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    元スレ男「なんだこれ?」卵「......」

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    51 = 33 :

     友の言葉にやや弱気になりかけた意識を再び奮い立たせる、
    幼馴染に突っ込ませる訳にもいかない。
     本当に腹をくくるしかないようだ。

    「………くそったれがぁぁあああ!!!」

     我ながらチンピラのような叫びを上げながら、ボスに
    向かって突撃する。

     戦意を奮い立たせるためには仕方が無いし、
    こんな山の奥、どうせ誰も見てはいない。

     群れのボスのプライド故か、ボスはが一声吠えると
    俺の獲物だから手を出すなと言わんばかりに
    子分ゴブリンの前に出る。

    52 = 33 :

    「………おんどりゃぁあああぁぁぁあああ!」

     フルスイングしたスタンソード(別に斬るわけでもないから、
    力を入れる必要は無いと、振った後に気が付いた)を
    軽快なフットワークで避けて、間合いを取る。

     間合いを取った後に、右手に持った鉈を男の頭に向かって
    振り下ろす─────。

     フルスイングした後だから隙が大きく、回避はどう見ても
    間に合わない。

     勝負あった───と、誰しもが思った。

    男には幼馴染の悲鳴が、聞こえた気がする、

    やられる瞬間がスローモーションに見えるというのは本当なんだなと、
    ゴブリンの鉈を視界の端に捕えながら男は思った。

    53 = 33 :

    ------------------------------------------------------------------------
     ※:いい加減バイ猿食らいそうだから、今日はこの辺にしておこうかな。
    ------------------------------------------------------------------------

     しかし、乾いた破裂音と共に。
    はじけ飛んだのはボスゴブリンの方だった。

    ボスゴブリン「シギャァァァァアアア!!」

     右目を押さえて地面でのた打ち回るボスゴブリン、
    その隙に男が倒れるボスゴブリンにスタンソードを突き付けるが
    紙一重でボスゴブリンは飛び退き、離れる。

    「悪いけど」

     銃身から煙が出るライフルのスコープを除いたまま友が、
    右目を押さえたままのボスゴブリンに冷たく言い放つ。

    「甘ぇよ、お前」

     命のやり取りをしている以上、正々堂々の勝負なんて
    最初から誰もするつもりがない。

    ボスゴブリン「シギャァァア!シギャァァア!!」

     悔しそうにボスゴブリンが叫ぶと、子分のゴブリンを引き連れて
    その場から撤退して行く。

    54 :

     ゴブリン達が撤退すると、緊張感が途切れたのか
    幼馴染はスタンソードの電源を落とすと、その場にへたりこんでしまう。

    「お姉!大丈夫!?」

    幼馴染「あはははは……腰が抜けちゃった…」

    「おめぇら、怪我とかしてねぇな?」

    幼馴染「うん…大丈夫、大丈夫」

     友は幼馴染からスタンソードを受け取ると、
    軽くチェックして、正常に動作するか確認して、柄についていた
    バッテリーのようなものを交換し、
    ゴム製の鞘(そんなものがあったらしい)に収める。

    55 = 54 :

    「なんだったんだよ、あいつら!」

    「化け物…かな」

     友から鞘に納めたスタンソードを受け取り、男は
    代わりに今まで使っていた剣を渡しつつ、肩をすくめる。

     幼馴染は妹に連れられて、洞窟の奥へと戻っていく。
    いつ、先ほどのゴブリンみたいな連中が襲ってくるか分からないから
    鞘があっていつでも携帯出来るのは有り難い。

     友は渡したスタンソードを見て、怪訝な顔をする。

    「まさか、壊しちまったか?」

    「壊れたっつー訳でもねーけど、強く叩きすぎなんだよお前
      意外とデリケートなんだぜこいつ」

     先ほどと同じようにバッテリーを交換して、ゴム鞘に納める。

    56 = 54 :

     感電死しているゴブリン一匹にを友が覗き込み、ゴム鞘の先で突いてみる。

    「死んでるよな?」

    「みたいだな」

     うつ伏せに倒れていたので、男は仰向けにひっくり返す。
    余程苦しかったのか、元々の悪魔みたいな表情もあって凄い顔をしている。

    「相棒、よく触れるな」

    「生きている奴に比べたらまだマシだって」

     とはいえ、獣臭いと言うか生臭いので抵抗はあるにはあるが、
    服の中とか持ち物を漁っていると、友がゴブリンの死体を撮影したのか
    背後から光が瞬く。

    「これって、すげぇスクープだな、
      ダチのブン屋に垂れこんでも良いよな?」

    「垂れ込もうにも、そもそもここって携帯の電波届くのか?」

    57 = 54 :

    「こいつの死骸でも持ち帰るか」

    「荷台に積んだら、あいつら嫌がるだろうな」

    「我慢してもらうさ、俺達テレビに出て
      スターになれるぜ?」

    「お前の怪しい武器についても、警察にいう事になるぞ」

    「ンなの、大事の前の小事だって」

     銃刀法違反って、小事か?
    と思わなくもないが、本人が良いなら別に良いかと、男は思い直す。

    「ん?それ……なんだ?」

    「何がだ」

    「二の腕辺りに何か書いてあるぜ?
      そいつは、アルファベットか?」

    58 = 54 :

     男はゴブリンの服の袖を巻くってみると
    ゴシック体で書かれた刺青のようなものが、露わになる。
     たまたま、アルファベットと数字になった風でも無く、
    意味が文字の配列だと一目でわかった。

    「………SN/GOB-01052
      SNって事は、シリアルナンバーって事か?」

     読み上げると、友はさらに写真を何枚か撮る。

    「シリアルナンバーって事は製造番号か
      誰かが作って管理しているのか?この化け物を」

     誰かに作られた生物という事か?
    確かに、この日本───いや、世界中を探しても
    こんな妙な生き物は今まで発見された事も無い。

    59 = 54 :

    「遺伝子操作だの、何だので作られた…………?
      誰が、何のために?」

    「生物兵器とか、
      何かの実験施設から逃げ出してきたとかか?」

     いやいや、素人にやられるこんな弱い生物兵器なんてあるはずもない、
    大体、日本の山の中に生物兵器が居るのも妙な話だ。

     それに、この辺りはGoogleMapで一通り見た事があるけども
    道路から大きく離れている、普通の山だ。

     生物兵器なんかを作るプラントとか、あるはずもない。
    もしくは、GoogleMapで公開している衛星写真がGC加工した衛星写真なのかもしれない。

     北朝鮮の写真ですら乗せた、あのGoogleが??
    まさか、それすら根回し出来る存在がバックについているとか?

    「『嫌な予感』がするな、ブン屋の垂れ込みとか
      警察に連絡とか、慎重にした方が良いかもしれない」

    60 = 54 :

    「おいおい、よしてくれよ
      もう送信しちまったよ」

    「電波が届くのか?ここ」

    「あ…いや、ダメだな
      エラーになった」

    「お兄、こんな所さっさと逃げよう…────うぇ」

     幼馴染をテントに連れて行った妹が戻って来るなり、
    ゴブリンの死骸を見て、顔を歪める。

     普通なら見るな!とか言って、顔を背けさせる所だが
    もう、ばっちり見てしまったようなので、仕方が無い。

    61 = 54 :

    「うわぁ…なに、これ
      ……グロ…」

     意外と耐性があるらしい、
    さすが、現代っ子。

    「そうしたいのは山々だけどな、
      今からだと夜になっちまうよ」

    「危ないから、洞窟に戻って居ろって」

    「そりゃ、お兄ぃ達もだよ」

    62 :

    いいね、このじわじわ日常から外れてく怪獣映画っぽい感じ

    63 :

     陽が落ちると、町の明かりも喧噪が一欠片も無い山は
    闇夜と静寂に包まれる。

     例のゴブリン達が火を怖がるのかは疑問ではあるが、
    場所は既に知られている上に、曇り空で月明かりも出ていない以上
    視界が悪いほうが問題だ。

     それに、火があるとなんとなく安心する。

    洞窟の入り口付近でたき火を起こし、二人一組+シンディが交代で
    見張りに立つ事にした。

     最初に友と男の二人組、次に幼馴染と妹の二人組で交代する。
    本当は男女ペアの二人組で交代するのがバランスが良いと言ったのだが。

    ・幼馴染『アイツと二人っきりで居るのは嫌!』

     との事らしい。
    全く、それなら何でキャンプに来たのやら。

    「なんなんだろうな、アイツら」

    「アイツらって例のゴブリンの事か」

    64 = 63 :

    「それだけじゃねぇ
      その竜っコロもだ」

     友の視線の先には、丸まって寝ているシンディの姿がある
    こいつもこいつで火を怖がるような感じではなく、
    それどころか安心して熟睡しているように見えるのだが
    (エラ?)が小刻みに動いている当り、こう見てちゃんと警戒している
    らしい。

    「それを調べる為に山に来たつもりだったんだけどな
      こりゃ、もうそれどころじゃ無いな」

    「ああ、こんな所は
      朝イチでとっととトンズラしようぜ」

    「ああ、そう…………」

     ───ギャアャァァァァァァァ!!!──

    65 = 63 :

     友に応えようとした男の声を遮るように、誰かの悲鳴が
    闇夜に響く。
     続いて…乾いたような炸裂音が連続して聞こえる。

    「…────銃声だぜ!」

    「誰か居るのか!?交戦中か!」

    「…どうする!?相棒」

    「どうするもクソも、この場を離れる訳にはいかねーし
      この夜の中を銃で戦う奴を相手にできないだろうが」

    『…………Shit!! 』

     ────英語──?
    中退した友はともかく、英語の成績があまり良くない男にも
    その後に続く言葉の意味は分からなかったが
    緊迫した感じなのは読み取れた。

     やがて爆発音やら銃声が聞こえた後に、再び静かになる。

    「………………」

    「………………」

     それ以降、銃声や悲鳴が聞こえる事はなく
    ただ虫の声しか聞こえなかった。

    66 = 63 :

    「さっさと起きなさい!この馬鹿兄!」

    「ぐふっ!」

     恐怖の夜が明けて朝、人間寝る気になれば意外と寝れるらしい
    外はすでに夜が明けて朝となり、交代して見張っていた芋の怒りの
    エルボーを鳩尾にくらって、男の目は一瞬で覚めた。

    幼馴染「あ、やっと起きたおはよう」

    「…………んー…」

     たった一晩で酷い顔となった幼馴染に迎えられつつ、寝袋から
    這いずりだして、ぼーっとする頭を2,3度振る。
     幼馴染に貰ったカップを手に取り、水を飲むと爽やかな山の
    朝の空気を吸って、清々しい気分になる。

    「新しい、朝が来た!!」

    「ほんっっっと、憎ったらしいぐらいに爽やかね、馬鹿兄!!
      こっちは銃撃戦が聞こえたとか、悲鳴が聞こえたとか言われて
      恐怖の夜を過ごしたというのに」

    「ひどい言われようだな、
      こっちはその悲鳴と銃声をナマで聞いたんだが」

    「………それで、よくガースカ寝れるもんだな相棒」

    「寝る時、寝れるときには寝る
      それが俺のポリシーなんでな」

     もそもそとテントの奥から、寝袋がもう一つ出てくる
    こちらは一睡もできなかったのか、目の下に隈が出来ている。

    67 = 63 :

    幼馴染「そんなんで帰りの運転大丈夫なの?」

    「………助手席だったら寝ちまうが、運転席なら
      まぁ大丈夫だろうがな、あれ?朝飯あるのか?」

     意外・・とばかりに目を丸くする友、なんのかんのいいながら
    幼馴染と妹の二人には朝ごはんを作る余裕があったようだ。

    幼馴染「なんもせずに大人しくしているの怖くて、
        体動かしていないと落ち着かないのよ」

    「助かるな、昨日の夜はなんも食ってなかったから
      腹が減って仕方がない」

     男がそのまま食べようとした所で、妹に手を叩かれる。

    「いって、なにしやがるんだ芋」

    幼馴染「煩い!芋言うな!
        食事の前にはちゃんと手を洗う!!こんな所だからこそ
        手に何が付いているか解らないでしょ!はい、石鹸!!」

     几帳面な性格のせいか、態々石鹸まで持ってきていたらしい

    68 = 63 :

     食事を終えて後片付けをし、一通り落ち着いたところで
    椅子に座った面々を見回して男は言う。
     テーブルの上の食器は片づけられて、その上には一枚の地図と
    GPSの測定器が乗っている。

    「さて、
      ここで皆さんに二つの選択肢があります」

    「選択もなんも、さっさと逃げるだけじゃない
      もう帰ろうよ、こんな所」

    「…………まぁ、昨日のアレが無ければ
      その一択だけだったんだけどな」

    幼馴染「昨日の銃撃──あたしは聞いていないけど──の
        あった場所を確認しに行くって事?」

    「その通り、昨日の戦闘で怪我をした人が
      もしかしたら倒れているかもしない
      人道的立場から助けに行くべき────これは友の提案です。」

     縁もゆかりもなく銃を持って山をうろつくような人が相手ではあれど
    悲鳴を上げたりもしていたし、怪我して動けない状態かもしれない。

    「そーゆーこった、怪我して動けない奴が居としたら
      俺達が助けれたのに、助けなかったせいで死んだとしたら
      寝ざめが悪いだろ?」

    69 = 63 :

    「きっと、無線とかで助けを呼んで
      さっさと逃げ出しちゃったりしているよ
      銃を持っていて英語とか、米国の軍人さんとかじゃないの?」

    幼馴染「けど、ヘリの音とか
       そのあとの銃声とか私達は全然聞いていないけど」

    「だろ?」

     普通に考えれば人道的な立場から様子を見に行くのが正しいかもしれない
    が─────。

    幼馴染「まだその戦っていたモンスター…
      化け物がいるかもしれない、本物の銃を持っている人達が悲鳴を上げるような
      相手を、こんな玩具を持った私達がなんとかできるとも思えないけど」

    「玩具とは失礼な奴だな!
      その玩具に命を救われたのは誰だと────」

    「まぁまぁ、落ち着けって」

     憤慨する友をとりあえず宥める。

    70 = 63 :

    -----------------------------------------------
    例によって、バイ猿食らう前にこの辺にしておきますかねー。
    -----------------------------------------------

    「マジもんの戦場の後なんて、日本に住んでいたら見る機会が無いから
      俺は是非とも見に行きたいけどね」

    幼馴染「本音が出たわね」

    「で、その悲鳴と銃声が聞こえた位置も
      正確にわかるの?」

    「ぐ」

    「はい、議論終了ー
      反対多数により否決されましたー」

    「待てよ、妹と幼馴染で反対2票だろうが
      まだ男の票が」

    「ちなみに、俺も逃げるに一票な」

    「この裏切者ー!!」

    幼馴染「アンタいい加減にしなさいよね、
        私達の命もかかっているのよ、誰か死んだり怪我したりしたら
        アンタ責任取れるわけ?」

    「いででででで……ピアス引っ張るんじゃねーよ…」

     幼馴染が友の耳のピアスを思いっきり引っ張り、力づくで黙らせる
    昔から何度となく見て来た光景だ。

     やられた事は無いが、かなり痛たそうに見える。

    71 :

     やや不満そうな顔をしている友だが、さすがに幼馴染や友人の命を危険に晒すのは
    抵抗があるらしく、大人しく撤収準備を手伝っていた。

     と言っても、テントやテーブルキャンプ用品等を撤収する時間も惜しいため、
    最低限必要なものを持っていくだけだが。

     水と食料、そして友の作った怪しい武器と地図、それらを持って車に戻れば
    後はここまでで来た道をそのまま帰るだけ。
     洞窟の穴から車まではそう遠い訳でもない。

     麓に着いたらその場ですぐ警察と各種国内外マスコミに写真とGPS座標を送り付けるつもりだ、
    シンディの件もあるので海外サーバを経由した上で匿名で送ろうと言う事になった。

    72 = 71 :

     先頭にスタンソードを持った男が立ちその次に幼馴染、真ん中に妹で殿は銃を持った友
    慎重に洞穴から出て、200メートル程先に止めてある車へと向かう、
    洞穴は崖の上にあり、岩場があるため車を少し遠くに止めなければならなかった。

    「シンディ!!」

     続いて飛竜(シンディ)が大空に舞い上がり、警戒するように上空を旋回飛行する。
    洞穴を出て警戒しながら言葉少なにゆっくりと車へと距離を詰めていく。

    「前方向、クリア!」

    「左方向、クリアだ!」

    幼馴染「右方向、クリアよ!」

     車の周りに展開して、武器を構えつつ辺りを見回す。

    73 = 71 :

    「わーかったから、後ろ開けてよ」

    「ちぇ!覚めた奴だな
      ほれ」

     友が車のリアハッチを開けて、荷物を下ろすために装備を車に立てかけた時────。

     ──キシェェェェェェエエエエエエェェ!!!

    シンディが大きく鳴くと同時に、男は友を突き飛ばした
    根拠の無い予感、身の危険を感じたものの何が起こるかは予測はできなかった
    しかし、友を狙うような何かの気配が──殺気が巻き起こったのは感じた。

    「ちょ!うぉわ!?」

    「きゃぁあああ!!」

    74 = 71 :

     友と近くに居た妹もついでに倒れこむ、一瞬の後茂みの中から放たれた
    何かが友の頭があった辺りを通り過ぎ、やがて地面に突き刺さる。
     粗末なつくりだが間違いようの無いもの、石の鏃を持った矢だ。

    幼馴染「車の後ろに隠れて!」

     幼馴染がスタンソードを抜刀し、友が転げるように銃を拾って
    茂みに向けて何発か発砲する。
     しかし手ごたえが無い、転げた荷物を手早く車に放り込み
    リアハッチを力任せに閉じる。

     同時に雨のような矢が車に降り注ぎ、頑丈な車体が幸いにもそれらをはじく。

    「車だ!中に乗り込め!」

    幼馴染「鍵!!早く鍵を開けて」

    75 = 71 :

    「わーってんよ、慌てさせるな!!」

     パニックになりながらも、友は鍵を取り出し助手席から滑り込んで
    後部座席のロックを開ける、次いで妹が後部座席のドアを開けて乗り込んだ所で
    茂みから得物を手にしたゴブリンの群れが一斉に飛びかかってくる。

    「わあーっ!団体サマのお着きだぁ」

    幼馴染「まさか、あのゴブリン達
      逃げ出す時を狙っていたとでも言うの!?」

     さらに幼馴染が荷物を車の中に手早く放り込む
    こりゃ、俺が乗り込む時間はないなぁ、と思ったところで
    空から火の玉が降り注いで、ゴブリン一団の中心に着弾する。

    「シンディ!」

    76 = 71 :

    「アイツ、火を吐けたのか!?」

     高度を下げたシンディが火炎のブレスをゴブリンに吐きかけたらしい
    ゴブリン達の焦げる嫌な臭いが辺りに漂い、上空からの攻撃にゴブリン達は混乱する。

    ボスゴブリン「クキャクアキャァァァァ!!!」

     逃がすなと言わんばかりに片目のボスゴブリンが吠えると、一度は怯んだ
    ゴブリン達が再び大挙して襲ってくる。
     どうやら、この車が乗り物という事を察していてこれに乗って逃げるつもりだと
    勘付いているらしい。

     完全に囲まれてしまって車に乗り込むタイミングがつかめない。
    幼馴染と男はスタンソードを抜刀して、手近なゴブリン達を数匹屠る。

    「タマとったらぁぁぁぁああああ」

    幼馴染「いい加減、諦めなさいっての!!」

    77 = 71 :

     上空からシンディがブレスを吐いてくれるおかげで大群に囲まれながらも
    なんとか戦えているが、長くは持ちそうにない。

     シンディの炎を掻い潜って近づいてきたゴブリンを一閃し、剣がスパーク
    ゴブリン達は悲鳴を上げて転げ回る。

    ゴブリン「ピギャ!!」

    ゴブリン「ギギャ!!」

     そんなやりとりがどれ程続いたか。

     防戦一方ながらもなんとか堪えるものの、こちとら戦闘の素人だから
    いかに軽いスタンソードを振り回していると言えども、息が上がってくる。

     さらにシンディもまだ子供だ、連続して火炎のブレスを吹き付けるにも
    限界があるらしい、現にブレスの勢いが弱まっていく。

     おまけにスタンソードを連続使用しているために、手元の電力ゲージが
    すでに3割を下回っている。
     電力低下を報せる赤いLEDランプと、警告の電子音が鳴る。

    「……………やっべぇ」

    78 = 71 :

     さすがに男を焦りと恐怖が包む、頼りにしている武器が使い物にならなくなったら
    あっという間に殺されるだろう、今までも恐怖を感じていたが、それに
    比じゃない恐怖で手が止まりかける。

    幼馴染「…………いやぁぁあああぁぁぁ………。」

     幼馴染も同様のようで、恐怖から錯乱しかける。
    せめて、数秒───数秒車に乗り込む時間が稼げれば。

    「おい!芋!
      お前が運転しろ!!」

    「運転なんてした事ないよ」

    「こいつはオートマだ、ドライブにぶち込んでサイドブレーキを下して
      アクセルを踏み込めば走り出す、ハンドルを切れば曲がる
      ブレーキを踏めば止まる」

    「できないよ!」

    79 :

     妹に車の鍵を手渡して無茶ぶりをする友に妹は拒否する。

     しかし弱音を吐く妹に友は使えそうな銃を手に取り、マガジンを装填しながら
    さらに怒鳴りつける。

    「るっせぇ!出来るか出来ないかじゃねー!!
      やれってんだよ!!唯一手が空いているのは
      おめーしか居ねーんだっての!」

     唯一手が空いていると言われて、さすがに妹は
    覚悟を決めたようだ。

    「どうなっても、知らないよ!!」

    「合図をしたら出せ!」

     天井のハッチを開けて体を外に出し、両の手に例の3Dプリンタで作ったと言う
    怪しい銃(サブマシンガン)を持ち、ゴブリン達に向かって斉射する。

    「ぬうぉおおおおぉぉぉおおぉ!りゃぁぁぁぁ」

     友の雄叫びと同時に両手の銃から弾丸が吐き出され、高速で飛んできた弾丸が
    ゴブリン達に降り注ぎ─────。

     ゴブリン達は悲鳴を上げて逃げ惑う。

    80 = 79 :

     さらに妹がエンジンのキーを捻ってセルモーターを回し、車のエンジンに火が入る
    威嚇する為に車のホーンを鳴らしまくると、車と言う物を良く知らない
    ゴブリン達に動揺が走る。

    「今だ!!先に乗れ!!」

    幼馴染「男も早く!!」

     僅かに出来た隙で生き残るためラストチャンス、
    スタンソードの電源を落として、幼馴染が車に乗り込み、瞬時に男が幼馴染に続く。

     逃がすまじ───と、狂気の表情を浮かべたゴブリンが幼馴染の足を掴む。

    幼馴染「……ひぃっ!!」

     物凄い力で車から引きずり出そうとするゴブリン、男が瞬時にゴブリンの顔にむかって
    蹴りを入れる。

    「野郎!!野郎!」

    幼馴染「……このっ!このっ!」

    81 = 79 :

     幼馴染も続いてゴブリンの顔を何度も蹴りつけ、車の外に放り出して
    ドアを閉じる。

    「今だっっ!出せ!!!」

    「みんな、捕まって!!」

     友が天井のハッチを閉じると同時に、妹がアクセルを踏み込む
    巨大なタイヤが空転して土埃を巻き上げ、猛烈な勢いでゴブリンを巻き込みながら
    後ろに下がる。

    ゴブリン「シギャアアアアアアアァァァ!!」

    ゴブリン「ギギャ!!ギギャ!!ギギャ!!」

     その場に居た全員が、まさか車がいきなり後ろに下がると予想していなかったようで、
    ゴブリン達は成す術も無く巻き込まれる。

     前に進むと思っていたのか、車の背後に集まっていたゴブリン達がクッション(?)に
    なったおかげで、幸いにも岩場にそのまま激突せずに済んだ。

    82 = 79 :

    ------------------------------------------------------------------------
    この辺で一区切り付いたので、今日はここまで

    あと、亀だけど
    >>62
    サンクス
    ------------------------------------------------------------------------

    「バックギア!それはバックギアだ!」

     友が叫び、男が手を伸ばしてバックギアをドライブに入れ直す。

    「もう一回だ、行け!!芋!!」

    「うわぁぁああぁぁぁ!!芋って言うなぁぁぁぁぁぁ!!」

     今度は前に向かって再びゴブリン達を弾き飛ばしながら車が
    猛烈な勢いで走り出す、
    ゴブリン達が追撃しようと追いかけてきたり、矢を放つが
    頑丈な車体は石の矢じり如きではびくともせず、すぐにゴブリン達の悲鳴が
    遠ざかってゆく。

     しかし、しっかりお決まりのツッコミを入れている辺り、
    妹も意外と余裕があるのかもしれない。

    83 :

     妹の怪しい運転でどれ程逃げただろうか、ゴブリン達の
    姿が見えなくなった所で車を動かしたまま友が運転を交代する。

     幼馴染と妹の二人は抱き合ったまま号泣し、ややあって落ち着いたらしい。

    「あたし、絶対車の免許取らない」

    「そう言うなって、結構筋が良いかもしれねぇぞ?」

    「冗談じゃないわよ!!」

     どうやら車の運転がトラウマになりかけているらしい、
    とは言え、田舎に住んで居る以上は車の運転からは逃れられないのだが。

    84 = 83 :

     妹の怪しい運転でどれ程逃げただろうか、ゴブリン達の
    姿が見えなくなった所で車を動かしたまま友が運転を交代する。

     幼馴染と妹の二人は抱き合ったまま号泣し、ややあって落ち着いたらしい。

    「あたし、絶対車の免許取らない」

    「そう言うなって、結構筋が良いかもしれねぇぞ?」

    「冗談じゃないわよ!!」

     どうやら車の運転がトラウマになりかけているらしい、
    とは言え、田舎に住んで居る以上は車の運転からは逃れられないのだが。

    85 = 83 :

     男は助手席から車の外の景色をなんとなしに眺める、良く見知った植物が生えた
    良く見知った森、先ほどまで異形の怪物達に襲われていたのが嘘のようだ。
     このまま麓まで帰れば、平穏な生活が帰って来るだろう。

    幼馴染「なんだったのかしら、あのゴブリン達」

    「なんだって良いわよ、もう思い出したくも無い」

    「さすがに俺も、こんな経験は一度で充分だ
      ─────なんだかんだで楽しかったのは認めるがね」

     強がりでも何でもなく、本心で言っているかのような友の台詞に
    3人ともあきれ返る。

    「なぁ」

     ややあって、男が話を切り出す。

    86 = 83 :

    「今回の件、誰にも言わない方が良いと思う」

    幼馴染「どういう事?」

     幼馴染と妹が首をかしげる、そりゃ家から近い訳でもないが山の奥に
    こんな化け物が棲みついているとしたら、警察やら山岳警備やら然るべき筋に
    報告するべきだと言うのは考えるまでも無くわかる。

     テレビや新聞に第一発見者として載ると言う問題だけではない、
    山に入り込む民間人に対しても警告すべき大事件なのだ。

     が、男は例のゴブリンの二の腕に刻まれた数字とアルファベットのような
    シリアルナンバーが記されていた事を告げると、幼馴染も妹も不安げな表情を浮かべる。

    「あのゴブリン達を誰かが管理したとしていたら
      もしも、あいつらが何者かによって作り出されたとしたら」

    「こんな大がかりな事を仕出かす奴がバックに居るかもしれないって事だろ
      憶測だけどでも、辻褄は──────っ!!」

     突然友が車を原則させる、なんだろうと言った感じで疑問の表情を浮かべる
    幼馴染と妹、友の見る視線の先を追うと。

    87 = 83 :

     何者かが車の進行方向上で倒れていた。

    幼馴染「──────ッ!!!!」

    「キャァァアアアァァァ!!!」

     妹の悲鳴、幼馴染は声も出せない程驚いているようだ。
    何者かが生きているか否かは車を降りて調べるまでも無かった、
    上半身と下半身が二つに引き裂かれて生きていられる人間は居ないだろう。

    「……マジ…かよ…」

     友の顔が蒼白になる、このまま逃げ出したい所ではあるが車の進行方向上に
    亡骸があるため、車をそのまま走らせる事もできない。
     かといって、引き返したらゴブリン達の餌食だ。

    「………………………………。」

     突然現れた死体にその場の4人はどうしたものかと困り果てる、
    男も死体を見た事は無い訳では無い、何年も前に病死した祖父の亡骸を
    見た事がある。

     しかし、目の前のそれはそんな綺麗なものではなかった。

     パニックになりそうな感情をなんとか抑える。

    (…………おちつけ、おちつけ俺……
      人間は死んだらああいうものが残るんだ、いま警戒すべきは
      あいつを殺した化け物が近くにいるか、居ないかという事だけだ)

     頭の中で無理矢理意識を冷却する、何があっても冷静に考える頭が無いといけない、
    昔読んだラノベの主人公の師匠辺りが言っていたようなありがちな台詞だ。

    88 = 83 :

    「………様子を見て来る。」

    幼馴染「ちょっと!?」

    「や、止めようよ」

    「そうは言っても、このまま踏んづけていく訳にもいかないだろうが。」

     男は車の扉を開けて外に出る、風に流されて来たのはむせ返るような
    血の臭い、死臭とでも言うのだろうか。

    「…………うぐっ…」

     吐き気がこみあげてくるのを我慢して、車の扉を閉める、
    中にいる連中にこんな臭いを嗅がせたくはなかったからだ。

     念のため腰からスタンソードを抜き、電源を入れようとした所で
    バッテリーを交換していなかった事に気が付く。

    89 = 83 :

    「……ほれ、手元のバッテリーの近くのソケットにこいつを繋げ。」

     同じく車から降りてきた友が男にケーブルのプラグを渡す。
    言われるがままにソケットにケーブルを繋ぐと電力不足を示すゲージに
    充電中のアイコンが点灯する。

    「大人しく車の中で待ってろって」

    「馬鹿言え、相棒一人で行かせられるかよ。」

    幼馴染「私も行く」

    「ちょっと!一人だけ置いて行かないでよ!」

     結局、全員が武器を手に車から降りてくる
    車の中の方が安全だろうに、大人しくしていればいいものを。

     と思うものの、一方で良い友人を持ったものだなと心の中で感謝もする。

     車にいつでも乗り込めるようドアを開けっ放しにしたまま
    死体にゆっくりと近寄る。

    幼馴染「ひぃっ!」

     生きている間に真っ二つに引き裂かれたのだろうか、
    壮絶な死を遂げた死体は苦悶の表情を浮かべている。
     年齢は20代か30代と言った所だろうか、日本人ではなく外国人
    より正確には。

    90 = 83 :

    「軍人みてぇだな。」

     被害者の服には「UNITED STATES ARMY」と書かれていた、
    それを示すかのように鍛え抜かれた丸太のようなぶっとい腕をしている、
    死体の手にはアサルトライフルが握られている。

     黒人の男性、死体は一人だけで仲間の死体とかは特に見受けられない。

    「酷いもんだな」

    「全くだ、生きたまま体が真っ二つなんて、酷い死に方だぜ
      こうはなりたくねぇもんだ」

    幼馴染「友っ!」

    「悪い」

     幼馴染の叱責に友が軽く謝罪する。

    「昨日、英語で叫んでいたのはこいつなのかな?」

    「多分な、見てみろよ
      アサルトライフルの安全装置が外されている、死ぬ直前まで
      何かと戦っていたんだろうよ」

     体を触ってみると完全に冷え切っている、死後硬直とかは判らないが
    死んでから随分時間が経っているようだ。

    「さ、触らないでよ…お兄ぃ」

     地面に血が染み込んでおり、その表面が乾いている事からも
    彼の命を奪った奴は近くには居ないのだろう。

    「随分前に殺されたのは間違いないな
      やっぱ、昨夜の悲鳴はこの人か」

     友が携帯で写真を撮って、GPS座標を記録する。

     とりあえず、死体の目だけでも閉じてやると、幼馴染が
    スカートのポケットからハンカチを出して、顔の上に広げてあげる。
    そこでひとまずの落ち着きを取り戻したようだ。

     手を合わせて、軽く黙祷。

    91 = 83 :

    >>19の名前を繋げようとしたらローランド・エメリッヒ氏って、
    実在人物だったとは………

     なんか、どっかで聞いた事がある名前だなーと思ったら
    なるほどな、ゴジラだったのか…繋げたかったのは。

     調査不足だったなぁ、こりゃ参った。

    92 :

    一同『アーメン』

     ─────で、対応が合っているか分からないけど、
    いくらなんでも南無阿弥陀仏ではないだろう
    傍目にはややシュールに見えるのかもしれないが、本人達は
    至って真面目だ。

    「悪ぃな」

     軽く謝罪して男は死体のズボンや所持していた
    バックパックから持ち物を漁る。

     身元ぐらいは調べてやりたいし───本来は死体も持ち帰るべき
    だろうけど、そこまではしてやれない。
     せめて荷物ぐらいは持って行ってあげよう。

     財布から軍の身分証を引き抜き名前を確認する。
    同時に友もバックパックの中から何か手がかりが無いか探す。

    「スティーブン、でいいのかな?」

    93 = 92 :

    「あー、ダメだな
      ロックがかかってら」

     同じくして、故スティーブン氏の荷物からタブレット端末を
    取り出して、ロック解除しようとした友がパスワードに当たって
    諦める。

    「貸して、お兄ぃ
      スティーブンさんの誕生日、免許証に書いてあるでしょ?いつ?」

    「12月18日だな」

     妹が友から端末を受け取り(死体から直接拝借しないのはOKらしい)
    端末に1218と入れるが、外れだったようだ。

    「次、社会保障番号は?SSNとか書いてある奴
      それの下4桁」

    「8836」

     妹が8836と入力すると、携帯端末のロックはあっさりと解除される。

    「それでいいのか、スティーブン氏。」

    94 = 92 :

     ともあれ、妹が端末を軽く操作すると英語の書類が表示される、
    最初にゴブリン達の写真、次に同じように化け物達の写真が続いていく。

    幼馴染「ゴブリン、オーガ、トロル、オーク、ミノタウロス………」

     次々映し出されていく写真に幼馴染が名前を呼んでいく、
    どれもこれもファンタジーなRPGに出てくる魔物の名前ばかりだ。

     やがて、なにやら施設を外から撮影したような写真が続き、
    最後に初老の白人男性の写真がプロフィールと共に映し出される。

    「Roland=Emmerich…誰?」

    「こいつって、あのネットで出てきた
      映画監督って奴か?」

    「エメリッヒ監督じゃねーか」

    幼馴染「映画監督?知っているの?あんた
        つか、映画なんて見ているの?」

    95 = 92 :

    「見ちゃ悪いのかよ
      知らねーかな、"デイ・アフター・トゥモロー"とか
      "インデペンデンス・デイ"とか」

    「ああ、それなら知っている」

     以前映画館で見た事があるような気がする、
    テレビでもやっていたはずだ。

     宇宙の外から侵略者がやってきて、アメリカ人が世界中を
    率いて、何故だかアメリカの独立記念日に人類が反旗を翻して
    技術で遥かに劣るエイリアン達の駆逐に成功する。

     アカデミー賞だか何だかを取った、全米が泣いたりしたような
    そんな映画だったはずだ。

    「で、その映画監督がどうしたって?」

    「さぁ?」

     良くわからんけど、このファンタジーな魔物達に何か
    関連した人物であるのは間違いないようだ。

    96 = 92 :

    「エメリッヒ監督、怪獣映画も手を出していたな」

    幼馴染「怪獣映画?」

    「聞いた事あるだろ、ゴジラ
      そいつは、"残念"な映画賞だかを取ったんだとよ」

    「その残念映画を撮影するために、化け物を作り出した
      ───────無理がありそうだな。」

    「あれだ、スティーブン氏がたまたまエメリッヒ監督の
      ファンで、たまたま写真が混じっただけかもしれねーだろ」

    「ンな、アホな」

     なんにせよ、全ては憶測でしかない
    そのエメリッヒ監督とやらは恐らくアメリカだろうし、
    一般人が簡単にアポを取れる相手とも思えない。

     それよりどうするかは。

    「この仏さんをどうするかだよなぁ」

    「うぅ…、考えないようにしたかったのに」

    97 = 92 :

     どうするも、こうするも
    道の端に避けておくか、スティーブン氏をお持ち帰りするかの
    二択しかない訳だが。

    「ん?、なんだ?こいつは」

     友がスティーブン氏の鞄から筒のようなものを取り出す
    長さ20か30センチ程度の金属製の筒で、手元にスイッチのようなものが付いている

     握って振りやすいやすいように手で持つ柄の部分には
    ゴム製のグリップが備え付けられており、全体は軽量のアルミだかカーボンだかで
    出来ているように見受けられる。

    「ライトセイバー!!」

     これまた昔から有名なSF映画で出てくるような主人公の武器っぽい形状。

     友が正面に構えたまま、手元のスイッチを入れる。
    空気を震わす振動音が武器から鳴り、1メートルだか1.5メートルだかの
    光りの刃が空間に生成され─────────。

    98 = 92 :

    「なんも起きないな」

     ─────なかった。

    「ちぇ、音だけの玩具かよ
      やっぱ、スティーブン氏は軍人じゃなくて、
      ただの映画ファンなんじゃねーの?」

     失望した感じでスイッチを切って、友が男にライトセイバー(?)を放り投げる、
    どうでも良いが、故人の物を雑に扱わないで欲しい。

    「財布の中には軍の身分証っぽいのも入っているんだけどな
      それに、この日本で実銃を持っているのも変な話だし」

     男は友から受け取った音だけライトサーベルをひっくり返してさらに調べる
    アルミの柄に英単語が削り込んで記されている。

    99 = 92 :

    -----------------------------------------------
    とりあえず、これで8投かな?
    -----------------------------------------------

    「────APOPTOSIS───
      アポトーシス?で、いいのか?」

    幼馴染「どこかで聞いたような単語ね」

     再びスイッチを入れてみると、空気を震わせるような音が
    ライトサーベル(?)から発せられる。

    「ちょっと待って、なんか透明な剣?みたいなのが
      出ている。」

     妹に指摘されて良く見てみると、柄の先から光が妙に
    屈折し、剣の形を生成している。

     なんとなしに、男が近くの木に剣を振り下ろす。
    何も抵抗が無く剣が木の幹を通過し────────。

     そして、何も起きなかった。

    「???」

     恐る恐る、指で透明な刃に触れてみるも何の抵抗もなく
    ただ、指先がピリピリした感じがするだけだった。

    「??????」

    100 :

    「もう一本、あるな
      後は本物の武器とかレーションとか水とかか」

     男が首をかしげていると、友は遠慮なく氏の遺品を
    漁りまくる。

    幼馴染「まるでハゲタカかジャッカルね」

    「るせー、本物の武器を見る機会なんて
      そうそう、ねーし良いだろうが」

     バックパックにも氏の血が付着しているんだけど、
    もう友は気にしていないようだ。
     流石と言うかなんというか。

     キシェエエエエエエエ!!!

     空から警戒していたシンディの鳴き声。
    全員が慌てて辺りを警戒する。

     ふと、草叢を掻き分ける音がする、風の音かと思ったが
    同時に重いものが移動するような足音がする。
     スティーブン氏の死体や遺品に気を取られていたものの、
    警戒を緩めたつもりはなかった。


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