!!!」

     まるで得物の内臓を食らうかのように、ミノタウロスは
    車の底から部品を剥ぎ取って、放り投げていく。

    「…………俺のハマーを一撃かよ…」

    「…逃げるぞ!!、奴が車に気を取られている隙に!!」

    幼馴染「でも!荷物が!!」

    「…そんな場合じゃねーだろ!!」

     ひっくり返された車が断末魔の叫びのようにクラクションが鳴る、
    車の配線が漏電したのかもしれない、それを受けてか
    ミノタウロスの車に対する攻撃がさらに激しいものになる。

    「…奴が車に気を取られている隙に、逃げるんだよ!」

     車から伸びていた、充電ケーブルのソケットを引き抜き。

     男はスティーブンのバックパックとアサルトライフルを拾って
    森に向けて走り出す。
     車に持ち物を取りに戻れない以上
    死人の持ち物とか言っている場合ではない。

    104 :

    300も届かないかもなこりゃ、
    のんびりやるか。

    105 :

     ミノタウロスは車が生き物ではないと知ると、興味を無くし
    次に男達の方に向き直る。

     ハルバードを手に地面を蹴って一番弱いであろう
    妹を獲物と見定めたようだ。

    「ひぃ!!」

     恐怖に竦んで動かなくなる妹、地面を蹴って走り出す
    ミノタウロスに空から大きな影が襲いかかる。

    シンディ「キシェェエエエエエェェェ!!」

     威嚇の声と共に竜の爪がミノタウロスの頭を鷲掴みにし、
    喉笛を噛み千切ろうとするが──────。

    106 = 105 :

    ミノ「ブモォオオオオオォォオッッッ!!!」

     ミノタウロスの方が実戦経験が豊富なのか、上半身ごと
    大きく体を振り、鷲掴みにしていた飛龍もろとも近場の大木に
    頭を叩きつける。

    シンディ「ピギ!?」

     ミノタウロスから振り落とされた飛龍に、ミノタウロスの
    手にしたハルバードが襲いかかる。

    「くそっだらぁぁああああああぁ!!」

     まるでチンピラのような声をあげつつ、男は手にしていた
    アサルトライフルのトリガーを引く!

     安全装置が外されたままだったためか、アサルトライフルが
    物凄い勢いで弾丸の雨を吐き出す。

    ミノ「ブモォオッ!!!」

    107 = 105 :

     しかし、人間にとっては致命傷を与える弾丸も
    ミノタウロスにとっては石を当てているようなものなのだろう。

     それでも痛いのかミノタウロスの憎悪が男に向き、
    その隙に飛竜は地面に翼を叩きつけてなんとか、空へと退避する。
     
    「かかって来いや!このボケが!」

     もうやけくそだが、吠えてみた所で本当に正面から
    突進されたら、あっという間に昇天してしまうだろう。

     弾丸を吐き出しつくしたアサルトライフルを捨てて、
    男は森の中に逃げ出す。

    「相棒!!!」

    幼馴染「男!!」

     友と幼馴染の声が聞こえるが、言葉を返す暇も無い
    とにかく、逃げる──────。

    108 = 105 :

     森の中なら巨体のミノタウロスは上手く動けないだろうと言う打算もある。
    対してこちらはミノタウロスよりも小柄で、山歩きに慣れた人間だ。

    ミノ「ブモォォォォォォォォオッ!!!」

     天に向かって吠え、鼻息を大きく吹き出し
    地面を蹴って男に向かって猛突進してくる。

    「うぉっ!?速ぇ!!?」

     巨大な体躯だから遅いと思っていたが、予想していたよりも
    素早い動きで男は焦る、が…足を止めている暇は無い。

     予定通りに森の中に逃げ込むと、野生生物(?)の性が残っているのか、
    逃げる男の背中を追って、他の獲物に目もくれず追いかけて来る。

    109 = 105 :

     森の中に入ると、大木が邪魔してミノタウロスの速度が目に見えて落ちる
    それでも、必死に追いかけて来るわけだが。

     咄嗟に手を出して怒りの矛先を自分に向けてみたが、ここからどうしたものか
    考えが全く浮かばない。

    「げっ!?」

     突如視界が開けて、森を抜けてしまう。
    抜けた先は15メートルぐらいの崖の上で、下に川が流れている。

     慌てて森に引き返そうとするも。

    ミノ「ブフゥウウウウウゥゥゥゥ!!」

    110 = 105 :

     追って来たミノタウロスに森への入り口は完全に閉ざされてしまう。
    どの道、いつかは体力が尽きるからいつまでも逃げ回ってもいられないだろうが、

    「は…はははは…怒っている?
      お前怒っているよな?やっぱり」

     言葉は通じないだろうが、相当に怒っているのは見て取れる。
    映画とかだと、川に飛び込んで逃げたりとか
    突進して来た所を間一髪で躱して崖に落としたりとかするんだろうが
    現実はそう簡単にはいかないようだ。

     飛び降りようものなら、川底の岩に頭でもぶつけて最悪死ぬだろうし、
    良くて骨折と言った所だろう、さらにミノタウロスも崖を警戒しているのか
    無暗に突進してくるような事はしない。

    「こりゃ、詰んだなぁ」

    111 = 105 :

     天を仰いで諦めの言葉を吐く、ハウルバードを手に一歩づつ
    ゆっくりと歩み寄ってくる。

    「こう言う場面って
      都合よく、誰か助けに来るもんだろ!!」

     などと、都合の良い展開を期待してみるも、こんな山奥では
    誰も助けてなんてくれないだろう。

     そもそも、友人や妹達から遠ざけるためにこいつの気を引いたのだ
    男を心配してノコノコとやって来るような事は無い───と、信じたい。

    ミノ「ヴォァァァアアアアァ!!」

     ミノタウロスが武器を振り回し、男は崖に向かって身を放り出す、
    どの道ミノタウロスに生きて食われるぐらいなら、崖から飛び降りて
    即死した方がまだマシだ。

    113 :

    >>112
    ありがと、亀進行だけど頑張ってみるよ
    -----------------------------------------------

    「南無三だ!こん畜生め!!」

     しかし、黙って死ぬつもりもない
    腰のポーチからフック付ロープを取り出し、崖から張り出した
    枝に投げつける。

     山歩き用のアイテムで、鎖とか何も手がかりが無い崖を
    上り下りするために持ち歩いている道具だ。

     幸運にも枝に引っかかり勢い付けた体重が両腕にかかる。

    「ぐぁ!!」

     両腕に荷重がかかりロープをつかむ形で崖に中吊りになると、
    両肩の骨が軋み悲鳴を上げる
    しかし、ここで離すと崖から岩場に真っ逆さまだ。

     なんとか堪えて崖の上を見ると、ミノタウロスが悔しそうに
    吠えているのが見えた。

    114 = 113 :

     牛人間の両腕はともかく、足は蹄だから急斜面の崖を降りてくる事は
    出来ないらしい。

    「ざまぁ、みやがれ
      今日の晩飯はヨソをあたりな!」

     降りてきた側の川沿いはずっと崖になっているようで、
    迂回しても簡単には降りられない、飛び降りて来るかとおもったが
    どうやらその様子は無く、悔しそうに一声鳴くと
    どこかへともなく去って行った。

    「って、あいつ!
      妹達の所にもどらねーだろうな!?」

     不安になるが仕方が無い、上手く車から荷物を出して
    逃げ切ってくれている事を祈るしか無い。

     友と幼馴染ならなんとかしてしてくれるだろう、と思いたい。

    115 = 113 :

     一方その頃──残された仲間達──。

    「お兄!」

    幼馴染「早く!助けに行かないと!」

    「馬鹿言え、死にに行くようなもんだろうが」

     スタンソードを手に、森へと消えた男を追いかけようとする
    幼馴染を友が止める、しかし何もしないで大人しくしていろと
    言われても、大人しくなんてしていられる訳でもない。

    幼馴染「だからって、見捨てる気!?」

    「じゃー、あんな化け物相手にして
      お前に何が出来るってェんだ!!」

    「それなら、どうしろって言うのよ!」

    116 = 113 :

    「相棒は馬鹿じゃない、相棒が死ぬ気で作ってくれたこの時間を
      1秒でも無駄するんじゃねーっての、さっさと荷物を車から
      引き摺り出すんだよ!」

     言うなり、腹を見せて倒れている車から
    使えそうな荷物を引きずり出す友。

     車を失ってしまった以上、荷物を運ぶ手段が無い
    それに、男がさっきの化け物を撒いて逃げたとしたら
    男を見失った化け物が再び戻って来るかもしれない。

    幼馴染「妹ちゃん、男も心配だけど
      今は急いでここを離れないと」

    「………う…うん……」

     不安気な表情を見せながらもパニックにならず、
    持って行く荷物の整理を手伝う妹。

    117 = 113 :

     とはいえ、どこに逃げたモノだろうか────と、幼馴染は思う
    例のキャンプした洞窟に逃げ込むのが良いと思うが、随分
    車に乗って移動してしまった上に、ゴブリン達に巣窟を通らないと
    たどり着けない。

    幼馴染「それで、どこに逃げるのよ?」

    「わかんねー………けど
      とりあえず、GPSを頼りに麓までいくしかねーな
      ……………ほれ、お前が地図担当。」

     友が車のダッシュボードに備え付けてあった取り外し式のGPSと
    紙の地図を妹に放り投げつつ言う。

     後は言葉少なく黙々と荷物の振り分けを行っていく。

    118 = 113 :

     水や食料、武器を優先に3人で持てる分だけの荷物を割り当て、
    4つのザックに取り纏める。

    「なんだ?相棒の分をここに置いといてやるのか?」

    幼馴染「違うわよ、シンディ!!」

    シンディ「クエ?」

     大人しくしていた飛竜の名を呼ぶと、飛竜の足にザックの一つを
    括りつけた後、鼻先に男の着ていたシャツを近づける。

    幼馴染「男に届けてあげて」

    「なるほどね、けどコイツ
      鼻が利くんかねー」

     竜の鼻が良いか悪いかなんて聞いた事ないが、少なくとも
    人よりは充てになるだろうと思う…多分。

    119 :

    「………待って!」

     頭を軽く撫でて、飛べ!と合図しようとした所で、妹が静止する。
    荷物を振り分けていた間にスティーブン氏のタブレットと、紙の地図と
    GPSで調べものをしていたようだが。

    「地図上だと山の奥だけど
      ここ…、建物があるみたい」

     妹がスティーブンのタブレットに表示させたのはオフラインでもつかる地図アプリで
    地図上に何やらアイコンがマークしてある。
     アイコンには写真が添付されており、結構大掛かりな工場のような施設だ。

    幼馴染「どういう事なの?
      そんな工場があるなんて、見た事も聞いた事も無いわよ」

    「わかんね、けど…多分
      この化け物達と関係があると見て良いだろうな」

     どの道、このまま歩いていけば麓にたどり着く前に
    夜になってしまうだろう。

    120 = 119 :

    幼馴染「ここに逃げれば、助けて───………。」

    「………──貰えるなんて、
      甘ぇ考えは持っていないだろうな?まさか」

     そう…、これだけの規模の工場を隠し通す連中が居る場所だ
    機密保持とかいって殺されてしまう可能性もある。

    「でも、ここから麓まで、一番近い所でも20キロぐらいあるし
      化け物が居るだろうし、帰れる自信はないよ
      この施設までなら、そんなに遠く無い」

    幼馴染「このままだったら、夜になるわね
      それに、男とも合流しないと。」

     それに、無理に夜間に歩き回るとどうなるのか
    スティーブン氏の亡骸を見たら一目瞭然だろう。
     戦闘のプロですら、この様なのだ。

    121 = 119 :

    「…………わーったよ………、どのみち
      それしか選択の余地は無いだろうし」
     
     話が纏まった所で赤ペンで紙の地図に文字を書き込み、
    シンディに括りつけられたザックに紙の地図を仕舞い込む。
     頭を軽く叩いてやると、人の言う事は理解できるのか
    一声鳴いて空へと舞いあがる。

     飛竜を見送ってザックを背負い歩き出す、
    立て続けに色々ありすぎて倒れそうだが、スティーブン氏の
    亡骸が視界に入り、幼馴染は頭を軽く振る。

    「安全な所が見つかったら
      休憩取りたい所だけどな」

    幼馴染「安全な所って、どこよ」

     苦笑しつつ、返すが…自分でも随分、体力的にも
    精神的にも参っているなーと、自覚する。

     しかし…、今は山歩きに長けた男と逸れてしまった上に
    弱音を吐いている場合ではないと言うのも理解しているつもりだ。

    122 = 119 :

     完全に破壊された車を背にして、森の中を歩きだす
    道を外れて(道と行っても、来るときに強引に車で走った跡程度だが)

     スティーブン氏のタブレットが示す施設の位置へと向かう。
    疲れが溜まっているのだろうか、誰もが一言も喋らず黙々と
    30分程歩いたところで、友がボソリと言い出す。

    「これで、地図通りに山があるだけだったらウケるな」

    幼馴染「嫌な事を言わないでよ」

    「森に住む化け物達が全部作り物とか、ロボットか何かでよ
      カメラがあって、俺達を撮ってさ
      最後にボードをもったテレビスタッフとカメラマンが出てくる訳よ」

    幼馴染「あったわねー、昔にそんな番組」

    「………お姉、幾つよ」

     幼馴染の言葉に妹が苦笑する。

    123 = 119 :

     そして、顔を思いっきり平手で叩き、乾いた音が森に響いた。

    幼馴染「甘えないで、優しい言葉でも掛けて欲しいの?」

     友はいきなり横から顔を叩かれた事に茫然とし、泣きだしかけていた
    妹もいきなりの出来事に驚いていた。

    幼馴染「アンタの心が折れるのは勝手よ
        でも、それに私達を巻き込まないで」

     部活の試合の時でも、一度気持ちが折れてしまったら
    そう簡単には立て直す事は出来ない。

     去年のバレーボールの全国大会
    後から思い返せば、気持ちが折れなければ勝てる試合だったが
    一人の気持ちが折れたせいで、チーム全員に伝播し
    格下の相手に負けてしまう場面があった。

    124 = 119 :

     バレーボールの試合程度なら、悔しい思いをするぐらいで済む。

     しかし今、全員の気持ちが折れてしまったら
    そんな中、また化け物に襲われでもしたら自分だけではない
    他の二人もスティーブン氏のように、殺されてしまうだろう。

    「………………容赦、ねぇなぁ…。
      今のは優しい言葉を投げてくれるか、
      キスでもしてくれる流れだろうがよ」

    幼馴染「ないわー。」

    「友キモイ。」

    「本当、容赦ねぇ奴らだな」

     それで元気が出たのか、友は苦笑しつつ荷物を背負い直して
    再び歩き出す。

    125 = 119 :

    -----------------------------------------------
    げ、痛恨のミス
    >>122>>123の間にコレ

    上げたら直せないのが痛い所。
    -----------------------------------------------
    「で、極めつけに
      スティーブンさんとか、相棒とかと生きて再会よ
      泣き崩れた所で、『嘘でしたー』ってな、悪趣味な番組」

    幼馴染「そう…ね、だったら良いわね」

    「………でも、あの遺体は本物だった
      戦った化け物達も」

     妹がボソリと言うと、先頭を歩いていた友が足を止める
    そのまま友か拳を震わせ、近くの木の幹に叩きつける。

    「…………あぁ、わかってんよ
      全部マジなんだって!」

    「さっきの軍人のおっさんはマジで死んでて
      相棒は行方不明なんだって!
      でもよ!そう思わないとやってらんねーじゃねーか!」

     一番強いと思っていた友の心が折れた瞬間だった、そのまま友は
    喚きながらも木の幹に拳を何度もたたきつける。

    「なんで、なんだって俺は
      こんな所に来ちまったんだよ!クソが!!」

     そんな空気が妹や幼馴染を包もうとした所で。
    幼馴染は友の顔を両手で優しく両手で包んで振り向かせる。

    幼馴染「…………友…。」

    126 = 119 :

    嗚呼、凡ミス。
    へこむわー

    127 :

     どれぐらい森の中を歩いただろうか、慣れない山歩きと
    緊張の連続で疲労はピークだ。

     さらにいつ化け物に襲われるか分からない極限状況、
    おまけに朝から何も食べていないと来たもんだ。

     不平不満の一つでも口にしたい所だが、余計な事を言って
    余計な事態を招いて時間を食って夜にでもなったら目も当てられない。

     妹がタブレットとGPSから目的地を確認する。

    「あと、少し…座標的には直線距離で5分と言った所─────。」

     ────プギィィィィィイイイィィイイ!!

     嬉しいニュースを告げようとした瞬間に、森の奥から
    豚の鳴き声のような声が聞こえる。

    128 = 127 :

    「近いな」

    幼馴染「みたいね」

     運良くここまで魔物に襲われなかったものの、いつかは魔物に
    遭遇するだろうと覚悟を決めていた。

     友が銃を取り出し、幼馴染が鞘からスタンソードを抜き放つ、
    いつも頼りにしているシンディの索敵能力や、男の直感は
    今は頼りにする事は出来ない。

    「野生のイノシシとか…かな?」

    「だと良いけどな」

    幼馴染「野生のイノシシに襲われるだけでも
      随分大事なんだけどね」

     しかし、野生のイノシシ…もしかしたら熊ですら
    徘徊している魔物に比べたらまだマシなのかもしれない。

    129 = 127 :

     たった一日…、いや一泊二日か?
    それだけしか経っていないのに、我ながら逞しくなったものだと
    幼馴染は苦笑する。

    「野生のイノシシなんかじゃなかったようだぜ」

     豚は豚でも斧を持った豚人間、
    ゴブリンやミノタウロスに続くファンタジー作品の代名詞。

    幼馴染「………オーク」

    「後ろにも!!」

     どうやら、いつの間にかオーク経ちに囲まれていたらしい
    確認出来るだけで5体。

     逃げ道はすっかり塞がれてしまっている。

    130 = 127 :

    「あーあ、いままで散々牛やら豚やら食って来たけど
      まさか、豚に食われる日が来るとはね」

    幼馴染「そんな事を言っている場合じゃないでしょ
        なんとか逃げないと」

    「そりゃ難しい注文だなっ!」

     不意打ちで友がオークの一体に向かってライフルで狙撃し、
    ものの見事に眉間にヘッドショットを決めて仕留める。

    幼馴染「お見事!後4体もよろしく」

    「まぐれ当りだ!出来るかっ!」

     割と真面目に言ったつもりだが、即座に否定されてしまう、
    あっさりと仲間がやられた事に激怒したオークの内一体が
    斧を片手に間合いを詰めて来る。

    131 = 127 :

    オークB「ぷぎぃいいいいぃいぃ!!」

    幼馴染「このっ!!!」

    「待て馬鹿!」

     すかさず幼馴染がスタンソードを振り、反射的に振り下ろしてきた
    斧を受け止めようとする。

     友が静止をかけようとしたが、そうでもしなければ
    斧が幼馴染を襲っていただろう。

     斧とスタンソードが交差すると、激しい電撃が斧を伝って
    オークに襲いかかる。

    オークB「ぷぎゃっ!!」

     悲鳴を上げると斧を取り落として距離を取るオーク、
    狙ったわけでもないがとりあえずはこれで武器を持っている
    オークが3体と丸腰のオークが一体となった。

     しかし、無茶した代償として
    スタンソードの刀身が折れてしまったが。

    132 = 127 :

    「なんつー事しやがる!
      デリケートだっつっただろーが!」

    幼馴染「次からは丈夫に作りなさいよ!
        きゃっ!?」

     友に叱責に幼馴染が返答した所で、他オークが振るった
    斧が頭を掠める。

    「芋!暫く頼む
      幼馴染、折れたスタンソードを寄越せ!」

    「うぇっ!?」

     友に言われるままに幼馴染は折れたスタンソードを
    放り投げ、妹は手にしていた銃を乱射して
    幼馴染を襲っていたオークを追い払おうとする。

    133 = 127 :

    ---------------------------------------------------------
     平日だし、今日はこの辺で。
    ---------------------------------------------------------

     友は折れたスタンソードの刀身のレバーを外して刀身を外し
    素早く予備の刀身と交換する。

    「幼馴染…受け取───────。」

     振り向きざまに幼馴染にスタンソードを渡そうとした
    友の目に飛び込んできたのは、武器を失ったオークBが
    幼馴染の頭を殴り飛ばす場面だった。

    「お姉っ!!!」

     悲鳴も無く頭から血を吹きだして倒れる幼馴染に
    妹がヒステリックな悲鳴を上げる。

     車に撥ねられたかのように激しく吹き飛ばされ、幼馴染は
    全く動かなくなる。

    134 :

     さらに追撃して止めを刺そうとするオーク─。

    「離れろってんだよ!!」

     しかし、そうはさせないとオークに向けて
    友はサブマシンガンを乱射する。

    「お姉っ!!しっかりして!お姉っ!!」

    「くそったれが!!」

     友は両手に手をした銃の弾丸をばら撒いて
    必死にオークを追い払おうとする。

    135 = 134 :

    オークA「ぎゃっ!!ぎゃっ!!ぎゃっ!!」

     運よく…本当に運よく
    銃弾の一発がオークの左目を打ち抜く。

    「止血しろ!!芋!!」

    「止まらない!血が止まらないの!!」

     辺りに血の臭いが充満する、血の臭いで
    オーク達がさらに興奮する。

    幼馴染「…………いいから
      …わたしを……捨てて……逃げなさい。」

    136 = 134 :

     辛うじて意識を取り戻す幼馴染、この状況下では
    自分は助からないものだと理解はしていた、

     仮に、この場でオーク達を追い払っても
    麓の病院まで下手すれば何日も掛かるだろう。

    「できないよ!」

    幼馴染「………このままでは、皆死ぬわ
      はやく………………」

     そこで幼馴染の意識が暗転した。

     ─────死ぬって、こういう事なのかな?─。

     暗転する意識の中幼馴染はそんな事を考えた。

    137 = 134 :

     目を開けると白い部屋があった、白いベッドに白いドア
    白い天井に白いカーテン。

     おまけに自分は白い服を着せられていて寝かされていた。
    これでもかと言わんばかりの統一された白。
     ただ白ではないのは自分だけだった。

     先ほどまで居た森の外ではなく、音の無い白く何もない部屋。

     そっと頭に手を添えるとオーク達にカチ割られた頭の傷が
    綺麗さっぱり無くなっていた。

     どれだけ綺麗に処置したとしても、頭の傷を跡も残さず
    消す事は出来ないだろう。

    幼馴染「私、死んだのかな?」

    138 = 134 :

     なんとなく、そんな事を思う。
    人間死んだらタンパク質の塊になるだけで、天国も地獄も無く
    意識は無に消えるだけだと思っていたのだが。

    幼馴染「意外…ちゃんと足がある」

     足はあるし、ちゃんと力が入る
    体を起こしてみようとした所で、何かに引っ張られる。

    幼馴染「…………?」

     体から出ていたコードが邪魔で起き上がれなかったようだ
    着せられた白い服をまくってみると、透明な電極のようなものが
    体中に貼りつけられていた。

     なんとなく、不快だったのでそのシールを剥がすと
    無音だった部屋に電子の警告音が鳴り響く、
    どうやらこれは勝手に剥がしてはいけない類のものだったらしい。

    139 = 134 :

    ---------------------------------------
    とりあえず、少し振りだけどもこの辺で
    ---------------------------------------

    幼馴染「病室、なのかな」

     うるさい電子音に幼馴染の意識は完全に覚醒していく、
    どうやら天国のような類ではないらしい。
     誰かが自分を助けてくれたようだ。

    「お姉っ!大丈夫!?
      生きている!?どこも怪我が無い?頭おかしくない?」

     扉が開け放たれて妹が部屋に飛び込んでくる、
    今まで着ていたボロボロの服ではなく、某有名な新世紀ロボットアニメの
    パイロットスーツのような、ボディラインがくっきり出る赤いスーツを
    来ていた。

    幼馴染「何?そのコスプレ」

     泣きじゃくる妹に幼馴染は苦笑する、妹の着ていたコスプレ衣装の前に
    訪ね忘れていたが、それよりも先に聞かなければいけない事がある。

    幼馴染「ここって、一体どこ?」

    141 :

    ---------------------------------------
    >>140 ありー、でも不定期投稿でごめんよぅ。
    ---------------------------------------

    「ここは、私達の目指していた工場施設の中なの」

    幼馴染「電気、通っているのね
        という事は当然人が居て…その人達に助けられたって事か」

    「うん、お姉が気を失ったあの後──────。」

     妹曰く
    幼馴染が失血しすぎて気を失ったあの後、オーク達に全滅させられそうに
    なった時にこの施設の人達が助けに来てくれたらしい。

     オーク達を難なく討伐し、瀕死の幼馴染を連れて施設に入り
    治療を施してくれたとの事。

    142 = 141 :

    「あれから、丸2日も過ぎたわ。」

    幼馴染「2日も!?」

     怪我の状態から2日で完治したのは異常に早い速度だが、
    2日も気を失っていたとは。

    幼馴染「友は?あの後無事だったの?」

    「………うん、まぁ、私達は平気。」

     そう…私達『は』だ…
    つまりは、男はまだ合流出来ていないという事だろう。

    幼馴染(じゃぁ…やっぱり男は………。)

     口に出しかけて言葉を飲み込む、だが妹は幼馴染が言おうとした事を
    察してしまったらしい。

    143 = 141 :

    「…………お兄……。」

    幼馴染「だ、大丈夫よ!男なら
        ほら、おばさんが以前4回も捜索依頼だしても
        ひょっこり帰って来たとか言っていた事あったし!」

     ※ >>13参照。

    「でも!こんな化け物だらけのところに一人でなんて!」

     実際、そうは言っても不安ではあるが。

    幼馴染「とにかく、今は私達の事よ
        なんなの?そのエグイコスプレ、ボディライン出まくりじゃない」

    「う、結構恥ずかしいの我慢しているんだよ」

    幼馴染「妹ちゃん『ゼルシウス』って知っている?」

    「好きでこんな恰好しているんじゃないよぅ」

     話題逸らし成功。

    144 = 141 :

     2日の寝ていたらしいのでややフラフラするが、
    気合いを入れて立ち上がる。

    「よう、気が付いたみてーだな」

     ノックもせずに病室のドアを開けて友が覗き込んでくる。
    友も妹と同じようなボディスーツを着用しており──。

    幼馴染「アンタ…意外と腹が少し出ているのね」

    「ほっといてくれっつーの!!」


     ともあれ、無事ではあったみたいで何よりだ。

    「ったく、お前、第一声がそれかよ!!
      相棒と同じでしぶといねー、お前さんも」

    145 = 141 :

    幼馴染「それを言うと、アンタもね
       で、話を戻すと私達はこの工場の人達に助けてもらった訳ね」

    「あぁ、まぁなぁ…
      その件について、お前さんが目覚めたら連れて来てくれって
      ここのボスに言われていたんだわ」

     歯切れが悪い感じで友が言う、ここで友や妹にその理由を聞いても良いが
    どうやらそのボスに聞いた方が早そうだ。

    幼馴染「そうね、悪いけどそのボスさんに都合が空いているか聞いてくれないかな
        助けてくれたお礼も言わなければいけないし。」

    146 = 141 :

     妹にここの施設のボスに話を通してもらい、難なく
    都合の取りつけをしてもらう。

     こんな山奥で化け物を研究している(と推定される)相手では
    あるものの、意外と友や妹は自由に出歩くことが許されているらしい。

     妹に連れられてそのボスの部屋へと案内してもらう幼馴染、
    その途中で例のスーツを着込んだ人達が何人もすれ違っていた。

     男女比は半々のようだが、40越えたおばさんや初老の男性も
    例外なくスーツを着ているのは見ていて若干痛々しい感じではあったが。

     ここに居る人達はもう既に気にしていないようだった。

    幼馴染「みんなスタイルいいなぁ、うわぁ、腹筋割れている」

    「お姉………。」

     思わず口に出してしまい、妹がやや呆れたかのように苦笑する。
    ややあって、通路の先にある部屋が目的地なのか、扉の前で妹が足を止める。

     扉を軽くノックし。

    147 = 141 :

    「妹です、幼馴染を連れてきました。」

    「───入りたまえ。」

     扉の奥からいかにもエラそうな態度のエラそうな声が
    聞こえると妹は扉を開けて、幼馴染に部屋の中に入るように
    視線で合図する。

    「失礼します。」

    幼馴染「し、失礼しまぁす」

     いやに丁寧な妹の態度に怪訝に思いながらも、部屋の中に
    足を踏み入れると、ドラマとかで良く見る社長さんのような偉い
    人の部屋がそこに広がっていた。

     もしくは、身近なイメージの所で。

    幼馴染「校長室…みたいな感じね。」

     つまるところが、執務室。

    148 = 141 :

    -----------------------------------------------------------
    とりあえず、これで8投なはずなのでこの辺で。
    -----------------------------------------------------------

     窓を背にした机に先ほどの返事の主と思わしき、初老の男性が
    座っており、幼馴染をじっくり観察するような目で見ていた。

     ただ、部屋に似つかわしい社長さんやら校長先生のようなスーツ姿ではなく、
    妹と同じような新世紀ロボットアニメのパイロットスーツのようなものを
    着こんでいたが。

     それも数秒の事で、目の前の男は直前までやっていたであろう
    事務作業に戻る。

    ボス「ふむ、キミが話に聞いていた幼馴染君か
      すまないね、少し待ってもらえるかな」

    幼馴染「いえ、お忙しい所申し訳ございません。」

     どうやって話を聞きだしたモノかと考える時間が出来た
    とりあえずは、手が止まった所で助けてもらった礼から切り出すべき、という結論を出す。

     ややあって、ボスの手が止まり話を聞く体勢になる。

    ボス「悪かったな、待たせたね
       改めて、私がこの『組織』のボスだ」

    幼馴染「幼馴染です、危ない所を助けて頂いて有難うございました。」

    149 :

    ボス「まず、君達の身柄についてだが
       我々が責任をもって預からせてもらおう。
       これは、君の命を助ける事と引き換えに
       友君と妹君に合意を得た事だ」

    「悪ぃ…おめぇの命を助けるには
      ここの連中の提案を受けるしか無かった」

     申し訳なさげに友が言う。
    なるほど、当然親切心から命を助けてくれた訳では
    無いらしい。

    ボス「当時に君達にはある程度の自由を保障しよう
       この施設の中なら自由に歩き回ってもらって構わない」

    150 = 149 :

    幼馴染「けど、家に帰してくれるわけではないし、
       家族に連絡を取らせてはくれないんですよね?」

    ボス「それはしばらくは我慢して欲しいかな、
       ただその時が来れば、無事に家に帰すと約束しよう。」

     その時とやらが何を言っているのかわからないが、
    ひとまずは身の安全は保障してくれるのならば
    良しとするべきなのかもしれない。

     どの道、化け物がうろつく森の中へ勝手に入り込んで
    麓まで無事に帰れるとも思っていない。

    幼馴染「けど、こんな化け物がウロウロしている森の中で
        貴方達は何をしているんですか?」

    ボス「それは興味本位での質問かね?」

    幼馴染「……それは………。」

     そう言われれば
    自らが知る必要の無い事なのかもしれない、この連中が何をしていようが
    自分達を無事に返してくれればそれで良い訳だし

     不必要な事を知ってしまったら帰してくれる約束もどうなるか
    判った物ではない。

    ボス「まぁ、構わんがね、くだらぬ雑務も飽きてきた頃だ
       友君と妹君も来たまえ」


    ←前へ 1 2 3 4 5 6 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について